説明

反転蓋付き棺

【課題】納棺の後でもヒンジを取り外すことなく、簡単な操作で上蓋の開き方を左右反転する。
【解決手段】反転蓋付き棺10は、下箱12と上蓋13とを備える。下箱12の左右いずれか片側にヒンジ16によって上蓋13が開閉可能に取り付けられる。下箱12は、下箱本体12Aの開口端に枠体12Aが載置されてなる。枠体12Aの左右いずれか片側に、上蓋12を開閉可能なヒンジ16が取り付けられる。枠体12Aの開口形状は、下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを左右反転させて載置可能になっている。上蓋13は、その長さ方向の中間位置で前蓋13Aと後蓋13Bとに分割され、前蓋13Aと後蓋13Bが上蓋13の長さ方向の中間位置を境界として前後対称な外観になっているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反転蓋付き棺に関するもので、特に、下箱の左右片側でヒンジにより上蓋が開閉する洋タイプの棺に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、棺には、大別して和棺と洋棺の2種類のタイプが知られている。和棺は、下箱の上に小窓付きの上蓋が載置されるもので、納棺後の遺体との対面は、上蓋全体を取り外すか小窓を開閉することで行う。
一方、洋棺は、下箱の左右片側に上蓋がヒンジによって開閉可能に取り付けられるもので、上蓋が左右いずれかの一方から開くようになっている。上蓋が、遺体の頭部に当たる部分と、胴体部に当たる部分とに分割されて、それぞれ独立に開閉するものもある(特許文献1参照)。
その他の棺としては、上蓋が左右両側のヒンジにより観音扉式に開閉するタイプの棺も知られる(特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3069607号公報
【特許文献2】特開2001−145673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、葬儀の際に棺を使用する場合、通常は、遺族等が遺体の納棺を行った後に、告別式等を執り行う葬儀場へ棺を運ぶ。葬儀場では、遺影や位牌とともに棺が所定の場所に配置されることになる。
【0005】
ところが上記のような洋棺では、葬儀場の室内に棺を配置するときに、遺体の向きと棺の向きを適正な向きに合致させて置けないことがある。つまり、洋棺では、上蓋がヒンジにより下箱の左右片側に取り付けられているため、参列者に向けて上蓋が開くように棺を配置すると、遺体の頭の向きが一方に限定されてしまう。通常、葬儀場の室内では、遺体の頭の向きを北や西といった慣習的に決められた方向に向けるため、上蓋の開く向きを参列者側に向けると、遺体の頭の向きが決められた方向に向かず、逆に、遺体の頭の向きを決められた方向に向けると、上蓋が参列者と反対側に向いて、遺体との対面等の妨げになるといった問題がある。
【0006】
予め葬儀場の室内配置を想定して遺体の納棺を行えばこのような問題が生じることはないが、通夜などの忙しい中ではこのような配慮が行き届かないことが多く、遺体の向きまで想定していないのが現状である。
【0007】
また、葬儀場で棺のヒンジを取り外して上蓋を左右反対に付け直す方法もあるが、付け直しの作業が煩雑であるし、ヒンジの取付け跡が残って見栄えが悪くなることもある。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、納棺の後でもヒンジを取り外すことなく、簡単な操作で上蓋の開き方を左右反転することを可能にした反転蓋付き棺を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[第1発明]
前記課題を解決するための第1発明の反転蓋付き棺は、
下箱と、この下箱の左右いずれか片側にヒンジによって開閉可能に取り付けられる上蓋とを備えた棺において、
前記下箱は、下箱本体の開口端に枠体を載置してなるものであり、
前記枠体の左右いずれか片側に、前記上蓋を開閉可能な前記ヒンジが取り付けられるとともに、前記枠体の開口形状が、前記下箱本体の開口端に前記枠体を左右反転させて載置可能に形成される構成とした。
【0010】
このような構成によれば、下箱本体から枠体を持ち上げると、枠体が上蓋と一緒になって下箱本体から分離する。枠体を左右反転させて下箱本体の開口端に載置すると、同時に上蓋のヒンジ位置が左右反対になる。すなわち、枠体と上蓋とを一緒に持ち上げて左右反転させて置き直すだけで、上蓋の開き方を左右反転させることができる。
【0011】
この結果、納棺の後で棺と遺体の向きが適正でないときでも、簡単な作業で両者の向きを適正な向きに直すことができる。具体的には、予め遺体の頭の向きを葬儀場の室内の北や西といった決められた方向に向けて、その後で参列者に向けて上蓋が開くように枠体をセットすれば、上蓋と遺体とを常に好ましい向きにセットすることが可能になる。
【0012】
[第2発明]
第2発明の反転蓋付き棺は、第1発明の構成を備えるものであって、
前記上蓋が、その長さ方向の中間位置で前蓋と後蓋とに分割され、かつ、これらの前蓋および後蓋が前記上蓋の長さ方向の中間位置を境界として前後対称な外観になっている構成とした。
【0013】
前述したように、洋棺の上蓋は、頭部と胴体部とに対応する箇所に分割されて開閉することが多い。通常は、頭部と胴体部に合わせて前蓋と後蓋とをそれぞれ異なる外観(前後長さや配色等)に設定する。
第1発明の構成では、枠体と上蓋とを一緒に反転させる場合には、上蓋の前後が入れ替わるため、前蓋と後蓋の位置関係が反対になる。このため、遺体の向きに合わせて上蓋の向きを適正に直しても、前蓋と後蓋の外観が頭部と胴体部に合わなくなって使用上の不都合が生じることも起こりうる。
【0014】
第2発明の構成によれば、前蓋と後蓋との外観がその長さ方向の中間位置を境界として前後対称に設定されるため、上蓋を反転させても、前蓋と後蓋の外観が変わらない。このため、頭部と胴体部の区別なく前蓋と後蓋とを使用することができる。
【0015】
[第3発明]
第3発明の反転蓋付き棺は、第1または2発明の構成を備えるものであって、前記下箱本体または前記枠体のうち一方の開口端に、他方の開口端の内周部にスライド嵌合可能なインロウ部が設けられる構成とした。
【0016】
このような構成によれば、下箱本体または枠体の開口端のうち一方のインロウ部が他方の内周部にスライド嵌合することで、下箱本体に枠体を簡単に位置決めすることができる。
また、インロウ部によって枠体の横ズレを防止してその載置状態を安定させることができる。
【0017】
[第4発明]
第4発明の反転蓋付き棺は、第1〜3発明のいずれか一の構成を備えるものであって、前記上蓋と前記下箱との間には、前記上蓋の開放状態を所定角度で保持するための支持棒が設けられ、前記支持棒の一端が前記上蓋に、前記支持棒の他端が前記枠体に取り付けられる構成とした。
【0018】
このような構成によれば、枠体を左右反転させると、上蓋と同時に支持棒を一体的に反転させることができる。このため、上蓋の向きを反転させる度に支持棒を取り付け直すといった作業の手間がいらず、快適に棺を使用することができる。
【0019】
[第5発明]
第5発明の反転蓋付き棺は、第1〜4発明のいずれか一の構成を備えるものであって、
前記下箱本体の開口端に前記枠体を載置した状態で、前記下箱本体の側面と前記枠体の側面が上下方向に連なる構成とした。
【0020】
下箱本体に枠体を載置する場合、両者の側面の境界部分に段差が生じると、下箱の一体感が損なわれて棺の外観に違和感が生じやすい。
第5発明の構成によれば、下箱本体の開口端に枠体を載置したときに、両者の側面が上下方向に連なるため、載置部分に段差が生じない。このため、下箱の一体感が損なわれず、棺の外観を従来のデザインと遜色のないシンプルなものにすることができる。
【0021】
[第6発明]
第6発明の反転蓋付き棺は、第1〜4発明のいずれか一の構成を備えるものであって、
前記下箱本体の開口端に前記枠体を載置した状態で、前記枠体には、前記下箱の上端付近の外周に連なって側方に突出する装飾枠部が形成される構成とした。
【0022】
一般に、洋棺の形状としては、下箱の上端付近若しくは上下端付近にその外周に連なって側方に突出する装飾枠部を設けることが知られている。このような装飾枠部は、棺の外観に洋風の趣向を与えてデザイン性を高め、下箱の上に載せた上蓋の安定感を高める役割を果たしている。
【0023】
第5発明の構成によれば、下箱本体に枠体を載置した状態で、下箱の上端付近の外周に装飾枠部が現れる。このとき、枠体の存在が装飾枠部によってカムフラージュされるような形になり、下箱本体と枠体との境界部分が目立たなくなる。この結果、装飾枠部を有する洋棺に下箱本体と枠体との構成を自然な外観でとけ込ませることができる。
【0024】
[第1〜6発明]
第1〜6発明の反転蓋付き棺は、下箱の左右片側に上蓋をヒンジにより取り付けるものであればよく、その形状や材質は問わない。木製棺の他、段ボール棺であって適用することができる。
ヒンジの種類は、金属、樹脂等からなる蝶番の他、布やシートの折曲部分をヒンジとして利用するものであってもよい。棺の用途(人用、ペット用等)や種類(寝棺、座棺等)は、特に限定されることはない。
第1〜6発明は、必要に応じて単独で適用してもよいし、これらの発明を組み合わせて適用してもよい。また、本明細書に記載される他の発明を組み合わせてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、洋棺の下箱および上蓋に本発明を適用したものである。なお、本実施形態の説明上、棺の前後方向は長手方向を意味し、棺の左右方向は短手方向を意味する。
【0026】
[第1実施形態]
図1および図2に示すように、反転蓋付き棺10は、下箱12と上蓋13とを備えている。下箱12の左右片側の開口端にヒンジ16により上蓋13が開閉可能に取り付けられている。棺10の表面には装飾用の布貼り仕上げが施され、例えば下箱12と上蓋13の外側に色柄付きの布地、下箱12と上蓋13の内側に内装用の布地が貼り付けられる。これらの布地によって棺10の下地(木材等)が覆われる。
棺10の寸法は、例えば長さが170〜200cm程度、幅が50〜70cm程度、下箱12と上蓋13を含めた高さが40〜50cm程度である。
【0027】
図3および図4に示すように、下箱12は、下箱本体12Aと枠体12Bとからなる。下箱本体12Aの開口端に枠体12Bが載置されており、枠体12Bを持ち上げると、上蓋13と共に枠体12Bが下箱本体12Aから分離する(図4参照)。
下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを載置した状態で、両者の内外の側面が上下方向に連なる。つまり、下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを積み上げることで、下箱12として一体的な外観になる。
【0028】
枠体12Bの開口端には、所定の間隔を保って4個のヒンジ16が固定される(図1参照)。これらのヒンジ16に上蓋13が連結されている。枠体12Bの上下巾は、数センチ程度で均一に保たれており、その平坦な上端に上蓋13が載る。
【0029】
下箱本体12Aと枠体12Bの開口形状は、平面方向から見て長方形になっており、左右対称な関係にある。このため、下箱本体12Aに枠体12Bを載置すると、枠体12Bの左右いずれの面を手前にしても、両者の開口寸法がぴったり一致する。つまり、枠体12Bは、下箱本体12Aに対し180゜反転自在で、その向きを選択的に使用できるようになっている。
【0030】
上蓋13は、棺10の前後長さ方向のほぼ中間位置で前蓋13Aと後蓋13Bとに分割される(図1および図2参照)。前蓋13Aは、図1の前側の2個のヒンジ16によって枠体12Bに連結され、後蓋13Bは、後側の2個のヒンジ16によって枠体12Bに連結される。葬儀の際には、必要に応じて前蓋13Aと後蓋13Bの一方、または両方が開放されることになる。
【0031】
下箱12と上蓋13との間には、これらの前後端に上蓋13の開放状態を保持するための支持棒15が設けられる。これらの支持棒15は、その一端が上蓋13の内側に支軸15aにより回動可能に留められ、他端が枠体12Bの支持ピン15bに係止される。上蓋13を開放するとき、枠体12Bの支持ピン支持ピン15bに支持棒15の係止溝を嵌めることで、上蓋13が一定の開放角で保持される。
なお、支持棒15の係止溝については、その係止位置を段階的に切り換え可能にしてもよい。このようにすれば、上蓋13の開放角を自在に選択することが可能になる。
【0032】
図5に示すように、下箱本体12Aと枠体12Bとの載置部分は、互いに噛み合う構造になっている。すなわち下箱本体12Aの開口端の全周に亘ってインロウ部12aが形成され、このインロウ部12aに嵌合するように枠体12Bの下端部に内溝12bが形成される。枠体12Bを持ち上げると、これらの嵌合が外れて下箱本体12Aから上蓋13と共に枠体12Bが分離する。一方、下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを置くと、インロウ部12aに枠体12Bの内溝12bが嵌って元の棺10の形態に戻る。
【0033】
次に、反転蓋付き棺10の使用方法を図6〜図8に従って説明する。
一般に、葬儀を行う場合、図6に示すように、室内の前側には、遺影などを飾る祭壇P、その両脇に生花壇FL,FRが配置され、中央手前に棺10、さらに手前に焼香台Tが配置される。室内の後側には参列者用の座席Sが並べられる。図6の例では、図面左側が北に位置するため、葬儀の間、棺10は、遺体の頭を北に向けて、上蓋13が参列者に向いて開くように配置することが求められる。
【0034】
納棺時には、遺体の向きを気にすることなく棺10に遺体を納めることが多く、上記のような葬儀場に棺10を運んだ後で、遺体の向きと上蓋13の開き方を上記のように設定できないことがある。このような場合、葬儀場で遺体を入れ直すことは困難であるため、従来であれば、工具を用いてヒンジ16を一旦取り外し、上蓋13の向きを反転させてヒンジ16を付け直すようなことが行われていた。
【0035】
本実施形態の棺10によれば、枠体12Bを上蓋13ごと持ち上げて180゜反転させて再度、下箱本体12Aに載せることで、ヒンジ16の位置が棺10の左右反対の位置になる(図7および図8参照)。具体的には、図7に示すように、遺体の頭を北に向けたときにヒンジ16が参列者側に来る場合には、枠体12Bと上蓋13を持ち上げて左右反転させれば、図8に示すように、ヒンジ16が祭壇P側に向き、上蓋13が参列者側に向いて開くように修正される。
【0036】
このとき、上蓋13は、棺10の前後方向の中間位置で前蓋13Aと後蓋13Bとに分離されるから、これらのいずれが前に来ても同一の外観(前後長さ、配色等)で開放可能になり、棺10の見た目にも違和感が生じることはない。また、上蓋13の支持棒15も枠体12Bと一緒に反転することから、その使用が妨げられることはない。
【0037】
この結果、ヒンジ16を取り外すことなく、極めて簡単作業で上蓋13の開く向きを左右反転することができ、納棺時に遺体の向きを気にしなくとも、葬儀の際に棺10を常に適正な位置に配置することが可能になる。
【0038】
また、棺10では、枠体12Bと下箱本体12Aの側面が上下方向に連なるため、下箱12の一体感が損なわれることなく、デザイン的にも従来の洋棺と遜色のない形状になる。また、下箱12の内側にも枠体12Bと下箱本体12Aとの段差が生じないため、納棺時に枠体12Bが邪魔になることもない。
【0039】
さらに、反転蓋付き棺10では、枠体12Bが下箱本体12Aのインロウ部12aで位置決めされるから、下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを横ズレなく安定させることができるといった効果も得られる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図9〜図11に示した。第2実施形態は、下箱の外周に装飾枠部を有する洋棺に本発明を適用したものである。
【0041】
図9に示すように、棺20は、下箱22と上蓋23とからなる。下箱22の開口端にヒンジ26(図10参照)により上蓋23が開閉可能に取り付けられる。第1実施形態と同様に、上蓋23は、棺20の前後方向の中間位置で前蓋23Aと後蓋23Bとに分割されている。
【0042】
下箱22の上端および下端付近には、その外周に沿って装飾枠部22Dが側方に突き出している。装飾枠部22Dは、ほぼ均一な上下巾と厚みで水平方向に連なり、棺20の外観の立体感を高めている。棺20を平面から見ると、上蓋23と装飾枠部22Dの外形線がほぼ一致する。
【0043】
図10に示すように、下箱22は、下箱本体22Aの開口端に枠体22Bが載置される。枠体22Bを持ち上げると、枠体22Bが上蓋23と共に下箱本体22Aから分離するようになっている(図11参照)。
枠体22Bの開口形状は、第1実施形態と同様に左右対称になっており、下箱本体22Aに対し枠体22Bを180゜反転可能になっている。
【0044】
枠体22Bは、縦部22aと横部22bとがほぼ垂直に延びるL字形の断面を有している。縦部22aの厚みは、装飾枠部22Dの厚みに等しく、横部22bの長さは、下箱本体22Aの開口端の巾に等しい。縦部22aと横部22bの内側は、下箱本体22Aの上端外周部に嵌合する内溝22cとなっている。
【0045】
第2実施形態の棺20によっても、下箱本体22Aに枠体22Bを左右反転させることで、上蓋23の開く向きを自在に選択することができる。このため、納棺時に遺体の向きを気にしなくとも、棺20を常に適正な位置に配置することができる。
【0046】
また、棺20では、枠体22Bが装飾枠部22Dを兼ねる構成であるから、枠体22Bの存在が装飾枠部22Dの外観に紛れて目立ちにくくなり、下箱本体22Aと枠体22Bとの一体感を高めることができる。
【0047】
さらには、下箱本体12Aの開口端の外周部に枠体22Bの内溝22cを嵌めることで、下箱本体12Aに枠体22Bを位置決めし、下箱本体12Aの開口端に枠体12Bを横ズレなく安定させることもできる。
【0048】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を図12に示した。第3実施形態は、平面形状が八角形の棺に本発明を適用したものである。
図12に示すように、棺30は、下箱32と上蓋33が平面方向から見て八角形になるように四隅部が面取りされる。上蓋33の上端四隅は三角形に面取りされて宝飾品のような多面体の外観になっている。
下箱32の開口端には、ヒンジ36により上蓋33が開閉可能に取り付けられる。上蓋33は、棺30の前後方向の中間位置で前蓋33Aと後蓋33Bとに分割される。
【0049】
下箱32は、下箱本体32Aの上に枠体32Bが分離に載置されており、枠体32Bを持ち上げると、下箱本体32Aから枠体32Bおよび上蓋33が分離する。
下箱本体32Aと枠体32Bの開口形状はともに平面八角形で、下箱本体32Aの上に枠体32Bを載置した状態で、両者の側面が上下方向に連なる。これにより、第1実施形態と同様に、下箱本体22Aに対し枠体22Bを180゜反転させることが可能になっている。
【0050】
なお、下箱本体32Aと枠体32Bの載置部には、第1実施形態と同様なインロウ部と内溝が設けられており、枠体32Bの横ズレが防止されている。
【0051】
第3実施形態の棺30によっても、下箱本体32Aに枠体32Bを左右に反転させることで、上蓋33の開き方を自在に選択することができる。これにより、前述した実施形態と同様に、簡単な作業で迅速に上蓋33を適正な向きに変更することが可能になる。
【0052】
また、下箱本体32Aと枠体32Bとの側面が上下方向に段差なく連なるため、下箱32が通常の洋棺と比較して遜色のない一体感のある外観形状になり、棺30の見栄えが良好になる。
さらには、第3実施形態では、その外観形状に宝飾品のような面取りが施されるため、棺30の高級感を高めることができる。
【0053】
[変形例]
第1〜3実施形態を説明したが、本発明の実施形態はこれらに限定されることなく、種々の変形・変更を伴ってもよい。
例えば下箱および上蓋の両方、またはいずれかに強化段ボール材を採用してもよい。強化段ボール材としては、三層強化段ボール(トライウォール社製)を使用することができる。この種の段ボール材は、2枚の厚板(ライナー)の間に、3層の波板が仕切り板を介して積層されてなるもので、優れた耐圧性・耐水性をもつ。
また、第1〜3実施形態では、蝶番タイプのヒンジを示したが、上蓋を開閉するものであればこれに限られず、下箱(枠体)と上蓋との連結部を布等で覆って折り曲げ自在としたものをヒンジとすることもできる。特に、下箱(枠体)と上蓋との連結部分を外装用の布地で覆うと、ヒンジの存在が目立たない反転蓋付き棺を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態の反転蓋付き棺を示すもので、上蓋が開放された状態を示す斜視図である。
【図2】同棺を示すもので、上蓋が閉鎖された状態を示す斜視図である。
【図3】同棺を示す断面図である。
【図4】同棺を示すもので、下箱本体と枠体の分離状態を示す断面図である。
【図5】図4のヒンジ付近を示す部分拡大図である。
【図6】同棺の使用状態を示すもので、葬儀場の室内配置を示す平面図である。
【図7】同棺の使用方法を説明するもので、上蓋が祭壇側に向いて開放した状態を示す断面図である。
【図8】同棺の使用方法を説明するもので、上蓋が参列者側に向いて開放した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の反転蓋付き棺を示すもので、上蓋が閉鎖された状態を示す斜視図である。
【図10】同棺を示す断面図である。
【図11】同棺を示すもので、下箱本体と枠体の分離状態を示す断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の棺を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0055】
10,20,30 棺
12,22,32 下箱
12A,22A,32A 下箱本体
12B,22B,32B 枠体
12a インロウ部
12b 内溝
13,23,33 上蓋
13A,23A,33A 前蓋
13B,23B,33B 後蓋
15 支持棒
15a 支軸
15b 支持ピン
16,26,36 ヒンジ
22D 装飾枠部
22a 縦部
22b 横部
22c 内溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下箱と、この下箱の左右いずれか片側にヒンジによって開閉可能に取り付けられる上蓋とを備えた棺において、
前記下箱は、下箱本体の開口端に枠体を載置してなるものであり、
前記枠体の左右いずれか片側に、前記上蓋を開閉可能な前記ヒンジが取り付けられるとともに、前記枠体の開口形状が、前記下箱本体の開口端に前記枠体を左右反転させて載置可能に形成されることを特徴とする反転蓋付き棺。
【請求項2】
請求項1記載の反転蓋付き棺であって、前記上蓋が、その長さ方向の中間位置で前蓋と後蓋とに分割され、かつ、これらの前蓋および後蓋が前記上蓋の長さ方向の中間位置を境界として前後対称な外観になっている、反転蓋付き棺。
【請求項3】
請求項1または2記載の反転蓋付き棺であって、前記下箱本体または前記枠体のうち一方の開口端に、他方の開口端の内周部にスライド嵌合可能なインロウ部が設けられる、反転蓋付き棺。
【請求項4】
請求項1,2または3記載の反転蓋付き棺であって、前記上蓋と前記下箱との間には、前記上蓋の開放状態を所定角度で保持するための支持棒が設けられ、前記支持棒の一端が前記上蓋に、前記支持棒の他端が前記枠体に取り付けられる、反転蓋付き棺。
【請求項5】
請求項1,2,3または4記載の反転蓋付き棺であって、前記下箱本体の開口端に前記枠体を載置した状態で、前記下箱本体の側面と前記枠体の側面が上下方向に連なる、反転蓋付き棺。
【請求項6】
請求項1,2,3または4記載の反転蓋付き棺であって、前記下箱本体の開口端に前記枠体を載置した状態で、前記枠体には、前記下箱の上部側面の外周に連なって側方に突出する装飾枠部が形成される、反転蓋付き棺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−112602(P2009−112602A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290376(P2007−290376)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(594101994)有限会社平和カスケット (12)