説明

原子炉容器における遠隔作業用マニピュレータ

【課題】原子炉容器の接近しにくい領域で保守作業を実行するために核放射環境の中で遠隔制御の水中操作を実行するためのマニピュレータ(10)が開示される。
【解決手段】原子炉容器内の遠隔場所に接近し且つ遠隔場所を保守するためにマニピュレータ(10)が容器の中の障害物を乗り越えて当該場所に到達できるように、マニピュレータ(10)は6つの自由度で運動自在である。マニピュレータ(10)は、原子炉容器にマニピュレータ(10)を挿入し且つ原子炉容器からマニピュレータ(10)を取り出すと共に、容器の中でマニピュレータ(10)を回転させるための軸方向駆動部(12)を含む。マニピュレータ(10)は、到達しにくい場所への接近を更に容易にするために展開自在である2つの回転継手(18、40)及び3つのピボット継手(34、36、42)を備えるアーム20を更に含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電装置に関し、特に、原子炉容器に配置された構成要素の溶接部における応力腐食割れを軽減するのを補助するためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたる原子力発電装置の運転経験から、原子炉容器構成要素の老化による劣化の制御を有効に実行しないと、プラントの安全性及び耐久性が危うくなることがわかっている。適切な安全余裕が残されるように、すなわち通常動作条件の範囲を超える完全性及び機能性が確保されるように、原子炉容器構成要素の老化を効果的に管理しなければならない。
【0003】
沸騰水型軽水炉(「BWR」)原子力発電装置は、ある特定の国々においてかなり長い間商業運転されている。この期間中、ステンレス鋼及びInconel 182溶接材料から製造された原子炉構成要素に応力腐食割れ(「SCC」)が発生したことが判明している。応力腐食割れは、引っ張り応力及びBWR環境のような「腐食」環境の影響を受けやすい合金の亀裂の始まり及び臨界未満の亀裂の成長を表す用語である。
【0004】
BWRの内部構成要素及び溶接部における応力腐食割れを予防軽減するために、BWR事業者の中には、SCCを発生しやすい原子炉内部構成要素の修理及び交換並びに溶接領域の応力腐食割れを軽減するための構成要素溶接部のブラッシングを含む予防保守プログラムを開始した者もいる。内部構成要素溶接部のブラッシングに関する問題点の1つは、保守用ツールが届かない遠隔場所にある溶接部に接近できるようにすることである。
【0005】
差圧/ホウ酸水注入(「dP/SLC」)ライン浸透溶接継手は、溶接継手及び隣接ゾーンのブラッシングにより応力腐食割れを軽減できる利点がある遠隔場所の溶接継手の一例である。dP/SLC浸透溶接継手に接近する場合の問題の1つは、原子炉容器のボトムヘッドの最も外側の周囲領域に対して180°の方位角に配置されるdP/SLCパイプ11の場所である。dP/SLC浸透溶接継手に接近する場合の第2の問題は、例えば図1に示されるように、使用されなくなった振動センサ計器ストリング13並びにストリング13をdP/SLCパイプに保持するために使用されるクリップ及びシュラウド15の存在が継手に接近する際の妨げになることである。
【0006】
原子炉の内部構成要素の流れ誘発振動は、それらの構成要素の疲労に起因する亀裂及び/又は障害を引き起こす場合がある。原子炉における構成要素の障害と関連して安全上の危害が及ぶおそれがあるため、振動誘発損傷を受けやすい内部構成要素の状態又は条件を監視することも必要である。原子炉における流れ誘発振動を判定するために監視される原子炉内部構成要素の1つは、炉心モニタハウジング(ICMH)である。炉心モニタ支持構体により支持される炉心モニタ計器の中に配置された中性子束モニタによって炉心出力が監視される。各炉心モニタ支持構体は計測機器案内管及び炉心モニタハウジングを含む。炉心モニタハウジングの外面に振動センサが取り付けられる。
【0007】
沸騰水型軽水炉(「BWR」)の内部構成要素及び溶接部の応力腐食割れを予防軽減するために使用可能であり、BWR容器を遠隔場所から保守するツールを設計販売しているツール販売業者もある。原子炉容器の底部への接近は、容器内の種々の構造によって通常妨げられる。従って、それらの障害物を乗り越えて原子炉容器の底部まで到達するようにツールを構成することは難しい。ツールの中には複数の部材から成るマニピュレータを含むものもあり、マニピュレータの部材を容器内部の作業場所まで挿入した後、マニピュレータを使用すべき容器内の場所で部材は組み立てられる。そのようなツールの多くは、原子炉容器の最上部まで延出する操作ポールを技術者が利用することによって操作される。しかし、原子炉を保守するために必要な作業を実行するためにポールを使用してツールを適切に操作できない技術者は多い。一体型のマニピュレータであれば、分割型マニピュレータの部品を挿入して組み立て、更に使用後にツール部品を解体し、取り出すために必要とされる時間が不要になるだろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明の例示的な一実施形態において、原子炉容器の遠隔場所に接近し且つ遠隔場所を保守するためのマニピュレータは、フレームと、フレームを回転させる軸方向駆動部と、フレームの中に取り付けられた展開自在のアームとを具備し、アームは、軸方向駆動部に装着された第1の回転継手と、第1の回転継手と延長部材の第1の端部との間に装着された第1のピボット継手と、延長部材の第2の端部に装着された第2のピボット継手と、第2のピボット継手に装着された第2の回転継手と、第2の回転継手に装着された第3のピボット継手と、第3のピボット継手に取り付けられたツールとを具備する。
【0009】
本発明の別の例示的な実施形態において、原子炉容器の遠隔場所に接近し且つ遠隔場所を保守するためのマニピュレータは、フレームと、フレームを回転させる軸方向駆動部と、フレームの中に取り付けられた展開自在のアームとを具備し、アームは、軸方向駆動部に装着された第1の回転継手と、第1の回転継手と延長部材の第1の端部との間に装着された第1のピボット継手と、延長部材の第2の端部に装着された第2のピボット継手と、第2のピボット継手に装着された第2の回転継手と、第2の回転継手に装着された第3のピボット継手と、第3のピボット継手に取り付けられたツールとを具備し、フレームは、上部プレートと、マニピュレータを原子炉容器の種々の構成要素にクランプする複数のラッチを含むベースに取り付けられた底部プレートとを含み且つ原子炉容器の内部への挿入及び原子炉容器からの取り出しのためにフレームの中でアームを伸縮自在にするような直線寸法を有し、3つのピボット継手は対応するウォーム歯車に装着された対応する可逆サーボ機構によりそれぞれ運動され且つ2つの回転継手は対応する可逆サーボ機構によりそれぞれ回転される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は振動センサ計器、ストリング並びにストリングをdP/SLCパイプに保持するクリップ及びシュラウドを有するdP/SLCパイプを示した平面斜視図である。
【図2】図2は原子炉容器の炉心支持板を通して挿入及び取り出し可能なように構成された本発明のマニピュレータを示した側面図である。
【図3】図3はマニピュレータに6つの運動自由度を与える種々の継手を示すために図2のマニピュレータを展開構成で示した平面斜視図である。
【図4】図4はマニピュレータに含まれるいくつかのピボット継手及び回転継手を動作させるために使用される駆動部を示したマニピュレータの横断面図である。
【図5】図5は原子炉容器のトップガイド及び炉心支持板を通して原子炉容器の中まで降下されたマニピュレータを示した平面図である。
【図6】図6はマニピュレータの端部に装着された超高圧水ジェットにより放出される水を使用して小型dP/SLCパイプの背後のクリップを除去するためにクリップに接近している状態の原子炉容器ヘッドに装着されたマニピュレータを示した平面斜視図である。
【図7】図7はマニピュレータを所定の場所に保持するためにラッチが展開位置にある状態で制御棒駆動機構ハウジング(「CRDH」)の最上部に取り付けられたマニピュレータを示した部分横断面図である。
【図8】図8は本発明のマニピュレータと共に使用可能なグリッパツールの一例を示した斜視図である。
【図9】図9は本発明のマニピュレータと共に使用可能なカッタツールの一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、原子炉容器の遠隔場所における保守作業を実行するためのマニピュレータツールである。マニピュレータは、BWRの内部構成要素及び溶接部における応力腐食割れを予防軽減するために使用可能である。疲労から発生する亀裂及び/又は構成要素の障害を軽減することと関連して炉心モニタハウジングを検査し且つ保守するためにマニピュレータを変形することも可能である。遠隔場所に接近するために原子炉容器の内側の障害物を乗り越えられるように、マニピュレータは6つの運動自由度を有する。
【0012】
図2は、原子炉容器のトップガイド19及び炉心支持板21(図5)を通して挿入及び取り出し可能であるように構成された本発明のマニピュレータ10を示した側面図である。この構成において、マニピュレータ10の半径方向寸法を最小限に抑えるために、取り付けフレーム22の中に取り付けられた展開自在のアーム20は、アーム20の部品である回転継手及びピボット継手のすべてがほぼ軸方向に整列されるように配置される。
【0013】
図3は、アーム20に6つの運動自由度を与える種々の回転継手及びピボット継手を示すためにアーム20を展開構成にしたマニピュレータ10の平面斜視図である。図4は、マニピュレータに含まれるいくつかの継手を動作させるために使用される駆動部を示したマニピュレータのアーム20の横断面図である。
【0014】
まず図2及び図3を参照して説明すると、マニピュレータ10は軸方向駆動部12を含む。軸方向駆動部12は、マニピュレータ10を原子炉容器に対して上下動させると共に、原子炉容器の内部で回転させる。この運動を実現するために、軸方向駆動部12は、マニピュレータ10を上下動させ且つ原子炉容器の内部で運動させるために使用されるモノレールホイスト(図示せず)に装着されるように構成される。
【0015】
軸方向駆動部12に装着された駆動軸14は、取り付けフレーム22の一部である上部プレート24の上に取り付けられた線形軸受16を貫通する。取り付けフレーム22の中に取り付けられたアーム20は、原子炉容器の保守に使用されるいくつかのツールのうち1つを操作するために展開される。駆動軸14の基端部23は軸方向駆動部12に装着され、駆動軸14の先端部25はアーム20に装着される。取り付けフレーム22は、上部プレート24の他に、ベース27に装着されたベースプレート26を更に含む。ベース27に設けられた複数のラッチ28(図7)は、原子炉容器の底部に配置された制御棒駆動機構ハウジング30(「CRDH」)などの原子炉の内部の構成要素にベース27をクランプするために使用される。ベースプレート26を上部プレート24に接合している2つのスペーサロッド32は、取り付けフレーム22の中の挿入位置及び取り出し位置(図2)までアーム20を伸縮可能であるような寸法をそれぞれ有する。尚、2つのスペーサロッドが図示されているが、3つ以上のスペーサロッド32又はハーフパイプ(必要に応じて背面を旋回させるための底部窓を有する)が使用されてもよいだろう。更に、曲げ強さを向上するために、フレーム22を形成する構成要素をアルミニウムではなく、ステンレス鋼から製造することも可能だろう。軸方向駆動部12は、駆動軸14を上下動させることにより取り付けフレーム22の中でアーム20を上下動させるために使用される。
【0016】
駆動軸14の先端部25にプレート17が装着される。プレート17は、アーム20を更に回転させるアーム20の第1の回転継手18に装着される。第1の回転継手18に1対のアーム54を介して第1のピボット継手34が回転自在に装着される。第1のピボット継手34に円筒形の延長部材38が堅固に装着され、延長部材38は第1のピボット継手34と、延長部材38の反対側の端部に同様に堅固に装着された第2のピボット継手36との間に延出する。第1のピボット継手34及び第2のピボット継手36は、展開自在のアーム20の運動において第1の回動運動自由度及び第2の回動運動自由度を与える。
【0017】
第2のピボット継手に1対のアーム69を介して第2の回転継手40が回転自在に装着される。第2の回転継手40は、原子炉容器内部で保守作業を実行するために展開自在のアーム20の第2の回転運動自由度を与える。アーム20に更なる運動自由度を与えるために、第2の回転継手40に第3のピボット継手42が堅固に装着されており、原子炉容器を保守するために種々のツールをアーム20に装着するコネクタ44は第3のピボット継手42に取り付けられる。マニピュレータ10と共に使用できるツールの1つは、先に説明した振動センサ計器のストリング、クリップ及びシュラウドなどの部品を除去するために使用可能な超高圧(「UHP」)水ジェット48である。水ジェット48は図3及び図6に示される。応力腐食割れを軽減するためにいくつかの溶接部まで接近しブラッシングできるように原子炉容器構成要素からストリング13並びにクリップ及びシュラウド15を除去するために、水ジェット48は超高圧の水のジェットをそれらの部品に向けて放出させる。図3及び図6に示されるように、水ジェット48に装着されたホース46は、原子炉容器内部で除去される装置に向けてジェット48によりノズル49を介して噴き付けられる高圧水を供給する。
【0018】
図4は、原子炉容器の内部で保守作業を実行するために使用される5つの運動自由度をアーム20に与えるために使用される種々の駆動部を示したアーム20の横断面図である。図4からわかるように、第1の回転継手18は第1の可逆サーボ機構(「サーボ」)50を含む。サーボ50は電動機、あるいは油圧駆動装置又は空気圧駆動装置であってもよい。サーボ50から延出する軸52が回転することにより起こる回転は、アーム20の内部で第1の回転運動自由度を与える。軸52が回転することにより、第1のピボット継手34、第2のピボット継手36、第2の回転継手40及び第3のピボット継手42が回転する。尚、第1のサーボ50は360°の旋回半径で第1の回転継手34を回転させることが可能であるが、回転によってワイヤが螺旋状にねじれないようにするために、通常、第1のサーボ50は第1の回転継手を+/−180°の範囲で回転させる。
【0019】
次に第1のピボット継手34及び第2のピボット継手36を見てみると、図4からわかるように、第1のピボット継手34及び第2のピボット継手36はウォーム歯車により回転される。円筒38の中に第2の可逆サーボ56及び第3の可逆サーボ58が取り付けられる。第2のサーボ56に装着された第2の軸62は、第1のピボット継手34の一部である筐体66の回転軸に係止された第1のウォーム歯車64と係合し且つ第1のウォーム歯車64を回転させるウォームを構成するようにねじに似た形状を有する。第2のサーボ56の動作によりウォーム62が第1の方向に回転されるにつれて、ウォーム歯車64は第1の方向に回転されて第1のピボット継手34を上昇又は下降させる。逆に、ウォーム62が反対方向に回転された場合、ウォーム62はウォーム歯車64を同様に反対方向に回転させるので、第1のピボット継手34も逆方向に動く。ウォーム62及びウォーム歯車64は、第1のピボット継手34をツール10の長手方向軸から90°回転させることが可能である。
【0020】
第1のピボット継手34と同様に、第2のピボット継手36は、円筒38の中に第2のサーボ56と対向するように取り付けられた第3のサーボ58により運動される。第3のサーボ58に装着された第3の軸68も、第2のピボット継手36の一部である筐体72の回転軸に係止されたウォーム歯車70と係合し且つウォーム歯車70を回転させるウォームを構成するようにねじに似た形状を有する。第3のサーボ58の動作によりウォーム68が第1の方向に回転されるにつれて、ウォーム歯車70は第1の方向に回転されて第2のピボット継手36を上昇又は下降させる。逆に、ウォーム68が反対方向に回転された場合、ウォーム68はウォーム歯車70を同様に反対方向に回転させるので、第2のピボット継手36も逆方向に動く。ウォーム68及びウォーム歯車70は、第2のピボット継手36を延長部材38の長手方向軸に関して180°回転させることが可能である。
【0021】
第2の回転継手40は、円筒形の延長部材78の中に取り付けられた第4の可逆サーボ76を含む。第4のサーボ76から軸74が延出している。アーム20の中で第2の回転運動自由度を与えるように第2の回転継手40を+/−180°回転させるために、第4のサーボ76は軸74を回転させる。
【0022】
第1のピボット継手34及び第2のピボット継手36と同様に、第3のピボット継手42も、第4のサーボ76を収納する円筒78の中に取り付けられた第5の可逆サーボ80により回転される。第5のサーボ80は円筒78の中に第4のサーボ76と対向するように配置される。第5のサーボ80から延出する第5の軸82は、第3のピボット継手42の一部である筐体86の回転軸に係止されたウォーム歯車84と係合し且つウォーム歯車84を回転させるウォームを構成するようにねじに似た形状を有する。第5のサーボ80の動作によりウォーム82が第1の方向に回転されるにつれて、ウォーム歯車84は第1の方向に回転されて第3のピボット継手42を上昇又は下降させる。逆に、ウォーム82が反対方向に回転された場合、ウォーム82はウォーム歯車84を同様に反対方向に回転させるので、第3のピボット継手42も逆方向に動く。
【0023】
マニピュレータ10は、原子炉容器などの核放射環境の中で水中動作するように設計されている。原子炉容器の接近が難しい領域で保守作業を実行するためのツールを操作するために、マニピュレータ10は遠隔操作可能に設計されている。尚、図示の便宜上、マニピュレータ10は超高圧(「UHP」)水ジェット48を使用して動作するものとして示されるが、マニピュレータ10は、水ジェットツール48、カメラ、グリッパ、カッタ及びブラシを含む特定の用途に使用される多数のツールを操作するように設計される。ブラシツールは、腐食を軽減するために原子炉容器内部の所望の場所に複数の剛毛を当接させ、回転させるための回転ツールであるのが好ましいが、マニピュレータと組み合わせて他のブラシ構成が使用されてもよい。そのようなツールは、所定の用途に合わせて所定のツールを運動させるのに適する1つ以上の回転継手及び/又はピボット継手に装着され、原子炉容器内部で所定の保守作業を行うのに必要な運動を実行するために電気、空気圧及び/又は油圧により制御可能である。更に、ツールは核放射環境の中で水中動作可能である。
【0024】
前述のように、図3及び図6は、応力腐食割れを軽減するために溶接部に接近しブラッシングできるように原子炉容器から除去される部品に向けて超高圧水ジェットを放出するために使用可能な超高圧(「UHP」)水ジェット48を示す。図3及び図6に示されるように、水ジェット48は第3のピボット継手42に取り付けられる。更に、図3及び図6に示されるように、原子炉容器内部で除去されるべき装置に向けて水ジェット48からノズル49を介して噴き付けられる高圧水を供給するために、ホース46が水ジェット48に装着される。
【0025】
図6は、dP/SLCパイプ11の背後のクリップ及びシュラウド15を水ジェット48により放出される水を使用して除去するためにクリップ及びシュラウド15に接近するように原子炉容器ヘッドに装着されたマニピュレータ10を示した平面斜視図である。モノレールホイスト(図示せず)に装着された軸方向駆動部12により、マニピュレータ10は所定の場所に位置決めされる。モノレールホイストは、上下動により原子炉容器に対してマニピュレータ10を出し入れすると共に原子炉容器の中で回転する。図5は、原子炉容器のトップガイド19及び炉心支持板21を介して原子炉容器の中まで下降された状態のマニピュレータ10を示した平面図である。図2は、トップガイド19及び炉心支持板21を介して実行される挿入(及び取り出し)時の構成のマニピュレータ10を示す。図2に示されるように、この構成において、アーム20を取り付けフレーム22の中に位置決めするためにアーム20の部品である回転継手及びピボット継手のすべてがほぼ軸方向に整列された状態にあり、それによりマニピュレータ10の半径方向寸法を最小限にするように、展開自在のアーム20は位置決めされる。
【0026】
マニピュレータ10を原子炉容器の中の所望の場所に位置決めする場所までトップガイド19及び炉心支持板21を介してマニピュレータ10が下降された後、マニピュレータ10のベース27は原子炉容器の中の選択された1つの構成要素の上方に位置決めされる。従って、例えば図6は、原子炉容器の底部に配置された制御棒駆動機構ハウジング30(「CRDH」)の上方に位置決めされたベース27を示す。次に、ベース27を制御棒駆動機構ハウジング30にクランプするために、ベース27に設けられた複数のラッチ28が使用される。図7は、マニピュレータ10を所定の場所に保持するためにラッチ28によってCRDH30の最上部に展開位置で設置されたマニピュレータ10を示した部分横断面図である。マニピュレータ10がCRDH30にクランプされた時点で、アーム20は図3に示されるように展開され、その後、図6に示されるように、水ジェット48などのツールを何らかの作業を実行するための所望の位置まで更に移動するために、アーム20を形成するいくつかの回転継手及びピボット継手は遠隔操作される。図6に示されるように、水ジェット48は、水ジェット48から放出される水を使用してdP/SLCパイプ11の背後のクリップ及びシュラウド15を除去するためにクリップ及びシュラウド15に接近しつつある。
【0027】
ツール10から原子炉容器の最上部までケーブル(図示せず)が延出する。サーボからのフィードバックは、マニピュレータコントローラに位置情報を提供する。ビデオカメラ(図示せず)は、原子炉容器内部におけるツール10の位置の画像をオペレータに提供する。オペレータが操作するジョイスティックの動きをマニピュレータ10の運動に変換することによりオペレータを補助するヒューマンインタフェース(図示せず)を介して、オペレータはツールを制御する。
【0028】
図8及び図9は、特定の用途に合わせて操作するように設計されたマニピュレータ10の別のツールの2つの実施例を示す。従って、図8は、マニピュレータ10のアーム20と組み合わせて使用されてもよい把持のための1対のあご92を有するグリッパツール90の一実施例を示した斜視図である。図9は、マニピュレータ10のアーム20と組み合わせて使用されてもよい切断のための1対のあご96を有するカッタツール94の一実施例を示した斜視図である。
【0029】
現時点で最も実用的で好適な実施形態であると考えられるものに関連して本発明を説明したが、開示された実施形態に本発明が限定されてはならず、本発明は添付の特許請求の範囲の精神及び範囲に含まれる種々の変形及び同等の構成を包含することが意図されると理解すべきである。
【符号の説明】
【0030】
10 マニピュレータ
12 軸方向駆動部
14 駆動軸
16 線形軸受
18 第1の回転継手
20 展開自在のアーム
22 取り付けフレーム
24 上部プレート
26 ベースプレート
27 ベース
28 ラッチ
34 第1のピボット継手
36 第2のピボット継手
38 延長部材
40 第2の回転継手
42 第3のピボット継手
48 超高圧水ジェット
50 第1の可逆サーボ機構
52 第1の軸
56 第2の可逆サーボ
58 第3の可逆サーボ
62 第2の軸(ウォーム)
64 第1のウォーム歯車
68 第3の軸(ウォーム)
70 第2のウォーム歯車
74 第4の軸
76 第4の可逆サーボ
80 第5の可逆サーボ
82 第5の軸
90 グリッパツール
94 カッタツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉容器の遠隔場所に接近し且つ前記遠隔場所を保守するためのマニピュレータ(10)において、
フレーム(22)と、
前記フレームを回転させる軸方向駆動部(12)と、
前記フレーム(22)の中に取り付けられた展開自在のアーム(20)とを具備し、前記アーム(20)は、
前記軸方向駆動部(12)に装着された第1の回転継手(18)と、
前記第1の回転継手(18)と延長部材(38)の第1の端部との間に装着された第1のピボット継手(34)と、
前記延長部材(38)の第2の端部に装着された第2のピボット継手(36)と、
前記第2のピボット継手(36)に装着された第2の回転継手(40)と、
前記第2の回転継手(40)に装着された第3のピボット継手(42)と、
前記第3のピボット継手(42)に取り付けられたツール(48、90、94)とを具備するマニピュレータ(10)。
【請求項2】
前記フレーム(22)は上部プレート(24)と、前記マニピュレータ(10)を前記原子炉容器の種々の構成要素にクランプする複数のラッチ(28)を含むベース(27)に取り付けられたベースプレート(26)と、前記上部プレート(24)と前記ベースプレート(26)との間に延出する複数のロッド(32)とを含み、各ロッド(32)は、前記原子炉容器に前記マニピュレータ(10)を挿入し且つ前記原子炉容器から前記マニピュレータ(10)を取り出すために前記アーム(20)を前記フレーム(22)の中で伸縮させる直線寸法を有する請求項1記載のマニピュレータ(10)。
【請求項3】
線形軸受(16)を貫通して前記軸方向駆動部(12)から前記フレーム(22)まで延出する駆動軸(14)を更に具備する請求項1記載のマニピュレータ(10)。
【請求項4】
前記第1の回転継手(18)は第1のサーボ機構(50)を含み、第1の軸(52)は、前記第1のサーボ機構(50)から前記軸方向駆動部(12)に装着された駆動軸(14)まで延出する請求項1記載のマニピュレータ(10)。
【請求項5】
前記第1のピボット継手(34)及び前記第2のピボット継手(36)は、前記延長部材(38)の中に取り付けられた第2のサーボ機構(56)及び第3のサーボ機構(58)を含み、前記第2のサーボ機構(56)及び前記第3のサーボ機構(58)は、前記第1のピボット継手(34)及び前記第2のピボット継手(36)の各々の軸に固定装着された第1のウォーム歯車(64)及び第2のウォーム歯車(70)とそれぞれ係合し且つ前記第1のウォーム歯車(64)及び前記第2のウォーム歯車(70)をそれぞれ回転させる第1のウォーム(62)及び第2のウォーム(68)である第2の軸(62)及び第3の軸(68)を含む請求項4記載のマニピュレータ(10)。
【請求項6】
前記第2の回転継手(40)は、前記第3のピボット継手(42)に結合された第4の軸(74)を有する第4のサーボ機構(76)を含む請求項5記載のマニピュレータ(10)。
【請求項7】
前記第3のピボット継手(42)は、前記第3のピボット継手(42)の軸に固定装着された第3のウォーム歯車(70)と係合し且つ前記第3のウォーム歯車(70)を回転させる第3のウォーム(68)に結合された第5の軸(82)を有する第5のサーボ機構(80)を含む請求項6記載のマニピュレータ(10)。
【請求項8】
各サーボ機構(50、56、58、76、80)は電動機、油圧駆動装置及び空気圧駆動装置より成る群から選択された装置である請求項7記載のマニピュレータ(10)。
【請求項9】
各ピボット継手(34、36、42)は対応するウォーム歯車(64、70)に装着された対応する可逆サーボ機構(50、58、80)により運動され且つ各回転継手(18、40)は対応する可逆サーボ機構(50、76)により回転される請求項1記載のマニピュレータ(10)。
【請求項10】
前記ツールは水ジェット(48)、グリッパ(90)、カッタ(94)、ブラシ及びカメラより成る群から選択される請求項1記載のマニピュレータ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237213(P2010−237213A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76546(P2010−76546)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC