説明

口座管理システムおよび方法

【課題】出金の限度額が現金残高を超えるときは、電子記録債権を分割し必要な分の額を割引いて充当することにより柔軟な処理を可能にすること。
【解決手段】顧客が顧客端末を通して振込依頼を指示すると、為替処理サーバ102が起動され、預金元帳データベース106により、対象の口座の現金残高を確認し、融資データベース105で現時点の対象口座に関連付けられた電子記録債権の割引可能枠および割引条件を確認し、電子記録債権システム103により電子記録債権を特定して、必要な分の電子記録債権の分割を行い、その電子記録債権を割引いて振込処理に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口座管理システムおよび方法に関し、より詳細には口座に関連付けて電子記録債権を管理する口座管理システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の紙の手形に代わり、国から認可を受けた電子債権記録機関が債権者・債務者の名前、支払金額、支払期日などをコンピュータ上で管理し、手形のように譲渡、換金等が可能な電子記録債権が導入された。
【0003】
電子記録債権は、従来の紙の手形に比し、コンピュータ上で情報を管理するので、紙の手形につきまとった紛失や盗難等のリスクを回避し、また決済期限より前に債権を換金することができるため、企業の資金繰りを円滑にする効果も期待されている。また、電子記録債権は、さらに、その額面での取引に加え、分割して譲渡できるので、必要な額だけ分割して早期に現金化する等柔軟な対応が可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4201824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシステムにおいては、所定の口座から送金や振込みなどの出金処理をする場合、出金額の上限はあくまでも口座内の現金の残高が限度になっており、現金残高以上に出金したいときは、何らかの与信を行って借り入れ等を行う必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、顧客が電子記録債権の債権者であるときは、電子記録債権を口座に関連付けて管理し、出金の限度額が現金残高を超えるときは、電子記録債権を分割し必要な分の額を割引いて充当することにより柔軟な処理を可能にする口座管理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、口座管理システムであって、所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースと、ネットワークを介して原簿にアクセスし、口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して電子記録債権残高を更新し、電子記録債権の割引が行われると電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理手段と、口座について、所定の時に現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定手段と、出金が可能なときは、所定の時に電子記録債権のうち現金残高を超える分だけ電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、データベースを更新する出金手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の口座管理システムにおいて、電子記録債権のうち出金のために割引く予定の額を割引予定枠として記憶する予定枠データベースをさらに備え、判定手段は、出金要求に対応する出金が可能か否か判定される際に予定枠データベースにアクセスして、他の割引予定枠があるときは、他の予定枠を除いた電子記録債権残高により判定することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の口座管理システムにおいて、出金要求の要求時と出金実行時との間のいずれかの時に、電子記録債権が劣化しているときは、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する確認手段をさらに備え、出金手段は、確認手段の判定結果が出金不可のときは出金の実行を停止することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の口座管理システムにおいて、出金要求の要求時と出金実行時との間のいずれかの時に、現金残高が減額しているときは、出金額のうち減額した現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する現金確認手段をさらに備え、出金手段は、現金確認手段の判定結果が出金不可のときは出金の実行を停止することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の口座管理システムにおいて、ネットワークを介して顧客端末から出金要求を受信し、データベースに記憶された残高を送信して顧客端末に表示させる顧客通信手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の口座管理システムにおいて、顧客通信手段は、判定結果が出金不可のときは顧客端末に警告を送信することを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、所定の口座ごとに現金残高および口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースを備えた口座管理システムの管理方法であって、ネットワークを介して原簿にアクセスし、口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して電子記録債権残高を更新し、電子記録債権の割引が行われると電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理ステップと、口座について、所定の時に現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定ステップと、出金が可能なときは、所定の時に電子記録債権のうち現金残高を超える分だけ電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、データベースを更新する出金ステップとを備えたことを特徴とする方法。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の口座管理システムにおいて、判定ステップは、出金要求に対応する出金が可能か否か判定される際に電子記録債権のうち出金のために割引く予定の額を割引予定枠として記憶する予定枠データベースにアクセスして、他の割引予定枠があるときは、他の予定枠を除いた電子記録債権残高により判定することを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載の方法において、出金要求の要求時と出金実行時との間のいずれかの時に、電子記録債権が劣化しているときは、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する確認ステップをさらに備え、出金ステップは、確認ステップの判定結果が出金不可のときは出金の実行を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7または8に記載の方法において、出金要求の要求時と出金実行時との間のいずれかの時に、現金残高が減額しているときは、出金額のうち減額した現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する現金確認ステップをさらに備え、出金ステップは、現金確認ステップの判定結果が出金不可のときは出金の実行を停止することを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項7ないし10のいずれかに記載の方法において、ネットワークを介して顧客端末から出金要求を受信し、データベースに記憶された残高を送信して顧客端末に表示させる顧客通信ステップをさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の方法において、顧客通信ステップは、判定結果が出金不可のときは顧客端末に警告を送信することを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、所定の口座ごとに現金残高および口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースを備えた口座管理システムに、管理方法を実行させるプログラムであって、方法は、ネットワークを介して原簿にアクセスし、口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して電子記録債権残高を更新し、電子記録債権の割引が行われると電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理ステップと、口座について、所定の時に現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定ステップと、出金が可能なときは、所定の時に電子記録債権のうち現金残高を超える分だけ電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、データベースを更新する出金ステップとを備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、口座管理システムであって、ネットワークを介して所定の口座からの出金要求を送信する顧客端末と、所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースと、ネットワークを介して原簿にアクセスし、口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して電子記録債権残高を更新し、電子記録債権の割引が行われると電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理手段と、顧客端末から所定の時に現金残高を超える出金額の出金要求を受信した場合、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定手段と、出金が可能なときは、所定の時に電子記録債権のうち現金残高を超える分だけ電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、データベースを更新する出金手段とを含むサーバとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースと、ネットワークを介して原簿にアクセスし、口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して電子記録債権残高を更新し、電子記録債権の割引が行われると電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理手段と、口座について、所定の時に現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、出金額のうち現金残高を超える額を電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定手段と、出金が可能なときは、所定の時に電子記録債権のうち現金残高を超える分だけ電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、データベースを更新する出金手段とを備えたことにより、柔軟な処理を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の全体システムを示すブロック図である。
【図2】本実施形態の処理全体の流れを示す図である。
【図3】本実施形態の振込み予約設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の振込予約設定後の定期処理のフローチャートである。
【図5】本実施形態の振込予約設定後の定期処理のフローチャートである。
【図6】本実施形態の振込当日の処理のフローチャートである。
【図7】本実施形態の振込実行時の処理のフローチャートである。
【図8】本実施形態の処理全体の流れを説明するための図である。
【図9】本実施形態の顧客端末の一例を示す図である。
【図10】本実施形態の顧客端末の一例を示す図である。
【図11】本実施形態の顧客端末の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
(本実施形態の構成)
図1は、本実施形態の全体システムを示すブロック図である。図1を参照すると、不図示の顧客端末は、インターネット等のネットワークを経由してウェブサーバ101に接続されており、顧客は顧客端末を通して本システムが提供する種々のサービスを受ける。具体的には、通常の情報提供、口座の開設、パスワードの設定、業務処理の依頼等が含まれるがこれに限られない。
【0024】
本実施形態で、為替処理サーバ102は、主に顧客端末を通してアクセスしてきた顧客の口座に関わるさまざまな処理について、顧客端末からの要求をウェブサーバ101を介して受信し、でんさいネット111や全銀ネット110を介して種々のデータベースにアクセスしつつ関連する処理を実行し、処理結果や必要な情報を顧客端末に送信するが、これらのデータベース、ネットワークの詳細は当業者であれば理解できるので、ここでは本実施形態の説明に必要な範囲でのみ触れる。本実施形態では、でんさいネット111を介して得られた情報に基づき電子記録債権明細103を更新して電子記録債権の残高などを管理する。
【0025】
さらに、為替処理サーバ102は、勘定系サーバ104を介して預金元帳データベース106、および予定枠データベースである融資データベース105内の、処理要求をしている顧客に関する情報を取得し、為替処理の実行の際に使用するが、これらのデータベース並びにデータベースの管理されているデータおよびその処理についての詳細は当業者であれば理解できるのでここでは省略する。以上のように本実施形態では、顧客の口座について従来からの現金の管理だけでなく、予めその口座に関連付けられた電子記録債権の管理もあわせて行う。
【0026】
なお、本実施形態の顧客端末、各種サーバはプロセッサ、メモリ等を備えた通常のコンピュータであって、ネットワークに接続するための機能のほか、必要に応じて記憶装置や、LCDなどの表示装置、あるいはキーボードやマウスなどの入力機器を備えるが、これに限られず本技術分野で知られたさまざまなハードウェアを内蔵あるいは接続することができる。また、以上のような顧客端末や各種サーバにはOSやさまざまなドライバーまたはアプリケーションがインストールされ、本実施期待で後述する種々の処理を全体として実行する。
【0027】
(本実施形態の処理)
次に、図2を参照して本実施形態の為替処理、具体的には対象となる顧客の口座から、他の口座に対する振込処理について概説し、その後図3ないし7を参照して詳説する。
【0028】
図2を参照して本実施形態の処理の概略を説明すると、まず顧客が顧客端末(図示せず)を通して振込依頼を指示すると、為替処理サーバ102が起動され、預金元帳データベース106により、対象の口座の現金残高を確認し、融資データベース105で現時点の対象口座に関連付けられた電子記録債権の割引可能枠および割引条件を確認し、電子記録債権システム103により電子記録債権を特定して、必要な分の電子記録債権の分割を行い、その電子記録債権を割引いて振込処理に使用する。以上の処理により、顧客端末から口座の現金残高を超える額の振込要求があったときでも、その口座に関連付けられた電子記録債権があるときは、それを割引くことにより、別途貸付等を行うことなく、指示された振込みを正常に実行することができる。
【0029】
ここで、振込に使用する電子記録債権は予め、対象となる顧客の口座に関連付けられているが、このような電子記録債権は例えば図9ないし11に示すような顧客端末(不図示)の画面から設定、管理することができる。すなわち、図9に示す譲渡記録請求の画面により、電子記録債権に対する処理を行うことができる。図10は承認用の画面であり、図11は電子記録債権の状態を確認するための画面である。
【0030】
図3ないし7を参照して、本実施形態の処理の詳細を説明する。ここで、本実施形態では期日を指定しての振込処理を想定し、図3では処理の依頼を受けてからは、振込みをするための準備(振込予約の設定)までを説明し、図4および5では、振込予約後、振込実行まで定期的に実行される処理(定期処理)について説明する。すなわち、振込予約が設定されてから実際に指定された指定日に振込みを行うまでは口座の状態が大きく変動する可能性があるので、定期的にチェックを行い、最初に設定した予定と異なる状態になったときは、相応の必要な処理を実行する必要がある。このような処理を図4および5のフローチャートを参照して説明し、最後に振込指定日の当日の処理は図5および6を参照して説明する。
【0031】
(振込予約の設定の処理)
図3を参照して説明すると、為替処理サーバ102が顧客端末(不図示)から振込予約依頼を受信すると(S301)、その顧客の指定する口座の現金残高を確認し(S302)、現金残高が指定された振込額以上か否かを判定し(S303)、以上であれば現金のみで、指示された振込が賄えるので、振込の予約を行って処理を終了する(S304)。
【0032】
口座の現金残高が振り込み額に対して不足しているときは、割引可能枠および条件を融資データベース105にアクセスして確認し(S305)、利用可能な枠があり(S306)、その枠を利用するときは(S308)、現金残高だけでは不足する額を利用予定額として指定して(S310)、電子記録債権明細データベース103を確認する(S311)。割引可能枠がない、または電子記録債権を利用する意思がないときは、アラートを顧客端末に報知して(S307)、振込実行日までに不足分を調達可能でない限り振込処理を中止し(S318)、その旨顧客端末に送信するなど必要な処理を行う(S319)。振込予定日までに、不足分の調達が可能であれば、振込みを予約して終了する(S316、S317)。
【0033】
ステップS308において、不足額を電子記録債権で充当しようとするときは、電子記録債権明細データベース103を確認し(S311)、割引条件に合致する電子記録債権として不足額を充当するだけの額の電子記録債権があるか否か判定し(S312)、不足分を賄うだけの電子記録債権があるときは、使用する電子記録債権を選択し(S313)、割引予定額をホールドして(S314)処理を終了する(S315)。これにより、今後別の振込処理など、電子記録債権の割引をする可能性のある処理を実行するときも、ホールドされた電子記録債権は以降の処理で使用することができないよう予定枠として維持されることとなる。
【0034】
ステップS312において、不足額を充当するだけの額の電子記録債権がないと判定されたときは、アラートを顧客端末に報知して(S320)、振込実行日までに不足分を調達可能でないときは現金残高だけでは不足する額を利用予定額として再度指定して(S326)、ステップS311移行し、電子記録債権明細データベース103を確認する。電子記録債権に割り当てられなかった不足分を振込予定日までに調達可能なときは(S322)、現時点で割り当て可能な電子記録債権を選択し(S323)、割引予定額をホールドして(S324)処理を終了する(S325)。
【0035】
以上により、振込予約の設定の処理、すなわち振込みの要求があったときの設定処理を終了する。
【0036】
(振込予約設定後の定期処理)
通常の取引において、一旦振込予約の設定を行っても、その前提となる口座の現金残高自体が、他の処理で使用されたりして振り込み実行時までに減額してしまうことがあるほか、電子記録債権についても額面はホールドしても、電子記録債権の劣化等により実質上不足額を賄うことができない事態となることがある。本定期処理は、このような事態を未然に防ぎ、電子記録債権を再選択したり、顧客に更なる調達の可能性を確認したりして、可能な限り振込の実行を確実にする。もちろん、いずれの対応策も失敗したときは、アラートを出して事前に顧客に知らせることができる。
【0037】
図4を参照して定期処理を説明すると、振込みの依頼から実際の振込実行日までの任意の日時に定期的にあるいはランダムに口座および電子記録債権の状態を確認し、利用する予定の電子記録債権の選択に変更が必要になる等、再処理のトリガーになる事態が確認されると、必要な処理を適宜行う。そうでないとき、すなわち口座および電子記録債権の状態を確認してもトリガーとなるべき事象が発生していないときは(S402)、特に処理は行わずに終了する。ここで、定期処理を実行するタイミングは、各システムごとの事情により種々設定できるが、たとえば、通常は1日に1回程度と考えられるが、振込予約の指定日が先の場合は数日に1回等にすることもでき、逆に1日に数回、本定期処理を実行することもできる。
【0038】
本実施形態の振込処理において、トリガーとしては、振込予約設定時から口座の現金残高が減額して、振り込み予定額を割り込んだ場合、および割り当てた電子記録債権の劣化が発生した場合がある。図4のフローチャートは、主に現金残高が割り込んだ場合の処理を、図5のフローチャートは電子記録債権が劣化したときの処理を示す。
【0039】
図4を参照すると、現金残高が減額した場合(S404)、割引可能枠および条件を融資データベース105にアクセスして確認し(S406)、利用可能な枠があるときは(S407)、電子記録債権明細データベース103を確認する(S408)。割引可能枠がないときは、アラートを顧客端末に報知して(S413)、振込実行日までに不足分を調達可能でない限り振込処理を中止し(S417)、その旨顧客端末に送信するなど必要な処理を行う(S418)。振込予定日までに、不足分の調達が可能であれば、振込予約維持操作を行って、振込予約を維持する(S415、S416)。
【0040】
ステップS407において、不足額を電子記録債権で充当しようとするときは、電子記録債権明細データベース103を確認し(S408)、割引条件に合致する電子記録債権として不足額を充当するだけの額の電子記録債権があるか否か判定し(S409)、不足分を賄うだけの電子記録債権があるときは、使用する電子記録債権を再選択し(S410)、割引予定額をホールドして(S411)、振込予約を維持し処理を終了する(S416)。以上により、現金残高が割り込んだ場合の定期処理を終了する。
【0041】
次に、図5を参照して、図4のトリガーが電子記録債権劣化である場合について説明する。振込みの不足分に使用する予定の電子記録債権の劣化が発生すると(S501)、顧客端末にアラートを送信し(S502)、一旦、振込予約設定でホールドした電子記録債権のホールドを解除し、割引予定のフラグも解除しておき(S503、S504)、改めて電子記録債権明細データベース103を確認する(S505)。電子記録債権劣化を補うことが可能な割引可能枠がないときは、アラートを顧客端末に報知して(S510)、振込実行日までに不足分を調達可能でない限り振込処理を中止し(S514)、その旨顧客端末に送信するなど必要な処理を行う(S515)。振込予定日までに、不足分の調達が可能であれば、振込予約維持操作を行って、振込予約を維持する(S512、S513)。
【0042】
ステップS506において、電子記録債権劣化を電子記録債権の追加割り当てで補おうとするときは、使用する電子記録債権を追加で選択し(S507)、割引予定額を再度ホールドして(S508)、振込予約を維持し処理を終了する(S509)。
【0043】
(振込予約日の処理)
次に、図6および図7を参照して振込実行日の処理(S601)を説明する。ここで、図6のフローチャートは振込当日の全体の処理を示し、図7のフローチャートは振込当日の特に電子記録債権に関する処理を示す。
【0044】
まず、図6を参照し、振込依頼で指定された期日になると、振込実行に先立って現金残高が減額していないかどうかの確認を行い(S602)、減額していて割引予定枠の変更が必要な場合は、電子記録債権の状態をチェックして追加の割引が可能であれば追加の処理を行うが、現金残高が減額されていない場合は、割引予定額および割引条件を確認して図7に示す割引処理へ進む(S608)。
【0045】
ステップS603において割引予定枠の変更が必要な場合、減額が必要か増額が必要か判定し(S604)、減額が必要なときは、一旦割引予定枠のホールドを解除し(S605)割引対象となる電子記録債権を再選択して(S607)、図7に示す割引処理へ進む。増額が必要なときは(S609)、予定枠のホールドを解除し(S610)、割引可能枠および条件を融資データベース105にアクセスして確認し(S611)、利用可能な枠があるときは(S612)、電子記録債権明細データベース103を確認する(S613)。割引可能枠がないときは、振込みを中止し(S615)、その旨顧客端末に送信するなど必要な処理を行う(S616)。
【0046】
ステップS612において、不足額を電子記録債権で充当しようとするときは、電子記録債権明細データベース103を確認し(S613)、割引条件に合致する電子記録債権として不足額を充当するだけの額の電子記録債権があるか否か判定し(S614)、不足分を賄うだけの電子記録債権があるときは、使用する電子記録債権を再選択して、図7に示す割引処理へ進む。不足分を賄うだけの電子記録債権があるときは、振込みを中止し(S617)、その旨顧客端末に送信するなど必要な処理を行う(S618)。
【0047】
次に、図7を参照して電子記録債権の割引処理について説明する。本実施形態では、振込に当たり割引が必要な電子記録債権の額が補充に必要な額よりも少ない場合は、電子記録債権全部を割引くと本来割引く必要のない分まで割引くことになるため、まず必要な額だけ分割し、分割された電子記録債権を割引く。すなわち、分割が必要か否か判定し(S701)、必要な場合は必要な額に合わせて分割を実行すると(S702)、電子記録債権システムからでんさいネットに接続し、原簿に分割を記録する(S703)。次に、各電子記録債権について割引を実行すると(S704)、同様にでんさいネットを介して原簿に譲渡が記録される。
【0048】
必要な電子記録債権の割引が終了すると、口座に現金として入金され(S706)、もともとあった現金とともに指定口座に振込みが行われる(S707)
【0049】
(本実施形態の実施例)
以上で、本実施形態の処理の説明を終了するが、この具体例を図8を参照して説明する。図8を参照すると、取引開始前は左の口座情報801が示すような口座の電子記録債権(債権金額 10,000円、50,000円、300,000円、140,000円)の状態から、振込画面803に示すように現金も含め120万円の振込みを処理を行う。本実施例では、現金残高が100万円であるとして、振込額である120万円のうち100万円は現金で賄われ、残りの20万円が電子記録債権で補充される。
【0050】
具体的には、現時点で残っている電子記録債権(口座情報801)のうち本実施例では、1万円、5万円および30万円の電子記録債権を使用するものとすると、まずは、これらの電子記録債権を割引予定債権として予約し、予定枠としては1万円および5万円の全部並びに30万円のうちの15万円を設定し、予定枠をホールドしておく(振込予約の設定)。すなわち、本実施形態では割引可能枠および割引条件が融資データベース105に記憶されており、使用可能な電子記録債権が複数存在する場合は、融資データベース105に記憶された条件に基づいてどの電子記録債権をどれだけ割引くかを決め、予定枠の設定を行う。本実施例では、1万円、5万円および30万円の電子記録債権を優先的に割引予定債権として予約するという条件であったが、この条件は予め種々に設定することができる。例えば、支払期日が最も近い電子記録債権を優先する、あるいは債務者の信用度に応じて優先度を設けるといった設定ができるが、これに限られない。
【0051】
上述のように振込み指定日までは、定期的に電子記録債権や現金残高の状態を確認しておき、特に状態が変化することなく振込指定日を迎えると、予定枠どおりに振込処理を実行する。すなわち、予定枠のホールドの解除を行い、30万円の電子記録債権を分割し、15万円の電子記録債権と15万円の電子記録債権として、その後どちらかの15万円の電子記録債権のみ割引いて、もともとの現金100万円とともに振込処理に使用する。
【0052】
このような処理の結果、口座で管理される電子記録債権の口座情報802のような状態となり、電子記録債権としては15万円の電子記録債権および14万円の電子記録債権が残ることとなる。
【0053】
以上により、本実施形態では口座により電子記録債権も管理するシステムを用いて、振込処理を行う場合を想定して本発明の実施態様を説明したが、振込みに限らず、本発明の口座管理システムおよび方法は、様々な口座に関連する取引の処理に用いることができ、その結果、顧客が電子記録債権のような電子記録債権の債権者であるときは、電子記録債権を口座に関連付けて管理し、出金の限度額が現金残高を超えるときは、電子記録債権を分割し必要な分の額を割引いて充当することにより柔軟な処理を可能にすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースと、
ネットワークを介して原簿にアクセスし、前記口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して前記電子記録債権残高を更新し、該電子記録債権の割引が行われると前記電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理手段と、
前記口座について、所定の時に前記現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、前記出金額のうち前記現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定手段と、
前記出金が可能なときは、前記所定の時に前記電子記録債権のうち前記現金残高を超える分だけ前記電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、前記データベースを更新する出金手段と
を備えたことを特徴とする口座管理システム。
【請求項2】
前記電子記録債権のうち前記出金のために割引く予定の額を割引予定枠として記憶する予定枠データベースをさらに備え、
前記判定手段は、前記出金要求に対応する出金が可能か否か判定される際に前記予定枠データベースにアクセスして、他の割引予定枠があるときは、該他の予定枠を除いた電子記録債権残高により判定することを特徴とする請求項1に記載の口座管理システム。
【請求項3】
前記出金要求の要求時と前記出金実行時との間のいずれかの時に、前記電子記録債権が劣化しているときは、前記出金額のうち当該現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する確認手段をさらに備え、
前記出金手段は、前記確認手段の判定結果が出金不可のときは前記出金の実行を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の口座管理システム。
【請求項4】
前記出金要求の要求時と前記出金実行時との間のいずれかの時に、前記現金残高が減額しているときは、前記出金額のうち当該減額した現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する現金確認手段をさらに備え、
前記出金手段は、前記現金確認手段の判定結果が出金不可のときは前記出金の実行を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の口座管理システム。
【請求項5】
ネットワークを介して顧客端末から前記出金要求を受信し、前記データベースに記憶された残高を送信して前記顧客端末に表示させる顧客通信手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の口座管理システム。
【請求項6】
前記顧客通信手段は、前記判定結果が出金不可のときは前記顧客端末に警告を送信することを特徴とする請求項5に記載の口座管理システム。
【請求項7】
所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースを備えた口座管理システムの管理方法であって、
ネットワークを介して原簿にアクセスし、前記口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して前記電子記録債権残高を更新し、該電子記録債権の割引が行われると前記電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理ステップと、
前記口座について、所定の時に前記現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、前記出金額のうち前記現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定ステップと、
前記出金が可能なときは、前記所定の時に前記電子記録債権のうち前記現金残高を超える分だけ前記電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、前記データベースを更新する出金ステップと
を備えたことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記判定ステップは、前記出金要求に対応する出金が可能か否か判定される際に前記電子記録債権のうち前記出金のために割引く予定の額を割引予定枠として記憶する予定枠データベースにアクセスして、他の割引予定枠があるときは、該他の予定枠を除いた電子記録債権残高により判定することを特徴とする請求項7に記載の口座管理システム。
【請求項9】
前記出金要求の要求時と前記出金実行時との間のいずれかの時に、前記電子記録債権が劣化しているときは、前記出金額のうち当該現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する確認ステップをさらに備え、
前記出金ステップは、前記確認ステップの判定結果が出金不可のときは前記出金の実行を停止することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記出金要求の要求時と前記出金実行時との間のいずれかの時に、前記現金残高が減額しているときは、前記出金額のうち当該減額した現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する現金確認ステップをさらに備え、
前記出金ステップは、前記現金確認ステップの判定結果が出金不可のときは前記出金の実行を停止することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項11】
ネットワークを介して顧客端末から前記出金要求を受信し、前記データベースに記憶された残高を送信して前記顧客端末に表示させる顧客通信ステップをさらに備えたことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記顧客通信ステップは、前記判定結果が出金不可のときは前記顧客端末に警告を送信することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースを備えた口座管理システムに、管理方法を実行させるプログラムであって、前記方法は、
ネットワークを介して原簿にアクセスし、前記口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して前記電子記録債権残高を更新し、該電子記録債権の割引が行われると前記電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理ステップと、
前記口座について、所定の時に前記現金残高を超える出金額の出金要求がある場合、前記出金額のうち前記現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定ステップと、
前記出金が可能なときは、前記所定の時に前記電子記録債権のうち前記現金残高を超える分だけ前記電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、前記データベースを更新する出金ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
ネットワークを介して所定の口座からの出金要求を送信する顧客端末と、
所定の口座ごとに現金残高および該口座に関連付けられた電子記録債権の電子記録債権残高を記憶するデータベースと、ネットワークを介して原簿にアクセスし、前記口座に関連付けられた電子記録債権の情報を読出して前記電子記録債権残高を更新し、該電子記録債権の割引が行われると前記電子記録債権の情報を変更する電子記録債権管理手段と、前記顧客端末から所定の時に前記現金残高を超える出金額の出金要求を受信した場合、前記出金額のうち前記現金残高を超える額を前記電子記録債権残高の電子記録債権の一部を使用して前記出金要求に対応する出金が可能か否かを判定する判定手段と、前記出金が可能なときは、前記所定の時に前記電子記録債権のうち前記現金残高を超える分だけ前記電子記録債権を分割し割引いて出金処理を実行し、前記データベースを更新する出金手段とを含むサーバと
を備えたことを特徴とする口座管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50909(P2013−50909A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189461(P2011−189461)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(397077955)株式会社三井住友銀行 (120)