説明

受信機

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は受信機に関する。
〔発明の概要〕
この発明は、受信機において、制御用マイクロコンピュータのクロック周波数を、受信周波数に基づいて切り換えることにより、クロックの高調波成分による受信障害を回避するようにしたものである。
〔従来の技術〕
いわゆるラジオカセットにおいては、AM・FM受信部、CDプレーヤ部、カセットデッキ部などが、一体化されているが、これら各部は、一般にマイクロコンピュータによりそれぞれ制御されている。
すなわち、第3図において、(1)はAM・FM受信部、(2)はCDプレーヤ部、(3)はカセットデッキ部、(11)〜(14)はマイクロコンピュータを示す。そして、受信部(1)は、PLLを有するシンセサイザ方式に構成され、マイコン(11)からそのPLLの可変分周回路に分周比が供給されて受信周波数が制御される。さらに、プレーヤ部(2)及びデッキ部(3)は、マイコン(12)、(13)によりそれらの動作がそれぞれ制御される。また、マイコン(14)は、リモコンなどの処理ないし制御用である。
さらに、(10)は、メインのマイコンを示し、このマイコン(10)により、マイコン(11)〜(14)が制御ないし管理される。なお、これらマイコン(11)〜(14)は、それぞれ例えば4ビットの1チップマイコンである。
そして、このように各部(1)〜(3)の動作及びリモコンの処理などを、マイコン(11)〜(14)がそれぞれ分担し、これをマイコン(10)が管理する場合には、マイコン(11)〜(14)における処理プログラムの開発が楽になるとともに、それだけ多くの動作を各部(1)〜(3)に行わせることができる。
〔発明が解決しようとする課題〕
ところで、マイコン(10)〜(14)が動作する場合には、クロックを必要とするが、マイコン(10)のクロック周波数fcを、例えば4.2MHzと高くすると(この周波数fcは、一般のマイコンにおいては、普通のクロック周波数である)、例えば第4図Aに示すように、クロックCKの高調波成分Shが、FM放送の周波数帯76〜108MHzに分布してしまい、FM放送の受信時に妨害となってしまう。
そこで、同図Bに示すように、マイコン(10)のクロック周波数fcを、マイコン(10)が動作できる下限の周波数、例えば400kHzまで低くし、FM放送帯にクロックCKの高調波成分Shが分布しても、その高調波成分Shの次数が同図Aの場合よりも高くなり、したがって、FM放送帯における高調波成分Shのレベルが無視できる程度に小さくなるようにしている。
すなわち、同図Aの場合には、FM放送帯に分布するクロックCKの高調波成分Shの次数は、19次〜25次であるが、同図Bの場合には、FM放送帯に分布するクロックCKの高調波成分Shの次数は、190次〜270次であり、この次数であれば、高調波成分Shのレベルは十分に無視でき、FM放送の受信に妨害を与えることがない。
同様の理由により、マイコン(11)〜(14)のクロック周波数も同じように低くされている。
ところが、このように、マイコン(10)〜(14)のクロック周波数を低くすると、当然のことながらマイコン(10)〜(14)の処理速度が遅くなってしまう。
そして、この場合、マイコン(11)〜(14)は、各部(1)〜(3)及びリモコンを、それぞれ独立に制御すればよく、高速の処理を必要とされないので、これらマイコン(11)〜(14)のクロック周波数は、低くてもよく、その高調波成分は問題にならない。
しかし、マイコン(10)は、全体を統括するメインのマイコンであり、このマイコン(10)のもとでマイコン(11)〜(14)がそれぞれ動作するので、マイコン(10)のクロック周波数fcを低くすると、マイコン(10)のもとでラジオカセットに実行できる動作が限られてしまう。
この発明は、このような問題点を解決しようとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
このため、本発明においては、例えば第1図及び第2図R>図に示すように、FM放送帯域の放送を受信するシンセサイザ方式の受信部(1)と、クロックに基づいて動作し、受信部(1)の動作に関与する制御回路(10)と、クロックの形成回路(10)とを有し、受信部(1)の受信するFM放送帯域内に、クロックまたはその分周信号のn次(nは整数)の高調波成分が複数個存在する受信機において、受信部(1)からそのFM放送帯域内の受信周波数を示す情報信号Sfを取り出し、この情報信号Sfを形成回路(10)に供給し、制御回路(10)は、受信部(1)のFM放送帯域内の受信周波数が、上記複数個のクロックまたはその分周信号のn次の高調波成分のうちの1個により、妨害を受ける周波数のときには、情報信号Sfに基づいてクロックの周波数fcを、受信周波数に妨害を与えるクロックまたはその分周信号のn次の高調波成分Shとそれに隣接する高調波成分Shとの中間に受信周波数が位置するような周波数fc−Δfにシフトするようにした受信機とするものである。
〔作用〕
マイコン(10)は、本来のクロック周波数で動作することができる。
〔実施例〕
第1図に示す例においては、メインのマイコン(10)は、図示はしないが、クロック発振回路を内蔵しているものであり、そのクロック端子φ、φの間に、クロック発振用のセラミック発振子(20)が接続されるとともに、端子φ、φと、接地との間に、発振用のコンデンサ(21)、(22)がそれぞれ接続される。また、端子φと、接地との間に、コンデンサ(23)と、トランジスタ(24)のコレクタ・エミッタ間とが直列接続される。
この場合、発振子(20)の発振周波数fcは、マイコン(10)の本来のクロック周波数、例えば4.2MHzとされる。また、トランジスタ(24)がオンのとき、コンデンサ(23)がコンデンサ(22)に並列接続されるので、これによりマイコン(10)のクロック周波数fcは、ある大きさΔfだけ低い方にシフトされるが、この周波数fcのシフト量Δfは、次のように設定される。
すなわち、FM放送帯における、クロックCKの高調波成分Shの次数をnとすると、(n−1)次の高調波成分Shと、n次の高調波成分Shとの中央の周波数fiは、 fi=(n−1/2)fcとなり、この周波数fiをn次の高調波成分とする基本波信号の周波数fsは、 fs=fi/n =fc−fc/(2n)
となる。
そして、この周波数fsと、クロック周波数fcとの差がシフト量Δfであり、 Δf=fc−fs =fc/(2n) ……(i)
である。
つまり、シフト量Δfを(i)式のように選定すれば、そのシフト時のクロック周波数fsの高調波成分Shは、第2図に破線で示すように、本来のクロック周波数fcの高調波成分Sh(実線図示)の中央に位置する。
ただし、上述のように、n=19〜25であり、この次数nによりシフト量Δfは異なるので、ここでは、簡単のため、次数nの平均値は22とされ、これが(i)式に代入されて、 Δf=fc/(2×22)
≒95kHzとされる。
そして、この例においては、このようなシフト量Δf≒95kHzを与えるように、コンデンサ(23)の値が選定される。
さらに、受信選局用のマイコン(11)からは、第2図に示すような受信周波数frの情報信号Sf、すなわち、受信周波数frが、例えば、n(fc−Δf/2)<fr<n(fc+Δf/2) ……(ii)
のとき、“1"となり、他のとき、“0"となる信号Sfが取り出され、この信号Sfがトランジスタ(24)のベースに供給される。なお、このような信号Sfは、例えば、マイコン(11)が受信部(1)のPLLの可変分周回路に供給する分周比を求めたとき、その分周比が(ii)式に該当するかどうかを判別することにより、形成できる。
このような構成によれば、FM放送の受信時、その受信周波数frが(ii)式を満たしていないときには、Sf=“0"で、トランジスタ(24)がオフなので、マイコン(10)のクロック周波数fcは、本来の周波数4.2MHzである。
そして、このとき、(ii)式が満たされていないので、そのクロックCKの高調波成分Shは、このときのFM放送の受信に妨害を与えることがない。
一方、FM放送の受信時、その受信周波数frが(ii)式を満たしているときには、Sf=“1"で、トランジスタ(24)がオンなので、コンデンサ(22)にコンデンサ(23)が並列接続され、マイコン(10)のクロック周波数fcは、本来の周波数4.2MHzから周波数Δf(≒95kHz)だけ低い周波数fsにシフトされている。
そして、そのようなクロック周波数fsであれば、第2図R>図に示すように、その高調波成分Sh(破線図示)は、本来のクロックCKの高調波成分Sh(実線図示)の周波数n・fc[MHz]から周波数n・Δf[MHz]だけシフトしているので、その高調波成分Shが、このとき受信しているFM放送に妨害を与えることがない。
こうして、この発明によれば、FM放送の受信時、その受信周波数frに対応してマイコン(10)のクロック周波数fcをシフトしているので、そのクロックCKの高調波成分ShによりFM放送の受信に妨害を受けることがない。
しかも、マイコン(10)のクロック周波数fcは、本来の周波数4.2MHzあるいはこれより95kHzだけ低い周波数であるから、マイコン(10)は十分な速度で処理を行うことができ、マイコン(10)のもとでラジオカセットに実行できる動作を、より多彩にすることができる。
また、実際には、セラミック発振子(20)あるいはコンデンサ(21)、(22)に誤差があり、この誤差のためクロック周波数fcにばらつきを生じるので、その高調波成分Shの周波数にもばらつきを生じるが、クロック周波数fcをシフトするとき、第2図に示すように、シフトしたクロックCKの高調波成分Sh(破線図示)が、本来のクロックCKの高調波成分Sh(実線図示)のほぼ中央に位置するようにシフトしているので、クロック周波数fcにばらつきがあっても、FM放送の受信時、クロックCKの高調波成分Shの妨害を受けることがない。
しかも、そのための構成は、素子(23)、(24)を追加するとともに、マイコン(11)のプログラムの一部を変更するだけでよいので、ローコストである。
なお、上述においては、クロックCKそのものの高調波成分Shが、FM放送帯に妨害を与える場合であるが、クロックCKがマイコン(10)の内部で分周され、例えば、その1/2の分周パルス(周波数は2.1MHz)の高調波成分が妨害を与えるような場合にも、この発明を適用できる。すなわち、主な妨害を与える高調波成分の周波数が、受信周波数frに近接しないように、その受信周波数frに対応してクロック周波数fcをシフトすればよい。
また、例えば単体の受信機であり、マイコンが1個しか使用されていないような場合にも、この発明は適用できる。さらに、FM放送だけでなくTV放送の受信時にも同様にクロック周波数fcのシフトを行うことができる。
〔発明の効果〕
この発明によれば、FM放送の受信時、その受信周波数frに対応してマイコン(10)のクロック周波数fcをシフトしているので、そのクロックCKの高調波成分ShによりFM放送の受信に妨害を受けることがない。
しかも、マイコン(10)のクロック周波数fcは、本来の周波数4.2MHzあるいはこれより95kHzだけ低い周波数であるから、マイコン(10)は十分な速度で処理を行うことができ、マイコン(10)のもとでラジオカセットに実行できる動作を、より多彩にすることができる。
また、実際には、セラミック発振子(20)あるいはコンデンサ(21)、(22)に誤差があり、この誤差のためクロック周波数fcにばらつきを生じるので、その高調波成分Shの周波数にもばらつきを生じるが、クロック周波数fcをシフトするとき、第2図に示すように、シフトしたクロックCKの高調波成分Sh(破線図示)が、本来のクロックCKの高調波成分Sh(実線図示)のほぼ中央に位置するようにシフトしているので、クロック周波数fcにばらつきがあっても、FM放送の受信時、クロックCKの高調波成分Shの妨害を受けることがない。
しかも、そのための構成は、素子(23)、(24)を追加するとともに、マイコン(11)のプログラムの一部を変更するだけでよいので、ローコストである。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一例の接続図、第2図〜第4図はその説明のための図である。
(1)はAM・FM受信部、(2)はCDプレーヤ部、(3)はカセットデッキ部、(10)〜(14)はマイクロコンピュータ、(20)はセラミック発振子、(21)〜(23)はコンデンサ、(24)はトランジスタ、Sfは受信周波数の情報信号である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】FM放送帯域の放送を受信するシンセサイザ方式の受信部と、クロックに基づいて動作し、上記受信部の動作に関与する制御回路と、上記クロックの形成回路とを有し、上記受信部の受信するFM放送帯域内に、上記クロックまたはその分周信号のn次(nは整数)の高調波成分が複数個存在する受信機において、上記受信部からそのFM放送帯域内の受信周波数を示す情報信号を取り出し、この情報信号を上記形成回路に供給し、上記制御回路は、上記受信部のFM放送帯域内の受信周波数が、上記複数個の上記クロックまたはその分周信号のn次の高調波成分のうちの1個により、妨害を受ける周波数のときには、上記情報信号に基づいて上記クロックの周波数を、上記受信周波数に妨害を与える上記クロックまたはその分周信号のn次の高調波成分とそれに隣接する高調波成分との中間に上記受信周波数が位置するような周波数にシフトするようにした受信機。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】特許第3122102号(P3122102)
【登録日】平成12年10月20日(2000.10.20)
【発行日】平成13年1月9日(2001.1.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−237624
【出願日】平成1年9月13日(1989.9.13)
【公開番号】特開平3−101317
【公開日】平成3年4月26日(1991.4.26)
【審査請求日】平成8年8月23日(1996.8.23)
【審判番号】平10−3160
【審判請求日】平成10年2月26日(1998.2.26)
【出願人】(999999999)ソニー株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】実開 昭57−195257(JP,U)
【文献】実開 昭57−109648(JP,U)