説明

原子炉用金属燃料要素

【課題】 熱伝達媒体が無くても金属燃料体の熱を被覆管に良好に伝えることができるようにする。
【解決手段】 被覆管2と、この被覆管2内に充填された多数の粒状の金属燃料体1、および前記金属燃料体の間隙に充填された不活性ガスを備え、粒状の金属燃料体の焼結等によって隣り合うものの接触面積を増加させ、当該接触面を通じて行われる熱伝導によって前記金属燃料体の溶融を防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原子炉用金属燃料要素に関する。さらに詳しくは、本発明は、より多くの型式の原子炉やより多くの方式の再処理に適用可能とする原子炉用金属燃料要素に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ウラン合金等の金属燃料を使用した原子炉用金属燃料要素として、粒状に成型した多数の金属燃料体と液体ナトリウム等の熱伝達媒体を被覆管内に封入したものが知られている(尾形孝成、他、「粒子型金属燃料の概念」日本原子力学会1999年秋の大会、I53、1999年9月)。かかる金属燃料要素は、鋳造によって円柱形状に成型した金属燃料体を用いる金属燃料要素を改良したものであり、この円柱形状の金属燃料体を用いる金属燃料要素では液体ナトリウム等の熱伝達媒体を被覆管内に封入して金属燃料体の熱を被覆管に伝えるようにしていたので、同様に、粒状の金属燃料体を多数用いる金属燃料要素でも被覆管内に液体ナトリウム等の熱伝達媒体を封入していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、液体ナトリウム等の熱伝達媒体を封入した従来の金属燃料要素を、冷却材として例えば水を用いる原子炉に用いると、万一被覆管が破損した場合、ナトリウムと冷却材である水との間で化学反応を生じるため、この金属燃料要素は冷却材として水を用いる原子炉には適合しない。また、冷却材として鉛−ビスマス合金を用いる原子炉に用いると、万一被覆管が破損した場合、ナトリウムと冷却材である鉛−ビスマス合金との間で固体の化合物を形成する恐れがあるため、従来の金属燃料要素は冷却材として鉛−ビスマスを用いる原子炉には好適ではない。さらに、金属燃料を使用後に再処理する場合、ナトリウム等の熱伝達媒体の処理のために特別な工程や設備類が必要となるなどの不利益が生じる。
【0004】ところで、金属等の粒子同士を接触させて加熱すると、それらが溶融しなくても粒子同士が接合する焼結現象が起きることが知られている。焼結が生じると粒子同士の接触面積が増加する。このため、本願の発明者らは、被覆管に充填した多数の粒状の金属燃料体の焼結によって金属燃料粒子同士の接触面積を増加させることで金属燃料体から被覆管への熱の伝わりを実用上十分に確保できるのではないかと考え、その解析評価を行った。その結果、本願の発明者らは、被覆管内に液体ナトリウム等の熱伝達媒体を封入しておかなくても、粒状の金属燃料体同士の接触によって金属燃料体の熱を被覆管に伝えて金属燃料体の溶融を十分に防止できることを見い出すに至った。即ち、本願の発明者らは、上述の種々の不利益の源となるナトリウム等の熱伝達媒体を金属燃料要素から除外し、しかも金属燃料体で発生した熱を取り出しその溶融を防止するために、粒子同士の焼結現象を利用することを思いついた。
【0005】本発明は、より多くの型式の原子炉やより多くの方式の再処理に適用可能とするため、ナトリウム等の液体金属の熱伝達媒体が不要な原子炉用金属燃料要素を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために請求項1記載の原子炉用金属燃料要素は、被覆管と、この被覆管内に充填された多数の粒状の金属燃料体、および前記金属燃料体の間隙に充填された不活性ガスを備え、粒状の金属燃料体同士の焼結および燃焼による膨張によって隣り合うものの接触面積を増加させ、当該接触面を通じて行われる熱伝導によって前記金属燃料体の溶融を防止するものである。
【0007】被覆管内に充填された粒状の金属燃料体は、燃焼前には隣り合う金属燃料体に対して点接触またはそれに近い状態で接触している。そして、金属燃料要素が炉心に装荷され、原子炉の運転によって金属燃料体の温度が上昇すると、粒状の金属燃料体同士の接触部において、焼結現象が生じ、当該接触部の接触面積が増加する。これによって、金属燃料体で発生した熱は、主として粒状の金属燃料体自体を通じて、被覆管に良好に伝えられる。すなわち、焼結現象を利用することで、金属燃料体から被覆管に熱を伝える接触面積を増加させることができる。また、原子炉の運転によって金属燃料体が燃焼すると、核分裂生成ガスの生成等により金属燃料体の一粒一粒が膨張する、すなわちスウェリング現象が起こる。スウェリングも粒状の金属燃料体同士の接触面積の増大に寄与する。なお、金属燃料体の膨張による体積の増加分は金属燃料体の隙間で吸収し、あるいは金属燃料体の移動によって吸収するので、被覆管が破損することはない。
【0008】ここで、粒状の金属燃料体の隙間を含む被覆管内部は、ヘリウムやアルゴン等の不活性ガスで満たされる。したがって、金属燃料体の空気による酸化が防止される。なお、金属燃料要素の製造はアルゴンやヘリウム等の不活性ガス中で行われるため、被覆管内の金属燃料体の間隙を不活性ガスで満たすことは簡単である。
【0009】さらに、被覆管の内部に使用温度において液体となる熱伝達媒体がないため、請求項2の発明のように、ガスプレナムを金属燃料体の充填部分の下に配置することができる。この場合、金属燃料要素の下部は上部に比べて低温であるため、同じ体積のガスプレナムを金属燃料体の充填部分の上に配置する場合に比べて、ガスプレナムの圧力を下げることができ、より長い期間金属燃料要素が使用可能となる。また、ガスプレナムを金属燃料体の充填部分の下に配置する場合、同じ圧力となるガスプレナムを金属燃料体の充填部分の上に配置する場合に比べて、ガスプレナムの長さを短くすることができ、金属燃料要素全体の長さも短くすることができて、経済性の向上を図ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す実施の一形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】図1に本発明を適用した原子炉用金属燃料要素(以下、単に金属燃料要素という)の実施の一形態を示す。この金属燃料要素は、燃料用合金を粒状に成形した金属燃料体1を多数被覆管2内に充填して成る。なお、被覆管2は例えばスチール製であり、その上下両端が上部端栓3および下部端栓4を溶接することで閉塞されている。また、燃料体1を充填した領域と上部端栓3との間には核分裂生成ガスを溜めるガスプレナム5が設けられている。燃料体1の間の隙間およびガスプレナム5には、金属燃料要素の製造時には、例えばヘリウムを満たしておく。
【0012】なお、燃料用合金としては、例えばウランに必要に応じていくつかの元素(例えば、ジルコニウム、モリブデン等)を添加したウラン合金、プルトニウムに必要に応じていくつかの元素(例えば、ジルコニウム、モリブデン等)を添加したプルトニウム合金、ウラン合金にプルトニウムを添加した合金等がある。
【0013】燃焼前の金属燃料体1は、隣り合う金属燃料体1に対して点接触またはそれに近い状態で接触している。そして、金属燃料要素を炉心に装荷し、例えば、比較的低い出力で一定期間原子炉を運転して、すなわちプレコンディショニング運転を行って、金属燃料体1を燃焼させると、金属燃料体1の温度が上昇して、粒状の金属燃料体1同士の接触部において、焼結現象が生じ、当該接触部の接触面積が増加する。なお、金属燃料体1が燃焼すると、核分裂生成ガスの生成等により金属燃料体1の一粒一粒がスウェリングする。スウェリングも粒状の金属燃料体1同士の接触面積の増大に寄与する。これらによって、金属燃料体1で発生した熱は、主として粒状の金属燃料体1自体を通じて、被覆管2に良好に伝えられる。すなわち、焼結現象などを利用することで、金属燃料体1から被覆管2に熱を伝える接触面積を増加させることができる。一定期間のプレコンディショニング運転を行って、金属燃料体1から被覆管への熱伝達が良好となった後、原子炉を定格出力で運転する。ただし、原子炉の定格出力が十分に低く設定されている場合には、上述のようなプレコンディショニング運転の必要はない。
【0014】なお、実用上十分に長い期間金属燃料要素を原子炉内で使用する場合、金属燃料体のスウェリングを吸収する空間を確保するために、被覆管2内で金属燃料体1が存在する領域における金属燃料体1が占める体積割合を十分に低く設定する必要がある。この体積割合は、従来の円柱状の金属燃料体を用いる金属燃料要素の場合、85%より低い値が好ましいことが知られており、中でも75%の体積割合を有する金属燃料要素に対して最も多くの使用実績がある。本発明の金属燃料要素の場合においても、当該体積割合を75%程度としておくことにより、金属燃料体1のスウェリングによる体積の増加分は金属燃料体1の粒子の隙間で吸収され、あるいは金属燃料体1の移動によって吸収されると考えられるので、被覆管2が破損することはない。
【0015】この金属燃料要素では、ナトリウム等の原子炉内で放射化する熱伝達媒体が入っていないので、使用後に再処理する場合、それらを処理するための特別な工程や設備類が不要になる。また、放射性廃棄物の量を減らすことができる。これらのため、核燃料の再処理や放射性廃棄物の処理処分に要するコストを下げることができる。しかも、ナトリウム等の活性な熱伝達媒体を使用していないため、被覆管2の破損等による熱伝達媒体の漏洩等が生じることがなく、また、冷却材との相性等を考慮する必要もないので、より多くの型式の原子炉に適用することができる。
【0016】また、この金属燃料要素では、被覆管2内に異なる粒径の金属燃料体1を充填しているので、その配合割合を種々変えることで当該金属燃料体1の充填率を調節することができる。
【0017】さらに、金属燃料体1の間の隙間には、ヘリウム等の不活性ガスが充填されているので、金属燃料体1の酸化を防止することができる。
【0018】なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の説明では、金属燃料体1の間の隙間をヘリウムで充填する場合の金属燃料要素についてのものであるが、必ずしもヘリウムに限るものではなく、例えばアルゴン等のガスを使用しても良い。
【0019】また、上述の説明では、被覆管2をスチール製としているが、被覆管2の材質としてはスチールに限るものではなく、適用する原子炉の条件によっては、例えばジルコニウム合金やマグネシウム合金、アルミ合金等の使用も可能である。
【0020】さらに、上述の説明では、金属燃料体1として複数の粒径のものを使用していたが、単一の粒径の金属燃料体を使用しても良い。また、上述の説明では、被覆管2に充填する金属燃料体1を全て同じ燃料用合金から構成していたが、異なる燃料用合金で構成した金属燃料体を充填するようにしても良い。例えば、図2に示すように、ウラン−プルトニウム合金から成る金属燃料体1の上下に低濃縮ウラン合金からなるブランケット燃料としての金属燃料体7を充填するようにしてもよい。
【0021】また、上述の説明では、被覆管2内の下半部に金属燃料体1を充填し、その上の領域をガスプレナム5としていたが、図2に示すように、被覆管2内を仕切り板6によって上下に分割し、仕切り板6よりも上に金属燃料体1および金属燃料体7を充填し、仕切り板6よりも下、即ち金属燃料体1および金属燃料体7を充填した領域の下方にガスプレナム5を配置するようにしても良い。本発明の金属燃料要素では液体金属等の熱伝達媒体を不要にしているので、このようなガスプレナム5の配置が可能になる。原子炉の炉心では、通常、冷却材が下から上に向けて流れるため、冷却材の温度は上部より下部の方が低い。このため、比較的低温の位置にガスプレナム5が配置されることになり、同じ体積のガスプレナムを高温になる被覆管2の上部に配置する場合に比べて、ガスプレナム5内を低圧にすることができる。被覆管2内の圧力は核分裂生成ガスの発生により徐々に上昇するが、ガスプレナム5内の温度を低くしておくことでガスプレナム5内が高圧になるのを遅らせることができ、より長い期間にわたって金属燃料要素の使用が可能になる。また、温度の低い位置にガスプレナム5を配置することで、温度が高い位置にガスプレナムを配置する場合に比べて、その容積を小さくできる。このため、金属燃料要素の長さを短くすることができ、また、熱伝達媒体が不要であることとも相俟って、製造コストを下げることができる。また、金属燃料要素が短くなれば原子炉の小型化を図ることも可能となり、発電所の建設コストを下げて経済性の向上を図ることも可能になる。
【0022】なお、仕切り板6は、例えば、タングステン、モリブデン、ジルコニウム、バナジウム等の金属あるいはアルミナ、ジルコニア、イットリア等のセラミックから成る多孔質体で形成され、金属燃料体1および金属燃料体7で生成した核分裂生成ガスが仕切り板6を通じて移動可能となっている。
【0023】
【実施例】次に、金属燃料要素の実施例について説明するが、これらの実施例に限るものではないことは勿論である。
【0024】図2は、金属燃料体1および金属燃料体7を、外径が7.5mm、内径が6.5mmのスチール製の被覆管2に多数充填し、被覆管の上下を上部端栓3および下部端栓4によって閉じた場合の金属燃料要素である。金属燃料体1および金属燃料体7とガスプレナム5とは、仕切り板6によって仕切られている。ここで、金属燃料体1は、外径約1mmの球状に成形した劣化ウラン−プルトニウム−ジルコニウム合金と外径約0.1mmの球状に成型した劣化ウラン−プルトニウム−ジルコニウム合金とを、前者7、後者3の重量比で混合したものである。金属燃料体7は、外径約1mmの球状に成形したウラン−ジルコニウム合金と外径約0.1mmの球状に成型したウラン−ジルコニウム合金とを、前者7、後者3の重量比で混合したものである。ブランケット燃料である金属燃料体7は金属燃料体1の上下に配置する。金属燃料体1の間隙、金属燃料体7の間隙、およびガスプレナム5にはヘリウムを充填する。このような金属燃料要素を炉心に装荷した場合、金属燃料体1の単位体積あたりの発熱量は金属燃料体7の単位体積あたりの発熱量に比べて格段に大きいため、このような金属燃料要素において温度が最高となる場所は金属燃料体1において現れる。そこで、金属燃料体1の最高温度について検討した。
【0025】外径約1mmの球状に成形した粒子と外径約0.1mmの球状に成型した粒子とを、前者7、後者3の重量比で混合し、内径約8mmの円筒内に充填した場合、充填密度は長さ方向にほぼ一定で約75%となることが知られている(尾形孝成、他、「粒子型金属燃料の概念」日本原子力学会1999年秋の大会、I53、1999年9月)。したがって、図2の金属燃料要素においても、被覆管2内で金属燃料体1が存在する領域において、その領域の約75%を金属燃料体1が占め、残りの約25%はヘリウムガスが占めることとなると予測される。また、金属燃料体1の化学的組成がウラン75%、プルトニウム15%、ジルコニウム10%であって、金属燃料体1の粒子同士の焼結が全く生じていない場合、金属燃料体1の粒子を充填した領域の熱伝導率は約3ないし4W/m/Kとなることが本願の発明者らの計算によってわかった。したがって、炉心への装荷後、金属燃料要素1cm長さあたりの出力が150Wの条件でプレコンディショニング運転を開始すると、冷却材の炉心入口における温度が約350℃とした場合、この時点における最高温度は約900℃となる。このような条件で燃焼を継続させると、金属燃料体1の粒子同士の焼結が進み、金属燃料体1の熱伝導率が向上して、最高温度が下がる。この最高温度の低下を補うように、徐々に燃料要素の出力を増加させると、プレコンディショニング運転の期間中の金属燃料体1の温度をほぼ一定に調整することができ、金属燃料体1の粒子同士の焼結を十分に進ませることができる。本願の発明者らの計算によれば、金属燃料体1の粒子同士の接触部分の直径が当該粒子の直径の10ないし30%程度となった領域の金属燃料体1の熱伝導率は約20ないし約21W/m/Kとなる。このような状況が達成された時点でプレコンディショニング運転を終了し、原子炉の定格出力運転を始める。この時点において、金属燃料体1の横断面の中で、中央部の約81%の面積では十分な焼結が進み、残りの約9%の最外周部分の面積では殆ど焼結が進まないと仮定し、原子炉の定格運転時にはこの金属燃料要素の1cm長さあたりの出力が約400Wとなる場合、金属燃料体1の最高温度は約950℃となる。一方、同燃料体が溶融し始める温度は約1150℃であるので、金属燃料体1は溶融に対して十分な余裕を持つと判断できる。
【0026】なお、原子炉の定格運転時の金属燃料要素1cm長さあたりの出力が比較的低い値、例えば150W程度に設定されるならば、上述のプレコンディショニング運転は必要ない。
【0027】また、上述の説明では、金属燃料体1の粒子のスウェリングによる当該粒子同士の接触面積の増加の効果を考慮していないが、これを考慮にいれた場合、金属燃料体1の粒子同士の接触を十分なものとするのに必要なプレコンディショニング運転の期間をより短く設定できることとなる。
【0028】さらに、本実施例においては、図2に示したように、仕切り板6の上に金属燃料体1および7を充填することで、金属燃料要素の下半部にガスプレナム5を配置している。仕切り板6は、金属燃料体1および7の粒子は通過できないが、金属燃料体1および7から発生する核分裂生成ガスは通過できる多孔質体であり、具体的にはタングステン、モリブデン、ジルコニウム、バナジウム等の金属あるいはアルミナ、ジルコニア、イットリア等のセラミックから成る多孔質体の使用が考えられる。本発明の金属燃料要素では液体ナトリウム等の熱伝達媒体を不要にしているので、このようなガスプレナム5の配置が可能となったものである。ガスプレナム5を金属燃料体1および7の下方に配置することで、ガスプレナム5を金属燃料体1および7の上方に配置した場合に比べて、原子炉の運転時のガスプレナム温度を約150℃低くできると考えられる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の原子炉用金属燃料要素では、被覆管と、この被覆管内に充填された多数の粒状の金属燃料体、および前記金属燃料体の間隙に充填された不活性ガスを備え、主に粒状の金属燃料体の焼結によって隣り合うものの接触面積を増加させて当該接触面を通じて行われる熱伝導によって金属燃料体で発生した熱を良好に取り出すことができるので、金属燃料体の溶融を防止することができる。このため、金属燃料体の熱を被覆管に伝える熱伝達媒体が不要になり、使用済燃料の再処理や放射性廃棄物の処理処分が容易になる。また、金属燃料の製造も容易になる。しかも、被覆管内にはナトリウム等の活性な熱伝達媒体を封入する必要がないので、被覆管の破損等による熱伝達媒体の漏洩等が生じることがなく、また、冷却材との相性等を考慮する必要もないため、より多くの型式の原子炉への使用が可能になる。
【0030】さらに、請求項2記載の原子炉用金属燃料要素では、金属燃料体を充填した領域の下方にガスプレナムを配置しているので、ガスプレナムの温度を低くすることができる。このため、ガスプレナムの低圧化、小容積化に適したレイアウトを実現することができ、金属燃料の長寿命化および金属燃料要素の小型化を図ることができる。この結果、金属燃料要素の製造コストを下げることができるとともに、原子炉をコンパクトなものにして原子力発電所の建設コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した金属燃料要素の実施形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明を適用した金属燃料要素の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 粒状の金属燃料体
2 被覆管
3 上部端栓
4 下部端栓
5 ガスプレナム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被覆管と、この被覆管内に充填された多数の粒状の金属燃料体、および前記金属燃料体の間隙に充填された不活性ガスを備え、主に粒状の金属燃料体の焼結によって隣り合うものの接触面積を増加させ、当該接触面を通じて行われる熱伝導によって前記金属燃料体の溶融を防止することを特徴とする原子炉用金属燃料要素。
【請求項2】 粒状の金属燃料体が充填された部分の下にガスプレナムを配置することを特徴とする請求項1記載の原子炉用金属燃料要素。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−131459(P2002−131459A)
【公開日】平成14年5月9日(2002.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−326058(P2000−326058)
【出願日】平成12年10月25日(2000.10.25)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)