説明

原子炉圧力容器の床部から異物を除去するための装置および方法

水(4)を満たされた原子炉圧力容器(2)の床部(8)から異物(22)を除去するための装置(24)は、床部(8)が原子炉圧力容器(2)の内部(20)に突出する接続短管(10)を有し、装置(24)が接続短管(10)の1つの上に載置されるとともに吸引装置(30)を有しており、吸引装置は異物(22)を床部(8)および/または接続短管(10)から吸引するため前記装置(24)の残りの部分に対して可動的な吸引開口(36)、異物(22)を集めるためのフィルタ(38)、放出口(42)および運転中に水(4)を吸引開口(36)から吸引管(32)およびフィルタ(38)を介して放出口(42)に供給する吸引ポンプ(40)を有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
原子炉圧力容器は最初の運転が開始されてから‐検査作業などの実施中においても‐水で満たされている。たとえば保守点検作業が原因で金属削り屑などの異物またはねじ、ナット、金属片など設備から離脱した小片や極微片が原子炉圧力容器に到達することがある。異物はたとえば原子炉圧力容器の床部に沈積するかもしくは床部または床部近くに、たとえば床部から突出して邪魔になる構造物の上に集まる。これらの異物は‐たとえば検査の枠内で‐原子炉圧力容器から除去されなければならない。
【背景技術】
【0002】
たとえばグラブを備えたマニピュレータにより原子炉圧力容器から対象となる物を手動で移すことは知られている。一般にたとえば金属削り屑の場合には大量の異物を扱うことになるので、個々の異物を手で処理する公知のやりかたは実際的ではない。
【0003】
原子炉圧力容器の通常はドーム状の凹面の床部から極微片もしくは異物をできるだけ残渣なしに除去することは邪魔になる構造物の存在により困難である。このような構造物としてはたとえば床部から突出する制御棒駆動機構ハウジング管や測定領域のプローブ短管などが挙げられる。この種の邪魔になる構造物は以下ではすべて「接続短管」と呼ぶことにする。原子炉の床部へのアクセスは約40mの水深ではその上にある炉構造物、たとえば上部および下部の炉格子の存在によりさらに困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、水で満たされた原子炉圧力容器の内部に突出している多数の接続短管を有している原子炉圧力容器の床部から上記の種類の異物を除去するための装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、装置に関しては請求項1による装置によって、方法に関しては請求項9による方法により解決される。
【0006】
本発明は、自立した吸引装置を現場に持ち込む、すなわち床部の直近に沈下させるという考えに基づいている。この場合自立とは、吸引装置が水を床部の直ぐ近くから異物と共に吸い込み、異物をその内部で水から濾過し、水を直接現場に放出するということを意味する。吸引工程の終了後、吸引装置は集めた異物とともに運び出され、原子炉圧力容器から除去される。
【0007】
本発明による装置は複数の接続短管の1つの上に載置され、吸引装置を有する。この吸引装置は基体に対し動かすことのできる吸引開口を備えた吸引管を有し、これらの吸引開口もしくは吸引管は異物を床部および/または複数の接続短管から吸引するのに用いられる。吸引装置はさらに異物を集めるためのフィルタ、放出口、および水を吸引開口から吸引管およびフィルタを介して放出口に供給する吸引ポンプを有する。
【0008】
このような装置により本発明の方法、すなわち装置を原子炉圧力容器の床部にある複数の接続短管の1つの上に載置し、運転中に吸引ポンプで水を吸引開口から吸引管およびフィルタを介して放出口に供給する方法が達成される。この場合吸引開口は異物を吸引するため床部もしくは接続短管上にある装置の残りの部分に対して動かされ、水と共に吸引された異物はフィルタに集められる。濾過された水はこの装置により現場で、すなわち床部の範囲で放出口から再び放出される。
【0009】
この装置は有利には、通常接続短管の上にある部材の代わりに接続短管に設置できるように構成される。特にこの装置は従ってたとえばその最大寸法が、現場に到達するために何らかの炉構造物を通りぬけて動かすことができるように規定される。一般にこの装置は従って縦長に、たとえば棒状または円筒状に長く引き伸ばされた形となっている。
【0010】
本発明によれば従って‐沸騰水型原子炉の例では‐対応する接続短管を開放するために少なくとも1つの制御棒案内管とそれに属する4つの燃料集合体が取り出される。この装置は、換言すれば吸引装置は、接続短管としての制御棒駆動機構ハウジング管(AGR管)の上に載置される。これはたとえば、この装置が装填機械もしくはマニピュレータにより位置決めされることにより行われる。このためには一般にカメラまたはランプが補助手段として用いられるが、これらはたとえばこの装置にも設置することができる。配置された本装置に備えられた吸引装置により、吸引開口もしくは吸引管の相対運動によってのみ境界付けられるAGR管の周囲における凹面状のドーム表面の直接的な吸引が可能になる。吸引開口の相対運動はこの場合同様に一般にはカメラの監視のもとに実施される。異物はフィルタ、たとえば濾過フィルタ内に集められる。ここでは付加的にμフィルタも使用することができ、このフィルタは同時に異物の分離のほかにさらに吸引水の濾過を可能にする。濾過された質量流量、すなわち放出口から放出された水は直接原子炉圧力容器に戻される。
【0011】
吸引工程の終了後この装置は再び接続短管から取り外され、集められた異物と共に運び出される。
【0012】
本発明によりそれ故たとえば強い放射線の環境下にある制御棒案内管の各位置における床部がこの装置により処理、すなわち浄化される。異物の所期の吸引が可能となる。
【0013】
この装置の有利な実施形態では、装置が接続短管上に載置されるときには、この装置の縦軸は接続短管を通るように、従ってたとえばその中心縦軸と一致するように規定される。吸引開口はこの場合この縦軸に関して円周方向、半径方向および長手方向に動かすことができる。
【0014】
装置の下端は一般に接続短管上に載置されているためにその上側端部にある。特に本装置の下端を越える長手方向の吸引開口の動きが、この装置が載置されている接続短管の上縁と吸引工程を行うべき床部との間の種々の高さ間隔を調整するために重要である。円周方向ならびに半径方向に動かすことができることにより広い範囲が、たとえば接続短管を取り囲むほぼ1つのドーナツリングがその接続短管上に載置された装置により一工程で到達し得ることになる。
【0015】
吸引開口の相応する可動性を得るために、たとえば吸引管または吸引管の吸引開口に接する端部範囲が入れ子状に伸縮自在に伸び出し、回転または旋回可能にされる。吸引管の伸び出しは特に簡単に入れ子状に伸縮自在に、たとえば縦軸に対して平行、斜めまたは直交方向に実現することができる。
【0016】
別の有利な実施形態では、本装置は、接続短管上に載置可能な位置決めフードと、本装置の回転軸を中心に位置決めフードに対して回転可能な吸引装置を備えた基体とを有する。この種の装置では位置決めフードは、たとえば摩擦結合により接続短管の上に固定載置することができ、この場合またたとえば短管から突出する駆動部材を取り囲み同時に確実な支持を保証することができる。上述の回転軸は載置状態では一般に上述の縦軸に相応する。固定された位置決めフードに対して吸引装置と共に基体を動かすことができることにより特に縦軸の円周方向における吸引管もしくは吸引開口の相対運動が既に実現される。
【0017】
従って換言すれば運転中に位置決めフードの形の本装置の下部が固定保持脚として、吸引装置を備えた基体の形の上部が本来の可動的な吸引装置として役立つ。
【0018】
上述の実施形態は、吸引管が位置決めフードの外側もしくは横側にあるように改良することもできる。この場合位置決めフードは単独で接続短管上の支持に役立ち、特に簡単にして安定に構成でき、吸引管を床部の方向に案内するための特別な開口やガイドは不要となる。たとえば吸引管は位置決めフードの長手延長方向に平行に、すなわち一般に上述の回転軸もしくは縦軸に平行になるようにされる。
【0019】
別の有利な実施形態では吸引管は吸引開口に続く端部範囲において曲げられる。すなわち吸引管が運転中に床部の方向に伸長するほぼ直線状の部分とこれにつづく曲がり部分とを有すれば、接続短管の周りの直線吸引管の回転と共に直線状部分の中心縦軸を中心とする吸引管の回転だけで床部の1つの円環範囲が吸引開口によりカバーされる。特に曲がり端部範囲は、本装置がその端部範囲の曲がりの位置が変えられて変更された1つの範囲を越えて走行することができる。これにより一方では運転中に端部範囲を外側に曲げることにより本装置のできるだけ大きな半径周囲を吸引することができる。他方では端部範囲は本装置の方向に半径方向内側に曲げることができ、たとえば装置全体を水表面から上側および下側の炉格子の開口を通って原子炉圧力容器の床部に向かって動かすことができる。
【0020】
別の有利な実施形態では吸引開口に続くもしくは吸引開口を有する吸引管の端部範囲は交換可能にされる。たとえば種々のもしくは特殊な吸引目的に対して種々に形成された、たとえば直線状に、曲線状に、またはその他の特殊な目的用に形成された端部範囲を装置に取り付けることができる。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、フィルタはフィルタ装填物を有し、これはフィルタに集められた異物と共に本装置から取り出される。それ故フィルタに集められるホットスポット、すなわち強い放射線微粒子を有する場合にはフィルタはその放射性内容物と共に取り出され、たとえば燃料棒貯蔵槽に設置された筒に集められる。装置自体はこれにより放射線で汚染されずに放射線範囲における作業後もしくは放射線物質との接触後も再利用できる。この実施形態は従ってフィルタおよび場合によりその放射性内容物の確実な排出を可能にする。
【0022】
上述の位置決めフードと関連した装置の有利な実施態様では、フィルタ装填物は位置決めフードの内部を通してたとえば回転軸の方向に取り出される。位置決めフードは一般にそもそも中空もしくは中空円筒状に形成されているので、接続短管から上方に突出する部材を掴み自ら接続短管上に支持される。フィルタの取り出しはこれにより特に簡単に実現でき、装置の運転状態‐位置決めフードが垂直方向に下向きの場合‐では付加的な補助手段なしに重力方向に行われる。
【0023】
吸引管の適切な形状、たとえば端部範囲を曲げることにより、装置を交換することなしに接続短管のさらに大きな周囲範囲を吸引することができる。この範囲は有利な実施形態では次のように、すなわち対象となる接続短管とこれに隣接する接続短管との距離が既知である場合に吸引範囲が少なくとも隣接する接続短管の中心までもしくはそれらを結ぶ線まで達するように装置を寸法づけるように選ばれる。隣接する接続短管の残りの半分が次の次の接続短管から同様に到達可能(同一距離を想定)なので、この種の方法の変形例では本装置はそれぞれ2番目の接続短管上にのみ載置すればよいにもかかわらず、原子炉圧力容器の床全体が複数の接続短管と共に完全に吸引される。
【0024】
装置が載置される接続短管自身の吸引のためには、装置を例外的に若干持ち上げ、吸引管もしくは吸引開口を半径方向に内側に旋回させることが可能である。
【0025】
本発明をより詳細に説明するため図に示した実施例を参照する。図はそれぞれ概略原理図である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】原子炉圧力容器の床部を含む断面図である。
【図2】接続短管上にある本発明装置の運転中の図である。
【図3】本発明装置の図2の代替的な実施形態の図である。
【図4a】吸引管の取り外し可能な端部領域の一例の図である。
【図4b】吸引管の取り外し可能な端部領域の一例の図である。
【図4c】吸引管の取り外し可能な端部領域の一例の図である。
【図5】図1の原子炉圧力容器の床部の平面図である。
【図6】図3の装置の代替的断面図である。
【図7】図3および図6の装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は原子炉圧力容器2、たとえば検査中に水4で満たされている沸騰水型原子炉の断面図を示す。特に重力方向6にあるその下側の床部8が示されている。床部8からは上方に向かって、すなわち重力方向6に抗して複数の接続短管10が延びており、これらの短管はすべて一つの平面12で終わっている。接続短管10はたとえば制御棒駆動機構ハウジング管(AGR管)である。各接続短管10上には制御棒案内管14が設置され、これらはそれぞれ制御棒16を有する(図1では唯1個の制御棒しか示されておらず、残りの制御棒16は重力方向6に抗して上方に図示しない炉外筒に引き抜かれている)。
【0028】
原子炉圧力容器2の内部20に面している床部8の内側面18には異物22(図1では著しく拡大して示されている)があり、これは検査中に除去する必要がある。このためにはまず原子炉のさらに上部にある図示しない炉構造物、たとえば蒸気分離器、蒸気乾燥器や炉蓋が取り外される。続いて制御棒16の1つ、この例では位置P1にある制御棒がその案内管14およびその上にある図示しない燃料集合体とともに取り外される。相応する位置P1には当該の接続短管10だけが残る。
【0029】
この接続短管を図2に床部8もしくはその内側面18の断面図と共に拡大して示す。異物22の除去は本発明による装置24による吸引により行われる。この装置は詳細には示していない原子力発電所のマニピュレータ26により重力方向6に当該の接続短管10に向かって下ろされてこの上に設置され、従って‐たとえばその自重またはマニピュレータの押圧により‐摩擦結合のもとにそこに固定される。このプロセスはたとえば装置24に配置された位置決め用カメラ28を用いて行われる。
【0030】
装置24は吸引装置30を含む。この装置は吸引管32を有し、その端部は端末に吸引開口36を持つ吸引端部34を形成する。他端では吸引管32はフィルタ38に接続されており、このフィルタは他方で同様に吸引ポンプ40に導かれている。吸引ポンプ40はさらに放出口42に導かれている。吸引管32もしくは少なくともその吸引端部34は装置24の残りの部分、特にその接続短管10上に固定的に載置されるケーシング44に対して可動である。
【0031】
運転中に吸引ポンプ40は水4を矢印46の方向に吸引開口36および吸引管32を通ってフィルタ38を介して放出口42まで運ぶ。この場合水4と共に異物22も吸引されてフィルタ38で捕えられ保留されるので、水4だけが異物22なしに放出口42から放流される。矢印48の方向へ吸引端部34もしくは吸引開口36が装置24の残りの部分に対して動くことにより接続短管10の外周部50が作業され、すなわちそこにある異物22が吸引されフィルタ38に集められる。特に接続短管10は中心縦軸52を規定しており、吸引端部34もしくは吸引開口36はこの中心縦軸52に関して半径方向、軸方向および円周方向に可動となっている。
【0032】
図3は装置24の代替的実施形態の断面図であり、ケーシング44は多くの部品で構成されている。ここでは装置24の図示の運転位置において接続短管10に向いている端部は位置決めフード54である。このフードは円筒状に形成された装置24の本体部のほぼ中心にある回転軸56を中心に回転可能に基体58に支承されている。もっぱら基体58が吸引装置30を含む。回転可能性は特に玉軸承60により実現される。これにより位置決めフード54はたとえば摩擦結合により接続短管10の上に固定的に載置され、基体58は中心縦軸52と重なる回転軸56を中心に回転できるようにされる。特に、離心的に配置された、すなわち位置決めフード54と並行している吸引管32は中心縦軸52を中心に円周方向に動くことができる。図3はさらに、どのように吸引開口36が中心縦軸52の軸方向に動くことができるかを示している。吸引管32は主として、基体に固定設置された管部分66と、これに対して入れ子状に伸縮可能な入れ子管64に分割される。空気シリンダ62が固定設置された管部分66の軸方向(中心縦軸76)に入れ子管64が動くことができるようにする。このため入れ子管64はスラスト軸受68もしくは滑り軸受ブッシュ70に案内されている。さらに空気回転および旋回ユニット72もしくは歯車74により入れ子管64は管部分66に対して中心縦軸76を中心に回転可能になっている。さらに吸引管32の吸引端部34が吸引管32の端部範囲35において曲げられているので、端部範囲35が固定設置されている入れ子管64の回転により、中心縦軸52に対する吸引開口36の半径方向および円周方向の混合した回転が可能になる。吸引開口36からその運動により吸引可能な範囲はたとえばカメラおよびランプからなる吸引管32に取り付けられたビデオユニット78により観察可能である。このようにして吸引工程は常に監視され遠隔操作することができる。
【0033】
さらに図3の実施形態においてはフィルタ38は異物22を捕集するフィルタ装填物80を有するように形成されている。この種の装填物はたとえば特殊鋼からなり、0.2mmの網目を有する。フィルタ装填物80はフィルタ38内で空気シリンダ82を介して操作される旋回開き戸84により保持される。旋回開き戸84にはさらに位置決めカメラ28が設置され、このカメラは位置決めフード54を通して接続短管10の方向を見ることができる。旋回開き戸84は図3ではさらに開いた位置で示されており、フィルタ装填物80はこの開き戸から矢印86の方向に位置決めフード54を通って取り出し可能である。フィルタ装填物80は異物22の形の高放射性物質を含有することもあるので、水中でのみ再処理もしくは輸送しなければならないので、旋回開き戸84にある空気シリンダ82が故障する場合に備えてさらに旋回開き戸84の強制開口のためのアンロックレバーの形の非常用アンロック機構88が設けられる。
【0034】
矢印46は吸引装置30の図示部分を通る水4の流れ経過を同様に示す。図3に示した実施形態ではさらに吸引管32の端部範囲35がバヨネット式閉鎖機構90により入れ子管64に交換可能に取り付けられている。
【0035】
図4a−図4cはそれ故それぞれバヨネット式閉鎖機構90を備えた端部範囲35の種々の実施形態を示し、これらは種々の吸引目的のため残りの吸引管32もしくは入れ子管64に取り付けることができる。図4a、図4cは端部範囲35の固定した実施例を示す。図4aでは吸引端部34は曲げられている。中心縦軸76を中心とする吸引端部34の上述の回転に応じて床部8において同様に接続短管10の周囲の半径リングが吸引される。図4aによる端部範囲35は支持補助材92を有し、その端部には安定化され回転可能な玉94があるので原子炉圧力容器2の床部8上に載置可能である。
【0036】
図4bは端部範囲35の代替的な実施形態を示す。この端部範囲はそれ自体が同様に入れ子式に形成されている。スリーブ管96内には空気シリンダ98により特殊鋼管たとえば波形外套管100が二重矢印102の方向に移動可能に支承される。相応する調整により波形外套管の伸び出しに応じて拡大可能な接続短管10の回りの半径範囲がこの吸引開口により作業可能となる。図4bは波形外套管100の引き出された位置を示し、一点鎖線で最大引き伸ばし位置を示す。
【0037】
図4cは端部範囲35の別の変形例を示し、これは特に大きく曲げられており、たとえば図3の状況において装置24の持ち上げ後に端部範囲35を若干内側に、すなわち接続短管10の方向に旋回させ、接続短管自身の上側11を吸引させるものである。
【0038】
図5は図1の位置P1にある接続短管10の平面図を示し、この上に装置24が載置される。この図にはさらに位置P2−P5にあるP1と交差して隣接する4つの接続短管10および図1には示していないが床部にあるたとえば床部8を通って案内される炉流測定ケーシング管などの2つの邪魔になる構造物104が示されている。図5はさらに位置P1の次の次の隣接物を位置P6の接続短管10の形で示す。位置P1、P5、P6の接続短管はそれ故一列に並んでいる。
【0039】
図5は破線で囲んだ円104aで床部8の範囲106aを示しており、この範囲は位置P1に据え付けられた装置24の図4aに示した端部範囲35により吸引可能である。端部範囲35を図4bに示すものに交換することにより、入れ子状に動くことにより、斜線で示した境界線104bで縁付けられたより大きい範囲106bが到達および吸引可能となる。さらに図4cに示す端部範囲35と交換することにより一点鎖線の境界線104cで縁付けられた範囲、すなわち位置P1における接続短管10の上側11が、位置P1の装置24を若干持ち上げるとき、自分自身で吸引可能になる。
【0040】
図5から判るように、位置P1から吸引可能な範囲106a、bはそれぞれ位置P2−P5の各隣接接続短管10の少なくとも中心もしくはそれらの接続線まで達している。この結果、位置P1の装置24の除去後の次の工程においては本装置は位置P6にある次の次の接続短管10の上に載置する必要がある。そこから再び図4bの端部範囲35により線10bで縁取られた範囲10bが吸引可能になり、上述の範囲106bに隙間なく続く。装置24を適切にずらすことにより従って全ての床部8が隙間なく吸引可能となる。このためたとえば隣接する列において装置24が位置P7およびP8に載置される。この例示的な処置により装置24がたとえば一度も位置P5およびP3には載置されないので、そこにある制御棒案内管は一度も取り外されない。その下側にある接続短管10の上側もそこに異物22が達しないので吸引される必要はない。
【0041】
図6は図3の補足として吸引ポンプ40を備えた装置24の上側を示し、ここでは矢印46により再び水4の吸引装置30を通る流路が暗示されている。特に放出口42およびマニピュレータ26の端部が見られ、ここに基体58が回転不能に固定されている。マニピュレータの操作によりたとえば基体58が回転軸56を中心に位置決めフード54に対して回転される。
【0042】
図7は図3、6に示す装置24を矢印VIIの視野方向に見た、すなわち平面図を示す。特に基体58および位置決めフード54の円筒形状、並びに装置24の側面の外側にある吸引管32が半径方向に垂直に延びている端部範囲35と共に示されている。矢印108で示すように端部範囲35は‐この例では115°‐旋回可能であり、入れ子管64が完全に引き伸ばされた状態では端部範囲は位置決めフード54に接している(同様に示されている)。これによりこの位置において全装置24がたとえば270mmの直径の円110を有する。このようにするだけで全装置はそれぞれ275mmの通過孔を有する図示しない上側および下側の炉格子を通過可能となる。炉格子を通過後に、すなわちたとえば図3、6に示す載置位置において初めて端部範囲は旋回される。
【符号の説明】
【0043】
2 原子炉圧力容器
4 水
8 床部
10 接続短管
22 異物
24 除去装置
30 吸引装置
32 吸引管
35 端部範囲
36 吸引開口
38 フィルタ
40 吸引ポンプ
42 放出口
54 位置決めフード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水(4)を満たされた原子炉圧力容器(2)の床部(8)から異物(22)を除去するための装置(24)において、床部(8)が原子炉圧力容器(2)の内部(20)に突出する複数の接続短管(10)を有し、装置(24)がこれらの接続短管(10)の1つの上に載置されるとともに1つの吸引装置(30)を有しており、前記吸引装置は異物(22)を床部(8)および/または接続短管(10)から吸引するために前記装置(24)の残りの部分に対して可動的な1つの吸引開口(36)、異物(22)を集めるための1つのフィルタ(38)、1つの放出口(42)および運転中に水(4)を吸引開口(36)から吸引管(32)およびフィルタ(38)を介して放出口(42)に供給する一台の吸引ポンプ(40)を有する異物除去装置。
【請求項2】
載置された状態で吸引開口(36)が接続短管(10)を通る前記装置(24)の縦軸(52)に対し円周方向、半径方向および長手方向に可動である請求項1記載の装置。
【請求項3】
接続短管(10)に載置可能な1つの位置決めフード(54)と、前記装置(24)の回転軸(56)を中心に位置決めフード(54)に対して回転可能であって、吸引装置(32)を有する1つの基体(58)とを備えた請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
吸引管(32)が位置決めフード(54)の外側にある請求項3記載の装置。
【請求項5】
吸引管(32)が吸引開口(36)に続く端部範囲(35)において曲げられている請求項1から4の1つに記載の装置。
【請求項6】
吸引開口(36)に続く吸引管(32)の端部範囲(35)が吸引開口と一緒に交換可能である請求項1から5の1つに記載の装置。
【請求項7】
フィルタ(38)がフィルタ装填物(80)を有し、フィルタ装填物(80)に集められる異物(22)とともに前記装置(24)から取り出し可能である請求項1から6の1つに記載の装置。
【請求項8】
フィルタ装填物(80)が位置決めフード(54)の内部を通って取り出し可能である請求項3に従属する請求項7記載の装置。
【請求項9】
水(4)を満たされた原子炉圧力容器(2)の床部(8)から異物(22)を除去するための方法において、床部(8)が原子炉圧力容器(2)の内部(20)に突出する複数の接続短管(10)を有し、装置(24)がこれらの接続短管(10)の1つの上に載置され、1つの吸引開口(36)、1つのフィルタ(38)、1つの放出口(42)および一台の吸引ポンプ(40)を備えた1つの吸引装置(30)が駆動され、吸引ポンプ(40)が水(4)を吸引開口(36)から吸引管(32)およびフィルタ(38)を介して放出口(42)に供給し、吸引開口(36)が異物(22)を床部(8)および/または接続短管(10)から吸引するために前記装置(24)の残りの部分に対して動かされ、異物(22)がフィルタ(38)に集められる異物除去方法。
【請求項10】
床部(8)および/または複数の接続短管(10)が、前記装置(24)が載置された接続短管(10)の床部(8)を取り囲む範囲であって、隣接する複数の接続短管(10)の少なくとも中心に達している範囲(106a、b)において吸引される請求項9記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2013−520663(P2013−520663A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554261(P2012−554261)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051345
【国際公開番号】WO2011/104067
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(501315289)アレヴァ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (61)
【氏名又は名称原語表記】Areva GmbH