説明

原子力発電所

【課題】建屋内で溢水が発生した場合において建屋内で作業員が作業をする場合に、建屋内の溢水によって当該作業員の作業に支障が生ずる可能性があった。
【解決手段】原子力設備を収容する建屋1,16が配置される原子力発電所において、前記建屋の下部にこの建屋から発生した溢水を貯留する溢水排水用ピット6, 6aを設けたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所内で発生した溢水を速やかに排出することのできる原子力発電所の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所においては、原子炉圧力容器を格納する原子炉格納容器を有する原子炉建屋および当該原子炉圧力容器内で発生する蒸気で回転するタービンを有するタービン建屋、当該原子炉、タービン等を制御する中央操作室を有する中操建屋、メンテナンス時等に使用される共用建屋等の各種建屋が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9―49894号公報
【特許文献2】特開2002−107480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の原子力発電所において何らかの原因で上記建屋内で溢水が発生した場合または建屋外から水が進入し建屋内で溢水となる場合において例えば建屋内で作業員が作業をする場合においてこの建屋内の溢水によって当該作業員の作業に支障が生ずる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、原子力設備を収容する建屋が配置される原子力発電所において、前記建屋の下部にこの建屋から発生した溢水を貯留する溢水排水用ピットを設けたことを特徴とする原子力発電所を得ることにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る原子力発電所によれば、原子力発電所内で発生した溢水を速やかに排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す原子力発電所の縦断面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の要部を示す溢水排水用ピット底部の縦断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す原子力発電所の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、図1および図2を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、図1は本発明の第1の実施の形態を示す原子力発電所の縦断面図である。
【0009】
図1において地面11に配設される原子炉建屋16内には原子炉格納容器10が設けられている。この原子炉格納容器10内には炉心(図示せず)を収容する原子炉圧力容器12が格納されている。
【0010】
またこの原子炉建屋16に隣接してタービン建屋1が配置されている。このタービン建屋1内には原子炉圧力容器12内で発生する蒸気で回転するタービン4が配置され、このタービン4はタービンペデスタル5で支持され、タービン4の下部にはこのタービン4で仕事した蒸気を凝縮させて復水とする復水器7が配置されている。
【0011】
この原子炉建屋16およびタービン建屋1の下部には、建屋を平面としてみた場合、全体を含むように溢水排水用ピット6が配設されている。この溢水排水用ピット6は原子炉建屋16およびタービン建屋1から発生した溢水を貯留ように構成され、この溢水は建屋からポンプを介して配管(図示せず)によって、または建屋に発生した亀裂を介して導かれるようになっている。この亀裂が発生した場合において、原子炉建屋16およびタービン建屋1の下部全体を含むように溢水排水用ピット6が配設されているので亀裂による溢水も確実に建屋外に排出させることができる。ただし、原子炉建屋16およびタービン建屋1の全ての溢水が導ける場合には下部全体を含まずに限定的な溢水排水用ピット6としても良い。
【0012】
そして、この溢水排水用ピット6の内面にはゴム材またはプラスチック等から成る防水層8が形成されている。そしてこの溢水排水用ピット6の底面はこの溢水排水用ピット6内に貯留された溢水を系外に排出する排出ポンプ9の吸い込み部13の方向に傾斜を有するように形成されている。
【0013】
よって、本発明の第一の実施の形態においては、原子力発電所内で発生した溢水を溢水排水用ピット6内に貯留することによって速やかに排出することができる。また、溢水排水用ピット6の底面の傾斜によって効率良く排出ポンプ9に速やかに溢水を導くことによって速やかに系外に溢水を排出することができる。
【0014】
なお、溢水排水用ピット6に設けられた排出ポンプ9は溢水排水用ピット6が第1の水位以上となった場合に起動し、この第1の水位より低い予め定められた第2の水位以下となった場合に停止するように構成しているので自動で溢水排水用ピット6内に所定量貯留された場合に効率良く溢水を系外に排出することができる。
【0015】
(第2の実施の形態)
次に、図3を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。なお、図3において同一部分には同一符号を付し当該構成の説明は省略する。
【0016】
図3は本発明の第2の実施の形態を示す原子力発電所の縦断面図である。
【0017】
図3において原子炉建屋16およびタービン建屋1の下部には、建屋を平面としてみた場合、全体を含むように溢水排水用ピット6aが配設されている。この溢水排水用ピット6a内には原子炉建屋16およびタービン建屋1の下部を構成する建屋マット3に配設されこの原子炉建屋16およびタービン建屋1を支持する免振装置2が配設されている。そして溢水排水用ピット6aの上方開口部と原子炉建屋16およびタービン建屋1との間隙にはブーツラバー、ゴム板等のシール材14が配設され溢水排水用ピット6aを密封構造に構成している。
【0018】
よって、免振装置2が配設される建屋構造においてその配置空間を溢水排水用ピット6aに利用することができ、原子力発電所内で発生した溢水を溢水排水用ピット6内に貯留することによって速やかに排出することができる。
【0019】
また、溢水排水用ピット6は上記第1の実施の形態と同様の構造とすることも可能である。この場合、防水層8の上に免振装置2を設定しても良いが、支持重量の関係から免振装置2と溢水排水用ピット6aとの接続部にはシール材14を形成しないように設定することも可能である。
【0020】
なお、上記実施の形態においては、原子炉建屋およびタービン建屋の例で説明したが、原子炉およびタービン等を制御する中央操作室を有する中操建屋、メンテナンス時等に使用される共用建屋等の原子力発電所において設置されている各種建屋においても置き換えることによって当然実施適用することができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1・・・タービン建屋、2・・・免振装置、3・・・建屋マット、4・・・タービン、5・・・タービンペデスタル、6, 6a・・・溢水排水用ピット、7・・・復水器、8・・・防水層、9・・・排出ポンプ、10・・・原子炉格納容器、11・・・地面、12・・・原子炉圧力容器、13・・・吸い込み部、14・・・シール材、16・・・原子炉建屋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力設備を収容する建屋が配置される原子力発電所において、前記建屋の下部にこの建屋から発生した溢水を貯留する溢水排水用ピットを設けたことを特徴とする原子力発電所。
【請求項2】
前記建屋は、原子炉建屋、タービン建屋、中央操作室建屋、共用建屋の少なくともいずれかの建屋であることを特徴とする請求項1記載の原子力発電所。
【請求項3】
前記溢水排水用ピット内には、前記建屋の下部に配設されこの建屋を支持する免振装置を有することを特徴とする請求項1または2記載の原子力発電所。
【請求項4】
前記溢水排水用ピットの内面には防水層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の原子力発電所。
【請求項5】
前記溢水排水用ピットにはこの溢水排水用ピット内に貯留された溢水を系外に排出する排出ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の原子力発電所。
【請求項6】
前記溢水排水用ピットに設けられた前記排出ポンプは前記溢水排水用ピットが第1の水位以上となった場合に起動し、この第1の水位より低い予め定められた第2の水位以下となった場合に停止することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の原子力発電所。
【請求項7】
前記溢水排水用ピットの上方開口部と前記建屋との間隙にはシール材が配設され前記溢水排水用ピットを密封構造とすることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の原子力発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−230045(P2012−230045A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99375(P2011−99375)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)