説明

口元止水装置

【課題】止水性及び作業性に優れた口元止水装置を提供する。
【解決手段】対象地盤を削孔する削孔ロッド50とこの削孔ロッド50をガイドする外管51の口元との間を封止して止水を図る口元止水装置であって、エア又は液体からなる流体が供給されるシリンダー部1と、削孔ロッド50を貫通可能とし、かつシリンダー部1のピストン部材14により上方及び/又は下方から押圧される環状の弾性体2と、この弾性体2を保持する保持部3と、を備え、押圧された弾性体2は、内周側に膨出して削孔ロッド50の外周面に圧着する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口元止水装置に関し、詳しくは削孔又は引き抜きの際に削孔口元から土砂および水等が噴出するのを防止するための口元止水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラウンドアンカー等のアンカー工事においてはアンカーの建て込みのために削孔機による削孔が行われる。また、トンネル掘削等の水平方向掘削の場合に切羽安定や透水性の低減等を目的として、トンネル切羽面前方またはその周辺を薬液注入によって地盤改良するために削孔機による削孔がなされる。さらに、根切り工事において周辺の建物への影響を無くすことを目的として、その土留め矢板または土留め壁の背面部分を薬液注入によって地盤改良するためにも削孔機による削孔がなされる。
従来から、被圧水下すなわち地下水圧の影響を受ける地盤において外管を介して削孔ロッドにより削孔を行った場合に、削孔口元より水および土砂等が噴出するという問題が生じていた。かかる土砂等の噴出によって、対象地盤の地態が悪化すること、既に注入されている隣接注入剤が流出してしまうこと等を防ぐため、外管の口元において止水する口元止水装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この口元止水装置は、外管の口元に内周部が開放された円環状のパッキング保持枠を設け、このパッキング保持枠内に円環状の軟弾性材からなる止水パッキングを装填し、その外周部をエアや液体などの流体により加圧して内周側に膨出させることによって削孔ロッドに圧着させて止水するものである。
【特許文献1】特開2001−20700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記発明では、止水パッキングの外周部をエアや水、油などの流体が直接押圧するため気密性が低く、エアの場合には、パッキング保持枠内の密度が変化して調整しにくいため止水性が悪く、また、水、油などの液体では、押圧力を任意に調整することが難しく、作業性が悪いという問題があった。
そこで、本発明の主たる課題は、止水性及び作業性に優れた口元止水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、対象地盤を削孔する削孔ロッドとこの削孔ロッドをガイドする外管の口元との間を封止して止水を図る口元止水装置であって、エア又は液体からなる流体が供給されるシリンダー部と、前記削孔ロッドを貫通可能とし、かつシリンダー部のピストン部材により上方及び/又は下方から押圧される環状の弾性体と、この弾性体を保持する保持部と、を備え、押圧された弾性体は、内周側に膨出して削孔ロッドの外周面に圧着する構成とされた、ことを特徴とする口元止水装置である。
【0005】
(作用効果)
エア又は液体からなる流体が供給されるシリンダー部と、削孔ロッドを貫通可能とし、かつシリンダー部のピストン部材により上方及び/又は下方から押圧される環状の弾性体と、この弾性体を保持する保持部と、を備え、押圧された弾性体は、内周側に膨出して削孔ロッドの外周面に圧着する構成とすることにより、止水性を向上させることができると共に、押圧力の調整が容易であるため作業性に優れる。
特に、シリンダー部の気密性を高めることにより、削孔作業中は、管路途中に設けたバルブを締めることで、常にコンプレッサーやポンプで圧力をかける必要がなく、弾性体を削孔ロッドの外周面に圧着させることができるため作業性に優れる。
【0006】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、前記弾性体の内部に、中空部が形成されている構成とされた、請求項1記載の口元止水装置である。
【0007】
(作用効果)
弾性体の内部に、中空部が形成されている構成とすることにより、押圧力が小さくても容易に弾性体を内周側に膨出させることができる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
請求項3記載の発明は、前記弾性体の内周面に、凹部又は溝が形成されている構成とされた、請求項1又は2記載の口元止水装置である。
【0009】
(作用効果)
弾性体の内周面に、凹部又は溝が形成されている構成とすることにより、削孔ロッドとの圧着面積を減らすことができ、その結果、削孔ロッドの回転による摩擦抵抗を少なくでき、削孔効率を悪化させることなく、止水を行なうことができる。
【0010】
<請求項4記載の発明>
請求項4記載の発明は、前記中空部内に、液体又はゼリー状の流体が封入されている、請求項2又は3記載の口元止水装置である。
【0011】
(作用効果)
中空部内に、液体又はゼリー状の流体を封入することにより、中空部内の密度の変化がなくなり、内周側へ膨出した際の削孔ロッドとの密着性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、止水性及び作業性に優れる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1乃至図5に基づき本発明の実施の形態を説明する。
本発明に係る口元止水装置は、図1乃至図3に示すように、対象地盤を削孔する削孔ロッド50をガイドする外管51の口元部分に取付けられ、削孔ロッド50と外管51の口元部分との間を封止して止水を図るものである。この口元止水装置は、シリンダー部1と、このシリンダー部1により押圧される環状の弾性体2と、この弾性体2を保持する保持部3と、を備えている。
【0014】
シリンダー部1は、環状に形成されており、上端に鍔11Aを有する内周壁11と、この内周壁11を覆うように構成された外周壁12と、を備え、これら内周壁11と外周壁12との間にシリンダー室13が形成されていると共に、このシリンダー室13内に環状のピストン部材14が摺動自在に設けられている。
【0015】
内周壁11の鍔11Aは、シリンダー室13の上壁を形成すると共に、外周壁12の上端に形成された上部フランジ12Aに当接し、ボルト15,15,…等により外周壁12と連結できるようになっている。ボルト15,15,…は、鍔11Aに対して所定の間隔で円周上に取付けられている。この内周壁11の鍔11Aには、シリンダー室13と連通し、エア、又は水や油等の液体などの流体を供給する供給管16が取付けられており、コンプレッサー(図示せず)又はポンプ(図示せず)から供給される流体が、管路(図示せず)を介して供給管16からシリンダー室13に送られ、これら流体によりピストン部材14が下方に押し下げられ、図3に示すように、後述する弾性体2を押圧するようになっている。
【0016】
従来の口元止水装置では、気密性が低い等の理由で、削孔作業中は、常にコンプレッサーやポンプで圧力をかけていなければならなかったが、本発明では、止水性を向上させることができると共に、押圧力の調整が容易であるため作業性に優れている。特に、気密性の高いシリンダー室13を設け、ピストン部材14で弾性体2を押圧する構成であることにより、削孔作業中は、管路途中に設けたバルブ(図示せず)を締めることで、常にコンプレッサーやポンプで圧力をかける必要がなくなり、弾性体2を削孔ロッド50の外周面に圧着させることができるため作業性に優れる。
【0017】
ピストン部材14は、環状の部材であり、図2及び図3に示すように、その環状の断面が略逆L字状になっており、縮外径部分により外周側に形成された段部14Aが、外周壁12の下部フランジ12Bの内周側に係止可能となっている。この段部14Aによりピストン部材14の下方への移動が一定の範囲内に規制され、所定の長さ以上に押し下がらないようになっている。この範囲については、任意に設定することができる。また、外周壁12の下部フランジ12Bは、後述する保持部3の上部フランジ31に当接し、ボルト34,34,…等により保持部3と連結できるようになっている。ボルト34,34,…は、上部フランジ31に対して所定の間隔で円周上に取付けられている。
【0018】
保持部3は、環状に形成されており、下端に鍔33が形成された外周壁32を有している。外周壁32の鍔33は、保持部3の底壁を形成すると共に、その内側で弾性体2を係止している。また、前述したように、保持部3の上部フランジ31は外周壁12の下部フランジ12Bと当接し、ボルト34,34,…等により連結できるようになっている。
【0019】
弾性体2は、削孔ロッドを貫通可能とする環状のゴム等の軟質樹脂であり、保持部3の外周壁32と鍔33とで係止されるようになっている。この弾性体2は、図3に示すように、流体が供給されてピストン部材14が下方に移動することによって、内周側に膨出する。これにより、弾性体2は削孔ロッド50の外周と圧着し、止水が可能となるものである。なお、弾性体2の上部には、直接、ピストン部材14の下端を当接させてもいいが、均等に押圧力を伝達するため、図2及び図3に示すように、環状のプレート4を間に咬ませてもよい。
【0020】
弾性体2は、図2及び図3に示すように、その環状の断面が略矩形状になっており、断面内部に中空部21が形成されている。この中空部21により、押圧力が小さくても容易に弾性体2を内周側に膨出させることができる。なお、この中空部21に液体又は可塑剤(例えば、ゼリー状の流体)を充填してもよい。中空部内に、液体又はゼリー状の流体を封入することにより、中空部内の密度の変化がなくなり、内周側へ膨出した際の削孔ロッドとの密着性を向上させることができる。
【0021】
この弾性体2の断面形状は、様々に変形することが可能である。例えば、図4(1)、(2)及び(4)に示すような内周面に歯型状の溝や鋸状の溝を形成したものや、図4(3)に示すような内周面に緩やかな窪み(凹部)を形成したものを考えることができる。これらの形状によって、削孔ロッドとの圧着面積を減らすことによって、削孔ロッド50の回転による摩擦抵抗を少なくし、削孔効率を悪化させることなく、止水を行なうことができる。また、例えば、図5(1)及び(2)に示すように外周面に凹部(窪み)を設けたり、これに加えて図5(3)及び(4)に示すように内周面に溝を形成したものも考えることができる。
【0022】
本発明に係る口元止水装置は、シリンダー部1が上部に位置し、その下部に弾性体2が取付けられた保持部3が位置している形態に換えて、図示はしないが、保持部3を上部に位置させ、その下部にシリンダー部1を位置させ、下方から流体を供給してピストン部材14を上昇させ、下方から弾性体2を押圧し内周側に膨出させる構成にしてもよい。また、保持部3の上部及び下部にそれぞれシリンダー部1を設けて、弾性体2を上方及び下方から押圧してもよい。
【0023】
さらに、シリンダー部1のシリンダー室13を内周側に設ける形態に換えて、外周側に設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る口元止水装置の平面図である。
【図2】その縦断面図(I−I断面図)である。
【図3】流体が供給された状態の口元止水装置の縦断面図(I−I断面図)である。
【図4】弾性体の他の実施例(1)の縦断面図である。
【図5】弾性体の他の実施例(2)の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1…シリンダー部、2…弾性体、3…保持部、4…プレート、11…内周壁、11A…鍔、12…外周壁、12A…上部フランジ、12B…下部フランジ、13…シリンダー室、14…ピストン部材、14A…段部、15…ボルト、16…供給管、21…中空部、31…上部フランジ、32…外周壁、33…鍔、34…ボルト、50…削孔ロッド、51…外管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地盤を削孔する削孔ロッドとこの削孔ロッドをガイドする外管の口元との間を封止して止水を図る口元止水装置であって、
エア又は液体からなる流体が供給されるシリンダー部と、前記削孔ロッドを貫通可能とし、かつシリンダー部のピストン部材により上方及び/又は下方から押圧される環状の弾性体と、この弾性体を保持する保持部と、を備え、
押圧された弾性体は、内周側に膨出して削孔ロッドの外周面に圧着する構成とされた、
ことを特徴とする口元止水装置。
【請求項2】
前記弾性体の内部に、中空部が形成されている構成とされた、請求項1記載の口元止水装置。
【請求項3】
前記弾性体の内周面に、凹部又は溝が形成されている構成とされた、請求項1又は2記載の口元止水装置。
【請求項4】
前記中空部内に、液体又はゼリー状の流体が封入されている、請求項2又は3記載の口元止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−169893(P2007−169893A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364695(P2005−364695)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)