説明

原子炉格納容器

【課題】本発明は、座屈または剥離を防止し、工期短縮を図れる原子炉格納容器を提供することである。
【解決手段】本発明は、原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を内部に保持する鋼板コンクリート構造の鋼板コンクリート構造物とを有する原子炉格納容器において、前記鋼板コンクリート構造物は、前記鋼板コンクリート構造物の外部側面に配置された外側円筒鋼板と、内部側面に配置された内側円筒鋼板と、前記外側円筒鋼板と内側円筒鋼板との間に打設されたコンクリートとを有し、前記外側円筒鋼板には複数のスタッドが、前記内側円筒鋼板には複数のライナアンカが、それぞれ対向するように設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器に係り、特に原子炉格納容器の鋼板コンクリート構造(以下、単に鋼板コンクリート構造という)に関する。
【背景技術】
【0002】
改良型沸騰水型原子炉(ABWR)において、現在鉄筋コンクリート構造(RC構造)製の格納容器を採用している。RC構造では、鋼製ライナー外面に格子状に多数の鉄筋を組立て、鉄筋外側に枠板を設定し、コンクリートを打設して気密性を保持し、原子炉格納容器内での異常時の放射性物質の外部流出を防ぐ構造となっている。また、上記構造により想定される地震、圧力にも耐えられる構造となっている。
しかし、RC構造は、前記一連の作業は膨大であり、全体の原子炉建設工程に対する影響が大きい、工期短縮が大きな課題となる。
【0003】
近年では、上述のRC構造の課題にする解決策として、内側円筒鋼板と外側円筒鋼板の間にコンクリートを打設する鋼板コンクリート構造(SC構造)を適用した原子炉格納容器が提案されている(特許文献1、2)。鋼板コンクリート構造はRC構造と同等の気密性、耐震性、耐圧性を保持し、且つ、配筋作業等の作業省力化、工期短縮化を図れる構造となっている。
鋼板コンクリート構造を適用した原子炉格納容器では、内側円筒鋼板と外側円筒鋼板は強度部材として考えられている。しかし、原子炉格納容器内での異常時に発生する熱荷重や、発生熱によりコンクリートの含有水分が発生し、発生した蒸気が逃げ場を失い、内側円筒鋼板とコンクリートの接する面に背圧として影響し、座屈強度の低下や内側円筒鋼板とコンクリートとの剥離が生じる可能性があり課題となっている。
【0004】
鋼板コンクリート構造の座屈または剥離の防止を図るために、特許文献1は、内側円筒鋼板と外側円筒鋼板にスタッド、鋼棒、鉄板等の緊結(結合)部材を設けることが開示されている。なお、特許文献1に上記の鋼棒がどのようなものかに関する記載はない。一方、特許文献2は、内側円筒鋼板と外側円筒鋼板にアンカー部材(ライナアンカー)を設けたことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−249329号公報
【特許文献2】特開平 8−062370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にスタッドは、コンクリートとの結合度はライナアンカよりも低いが、工期短縮を図る上での作業性に優れている。逆に、ライナアンカは、コンクリートとの結合度は高いが、設置するための溶接線長が長いため工期が長くなる。従って、特許文献1の開示の方法は、工期短縮性に優れているが、座屈または剥離の防止の観点から課題が生じる虞がある。一方、特許文献2の開示の方法は、逆に座屈または剥離の防止の観点から優れているが、工期短縮性に課題が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためのもので、その目的は、座屈または剥離を防止し、工期短縮を図れる原子炉格納容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために少なくとも以下の特徴を有する。
【0009】
本発明は、原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を内部に保持する鋼板コンクリート構造の鋼板コンクリート構造物とを有する原子炉格納容器において、前記鋼板コンクリート構造物は、前記鋼板コンクリート構造物の外部側面に配置された外側円筒鋼板と、内部側面に配置された内側円筒鋼板と、前記外側円筒鋼板と内側円筒鋼板との間に打設されたコンクリートとを有し、前記外側円筒鋼板には複数のスタッドが、前記内側円筒鋼板には複数のライナアンカが、それぞれ対向するように設けられていることを第1の特徴とする。
【0010】
また、本発明は、第1の特徴において、前記複数のスタッド及び前記複数のライナアンカはそれぞれ等間隔で設けられていることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、座屈または剥離を防止し、工期短縮を図れる原子炉格納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である原子炉格納設備の横断面図である。
【図2】本発明の鋼板コンクリート構造物の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態である原子炉格納設備の横断面図である。これらの図に示す原子炉格納設備は、原子炉圧力容器1と、原子炉圧力容器1を保持する鋼板コンクリート構造物2と、鋼板コンクリート構造物2の上部に設けられた復水貯蔵プール3(3a,3b)と、鋼板コンクリート構造物2の外側に設けられた原子炉建屋4とを主に備えている。鋼板コンクリート構造物2は岩盤に設置されたマット5上に設置されている。
【0014】
原子炉圧力容器1は、核分裂によって発生する熱エネルギーで水を沸騰させて蒸気を発生させるもので、ドライヤ(蒸気乾燥器)とセパレータ(気水分離器)(ともに図示せず)等を内包している。原子炉圧力容器1にはタービン建屋(図示せず)と接続された主蒸気配管6が取り付けられており、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気は主蒸気配管6を介してタービン建屋に供給されている。
【0015】
鋼板コンクリート構造物2は、原子炉圧力容器1を内部に保持するもので、主に鋼板部50とコンクリート部56から成る鋼板コンクリート構造で形成される。
鋼板コンクリート構造物2の内部には、原子炉本体基礎7と、ダイアフラムフロア8が設けられている。原子炉本体基礎7は、原子炉圧力容器1を支持しており、マット5の上部に設けられている。ダイアフラムフロア8は、鋼板コンクリート構造物2の内部を上部ドライウェル9と下部ドライウェル10及び圧力抑制室11とに分割している。
【0016】
鋼板コンクリート構造物2の上部、すなわち原子炉圧力容器1と上部ドライウェル9の上方には、復水貯蔵プール3a,3bと、原子炉ウェル12等とが設けられている。鋼板コンクリート構造物2の上部は、これら複数のプール3及び原子炉ウェル12等によって全面覆われている。これら複数のプール3及び原子炉ウェル12等は、鋼板コンクリート構造物2を上方から押さえつける荷重として作用している。
【0017】
図2は本発明の特徴である鋼板コンクリート構造物2の一実施形態を示す図である。図1を参照しながら鋼板コンクリート構造物2の実施形態を説明する。
鋼板部50は、鋼板コンクリート構造物2の外部側面(原子炉格納容器4側)に配置された外側円筒鋼板52と、内部側面(原子炉圧力容器1側)に配置された原子炉格納容器を兼ねる内側円筒鋼板51とで構成されている。強度部材としてだけでなく、施工時にコンクリート部56を形成する型枠としても利用される。これにより型枠工事等の手間が削減されるので、鉄筋コンクリート構造(RC構造)を利用する場合と比較して建設工期の短縮を図ることができる。
【0018】
また、外側円筒鋼板52にはスタッド54が、内側円筒鋼板51にはライナアンカ53が、互いに対向した位置に、それぞれ所望の間隔をあけて設けられている。スタッド54とライナアンカ53とが、コンクリート部56のコンクリート(図面を分かり易くするために図示せず)と結合しており、鋼板コンクリート構造物2の強度を向上させている。
【0019】
内側円筒鋼板51の役目は、座屈防止ではなく、主としてコンクリート部56からの剥離防止及び放射線漏洩防止である。即ち、内側円筒鋼板53に座屈が発生しても、放射線の漏洩を防止し、コンクリート部56からの剥離を防止することが重要である。この剥離は、原子炉格納容器内での異常時の発生熱によるコンクリートの含有水分の蒸気により起こる。
内側円筒鋼板51の放射線漏洩防止という観点では、結合部材としてはスタッド54もライナアンカ53もその性能には差がない。従って、内側円筒鋼板51の結合部材としては座屈防止、工期短縮という観点からするとスタッドが有力であるが、本実施形態では、剥離防止の能力の高いライナアンカを用いる。
【0020】
一方、外側円筒鋼板52の温度条件は、内側円筒鋼板51に比べて厳しくなく、むしろ、通常の雰囲気温度程度である。即ち、原子炉格納容器内での異常時の発生熱による外側円筒鋼板52の剥離の心配はない。外側円筒鋼板52の役目は、内側円筒鋼板51が座屈したときに原子炉格納容器4としての機能を確保する、即ち座屈防止である。このような機能としてはライナアンカが適しているが、本実施形態では、工期短縮を重点に考えスタッド54を用いる。スタッドの座屈防止能力は、その個数を増やすことによって補う。
【0021】
以上説明した、本実施形態によれば、原子炉格納容器を兼ねる内側円筒鋼板51にライナアンカ53を、内側円筒鋼板52にスタッド54を設けることによって、座屈及び剥離を防止し、且つ工期短縮を図れる原子炉格納容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0022】
1:原子炉圧力容器 2:鋼板コンクリート構造物
3、3a、3b:復水貯蔵プール 4:原子炉建屋
5:マット 6:主蒸気配管
7:原子炉本体基礎 8:ダイアフラムフロア
9:上部ドライ炉ウェル 10:下部ドライウェル
11:圧力抑制室 12:原子炉ウェル
50:鋼板部 51:内側円筒鋼板
52:外側円筒鋼板 53:ライナアンカ
54:スタッド 56:コンクリート部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器と、前記原子炉圧力容器を内部に保持する鋼板コンクリート構造の鋼板コンクリート構造物とを有する原子炉格納容器において、
前記鋼板コンクリート構造物は、前記鋼板コンクリート構造物の外部側面に配置された外側円筒鋼板と、内部側面に配置された内側円筒鋼板と、前記外側円筒鋼板と内側円筒鋼板との間に打設されたコンクリートとを有し、前記外側円筒鋼板には複数のスタッドが、前記内側円筒鋼板には複数のライナアンカが、それぞれ対向するように設けられていることを特徴とする原子炉格納容器。
【請求項2】
前記複数のスタッド及び前記複数のライナアンカはそれぞれ等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の原子炉格納容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−63153(P2012−63153A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205458(P2010−205458)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)