説明

反比例回路

【課題】接続される外部回路による影響が低減され、より精度の高い反比例回路を実現する。
【解決手段】反比例の演算に寄与するトランジスタQ1及びQ2の他に電流の出力に寄与するトランジスタQ3を設ける。これにより、トランジスタQ1及びQ2のコレクタ−エミッタ間電圧は外部回路の状態に関わらず一定の電圧値になる。したがって、各々のトランジスタQ1及びQ2に流れる電流の反比例関係に対する誤差要因を低減することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入出力間の関係が反比例となる反比例回路に関する。
【背景技術】
【0002】
入出力間の関係が反比例となる反比例回路が提案されている(特許文献1)。例えば、特許文献1では図5に示す反比例回路が提案されている。
【0003】
図5に示す反比例回路10は、反比例の演算に寄与するトランジスタQ10及びQ20と、制御電圧を印加するためのオペアンプOP10及び抵抗R10と、を備えている。なお、トランジスタQ10及びQ20は、pnp型のバイポーラトランジスタであり、ベース−エミッタ間電圧とコレクタ電流との特性が略同一となっている。
【0004】
次に、図5に示す従来の反比例回路10の特性について説明する。トランジスタQ10のエミッタには第1の基準電圧V1が印加される。また、トランジスタQ20のベースには第2の基準電圧V2が印加される。
【0005】
トランジスタQ10のベース−エミッタ間電圧をVBE10とし、トランジスタQ20のベース−エミッタ間電圧をVBE20とすると、第1の基準電圧V1から第2の基準電圧V2までの電位差V1−V2は、以下の式(1)で表される。
V1−V2 = VBE10+VBE20 ・・・ (1)
【0006】
一般的に、バイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧VBEとコレクタ電流Icとの関係は、pn接合特性より以下の式(2)で表される。
VBE = (K×T/q)×ln (Ic/Is) ・・・ (2)
ここで、Isは飽和電流、qは電子の電荷、Kはボルツマン定数、Tは接合温度である。
【0007】
したがって、トランジスタQ10のコレクタ電流をIc10とし、トランジスタQ20のコレクタ電流をIc20として、式(2)を式(1)に代入すると、電位差V1−V2は、以下の式(3)で表される。
V1−V2 = (K×T/q)×ln(Ic10/Is)
+(K×T/q)×ln(Ic20/Is) ・・・ (3)
【0008】
そして、上述した式(3)を展開することにより、以下の式(4)が得られる。
Ic20 = A/Ic10 ・・・ (4)
ここで、A=Is×exp((V1−V2)×q/(K×T))である。上述した、式(4)は、トランジスタQ10のコレクタ電流Ic10と、トランジスタQ20のコレクタ電流Ic20と、が反比例関係にあることを示している。
【0009】
また、オペアンプOP10の出力端子はトランジスタQ20のエミッタ−コレクタ間を介してオペアンプOP10の反転入力端子と接続されている。このため、オペアンプOP10の非反転入力端子に印加される制御電圧Vctrlと、トランジスタQ20のコレクタ電流Ic20と、は以下の式(5)に示すように比例関係にある。
Ic20 = Vctrl/R10 ・・・ (5)
したがって、オペアンプOP10の非反転入力端子に印加される制御電圧Vctrlと、トランジスタQ10のコレクタ電流Ic10と、は反比例関係となる。
【0010】
【特許文献1】特開2004−246874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された反比例回路では、バイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧VBEとコレクタ電流Icとの関係に対するアーリー電圧Vの影響が考慮されていない。バイポーラトランジスタのベース−エミッタ間電圧VBEとコレクタ電流Icとの関係に、アーリー電圧Vの影響を考慮すると、前述した式(2)は、以下の式(6)で表される。
VBE = (K×T/q)×ln(Ic/(Is×(1+VCE/V)))
・・・ (6)
ここで、VCEはバイポーラトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0012】
式(6)のようにアーリー電圧Vを考慮すると、上述した式(4)は、以下の式(7)で表される。
Ic20 = (A/Ic10)×(1+VCE10/V)×(1+VCE20/V)
・・・ (7)
ここで、VCE10はトランジスタQ10のコレクタ−エミッタ間電圧であり、VCE20はトランジスタQ20のコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0013】
上述した式(7)からも明らかなように、トランジスタQ10及びQ20のコレクタ−エミッタ間電圧が一定であれば、前述した反比例関係に対して何ら影響を与えない。しかしながら、トランジスタQ10のコレクタ−エミッタ間電圧は、(コレクタ電圧が不定であり)接続される外部回路の状態等により変化する可能性がある。
【0014】
このような外部回路による影響は、前述した反比例関係に対する誤差要因となるため好ましく無い。本発明の目的は、接続される外部回路による影響が低減され、より精度の高い反比例回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、反比例回路であって、ベース及びコレクタが第1の基準電圧源に接続された第1のバイポーラトランジスタと、ベースが第1のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、コレクタが第1の基準電圧源に接続され、第1のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第2のバイポーラトランジスタと、エミッタが第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が異なる第3のバイポーラトランジスタと、反転入力端子が第2のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、非反転入力端子が第2の基準電圧源に接続され、出力端子が第3のバイポーラトランジスタのベースに接続された第1の演算増幅器と、を備え、第2のバイポーラトランジスタのエミッタ電流と第3のバイポーラトランジスタのコレクタ電流とが略反比例関係にあることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、コレクタが第1の基準電圧源に接続され、ベースがコレクタに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第4のバイポーラトランジスタと、コレクタが第4のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、ベースがコレクタに接続され、エミッタが第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第5のバイポーラトランジスタと、を備えることが望ましい。
【0017】
また、本発明は、コレクタがベース及び第1の基準電圧源に接続され、エミッタが第2のバイポーラトランジスタのコレクタに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第6のバイポーラトランジスタを備え、第2のバイポーラトランジスタのコレクタと前記第1の基準電圧源との接続は、第6のバイポーラトランジスタを介して接続されていることが望ましい。
【0018】
また、本発明は、非反転入力端子が制御電圧源に接続され、反転入力端子が第2のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、出力端子が反転入力端子に接続された第2の演算増幅回路と、一方の端子が第2の演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が接地された抵抗と、を備え、第3のバイポーラトランジスタのコレクタ電流が制御電圧に対して反比例であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、接続される外部回路による影響が低減され、より精度の高い反比例回路を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の第1〜第4の実施形態に係る反比例回路について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
「第1の実施形態」
図1は、本発明の第1の実施形態に係る反比例回路の構成を表す回路図である。図1に示す反比例回路1は、演算に寄与するトランジスタQ1及びQ2と、外部出力に寄与するトランジスタQ3と、オペアンプOP1と、を備えている。後述にて詳細に説明するが、本実施形態に係る反比例回路1では、演算に寄与するトランジスタQ1及びQ2に印加されるコレクタ−エミッタ間電圧VCEは、接続される外部回路に関わらず一定であり、より精度の高い反比例関係を実現することができる。
【0022】
トランジスタQ1は、ベース及びコレクタが第1の基準電圧源V1に接続されている。このトランジスタQ1は、npn型のバイポーラトランジスタである。トランジスタQ2は、ベースがトランジスタQ1のエミッタに接続され、コレクタが第1の基準電圧源V1に接続されている。このトランジスタQ2は、トランジスタQ1と極性が同一のnpn型のバイポーラトランジスタであり、かつ、ベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性がトランジスタQ1と略同一である。また、トランジスタQ2のエミッタは、外部の電流制御回路(図示せず)に接続されている。後述するように、この2つのトランジスタQ1及びQ2のエミッタ電流は、反比例関係にある。
【0023】
トランジスタQ3は、エミッタがトランジスタQ2のベースに接続されている。また、このトランジスタQ3は、トランジスタQ1及びQ2とは極性が異なるpnp型のバイポーラトランジスタである。後述するように、このトランジスタQ3のコレクタから電流(コレクタ電流Ic3)が外部回路(図示せず)に出力される。
【0024】
オペアンプOP1は、反転入力端子がトランジスタQ2のエミッタに接続され、非反転入力端子が第2の基準電圧源V2に接続され、出力端子がトランジスタQ3のベースに接続されている。このオペアンプOP1を介して、トランジスタQ2のエミッタには、第2の基準電圧V2が印加される。
【0025】
次に、図1に示す反比例回路1の特性について説明する。トランジスタQ1のコレクタには、第1の基準電圧V1が印加される。また、トランジスタQ2のエミッタには、オペアンプOP1を介して、第2の基準電圧V2が印加される。
【0026】
トランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧をVBE1とすると、第1の基準電圧V1から第2の基準電圧V2までの電位差V1−V2は、以下の式(8)で表される。
V1−V2 = VBE1+VBE2 ・・・ (8)
【0027】
また、トランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧VBE1とコレクタ電流Ic1との関係は、アーリー電圧Vの影響を考慮すると、以下の式(9)で表される。
VBE1 = (K×T/q)×ln(Ic1/(Is×(1+VCE1/V)))
・・・ (9)
ここで、VCE1は、トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0028】
同様に、トランジスタQ2のベース−エミッタ間電圧VBE2とコレクタ電流Ic2との関係は、アーリー電圧Vの影響を考慮すると、以下の式(10)で表される。
VBE2 = (K×T/q)×ln(Ic2/(Is×(1+VCE2/V)))
・・・ (10)
ここで、VCE2は、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0029】
上述した式(9)と式(10)を式(8)に代入すると、以下の式(11)が得られる。
V1−V2 = (K×T/q)×ln(Ic1/(Is×(1+VCE1/V)))
+(K×T/q)×ln(Ic2/(Is×(1+VCE2/V)))
・・・ (11)
【0030】
上述した式(11)を展開することにより、以下の式(12)が得られる。
Ic1 = (A/Ic2)×(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)
・・・ (12)
ここで、A=Is×exp((V1−V2)×q/(K×T))である。上述した式(12)は、トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2と、が反比例関係にあることを示している。
【0031】
また、一般的にバイポーラトランジスタでは、コレクタ電流Icと、エミッタ電流Ieと、は略等しい電流値となる。このため、トランジスタQ1のエミッタ電流をIe1とし、トランジスタQ2のエミッタ電流をIe2とすると、上述した式(12)は、以下の式(13)で表すことができる。
Ie1 = (A/Ie2)×(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)
・・・ (13)
【0032】
前述したように、バイポーラトランジスタでは、コレクタ電流Icと、エミッタ電流Ieと、は略等しい電流値となる。このため、トランジスタQ1のエミッタ電流Ie1(すなわち、トランジスタQ3のエミッタ電流Ie3)と、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3と、は略等しい電流値となる。したがって、式(13)は、以下の式(14)のように表される。
Ic3 = (A/Ie2)×(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)
・・・ (14)
すなわち、上述した式(14)は、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3と、トランジスタQ2のエミッタ電流Ie2と、が反比例関係にあることを示している。
【0033】
ここで、トランジスタQ1は、コレクタ電圧がV1で一定であり、エミッタ電圧がV1−VBE1で一定である。したがって、トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧VCE1は、一定である。また、トランジスタQ2は、コレクタ電圧がV1で一定であり、エミッタ電圧がV1−(VBE1+VBE2)で一定である。すなわち、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧VCE2についても同様に一定である。したがって、上述した式(14)に示された(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)の項は定数Cとすることができ、以下の式(15)のように表される。
Ic3 = A×C/Ie2 ・・・ (15)
【0034】
このように、本実施形態に係る反比例回路は、上述した外部回路の状態に関わらず、演算に係るトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧VCEが一定であるため、より精度の高い反比例関係を実現することができる。なお、本実施形態に係る反比例回路では、トランジスタQ1及びQ2にnpn型のバイポーラトランジスタを用い、トランジスタQ3にpnp型のバイポーラトランジスタを用いたが、トランジスタQ1及びQ2にpnp型のバイポーラトランジスタを用い、トランジスタQ3にnpn型のバイポーラトランジスタを用いてもよいことは言うまでもない(この場合、電圧及び電流の向きが逆方向になる)。
【0035】
「第2の実施形態」
図2は、本発明の第2の実施形態に係る反比例回路2の構成を表す回路図である。第1の実施形態に係る反比例回路1は、式(15)からも明らかなように、温度依存性を有している(Ic3∝1/T)。このような温度依存性は、前述したような反比例関係に対する誤差要因となるため好ましくない。本実施形態に係る反比例回路は、このような温度依存性の影響を低減する。以下、これについて詳細に説明する。
【0036】
図2に示す反比例回路2は、新たに、トランジスタQ4及びQ5を備えている。トランジスタQ4は、コレクタが基準電圧源V1に接続され、ベースがコレクタに接続されている。このトランジスタQ4は、トランジスタQ1及びQ2と極性が同じnpn型のバイポーラトランジスタであり、ベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である。
【0037】
また、トランジスタQ5は、コレクタがトランジスタQ4のエミッタに接続され、ベースがコレクタに接続され、エミッタがオペアンプOP1の非反転入力端子に接続されている。このトランジスタQ5は、トランジスタQ1及びQ2と極性が同じnpn型のバイポーラトランジスタであり、ベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である。
【0038】
次に、図2に示す反比例回路2の特性について説明する。トランジスタQ4のベース−エミッタ間電圧をVBE4とし、トランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧をVBE5とすると、第1の基準電圧V1から第2の基準電圧V2までの電位差V1−V2は、以下の式(16)で表される。
V1−V2 = VBE4+VBE5 ・・・ (16)
【0039】
この式(16)を上述した式(8)に代入すると、以下の式(17)が得られる。
VBE1+VBE2 = VBE4+VBE5 ・・・ (17)
【0040】
また、トランジスタQ4のベース−エミッタ間電圧VBE4とコレクタ電流Ic4との関係は、アーリー電圧Vの影響を考慮すると、以下の式(18)で表される。
VBE4 = (K×T/q)×ln(Ic4/(Is×(1+VCE4/V)))
・・・ (18)
ここで、VCE4は、トランジスタQ4のコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0041】
同様に、トランジスタQ5のベース−エミッタ間電圧VBE5とコレクタ電流Ic5との関係は、アーリー電圧Vの影響を考慮すると、以下の式(19)で表される。
VBE5 = (K×T/q)×ln(Ic5/(Is×(1+VCE5/V)))
・・・ (19)
ここで、VCE5は、トランジスタQ5のコレクタ−エミッタ間電圧である。
【0042】
上述した式(17)に、式(9)及び(10)と式(18)及び(19)とを代入すると、以下の式(20)が得られる。
Ic1×Ic2/(Is×(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V))
= Ic4×Ic5/(Is×(1+VCE4/V)×(1+VCE5/V))
・・・ (20)
上記の式(20)は、トランジスタQ1のコレクタ電流Ic1と、トランジスタQ2のコレクタ電流Ic2と、が温度依存性(K×T/q)を有していないということを示している。
【0043】
また、上記の式(20)を展開することにより以下の式(21)が得られる。
Ic1 = (Ic4×Ic5)×(1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)/
(Ic2×(1+VCE4/V)×(1+VCE5/V))・・・(21)
【0044】
トランジスタQ4及びQ5のコレクタ−エミッタ間電圧VCEは、各々のベース−エミッタ間電圧VBEと同じであり一定である。したがって、 (1+VCE1/V)×(1+VCE2/V)/((1+VCE4/V)×(1+VCE5/V))の項を定数Cと置くことができる。このような定数Cにより表すと式(21)は、以下の式(22)で表すことができる。
Ic1 = Ic4×Ic5×C/Ic2 ・・・ (22)
【0045】
また、前述したように、トランジスタのエミッタ電流とコレクタ電流は略等しい電流値になる。このため、上述の式(22)は、以下の式(23)と表すことができる。
Ic3 = Ic4×Ic5×C/Ie2 ・・・ (23)
上記の式(23)は、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3とトランジスタQ2のエミッタ電流Ie2とが反比例関係にあり、かつ、温度依存性を有さないことを示している。したがって、本実施形態に係る反比例回路は、各々のトランジスタに流れる電流の温度依存性の影響を低減させ、より精度の高い反比例関係を実現することができる。なお、前述した第2の基準電圧V2は、定電流で代用してもよい。
【0046】
「第3の実施形態」
図3は、本発明の第3の実施形態に係る反比例回路3の構成を表す回路図である。上述した第2の実施形態に係る反比例回路2では、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧VCE2と、トランジスタQ1,Q4,Q5のコレクタ−エミッタ間電圧VCE1,VCE4,VCE5と、が異なる電圧である。
【0047】
すなわち、トランジスタQ1,Q4,Q5のコレクタ−エミッタ間電圧VCE1,VCE4,VCE5が各々のベース−エミッタ間電圧VBE1,VBE4,VBE5と同じであるのに対して、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧VCE2は、(VBE2がVBE1に略等しいとすると)ベース−エミッタ間電圧VBE1の2倍である。
【0048】
このため、(例えば製造ロット毎等で)各々のトランジスタのベース−エミッタ間電圧に“ばらつき”があると、前述した定数Cの値も変動する。このような変動は、個別調整等を要するため好ましくない。本実施形態に係る反比例回路は、このようなコレクタ−エミッタ間電圧による影響を低減する。以下、これについて詳細に説明する。
【0049】
図3に示す反比例回路3は、新たに、トランジスタQ6を備えている。トランジスタQ6は、コレクタがベースに接続されている。したがって、トランジスタQ6は、ベース−エミッタ間電圧VBE6と、コレクタ−エミッタ間電圧VCE6と、が同じ電圧である。また、トランジスタQ6は、トランジスタQ1及びQ2と極性が同じnpn型のバイポーラトランジスタであり、ベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である。
【0050】
また、トランジスタQ2は、トランジスタQ6を介して第1の基準電圧源V1に接続されている。このため、トランジスタQ2のコレクタ−エミッタ間電圧VCE2は、トランジスタQ1のコレクタ−エミッタ間電圧VCE1と同じ電圧となる。したがって、各トランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧の関係は、以下の式(23)で表すことができる。
VCE1 ≒ VCE2 ≒ VCE4 ≒ VCE5 ・・・ (23)
【0051】
上述した式(23)を式(21)に代入することにより、以下の式(24)が得られる。
Ic1 = Ic4×Ic5/Ic2 ・・・ (24)
【0052】
また、前述したように、トランジスタのエミッタ電流とコレクタ電流は略等しい電流値になる。このため、上述の式(24)は、以下の式(25)と表すことができる。
Ic3 = Ic4×Ic5/Ie2 ・・・ (25)
上記の式(25)は、トランジスタQ3のコレクタ電流Ic3とトランジスタQ2のエミッタ電流Ie2とが反比例関係にあり、かつ、各々のトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧に依存しないことを示している。したがって、本実施形態に係る反比例回路は、各々のトランジスタのコレクタ−エミッタ間電圧の影響を低減させ、より精度の高い反比例関係を実現することができる。
【0053】
「第4の実施形態」
図4は、本発明の第4の実施形態に係る反比例回路4の構成を表す回路図である。上述した第1〜第3の実施形態に係る反比例回路では、電流間の反比例関係に関するものであるが、電圧と電流間を反比例関係にしても良い。以下、これについて説明する。
【0054】
図4に示す反比例回路4は、新たに、オペアンプOP2と抵抗R1を備えている。オペアンプOP2は、非反転入力端子が制御電圧源Vctrlに接続され、反転入力端子がトランジスタQ2のエミッタに接続され、出力端子が反転入力端子に接続されている。また、抵抗R1は、一方の端子がオペアンプOP2の反転入力端子に接続され、他方の端子が接地されている。
【0055】
次に、図4に示す反比例回路4の動作について説明する。前述したトランジスタQ2のエミッタ電流Ie2は、抵抗R1に流れる。また、オペアンプOP2が負帰還となっているため、オペアンプOP2の反転入力端子と非反転入力端子との電圧が等しくなり、以下の式(26)が成り立つ。
Vctrl = Ie2×R1 ・・・ (26)
上記の式(26)は、オペアンプOP2の非反転入力端子に印加される制御電圧Vctrlと、抵抗R1に流れる電流Ie2と、が比例関係にあることを示している。
【0056】
また、上述した式(26)を式(25)に代入することにより、以下の式(27)が得られる。
Ic3 = Ic4×Ic5×R1/Vctrl ・・・ (27)
上記の式(27)は、オペアンプOP2の非反転入力端子に印加される制御電圧Vctrlと、トランジスタQ3から出力される電流Ic3と、が反比例関係にあることを示している。したがって、本実施形態に係る反比例回路4は、電圧制御型の反比例回路を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る反比例回路の構成を表す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る反比例回路の構成を表す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る反比例回路の構成を表す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る反比例回路の構成を表す回路図である。
【図5】従来の反比例回路の構成を表す回路図である。
【符号の説明】
【0058】
Q1〜Q6 トランジスタ、OP1,OP2 オペアンプ、R1 抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反比例回路であって、
ベース及びコレクタが第1の基準電圧源に接続された第1のバイポーラトランジスタと、
ベースが第1のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、コレクタが第1の基準電圧源に接続され、第1のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第2のバイポーラトランジスタと、
エミッタが第2のバイポーラトランジスタのベースに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が異なる第3のバイポーラトランジスタと、
反転入力端子が第2のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、非反転入力端子が第2の基準電圧源に接続され、出力端子が第3のバイポーラトランジスタのベースに接続された第1の演算増幅器と、
を備え、
第2のバイポーラトランジスタのエミッタ電流と第3のバイポーラトランジスタのコレクタ電流とが略反比例関係にあることを特徴とする反比例回路。
【請求項2】
請求項1に記載の反比例回路であって、
コレクタが第1の基準電圧源に接続され、ベースがコレクタに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第4のバイポーラトランジスタと、
コレクタが第4のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、ベースがコレクタに接続され、エミッタが第1の演算増幅器の非反転入力端子に接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第5のバイポーラトランジスタと、
を備えることを特徴とする反比例回路。
【請求項3】
請求項2に記載の反比例回路であって、
コレクタがベース及び第1の基準電圧源に接続され、エミッタが第2のバイポーラトランジスタのコレクタに接続され、第1及び第2のバイポーラトランジスタと極性が同一でありかつベース−エミッタ間電圧に対するエミッタ電流の特性が略同一である第6のバイポーラトランジスタを備え、
第2のバイポーラトランジスタのコレクタと前記第1の基準電圧源との接続は、第6のバイポーラトランジスタを介して接続されていることを特徴とする反比例回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載された反比例回路であって、
非反転入力端子が制御電圧源に接続され、反転入力端子が第2のバイポーラトランジスタのエミッタに接続され、出力端子が反転入力端子に接続された第2の演算増幅回路と、
一方の端子が第2の演算増幅回路の反転入力端子に接続され、他方の端子が接地された抵抗と、
を備え、
第3のバイポーラトランジスタのコレクタ電流が制御電圧に対して反比例であることを特徴とする反比例回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−323477(P2007−323477A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154518(P2006−154518)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)