説明

原料船配船計画装置及び原料船配船計画方法、並びにプログラム

【課題】滞船料の総額を抑えるための原料使用計画に基づく原料船の長期的な配船計画を立案する。
【解決手段】原料使用計画を原料使用計画登録機能2に登録すると共に、バース規模や荷役機器能力等を設備情報設定機能4に登録する。また、暫定的な配船計画を配船計画登録機能3に登録する。航海日程を変更する航海検討船を航海検討船設定機能10で設定し、変更が可能な許容期間を許容期間設定機能11で設定する。航海日程候補決定機能20では、許容期間内で航海日程を変更した配船計画を作成し、作成した配船計画の各々について設備情報設定機能4をもとに滞船料見積もり機能30で滞船料の総額を見積もり、滞船料の総額が少ない順に配船計画を決定する。次に、航海日程候補選択機能21で決定した配船計画から航海日程が大きく異なる配船計画を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料使用計画に基づく原料船の長期的な配船計画を立案するための原料船配船計画装置及び原料船配船計画方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等で使用される複数種類の原料は、1つまたは複数種類の原料を運搬する原料船により積み地(原料を搬入する場所)から揚げ地(原料を搬出する製鉄所等)へ運搬されて、原料使用計画に基づいて使用される。そこで、従来から、この原料使用計画に基づいて、原料船の運航についての長期的な原料船配船計画が作成される。そして、揚げ地においては、作成された原料船配船計画の揚げ地への原料船の到着予定に基づいて、バース、荷役機器、ヤード等を割り付ける原料荷役管理計画を作成される。また、揚げ地での原料の荷役においては、予め予想される原料船の停泊期間(即ち、揚げ地到着から荷揚げ完了までの期間)を契約期間として契約している。そして、実際にかかった揚げ地到着から荷揚げ完了までの期間が契約期間よりも長引いた場合に、滞船料が発生する。尚、実際にかかった揚げ地到着から荷揚げ完了までの期間が契約期間よりも短い場合には、早出料が戻ってくる。従って、ここでは、各原料船の滞船料から早出料を引いた値(滞船料−早出料)を滞船料の総額として定義する。この滞船料の総額は、できるだけ低減させたほうが好ましいが、原料船配船計画及び原料荷役管理計画の優劣に依存する。
【0003】
例えば、特許文献1には、適正在庫を確保するための輸送対象決定手段、輸送対象毎の輸送船を決定する適船選択手段、輸送船の積載率向上と入船タイミングを決定する輸送タイミング決定手段、等を用い、長期の原料輸送配船計画を立案する技術が記載されている。また、特許文献2には、長期間の原燃料運搬船の入港予定、着岸予定、原料入荷予定量、バースの接岸能力、並びに付設された荷役機器能力に基づいて、総滞船コスト(滞船料の総額)が最小となるような長期的な荷役作業スケジュールを編成する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−272402号公報
【特許文献2】特開平6−135565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、適正在庫の確保と輸送船の積載量向上を目的とした原料輸送船配船計画であり、滞船料に関して考慮された原料輸送船配船計画となっていない。また、特許文献2の技術は、他の原料船配船計画により予め定められた原燃料運搬船の入港予定を元にして滞船コストを抑えることを目的とした原燃料荷役管理方法であり、原燃料運搬船の入港予定の変更は考慮されていないため、揚げ地における原料運搬船の到着が集中する期間においては、総滞船コストがかさむのを防止することができない。
【0006】
本発明の目的は、滞船料の総額を抑えるための原料使用計画に基づく原料船の長期的な配船計画を立案することができる原料船配船計画装置及び原料船配船計画方法、並びにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明に係る原料船配船計画装置は、原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録手段と、前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定手段と、前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定手段と、各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もる滞船料見積もり手段と、前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて前記滞船料見積もり手段により滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る原料船配船計画方法は、原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録ステップと、前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定ステップと、前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定ステップと、前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて、各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るプログラムは、原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録手段、前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定手段、前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定手段、各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もる滞船料見積もり手段、前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて前記滞船料見積もり手段により滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0010】
これによると、原料使用計画を基に設定した許容期間の範囲で航海日程を変更していることから、原料使用計画を満たした上で滞船料の総額を最小とする順に航海日程を変更する対象とする原料船(航海検討船)の航海日程の候補を複数選択することができ、従って、滞船料を抑えた原料船配船計画を立案することができる。また、航海日程を変更する対象とする原料船(航海検討船)を複数設定することができ、原料船配船計画の立案の効率化を図ることができる。更に、各原料船について、配船計画(原料積載量、航海日程等)に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出しており、原料荷役管理計画も考慮した上で、滞船料の総額を抑えた原料船配船計画を立案することができる。尚、長期的とは、3ヶ月以上の期間を意味する。また、航海日程とは、例えば、積み地到着日程、積み地出航日程、揚げ地到着日程のいずれかの日程のことを意味する。ここで、積み地出航日程=積み地到着日程+標準荷積み期間、揚げ地到着日程=積み地出航日程+標準航海期間の関係がある。標準荷積み期間と標準航海期間はあらかじめ設定されているため、いずれか1つの日程を決定すると他の日程も決定する。
【0011】
ここで、本発明に係る原料船配船計画装置は、前記航海日程候補決定手段により決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択手段、を更に有して良い。
【0012】
また、本発明に係る原料船配船計画方法は、前記航海日程候補決定ステップにより決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択ステップ、を更に有して良い。
【0013】
また、本発明に係るプログラムは、前記航海日程候補決定手段により決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択手段、として更にコンピュータを機能させて良い。
【0014】
これによると、類似した航海日程の候補を排除して、滞船料の総額を抑えた原料船配船計画をより効率的に立案することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0016】
まず、本発明の実施形態に係る原料船配船計画装置の構成を、図1に基づいて説明する。図1は、原料船配船計画装置のブロック図である。
【0017】
図1に示すように、原料船配船計画装置1は、原料使用計画登録機能2、配船計画登録機能(配船計画登録手段)3、設備情報設定機能4、航海検討船設定機能(航海検討船設定手段)10、許容期間設定機能(許容期間設定手段)11、航海日程候補決定機能(航海日程候補決定手段)20、航海日程候補選択機能(航海日程候補選択手段)21、滞船料見積もり機能(滞船料見積もり手段)30、及び、原料船の傭船機能40を備えている。以下、原料船配船計画装置1が備える各機能について説明する。尚、本発明の実施形態に係るプログラムは、コンピュータを原料船配船計画装置1として機能させるものである。
【0018】
原料使用計画登録機能2は、製鉄所等での原料使用計画を、予め原料担当者(製鉄所等での原料使用計画の管理を担当する者)が設定するためのものである。また、設備情報設定機能4は、揚げ地の複数バースに対する各々のバースについてのバース規模、付設荷役機能能力等の設備情報を予め設定するためのものである。
【0019】
配船計画登録機能3は、原料使用計画登録機能2に基づいて傭船担当者(傭船即ち原料船の手配等の管理を担当する者)により予め暫定的に作成された配船計画を登録し、また、後述する原料船の傭船機能40で傭船担当者により決定された航海日程に基づいて変更された配船計画を登録するためのものである。この配船計画登録機能3に登録される配船計画は、傭船担当者が管理するものである。
【0020】
航海検討船設定機能10は、配船計画登録機能3の配船計画で登録した原料船の中から、航海日程を変更する対象となる原料船(航海検討船)を傭船担当者が設定するためのものである。設定する航海検討船は1隻でも良いし、複数隻でも良い。
【0021】
許容期間設定機能11は、航海検討船設定機能10で決定した航海検討船のそれぞれについて、変更することが可能な許容期間を原料担当者が設定するためのものである。ここで、許容期間として、例えば、配船計画登録機能3で予め暫定的に作成して登録した配船計画での航海検討船の航海日程を基に、航海検討船の航海日程が前後どの程度変更可能かを設定する。また、許容期間の単位は、日単位でも良いし、時間単位でも良い。
【0022】
航海日程候補決定機能20は、まず、航海検討船設定機能10で設定した航海検討船について、許容期間設定機能11で設定した許容期間の範囲で、配船計画登録機能3で登録した配船計画の航海日程を変更した複数の配船計画を生成する。ここで、許容期間の範囲での航海日程の変更による複数の配船計画の生成は、予め設定した単位(例えば、1日単位)で行う。尚、許容期間の範囲で航海日程を予め設定した単位で変更して生成した配船計画の数が膨大になる場合は、予め設定した数の配船計画となるように、許容期間の範囲で航海日程を予め設定した単位でランダムに変更して生成するようにしてもよい。そして、生成した複数の配船計画のそれぞれに基づいて、後述する滞船料見積もり機能30で見積もった全ての原料船について滞船料及び早出料から滞船料の総額を見積もる。最後に、生成した複数の配船計画の中から、滞船料の総額の少ない順から所定の数N(N>1)の配船計画を選び出し、選び出した所定の数の配船計画の航海日程を、航海検討船の航海日程の候補として決定する。
【0023】
航海日程候補選択機能21は、航海日程候補決定機能20で決定した所定の数Nの配船計画の航海検討船の航海日程の候補の中から、航海日程が互いに大きく異なる所定の数M(1<M<N)の配船計画の航海検討船の航海日程の候補を選択して、航海日程の候補を絞り込むためのものである。より詳細には、後述する原料船配船計画方法において説明する航海日程候補選択ステップ(図3)の手順と同様である。
【0024】
滞船料見積もり機能30は、航海日程候補決定機能20で生成した複数の配船計画のそれぞれに対して、設備情報設定機能4で設定した揚げ地の複数バースに対する各々のバースについてのバース規模、付設荷役機能能力等の設備情報に基づいて、各原料船の着岸バースを決定しつつ、各原料船の停泊期間を算出して滞船料及び早出料を計算し、全ての原料船の滞船料の合計から早出料の合計を差し引いて滞船料の総額を見積もるためのものである。ここで、各原料船の着岸バースの決定及び滞船料・早出料の計算は、従来技術により行う。従来技術は、滞船料の総額を少なくするように着岸バースを決定することのできる技術であることが望ましい。従来技術による方法の一例について、以下に説明する。まず、配船計画についての各原料船を、揚げ地到着日程の早い順に選択する。そして、選択した原料船を荷揚げ可能なバースの内の一つのバースに仮割付けし、当該選択した原料船以降の原料船をルールに基づいてバースに仮割付けし、仮割付した各々の原料船に対してバースの荷揚げ能力により算出した荷役作業時間から停泊期間(即ち、揚げ地到着日程から荷揚げ完了日程までの間)を求め、滞船料の総額を計算する。当該選択した原料船に対して荷揚げ可能なバースの中から最も滞船料の総額の少ないバースを荷揚げバースとして決定する。以上を揚げ地到着日程の早い順番に全ての原料船に対して実施する。
【0025】
原料船の傭船機能40は、航海日程候補選択機能21において絞り込まれた配船計画の航海検討船の航海日程の候補に基づいて、傭船担当者が全ての原料船の航海日程を決定するためのものである。決定した配船計画は、配船計画登録機能3に変更登録される。そして、傭船担当者は、決定した配船計画に基づいて船会社に対して手配を行う。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る原料船配船計画方法の手順を、図2及び図3に基づいて説明する。図2は、原料船配船計画方法のフローチャートである。図3は、原料配船計画方法の航海日程候補選択ステップのフローチャートである。
【0027】
まず、製鉄所等での原料使用計画を、予め原料担当者が設定する(ステップS1)。また、揚げ地の複数バースに対する各々のバースについてのバース規模、付設荷役機能能力等の設備情報を予め設定する(ステップS1)。次に、傭船担当者により予め暫定的に作成された配船計画を登録する(ステップS2:配船計画登録ステップ)。
【0028】
そして、ステップS2で登録した配船計画の原料船の中から、航海日程を変更する対象となる1または複数の原料船を航海検討船として傭船担当者が設定する(ステップS3:航海検討船設定ステップ)。また、ステップS3で決定した航海検討船のそれぞれについて、ステップS2で予め暫定的に作成して登録した配船計画での航海日程を変更することが可能な許容期間を原料担当者が設定する(ステップS4:許容期間設定ステップ)。ここで、許容期間として、例えば、ステップS3で決定した航海検討船のそれぞれについて、ステップS2で予め暫定的に作成して登録した配船計画での航海日程を基に、航海日程が前後どの程度変更可能かを設定する。尚、許容期間の単位は、日単位でも良いし、時間単位でも良い。
【0029】
次に、ステップS3で設定した航海検討船について、ステップS4で設定した許容期間の範囲で、ステップS2で登録した配船計画の航海日程を変更した複数の配船計画を生成する(ステップS5:航海日程候補決定ステップ)。ここで、許容期間の範囲での航海日程の変更による複数の配船計画の生成は、予め設定した単位(例えば、1日単位)で行う。尚、許容期間の範囲で航海日程を予め設定した単位で変更して生成した配船計画の数が膨大になる場合は、予め設定した数の配船計画となるように、許容期間の範囲で航海日程を予め設定した単位でランダムに変更して生成するようにしてもよい。
【0030】
そして、生成した複数の配船計画のそれぞれに基づいて、全ての原料船についての滞船料の総額を見積もる(ステップS6:航海日程候補決定ステップ)。より詳細には、ステップS5で生成した複数の配船計画のそれぞれに対して、ステップS1で設定した揚げ地の複数バースに対する各々のバースについてのバース規模、付設荷役機能能力等の設備情報に基づいて、各原料船の着岸バースを決定しつつ、各原料船の停泊期間を算出して滞船料を計算し、全ての原料船の滞船料の合計から早出料の合計を差し引いて滞船料の総額を見積もる。ここで、各原料船の着岸バースの決定及び滞船料・早出料の計算は、従来技術により行う。
【0031】
そして、ステップS5生成した複数の配船計画の中から、ステップS6で算出した滞船料の総額の少ない順から所定の数N(N>1)の配船計画を選び出し、選び出した所定の数の配船計画の航海日程を、航海検討船の航海日程の候補として決定する(ステップS7:航海日程候補決定ステップ)。
【0032】
次に、ステップS7で決定した所定の数Nの配船計画の航海検討船の航海日程の候補の中から、航海日程が互いに大きく異なる所定の数M(1<M<N)の配船計画の航海検討船の航海日程の候補を選択して、航海日程の候補を絞り込む(ステップS8:航海日程候補選択ステップ)。
【0033】
ここで、ステップS8(航海日程候補選択ステップ)について、図3に基づいて、より詳細に説明する。
【0034】
まず、ステップS7で決定して暫定的に策定された所定の数Nの配船計画(Nケース)の各々に対して、変更日程ベクトルXi=(Xi1,・・・,Xis,・・・,XiS)を計算する(ステップS81)。ここで、iは配船計画のケース番号(i=1〜N)に対応しており、sは航海検討船(s=1〜S)に対応している。変更日程ベクトルの各要素Xisは、ケースiの航海検討船sの航海日程と暫定的に策定されている配船計画の航海日程との差である。更に、ケースiとケースjの配船計画の変更日程ベクトル間の距離を次式のように定義する。
【0035】
【数1】

【0036】
数1の式で求まるケースiとケースjの距離の値が小さければケースiとケースjの配船計画は似ており、大きければケースiとケースjの配船計画が異なっていることになる。尚、Wsは航海検討船sに対する航海日程の差異に対する重みを表している。
【0037】
そして、以下により、Nケースの配船計画の中から、滞船料の総額が最も改善する(即ち、滞船料の総額が最も少ない)ケースを含め、航海日程が大きく異なる(即ち、変更日程ベクトル間の距離が大きい)多様なMケースの配船計画を順次選択する。即ち、配船計画の各ケースに対して選択した全てのケースとの距離を求め、この中で最も短い距離が最も長くなるケースを選択する手順を繰り返す。この手順(航海日程の候補を順次選択する手順)のロジックの概念図を図4に示す。図4に示すように、m番目の候補を求める場合には、配船計画の各ケースに対して(m−1)本の距離を求めることになる。ここで、NまたはMの値が大きくなると計算量が膨大となるため、下記の手順をとる。
【0038】
まず、Nケースの配船計画の各々(i=1〜N)に対して、距離評価値Ei=∞(十分に大きな値)を設定する(ステップS82)。
【0039】
選択ケースm=1とし(ステップS83)、Nケースの配船計画の中で滞船料が最も改善するケースを選択し、このケース番号をkとし、m番目の候補とする(ステップS84)。
【0040】
選択ケースmをm=m+1としてインクリメントする(ステップS85)。
【0041】
Nケースの配船計画の各々に(i=1〜N)対して、ケースkとの変更日程ベクトル間の距離を計算し、距離評価値Eiを次式のように更新する(ステップS86)。
【0042】
【数2】

【0043】
更新したEiの値が最も大きなケースiを選択し、このケース番号をkとし、m番目の候補とする(ステップS87)。
【0044】
そして、m=Mの場合(ステップS88:YES)に終了し、m<Mの場合(ステップS88:NO)はステップS85に戻る。
【0045】
以上により、ステップS7で決定した所定の数Nの配船計画の航海検討船の航海日程の候補の中から、航海日程が互いに大きく異なる所定の数M(1<M<N)の配船計画の航海検討船の航海日程の候補を選択して、航海日程の候補を絞り込む(ステップS8:航海日程候補選択ステップ)。
【0046】
そして、ステップS8において絞り込まれた配船計画の航海検討船の航海日程の候補に基づいて、傭船担当者が全ての原料船の航海日程を決定する。そして、傭船担当者は、決定した配船計画に基づいて船会社に対して手配を行う(ステップS9)。
【0047】
尚、原料船の航海日程の変更の必要性に応じて、ステップS9で決定した配船計画に基づいて、何度でも原料船配船計画方法の手順を行うことが可能である。
【0048】
本実施の形態に係る原料船配船計画装置及び原料船配船計画方法、並びにプログラムによると、原料使用計画を基に設定した許容期間の範囲で航海日程を変更していることから(原料船配船計画装置1が備える許容期間設定機能11及び原料船配船計画方法の許容期間設定ステップ(図2のステップS4))、原料使用計画を満たした上で、滞船料の総額を最小とする順に航海日程を変更する対象とする原料船(航海検討船)の航海日程の候補を複数選択することができる(原料船配船計画装置1が備える航海日程候補決定機能20及び原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のステップS5〜S7))。この結果、滞船料を抑えた原料船配船計画を立案することができる。また、航海日程を変更する対象とする原料船(航海検討船)を複数設定することができ(原料船配船計画装置1が備える航海検討船設定機能10及び原料船配船計画方法の航海検討船設定ステップ(図2のステップS3))、原料船配船計画の立案の効率化を図ることができる。更に、各原料船について、配船計画(原料積載量、航海日程等)に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出しており(原料船配船計画装置1が備える滞船料見積もり機能30及び原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のステップS6))、原料荷役管理計画も考慮した上で、滞船料を抑えた原料船配船計画を立案することができる。
【0049】
また、原料船配船計画装置1が備える航海日程候補選択機能21、及び、原料船配船計画方法の航海日程候補選択ステップ(図2のステップS8)により、類似した航海日程の候補を排除して、滞船料を抑えた原料船配船計画をより効率的に立案することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を超えない範囲において変更が可能である。
【0051】
本実施の形態では、原料船配船計画装置1が航海日程候補選択機能21を有しているが、有さなくても良い。即ち、原料船の傭船機能40において航海日程候補決定機能20で決定された航海日程の候補から航海日程を決定して良い。同様に、本実施の形態では、原料船配船計画方法が航海日程候補選択ステップ(図2のステップS8)を有しているが、有さなくても良い。即ち、航海日程候補選択ステップ(図2のステップS5〜S7)で決定された航海日程の候補から、原料船の傭船(図2のステップS9)を行って良い。
【実施例】
【0052】
次に、本実施形態に係る原料船配船計画装置1及び原料船配船計画方法、ならびにプログラムを用いた実施例について説明する。
【0053】
本実施例においては、3箇所の原料バースを持つ製鉄所に対する原料船配船計画を作成する。ここで、工場での原料使用計画をもとに7月から12月までの6ヶ月間の原料船配船計画が暫定的に策定されている。尚、工場での原料使用計画は、原料船配船計画装置1の原料使用計画登録機能2又は原料船配船計画方法の原料使用計画の登録ステップ(図2のS1)で登録される。そして、暫定的に策定された原料船配船計画は原料船配船計画装置1の配船計画登録機能3又は原料船配船計画方法の配船計画登録ステップ(図2のS2)で登録される。
【0054】
そして、この中の10月中旬の5隻の原料船(No34〜No38)を航海検討船として設定し、これらの航海検討船の航海日程として揚げ地到着日を決める。5隻の航海検討船(No34〜No38)は、原料船配船計画装置1の航海検討船設定機能10又は原料船配船計画方法の航海検討船設定ステップ(図2のS3)で設定する。
【0055】
原料船配船計画装置1の許容期間設定機能11又は原料船配船計画方法の許容期間設定ステップ(図2のS4)において、5隻の航海検討船の各々に対し、揚げ地到着日に対する許容期間として、単位を1日として±3日の許容日数(本実施例については航海日程の単位が日であるため許容期間を許容日数と表現する。)を設定する。図5に、航海検討船と許容期間とを設定する画面例を示す。図5に示すように、航海検討船の揚げ地到着日に対して±3日の許容日数の範囲で1日ごとに変更させるように設定されていることがわかる。尚、図5において、航海日程の候補として配船計画を出力するケース数が5ケースとして設定されていることがわかる。
【0056】
原料船配船計画装置1の航海日程候補決定機能20又は原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のS5)において、航海検討船5隻の各々に対し、設定された±3日の許容日数の範囲において、揚げ地到着日を1日単位で変更した配船計画を生成する。具体的には、1隻あたり、揚げ地到着日を変更しない場合も含めて7日あるため、5隻で75=16807ケースの配船計画を作成する。尚、計算時間がかかりすぎる場合には、許容日数の範囲で揚げ地到着日をランダムに振らせ、計算時間が許す範囲の数の配船計画を作成するようにしても良い。
【0057】
原料船配船計画装置1の滞船料見積もり機能30又は原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のS6)において、生成された全ての配船計画の滞船料の総額を算出する。そして、原料船配船計画装置1の航海日程候補決定機能20又は原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のS7)において、滞船料の総額が少ない上位5ケース(N=5)を求める。決定した上位N=5ケースを表1に示す。ここで、表1に示す滞船料の総額の単位は千円である。尚、滞船料の総額の計算は、上述したように従来技術によって行い、詳細な説明を省略する。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すように、予め策定した暫定的な原料船配船計画での滞船料の総額は63641千円であるのに対し、求まった上位5ケースは滞船料の総額が低減されていることがわかる。
【0060】
更に、原料船配船計画装置1の航海日程候補決定機能20又は原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のS5〜S7)において航海検討船5隻(S=5)の航海日程の候補として配船計画を出力するケース数を20ケース(N=20)として設定し、原料船配船計画装置1の航海日程候補選択機能21又は原料船配船計画方法の航海日程候補選択ステップ(図2のS8及び図3)において配船計画を5ケース(M=5)に選択する実施例について説明する。
【0061】
原料船配船計画装置1の航海日程候補選択機能21又は原料船配船計画方法の航海日程候補選択ステップ(図2のS8及び図3)においては、変更日ベクトル(本実施例については航海日程及び許容期間の単位が日であるため変更日程ベクトルを変更日ベクトルと表現する。)を、以下のように計算する。例えば、上述した表1におけるケース1(i=1)の先頭の原料船(s=1)は、予め策定した暫定的な原料船配船計画での揚げ地到着予定日が10月9日であり、揚げ地到着日の候補日が10月10日であるので、X11=−1(日)となる。同様に、以下の原料船に関してはX12=−3等となり、ケース1での変更日ベクトルは、X1=(−1、−3、2、3、3)となる。尚、滞船料の総額の計算は、上述したように従来技術によって行い、詳細な説明を省略する。
【0062】
そして、原料船配船計画装置1の航海日程候補選択機能21又は原料船配船計画方法の航海日程候補選択ステップ(図2のS8及び図3)に基づいて選択した上位M=5ケースを表2に示す。ここで、表2に示す滞船料の総額の単位は千円である。
【0063】
【表2】

【0064】
上述の表1では原料船No34とNo35の揚げ地到着日の候補日がばらついているものの、No36〜No38の揚げ地到着日の候補日がかなり固定化されているのに対し、表2ではNo36〜No38の揚げ地到着日の候補日のばらつきが大きく、また滞船料の総額の差異も少ないことがわかる。したがって、原料船配船計画装置1の航海日程候補決定機能20又は原料船配船計画方法の航海日程候補決定ステップ(図2のS5〜S7)において決定した配船計画を、原料船配船計画装置1の航海日程候補選択機能21又は原料船配船計画方法の航海日程候補選択ステップ(図2のS8及び図3)において選択して絞り込むことにより、滞船料の悪化が少なく、かつ多様化した揚げ地到着日の候補日が選択されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】原料船配船計画装置のブロック図である。
【図2】原料船配船計画方法のフローチャートである。
【図3】原料配船計画方法の航海日程候補選択ステップのフローチャートである。
【図4】航海日程の候補を順次選択するロジックの概念図を示す図である。
【図5】航海検討船とその許容期間とを設定する画面例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 原料船配船装置
3 配船計画登録機能(配船計画登録手段)
10 航海検討船設定機能(航海検討船設定手段)
11 許容期間設定機能(許容期間設定手段)
20 航海日程候補決定機能(航海日程候補決定手段)
21 航海日程候補選択機能(航海日程候補選択手段)
30 滞船料見積もり機能(滞船料見積もり手段)
S2 配船計画登録ステップ
S3 航海検討船設定ステップ
S4 許容期間設定ステップ
S5〜S7 航海日程候補決定ステップ
S8 航海日程候補選択ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録手段と、
前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定手段と、
前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定手段と、
各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もる滞船料見積もり手段と、
前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて前記滞船料見積もり手段により滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定手段と、
を有することを特徴とする原料船配船計画装置。
【請求項2】
前記航海日程候補決定手段により決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択手段、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の原料船配船計画装置。
【請求項3】
原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録ステップと、
前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定ステップと、
前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定ステップと、
前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて、各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定ステップと、
を有することを特徴とする原料船配船計画方法。
【請求項4】
前記航海日程候補決定ステップにより決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択ステップ、
を更に有することを特徴とする請求項3に記載の原料船配船計画方法。
【請求項5】
原料使用計画に基づいて、複数の原料船の少なくとも原料積載量、航海日程に関する長期的な情報を配船計画として登録する配船計画登録手段、
前記原料船の内、航海日程を変更する対象とする1または複数の原料船を航海検討船として設定する航海検討船設定手段、
前記航海検討船に対し、前記原料使用計画を考慮しつつ、前記配船計画で登録した航海日程からのずれの許容期間を設定する許容期間設定手段、
各原料船に対し、前記配船計画に関する情報と、揚げ地のバース規模及び敷設荷役機器の能力等の設備情報に基づいて、着岸バースを決定しつつ停泊期間を算出し、滞船料の総額を見積もる滞船料見積もり手段、
前記航海検討船の前記配船計画における航海日程を前記許容期間の範囲で変更し、変更した配船計画に基づいて前記滞船料見積もり手段により滞船料の総額を見積もり、前記滞船料の総額が少ない順に前記航海検討船の複数の航海日程の候補を決定する航海日程候補決定手段、
としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
前記航海日程候補決定手段により決定した複数の航海日程の候補の中から、互いに大きく異なる複数の航海日程を選択して航海日程の候補を絞り込む航海日程候補選択手段、
として更にコンピュータを機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−111387(P2006−111387A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299700(P2004−299700)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)