説明

厨房家具

【課題】厨房装置の調理台の上方に載置される吊戸棚に備えられる扉に於いて、コンロ調理器なから上昇する熱気などに対する耐久性が向上した厨房家具を提供する。
【解決手段】吊戸棚1に備えた扉11の下端部に、耐熱性材料で形成された扉カバー部材15が扉に接触して設けられ、扉11と扉カバー部材15の接触部分に、扉カバー部材15から扉11への伝熱を緩和する断熱部34が介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房装置の調理台の上方に設置される吊戸棚を備えた厨房家具に関する。
【背景技術】
【0002】
コンロ調理機器の安全性の向上にともない、コンロ調理機器の上方に設置されるレンジフードの天蓋までの高さを従来に比べ低くすることができるようになった。このことによって、調理時に発生する熱気、煙、湯気、油などを集めやすくなり、換気性能の向上が図られるばかりでなく、吊戸棚を従来に比べ低い位置まで下げることができるようになった。このため、吊戸棚の収納量を増大させることができ、また、使用者の手が吊戸棚に設けられた扉に届きやすくなり、吊戸棚の操作性が向上している。
【0003】
その一方で、吊戸棚は、設置高さが低くなったことから、調理時に熱気、煙、湯気、油などに晒されやすくなり、結露、汚れや熱などからの防護が、より一層望まれるようになっている。
【0004】
本出願人は、これまでに下記特許文献1に記載した厨房用キャビネットを提案している。この厨房用キャビネットでは、炊飯器などの蒸気放出機器類の載置されるカウンターと対向するキャビネット本体の下面側に、湿気遮蔽用のカバー材が、少なくともキャビネット本体の構成部材の木口を覆うようにして配設されている。このような厨房用キャビネットでは、キャビネット本体の構成部材の木口からの湿気吸収が湿気遮蔽用のカバー材によって阻止されるので、蒸気放出機器類から放出される蒸気によって、長年の使用において、構成部材の表面化粧板の変色、変質などの劣化が生じるのを抑制している。また、近年、吊戸棚の正面意匠性の向上を目的とし、しかも、扉に備えた取っ手を排除してコスト低減を図ることを目的とした吊戸棚も提供されている。この吊戸棚では、扉の下端の位置をキャビネットの底板の位置よりも低くし、扉の裏面に手を掛けることで、扉を開けることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−95634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、キャビネット本体の構成部材の一つである扉は、一般に、合板またはパーティクルボードなどの木質基材の表面に樹脂製の化粧シートが貼着されて形成されているため、コンロ調理機器から上昇する熱気および湯気による変形、変色などの劣化障害が必然となっている。特許文献1に記載したカバー材は、そのような熱気および湯気による扉の変形、変色、ひいては剥離などの劣化障害の抑制までを考慮されたものではなく、したがって、特許文献1に記載した厨房用キャビネット、すなわち、吊戸棚の扉の耐久性向上については改善の余地が見出される。
【0007】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、扉の耐久性が向上した厨房家具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の厨房家具は、厨房装置の調理台の上方に設置される吊戸棚を備えた厨房家具において、吊戸棚に備えた扉の下端部に、耐熱性材料で形成された扉カバー部材が扉に接触して設けられ、扉と扉カバー部材の接触部分に、扉カバー部材から扉への伝熱を緩和する断熱部が介在していることを特徴とする。
【0009】
この厨房家具においては、扉の下端が、吊戸棚の底板よりも下方まで延出されていることが好ましい。
【0010】
この厨房家具においては、扉カバー部材は、扉の裏面の下端部の一部または全部を覆う固定片を備えていることが好ましい。
【0011】
この厨房家具においては、扉カバー部材は、固定片において扉に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
この厨房家具においては、断熱部が空気層であることが好ましい。
【0013】
この厨房家具においては、扉カバー部材は、扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面に、扉の横幅方向に延びる溝が形成され、この溝によって空気層が形成されている断熱部が空気層であることが好ましい。
【0014】
この厨房家具においては、扉カバー部材は、扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面に突起が設けられ、この突起と扉の下端との接触により空気層が形成されていることが好ましい。
【0015】
この厨房家具においては、断熱部では、断熱材料の成形体が設けられ、扉カバー部材は、扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面と扉の下端との間に成形体が介在していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の厨房家具によれば、扉の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の厨房家具の一実施形態を厨房装置の全体として示した斜視図である。
【図2】図1に示した厨房家具における第1吊戸棚の扉を拡大して示した要部斜視図である。
【図3】図2に示した扉カバー部材を拡大して示した斜視図である。
【図4】図3に示した扉カバー部材の扉への取り付けをエンドキャップの取り付けとともに示した要部分解斜視図である。
【図5】図3に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部断面図である。
【図6】扉カバー部材と断熱部の別の形態を示した分解斜視図である。
【図7】図6に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部斜視図である。
【図8】図6に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の厨房家具の一実施形態を厨房装置の全体として示した斜視図である。
【0019】
厨房装置Aは、厨房室の壁に設置された吊戸棚1と、床に設置された調理台4および流し台5とから構成されている。調理台4および流し台5を合わせて単一のカウンター3で調理作業台2が形成されている。カウンター3の下方には複数のフロアキャビネット7が設けられ、フロアキャビネット7では、調理道具などの収納部が設けられ、扉8や引き出しによって物品の取り出しおよび収納が可能になっている。カウンター3の左端側には、調理台4において加熱調理機能を担う、電磁誘導加熱やガス燃焼などによるコンロ調理機器4aが設けられている。カウンター3の右端側には、流し台5の主機能を担うシンク5aおよび水栓6が設けられている。カウンター3において、コンロ調理機器4aとシンク5aの間が作業領域とされている。
【0020】
カウンター3の上方の壁面には、コンロ調理機器4aの上方に換気用のレンジフード9が設置され、レンジフード9の右側方には、吊戸棚1が、レンジフード9に隣接して設置されている。なお、図1に示した厨房装置Aでは、レンジフード9の右側方にのみ吊戸棚1が設置されているが、厨房装置では、レンジフードの左右両側方に吊戸棚が設置されることも通例である。
【0021】
吊戸棚1は、本体となり、物品収納部となるキャビネット10と、開閉自在な扉11とから構成されている。一般的な厨房装置では、複数のキャビネット10が左右方向に連ねて設置される。キャビネット10は、左右一対の側板12と、天板13と、底板14と、背板(図示なし)によって形成され、前面が開放された函体を有し、この函体と棚板(図示なし)とから構成されている。扉11は、ヒンジ(図示なし)を介してキャビネット10の側板12に回動自在に支持され、左右いずれかの方向への開き扉とされている。なお、扉11は、開き扉に限定されるものではなく、上下方向に開閉するはね上げ式のものとすることもできる。また、レンジフード9に隣接して配置された第1吊戸棚1aでは、扉11は、開放時に、レンジフード9における天蓋9aの部分と接触しないように、レンジフード9とは反対側に開くようにするのが通例である。さらに、第1吊戸棚1aに隣接し、レンジフード9とは反対側に連設された第2吊戸棚1bについては、その構造および扉11の開閉方向は、特に第1吊戸棚1aに限定されない。
【0022】
なお、本願において厨房家具とは、吊戸棚1とフロアキャビネット7を有し、その他の収納部や、カウンター3、コンロ調理機器4aおよびシンク5aの支持架台などを備えたものである。
【0023】
図2は、図1に示した厨房家具における第1吊戸棚の扉を拡大して示した要部斜視図である。
【0024】
図2に示したように、吊戸棚1では、いずれの扉11の下端も、キャビネット10の底板14の下方に位置し、扉11の下端がキャビネット10の底板14よりも下方まで延出されている、また、扉11の下端は、図1に示したように、レンジフード9の天蓋9aの下端と一直線上に配置されている。これによって、吊戸棚1の正面視は、レンジフード9と統一感のある外観意匠を呈している。また、吊戸棚1では、すべての扉11の下端部に後方から手を掛けて扉11を開けることができ、特に取っ手を設ける必要がなく、より一層吊戸棚1の正面の意匠性は良好なものとなっている。
【0025】
第1吊戸棚1aにおいて、底板14よりも下方まで延出された扉11の下端部には、図2にも示したように、レンジフード9の天蓋9aに隣接する部分に、扉11の横幅方向に延びる扉カバー部材15が設けられている。扉カバー部材15は、アルミニウムなどの金属材料や多孔質で耐熱性に優れたセラミックスなどの耐熱性材料を用いて押出成形されている。扉カバー部材15の左右両端部には、使用者の手指を鋭利な切断面から保護するためのエンドキャップ16が取り付けられている。
【0026】
図3は、図2に示した扉カバー部材を拡大して示した斜視図である。
【0027】
図3に示したように、扉カバー部材15は、正面側に縦幅の短い見切り片17と、背面側に、見切り片17に対向して配置された縦幅の長い固定片18と、見切り片17の下端と固定片18の下端を連結する連結片19とを備えている。固定片18では、上端から略直角に突出し、扉カバー部材15の正面側に向かうエッジ片20が設けられている。エッジ片20は、固定片18の横幅の全長にわたって延びている。また、固定片18では、エッジ片20の下方に横突片21が設けられ、横突片21は、エッジ片20と平行に配置され、扉カバー部材15の正面側に突出している。横突片21も、固定片18の横幅の全長にわたって延びている。横突片21の突出代はエッジ片20の突出代と同じとなっている。また、固定片18では、扉カバー部材15の左右両側において、エッジ片20と横突片21の間に、略円錐台形状の突起22が設けられている。突起22の突出代は、エッジ片20の突出代と同じであり、突起22の中央部には、扉カバー部材15を扉11に固定するためのネジ孔23が形成されている。連結片19では、その内底面から略垂直上方に立ち上がる縦突片24が3つ設けられている。縦突片24は、連結片19の横幅の全長にわたって延びており、互いに平行に配置されている。また、縦突片24の縦幅は、見切り片17の縦幅よりも短くなっている。このような縦突片24によって、連結片19の内底面には、見切り片17との間、隣り合う縦突片24同士の間、および固定片18との間に溝25が形成されている。
【0028】
図4は、図3に示した扉カバー部材の扉への取り付けをエンドキャップの取り付けとともに示した要部分解斜視図である。
【0029】
エンドキャップ16は、図4に示したように、扉カバー部材15の端面の外形形状と略同一な形状を有する部材である。エンドキャップ16は、見切り片17に対応する第1縦片27と、固定片18に対応する第2縦片28と、連結片19に対応する横片29とを備えている。第2縦片28からは、接続片30が第2縦片28に対して略垂直に設けられている。接続片30は、扉カバー部材15の左右の一端面から突起22に達するまでの長さを有している。接続片30の先端部には、ネジ26の挿入が可能とされた円形の挿入孔31が形成されている。横片29には、爪状の嵌合片32が2つ設けられている。2つの嵌合片32は、接続片30と同じ方向に延びており、それぞれの嵌合片32は、離間して配置され、扉カバー部材15の連結片19において隣り合う縦突片24同士の間に形成された溝25の一つと嵌合可能になっている。エンドキャップ16は樹脂材料を用いて射出成形されている。
【0030】
扉カバー部材15を扉11に取り付ける際には、まず、エンドキャップ16を扉カバー部材15の左右両端に仮止めする。すなわち、嵌合片32を縦突片24同士の間に形成された溝25に挿入し、嵌合させる。この嵌合によってエンドキャップ16は扉カバー部材15の左右両端に仮止めされる。このとき、接続片30の先端部に形成された挿入孔31は、固定片18に形成されたネジ孔23と一致する。次いで、扉カバー部材15の見切り片17と固定片18の間に扉11の下端部を挿入する。扉11の下端を縦突片24上に配置し、一方のエンドキャップ16の端面を扉11の側端面と一致させ、エッジ片20、横突片21および突起22を扉11の裏面に当接させる。この状態において、扉11の裏面側からネジ26を、ネジ孔23を通して正面側に向かってねじ込む。ネジ26のねじ込みによって扉カバー部材15が扉11の下端部に固定され、かつエンドキャップ16が扉カバー部材15の左右両端部に固定される。
【0031】
図5は、図3に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部断面図である。
【0032】
図5に示したように、吊戸棚1の第1吊戸棚1aにおいて、扉11の下端部に、耐熱材料から形成された扉カバー部材15が設けられ、扉カバー部材15は、扉11の下端と3つの縦突片24において接触している。このように扉11の下端と扉カバー部材15が接触する部分には、扉11の横幅方向に延びる溝25が形成されているので、溝25によって空気層33が形成される。また、扉カバー部材15は、扉11の裏面に、エッジ片20、横突片21および突起22において接触する。エッジ片20と突起22の間および突起22と横突片21の間には、溝25に類似する溝状の空間が形成されるので、これらの空間にも、空気層の形成が可能である。このような空気層33は、扉カバー部材15から扉11への伝熱を緩和する断熱部34を構成し、扉11と扉カバー部材15が接触する部分に介在する。このため、吊戸棚1の扉11の下端部は、耐久性が向上したものとなっている。特に、図1に示したレンジフード9の天蓋9aに隣接する扉11の部分は、調理時に発生して拡散する熱気、煙、湯気、油などに晒されやすいが、熱による影響を断熱部34が抑制する。また、熱による影響の抑制は、扉11の下端ばかりでなく、扉11の下端部の裏面まで可能である。しかも、縦突片24による溝25の形成は、扉カバー部材15の押出成形性を良好にし、肉盗みを兼ねることができ、一定の強度を保持しつつ扉カバー部材15の軽量化などを図ることができる。また、扉カバー部材15は、固定片18において、扉11にその裏側からネジ26によって取り付けられるので、扉カバー部材15の取り付け部分が見えにくく、吊戸棚1の外観は良好に保持される。さらに、扉カバー部材15の見切り片17は縦幅の短いものであるため、扉カバー部材15は目立ちにくく、扉カバー部材15の取り付けにともなう外観意匠性の低下は抑制される。
【0033】
以上の実施形態では、扉カバー部材15は、吊戸棚1において、レンジフード9の天蓋9aに隣接する第1吊戸棚1aの天蓋9aに近い部分のみに設けられているが、扉カバー部材15は、第1吊戸棚1aの扉11の横幅の全長にわたって設けることもできる。この場合、見切り片17がライン状に配置されるので、吊戸棚1の外観は良好に保持される。扉11は、一般に、合板またはパーティクルボードなどの木質基材の表面に樹脂製の化粧シートが貼着され、上下左右の木口に樹脂製の薄いエッジ材が貼着されて形成されている。扉カバー部材15を扉11の横幅の全長にわたって設けると、扉11の下端部が扉カバー部材15によって完全に覆われるため、扉11の下端の木口ではエッジ材を省略することができる。このため、扉11の形成が容易となり、コスト低減が図られる。しかも、図1に示した厨房装置Aのカウンター3における作業領域に炊飯器などの調理機器を置いて炊事作業をする場合にも、調理機器の使用にともなって発生する熱の影響を抑制することができる。
【0034】
また、扉カバー部材15の連結片19の内底面に設けられている縦突片24は、半球状などの形状を有する突起に替えることもできる。この場合、突起と扉11の下端との接触により、溝25による空気層33と同様な空気層が形成される。このため、扉カバー部材15から扉11への伝熱を緩和し、断熱部34が扉11と扉カバー部材15が接触する部分に介在する。
【0035】
図6は、扉カバー部材と断熱部の別の形態を示した分解斜視図である。
【0036】
図6に示したように、扉カバー部材36は、正面側に縦幅の短い見切り片37と、背面側に、見切り片37に対向して配置された縦幅の長い固定片38と、見切り片37の下端と固定片38の下端を連結する連結片39とを備えている。このような扉カバー部材36は、鋼板などの金属材料によってプレス成形されている。固定片38の左右両端部には、正面側に向かって斜め上方に延びる傾斜部40と、傾斜部40の上端から上方に延びる固定部41が設けられている。固定部41には、扉カバー部材36を図1に示した扉11に固定するためのネジ孔42が形成されている。連結片39には、左右両端から略垂直上方に立ち上がる囲い片43が設けられている。囲い片43の縦幅は、固定片38の縦幅よりも短く、また、囲い片43の横幅は、見切り片37と固定片38の間の距離よりも短くなっている。囲い片43と見切り片37および固定片38との間には隙間44が形成されている。また、連結片39の左右両端部には、それぞれ、その内底面から上方に突出する略半球状の突起45が、互いに離間して2つ設けられている。
【0037】
このような扉カバー部材36には、見切り片37、固定片38および囲い片43によって囲まれる内側の領域に、珪酸カルシウム、石膏、火山灰などの無機質粒状組成材料や、セラミック材料からなる断熱板46が設けられる。断熱板46は、断熱材料の成形体であり、突起45によって支持される。断熱板46は、横長の直方体状の形状を有している。扉カバー部材36は、見切り片37、固定片38および囲い片43によって囲まれる内側の領域に、断熱板46を収納した状態で扉11に取り付けられる。
【0038】
図7は、図6に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部斜視図である。図8は、図6に示した扉カバー部材が扉に取り付けられた状態を示した要部断面図である。
【0039】
図7および図8に示したように、吊戸棚1の第1吊戸棚1aにおいて、扉11の下端部に、耐熱材料から形成された扉カバー部材36が設けられ、扉カバー部材36は、扉11の裏面と2つの固定部41において当接している。図6に示した固定部41のネジ孔42を通してネジ26によって扉カバー部材36は扉11の下端部に固定されている。また、扉カバー部材36は、その一方の端面を扉11の側端面と一致させて配置させている。扉カバー部材36の内部では、扉11の下端が断熱板46に接触している。このように扉11の下端部と扉カバー部材36が接触する部分には、断熱板46が介在しているので、扉カバー部材36から扉11への断熱部34が構成されている。断熱部34を構成する断熱板46は、その組成によって難燃性をも有している。
【0040】
また、扉カバー部材36は、固定片38に傾斜部40が設けられ、連結片39に突起45が設けられているので、扉11の下端部との間に空間が形成され、この空間に空気層33の形成が可能である。空気層33も断熱部34の一部を構成し、扉11と扉カバー部材15が接触する部分に介在する。このため、吊戸棚1は、熱に晒されやすい扉11の耐久性がさらに向上したものとなっている。特に、図1に示したレンジフード9の天蓋9aに隣接する扉11の部分は、調理時に発生して拡散する熱気、煙、湯気、油などに晒されやすいが、熱による影響を断熱部34が抑制する。また、熱による影響の抑制は、扉11の下端ばかりでなく、扉11の下端部の裏面まで可能である。また、扉カバー部材36は、固定片38において、扉11にその裏側からネジ26によって取り付けられているので、扉カバー部材36の取り付け部分が見えにくく、吊戸棚1の外観は良好に保持される。
【0041】
なお、図5および図8に示したように、底板14をはじめとしてキャビネット10の側板12および天板13の正面側の木口にはパッキン35が設けられるので、扉11とキャビネット10の密閉性は良好に保持される。このため、調理時に発生する熱気、煙、湯気、油などがキャビネット10の内部に侵入するのも抑制される。また、パッキン35によって、吊戸棚1は、防塵および防虫性にも優れている。
【0042】
本発明は、以上の実施形態によって限定されるものではない。本発明は、調理台の上方において扉が開閉自在となるキャビネットを備えた厨房家具のすべてに適用される。また、厨房家具の形状、大きさおよび構造、扉の大きさおよび構造、また、扉カバー部材の形状、大きさ、材質、構成および構造などの細部については、様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 吊戸棚
4 調理台
11 扉
14 底板
15、36 扉カバー部材
18、38 固定片
25 溝
33 空気層
34 断熱部
46 成形体としての断熱板
A 厨房装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厨房装置の調理台の上方に設置される吊戸棚を備えた厨房家具において、前記吊戸棚に備えた扉の下端部に、耐熱性材料で形成された扉カバー部材が前記扉に接触して設けられ、前記扉と前記扉カバー部材の接触部分に、前記扉カバー部材から前記扉への伝熱を緩和する断熱部が介在していることを特徴とする厨房家具。
【請求項2】
前記扉の下端が、前記吊戸棚の底板よりも下方まで延出されていることを特徴とする請求項1に記載の厨房家具。
【請求項3】
前記扉カバー部材は、前記扉の裏面の下端部の一部または全部を覆う固定片を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の厨房家具。
【請求項4】
前記扉カバー部材は、前記固定片において前記扉に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の厨房家具。
【請求項5】
前記断熱部が空気層であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の厨房家具。
【請求項6】
前記扉カバー部材は、前記扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面に、前記扉の横幅方向に延びる溝が形成され、この溝によって前記空気層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の厨房家具。
【請求項7】
前記扉カバー部材は、前記扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面に突起が設けられ、この突起と前記扉の下端との接触により前記空気層が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の厨房家具。
【請求項8】
前記断熱部では、断熱材料の成形体が設けられ、前記扉カバー部材は、前記扉の下端に対向して配置される内底面を有し、この内底面と前記扉の下端との間に前記成形体が介在していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の厨房家具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85921(P2013−85921A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232475(P2011−232475)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】