説明

受電コイル、受電装置及び非接触電力伝送システム

【課題】受電装置に用いられる受電コイルのQ値を大きくし、また筐体内部に入れたときの受電コイルのQ値の劣化を少なくする。
【解決手段】磁性体を有するコア2と、そのコア2に線材5が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、そのコイル部の側面から一定の距離離れて配置された非磁性体6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁的に結合した送電コイルから電力が伝送される受電コイル、該受電コイルを備える受電装置、該受電装置を用いた非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、送電コイルと受電コイルを用いて非接触で電力の伝送を行う非接触電力伝送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非接触電力伝送システムの送電コイルがスパイラル形状であり、受電コイルもスパイラル形状で電力を送る場合には、受電装置に内蔵される受電コイルは、装置内部にある金属(例えば筐体や回路において使用)の影響を大きく受けて、Q値が大きく劣化する。Q値は、エネルギーの保持と損失の関係、あるいは共振回路の共振の強さを示す指標である。
【0004】
この金属の影響を防ぐことを目的として、スパイラル形状の送電コイル及び受電コイルの背面に、磁性シートを貼ることが行われている。この磁性シートは、装置内部の金属の影響を防ぐために、一定の厚みが必要である。また、装置内部の金属の影響を完全に防ぐためには、コイルよりも非常に大きなサイズの磁性シートが必要となる。この磁性シートは、一般的にフェライト(焼結体)で作られる。したがって、磁性シートを薄く作るのにフェライトのシートを薄く作成し、それを上下薄い樹脂シートでラミネートした後に、細かく切断して形成したりするので、非常に高価であった。このフェライトの磁性シートは、上記のとおりコイルに合わせるので面積が大きく、厚み等のバラツキが大きいので、それに起因するコイルの定数のバラツキがQ値の劣化の大きな原因となっていた。
【0005】
また、非接触に電力を伝送する場合、その電力伝送効率(「コイル間効率」ともいう)(ηrf)は、送電コイルと受電コイルの結合の度合いである結合係数kと、それぞれ無負荷時の送電コイルのQ値(Q)と、受電コイルのQ値(Q)から理論的に一意に求められる。コイル間効率(ηrf)を求めるために用いられる計算式を、式(1)〜式(3)に示す。
【数1】

【数2】

【数3】

上記のとおり、式(1)のコイル間効率(ηrf)は、式(2)のS=k*√(Q*Q)の値に応じて決まる。
【0006】
送電コイルと受電コイル間の結合係数kが大きく得られる場合、つまり電磁誘導の場合は、送電コイルと受電コイルの巻回の径などのサイズがほぼ同じであり、Q値(Q,Q)が小さい場合でも電力の電送は可能となる。しかし、電磁誘導の場合におけるコイル間効率(ηrf)は、結合係数kに依存しているために、送電コイルと受電コイル間の位置精度が非常に重要であり、位置ずれが許されない。そのため、電磁誘導の場合において充電する際は、送電コイルと受電コイルが1対1の対応となっている。また携帯電話端末やデジタルカメラ等の金属の使用率が高い電子機器を、スパイラル形状の送電コイルの上に置くと、電子機器に内蔵されている受電コイルのQ値が大きく劣化してしまうので、その劣化分を結合係数kで補う必要がある。
【0007】
一方では、電磁共鳴方式として、送電コイルと受電コイル間の結合係数kを小さくして、共振器としてのQ値を高めて複数の電子機器に電力を伝送し、かつ送電コイルに対して受電コイルを自由に配置する方法が、提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4413236号(特開2008−206231号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、携帯電話端末やデジタルカメラ等の金属の使用率が高い電子器機器に格納された受電コイルを平面状のスパイラル形状の送電コイルの上に置くと、送電コイルのQ値(Q)及び受電コイルのQ値(Q)が劣化してしまい、電力を伝送できない。よって、用途が電子機器の持つ金属の影響を受けないものに限定されていた。
【0010】
また、電子機器に搭載される受電コイルは、送電コイルに対する配置の自由度を高めるために、送電コイルのサイズより小さく、Q値も50程度と大きくなく、かつ劣化するので、良好な電力伝送を行う非接触電力伝送システムの実現が難しかった。
【0011】
本開示は、上記の状況を考慮してなされたものであり、受電装置に用いられる受電コイルのQ値を大きくし、また筐体内部に入れたときの受電コイルのQ値の劣化を少なくするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の受電コイルは、磁性体を有するコアと、そのコアに線材が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、そのコイル部の側面から一定の距離離れて配置された非磁性体と、を備える。
一例として、非磁性体の厚さが、0.3mm以上である。また、上記磁性体を有するコアとコイル部を内蔵する樹脂部を備え、その樹脂部の側面に非磁性体が配置されている。また、コアの形状がH型である。
【0013】
また本開示の受電装置は、上記受電コイルと、そのコイル部を介して交流信号を受信する受電部と、を備える。
【0014】
また本開示の非接触電力伝送システムは、交流信号を発生する送電装置と、その送電装置で発生した交流信号を受電する上記受電装置と、から構成される。
上記送電装置は、線材が平面状に巻回された送電コイル部と、その送電コイル部に交流信号を供給する送電部とを備える。
【0015】
本開示の構成によれば、磁性体を有するコアに線材を巻きつけてコイル部を形成することにより、Q値を大きくすることができる。また、そのコイル部の側面から一定の距離だけ離れた位置に非磁性体を配置することにより、コイル部を金属の多い筐体内部に入れたときのQ値の劣化が抑えられる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、受電装置に用いられる受電コイルのQ値を大きくし、また筐体内部に入れたときの受電コイルのQ値の劣化を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本開示の一実施形態例に係る受電コイルの外観斜視図である。
【図2】図1に示す受電コイルの正面図である。
【図3】(a)〜(d)は、図1に示す受電コイルの製造工程を示す説明図である。
【図4】従来の送電コイルと受電コイルの組み合わせ例を示す説明図である。
【図5】従来の受電コイルを搭載した携帯端末電話を送電コイルの上に配置した状態の説明図である。
【図6】従来の受電コイルを搭載した携帯端末電話を送電コイル上で移動させたときの一次側コイルのQ値を示すグラフである。
【図7】本開示の一実施形態例に係る受電コイルと送電コイルの組み合わせを示す説明図である。
【図8】図7の受電コイルと送電コイルの組み合わせにおける、S値−コイル間効率の特性の一例を示すグラフである。
【図9】図7の受電コイルと送電コイルの組み合わせにおける、1次側コイルとの距離−コイル間効率の特性の一例を示すグラフである。
【図10】本開示の一実施形態例に係る受電コイル側面に金属を近づける様子を示す説明図である。
【図11】金属とコイル側面の距離−Q値の特性の一例を示すグラフである。
【図12】本開示の一実施形態例に係る受電コイルと送電コイルをそれぞれ備える、非接触電力伝送システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。説明は下記の順序で行う。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
1.一実施形態における受電コイルの構造(H型コアに導線を巻回した例)
2.従来の送電コイルと受電コイルの組み合わせ
3.一実施形態における送電コイルと受電コイルの組み合わせ
4.その他
【0019】
<1.一実施形態の受電コイルの構造>
まず、図1及び図2を参照して、本開示の一実施形態例(以下、「本例」ともいう)に係る受電コイルの構造を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る受電コイルの外観斜視図である。また、図2は、図1に示す受電コイルの正面図である。この受電コイルは、2つのコイルを電磁的に結合させて電力の伝送を行う非接触電力伝送システムの受電側に用いられるコイルである。電磁結合は、「電磁界共振結合」あるいは「電磁共鳴」などとも呼ばれ、電界結合と磁界結合がある。いずれも共振(共鳴)を利用し、共振しているデバイスのみに電界もしくは磁界の結合で電力伝送を行う。以下の例では、電磁結合について説明する。
【0020】
本例の受電コイル1は、磁性材料(例えばフェライト)で構成される側面形状H型のコア(磁芯)2に、複数の細い軟銅が縒りあわされたリッツ線(本例では線径φ0.2mm)を一例として15本束ねた線材5(本例では線径φ1.0mm)を、所定ターン数巻き付けてある。そして、コア2ごと閉じ込めた樹脂部3に、例えば0.5mm厚のアルミニウム(Al)からなる非磁性体6を、コア2の軸芯部2aと所定の距離をおいて該コア2の軸芯部2aの軸(Z軸)と平行に貼り付けている。非磁性体6を貼り付けた状態で、受電コイル1のインダクタンス(L値)は7.61μH、Q値は180であった。
【0021】
次に、図3(a)〜(d)を参照して、受電コイル1の製造工程を説明する。
まず、フェライトからなる軸芯部2aの両端に、フェライトからなるフランジ部2b、2cが取り付けられたような、H型のコア2を作成する(図3(a))。
続いて、H型のコア2の全体を樹脂で覆うようにして、モールド等の手法により樹脂部3を成形する(図3(b))。このとき樹脂部3の側面3aが、コア2の軸芯部2aの中心軸(Z軸)に対して所定の距離となるように成形する。この例では、樹脂部3の樹脂の使用量を減らすため、及び受電コイル1の軽量化のために、樹脂部3の側面3aとコア2の軸芯部2aに対応する部分との間に空隙部4を設けている。
そして、その成形した樹脂部3のコア2の軸芯部2aに対応する部分に、線材5を巻き付ける(コイル部の一例)(図3(c)。巻き数でL値を調整する。
最後に、樹脂部3の側面3aに、例えば0.5mm厚のアルミニウムからなる板状の非磁性体6を貼り付けて、受電コイル1が完成する。
【0022】
本例では、非磁性体としてアルミニウムを貼り付けているが、銅等の非磁性材料を用いてもよい。また、一つの板状の非磁性体を貼り付けているが、コア2を囲むように2辺、3辺に貼り付けてもよい。また、矩形の板状の非磁性材料非磁性材料を用いているが、非磁性体をコア2の軸芯部2a周囲に、円筒に沿うように設けてもよい。
【0023】
また本例では、コアの形状はH型であるが、多少結合係数が低いT型やI型でもほぼ同様の結果が得られる。T型とは、図3(a)のコア2においてフランジ部2b,2cのいずれか一方のみが取り付けられたような形である。また、I型は、フランジ部2b,2cのいずれも取り付けられていないか、もしくはその面積がH型に比べて小さい形をいう。
【0024】
また本例では、成型した樹脂部3により、コア2の軸芯部2aと非磁性体6(金属等の非磁性材料)との距離を確保しているが、この方法のみではなく、成型したモールドを貼り付けたりして作成してもよい。図3(b)の例で説明すると、樹脂部3全体を一体構成とするのではなく、空隙部4から左側部分に、成型したモールドを適用することになる。
【0025】
また本例では、コア2の軸芯部2aの断面形状を矩形としているが、円形でもよい。さらに、コア2の軸芯部2a及びフランジ部2b,2cに同一の磁性材料を用いたが、フランジ部2b,2cに、透磁率の高いアモルファス合金を適用してもよい。アモルファス合金としては、例えばMg−Zn合金などのコバルト(Co)基アモルファス合金がある。アモルファス合金を用いた場合、強度が高くなるためフランジ部が薄型化され、結果としてコア2全体を小型化できる。さらにコア2全体をアモルファス合金で形成してもよい。
【0026】
<2.従来の送電コイルと受電コイルの組み合わせ>
ここで、図4〜図6を参照して、従来の送電コイルと受電コイルの組み合わせについて説明する。
図4は、従来の送電コイルと受電コイルの組み合わせ例を示す説明図である。また図5は、従来の受電コイルを搭載した携帯端末電話を送電コイルの上に配置した状態の説明図である。また図6は、従来の受電コイルを搭載した携帯端末電話を送電コイル上で移動させたときの一次側コイルのQ値を示すグラフである。
【0027】
図4の例では、送電側に平面状のスパイラル形状の送電コイル11を用い、送電コイル11のサイズは、一例として190×150mmとしてある。この送電コイル11は、巻き始めと終わりの線材をコイルの外周に巻回するアルファ巻きとしてある。アルファ巻きにより占積率を向上させることができる。一方、受電側に平面状のスパイラル形状の受電コイル15を用い、受電コイル15のサイズは、一例として40×30mmとしてある。また、送電コイル11及び受電コイル15それぞれの背面(対コイルと反対面)には、各々のコイルと同サイズのフェライトの磁性シート12(190×150mm)、磁性シート16(40×30mm)が貼られている。このときの送電コイル11のQ値は230.5、受電コイル15のQ値は59.5、結合係数kは0.096であった。
【0028】
図5に示すように、実際に受電コイル15を携帯電話端末21に組み込み、携帯電話端末21を送電コイル11上でX方向及びY方向へ動かして測定を行った。なお、矩形のコイル形状の一角を原点としている。携帯電話端末21を送電コイル11のほぼ中央(X方向へ95mm、Y方向へ75mm)に置いたとき、送電コイル11のQ値は230.5→58へ(図6参照)、受電コイル15のQ値も59.5→46.4へ劣化した。また、コイル間効率が84%だったものが54%となり、さらに結合係数kの値も0.068と劣化して、ほとんど実用に使えないレベルの値となっていた。
【0029】
<3.一実施形態における送電コイルと受電コイルの組み合わせ>
次に、図7〜図9を参照して、本開示の送電コイルと受電コイルの組み合わせについて説明する。
図7は、本開示の一実施形態例に係る受電コイルと、送電コイルの組み合わせを示す説明図である。また図8は、図7の受電コイルと送電コイルの組み合わせにおける、S値−コイル間効率の特性の一例を示すグラフである。また図9は、図7の受電コイルと送電コイルの組み合わせにおける、1次側コイルとの距離−コイル間効率の特性の一例を示すグラフである。
【0030】
図7に示す測定に用いた受電コイル1Aは、非磁性体6がないことを除けば、図1の受電コイル1と同じ構造である。実際に受電コイル1Aを携帯電話端末21に組み込み、送電コイル11に対する携帯電話端末21の位置を動かして測定を行った。受電コイル1Aは、コア2の軸芯部2aの中心軸と、平面状の送電コイル11の中心軸(Z軸)が平行となるように配置している。
【0031】
このとき、送電コイル11のQ値(Q1)は図4の従来例と同様に劣化するが、図8に示すように、受電コイル1Aを携帯電話端末21に組み込んでも受電コイル1AのQ値(Q2)の理論値は180であり、ほとんど劣化していないことがわかる。また、実際に受電コイル1Aを携帯電話端末21に内蔵した場合、結合係数kが0.066であり、スパイラルコイルである従来の受電コイル15(図4)のものよりも小さい。しかし、受電コイル1AのQ値が従来のものに比べ非常に高く劣化せず、コイル間効率で78%を達成している。図9に示すように、受電コイル1Aと送電コイル11の間の距離を、双方のXY平面上での位置関係を変えて複数の配置で測定したが、コイル間効率に大きな劣化は見られない。したがって、コイル間効率について見れば、セット機器に組み込んでも送電コイルに対して配置の自由度が高く、かつ非常に高いレベルを実現できていると言える。
【0032】
(受電コイルと金属板間の距離)
次に、本開示の一実施形態に係る受電コイルと金属板間の距離について説明する。
図10は、コア2を内蔵した樹脂部3Aからなる受電コイル1A側面に金属板26を近づける様子を示している。また図11は、受電コイル1A(コイル側面)と金属板26間の距離に対するQ値の特性を示したグラフである。本例では、金属板として例えば0.5mmm厚の、アルミニウム(Al)とステンレス鋼(SUS)を用いて測定した。
【0033】
図11において、受電コイル1AのQ値は、近くに金属板26が存在すると劣化する傾向にあり、金属板の面積が大きいほどQ値が劣化している。また金属の材料でみると、アルミニウムとステンレス鋼では、アルミニウムの方がQ値の劣化が少ない。これはアルミニウム等の非磁性材料に、磁力線が溜まらないので渦電流が流れにくく、高周波信号に対する抵抗が増加するためと考えられる。アルミニウム等の非磁性材料の場合、コアに巻いたコイルから10mm程度離せば、影響が少なくなることが分かる。
【0034】
図11の例では、板厚が0.5mmの非磁性体を用いて測定を実施したが、板厚が0.3mmのアルミニウムや銅などの非磁性体の場合でも、同様の結果が得られている。板厚が0.3mmの非磁性体は、携帯電話端末などの設計スペースに限りのある筐体内で使用するのに有利である。
【0035】
コイル設計としては、コイルを非磁性体から10mm程度離せば、非磁性体による影響が少なくなるのは分かっているが、電子機器の配置の制約により5mm程度しか離せない場合などもある。そのような場合は、あらかじめQ値の劣化分を見込んで線材の巻き数を調整し、コイルのQ値を上げて実使用に問題ないように対応することも可能である。
【0036】
電磁結合を利用する本例では、結合係数kが低くても、1次側及び2次側の直列共振回路のQ値を高くして、送電コイルと受電コイルの配置の自由度を高めるようにしている。一例として、送電コイルと受電コイルの結合係数kを0.2以下、1次側コイル又は2次側コイルの少なくとも一方のQ値を100以上として設計している。結合係数kは、コイルとの関係で言えば1次側コイルのサイズに依存しており、1次側コイルのサイズが小さくなると結合係数kが大きくなるので、そのことも考慮して上記の設計としている。
【0037】
(一実施形態の効果)
以上説明した一実施形態に係る受電コイル、及び該受電コイルと送電コイルの組み合わせによれば、送電コイルに対する受電コイルの配置の自由度があり、効率よく受電することが可能となる。すなわち、電子機器へ組み込み時の受電コイルのQ値の劣化を少なくし、送電コイル上に当該電子機器を置いたときに送電コイルのQ値が劣化する場合でも、配置自由度を確保して電力の伝送を実現できる。
【0038】
また、コアに線材を用いた一実施形態の受電コイルは、従来のスパイラルコイルより安価である。さらに、従来のスパイラルコイルと比較して、コイルの定数(例えばQ値)のバラツキが小さい受電コイルの製造が可能となる。
【0039】
なお、本開示の一実施形態例では、図7に示すに受電コイル1(1A)と送電コイル11により電力伝送を行う例を説明したが、これに限られない。例えば、送電コイル11の中に磁束を均一にするためのリピータコイルを形成し、送電コイル11からリピータコイルを介して受電コイル1(1A)に電力を伝送するようにしてもよい。
【0040】
<4.その他>
(受電コイルの他の実施形態例)
本開示に係る受電コイルの他の実施形態例として、次のような製造工程を有するものも考えられる。
まず、H型のコア2に被覆された線材5を巻き付ける(図3(c)に対応)(コイル部の一例)。巻き数でL値を調整する。次に、樹脂で形成されたモールド部材のケースに線材5を巻き付けたコア2を挿入し、接着材等により固定する(図3(b)に対応)。その後、モールド部材の側面に非磁性体6を貼り付ける(図3(d)に対応))。ここで、H型のコア2のフランジ部2bの上面及びフランジ部2cの下面が、モールド部材のケースの上面及び下面と同一面となるように設計、製造する。このように受電コイルを製造した場合、H型のコア2の高さと、モールド部材のケースの高さを同じにすることができるので、樹脂でモールドする場合に比べ薄型化が可能である。
【0041】
(本開示の受電コイルと送電コイルを用いた非接触電力伝送システム)
上述した本開示の受電コイルと送電コイルを用いた非接触電力伝送システムを説明する。
図12は、本開示の一実施形態に係る受電コイルと送電コイルをそれぞれ備える、非接触電力伝送システムの概略構成図である。この図1は、非接触電力伝送システムの最も基本的な回路構成(磁界結合の場合)の例を示している。
【0042】
本例の非接触電力供給システムは、送電装置31と受電装置41から構成される。
送電装置31は、交流信号を発生させる交流電源33及び抵抗素子34を含む信号源32と、コンデンサ35と、送電コイル(1次側コイル)15を備える。抵抗素子34は、交流電源33の内部抵抗(出力インピーダンス)を図示化したものである。信号源32に対しコンデンサ35と送電コイル11が直列共振回路(共振回路の一例)を形成するように接続されている。そして、測定したい周波数において共振するように、コンデンサ35のキャパシタンスの値(C値)、及び送電コイル11のインダクタンスの値(L値)が調整されている。信号源32とコンデンサ35で構成される送電部37は、送電コイル11を通じて受電装置41へ非接触で電力を伝送する(送電(給電))。
【0043】
受電装置41は、コンデンサ43(二次電池)及び抵抗素子44を含む充電部42と、交流信号を直流信号に変換する整流部48と、コンデンサ45と、受電コイル(2次側コイル)1を備える。抵抗素子44は、コンデンサ43の内部抵抗(出力インピーダンス)を図示化したものである。充電部42に対しコンデンサ45と受電コイル1が直列共振回路を形成するように接続され、測定したい周波数において共振するように、コンデンサ45のキャパシタンスの値(C値)、及び受電コイル1のインダクタンスの値(L値)が調整されている。充電部42、整流部48及びコンデンサ45で構成される受電部47は、受電コイル1を通じて外部から非接触で電力の供給を受ける(受電)。
【0044】
なお、送電装置31の直列共振回路を構成する送電コイル11とコンデンサ35間の電圧をV1(共振回路に掛かる電圧の一例)、送電コイル11両端の電圧をV2とすると、直列共振回路のQ値は、Q=V2/V1で表される。受電装置41側も同様である。
【0045】
図12は直列共振回路を備える基本の回路を示したものであるから、上記回路の機能を備えていれば詳細な構成は種々の形態が考えられる。例えば図12では、受電装置41に設けた負荷の一例としてコンデンサ43を示したが、この例に限られない。また、受電装置41が信号源32(送電部37)を有し、受電コイル1を介して外部装置へ非接触で電力を伝送するようにしてもよいし、送電装置31が負荷を備え、送電コイル11を介して外部装置から非接触で電力の供給を受けるようにしてもよい。受電装置41としては、
携帯電話端末やデジタルカメラ等、種々の電子機器が適用可能である。
【0046】
また、本例は、直列共振回路を例に説明したが、共振回路として並列共振回路を用いてもよい。例えば、第2のコンデンサと送電コイル11の並列回路に対し、第1のコンデンサを直列に接続して並列共振回路を構成してもよい。また、第1のコンデンサと送電コイル11の直列回路に対し、第2のコンデンサを並列に接続して並列共振回路を構成してもよい。並列共振回路に得られる、送電コイル11及び第1のコンデンサ間の電圧V1と、送電コイル11両端の電圧V2を利用して、Q値を計算する。以上、説明した直列共振回路及び並列共振回路は、共振回路の一例であり、これらの構成に限定されるものではない。
【0047】
また、受電コイル側面のアルミニウムの非磁性体に、コイルのL値と共振周波数を調整するためにコンデンサを搭載した基板を貼り付けてもよい。ここで、直列共振回路用のコンデンサと並列共振回路用のコンデンサの両方を基板に貼り付けて、利用者がいずれかを選択できるようにしてもよい。このように共振回路モジュールとして、製造時に共振周波数を調整しておくことにより、利用者が周波数の調整をする必要がない。例えば、この共振回路モジュールに、該当する共振周波数の交流電圧を受電できる受電部を組み合わせることにより、受電装置としてすぐに利用することが可能である。
【0048】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、
前記コイル部の側面から一定の距離離れて配置された非磁性体と、
を備える受電コイル。
(2)
前記非磁性体の厚さが、0.3mm以上である
前記(1)に記載の受電コイル。
(3)
前記磁性体を有するコアと前記コイル部を内蔵する樹脂部を、備え、
前記樹脂部の側面に前記非磁性体が配置されている
前記(1)又は(2)に記載の受電コイル。
(4)
前記コアの形状がH型である
前記(1)〜(3)のいずれかに記載の受電コイル。
(5)
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、
前記コイル部の側面に対して一定の距離離れて配置された非磁性体と、
前記コイル部を介して交流信号を受信する受電部と、
を備える受電装置。
(6)
交流信号を発生する送電装置と、該送電装置で発生した交流信号を受電する受電装置と、から構成され、
前記送電装置は、
線材が平面状に巻回された送電コイル部と、
前記送電コイル部に交流信号を供給する送電部と、を備え、
前記受電装置は、
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、前記送電コイル部と電磁的に結合して電力が伝送される受電コイル部と、
前記受電コイル部の側面に対して一定の距離離れて配置された非磁性体と、
前記受電コイル部を介して交流信号を受信する受電部と、を備える
非接触電力伝送システム。
(7)
前記送電コイル部の、前記受電コイル部側と反対面に配置された磁性シートを有する
前記(6)に記載の非接触電力伝送システム。
【0049】
以上、本開示は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1,1A…受電コイル、2…コア(H型)、2a…軸芯部、2b,2c…フランジ部、3,3A…樹脂部、3a…側面、4…空隙部、5…線材、6…非磁性体、11…送電コイル、12…磁性シート、15…受電コイル、16…磁性シート、21,31…携帯電話端末(電子機器)、31…送電装置、32…信号源、33…交流電源、34…抵抗素子、35…コンデンサ、15…送電コイル、37…送電部、41…受電装置、42…充電部、43…コンデンサ、44…抵抗素子、45…コンデンサ、47…受電部、48…整流部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、
前記コイル部の側面から一定の距離離れて配置された非磁性体と、
を備える受電コイル。
【請求項2】
前記非磁性体の厚さが、0.3mm以上である
請求項1に記載の受電コイル。
【請求項3】
前記磁性体を有するコアと前記コイル部を内蔵する樹脂部を、備え、
前記樹脂部の側面に前記非磁性体が配置されている
請求項2に記載の受電コイル。
【請求項4】
前記コアの形状がH型である
請求項3に記載の受電コイル。
【請求項5】
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、外部コイルと電磁的に結合して電力が伝送されるコイル部と、
前記コイル部の側面に対して一定の距離離れて配置された非磁性体と、
前記コイル部を介して交流信号を受信する受電部と、
を備える受電装置。
【請求項6】
交流信号を発生する送電装置と、該送電装置で発生した交流信号を受電する受電装置と、から構成され、
前記送電装置は、
線材が平面状に巻回された送電コイル部と、
前記送電コイル部に交流信号を供給する送電部と、を備え、
前記受電装置は、
磁性体を有するコアと、
前記コアに線材が巻きつけられ、前記送電コイル部と電磁的に結合して電力が伝送される受電コイル部と、
前記受電コイル部の側面に対して一定の距離離れて配置された非磁性体と、
前記受電コイル部を介して交流信号を受信する受電部と、を備える
非接触電力伝送システム。
【請求項7】
前記送電コイル部の、前記受電コイル部側と反対面に配置された磁性シートを有する
前記請求項6に記載の非接触電力伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−216687(P2012−216687A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81016(P2011−81016)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)