説明

反発式硬度計の検定装置

【課題】検定打撃位置を機械的に更新移動させることにより、コンピュータや制御機器が不要で安価となる反発式硬度計の検定装置を目的とする
【解決手段】基準硬度を有する硬度マスター2への検定打撃位置を、位置変更手段3により検定に影響を与えない離隔距離をもって逐一更新したうえ打撃ハンマ4aにより検定打撃をして検定を行う反発式硬度計の検定装置において、位置変更手段3が、硬度マスター載置台6の底面に当接されて硬度マスター載置台6を周方向に一定距離僅少回動させる摩擦車7と、該摩擦車7を間歇的に回転させる一齣送り機構5と、該一齣送り機構5により硬度マスター載置台6を径方向に一定距離微小移動させる径方向送り機構9とからなる装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークの硬度を測定する反発式硬度計の検定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、硬度計の較正を行う硬度計の検定装置として、硬度マスターを載置させた逆円錐台状の摩擦ローラを受けローラに背面が当接される中間ローラにより間歇回転させて検定打撃位置を打撃毎に逐一更新させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、逆円錐台状の摩擦ローラの側面に中間ローラを当接させるため、圧接力が十分に得られないため、硬度マスターの回動量を一定させることが難しいという問題があった。また、硬度マスターの径方向の送りは中間ローラを摩擦ローラと受けローラ間で昇降動させることにより行っているが、摩擦ローラと受けローラは中間ローラと点接触しているので滑り発生し易いうえに、接触面の摩耗により送り位置が変動するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−68933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬度マスターの回動量や送り量を一定にして、検定打撃位置の離隔距離精度を高めて硬度マスターを無駄よく使用することができる反発式硬度計の検定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基準硬度を有する硬度マスターへの検定打撃位置を、位置変更手段により検定に影響を与えない離隔距離をもって逐一更新したうえ打撃ハンマにより検定打撃をして検定を行う反発式硬度計の検定装置において、位置変更手段が、硬度マスター載置台の底面に当接されて硬度マスター載置台を周方向に一定距離僅少回動させる摩擦車と、該摩擦車を間歇的に回転させる一齣送り機構と、該一齣送り機構により硬度マスター載置台を径方向に一定距離微小移動させる径方向送り機構とからなることを特徴とする反発式硬度計の検定装置である。
【0007】
なお、一齣送り機構のラチェットと駆動爪の係合を解く解除機構を設けたものとしてもよい。
【0008】
また、径方向送り機構が、硬度マスター載置台の回動を伝達する回転軸方向変換機構の送りプーリにより回転される回転軸と、該回転軸の先方部に形成された送りねじと、該送りねじに螺挿される固定の雌ねじとからなるものとしてもよい。
【0009】
さらに、回転軸方向変換機構が、硬度マスター載置台に形成される駆動プーリと、駆動方向を変えるガイドプーリと、径方向送り機構の回転軸に取り付けられる送りプーリと、前記ガイドプーリを介して駆動プーリと送りプーリとに巻き掛けた送りベルトとからなるものとしてもよい。
【0010】
また、硬度マスター載置台の動きを止めるブレーキ機構を設けるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、位置変更手段が、硬度マスター載置台の底面に当接されて硬度マスター載置台を周方向に一定距離僅少回動させる摩擦車と、該摩擦車を間歇的に回転させる一齣送り機構と、該一齣送り機構により硬度マスター載置台を径方向に一定距離微小移動させる径方向送り機構とからなるものとすることにより、周方向と径方向の異なる動作を分離しているので、信頼性が高く位置精度の高い機構とすることができるうえに、一齣送り機構の動作に基づいて摩擦車と送り機構とを連動動作させるため周方向と径方向は同時に移動できるので、すばやく検定打撃位置に移動させることができる。また、各検定打撃位置の離隔距離は常に一定となるため硬度マスターの検定面を無駄なく有効に使えるので、ランニングコストの低減をはかることができる。
【0012】
さらに請求項2のように、一齣送り機構のラチェットと駆動爪の係合を解く解除機構を設けたものとすることにより、硬度マスター載置台を初期位置に簡単に復帰移動させることができる。
【0013】
また、請求項4のように、回転軸方向変換機構が、硬度マスター載置台に形成される駆動プーリと、駆動方向を変えるガイドプーリと、径方向送り機構の回転軸に取り付けられる送りプーリと、前記ガイドプーリを介して駆動プーリと送りプーリとに巻き掛けた送りベルトとからなるものとすることにより、硬度マスター載置台の周方向の回動が硬度マスター載置台の径方向の移動に確実且つ、円滑に変換される。
【0014】
さらに、請求項5のように、硬度マスター載置台の動きを止めるブレーキ機構を設けることにより、打撃時、硬度マスターの揺れを確実に抑えることができるので、検定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示す一部切欠正面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】同じく左側面図である。
【図4】同じく右側面図である。
【図5】同じく一部切欠平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図1〜5に基づいて詳細に説明する。
図1において、1は基準硬度を有する硬度マスター2への検定打撃を行なう反発式硬度計を組み込んだ検定装置であり、該検定装置1は検定に影響を与えない離隔距離をもって検定打撃点を逐一更新させる硬度マスター2の位置変更手段3と、ワークまたは硬度マスター2のいずれか一方に打撃ハンマ4aを配置できる反発式硬度計4とよりなるものである。
【0017】
前記位置変更手段3は図1、5に示されるように、一齣送り機構5により駆動されて硬度マスター載置台6を間歇的に周方向に一定距離僅少回動させる摩擦車7と、硬度マスター載置台6の間歇回動を後記する径方向送り機構9に伝達する回転軸方向変換機構8と、該回転軸方向変換機構8によって硬度マスター載置台6を半径方向に一定距離微小移動させる径方向送り機構9とからなる。
【0018】
位置変更手段3により硬度マスター2が間歇的に周方向に一定距離僅少回動しながら径方向に一定距離微小移動することによって打撃ハンマ4aの検定打撃位置は図2に示されるように、周方向及び半径方向において等間隔の渦巻き状となる。
【0019】
一齣送り機構5は図1、5に示されるように、ベース10上に立設されたフレーム10aに回動板11を介して取り付けられるラチェット駆動シリンダ12と、該ラチェット駆動シリンダ12のロッド先端に取り付けられるばねよりなる駆動爪12aと、フレーム10aに軸止される回転自在なラチェット13と、ラチェット13の外周面に形成される係止溝13aと、駆動爪12aの後退時、後退する駆動爪12aによりラチェット13が逆回転することを防止する連れ回り防止ばね14とからなる。
【0020】
17は一端を軸止され枢動自在な回動板11をロックする固定ねじ、18はラチェット13に設けられる手動用ハンドルであり、該手動用ハンドル18は硬度マスター2を交換した際、硬度マスター載置台6を初期位置に復帰させるためにラチェット13を逆回転させるものである。ラチェット13を逆転させる際には、ラチェット13の係止溝13aに係合されている駆動爪12a及び連れ防止ばね14の押圧を解く必要があるため、固定ねじ17を緩めて回動板11を枢動させて駆動爪12aの係止を解くとともに連れ回り防止ばね14の押圧を解除する。
【0021】
また、摩擦車7は図1に示されるように、硬度マスター載置台6の基台20cを直交貫通して、フレーム10aと軸受け10b間に張架軸止されたラチェット13の回転軸13bの他端に取り付けられて、硬度マスター載置台6の底面に当接されている。7aは摩擦車7の周面に設けられる摩擦リングであり、該摩擦リング7aは硬度マスター載置台6の底面に形成されたアヤメローレットの摩擦面と当接して滑りを生じることなく硬度マスター載置台6を周方向に一定距離僅少移動させる。
【0022】
前記回転軸13bの軸線方向は硬度マスター載置台6の移動方向としている。7cは摩擦車7を硬度マスター載置台6の底面に圧接させる加圧ばねであり、該加圧ばね7cと摩擦面により摩擦車7がスリップして硬度マスター載置台6の移動量にずれが生じないようにしている。また、加圧ばね7cは軸受け10bの底部に取り付けられている。
【0023】
また、回転軸方向変換機構8は、図1に示されるように、硬度マスター載置台6に形成される駆動プーリ6cと、径方向送り機構9の回転軸8bに取り付けられる送りプーリ21と、送りベルト23の方向を変えるガイドプーリ22と、前記駆動プーリ6cと送りプーリ21とに巻き掛けられる送りベルト23とからなり、水平回動を垂直回動に変換する。
【0024】
さらに、径方向送り機構9は、図1に示されるように、硬度マスター載置台6の基台20cを径方向にスライド自在とするリニアガイド20と、硬度マスター載置台6の基台20cに直交して軸止される回転軸8bと、該回転軸8bの先方部を形成される送りねじ8aと、回転軸8bの中間部に取り付けられる回転軸方向変換機構8の送りプーリ21と、前記送りねじ8aに螺挿されてフレーム10aに固定される雌ねじ30とからなる。前記リニアガイド20はベース10に敷設されるレール20aと、該レール20aと係合するとともに基台20cを立設させたリニアガイドブロック20bとよりなる。
【0025】
また、前記反発式硬度計4は図1に示されるように、上端にトリガーボタン4bを設けたもので、該トリガーボタン4bは検定打撃を行う際、打撃ハンマ4aの打撃動作を行う付勢されたトリガーばねを手動またはシリンダ等でリリースさせるためのものである。
【0026】
25はブレーキ機構であり、該ブレーキ機構25は硬度マスター載置台6の底面に圧接されるパッド25aとシリンダ25bとからなり、検定打撃時に硬度マスター載置台6の揺れを止めて検定精度を向上させるものである。
【0027】
このように構成されたものは、コンベアにより搬送されるワークに対して反発式硬度計4によりワークの硬度測定を行い、測定回数が例えば、100回に達するか、1日ワークの硬度測定を行ったら、反発式硬度計4をコンベアと並設される検定装置1に移動させ、反発式硬度計4の打撃ハンマ4aを検定装置1の硬度マスター2の検定面に当接させたうえ、トリガーボタン4bを作動させて打撃ハンマ4aは基準硬度を有する硬度マスター2に対して検定打撃を行う。この検定打撃による検出値に基づいて反発式硬度計4の較正を行い硬度測定値が変わることがないようにしている。
【0028】
較正後、反発式硬度計4を再びコンベア上のワーク位置に移動させてワークの硬度測定を繰り返すこととなる。そして、ワークの硬度測定回数が所定数に達するか、1日の作業が終了したら、再び、反発式硬度計4を検定装置1の硬度マスター2上に移動させて検定打撃を行うこととなるが、硬度マスター2と打撃ハンマ4a位置は前回の検定打撃位置と同じで、打撃ハンマ4aによる圧痕が残っているため、更新移動手段3を作動させて硬度マスター2の打撃位置を検定に影響しない離隔距離だけ移動更新する。
【0029】
更新移動手段3による硬度マスター2を取り付けた硬度マスター載置台6の更新移動は、一齣送り機構5のラチェット駆動シリンダ12を作動させて、ラチェット13の係止溝13aと係合する駆動爪12aを進出させれば、ラチェット13の係止溝13aを1歯分回転させることとなる。
【0030】
ラチェット13の回転にともなって回転軸13aは回転するため、摩擦車7も回転し、硬度マスター載置台6を一定距離回転させる。硬度マスター載置台6の回転にともなって駆動プーリ6cも回転し、送りベルト23を介して送りプーリ21は回転し、送りねじ8aは回転する。送りねじ8aはベース10に固定される雌ねじ30に螺合され、基台20cに軸止されているため、硬度マスター載置台6と送りプーリ21とは径方向に移動することとなる。
【0031】
そして、新しい検定打撃位置においてトリガーボタン4bを作動させてトリガーばねにより付勢されている打撃ハンマ4aによる硬度マスター2に対する検定打撃を行い測定値に基づいて較正を行うことにより、反発式硬度計4によるワーク硬度を常に正確に測定することができるものとなる。
【符号の説明】
【0032】
1 検定装置
2 硬度マスター
3 位置変更手段
4 反発式硬度計
4a 打撃ハンマ
4b トリガーボタン
5 一齣送り機構
6 硬度マスター載置台
6c 駆動プーリ
7 摩擦車
7a 摩擦リング
7c 加圧ばね
8 回転軸方向変換機構
8a 送りねじ
8b 回転軸
9 径方向送り機構
10 ベース
10a フレーム
10b 軸受け
11 回動板
12 ラチェット駆動シリンダ
12a 駆動爪
13 ラチェット
13a 係止溝
13b 回転軸
14 連れ回り防止ばね
17 固定ねじ
18 手動用ハンドル
20 リニアガイド
20a レール
20b リニアガイドブロック
20c 基台
21 送りプーリ
22 ガイドプーリ
23 送りベルト
25 ブレーキ機構
25a パッド
25b シリンダ
30 雌ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準硬度を有する硬度マスターへの検定打撃位置を、位置変更手段により検定に影響を与えない離隔距離をもって逐一更新したうえ打撃ハンマにより検定打撃をして検定を行う反発式硬度計の検定装置において、位置変更手段が、硬度マスター載置台の底面に当接されて硬度マスター載置台を周方向に一定距離僅少回動させる摩擦車と、該摩擦車を間歇的に回転させる一齣送り機構と、該一齣送り機構により硬度マスター載置台を径方向に一定距離微小移動させる径方向送り機構とからなることを特徴とする反発式硬度計の検定装置。
【請求項2】
一齣送り機構のラチェットと駆動爪の係合を解く解除機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の反発式硬度計の検定装置。
【請求項3】
径方向送り機構が、硬度マスター載置台の回動を伝達する回転軸方向変換機構の送りプーリにより回転される回転軸と、該回転軸の先方部に形成された送りねじと、該送りねじに螺挿される固定の雌ねじとからなることを特徴とする請求項1または2に記載の反発式硬度計の検定装置。
【請求項4】
回転軸方向変換機構が、硬度マスター載置台に形成される駆動プーリと、駆動方向を変えるガイドプーリと、径方向送り機構の回転軸に取り付けられる送りプーリと、前記ガイドプーリを介して駆動プーリと送りプーリとに巻き掛けた送りベルトとからなることを特徴とする請求項3に記載の反発式硬度計の検定装置。
【請求項5】
硬度マスター載置台の動きを止めるブレーキ機構を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の反発式硬度計の検定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47653(P2011−47653A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193780(P2009−193780)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)