説明

収納ケース

【課題】 長尺状の収納物を出し入れ可能に収納でき、開閉がしやすく、使用時には開放状態として収納物の交換が行いやすい収納ケースを提供することを課題とする。
【解決手段】 蓋部材13は開く方向に回転力が付与されており、スライド部材12の係止部と蓋部材13の係止部69を係合することによって、開口39を封鎖する状態を維持する。また、開く際には、スライド部材12を移動させることにより、前記係合がはずれて自動的に開き、また、閉じるときには蓋部材13を反転させることにより行う。さらに、蓋部材13が開くと、収納部材10が回転して傾斜するので、取り出しやすく蓋を開けた状態でも収納物が外部に出にくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、彫刻刀などを収納できる収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、彫刻刀は、刃先の形状の異なる複数の種類の彫刻刀をセットとして販売されている。そして、これらの彫刻刀は収納ケースに入れられている。また、彫刻刀の彫刻刀ケースは、彫刻刀の長手方向を一定の方向として、彫刻刀を並列状態にして収納されている。
【0003】
この彫刻刀ケースを改良したものが、例えば、特許文献1を含め、多くの文献により開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−93221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
彫刻刀などの長尺状の収納物を収納する収納ケースは、収納時には確実に収納することができ、収納ケースを開ける際には収納物の飛び出しなどが無く、取り出しの際には必要な収納物の取り出しが行いやすいことが望ましい。特に、彫刻刀などの場合には、誤って刃先が触れるとけがのおそれがある。しかし、従来の収納ケースでは、確実に収納することが出来るものでは取り出しにくくなってしまい、取り出しやすく収納を確実とすると、構造が複雑になってしまう。
【0006】
また、彫刻刀などを用いる場合に、使用中に刃先を違うものなど別の種類の収納物に変えて使用することがある。そして、収納ケースを開放状態としながら彫刻刀が外部に出にくい状態とすることができれば、使用時には開放状態としておくことにより彫刻刀などの収納物の交換を行いやすい。
【0007】
そこで、本発明は、開閉がしやすく、使用時には開放状態として収納物の交換が行いやすい収納ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、長尺状の収納物を出し入れ可能に収納できる収納ケースにおいて、本体部材及び蓋部材を有し、前記本体部材には収納物が収納可能な収納空間を有し、前記収納空間の長手方向の一方には開口が設けられており、前記蓋部材は開閉可能であって閉じた状態では本体部材の開口側に配置されて収納空間に収納された収納物の移動を阻止し、蓋部材には軸部が設けられ、前記軸部が軸支されて本体部材に対して回転可能であって、蓋部材が開く方向に回転力が付与されており、本体部材と蓋部材とが係合することによって蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持することができ、前記係合を解くと、蓋部材は回転速度を制御しながら開くものであることを特徴とする収納ケースである。
ここで、長手方向とは、長尺状の収納物が収納された状態における長手方向を意味するものである。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、長尺状の収納物の出し入れを容易に行うことができ、また、蓋を開ける作業、蓋を閉じる作業を容易に行うことができる。すなわち、蓋部材は開く方向に回転力が付与されており、回転力発生部材によって回転速度を制御しながら開くので、本体部材と蓋部材との係合を解くことにより、ゆっくり自動的に開けることができる。また、閉じるときには、蓋部材を反転させて本体部材と蓋部材との係合させることにより行うことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、回転力発生部材が設けられ、前記回転力発生部材によって蓋部材が開く方向に回転力が付与されており、回転力発生部材には内筒部、外筒部及びコイルバネを有し、前記内筒部は外筒部の内側に配置されて相対回転が可能であり、内筒部と外筒部との間には粘性体が設けられて、内筒部と外筒部との間で回転力が発生した場合に回転速度を制御しながら相対回転するものであり、内筒部と外筒部とはコイルバネを介して接続されて任意回転の位置から回転すると、前記任意の回転位置に向かって回転力を発生するものであり、さらに、内筒部には第1係合部が設けられ、外筒部には第2係合部が設けられ、第1係合部及び第2係合部のいずれか一方が本体部材と係合し、他方が蓋部材と係合していることを特徴とする請求項1に記載の収納ケースである。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、回転力発生部材は、第1係合部が設けられた内筒部と、第2係合部が設けられた外筒部とを有し、内筒部と外筒部とはコイルバネを介して接続されて任意の回転位置に向かって回転力を発生するものであり、内筒部と外筒部との間には粘性体が設けられているものであるので、蓋部材の回転速度を制御を容易に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、本体部材には被押圧部が設けられて、前記被押圧部を収納空間側に向かって押すことによって本体部材と蓋部材との係合を解くことができることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納ケースである。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、本体部材には被押圧部が設けられて、前記被押圧部を収納空間側に向かって押すことによって本体部材と蓋部材との係合を解くことができるので、操作がしやすい。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記被押圧部は、収納空間を基準として蓋部材の回転軸とは反対側に位置していることを特徴とする請求項3に記載の収納ケースである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記被押圧部は、収納空間を基準として蓋部材の回転軸とは反対側に位置しているので、蓋部材の回転軸が設けられた側を下側にして台などに置いた状態で、被押圧部を押しやすい。
【0016】
請求項5に記載の発明は、蓋部材の回転軸を下側にし、被押圧部を上側にして平面状の台の上に置き、蓋部材を閉じた状態から開いた状態とすると、収納空間の開口側が上昇しつつ、収納空間が前記台に対して傾斜するものであることを特徴とする請求項4に記載の収納ケースである。
【0017】
請求項5に記載の収納ケースでは、被押圧部を上側にして平面状の台の上に置いて、蓋部材を閉じた状態から開いた状態とすると、収納空間の開口側が上昇しつつ、収納空間が前記台に対して傾斜するので、被押圧部を押すだけで、蓋部材を開いた状態としながら収納空間を傾斜状態とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、長尺状の収納物を出し入れ可能に収納できる収納ケースにおいて、本体部材、係止部、収納部材及び蓋部材を有し、前記収納部材は収納物が収納可能な収納空間を有し、前記収納空間の長手方向の一方には開口が設けられ、長手方向の他方で収納部材は本体部材に回転可能に軸支されており、前記蓋部材は収納部材の開口側に配置されて収納空間に収納された収納物の移動を阻止し、本体部材に対して回転可能に軸支されて開く方向に回転力が付与されており、前記係止部が係合することによって蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持することができ、前記係合を解くと、蓋部材が開くように回転するとともに、収納部材が回転して収納物の開口側への移動阻止を解除することを特徴とする収納ケースである。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、長尺状の収納物の出し入れを容易に行うことができ、また、蓋を開ける作業、蓋を閉じる作業を容易に行うことができる。すなわち、蓋部材は開く方向に回転力が付与されており、係止部が係合することによって蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持することができる。また、開く際には、係合を解いて行うことができる。
また、上記の収納ケースにスライド部材を設け、スライド部材と蓋部材に係合部を設けて、この係合部により蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持するようにすることもできる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、蓋部材には当接面が設けられており、蓋部材が回転する際に前記当接面が収納部材に設けられた接触部に接触することにより収納部材の回転を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の収納ケースである。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、蓋部材が回転する際に当接面が収納部材の接触部に接触することにより収納部材の回転させることができるので、容易に収納部材の傾斜を行うことができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、蓋部材の回転軸方向の両端には欠落部が設けられ、前記欠落部の端部が当接面となっており、収納部材の接触部は2カ所設けられて、接触部同士の間に蓋部材が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の収納ケースである。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、欠落部を形成することにより当接面を容易に形成することができる。
【0024】
請求項9に記載の発明は、蓋部材には円筒部が設けられ、前記円筒部の内側には本体部材に固定されて外形断面が円形である挿入部材が挿入されており、蓋部材が回転する際には挿入部材の外側と円筒部の内側との間で摩擦力が発生することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の収納ケースである。
【0025】
請求項9に記載の発明によれば、蓋部材が回転する際には挿入部材の外側と円筒部の内側との間で摩擦力が発生するので、蓋部材が開く際の速度をゆっくりとすることができる。
【0026】
請求項10に記載の発明は、挿入部材と円筒部との間には粘性体があることを特徴とする請求項9に記載の収納ケースである。
【0027】
請求項10に記載の発明によれば、挿入部材と円筒部との間には粘性体があるので、蓋部材の回転速度の調節が容易となる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、全体形状が上面及び上面に対向する下面を有する板状であり、上面と下面との間に収納空間が配置されるものであり、蓋部材には板部が設けられ、蓋部材が閉じた状態では前記板部が上面の一部を形成し、蓋部材が完全に開いた状態では前記板部が下面を越えるものであることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の収納ケースである。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、蓋部材には板部が設けられ、蓋部材が閉じた状態では前記板部が上面の一部を形成し、蓋部材が完全に開いた状態では前記板部が下面を越えるものであるので、蓋部材が完全に開いた状態での傾斜角度を大きくすることができ、収納物を取り出しやすく、蓋を開けた状態でも収納物が外部に出にくい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の収納ケースは、開閉がしやすく、使用時には開放状態としても収納物が外部に出にくく、収納物の収納・取り出しが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態の収納ケースを閉じた状態で示した斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の収納ケースを開いた状態で示した斜視図である。
【図3】収納部材を示した斜視図である。
【図4】底ケース部材を示した斜視図である。
【図5】上ケース部材を示した斜視図である。
【図6】上ケース部材を示した斜視図である。
【図7】本体ケースを示した斜視図である。
【図8】スライド部材を示した斜視図である。
【図9】蓋部材と挿入部材とばねとを示した斜視図である。
【図10】(a)が蓋部材及び挿入部材の内部とばねとを示した斜視図であり、(b)が(a)のA方向から見た斜視図である。
【図11】収納部材、蓋部材及びスライド部材の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図12】収納部材、蓋部材及びスライド部材の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図13】収納部材、蓋部材及びスライド部材の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図14】収納部材、蓋部材及びスライド部材の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図15】収納部材、蓋部材、スライド部材及び本体部材の底面の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図16】収納部材、蓋部材、スライド部材及び本体部材の底面の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図17】収納部材、蓋部材、スライド部材及び本体部材の底面の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【図18】収納物として用いられる彫刻刀の斜視図である。
【図19】本発明の第2の実施形態の収納ケースを閉じた状態で示した斜視図である。
【図20】本発明の第2の実施形態の収納ケースを開いた状態で示した斜視図である。
【図21】図19に示す収納ケースの分解斜視図である。
【図22】底ケース部材の軸受け凹部と、押さえ部材の凹部とを拡大した斜視図である。
【図23】底ケース部材の軸受け凹部、蓋部材の軸部及び回転力発生部材を示した斜視図である。
【図24】(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、蓋部材と本体部材の係合部分を示した模式図である。
【図25】回転力発生部材を示した分解斜視図である。
【図26】回転力発生部材の内部の構造を示した分解斜視図である。
【図27】本発明の第2の実施形態の収納ケースを台に置いた状態で横から見た図であり、(a)は閉じた状態を示した図、(b)は開いた状態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の具体的実施例について説明する。図1、図2は、本発明の第1の実施形態の収納ケースを示した斜視図である。図3は収納部材を示した斜視図である。図4は底ケース部材を示した斜視図である。図5、図6は、上ケース部材を示した斜視図である。図7は、本体ケースを示した斜視図である。図8は、スライド部材を示した斜視図である。図9は、蓋部材と挿入部材とばねとを示した斜視図である。図10は、(a)が蓋部材及び挿入部材の内部とばねとを示した斜視図であり、(b)が(a)のA方向から見た斜視図である。図11〜図14は収納部材、蓋部材及びスライド部材の関係を横から見た状態で示した模式図である。図15〜図17は収納部材、蓋部材、スライド部材及び本体部材の底面の関係を横から見た状態で示した模式図である。
【0033】
本発明の第1の実施形態における収納ケース1は、図1に示されるように、外形がやや丸みを帯びた板状のケースであり、収納部材10、本体部材11、スライド部材12及び蓋部材13が設けられている。そして、収納ケース1を開く場合には、スライド部材12をスライドさせることにより蓋部材13が回転するものであり、蓋部材13が開くと、図2に示されるように、収納部材10が上側に向かって回転する。
また、上記の、収納ケース1を構成する部材は樹脂の成形品が用いられているが、他の材質を用いることができる。
【0034】
本実施形態の収納ケース1に収納される収納物は、図18に示されるような彫刻刀90であり、収納ケース1には彫刻刀90の刃先91の種類の異なるものを複数収納することができる。
【0035】
収納部材10は、図3に示されるように、2つの部材が上下に合わさって構成されており、具体的には、下側に底ケース部材20が、上側に上ケース部材21が設けられている。
底ケース部材20は、図3、図4に示されるように、上部及び開口39となる一つの側面が開放し、底面25、横側面27,28、後側面29により囲まれる収納空間26を有している。そして、収納空間26を仕切る複数の仕切板23が設けられている。仕切板23は彫刻刀90の長手方向に沿って設けられるものであり、横側面27、28に沿う方向に設けられ、仕切板23同士はほぼ平行である。したがって、仕切板23及び横側面27、28により長手方向に延びる複数の空間ができる。
【0036】
また、後側面29は長手方向に垂直な面である。そして、後側面29には切り欠き部30が設けられており、仕切板23によって仕切られた複数の空間に対応して設けられている。この切り欠き部30の大きさは、彫刻刀90の刃先91の断面形状よりも大きいものである。
【0037】
横側面27、28には、外側に向かって突出する突起31が設けられている。突起31は、上ケース部材21に設けられている凹部32に対応する位置に設けられて、突起31を凹部32に挿入して、底ケース部材20と上ケース部材21とを一体化して固定する。また、横側面27、28の開放された側面側は内側に位置している。
【0038】
上ケース部材21は、図5及び図6に示されている。なお、図6は図5の状態から裏表を反対とした状態の図である。
上ケース部材21は、天板部33と、天板部33に接続する側板部35、36及びアーム37、38とを有している。そして、天板部33を底ケース部材20の収納空間26の上部に、側板部35、36を底ケース部材20の横側面27、28の外側となるようにして重ね合わせて一体化する。
【0039】
そして、重ね合わせると、上ケース部材21に設けられている凹部32と底ケース部材20の突起31によって一体化して、上ケース部材21と底ケース部材20とが固定し、仕切板23の上側と、2条突起40とが係合する。したがって、収納空間26は、長手方向に長くなるように複数に仕切られている。
【0040】
上ケース部材21と底ケース部材20とが一体化した収納部材10は、図3に示されるように、底ケース部材20の後側面29よりも外側の部分も天板部33が覆う部分である外側空間42が設けられており、彫刻刀90が収納されるとこの外側空間42に刃先91が収納される。
【0041】
また、上ケース部材21の外側空間42側には軸突起43が設けられている。軸突起43は、図5に示されるように、上ケース部材21の側板部35、36の外側に設けられている。軸突起43の形状は軸が長手方向に対して垂直である円柱の下側の部分を傾斜状に切り欠いた形状であり、また、両側の軸突起43の軸は同軸となっている。
【0042】
アーム37、38は、側板部35、36から、軸突起43とは反対側に延びた部分である。また、アーム37、38の先端部(接触部)37a、38aは、根元に比べて、上下方向の幅が狭く、アーム37、38同士の間隔が広くなっている。また、この先端部37a、38aは、後述するように蓋部材13の当接面81、82と接触する部分である。
【0043】
本体部材11は、図7に示されており、底面部48、横側面45、46及び後側面47が設けられ、底面部48、横側面45、46及び後側面47に囲まれる空間50を有している。横側面45、46及び後側面47は外側が曲面状となっている。
【0044】
横側面45、46には空間50から外部に通じる貫通孔52が設けられている。横側面45には、内側に向かって突出する円筒突起53、55が設けられている。また、横側面46には、内側に向かって突出する円筒突起54と、小判突起57が設けられている。円筒突起53、54、55には内側に円形の凹部53a、54a、55aが設けられており、小判突起57には小判型の凹部57aが設けられている。
【0045】
円筒突起53の凹部53aの中心軸と円筒突起54の凹部54aの中心軸とは同軸であり、収納部材10の上ケース部材21の軸突起43、43が挿入される。また、円筒突起55の凹部55aの中心軸と、後述する挿入部材60の突起部60aを小判突起57の凹部57aに挿入したときの、挿入部材60の中心軸とが同軸である。
【0046】
また、底面部48には、長手方向に垂直に延びる仕切部51が設けられている。そして、仕切部51の円筒突起53及び円筒突起54側の空間50には収納部材10が、仕切部51の円筒突起55及び小判突起57側の空間50にはスライド部材12と蓋部材13とが配置される。
【0047】
また、横側面45、46には内側に突出し長手方向に延びる突条58が設けられ、突条58によって後述するスライド部材12の突起65をガイドする。
【0048】
スライド部材12は、図8に示されており、操作部61、61と、底板62と、底板62から突出した付勢部63と、突起65、65が設けられている。
スライド部材12の付勢部63は、仕切部51に接触することで、仕切部51から離れる方向に付勢する。そして、操作部61が本体部材11の貫通孔52の内側から外側に向かって挿入される。
【0049】
蓋部材13は、図9に示されており、円筒部66、板部67と側面部68,68が設けられている。
円筒部66の内部は、図10に示されるように、円板部71で仕切られており、一方側には2条突起73が設けられて、他方側は、円状突起72が設けられている。円板部71の位置は、円筒部66の他方側に近い部分に位置しており、円状突起72の外径が本体部材11の円筒突起55の内径にほぼ等しいので、円筒部66の他方側は円筒突起55と係合して円筒部66が軸支される。
【0050】
また、円筒部66の両端は約半周が欠落している欠落部80を有しており、欠落部80の両端は段状となって、当接面81、82が設けられている。
【0051】
蓋部材13の板部67は円筒部66の両端付近に位置し、係止部69が設けられている。係止部69は凸部69aと凹部69bとを有し、スライド部材12の係止部64との係合を行う。具体的には、図8に示すように、スライド部材12の係止部64には凸部64a及び凹部64bが設けられており、蓋部材13の凸部69aがスライド部材12の凹部64bに入り込み、蓋部材13の凹部69bがスライド部材12の凸部64aに入り込む。また、凸部64a及び凸部69aは外側が傾斜しているので、係合していない状態で蓋部材13とスライド部材12とを上下方向に押しつける方向に力を加えると、スライド部材12が移動して係合状態とすることができる。
【0052】
また、円筒部66の一方側はばね70が挿入される。ばね70はコイル状であり、両端には端部75及び端部76が設けられている。端部75及び端部76は、ばね70のコイルの軸線に対して垂直に交差する方向に延びる部分である。
【0053】
そして、ばね70の端部75が2条突起73に係合し、また、ばね70の端部76が挿入部材60の2条突起77に係合して、蓋部材13と挿入部材60との間で回転力を発生させる。
ここで、挿入部材60は外形断面が円形であって、一方が封鎖された筒状であり、封鎖された側には突起部60aが設けられ、筒状の内部にはばね70が挿入される。
【0054】
また、挿入部材60は、突起部60aが小判突起57の凹部57aに挿入されるので、挿入部材60は本体部材11に対して回転することができない。したがって、蓋部材13と本体部材11との間にはばね70の回転力が働く。また、本実施形態では、蓋部材13が開く方向に回転力を与えるように挿入部材60、ばね70、蓋部材13を係合している。
【0055】
そして、収納ケース1の組立は以下の通りに行うことができる。
まず、スライド部材12を本体部材11にセットする。このとき、スライド部材12に設けられた2カ所の操作部61を、本体部材11の横側面45,46に設けられた貫通孔52に内側から外側に挿入する。
【0056】
次に、底ケース部材20と上ケース部材21とを一体化した収納部材10を本体部材11と連結する。このとき軸突起43、43が円筒突起53、54に挿入されるようにして、収納部材10が本体部材11に対して回転できるようにしておく。なお、軸突起43は下側が傾斜しているので、円筒突起53、54への挿入を容易に行うことができる。なお、収納部材10の回転軸は長手方向に垂直であり、板状のケースである収納ケース1の板面に平行な方向である。
【0057】
そして、蓋部材13、ばね70及び挿入部材60を連結した状態で、本体部材11にセットする。具体的には、蓋部材13を開放した状態で、突起部60aを小判突起57の凹部57aに挿入し、円状突起72を円筒突起55に挿入する。このとき、ばね70が圧縮するので容易に挿入でき、また、挿入後はばね70によって挿入方向に付勢されるので、離脱しにくい。また、蓋部材13の回転軸は長手方向に垂直であり、板状のケースである収納ケース1の板面に平行な方向である。
【0058】
このとき、収納部材10のアーム37、38の先端部37a、38aが蓋部材13の円筒部66の欠落部80に配置するようにする。
【0059】
なお、挿入部材60の外周面に粘性体を塗布しておき、挿入部材60の外周面と蓋部材13の円筒部66の内周面との間の摩擦を粘性体を介して行うようにしておく。そうすると、蓋部材13の回転の際に粘性体によるせん断抵抗が発生し、回転をゆっくりとすることができる。この粘性体の粘度は、隙間や挿入部材60の外周面の面積などに応じて所定のものを用いることができる。また、挿入部材60を蓋部材13に挿入した後に、粘性体を注入しても良い。
【0060】
さらに、この状態で蓋部材13を閉める方向に回転させて、蓋部材13の係止部69とスライド部材12の係止部64とを係合させることにより、閉じた状態を維持する。
なお、蓋部材13が開いた状態では、図2にも示されるように、円筒部66の欠落部80は上側にあり、収納部材10のアーム37,38の先端部37a、38aが欠落部80に配置される関係上、収納部材10が傾斜することになるが、蓋部材13を閉めることにより円筒部66が回転して欠落部80が反転して下側に移動し、収納部材10の傾斜が無くなる。また、収納部材10の開口39は蓋部材13側に位置しており、蓋部材13の円筒部66によって、収納空間26に収納された彫刻刀90が外部に出ることを阻止することができる。
【0061】
次に、本実施形態の収納ケース1の開閉動作について、説明する。
図11〜図17は、収納部材10、蓋部材13及びスライド部材12の関係を、横方向(図1、図2において、左下側から右上側に向かう方向)から見た状態で示した図であり、特に、図15〜図17については、本体部材11の底面部48との関係も加えて示している。なお、アーム38側から見た図のみを図示しているが、対称形であるのでアーム37の動きについても同様である。
【0062】
図1に示すような蓋部材13を閉じた状態の、収納部材10、蓋部材13及びスライド部材12の関係は、図11に示されている。そして、この状態では、収納部材10は傾いておらず、また、蓋部材13が開く方向に回転力が働いているにもかかわらず、蓋部材13とスライド部材12は係止部64と係止部69によって係合されているので閉じた状態を維持している。
【0063】
そして、図11の状態から操作部61を移動させることにより、スライド部材12をスライドして、図12に示されるように係止部64と係止部69との係合を解くと、上記したようにばね70による回転力により、蓋部材13は開く方向に回転する。この回転の回転軸は長手方向に対して垂直である。また、スライド部材12は、付勢部63により付勢されているので、力を抜くことによりものと方向に戻る。この状態を示したのが図13である。
【0064】
さらに、蓋部材13は回転して、図14から図15、図16の状態を経て、図17の状態となって蓋部材13が完全に開く。このとき、挿入部材60の外側と、蓋部材13の円筒部66の内側との摩擦により徐々に開いていく。特に、本実施形態では、粘性体が用いられているので、開く速度がゆっくりした速度で安定する。
【0065】
先端部38aは欠落部80に配置されているので、欠落部80の当接面81が先端部38aに接触して先端部38aが押されることにより移動する。このとき、収納部材10は、本体部材11に対して軸突起43によって回転可能に軸支されているので、軸突起43を軸として回転する。この回転の回転軸は長手方向に対して垂直であり、回転によって、収納物の長手方向が傾斜する。
そして、収納部材10は、図15、図16、図17に示されるように、蓋部材13が回転するに伴って傾斜する。
【0066】
図17に示すように、蓋部材13が完全に開くと、収納部材10の傾斜が最大となり、円筒部66の位置が、収納空間26から開口39へと向く方向から外れることとなる。したがって、収納空間26に収納された彫刻刀90を出し入れする際にスムーズに行うことができる。また、このような状態となるのは、収納部材10の傾きが最大となる図17の状態であり、蓋部材13が開く途中段階では収納空間26に収納された彫刻刀90の長手方向の移動を蓋部材13の円筒部66によって阻止するので彫刻刀90が外部に飛び出してしまうことが無く安全である。
【0067】
また、蓋部材13は、回転可能な範囲が広く、具体的には180°以上であり、板部67の先端が、本体部材11の底面部48よりも下側に位置することとなる。そして、図16、図17に示されるように、本体部材11の底面部48を下にして、平面状の場所の置いた場合には、底面部48の蓋部材13側が浮いた状態となって傾く。したがって、収納ケース1を使用する際に、蓋部材13が開いた状態で置いておく場合には、適度な傾斜を有することとなり、彫刻刀90が外部に出るおそれが小さく安全である。
【0068】
そして、蓋部材13を閉じる際には、蓋部材13を反転させることにより行われる。具体的には、図17の状態から図16、図15、図14、図13、図12の状態を経て図11の状態となる。なお、収納部材10の傾きが小さくなるのは、当接面81が先端部38aを押すのではなく、重力により先端部38aが当接面81に接触することによる。
また、閉じる際にはスライド部材12を操作しなくとも、係止部64,69の凸部64a,69aが傾斜しているので、スライド部材12が自動的に移動し、係合を行うことができる。
【0069】
したがって、収納ケース1を開くときには、スライド部材12を操作するだけで、蓋部材13が開くように回転するとともに、収納部材10が回転する。また、閉じる際には、蓋部材13を閉じる方向に回転させるだけで行うことができる。さらに、彫刻刀90を使用する際に蓋部材13が開いた状態で置いておいても、適度な傾斜を有することとなり、彫刻刀90が外部に出るおそれが小さく安全である。
そして、収納ケース1は、蓋部材13の係止部69とスライド部材12の係止部64とが係合することによって蓋部材13が開口39を封鎖する状態を維持することができ、スライド部材12をスライドすると前記係合が解け、蓋部材13が開くように回転して収納部材10が回転し、彫刻刀90の開口39側への移動阻止を解除することができる。
【0070】
次に、本発明の第2の実施形態の収納ケースについて説明する。
図19、図20は、本発明の第2の実施形態の収納ケースを示した斜視図である。図21は、図19に示す収納ケースの分解斜視図である。図22は、底ケース部材の軸受け凹部と、押さえ部材の凹部とを拡大した斜視図である。図23は、底ケース部材の軸受け凹部、蓋部材の軸部及び回転力発生部材を示した斜視図である。図24(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、蓋部材と本体部材の係合部分を示した模式図である。図25は回転力発生部材を示した分解斜視図である。図26は回転力発生部材の内部の構造を示した分解斜視図である。図27は、本発明の第2の実施形態の収納ケースを台に置いた状態で横から見た図であり、(a)は閉じた状態を示した図、(b)は開いた状態を示した図である。
【0071】
本発明の第2の実施形態における収納ケース2は、図19、図20、図21に示されるように、本体部材111、蓋部材113、回転力発生部材114、押さえ部材115を有している。
そして、上記した収納ケース1と同様に、収納ケース2には、図18に示されるような彫刻刀90を収納することができる。
また、本体部材111、蓋部材113、押さえ部材115は、樹脂成形品が用いられている。
【0072】
本体部材111は、図20、図21に示されるように、2つの部材が上下に合わさって構成されており、具体的には、下側に底ケース部材120が、上側に上ケース部材121が設けられている。そして、本体部材111には収納空間126と開口139が形成される。
【0073】
底ケース部材120は、図21に示されるように、底面125と、底面125に接続する横側面127,128、後側面129が設けられており、後側面129に対向する側(開口139側)、及び、上部側が開放している。
また、上ケース部材121は、天面133と、天面133に接続する横側面135、136及び後側面137とが設けられており、後側面137に対向する側(開口139側)、及び、下部側が開放している。
【0074】
そして、本体部材111は、底ケース部材120と上ケース部材121とを、底面125と天面133とが対向するように合わせられる。そして、底ケース部材120の横側面127と上ケース部材121の横側面135とによって1つの側面145を形成し、底ケース部材120の横側面128と上ケース部材121の横側面136とによって1つの側面146を形成する。また、底ケース部材120の後側面129と上ケース部材121の後側面137とによって1つの側面147を形成する。そうして、横側面145、146、後側面147、底面125及び天面133によって収納空間126が形成される。
底ケース部材120と上ケース部材121とは、ねじ130によって固定される。
なお、上記した底ケース部材120と上ケース部材121との固定、また、後述する、底ケース部材120と押さえ部材115との固定や、上蓋部150と下蓋部151との固定は、ねじ130、131、132を用いて行われるが、接着剤を用いたり、嵌合構造用いるなどの他の固定方法を採用することができる。
【0075】
また、底ケース部材120には、収納空間126を仕切る複数の仕切板123が設けられている。仕切板123は横側面127に平行な板であり、4カ所設けられて収納空間126が5分割されている。そのため、彫刻刀90を開口側139から収納空間126に挿入することができ、この彫刻刀90を別々に保持することができる。そして、彫刻刀90は底ケース部材120の底面125に沿って配列する状態で収納することができる。
上ケース部材121には各彫刻刀90が収納される部分に対応して外側に突出している。
【0076】
図21、図23に示されるように、底ケース部材120には、軸受け凹部138が設けられている。軸受け凹部138は半円柱状の凹部であり、底面125の開口139側の縁付近に3ヵ所設けられている。
3ヵ所設けられた軸受け凹部138の内、中央に位置する軸受け凹部138aには、半円筒部138dとスリット138eが設けられ、回転力発生部材114を配置することができる。そして、スリット138eは、半円筒部138dの端部付近に設けられている。
そして、軸受け凹部138aと、両側の軸受け凹部138b、138cとは離れており、この間に、後述する蓋部材113の軸部155が配置される。
また、軸受け凹部138aの軸方向の両端と、軸受け凹部138b、138cの軸受け凹部138a側の端部には、保持部160が設けられている。そして、保持部160の形状は半円状の凹部であり、その内径は、半円筒部138dよりも小さい。また、保持部160の内側には、後述する軸部155の突出部156a、156b、156c、156dが配置される。
【0077】
また、底ケース部材120の軸受け凹部138の上側に押さえ部材115が設けられる。押さえ部材115には、半円柱状の凹部140とスリット140aが設けられている。そして、押さえ部材115を底ケース部材120に固定すると、図22に示されるように、円柱状の空間149が形成され、また、スリット140aとスリット138eとがつながる。
また、底ケース部材120と押さえ部材115との固定は、ねじ131を用いて行われる。
【0078】
上ケース部材121には係合部143が設けられている。係合部143はスリット状であり、蓋部材113の内側突起144が係合し、収納ケース2の蓋が閉じた状態を維持することができる。
また、天面133の係合部143が設けられる付近は、押しつけると変形しやすい構造となっている。また、天面133の、係合部143の付け根付近には被押圧部173が設けられており、後述するように、蓋を開ける際にはこの被押圧部173を押して係合部143を収納空間126側に移動させて行われる。
【0079】
蓋部材113は、上蓋部150及び下蓋部151により構成されている。そして、上蓋部150と下蓋部151とを合わせてねじ132で固定することにより蓋部材113が形成される。
蓋部材113は、図20に示されるように、内部空間152と開口153を有しており、開口153が本体部材111の開口139側となるように配置される。そして、図19に示されるように、収納ケース2を閉じた状態では、開口139の位置と開口153との位置が合致して、収納空間126と内部空間152とが1つの閉鎖された空間となる。
【0080】
また、上蓋部150の開口153側に内側突起144が設けられている。内側突起144は、図24に示されるように、係合部143と係合することができる。そして、内側突起144には、係合部143との係合を容易にすることができるように、傾斜部144aが設けられている。
この内側突起144の位置は、後述する軸部155とは反対側に位置している。
【0081】
下蓋部151の開口153側に軸部155が設けられている。軸部155は2カ所設けられ、図23に示されるように、それぞれの軸部155a、155bは、本体部材111に設けられた、中央の軸受け凹部138aと、両側の軸受け凹部138b、138cとの間に位置している。
【0082】
一方の軸部155aには、突出部156a、156bが設けられ、他方の軸部155bには突出部156c、156dが設けられている。突出部156cの形状は、円板状である。また、突出部156a、156b、156dの形状は、円板に、スリット161を設けた形状である。そして、このスリット161は円板の中心軸に対して垂直な方向に延びている。また、突出部156a、156b、156c、156dの円板部分の中心は同軸上に設けられている。また、突出部156a、156b、156c、156dの円板部分の外径は、軸受け凹部138に設けられた保持部160の内径とほぼ等しい。
【0083】
したがって、突出部156a、156b、156c、156dは、本体部材111の保持部160によって保持することができ、突出部156a、156b、156c、156dが保持された状態では、軸部155a、155bと、軸受け凹部138とは相対回転が可能である。
また、一方の軸部155aの突出部156bに設けられたスリット161は、後述するように、回転力発生部材114の内筒部162の先端部162cと係合する。
【0084】
回転力発生部材114は、図21、図23に示されるように、円柱状の部材であり、図25、図26に示されるように、内筒部162、外筒部163、コイルバネ164、シールゴム165、押さえ部166を有している。内筒部162、外筒部163、押さえ部166は樹脂成形品が用いられている。
【0085】
内筒部162は、筒部162aと棒部162bとを有している。そして、筒部162aは一方が封鎖され、他方が開放された円筒状である。そして、筒部162aの内外の形状は断面が同心の円形である。筒部162aの内側には断面形状が円形のバネ収納部167が設けられており、また、封鎖された側(バネ収納部167の奥側)には、溝状のコイルバネ係合部168が設けられている。
棒部162bは軸方向に延びる棒状であり、棒部162bの先端には先端部162cが設けられている。先端部162cは、第1係合部となるものであり、先端部(第1係合部)162cは、上記した突出部156bに設けられたスリット161と係合し、内筒部162と蓋部材113とが一体的に回転する。
【0086】
外筒部163は、筒部163aと突起部163bとを有している。そして、筒部163aは一方が封鎖され、他方が開放された円筒状である。そして、筒部163aの内外の形状は断面が同心の円形である。また、筒部163aの内側には内筒収納部163cが設けられており、また、封鎖された側(内筒収納部163cの奥側)には、溝状のコイルバネ係合部170が設けられている。内筒収納部163cの大きさは、内筒部162の筒部162aの外径よりやや大きく、内筒部162を外筒部163の内筒収納部163cに挿入することができる。
【0087】
突起部163bは軸方向に突出する部分であり、第2係合部となるものである。そして、突起部(第2係合部)163bは、図23に示される本体部材111の軸受け凹部138のスリット138eと係合し、外筒部163と本体部材111とが一体的に回転する。
【0088】
コイルバネ164は、外径が内筒部162のバネ収納部167の内径よりも同じかやや小さいコイルバネであり、両端を相対回転させると回転力を発生させることができるものである。そして、コイルバネ164の2ヵ所の端部164a、164bは、コイルバネ164の軸方向に対して垂直な方向に曲げられている。
そして、コイルバネ164の一方の端部164aは、内筒部162のコイルバネ係合部168と係合し、他方の端部164bは、外筒部163のコイルバネ係合部170と係合している。
【0089】
そして、外筒部163の内側の内筒収納部163cに内筒部162の筒部162aを挿入し、さらに内筒部162のバネ収納部167にコイルバネ164が収納される。また、外筒部163の突起部163bと、内筒部162の棒部162bが外側に配置される。さらに、コイルバネ164の2ヵ所の端部164a、164bは、コイルバネ係合部168、170と係合し、内筒部162と外筒部163とはコイルバネ164を介して接続されている。
【0090】
内筒部162と外筒部163とは相対回転可能であるが、内筒部162と外筒部163とは上記したようにコイルバネ164を介して接続されている。したがって、コイルバネ164が変形しない任意の回転位置では内筒部162と外筒部163との間で回転力が発生しないが、この回転位置から回転して、コイルバネ164が変形すると、前記した任意の回転位置に向かう方向に回転力が発生する。
また、内筒部162と外筒部163との間の隙間には、粘性体が充填されている。この粘性体は、高粘度のシリコーンオイルが用いられており、内筒部162と外筒部163との間で回転力が発生した場合に、ゆっくり回転して、急激な回転を阻止することができる。
なお、粘性体の粘度や、内筒部162と外筒部163との隙間を変えることにより、このときの回転速度を調整することができる。
【0091】
シールゴム165は輪状であり、内筒部162の棒部162b側に配置される。また、押さえ部166は輪状であり、外筒部163に固定することができる。そして、押さえ部166によって内筒部162やシールゴム165の保持が行われる。そして、シールゴム165によって、前記した内筒部162と外筒部163との間の隙間に充填される粘性体が漏れることを防止することができる。
【0092】
収納ケース2が組み立ては、以下のようにして行われる。
まず、底ケース部材120と上ケース部材121とを合わせた本体部材111と、上蓋部150と下蓋部151とを合わせた蓋部材113とを準備する。そして、本体部材111の軸受け凹部138の保持部160に、蓋部材113の軸部155の突出部156a、156b、156c、156dを配置する。
【0093】
さらに、回転力発生部材114を本体部材111の軸受け凹部138に配置する。具体的には、回転力発生部材114の内筒部162の先端部162cと、蓋部材113の軸部155aの突出部156bに設けられたスリット161とを係合させ、また、回転力発生部材114の外筒部163の突起部163bと、本体部材111の軸受け凹部138に設けられたスリット138eと係合させる。
このとき、蓋部材113が開く方向に回転力が発生するように係合させる。すなわち、コイルバネ164が変形しないで回転力が発生しない回転位置を、図20や図27(b)に示されるような蓋部材113が開いた状態とする。そして、この位置から閉じるように回転させると、元に戻る方向(蓋部材113が開く方向)に回転力が働くこととなる。
【0094】
さらに、押さえ部材115を本体部材111に固定して、回転力発生部材114や蓋部材113が外れないようにする。
【0095】
収納ケース2が組み立てられると、被押圧部173は、収納空間126を基準として蓋部材113の回転軸とは反対側に位置することとなる。
【0096】
収納ケース2は、常に、蓋が開く状態となる方向に回転力が発生するが、蓋部材113の内側突起144を本体部材111の係合部143と係合させることができるので、閉じた状態を維持することができる。
この場合、図24(a)、(b)、(c)に示されるように、内側突起144の傾斜部144aによって、上側に移動するので、蓋部材113を回転させるようにするだけで蓋を閉じることができる。
【0097】
また、蓋が閉じた状態から開く場合には、図24(d)、(e)に示されるように、被押圧部173を押して行う。そして、被押圧部173を押すと、本体部材111の天面133が弾性変形して、内側突起144と係合部143の係合を解き、回転力発生部材114による回転力によって自動的に蓋が開く。
【0098】
そして、収納ケース2は、蓋が開いた状態となると、図27(b)に示されるように、蓋部材113が回転することによって、開口139側が上昇し、蓋部材113と、本体部材111の後側面147側(開口139とは反対側)とにより支えられる状態となる。そして、蓋が開いた状態では本体部材111の収納空間126が傾斜して、彫刻刀90が取り出ししやすい状態になる。
【0099】
通常、収納ケース2は底面125を下側、天面133を上側として、平面状の台などの上に置くことがある。この場合、被押圧部173は上側に位置することとなり被押圧部173を押しやすい。そして、図27(a)のような蓋が閉じている状態から開く場合には、被押圧部173を上から押すと開いて収納空間126が台に対して傾斜するので、簡単に蓋を開いて彫刻刀90を取り出しやすい状態となり、そのまま彫刻刀90を取り出して使用することができる。
【0100】
このように、収納ケース2を開くときには、被押圧部173を押すだけで行うことができ、また、閉じる際には、蓋部材113を閉じる方向に回転させるだけで行うことができる。さらに、彫刻刀90を使用する際に蓋部材113が開いた状態で置くと、適度な傾斜を有することとなり、彫刻刀90が外部に出るおそれが小さく安全である。
【0101】
上記実施形態の収納ケース1は、彫刻刀90を収納するものであったが、長尺状であれば、他のものでもの良く、筆、ボールペン等の筆記具、箸等を収納物とすることもできる。
【符号の説明】
【0102】
1、2 収納ケース
10 収納部材
11 本体部材
12 スライド部材
13 蓋部材
26 収納空間
37a 先端部(接触部)
38a 先端部(接触部)
39 開口
60 挿入部材
64 係止部
66 円筒部
67 板部
69 係止部
81 当接面
111 本体部材
113 蓋部材
114 回転力発生部材
126 収納空間
139 開口
162 内筒部
162c 先端部(第1係合部)
163 外筒部
163b 突起部(第2係合部)
164 コイルバネ
173 被押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の収納物を出し入れ可能に収納できる収納ケースにおいて、本体部材及び蓋部材を有し、前記本体部材には収納物が収納可能な収納空間を有し、前記収納空間の長手方向の一方には開口が設けられており、前記蓋部材は開閉可能であって閉じた状態では本体部材の開口側に配置されて収納空間に収納された収納物の移動を阻止し、蓋部材には軸部が設けられ、前記軸部が軸支されて本体部材に対して回転可能であって、蓋部材が開く方向に回転力が付与されており、本体部材と蓋部材とが係合することによって蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持することができ、前記係合を解くと、蓋部材は回転速度を制御しながら開くものであることを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
回転力発生部材が設けられ、前記回転力発生部材によって蓋部材が開く方向に回転力が付与されており、回転力発生部材には内筒部、外筒部及びコイルバネを有し、前記内筒部は外筒部の内側に配置されて相対回転が可能であり、内筒部と外筒部との間には粘性体が設けられて、内筒部と外筒部との間で回転力が発生した場合に回転速度を制御しながら相対回転するものであり、内筒部と外筒部とはコイルバネを介して接続されて任意回転の位置から回転すると、前記任意の回転位置に向かって回転力を発生するものであり、
さらに、内筒部には第1係合部が設けられ、外筒部には第2係合部が設けられ、第1係合部及び第2係合部のいずれか一方が本体部材と係合し、他方が蓋部材と係合していることを特徴とする請求項1に記載の収納ケース。
【請求項3】
本体部材には被押圧部が設けられて、前記被押圧部を収納空間側に向かって押すことによって本体部材と蓋部材との係合を解くことができることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納ケース。
【請求項4】
前記被押圧部は、収納空間を基準として蓋部材の回転軸とは反対側に位置していることを特徴とする請求項3に記載の収納ケース。
【請求項5】
蓋部材の回転軸を下側にし、被押圧部を上側にして平面状の台の上に置き、蓋部材を閉じた状態から開いた状態とすると、収納空間の開口側が上昇しつつ、収納空間が前記台に対して傾斜するものであることを特徴とする請求項4に記載の収納ケース。
【請求項6】
長尺状の収納物を出し入れ可能に収納できる収納ケースにおいて、本体部材、係止部、収納部材及び蓋部材を有し、前記収納部材は収納物が収納可能な収納空間を有し、前記収納空間の長手方向の一方には開口が設けられ、長手方向の他方で収納部材は本体部材に回転可能に軸支されており、前記蓋部材は収納部材の開口側に配置されて収納空間に収納された収納物の移動を阻止し、本体部材に対して回転可能に軸支されて開く方向に回転力が付与されており、前記係止部が係合することによって蓋部材が前記開口を封鎖する状態を維持することができ、前記係合を解くと、蓋部材が開くように回転するとともに、収納部材が回転して収納物の開口側への移動阻止を解除することを特徴とする収納ケース。
【請求項7】
蓋部材には当接面が設けられており、蓋部材が回転する際に前記当接面が収納部材に設けられた接触部に接触することにより収納部材の回転を行うものであることを特徴とする請求項6に記載の収納ケース。
【請求項8】
蓋部材の回転軸方向の両端には欠落部が設けられ、前記欠落部の端部が当接面となっており、収納部材の接触部は2カ所設けられて、接触部同士の間に蓋部材が配置されていることを特徴とする請求項7に記載の収納ケース。
【請求項9】
蓋部材には円筒部が設けられ、前記円筒部の内側には本体部材に固定されて外形断面が円形である挿入部材が挿入されており、蓋部材が回転する際には挿入部材の外側と円筒部の内側との間で摩擦力が発生することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項10】
挿入部材と円筒部との間には粘性体があることを特徴とする請求項9に記載の収納ケース。
【請求項11】
全体形状が上面及び上面に対向する下面を有する板状であり、上面と下面との間に収納空間が配置されるものであり、蓋部材には板部が設けられ、蓋部材が閉じた状態では前記板部が上面の一部を形成し、蓋部材が完全に開いた状態では前記板部が下面を越えるものであることを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−214148(P2010−214148A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152937(P2010−152937)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【分割の表示】特願2004−334318(P2004−334318)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】