説明

反応容器

【課題】製造が容易で、良好な熱伝導性を長期間に亘って維持することができる反応容器を提供する。
【解決手段】反応容器10は、PCR法を用いた検査に供される反応液を収容可能な複数の穴11が開設された合成樹脂製の収液部12と、収液部12より熱伝導率の高いアルミニウムで形成された伝熱部13と、を備え、収液部12と伝熱部13とが互いに密着した一体構造をなしている。伝熱部13は正方形状のアルミニウム板で形成され、その上面13a側(収液部12側)の辺縁に沿って突設された係止鍔部16と、上面13aと下面13bとを貫く複数の貫通孔14と、を備えている。収液部12は、伝熱部13の上面13a及び係止鍔部16を含む外周面を包囲した状態で一体成形されている。収液部12の下面12bは伝熱部13の上面13aに密着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分野、理化学分野あるいは遺伝子工学の分野などにおけるDNA増幅手段として実施されるポリメーラーゼ連鎖反応に供される反応容器に関する。
【背景技術】
【0002】
人間(ヒト)の全ての遺伝情報(ゲノム)であるヒトゲノムには約2万種類の遺伝情報が含まれていると考えられており、近年、そのヒトゲノムを解明しようとする研究も盛んに行われている。ヒトの体は約60兆個もの細胞からなり、その一つ一つの細胞には、遺伝子の本体であるDNAが存在している。DNAはあらゆる生命現象の根幹を成す分子であり、その中に記された情報を保存し、新たな個体に伝える遺伝の働きと、その情報をその個体の持つ形態や生理・機能上の特徴を決定する働きがある。
【0003】
最近の医療現場では、様々な遺伝子検査が行われるようになってきており、その検査結果は、細菌やウイルスなどに感染しているかどうか、遺伝病であるかどうか、あるいはガンなどの悪性腫瘍の診断やその悪性度を判断する手段として利用されている。また、ヒトゲノムの解明が進むことにより、ヒトゲノムの99.9%は共通であるが、残りの0.1%の違いに、環境、生活習慣の違いなどが加わり、所謂、個人差として現れることが分かってきた。
【0004】
さらに、このヒトゲノムの違いは、薬の利き具合や副作用の有無にも関係することも分かり、このヒトゲノムの違いを調べれば、その結果に応じて、各個人にあった薬を投与することができるようになるなどの成果が得られ、「オーダーメイド医療」または「テーラーメード医療」と称される、個人それぞれに適切な医療が可能になると期待されている。
【0005】
このような医療分野において、血液や身体の一部から採取した組織片などからDNAを抽出して検査する過程でPCR(ポリメーラーゼ連鎖反応)法という手法が用いられている。PCR法は、検査対象である特定のDNA領域を増幅する手段であり、2本鎖DNAが高温になると変成して1本鎖DNAに分かれ、冷却すると再び2本鎖DNAに戻る性質を利用している。PCR法においては、増幅対象であるDNAの温度の上昇下降を反復することにより、比較的短時間のうちに大量に特定のDNA領域を増幅することができる。
【0006】
具体的には、増幅対象であるDNAと、プライマーと、DNAポリメーラーゼと、DNA合成の素材である鋳型DNAと、バッファー溶液と、を混合して反応液を形成し、この反応液を94℃まで加温して1分間保持し、60℃まで冷却して30秒間保持し、再び72℃まで加温して30秒間保持する温度昇降サイクルを反復するという方法である。このような温度昇降サイクルをn回反復することにより、2本鎖DNAから特定のDNA領域を2のn乗倍に増幅することができる。
【0007】
PCR法を利用したDNA増幅装置において前述した検査を行う場合、その反応液を収容するために使用される反応容器として、マトリックス状に配置された複数の試料管同士がフランジ部を介して互いに連結されたもの(例えば、特許文献1参照。)、あるいは金属から成る容器の内壁全体に樹脂層を設けるとともに、前記容器の肉厚及び樹脂層の肉厚をそれぞれ所定の数値範囲としたもの(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0008】
また、前述した反応容器のほかに、アルミニウム製の平板材に反応液収容用の有底穴(直径約0.4mm、深さ約1mm)を約3万個開設し、これらの有底穴の内面に、薬品との反応を回避するための合成樹脂をコーティングして形成された反応容器も使用されている。
【0009】
この反応容器は、遺伝子検査を利用した治療方法を、病院において医者の診察・治療を受けた患者が、その帰りに薬を受け取るという一般的な治療パターンに近づけることを目的として開発されたものであり、従来は9ヶ月程かかっていた遺伝子検査の結果を数10分で得られるようにするために、従来の遺伝子検査装置に使用されていた96穴の反応容器を飛躍的に高密度化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−182929号公報
【特許文献2】特開平10−117765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1記載の反応容器は合成樹脂で形成されているため、熱伝導性が悪く、収容された反応液の温度を速やかに上昇、下降させることが困難である。
【0012】
特許文献2記載の反応容器は金属製容器の内壁全体に樹脂層を設けた構造であるため、使い始めの段階での熱伝導性は良好であるが、温度の上昇、下降が何度も反復されると、金属と合成樹脂との熱膨張率の違いにより、金属製容器と樹脂層とが剥離し、熱伝導性が徐々に悪化する。
【0013】
一方、前述したアルミニウム製の反応容器の場合、アルミニウム平板材に多数の有底穴を高い寸法精度で開設する必要があるため、その作業に多大な労力と時間が費やされている。また、アルミニウム平板材に有底穴を開設した後、有底穴の内面に合成樹脂をコーティングしなければならないので、製造工程が複雑となる。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、製造が容易で、良好な熱伝導性を長期間に亘って維持することができる反応容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の反応容器は、PCR法を用いた検査に供される反応液を収容可能な複数の穴が開設された合成樹脂製の収液部と、前記収液部より熱伝導率の高い材料で形成された伝熱部と、が互いに密着した一体構造をなすことを特徴とする。
【0016】
合成樹脂製の収液部とこれより熱伝導率の高い伝熱部とが密着した一体構造をなすことにより、加熱冷却手段の温度が伝熱部を介して速やかに収液部に伝わり、収液部と伝熱部との剥離も生じ難いので、良好な熱伝導性を長期間に亘って維持することができる。また、穴を形成するためのドリル加工や穴内面のコーティング処理が不要となるため、製造も容易である。さらに、収液部を合成樹脂製としたことにより、複数の穴の形状、容積あるいは配列形態などの設計自由度を高めることができる。
【0017】
前記収液部において隣り合う前記穴の間の隔壁部を形成する合成樹脂の厚さが均等であることが望ましい。
【0018】
このような構成とすれば、隣り合う前記穴の間での熱伝導状態のバラつきを抑制することができるため、複数の穴全体の等温性を高めることができる。
【0019】
一方、前記収液部と前記伝熱部とを一体成形することが望ましい。
【0020】
このような構成とすれば、射出成形法により製造することが可能となるため、製造工程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0021】
また、前記伝熱部を金属材料で形成することが望ましい。
【0022】
前記伝熱部を金属材料で形成すれば、その強度、剛性が高まり、耐久性が向上する。なお、金属材料の種類としては、アルミニウム、銅あるいは銀などが好適である。
【0023】
また、前記収液部の穴の内周の少なくとも一部に、前記穴の底部に向かって内径が縮小した縮径部を設けることが望ましい。
【0024】
このような構成とすれば、射出成形する際の離型性が向上し、製造工程の効率化に有効である。
【0025】
この場合、前記伝熱部に開設された貫通孔に、前記収液部を形成する合成樹脂の一部が充填された状態で成形されることが望ましい。
【0026】
このような構成とすれば、前記貫通孔に充填された合成樹脂がアンカー効果を発揮し、収液部と伝熱部とが強固に密着されるので、熱伝導性が高まるだけでなく、受液部と伝熱部との耐剥離性も向上する。
【0027】
また、前記貫通孔の一部に内径が縮径した括れ部を設けることが望ましい。
【0028】
このような構成とすれば、前記貫通孔に充填された合成樹脂によるアンカー効果が高まるため、熱伝導性及び耐剥離性をさらに向上させることができる。
【0029】
また、前記収液部が、前記伝熱部から分離可能であることが望ましい。
【0030】
このような構成とすれば、使用後の反応容器を伝熱部と収液部とに分解し、反応液に接触していない伝熱部に対して新たな収液部を一体化することにより反応容器を再製造することができるので、資材の削減、資源の有効活用を図ることができる。
【0031】
また、前記穴の内周面の面粗度を算術平均粗さRa0.3〜0.5とすることが望ましい。
【0032】
このような構成とすれば、収液部を射出成形する際の離型性が向上し、製造工程の効率化に有効である。
【0033】
また、前記収液部と前記伝熱部との境界における前記伝熱部側の面粗度を算術平均粗さRa0.2〜0.4とすることが望ましい。
【0034】
このような構成とすれば、収液部を形成する合成樹脂と伝熱部との密着性、密着力が高まるので、熱伝導性及び耐剥離性が向上する。なお、前記伝熱部側の面粗度は前記穴の内周面の面粗度より小さくすることが望ましい。
【0035】
また、前記穴の配置領域の面積を、前記穴の直下に位置する前記伝熱部との境界面の前記伝熱部側の面積より小とすることが望ましい。
【0036】
このような構成とすれば、収液部に接触して温度を伝える伝熱部側の境界面において、温度バラつきが少なく、等温性の良好な領域(例えば、伝熱部の中央領域)に複数の穴を集約して配置することができるため、複数の穴全体の等温性を高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、製造が容易で、良好な熱伝導性を長期間に亘って維持することができる反応容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態である反応容器を示す平面図である。
【図2】図1に示す反応容器の側面図である。
【図3】図1に示す反応容器の底面図である。
【図4】図1のC−C線における断面図である。
【図5】図4の一部拡大図である。
【図6】図4の一部拡大図である。
【図7】図1に示す反応容器を射出成形するための下金型の平面図である。
【図8】図1に示す反応容器を射出成形するための上金型の底面図である。
【図9】図7のD−D線における下金型及び上金型の断面図である。
【図10】図1に示す反応容器の射出成形工程を示す断面図である。
【図11】図1に示す反応容器の射出成形工程を示す断面図である。
【図12】図1に示す反応容器の射出成形工程を示す断面図である。
【図13】図1に示す反応容器の射出成形工程を示す断面図である。
【図14】図1に示す反応容器の射出成形工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1〜図6に示すように、本実施形態の反応容器10は、PCR法を用いた検査に供される反応液を収容可能な複数の穴11が開設されたポリプロピレン、ポリイミドなどの合成樹脂製の収液部12と、収液部12より熱伝導率の高いアルミニウムで形成された伝熱部13と、を備え、収液部12と伝熱部13とが互いに密着した一体構造をなしている。
【0040】
伝熱部13は正方形状のアルミニウム板で形成され、その上面13a側(収液部12側)の辺縁に沿って突設された係止鍔部16と、上面13aと下面13bとを貫く複数の貫通孔14と、を備えている。貫通孔14の一部(下面13b寄りの部分)には、内径が縮径した括れ部15が設けられている。貫通孔14は、上面13a及び下面13bから括れ部15に向かって連続的に縮径している。
【0041】
収液部12は、伝熱部13の上面13a及び係止鍔部16を含む外周面を包囲した状態で一体成形されている。収液部12の上面12a側には複数の穴11が開設され、収液部の下面12bは、伝熱部13の上面13aに密着している。伝熱部13に開設された複数の貫通孔14には、収液部12を形成する合成樹脂の一部が充填された状態で成形され、それぞれの貫通孔14内に収液部12と連続した係止部17が形成されている。
【0042】
反応容器10は、上面が縦54mm×横54mmの正方形(下面が縦53mm×横53mmの正方形)で、厚さ4mmの略正方形板状の器材であり、反応容器10の上面を形成する収液部12の上面12aは縦54mm×横54mmの正方形をなし、上面12aの内周側の領域に縦75個×横75個の穴11が等間隔に開設されている。伝熱部13は、上面13aが縦51mm×横51mmの正方形(下面13bが縦49mm×横49mm)で、厚さ2.5mmのアルミニウム板で形成されている。このように、複数の穴11の配置領域の面積は、穴11の直下に位置する伝熱部13の上面13aの面積より小となっている。
【0043】
図6に示すように、収液部12の上面12aにおける穴11の開口端内径11aは約0.41mm、下面12b側における穴11の底面内径11bは約0.33mm、深さ11dは約1.4mmであり、穴11の容積は、約150nL程度となっている。また、隣り合う穴11の中心軸11c間の距離11eは約0.51mmであり、工具の性能上、穴11の開口端に若干のR(凸曲面)が形成されるが、収液部12の上面12aにおいて、隣り合う穴11の間にフラットな面が形成されるようになっている。また、穴11の配置密度は収液部12の1cm2当たり300個程度となっている。さらに、穴11の内周面の面粗度を算術平均粗さRa0.3〜0.5とし、収液部12と伝熱部13との境界における伝熱部13側の上面13aの面粗度を算術平均粗さRa0.2〜0.4としている。
【0044】
また、収液部12において隣り合う穴11の間の隔壁部12cを形成する合成樹脂の厚さはいずれの穴11同士の間においても均等であり、上面12aにおける隔壁部12cの厚さ12dは約0.1mmで、穴11の底面における隔壁部12cの厚さ12eは約0.17mmであり、穴11の底部を形成する合成樹脂の厚さ12fは0.1mmである。
【0045】
本実施形態の反応容器10は、合成樹脂製の収液部12とこれより熱伝導率の高い伝熱部13とが密着した一体構造をなしているため、伝熱部13の下面13b側に配置された加熱冷却手段(図示せず)の温度が伝熱部13を介して速やかに収液部12に伝わり、収液部12と伝熱部13との剥離も生じ難いので、良好な熱伝導性を長期間に亘って維持することができる。また、複数の穴11を形成するためのドリル加工や穴内面のコーティング処理が不要となるため、製造も容易である。さらに、収液部12を合成樹脂製としたことにより、複数の穴11の形状、容積あるいは配列形態などの設計自由度を高めることができる。
【0046】
また、収液部12において隣り合う穴11の間の隔壁部12cを形成する合成樹脂の厚さを均等としたことにより、隣り合う穴11の間での熱伝導状態のバラつきを抑制することができるため、複数の穴11全体の等温性を高めることができる。
【0047】
一方、収液部12と伝熱部13とを一体成形する構成としたことにより、後述するように、射出成形法によって反応容器10を製造することが可能となるため、製造工程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0048】
また、伝熱部12を金属材料の一つであるアルミニウム板で形成したことにより、その強度、剛性が高まり、耐久性が向上する。なお、金属材料の種類としては、アルミニウムのほか銅あるいは銀などを使用することもできる。
【0049】
また、図6に示すように、収液部12の穴11の開口端内径11aを底面内径11bより大とすることにより、穴11の内径が底部に向かって連続的に縮小した形状としているため、反応容器10を射出成形で製造する際の離型性が良好であり、製造工程の効率化に有効である。
【0050】
また、伝熱部13に開設された複数の貫通孔14に、収液部12を形成する合成樹脂の一部が充填された係止部17を形成したことにより、それぞれの貫通孔14内の係止部17がアンカー効果を発揮し、収液部12と伝熱部13とが強固に密着されるので、熱伝導性が高まるだけでなく、収液部12と伝熱部13との耐剥離性も向上する。さらに、貫通孔14の一部に内径が縮径した括れ部15を設けたことにより、貫通孔14内に形成された係止部17によるアンカー効果が高まるため、熱伝導性及び耐剥離性の向上に有効である。
【0051】
なお、貫通孔14内に形成されている係止部17のうち、貫通孔14内の括れ部15より下面13b寄りの領域に充填されている合成樹脂を伝熱部13の下面13b側から削除すれば、括れ部15によるアンカー効果が失われ、収液部12が伝熱部13から分離し易くなる。従って、使用後の反応容器10を伝熱部13と収液部12とに分解し、反応液に接触していない伝熱部13に対して新たな収液部12を一体成形すれば、反応容器10を再製造することができるので、資材の削減、資源の有効活用を図ることができる。
【0052】
一方、穴11の内周面の面粗度を算術平均粗さRa0.3〜0.5としたことにより、収液部12を射出成形する際の離型性が良好となり、製造工程の効率化に有効である。また、収液部12と伝熱部13との境界における伝熱部13の上面13aの面粗度を算術平均粗さRa0.2〜0.4としたことにより、収液部12を形成する合成樹脂と伝熱部13との密着性、密着力が高まるので、熱伝導性及び耐剥離性が向上する。なお、伝熱部13の上面13aの面粗度は穴11の内周面の面粗度より小さくなるように設定している。
【0053】
また、本実施形態の反応容器10において、穴11の容積を約150nLとしたところ、穴11に収容される反応液を減容化することができ、穴11に収容された反応液の熱容量も小さくなるため、反応液を速やかに昇温、降温させることが可能となり、検査時間の短縮化、効率化を図ることができた。
【0054】
さらに、穴11の配置密度を収液部12の上面12aの1cm2当たり約300個〜400個としたところ、比較的小さなスペースに多数の穴11を集約することが可能となり、反応液の収容個数が増大し、検査時間の短縮化、効率化に有効であった。
【0055】
また、複数の穴11の配置領域の面積を、穴11の直下に位置する伝熱部13との境界面に位置する伝熱部13の上面13aの面積より小としたことにより、収液部12に接触して温度を伝える伝熱部13の上面13aにおいて、温度バラつきが少なく、等温性の良好な伝熱部13の中央領域上に複数の穴11を集約して配置することができるため、複数の穴11全体の等温性を高めることができた。
【0056】
次に、図7〜図12に基づいて、反応容器10(図1参照)を射出成形するための金型およびそれを用いた射出成形工程について説明する。
【0057】
図7は、図1に示す反応容器10を射出成形するための下金型30の平面図であり、収液部12の複数の穴11を形成するために穴11の個数と同数のピン31aが立設された略正方形状の雄型領域31と、雄型領域31の四辺部に沿って設けられたエジェクタブロック32と、雄型領域31の角隅部の近傍に設けられた押さえピン33とを備えている。
【0058】
図8は図1に示す反応容器10を射出成形するための上金型40の底面図であり、伝熱部13となるアルミニウム板を収容した状態で収液部12を形成するためのキャビティ41と、溶融した合成樹脂をキャビティ41内へ注入するための複数のゲート孔42とを備えている。
【0059】
図9に示すように、射出成形開始段階においては、上金型40と下金型30とが分離した状態(型開き状態)にあるので、図10に示すように、伝熱部13となるアルミニウム板が、その上面13aを下金型30の雄型領域31に向けた状態で押さえピン33上に載置される。伝熱部13となるアルミニウム板には、上金型40の複数のゲート孔42と同じ位相をなす複数のゲート孔13cが設けられている。
【0060】
次に、図11に示すように、上金型40と下金型30とが型締め状態となると、伝熱部13が上金型40のキャビティ41内に収容された状態で上金型40と下金型30との間に保持され、上金型40のゲート孔42と伝熱部13のゲート孔13cとが連通した状態となる。
【0061】
次に、図12に示すように、上金型40のゲート孔42を通じて注入された溶融状態の合成樹脂Rが伝熱部13のゲート孔13cを通過して上面13a側へ射出され、下金型30の雄型領域31、上金型40のキャビティ41内及び伝熱部13の貫通孔14内に充填され、反応容器10が一体成形される。
【0062】
充填された合成樹脂Rが硬化した後、図13に示すように、上金型40と下金型30とが型開き状態となると、成型品である反応容器10の収液部12が下金型30の雄型領域31に貼り付いた状態で上金型40と下金型30とが分離する。この後、図14に示すように、複数のエジェクタブロック32が上昇して反応容器10が持ち上げられることによって下金型30から離脱し、製品である反応容器10が完成する。
【0063】
このように、反応容器10は射出成形法により製造することが可能であるため、製造工程の簡素化、効率化を図ることができ、必要に応じて、多数の反応容器10を短時間で製造することができる。なお、前述した射出成形工程は例示であり、本発明の反応容器の製造方法を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の反応容器は、DNA増幅手段として実施されるポリメーラーゼ連鎖反応に供される反応容器として、生化学分野、理化学分野あるいは遺伝子工学の分野などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 反応容器
11 穴
11a 開口端内径
11b 底面内径
11c 中心軸
11d 深さ
12 収液部
13 伝熱部
12a,13a 上面
12b,13b 下面
12c 隔壁部
12d,12e,12f 厚さ
13c,42 ゲート孔
14 貫通孔
15 括れ部
16 係止鍔部
17 係止部
30 下金型
31 雄型領域
31a ピン
32 エジェクタブロック
33 押さえピン
40 上金型
41 キャビティ
R 合成樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCR法を用いた検査に供される反応液を収容可能な複数の穴が開設された合成樹脂製の収液部と、前記収液部より熱伝導率の高い材料で形成された伝熱部と、が互いに密着した一体構造をなすことを特徴とする反応容器。
【請求項2】
前記収液部において隣り合う前記穴の間の隔壁部を形成する合成樹脂の厚さが均等である請求項1記載の反応容器。
【請求項3】
前記収液部と前記伝熱部とを一体成形した請求項1または2記載の反応容器。
【請求項4】
前記伝熱部を金属材料で形成した請求項1〜3のいずれかに記載の反応容器。
【請求項5】
前記収液部の穴の内周の少なくとも一部に、前記穴の底部に向かって内径が縮小した縮径部を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の反応容器。
【請求項6】
前記伝熱部に開設された貫通孔に、前記収液部を形成する合成樹脂の一部が充填された状態で成形された請求項1〜5のいずれかに記載の反応容器。
【請求項7】
前記貫通孔の一部に内径が縮径した括れ部を設けた請求項6記載の反応容器。
【請求項8】
前記収液部が、前記伝熱部から分離可能である請求項1〜7のいずれかに記載の反応容器。
【請求項9】
前記穴の内周面の面粗度を算術平均粗さRa0.3〜0.5とした請求項1〜8のいずれかに記載の反応容器。
【請求項10】
前記収液部と前記伝熱部との境界における前記伝熱部側の面粗度を算術平均粗さRa0.2〜0.4とした請求項1〜9のいずれかに記載の反応容器。
【請求項11】
前記穴の配置領域の面積を、前記穴の直下に位置する前記伝熱部との境界面の前記伝熱部側の面積より小とした請求項1〜10のいずれかに記載の反応容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−115240(P2012−115240A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270653(P2010−270653)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(592028846)第一精工株式会社 (94)
【Fターム(参考)】