説明

取水施設

【課題】建屋内外の海水から建屋内の設備を保護することを実現した取水施設を提供する。
【解決手段】海水を取り込んで貯水する取水槽10、及び取水槽10の開口部10aの上部又は周辺に設置され、取水槽10の海水を発電設備に供給する海水系ポンプ20を覆う、水密性及び気密性を有する取水建屋30と、取水建屋30に空気を供給する空気供給装置40と、取水建屋30内の気圧を大気圧より高い所定値に維持するように空気供給装置40を制御する気圧制御装置60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水を取水して各種の発電設備に海水を供給する取水施設に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所施設の一つとして、海水を取水して各種の発電設備に供給する取水施設がある。この取水施設には、海洋から取水した海水を貯蔵する取水槽、取水槽の海水を各種の発電設備に供給するための各種のポンプ、及び取水槽から異物を除去するための設備等が備えられている。
【0003】
また、従来、海水を貯める取水槽や、取水槽の海水を各種の発電設備に供給するための各種のポンプ等を、建屋内に配置する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、地上1階に原子炉補機冷却海水ポンプが設けられ、地下1階には取水槽が設けられている取水建屋について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−218287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示すように、各種のポンプを建屋内に収納することにより、例えば、津波のような自然災害が発生して海水が建屋外を通った場合に、建屋内のポンプを海水に浸らないように保護することができる。しかしながら、自然災害が発生して海面の水位が上昇すると、取水槽の水位も上昇して取水槽から海水があふれ出してしまうおそれがある。このため、取水槽が浸水源となって建屋内の取水関連設備が海水に浸ってしまうおそれがある。このように、自然災害が発生した場合、建屋外から海水が押し寄せるばかりではなく、建屋内から浸水するおそれがある。
【0006】
建屋内に海水が浸水すると、例えば、海水系ポンプに設置されているモータが絶縁不良を起こして停止してしまい、取水できなくなるおそれがある。取水できなくなると、発電所施設において冷却が必要な設備を冷却するための機能が損なわれるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決し、建屋内外の海水から建屋内の設備を保護することを実現した取水施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0009】
(1) 海水を取り込んで貯水する貯水設備、及び当該貯水設備の開口部の上部又は周辺に設置され前記貯水設備の海水を発電設備に供給する海水供給設備を覆う、水密性及び気密性を有する建屋と、当該建屋に空気を導入する空気供給装置と、前記建屋内の気圧を大気圧より高い所定値に維持するように前記空気供給装置を制御する気圧制御装置とを備えたことを特徴とする取水施設。
【0010】
(1)によれば、建屋は、水密性及び気密性を有するため、外部から建屋内への海水の浸入を防御することが可能になる。また、建屋内の気圧が大気圧より高い所定値に維持されるため、貯水設備の海水が気圧によって下方に押し下げられた状態となり、海水が開口部からあふれ出すことを防止することが可能になる。このように、建屋内外の海水から建屋内の設備を保護することが可能になる。
【0011】
(2) (1)において、潮位を計測する潮位計測装置を更に備え、前記気圧制御装置は、前記潮位計測装置が所定値の潮位を計測した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする取水施設。
【0012】
(2)によれば、潮位が異常に高くなった場合に空気供給装置を駆動制御して建屋内の気圧を上昇させる。これにより、建屋内で浸水する可能性がある場合に空気供給装置を駆動することが可能になる。
【0013】
(3) (2)において、前記気圧制御装置は、前記潮位計測装置の計測値に基づいて所定時間毎の潮位の変動値を求め、当該変動値に基づいて潮位の異常変動の有無を判定し、潮位に異常変動があると判定した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする取水施設。
【0014】
(3)によれば、潮位に異常変動のように津波の予兆がある場合に、空気供給装置を駆動制御して建屋内の気圧を上昇させる。これにより、建屋内で浸水する可能性がある場合に空気供給装置を駆動することが可能になる。
【0015】
(4) (1)において、波の高さを計測する波高計測装置を更に備え、前記気圧制御装置は、前記計測装置が所定値を越えた波の高さを計測した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする取水施設。
【0016】
(2)、(3)によれば、波が異常に高くなった場合に空気供給装置を駆動制御して建屋内の気圧を上昇させる。これにより、建屋内で浸水する可能性がある場合に空気供給装置を駆動することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、建屋内外の海水から建屋内の設備を保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における取水施設1の配置を示す説明図である。
【図2】本実施形態の取水施設1の制御系を示すブロック図である。
【図3】本実施形態の取水施設1の制御系の他例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、原子力発電施設における本発明の一実施形態の取水施設1の配置を示す説明図である。原子力発電施設は、取水施設1と、発電用のタービンを備えるタービン建屋70と、原子炉を備える原子炉建屋72とを備えている。取水施設1は、貯水設備に相当する取水槽10と、取水口12と、取水路14と、海水供給設備に相当する海水系ポンプ20と、建屋に相当する取水建屋30と、空気供給装置40と、圧力調整弁42(図2参照)と、潮位計測装置50と、気圧制御装置60(図2参照)とを備えている。
【0020】
取水槽10は、取水路14を介して取水口12に連結しており、海に設けられた取水口12から取水した海水を一時的に貯水する。また、取水槽10の上部には、開口部10aが形成されている。
【0021】
海水系ポンプ20は、取水槽10の海水を汲み上げ、発電設備に相当するタービン建屋70の設備や原子炉建屋72の設備に供給するものである。海水系ポンプ20の動力源となるモータ部は開口部10aの上部に設置されており、海水を汲み上げ部は取水槽10内に位置付けられている。取水槽10の海水は、タービン建屋70に設けられているタービンを回転させるために用いる蒸気の冷却、あるいは、原子炉建屋72に設けられている原子炉の冷却に用いられる。
【0022】
取水建屋30は、取水槽10及び海水系ポンプ20が配置されたエリアに建てられ、取水槽10、海水系ポンプ20及びその周辺を覆っている。また、取水建屋30の外壁は、鉄筋コンクリート造りであり、水密性及び気密性を有している。また、取水建屋30に設けられている扉は水密扉からなる。このように、取水建屋30は、取水建屋30の外部から内部に水や空気が入り込まないように構成されている。
【0023】
空気供給装置40は、取水建屋30内に空気を供給するものであり、例えば、圧縮空気ボンベ及び圧縮空気ボンベの弁を自動的に開閉させる自動開閉弁からなる。この空気供給装置40は、取水建屋30の水密扉を閉鎖するなど取水建屋30を密閉状態とした後に駆動することにより、取水建屋30内の気圧を高くすることに用いられる。ここで、取水槽10及び海水系ポンプ20が配置されたエリアは広いことから、取水建屋30は内部容積が大きい建屋となる。このため、空気供給装置40は、取水建屋30内の気圧を高くする時間を短くするために、取水建屋30に複数設けられている。また、取水建屋30には、取水建屋30内の気圧を調整する圧力調整弁42(図2参照)が設けられている。
【0024】
潮位計測装置50は、原子力発電施設が建てられている海岸における潮位を計測するものである。潮位計測装置50が計測した潮位値は、気圧制御装置60(図2参照)に送信される。
【0025】
図2は、本実施形態の制御系を示すブロック図である。図2において、気圧制御装置60は、空気供給装置40と、圧力調整弁42と、潮位計測装置50と、気圧計52とに接続されている。気圧制御装置60は、図示しない中央制御装置(CPU)、各種のデータやプログラムを記憶する記憶装置(例えば、ROM)、外部装置との間で送受信を行う送受信装置等を備えており、潮位検出部62、判定部64及び駆動制御部66として機能する。
【0026】
圧力調整弁42は、取水建屋30に設けられ、開放することによって取水建屋30内の空気を外部に送り出すものである。気圧制御装置60は、空気供給装置40を駆動制御して空気の供給量を調整するとともに、圧力調整弁42の開閉動作を制御して取水建屋30内から外部に送り出す空気量を調整する。これにより、取水建屋30内の気圧調整が行われる。
【0027】
気圧計52は、取水建屋30内に設けられ、取水建屋30内の気圧を計測して、計測結果を気圧制御装置60に送信するものである。
【0028】
潮位検出部62は、所定時間(例えば、1分間)において、潮位計測装置50から受信した潮位値の平均値を求める。
【0029】
判定部64は、潮位検出部62が演算した平均値が、予め設定された所定値以上であるか否かの判定を行う。また、判定部64は、潮位検出部62が演算した平均値と前回潮位検出部62が演算した平均値との差を求め、この差が所定値以上であるか否かの判定を行う。例えば、新たに求めた潮位値の平均値と5分前に求めた潮位値の平均値との差が、所定値以上であるか否かの判定を行う。
【0030】
駆動制御部66は、判定部64の判定結果に基づいて、空気供給装置40の駆動制御を行う。具体的には、判定部64が、潮位検出部62が演算した平均値が予め設定された所定値以上であると判定した場合の、駆動制御部66は、空気供給装置40を駆動させて取水建屋30内の気圧を上昇させる。例えば、所定値が2気圧に設定されている場合には、駆動制御部66は、気圧計52の計測値が2気圧になるまで、空気供給装置40を駆動させる。そして、駆動制御部66は、気圧計52の計測値が2気圧なった以降、気圧計52の計測値が2気圧の状態を維持するように空気供給装置40及び圧力調整弁42を駆動制御する。
【0031】
なお、判定部64が潮位計測装置50から受信した潮位値の変動が所定値以上であると判定した場合も同様に、駆動制御部66は、気圧計52の計測値が2気圧の状態を維持するように空気供給装置40を駆動制御する。
【0032】
これにより、例えば、取水建屋30内の気圧が大気圧(1気圧)である場合には、海面が10m上昇すると、取水槽10における水面も10m上昇して、海水系ポンプ20の全体が浸水するおそれがある。そこで、本実施形態によれば、取水建屋30内の気圧を1気圧高くすることにより、この気圧によって取水槽10の水面が押圧され、取水槽10の開放部から海水があふれ出すことを防止することができる。
【0033】
このように構成された本実施形態によれば、取水建屋30は、水密性及び気密性を有するため、外部から取水建屋30内への海水の浸入を防御することが可能になる。また、取水建屋30内の気圧が大気圧(1気圧)より高い所定値(例えば、2気圧)に維持されるため、取水槽10の海水が気圧によって下方に押し下げられる状態となり、海水が取水槽10の上部の開放空間からあふれ出すことを防止することが可能になる。このように、取水建屋30内外の海水から取水建屋30内の海水系ポンプ20を保護することが可能になる。
【0034】
また本実施形態によれば、潮位が異常に高くなった場合、あるいは潮位の異常変動のように津波の予兆がある場合に、気圧制御装置60が、空気供給装置40を駆動制御して取水建屋30内の気圧を上昇させる。これにより、取水建屋30の内部において浸水の可能性がある場合に空気供給装置40を駆動することが可能になる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限るものではない。例えば、上述した実施形態においては、図2に示すように、潮位計測装置50が計測する潮位に基づいて空気供給装置40を駆動制御しているが、それに限らず、潮位計測装置50の代わりに図3に示すように波高計測装置80を設け、海岸の波の高さが異常に高くなった場合、空気供給装置40を駆動制御して取水建屋30内の気圧を上昇させてもよい。これにより、取水建屋30内で浸水する可能性がある場合に空気供給装置40を駆動することが可能になる。
【0036】
また、作業員が、例えば、地震速報や津波警報をテレビやラジオで報知された場合に手動で対処できるように、気圧制御装置60に各種入力信号を送信する操作パネルを設け、作業員による操作パネルの操作によって、空気供給装置40を駆動制御できるようにしてもよい。
【0037】
また、潮位計測装置50や波高計測装置80の他に、緊急地震速報を受信する受信装置を設け、受信装置が緊急地震速報を受信した場合に、気圧制御装置60が空気供給装置40を駆動制御して、自動的に取水建屋30内の気圧を上昇させてもよい。
【0038】
また、潮位計測装置50や波高計測装置80の他に、取水槽10に貯水された海水の水位を検知する水位検知装置を設け、この水位検知装置が、予め設定された危険水位を超えた水位を検出した場合に、気圧制御装置60が空気供給装置40を駆動制御して、自動的に取水建屋30内の気圧を上昇させてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態においては、大気圧に対して1気圧高くしているが、本発明は、それに限るものではなく、取水槽10の深さや、取水槽10から海水系ポンプ20までの高さに応じて適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 取水施設
10 取水槽
10a 開口部
12 取水口
14 取水路
20 海水系ポンプ
30 取水建屋
40 空気供給装置
42 圧力調整弁
50 潮位計測装置
52 気圧計
60 気圧制御装置
62 判定部
66 駆動制御部
70 タービン建屋
72 原子炉建屋
80 波高計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を取り込んで貯水する貯水設備、及び当該貯水設備の開口部の上部又は周辺に設置され前記貯水設備の海水を発電設備に供給する海水供給設備を覆う、水密性及び気密性を有する建屋と、
当該建屋に空気を供給する空気供給装置と、
前記建屋内の気圧を大気圧より高い所定値に維持するように前記空気供給装置を制御する気圧制御装置とを備えたことを特徴とする取水施設。
【請求項2】
潮位を計測する潮位計測装置を更に備え、
前記気圧制御装置は、前記潮位計測装置が所定値以上の潮位を計測した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の取水施設。
【請求項3】
潮位を計測する潮位計測装置を更に備え、
前記気圧制御装置は、前記潮位計測装置の計測値に基づいて所定時間毎の潮位の変動値を求め、当該変動値に基づいて潮位の異常変動の有無を判定し、潮位に異常変動があると判定した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の取水施設。
【請求項4】
波の高さを計測する波高計測装置を更に備え、
前記気圧制御装置は、前記波高計測装置が所定値を越えた波の高さを計測した場合に、前記空気供給装置を駆動制御して、前記建屋内の気圧を前記所定値に維持することを特徴とする請求項1記載の取水施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−108301(P2013−108301A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254800(P2011−254800)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)