説明

反射膜を有する赤外線電球及びその製造方法

【課題】転写印刷方式によって作製された反射膜付きヒーターの反射層が、使用時間とともに薄くなって反射性能が低下するのを防止できる反射膜付き赤外線電球を提供すること。
【解決手段】本発明の反射膜付き赤外線電球は、石英ガラス或いは石英からなる物質或いは透明な材料からなる管の外側もしくは内側の少なくとも一部分に反射層を形成している。反射層は2つの層のアンダーコート層とオーバーコート層に挟まれているので、反射層の物質が高温で昇華するのが抑制され、長期間安定した反射性能を持つ照明器具及び反射膜付き赤外線電球を作製することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有するガラス等の透明な材料で作られた管の内側又は外側に反射膜が形成されている、反射膜付き赤外線電球及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線電球が発する熱あるいは照明器具が発する光を所望の方向に向けるために、熱や光を反射する反射膜を設けた赤外線電球や照明器具は従来から広く用いられている。このような反射膜は、曲面スクリーン印刷法、スパッタ法、転写印刷法などで赤外線電球及び照明器具に形成されていた。反射膜は、1層又は2層の反射層から構成されているものが多い。
図10は特許文献1に示されているハロゲン電球の断面図である。図において、ガラスバルブ50には、赤外線を反射する第1の赤外線反射膜51が全面に形成されている。第1の赤外線反射膜51の上には第2の赤外線反射膜52が形成されている。第2の赤外線反射膜52にはフィラメント54から発する光を外に出すための取出し窓53が設けられている。
図11は特許文献2に示されている赤外線放射器の断面図である。図において、外管60の上半分の外周には、反射層61が形成されており、その反射層61を覆うように保護被膜62が形成されている。内部には螺旋巻きフィラメント63が設けられている。赤外線は矢印64で示す方向に出る。
【特許文献1】特開平6−119915号公報
【特許文献2】特開2003−272803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図10に示すハロゲン電球及び図11に示す赤外線放射器におけるそれぞれの反射膜の形成方法には、曲面スクリーン印刷法、スパッタ法、転写印刷方式などがある。曲面スクリーン印刷法及びスパッタ法は、ともに設備が高価であることから製造コストが高い。また膜厚にバラツキがある。
比較的安価に反射層が作製できる転写印刷方式は、均一な厚みの膜を形成することができる。しかし転写印刷方式で形成した反射膜では、使用時間の経過とともに反射層を形成する物質が昇華し、これに伴って反射層が薄くなり反射性能が低下する。また反射層内で粒子が凝集して隠蔽性がなくなるなどの現象も生じる。さらに外管に直接反射層を形成するので、各々の熱膨張係数の差によってクラックが生じることもある。
本発明は、安定した反射性能を持つ反射膜付き赤外線電球及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の赤外線電球は、耐熱性を有する透明な材料からなる管の外側及び内側の少なくとも一方の所定部分に反射膜を形成した赤外線電球において、前記反射膜が、前記管に密着して形成されたアンダーコート層、前記アンダーコート層の上に形成された反射層、及び前記反射層を覆うように形成されたオーバーコート層を有することを特徴とする。
この発明によれば、赤外線電球の管の外側又は内側に形成する反射層を、アンダーコート層とオーバーコート層で挟んで密閉し外気に触れないようにしている。これにより反射層を形成する物質が昇華し、反射層が薄くなるのを防ぐことができる。
本発明の赤外線電球の製造方法は、耐熱性を有する透明な材料で管を作る工程、前記管の外側及び内側の少なくとも一方の所定部分にアンダーコート層を形成する工程、前記アンダーコート層の上に反射層を形成する工程、及び前記反射層の上に前記反射層を密閉するようにオーバーコート層を形成する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の反射膜付き赤外線電球は、高い反射効率を持つ反射膜を設けているので、効率の高い赤外線電球を提供することができるとともに、管の形状に関係なく安価に反射層を作製することができる。反射膜がアンダーコート層とオーバーコート層に挟まれているので反射層の昇華が抑制され、使用時間とともに反射層が薄くならない安定した反射性能を持つ反射膜付き赤外線電球を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の赤外線電球は、耐熱性を有するガラス、石英、結晶化ガラス、硬質ガラス等、石英を含む透明な材料からなる管の外側及び内側の少なくとも一方の所定部分に反射膜を形成している。前記反射膜はアンダーコート層とオーバーコート層に挟まれて形成されているため安定した反射性能を持つ反射膜付き赤外線電球を得ることができる。本発明の反射膜はアンダーコート層、反射層、オーバーコート層の少なくとも3層以上で形成されている。反射層は次に挙げる材料、Au、Ag、Pt、Rh、Pd、Os、Ru、Ir、Cu、Ni、Al、Cr及びそれらの合金、アルミナ、Ti化合物、Zr化合物、酸化スズ、ITO及びステンレス鋼、の少なくとも1種から形成される。反射層を形成するための焼付け温度は500℃以上である。
【0007】
反射膜が前記管の外側に形成される場合のアンダーコート層、及び内側に形成される場合のオーバーコート層は、透明或いは半透明のガラス、又はアルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質で形成される。前記管の外側に形成される場合の前記アンダーコート層の熱膨張係数は、前記管と反射層に近い値に選定する。また前記反射膜が前記管の内側に形成される場合の前記オーバーコート層の熱膨張係数は、前記アンダーコート層と反射層に近い値に選定する。これにより熱膨張の相違によって生じるクラックの発生を防ぐことができる。また、反射膜が前記管の内側に形成される場合のオーバーコート層は、反射層が全面ムラなくオーバーコートされていることで反射層材料の粒子の分散を防ぐことができる。これにより安定した反射性能を持つ反射膜付き赤外線電球を作製することができる。
【0008】
反射膜が前記管の外側に形成される場合のオーバーコート層、及び内側に形成される場合のアンダーコート層は、透明或いは半透明のガラス或いは不透明のガラス、アルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料、又はセラミックス或いは金属で形成される。その熱膨張係数は前記管の外側に形成される場合には、前記アンダーコート層と反射層に近い値に選定する。また前記反射膜が前記管の内側に形成される場合には、前記管と反射層との中間の値とする。これにより、熱膨張の相違によって生じるクラックを防ぐことができる。また、反射膜が前記管の外側に形成される場合のオーバーコート層は、反射層が全面ムラなくオーバーコートされていることで反射層材料の粒子の分散を防ぐことができ安定した反射性能を持つ反射膜付き赤外線電球を作製することができる。
【0009】
本発明の反射膜付き赤外線電球の好適な実施の形態を図1から図9を参照して説明する。
【0010】
以下に説明する本発明の各実施の形態においては、石英ガラス又は石英を含む物質による透明な材料で形成された管の外側又は内側に反射膜を形成している。管の形状は直管もしくは直管の一部に所定の曲率半径の局部を有するもの、もしくは環状のものでもよい。管の断面形状は、円形、楕円形、多角形又はこれらの形状の複合形状であってもよい。
《実施の形態1》
【0011】
本発明の実施の形態1の赤外線電球を図1から図7を参照して説明する。図1は、実施の形態1に用いる反射膜のない赤外線電球の側断面図である。
図において、石英ガラスの管2の中に、ヒーター材1が収納されている。ヒーター材1の両端にはそれぞれ端子3が設けられており、各端子3にはコイル状のリード線5が接続されている。コイル状リード線5は内部リード線4を経て、金属箔6の一端に接続されている。金属箔6の他端には外部リード線7が接続され管2の外部へ導出されている。管2は金属箔6を含む領域で密封されている。
【0012】
図2は図1の赤外線電球に反射膜を付けた反射膜付き赤外線電球の一部を破断した側面図である。図において管2の表面には、アンダーコート層12、反射層13及びオーバーコート層14が順次形成されている。
【0013】
図3は図1の赤外線電球の管2の長手方向に垂直な断面図である。図3に示すように、管2の中にはヒーター材1が封入されている。管2の表面にはアンダーコート層12、反射層13、オーバーコート層14が順次形成されている。ヒーター材1から出て反射層13に向かう矢印25aで示す熱放射(以下、熱放射25a)は、反射層13で反射されて熱放射25bとなりヒーター材1に当たって吸収される。この熱放射25bはヒーター材1の温度を上昇させる。このヒーター材1から開放面(反射層を有しない側面)に放射される熱放射26は外部へ放射される。
図4は図3の赤外線電球の製造工程概要を示す分解斜視図である。図において、ヒーター材1を有する管2の約半周の表面にアンダーコート層12、反射層13、オーバーコート層14がこの順序で形成される。ヒーター材1の外部接続の工程及び管2の両端の封止工程については周知のものであるので説明を省略する。
【0014】
本実施例の赤外線電球では、反射層3をアンダーコート層12及びオーバーコート層14で挟むことによって外気から遮断し、反射層13の昇華や凝集を防ぐことができる。昇華が起きると、時間とともに反射層23が薄くなるという現象を生じるが、本実施の形態1の赤外線電球では昇華が抑制され反射層13が薄くなるのを防止することができる。管2、アンダーコート層12、反射層13及びオーバーコート層14の膨張係数をほぼ等しく調整することにより、温度が変化しても各層にクラックが入ることはなく安定した反射特性を長時間維持できる反射膜付き赤外線電球を作製することができる。
【0015】
図5の(a)は、実施の形態1の反射膜付き赤外線電球の全周放射強度配光分布を示す図であり、図5の(b)は従来の反射膜付き赤外線電球の全周放射強度配光分布を示す図である。図5の(a)及び(b)において、0度の方向は、図3で反射膜のない矢印26で示す側でヒーター材1に垂直な方向であり、180度の方向は、矢印25aで示す側で、ヒーター材1に垂直な方向である。図5の(a)及び(b)において、各同心円に付された数値は、「放射強度比」を示す。放射強度比は、図5の(a)に示す全周放射強度配光分布の零度(赤外線電球前面:放射側)の放射強度を、180度(赤外線電球背面:反射層側)の放射強度で割った値である。図5の(a)及び(b)において点線は、赤外線電球に通電して使用を開始した直後の各方向における放射強度比を示す。図5の(a)の実線は1000時間使用後の各方向における放射強度比を示し、図5の(b)の実線は240時間使用後の各方向における放射強度比を示す。図5の(a)と図5の(b)との比較から明らかなように、図5の(a)に実線及び点線で示す本発明の反射膜付き赤外線電球の放射強度配光分布図では、図の上方の零度の方向で放射強度が最も高くなり、1000時間使用後においても点線で示すように零度方向で強度が最も高く、その値もわずかしか変わらない。従来の構造の反射膜付き赤外線電球の240時間使用後の特性は、反射層が薄くなることにより180°の方向、つまり反射層が形成されている方向で放射が大きくなっていることがわかる。これに対して、本発明の反射膜付き赤外線電球は、図5の(a)に実線で示すように、1000時間使用しても反射層側の透過はほとんど増加していない。
【0016】
図6は、本発明の反射膜付き赤外線電球と、従来の構造の反射膜付き赤外線電球との、放射強度比と経過時間の関係を示すグラフである。図6の縦軸は放射強度比を示し、横軸は使用時間を示す。各棒グラフの左側のものは本発明の反射膜付き赤外線電球のものであり、右側のハッチングを施したものは従来の反射膜付き赤外線電球のものである。図6からわかるように従来の構造の反射膜付き赤外線電球では、240時間使用すると、放射強度比が急激に低下していることがわかる。これに対して、本発明の反射膜付き赤外線電球では1000時間後でも放射強度比が高い値を示していることがわかる。
このように本発明の実施の形態1の反射膜付き赤外線電球は、従来の反射膜付き赤外線電球よりはるかに耐久性に優れ、長時間使用しても良好な反射性能を示す。
【0017】
以下に図4を参照して実施の形態1の反射膜付き赤外線電球の製造方法を詳細に説明する。
図において、長尺の石英管を所定の長さに切断して管2を作り、内外を有機溶剤を用いて洗浄する。次に管2の外面の、アンダーコート層12を形成する領域以外の面に耐熱テープ等を張り付けてマスキングをする。アンダーコート層12は、ガラス質の材料で形成され、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付け等のいずれかの方法によって作製される。ガラス質の材料とは、透明或いは半透明のガラス、又はアルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になる材料である。アンダーコート層12を形成した後マスキングをしたテープを取り外し、焼成炉に入れて例えば200〜600℃で仮焼成を行う。仮焼成後、700℃以上(好ましくは700〜1000℃)で本焼成を行う。管2とアンダーコート層12の熱膨張の差によって、アンダーコート層12にクラックが生じるのを防ぐため、アンダーコート層12の熱膨張係数は、管2と次に形成する反射層13のそれぞれの熱膨張係数の中間の値に選定されている。クラックを防ぐ他の方法としては、アンダーコート層12を複数の層で形成して、熱膨張係数の差を緩和して作製する方法もある。
【0018】
次に反射層13を形成する。反射層13は、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって形成される。反射層13は、アンダーコート層12と次に形成するオーバーコート層14で挟まれて密封される為、反射層13を形成する材料の粒子同士は結合が弱くても良い。そのため従来例の反射層よりも低い温度で形成することが可能である。形成した反射層13を、焼成炉を用いて例えば500℃以上(好ましくは500〜1000℃)に加熱し焼成を行う。反射層13は、Au、Ag、Pt、Rh、Pd、Os、Ru、Ir、Cu、Ni、Al、Cr及びそれらの合金、アルミナ、Ti化合物、Zr化合物、酸化スズ、ITO及びステンレス鋼の群から選択した少なくとも1種の材料で形成される。
【0019】
オーバーコート層14の形成工程では、アンダーコート層12と同様に、アンダーコート層12と反射層13が形成された管2に、アンダーコート層12とオーバーコート層14が重なるように耐熱テープを用いてマスキングを行う。オーバーコート層14は、透明或いは半透明のガラス或いは不透明なガラス、アルミナ等のような焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料、又はセラミックス或いは金属のような不透明な材料を用いる。これらの材料の転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によってオーバーコート層14を形成する。オーバーコート層14は、図3に示すようにアンダーコート層12との連続部分14aがあるように形成するのが好ましい。また反射層13がオーバーコート層14で全面ムラなくオーバーコートされているのがより好ましい。
【0020】
オーバーコート層14の形成後、マスキングをしたテープを取り外して焼成炉に入れ、例えば温度200〜600℃で仮焼成を行う。仮焼成後、反射層の焼成温度を超えない温度、例えば700〜1000℃で本焼成を行う。この時反射層13とオーバーコート層14の熱膨張の差によってクラックが生じるのを防ぐため、オーバーコート層14の熱膨張係数を、管2及び反射層13のそれぞれの熱膨張係数の中間の値に選定する。クラックを防ぐ他の方法としては、オーバーコート層14を複数の層で形成し熱膨張係数の差を緩和して作製することもできる。熱膨張係数の好ましい範囲は以下の通りである。例えば管2に石英管を用い、アンダーコート層にガラス質の材料、反射層に金膜、オーバーコート層にも同様にガラス質の材料を用いた場合、アンダーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7の範囲のものを用いることで最良の結果が得られた。この結果から選択する反射膜層の材料に対して、アンダーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7の範囲で作製することが可能である。
【0021】
前記のアンダーコート層12・反射層13・オーバーコート層14は全て管2の外面に形成しているが、図7に示すように管の内側にアンダーコート層22、反射層23、オーバーコート層24を順次形成してもよい。前記の製造方法では、アンダーコート層12、反射層13、オーバーコート層14をそれぞれ別々の工程で作製しているが、転写等により、2層もしくは3層を一体化したものを作製してもよい。例えば、アンダーコート層12と反射層13、反射層13とオーバーコート層14、のように2層を一体化したり、アンダーコート層12と反射層13及びオーバーコート層14を一体化して作製することも可能である。
【0022】
本発明の反射膜形成方法では、反射層13を、オーバーコート層14でオーバーコートすることによって反射層13を形成する材料の粒子の分散を防ぎ、時間とともに反射層が薄くなるのを防止して、長時間安定した反射性能を保つ反射膜付き赤外線電球を作製することができる。
《実施の形態2》
【0023】
本発明の実施の形態2の反射膜付き赤外線電球について図8を参照して説明する。
図8は実施の形態2の、図の紙面に垂直な方向に長い反射膜付き赤外線電球の紙面に平行な面の断面図である。図8において、管30は断面が楕円形の石英などの管である。管30の中には、楕円形の焦点の1つの位置にヒーター材31が設けられている。管30の外面には、アンダーコート層32、反射層33、オーバーコート層34が形成されている。本実施の形態2の反射膜付き赤外線電球が実施の形態1のものと異なる点は、管30の断面が楕円形であり、ヒーター材31の位置が管30の中心から離れた焦点の位置となっている点である。この構成により、実施の形態2の反射膜付き赤外線電球は図8に矢印35で示すように、図の右方向に向かう平行な放射を生じる。
【0024】
次に実施の形態2の反射膜付き赤外線電球の製造方法を以下に説明する。長尺の管の材料を管30の所定の長さに切断し、有機溶剤を用いて内外の洗浄を行う。洗浄した管30に、耐熱テープ等を用いてアンダーコート層32の形成位置を定めマスキングを行う。アンダーコート層32は、透明或いは半透明のガラス、又はアルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料を用い、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって形成される。アンダーコート層32形成後、マスキングをしたテープを取り外し、焼成炉に入れて、例えば200〜600℃で仮焼成を行う。仮焼成後、700℃以上(好ましくは700〜1000℃)で本焼成を行う。この時管30とアンダーコート層32のそれぞれの熱膨張の差によってアンダーコート層32にクラックが生じるのを防ぐために、アンダーコート層32の熱膨張係数を、管30と反射層33のそれぞれの熱膨張係数の中間の値となるように選定する。他の方法としては、アンダーコート層32を複数の層で形成し複数の層によって熱膨張係数の差を緩和して作製してもよい。
【0025】
次に反射層33をアンダーコート層32の上に形成する。反射層33は、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって作製される。反射層33は、アンダーコート層32とオーバーコート層34の間に挟まれて密封される為、反射層33を形成する粒子同士の結合が弱くても良い。その結果従来品よりも低い温度で形成することが可能である。反射層33を形成した管30を、焼成炉に入れ、500℃以上(好ましくは500〜1000℃)の温度で焼成を行う。オーバーコート層34もアンダーコート層32と同様に、アンダーコート層32と反射層33の上に、アンダーコート層32とオーバーコート層34が重なるように耐熱テープを用いてマスキングを行う。オーバーコート層34は、透明或いは半透明のガラス或いは不透明なガラス、アルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料、又はセラミックス或いは金属のような不透明な材料を用い、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって形成される。
【0026】
オーバーコート層34を形成した後、マスキングをしたテープを取り外して焼成炉に入れ、例えば200〜600℃の温度で仮焼成を行う。仮焼成後、反射層33の焼成温度を超えない温度、例えば700〜1000℃で焼成を行う。この時反射層33とオーバーコート層34の熱膨張の差によってクラックが生じるのを防ぐために、オーバーコート層34の熱膨張係数を、管30と反射層33のそれぞれの熱膨張係数の中間の値に選定する。他の方法としては、オーバーコート層34を複数の層で形成し、熱膨張係数の差を緩和しつつ作製してもよい。例えば管30に石英管を用い、アンダーコート層にガラス質の材料、反射層に金膜、オーバーコート層にも同様にガラス質の材料を用いた場合、アンダーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7の範囲のものを用いることで最良の結果が得られた。この結果から選択する反射膜層の材料に対して、アンダーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7の範囲で作製することが可能である。本実施の形態2の反射膜付き赤外線電球では、楕円の1つの焦点位置にヒーター材31を配置し、その焦点に近い楕円面に反射層33を設けているので、ヒーター材31から出る赤外線の大部分が矢印35で示すように右方へ平行に放射される。そのため右方への放射強度が極めて大きくなる。
《実施の形態3》
【0027】
本発明の実施の形態3の反射膜付き赤外線電球を図9を参照して説明する。
図9は、実施の形態3の反射膜付き赤外線電球の断面図である。図9において、石英ガラス等耐熱性を有するガラスを球状にした管球40は、ソケット41に取り付けられている。管球40内にフィラメント42が収納されている。管球40の外側面を取り囲むように、アンダーコート層43、反射層44及びオーバーコート層45が順次積層して形成されている。点灯時にフィラメント42から放射される光は、反射膜44により反射され、管球40の頂部40aから矢印46の方向に出る。反射膜44により反射されて矢印46の方向に出る光の強度は大幅に強くなる。
【0028】
以下に実施の形態3における反射膜付き赤外線電球の製造方法を説明する。耐熱性を有するガラスを球状に成形して管球40を作る。管球40の内外を有機溶剤を用いて洗浄する。洗浄した管球40の外面に耐熱テープ等を用いてマスキングを行い、アンダーコート層43を形成する。アンダーコート層43は、透明或いは半透明のガラス、又はアルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料を用い、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって形成される。
【0029】
アンダーコート層43を形成後、マスキングをしたテープを取り外し、管球40を焼成炉内に入れて、例えば200〜600℃で仮焼成を行う。仮焼成後700℃以上(好ましくは700〜1000℃)の温度で本焼成を行う。この時ガラスの管球40とアンダーコート層43の熱膨張の差によってアンダーコート層43にクラックが生じるのを防ぐため、アンダーコート層43の熱膨張係数が、石英ガラスと反射層44のそれぞれの熱膨張係数の中間の値になるようにする。他の方法としては、アンダーコート層43を複数の層で形成し、熱膨張係数の差を緩和しつつ作製してもよい。次に反射層44の形成を行う。反射層44は、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって作製される。反射層44は、アンダーコート層43とオーバーコート層45で挟まれて密封される為、反射層44を形成する粒子同士の結合が弱くても良い。その結果従来品よりも低い温度で形成することが可能である。
【0030】
反射層44を形成した管球40を焼成炉に入れ、例えば500℃以上(好ましくは500〜1000℃)の温度で焼成を行う。オーバーコート層45も、アンダーコート層43と同様に、アンダーコート層43と反射層44が形成された管球40にアンダーコート層43とオーバーコート層45が重なるように耐熱テープを用いてマスキングを行う。オーバーコート層45は、透明或いは半透明のガラス或いは不透明なガラス、アルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になるガラス質の材料、又はセラミックス或いは金属のような不透明な材料を用い、転写・印刷・ディップ・塗装・メッキ・CVD・PVD・焼付けのいずれかの方法によって作製される。オーバーコート層45を形成後、マスキングをしたテープを取り外し管球40を焼成炉に入れて、例えば200〜600℃の温度で仮焼成を行う。
【0031】
仮焼成後、反射層の焼成温度を超えない温度、例えば700〜1000℃で本焼成を行う。この時反射層44とオーバーコート層45の熱膨張の差によって生じるクラックを防ぐため、オーバーコート層45の、熱膨張係数を管球40と反射層44との中間の値に選定する。また、オーバーコート層45を複数の層で形成し熱膨張係数に傾斜をつけて作製してもよい。例えば管球40に石英管を用い、アンダーコート層にガラス質の材料、反射層に金膜、オーバーコート層にも同様にガラス質の材料を用いた場合、アンダーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は14×10-7〜46×10-7の範囲のものを用いることで最良の結果が得られた。この結果から選択する反射膜層の材料に対して、アンダーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7、オーバーコート層の熱膨張係数は11×10-7〜235×10-7の範囲で作製することが可能である。作製したアンダーコート層43・反射層44・オーバーコート層45は、管球40の一部に開口が形成されるように作製されている。本実施の形態3の赤外線電球は、フィラメント42から放射される光が管球40の側面を取り囲む反射層44により反射され、反射層44等のない頂部40aから出射する。そのため頂部40aから出る光の強度は大幅に大きくなり、光を狭い範囲に集中的に放射することができる。
本発明の前記実施の形態1から3の反射膜付き赤外線電球は、例えば加湿器の加熱装置、電気調理器の加熱装置、エアコンの加熱装置、電気暖房機の加熱装置、空気清浄機の加熱装置、トナー定着用などOA機器用の加熱装置、サウナの加熱装置、給湯機の加熱装置、電気治療器の加熱装置、乾燥機の加熱装置等に利用できる。
更には従来の反射膜付き赤外線電球のように、時間経過に伴い反射膜の反射層が昇華により薄くなり著しく反射効率が低下するという欠点が無く、高い反射効率を長時間維持できる加熱装置が実現可能となる。その結果、長寿命で高性能な前記機器類を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による反射膜付き赤外線電球は、高い反射効率と長寿命を必要とする赤外線電球に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1の、反射膜を付ける前の赤外線電球の側断面図
【図2】本発明の実施の形態1の反射膜付き赤外線電球の一部破断断面図
【図3】図2に示す反射膜付き赤外線電球の横断面図
【図4】図2の反射膜付き赤外線電球の要部の分解斜視図
【図5】(a)本発明の赤外線電球の全周放射強度配光分布のグラフ、(b)は従来の赤外線電球の全周放射強度配光分布のグラフ
【図6】放射強度比と経過時間の関係を示すグラフ
【図7】管の内側にアンダーコート層・反射層・オーバーコート層を形成した赤外線電球の例を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態2の反射膜付き赤外線電球の断面図
【図9】本発明の実施の形態3の反射膜付き赤外線電球の断面図
【図10】従来の技術のハロゲン電球の断面図
【図11】他の従来の技術の赤外線放射器の断面図
【符号の説明】
【0034】
1、21、31 ヒーター材
2、20、30 管
3 端子
4 内部リード線
5 コイル状リード線
6 箔
7 外部リード線
13、23、33、44 反射層
14、24、34、45 オーバーコート層
12、22、32、43 アンダーコート層
40 管球
41 ソケット
42、54 フィラメント
50 ガラスバルブ
51 赤外線反射膜
52 第2の赤外線反射膜層
53 光の取出し窓
60 外管
62 保護被膜
63 螺旋巻きフィラメント
64 光線放出軸線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性を有する透明な材料からなる管の外側及び内側の少なくとも一方の所定部分に反射膜を形成した赤外線電球において、前記反射膜が、前記管に密着して形成されたアンダーコート層、前記アンダーコート層の上に形成された反射層、及び前記反射層を覆うように形成されたオーバーコート層を有することを特徴とする反射膜付き赤外線電球。
【請求項2】
前記アンダーコート層、前記反射層、前記オーバーコート層を含む前記反射膜は少なくとも3層で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項3】
前記反射層は、Au、Ag、Pt、Rh、Pd、Os、Ru、Ir、Cu、Ni、Al、Cr及びこれらの合金、アルミナ、Ti化合物、Zr化合物、酸化スズ、ITO及びステンレス鋼の群から選択した少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項4】
前記反射膜は焼付け温度500℃以上で焼き付けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項5】
前記反射膜が、前記管の外側に形成される場合のアンダーコート層、及び管の内側に形成される場合のオーバーコート層が、透明或いは半透明のガラス、又はアルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になる材料から選択された少なくとも1種の材料で形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項6】
前記反射膜が、前記管の外側に形成される場合のオーバーコート層、及び管の内側に形成される場合のアンダーコート層が、透明或いは半透明のガラス或いは不透明のガラス、アルミナ等の焼き上がりが透明・半透明になる材料、又はセラミックス或いは金属のような不透明な材料から選択された少なくとも1種の材料で形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項7】
前記反射膜が前記管の外側に形成される場合のアンダーコート層の熱膨張係数を、前記管と反射層のそれぞれ熱膨張係数の中間の値とすることを特徴とする請求項5に記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項8】
前記反射膜が前記管の内側に形成される場合のアンダーコート層の熱膨張係数を、前記管と反射層のそれぞれの熱膨張係数の中間の値とすることを特徴とする請求項6に記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項9】
前記アンダーコート層が前記管と前記反射層との間に少なくとも1層形成されていることを特徴とする請求項1、2、5から8のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項10】
前記オーバーコート層は少なくとも1層形成されていることを特徴とする請求項1、2、5、6のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項11】
前記オーバーコート層は、前記アンダーコート層に接して前記反射層の全面を覆っていることを特徴とする請求項1、2、5から10、11のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項12】
前記反射膜を形成する前記管は直管もしくは直管の一部に所定の曲部を有する曲管もしくは環状の管であることを特徴とする請求項1、5、6、7、8、9のいずれかに記載の反射膜付き赤外線電球。
【請求項13】
耐熱性を有する透明な材料で管を作る工程、
前記管の外側及び内側の少なくとも一方の所定部分にアンダーコート層を形成する工程、
前記アンダーコート層の上に反射層を形成する工程、及び
前記反射層の上に前記反射層を密閉するようにオーバーコート層を形成する工程、
を有する赤外線電球の製造方法。
【請求項14】
管の外側の少なくとも一部分に反射膜が形成された赤外線電球において、アンダーコート層、反射層、オーバーコート層は、転写、印刷、ディップ、塗装、メッキ、CVD、PVD、焼付けのいずれかの方法によって作製されることを特徴とする請求項13に記載の反射膜付き赤外線電球の製造方法。
【請求項15】
前記アンダーコート層、反射層及びオーバーコート層において、2層もしくは3層が同時に作製されることを特徴とする請求項13又は14に記載の反射膜付き赤外線電球の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−302719(P2006−302719A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124329(P2005−124329)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)