説明

双ループアンテナ

【課題】広帯域化を実現することができる双ループアンテナを提供する。
【解決手段】一対のループ部2は、第1内辺素子21a、第1右辺素子21b、第1外辺素子21c及び第1左辺素子21dを用いてループ形成された第1ループ部21と、第2内辺素子22a、第2右辺素子22b、第2外辺素子22c及び第2左辺素子22dを用いて第1ループ部21の内周側でループ形成され、第1ループ部21の周長よりも短い周長を有する第2ループ部22とを備える。第1内辺素子21aの長手方向中途部と第2内辺素子22aの長手方向中途部とは、左右一対の連結素子23a,23bにより連結され、この各連結素子23a,23bの長手方向中途部に、給電線路4の外端部が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばFM帯とVHF−TV帯の放送電波を送信をする双ループアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば周波数帯域が90〜108MHzであるVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信する双ループアンテナとして、所定間隔を空けて配置された一対のループ素子(ループ部)を給電線路で接続し、この給電線路からループ素子に給電するものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−222923号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の双ループアンテナは、その周波数帯域を広くすることができないため、例えば、VHF−TV帯に隣接する周波数帯域(76〜90MHz)であるFM帯の送信アンテナとして共用することができない。この問題を解決するために、双ループアンテナに空中線共用装置と所望のFM送信周波数に整合する整合回路を別途取り付けることが考えられるが、この場合はコスト高になるとともに、整合回路を取り付けた際のVSWRの周波数特性を事前に予測することができない等の問題が生じるため、好ましくない。
【0005】
また、UHF帯用の送信アンテナのように、ループ素子を幅広の導体板で構成することにより広帯域化を図ることも考えられるが、VHF帯用の双ループアンテナのループ素子は外部に露出しているため、ループ素子における受風荷重が増大し、強度上好ましくない。
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、広帯域化を実現することができる双ループアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の双ループアンテナは、一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、前記ループ部は、左右方向に延びる第1内辺素子、当該第1内辺素子の右端部から外側に延びる第1右辺素子、当該第1右辺素子の外端部から左側に延びる第1外辺素子、及び当該第1外辺素子の左端部から内側に延びて前記第1内辺素子の左端部に接続される第1左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、左右方向に延びる第2内辺素子、当該第2内辺素子の右端部から外側に延びる第2右辺素子、当該第2右辺素子の外端部から左側に延びる第2外辺素子、及び当該第2外辺素子の左端部から内側に延びて前記第2内辺素子の左端部に接続される第2左辺素子を用いて前記第1ループ部の内周側でループ形成され、当該第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部と、前記第1内辺素子の長手方向中途部と前記第2内辺素子の長手方向中途部とを連結する左右一対の連結素子と、を備え、前記給電線路の外端部が、前記各連結素子の長手方向中途部に接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。また、給電部から延びる給電線路の外端部が、第1ループ部と第2ループ部とを連結する連結素子の長手方向中途部に接続されているため、双ループアンテナの周波数帯域の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0008】
(2)前記ループ部は、前記第2内辺素子の右端部と前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第1右側補強素子と、前記第2内辺素子の左端部と前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第1左側補強素子とをさらに備えていることが好ましい。
この場合、第1右側補強素子及び第1左側補強素子によって、ループ部全体の剛性を高めることができる。また、第1右側補強素子及び第1左側補強素子をループ素子の一部とする新たなループ部が形成されるため、この新たなループ部による共振作用が加わることによって、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0009】
(3)前記ループ部は、前記第2外辺素子の右端部と前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第2右側補強素子と、前記第2外辺素子の左端部と前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第2左側補強素子とをさらに備えていることが好ましい。
この場合、第2右側補強素子及び第2左側補強素子によって、ループ部の剛性をさらに高めることができる。また、第2右側補強素子及び第2左側補強素子をループ素子の一部とする新たなループ部が形成されるため、この新たなループ部による共振作用が加わることによって、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0010】
(4)前記給電部の高さは、前記ループ部の高さよりも高く設定されていることが好ましい。この場合、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0011】
(5)前記ループ部は、前記第1外辺素子と第1右辺素子との第1接続角部に近接する前記第1外辺素子の長手方向中途部と、前記第1接続角部に近接する前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第3右側補強素子と、前記第1外辺素子と第1左辺素子との第2接続角部に近接する前記第1外辺素子の長手方向中途部と、前記第2接続角部に近接する前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第3左側補強素子と、をさらに備えていることが好ましい。
この場合は、第3右側補強素子及び第3左側補強素子によって、ループ部の剛性をさらに高めることができる。
【0012】
(6)前記ループ部は、前記給電線路の外端部と前記各連結素子の長手方向中途部との接続部よりも内側において前記各連結素子同士を連結する第4補強素子ををさらに備えていることが好ましい。
この場合、第4補強素子によって、ループ部の剛性をさらに高めることができる。
【0013】
(7)前記第2右辺素子及び第2左辺素子は、それぞれ前記第2内辺素子及び第2外辺素子に対する接続位置を左右方向に調節可能とされていることが好ましい。
この場合、双ループアンテナの製造時に寸法誤差等が生じても、第2右辺素子及び第2左辺素子の接続位置を調節することにより、アンテナ性能に個体差が生じるのを抑制することができる。
【0014】
(8)前記双ループアンテナは、前記周波数帯域が、76〜108MHzであることが好ましい。この場合、単一の双ループアンテナを、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各ループ部は、周長が異なる第1ループ部及び第2ループ部によって二重ループを構成しているため、第1ループ部と第2ループ部との共振作用によって、双ループアンテナの広帯域化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る双ループアンテナの正面図である。
【図2】双ループアンテナの側面図である。
【図3】双ループアンテナの上側のループ部のみを示す正面図である。
【図4】上側のループ部の側面図である。
【図5】第1ループ部及び第2ループ部を示すループ部の概略正面図である。
【図6】(a)は第3ループ部を示すループ部の概略正面図であり、(b)は第4ループ部及び第5ループ部を示すループ部の概略正面図である。
【図7】本実施形態の双ループアンテナのVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【図8】従来の双ループアンテナのVSWRの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る双ループアンテナの正面図であり、図2は、双ループアンテナの側面図である。この双ループアンテナ1は、周波数帯域が76〜108MHzであるFM帯及びVHF−TV帯(1〜3ch)の放送電波を送信するものである。本実施形態では、双ループアンテナ1の偏波面は水平偏波であり、公称インピーダンスは50オームである。なお、前記偏波面は垂直偏波であってもよい。
【0018】
図1及び図2において、双ループアンテナ1は、上下方向に所定間隔を空けて配置された一対のループ部2と、両ループ部2間の中央部に配置された給電部3と、給電部3から上下の各ループ部2側である外側に向けて延びる一対の給電線路4と、ループ部2に対して所定間隔を空けて背面側に配置された反射板5と、この反射板5にループ部2を支持する支持器6とを備えている。なお、本明細書においては、給電部3から各ループ部2側に向かう方向を「外側」、ループ部2側から給電部3に向かう方向を「内側」として説明する。
【0019】
給電部3は、給電線路4を介してループ部2に電力を供給するものであり、図2に示すように、一端部が反射板5に取り付けられた棒状のトラップ31を有している。トラップ31は、例えばアルミニウム合金により形成されており、その高さH1は、ループ部2の高さH2よりも高く設定されている。
【0020】
給電線路4は、給電部3からループ部2に電力を供給するものであり、第1給電線路41と第2給電線路42とによって構成されている。
第1給電線路41は、例えばアルミニウム合金により直線状に形成された一対の金属板からなり、その一端部(内端部)は給電部3に固定されている。第1給電線路41の他端部(内端部)は、図1の正面視において、後述する左右一対の連結素子23a,23bの間に配置されている。
【0021】
第2給電線路42は、図3及び図4に示すように、例えばアルミニウム合金によりL字状に形成された一対の金属板からなり、第2給電線路42の上端部は第1給電線路41の他端部(外端部)にボルト11により固定されている。
【0022】
図1において、反射板5は、上下方向へ延びる複数の縦反射素子51と、左右方向へ水平に延びる複数の横反射素子52とにより、図1の正面視において矩形に形成されている。縦反射素子51及び横反射素子52は、例えばアルミニウム合金により形成されている。
【0023】
支持器6は、図1に示すように、各ループ部2の左右両側を支持する左右一対の内側支持器61と、各ループ部2の中央部よりもやや外側を支持する単体の外側支持器62とによって構成されている。
内側支持器61及び外側支持器62は、図2に示すように、例えばFRP(繊維強化プラスチック)により前後方向(図2の左右方向)へ水平に延びるように形成されており、一端部は反射板5に固定され、他端部にはループ部2の所定部が固定されている。
【0024】
一対のループ部2同士は、図1に示すように、給電部3の水平方向の中心線X1を挟んで線対称に形成されている。また、各ループ部2は、給電部3の上下方向の中心線X2を挟んで線対称に形成されている。したがって、本明細書では、上側のループ部2のみについて説明し、下側のループ部2については説明を省略する。
【0025】
図3は上側のループ部2のみを示す正面図であり、図4はそのループ部2の側面図である。また、図5は上側のループ部2の概略正面図である。図5において、ループ部2は、破線Aで示す第1ループ部21と、この第1ループ部21の内周側に配置された破線Bで示す第2ループ部22と、第1ループ部21の内側部と第2ループ部22の内側部とを連結する左右一対の連結素子23a,23bとを備えている。
【0026】
〔第1ループ部〕
図5において、第1ループ部21は、左右方向に延びる第1内辺素子21aと、この第1内辺素子21aの右端部から外側に延びる第1右辺素子21bと、この第1右辺素子21bの外端部から左側に延びる第1外辺素子21cと、この第1外辺素子21cの左端部から内側に延びて第1内辺素子21aの左端部に接続される第1左辺素子21dとによってループ形成されている。
【0027】
図3において、第1ループ部21の各素子21a〜21dは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されている。
第1内辺素子21aは、左右方向に所定の間隔を設けて配置された一対の平板部材21a1,21a2により構成されている。右側の平板部材21a1は、第1右辺素子21bと一体に形成され、左側の平板部材21a2は、第1左辺素子21dと一体に形成されている。
【0028】
第1右辺素子21b及び第1左辺素子21dは、第1内辺素子21aの各平板部材21a1,21a2に対して垂直に折り曲げ形成された平板部材からなり、各素子21b,21dの長手方向中途部は、内側支持器61の側面にそれぞれボルト13a,13bにより固定されている。
【0029】
第1外辺素子21cは、第1内辺素子21aに対して平行に配置されている。第1外辺素子21cの両端部は、内側に屈曲して第1右辺素子21b及び第1左辺素子21dの外端部にそれぞれボルト14a,14bにより固定されている。
【0030】
〔第2ループ部〕
図5において、第2ループ部22は、左右方向に延びる第2内辺素子22aと、この第2内辺素子22aの右端部から外側に延びる第2右辺素子22bと、この第2右辺素子22bの外端部から左側に延びる第2外辺素子22cと、この第2外辺素子22cの左端部から内側に延びて第2内辺素子22aの左端部に接続される第2左辺素子22dとによって第1ループ部21の内周側でループ形成されており、第1ループ部21の周長よりも短い周長を有している。
【0031】
図3において、第2ループ部22の各素子22a〜22dは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されている。
第2内辺素子22aは、左右方向に所定の間隔を設けて配置された一対の平板部材22a1,22a2により構成されている。
第2外辺素子22cは、第2内辺素子22aに対して平行に配置されており、その長手方向中央部は、一対のボルト15により外側支持器62に固定されている。
【0032】
第2右辺素子22bの両端部は、左側に屈曲して第2内辺素子22aの平板部材22a1及び第2外辺素子22cに、それぞれボルト16a,17aにより固定されている。平板部材22a1及び第2外辺素子22cには、前記ボルト16a,17aを挿通する長孔(図示省略)が左右方向に延びて形成されており、前記ボルト16a,17aによる締め付けを緩めることにより、第2右辺素子22bは、平板部材22a1及び第2外辺素子22cに対する接続位置を左右方向に調節可能とされている。本実施形態では、第2右辺素子22bを、右方向及び左方向にそれぞれ約10mmの長さ範囲内で調整することができるようになっている。なお、ボルト16a,17aが挿通される孔は、前記長孔に代えて、左右方向に複数の円孔を形成するようにしてもよい。
【0033】
第2左辺素子22dの両端部は、右側に屈曲して第2内辺素子22aの平板部材22a2及び第2外辺素子22cに、それぞれボルト16b,17bにより固定されている。平板部材22a2及び第2外辺素子22cには、前記ボルト16b,17bを挿通する長孔(図示省略)が左右方向に延びて形成されており、前記ボルト16b,17bによる締め付けを緩めることにより、第2左辺素子22dは、平板部材22a1及び第2外辺素子22cに対する接続位置を左右方向に調節可能とされている。本実施形態では、第2左辺素子22dを、右方向及び左方向にそれぞれ約10mmの長さ範囲内で調整することができるようになっている。なお、ボルト16b,17bが挿通される孔は、前記長孔に代えて、左右方向に複数の円孔を形成するようにしてもよい。
【0034】
〔連結素子〕
図3において、一対の連結素子23a,23bは、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、第1内辺素子21aの長手方向中途部と第2内辺素子22aの長手方向中途部とを連結している。
具体的には、右側の連結素子23aは、内端部が第1内辺素子21aの平板部材21a1の左端部にボルト18aにより固定され、外端部が第2内辺素子22aの平板部材22a1の左端部にボルト19aにより固定されている。左側の連結素子23bは、内端部が第1内辺素子21aの平板部材21a2の右端部にボルト18bにより固定され、外端部が第2内辺素子22aの平板部材22a2の右端部にボルト19bにより固定されている。
【0035】
一対の連結素子23a,23bの長手方向中央部よりもやや内側(長手方向中途部)には、給電線路4の外端部である第2給電線路42の端部が、ボルト12a,12bにより固定されている。これにより、各連結素子23a,23bにおけるボルト12a,12bよりも内側に位置する内側部23a1,23b1は、第1ループ部21に給電する給電素子として機能している。また、各連結素子23a,23bにおけるボルト12a,12bよりも外側に位置する外側部23a2,23b2は、第2ループ部22に給電する給電素子として機能している。
【0036】
〔補強素子〕
図3において、ループ部2は、その剛性を確保するために、複数の補強素子25〜28をさらに備えている。この複数の補強素子25〜28には、第1ループ部21及び第2ループ部22の左右両側を補強する第1補強素子25及び第2補強素子26と、第1ループ部21の外側角部を補強する第3補強素子27と、第1ループ部21及び第2ループ部22の内側を補強する第4補強素子28とが含まれている。
【0037】
第1〜第3補強素子25〜27は、例えばアルミニウム合金からなる金属板により形成されており、第4補強素子28は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)からなる平板部材により形成されている。
【0038】
第1補強素子25は、第2内辺素子22aの平板部材22a1の右端部と第1右辺素子21bの長手方向中途部である第1中途部21b1とを連結する第1右側補強素子25aと、第2内辺素子22aの平板部材22a2の左端部と第1左辺素子21dの長手方向中途部である第1中途部21d1とを連結する第1左側補強素子25bとによって構成されている。
【0039】
第1右側補強素子25aは、平板部材22a1と一体に形成されており、その長方向中途部は、内側支持器61にボルト71aにより固定されている。第1右側補強素子25aの右端部は、内側に屈曲して第1右辺素子21bにボルト72aにより固定されている。
【0040】
第1左側補強素子25bは、平板部材22a2と一体に形成されており、その長方向中途部は、内側支持器61にボルト71bにより固定されている。第1左側補強素子25bの左端部は、内側に屈曲して第1左辺素子21dにボルト72bにより固定されている。
【0041】
以上のように構成された第1補強素子25により、ループ部2には、図6(a)の破線Cで示す第3ループ部29aが形成される。すわなち、平板部材22a1(第2内辺素子22a),第1右側補強素子25a、第1右辺素子21b、第1外辺素子21c、第1左辺素子21d、第1左側補強素子25b、平板部材22a2(第2内辺素子22a)とによって、第3ループ部29aが形成される。
【0042】
図3において、第2補強素子26は、第2外辺素子22cの右端部と第1右辺素子21bの長手方向中途部である第1中途部21b2とを連結する第2右側補強素子26aと、第2外辺素子22cの左端部と第1左辺素子21dの長手方向中途部である第1中途部21d2とを連結する第2左側補強素子26bとによって構成されている。
【0043】
第2右側補強素子26aは、第2外辺素子22cと一体に形成されており、その右端部は、内側に屈曲して第1右辺素子21bにボルト73aにより固定されている。
第2左側補強素子26bは、第2外辺素子22cと一体に形成されており、その左端部は、内側に屈曲して第1左辺素子21dにボルト73bにより固定されている。
【0044】
以上のように構成された第2補強素子26により、ループ部2には、図6(b)の破線Dで示す第4ループ部29bが形成される。すわなち、平板部材21a1(第1内辺素子21a),第1右辺素子21b、第2右側補強素子26a、第2外辺素子22c、第2左側補強素子26b、第1左辺素子21d、平板部材21a2(第1内辺素子21a)とによって、第4ループ部29bが形成される。
【0045】
さらに、ループ部2には、図6(b)の破線Eで示す第5ループ部29cも形成される。すわなち、平板部材22a1(第2内辺素子22a),第1右側補強素子25a、第1右辺素子21b、第2右側補強素子26a、第2外辺素子22c、第2左側補強素子26b、第1左辺素子21d、第1左側補強素子25b、平板部材22a2(第2内辺素子22a)とによって、第5ループ部29cも形成される。
【0046】
図3において、第3補強素子27は、第1外辺素子21cと第1右辺素子21bとの第1接続角部F1の周辺を補強する第3右側補強素子27aと、第1外辺素子21cと第1左辺素子21dとの第2接続角部F2の周辺を補強する第3左側補強素子27bとによって構成されている。
【0047】
第3右側補強素子27aは、第1接続角部F1に近接する第1外辺素子21cの長手方向中途部である第1中途部21c1と、第1接続角部F1に近接する第1右辺素子21bの長手方向中途部である第3中途部21b3とを連結している。具体的には、第3右側補強素子27aの一端部は、第1外辺素子21cの第1中途部21c1にボルト74aにより固定されており、第3右側補強素子27aの他端部は、第1右辺素子21bの第3中途部21b3にボルト75aにより固定されている。そして、第3右側補強素子27aの中間部は、前記第1中途部21c1から第3中途部21b3に向けて右斜め内方に直線的に延びて形成されている。
【0048】
第3左側補強素子27bは、第2接続角部F2に近接する第1外辺素子21cの長手方向中途部である第2中途部21c2と、第2接続角部F2に近接する第1左辺素子21dの長手方向中途部である第3中途部21d3とを連結している。具体的には、第3左側補強素子27bの一端部は、第1外辺素子21cの第2中途部21c2にボルト74bにより固定されており、第3左側補強素子27bの他端部は、第1左辺素子21dの第3中途部21d3にボルト75bにより固定されている。そして、第3左側補強素子27bの中間部は、前記第2中途部21c2から第3中途部21d3に向けて左斜め内方に直線的に延びて形成されている。
【0049】
図3において、第4補強素子28は、給電線路4の外端部と各連結素子23a,23bの長手方向中途部とを接続する接続部であるボルト12a,12bよりも内側において、各連結素子23a,23b同士を連結している。具体的には、第4補強素子28は、給電線路4の第2給電線路42の内側に近接して、当該第2給電線路42と平行に左右方向に延びて形成されており、その左右両端部は、左右の連結素子23a,23bの内端部に、ボルト76a,76bにより固定されている。
【0050】
図7は、本実施形態の双ループアンテナ1のVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示すグラフである。また、図8は、従来のループアンテナのVSWRの周波数特性を示すグラフである。図7と図8とを比較すると、従来のループアンテナは、低周波数帯域においてVSWRが1.1よりも高い値を示しているのに対して、本実施形態の双ループアンテナ1は、周波数帯域(76〜108MHz)の全域に亘って、VSWRが1.1以下となる良好な周波数特性が得られている。これにより、本実施形態のループアンテナ1は、従来のループアンテナよりも広帯域において対応できることが分かる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る双ループアンテナ1によれば、各ループ部2は、周長が異なる第1ループ部21及び第2ループ部22によって二重ループを構成しているため、第1ループ部21と第2ループ部22との共振作用によって、双ループアンテナ1の広帯域化を実現することができる。また、給電部3から延びる給電線路4の外端部が、第1ループ部21と第2ループ部22とを連結する連結素子23a,23bの長手方向中途部に接続されているため、双ループアンテナ1の周波数帯域の全域であるFM帯(76〜90MHz)からVHF−TV帯(90〜108MHz)に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0052】
また、第2ループ部22の第2内辺素子22aと第1ループ部21の第1右辺素子21bとを第1右側補強素子25aにより連結し、第2ループ部22の第2内辺素子22aと第1ループ部21の第1左辺素子21dとを第1左側補強素子25bにより連結しているため、ループ部2全体の剛性を高めることができる。また、第1右側補強素子25a及び第1左側補強素子25bをループ素子の一部とする新たな第3ループ部29aが形成されるため、この第3ループ部29aによる共振作用が加わることによって、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0053】
また、第2ループ部22の第2外辺素子22cと第1ループ部21の第1右辺素子21bとを第2右側補強素子26aにより連結し、第2ループ部22の第2外辺素子22cと第1ループ部21の第1左辺素子21dとを第2左側補強素子26bにより連結しているため、ループ部2全体の剛性をさらに高めることができる。また、第2右側補強素子26a及び第2左側補強素子26bをループ素子の一部とする新たな第4ループ部29b及び第5ループ部29cが形成されるため、この第4ループ部29b及び第5ループ部29cによる共振作用が加わることによって、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0054】
また、給電部3の高さは、ループ部2の高さよりも高く設定されているため、さらに良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0055】
また、ループ部2は、第1外辺素子21cと第1右辺素子21bとの第1接続角部F1に近接する第3右側補強素子27aと、第1外辺素子21cと第1左辺素子21dとの第2接続角部F2に近接する第3左側補強素子27bとをさらに備えているため、ループ部2の剛性をさらに高めることができる。
【0056】
また、ループ部2は、給電線路4の外端部と各連結素子23a,23bの長手方向中途部との接続部(ボルト12a,12b)よりも内側において各連結素子23a,23b同士を連結する第4補強素子28をさらに備えているため、ループ部2の剛性をさらに高めることができる。
【0057】
また、第2ループ部22の第2右辺素子22b及び第2左辺素子22dは、それぞれ第2内辺素子22a及び第2外辺素子22cに対する接続位置を左右方向に調節可能とされているため、双ループアンテナ1の製造時に寸法誤差等が生じても、第2右辺素子22b及び第2左辺素子22dの前記接続位置を調節することにより、アンテナ性能に個体差が生じるのを抑制することができる。
【0058】
また、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしたので、単一の双ループアンテナ1を、相互に隣接する周波数帯域であるFM帯(76〜90MHz)及びVHF−TV帯(90〜108MHz)の送信アンテナとして共用することができる。さらに、双ループアンテナ1は、放送機の公称インピーダンスが50オームであるため、整合回路を用いることなくFM帯及びVHF−TV帯の全域に亘って良好なVSWRの周波数特性を得ることができる。
【0059】
[その他の変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0060】
例えば、上記各実施形態において、双ループアンテナ1の周波数帯域を76〜108MHzとしているが、その他の周波数帯域であってもよい。
また、第1内辺素子21aの平板部材21a1,21a2は、それぞれ第1右辺素子21b及び第1左辺素子21dと一体に形成されているが、別部材で形成されていてもよい。
【0061】
さらに、第1右側補強素子25a及び第1左側補強素子25bは、それぞれ第2内辺素子22aの平板部材22a1,22a2と一体に形成されているが、別部材で形成されていてもよい。
また、第2右側補強素子26a及び第2左側補強素子26bは、それぞれ第2外辺素子22cと一体に形成されているが、別部材で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 双ループアンテナ
2 ループ部
3 給電部
4 給電線路
12a ボルト(接続部)
12b ボルト(接続部)
21 第1ループ部
21a 第1内辺素子
21b 第1右辺素子
21c 第1外辺素子
21d 第1左辺素子
22 第2ループ部
22a 第2内辺素子
22b 第2右辺素子
22c 第2外辺素子
22d 第2左辺素子
23a 連結素子
23b 連結素子
25a 第1右側補強素子
25b 第1左側補強素子
26a 第2右側補強素子
26b 第2左側補強素子
27a 第3右側補強素子
27b 第3左側補強素子
28 第4補強素子
F1 第1接続角部
F2 第2接続角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のループ部と、両ループ部間に配置された給電部と、この給電部から前記各ループ部側である外側に向けて延びる一対の給電線路とを備え、所望の周波数帯域の電波を送信する双ループアンテナであって、
前記ループ部は、左右方向に延びる第1内辺素子、当該第1内辺素子の右端部から外側に延びる第1右辺素子、当該第1右辺素子の外端部から左側に延びる第1外辺素子、及び当該第1外辺素子の左端部から内側に延びて前記第1内辺素子の左端部に接続される第1左辺素子を用いてループ形成された第1ループ部と、
左右方向に延びる第2内辺素子、当該第2内辺素子の右端部から外側に延びる第2右辺素子、当該第2右辺素子の外端部から左側に延びる第2外辺素子、及び当該第2外辺素子の左端部から内側に延びて前記第2内辺素子の左端部に接続される第2左辺素子を用いて前記第1ループ部の内周側でループ形成され、当該第1ループ部の周長よりも短い周長を有する第2ループ部と、
前記第1内辺素子の長手方向中途部と前記第2内辺素子の長手方向中途部とを連結する左右一対の連結素子と、を備え、
前記給電線路の外端部が、前記各連結素子の長手方向中途部に接続されていることを特徴とする双ループアンテナ。
【請求項2】
前記ループ部は、前記第2内辺素子の右端部と前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第1右側補強素子と、前記第2内辺素子の左端部と前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第1左側補強素子とをさらに備えている請求項1に記載の双ループアンテナ。
【請求項3】
前記ループ部は、前記第2外辺素子の右端部と前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第2右側補強素子と、前記第2外辺素子の左端部と前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第2左側補強素子とをさらに備えている請求項1又は2に記載の双ループアンテナ。
【請求項4】
前記給電部の高さは、前記ループ部の高さよりも高く設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項5】
前記ループ部は、前記第1外辺素子と第1右辺素子との第1接続角部に近接する前記第1外辺素子の長手方向中途部と、前記第1接続角部に近接する前記第1右辺素子の長手方向中途部とを連結する第3右側補強素子と、
前記第1外辺素子と第1左辺素子との第2接続角部に近接する前記第1外辺素子の長手方向中途部と、前記第2接続角部に近接する前記第1左辺素子の長手方向中途部とを連結する第3左側補強素子と、をさらに備えている請求項1〜4のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項6】
前記ループ部は、前記給電線路の外端部と前記各連結素子の長手方向中途部との接続部よりも内側において前記各連結素子同士を連結する第4補強素子ををさらに備えている請求項1〜5のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項7】
前記第2右辺素子及び第2左辺素子は、それぞれ前記第2内辺素子及び第2外辺素子に対する接続位置を左右方向に調節可能とされている請求項1〜6のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。
【請求項8】
前記周波数帯域が、76〜108MHzである請求項1〜7のいずれか一項に記載の双ループアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58983(P2013−58983A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197219(P2011−197219)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)