口腔内清掃用具
【課題】少しの開口でも十分な口腔内での操作性や優れた刷掃性や歯垢除去効果を得られ、かつ、口腔組織への物理的刺激が少なく、咽頭反射も引き起こしにくい口腔内清掃具を提供する。
【解決手段】植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下、植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下、ブラシ毛の毛丈Hが5.0mm以上10.0mm以下であり、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下である構成とする。
【解決手段】植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下、植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下、ブラシ毛の毛丈Hが5.0mm以上10.0mm以下であり、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下である構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内清掃用具に関し、更に詳しくは、少しの開口でも十分な口腔内での操作性や優れた刷掃性や歯垢除去効果を得られ、かつ、口腔組織への物理的刺激が少なく、咽頭反射も引き起こしにくい口腔内清掃用具に関する。本発明は、開口障害を有する人や妊婦に対して特に有用な口腔内清掃具である。
【背景技術】
【0002】
口を大きく開けられないため、食事や口腔清掃など日常生活に支障をきたしている人が数多く存在する。例えば、顎関節症患者、口蓋扁桃周囲膿瘍のような重度の口腔内炎症患者、一部の高齢者などである。一般に、35mm以下しか開口できない状態を開口障害といい、日常生活に支障を及ぼすため治療を要するとされる。このような機能的に開口が困難な人だけでなく、口腔内の清掃行為に支障を及ぼしている開口が困難な人としては、経口挿管措置が施されている患者のように物理的に開口が困難な人、さらには、つわりが強く開口行為や口腔内に物を入れただけで咽頭反射する妊婦などが存在している。
【0003】
このような開口行為に困難を伴う者は、口腔内清掃具の口腔内での操作性や刷掃性の確保に必要な開口が十分に行えないことが多いため、口腔内清掃が不十分となり、口腔内衛生環境が悪化しやすい。したがって、歯周炎や歯肉炎といった口腔内の炎症反応や齲蝕が発生し、最悪の場合には歯を喪失するなどQOLを大きく低下させる場合がある。特に、高齢者や妊婦の場合、唾液分泌量の減少や粘膜組織変化などの要因や摂食頻度の増加や唾液成分の変化、細菌に対する抵抗力の低下などの要因を有しているため、一般の人に比べ口腔内衛生環境が悪化しやすい。例えば、妊婦の過半数に妊娠性歯肉炎が発生しているという報告がある。さらに、口腔内の衛生環境の悪化は全身の健康状態に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、高齢者の場合の誤嚥性肺炎や妊婦の場合の早産や低体重児出産が知られている。
【0004】
したがって、このような人の口腔衛生環境をいかに良好に保つかが大きな課題となっている。この解決策として、従来は、含嗽剤や歯間清掃具、サック式清掃具、刷掃部を有する棒式清掃具などの口腔清掃具を用いられてきたが、何れも口腔内清掃性や歯垢除去効果が不十分なため、問題を解決するには至っていない。また、植毛部が小さい子供用の口腔清掃具を使用する場合も考えられるが、清掃具の刷掃面も小さくなるため磨き残しが生じたり、ハンドル部まで口腔内に入れないと奥歯まで届かないことから通常の歯ブラシ以上に口腔内での操作性が悪くなったり、咽頭反射を引き起こしたりするという課題点があった。
【0005】
また、前記の人においては、口腔内に炎症が発生している場合が多い。したがって、口腔内の清掃行為により炎症を悪化させないことも必要であるが、この観点からの解決策は何ら提案されていない。
【特許文献1】特開平7−184937号公報
【特許文献2】特開平10−248859号公報
【特許文献3】特開2002−306513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が、前述の状況に鑑み解決しようとする課題は、少しの開口でも十分な口腔内での操作性や優れた刷掃性、歯垢除去効果を得られ、かつ、口腔組織への物理的刺激が少なく、口腔内の炎症を悪化させず、さらには咽頭反射も引き起こしにくい口腔内清掃用具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、発明者は、口腔内に挿入される清掃具部分の形状、構造と、歯ブラシの素材との両面から鋭意検討を重ねた結果、植毛台については、厚さが1.5mm以上4.0mm以下かつ幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下とし、ブラシ毛については、長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下でかつ、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下とすることで少しの開口でも十分な口腔内での操作性を確保するとともに、十分な刷掃性を有する口腔用清掃具を得た。
【0008】
即ち、本発明に係る口腔用清掃具は、植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、植毛台の幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下であり、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは15.0mm以上21.5mm以下であり、かつブラシ毛の長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下で、ブラシ部の座屈強度が35N/cm2以上75N/cm2以下であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の口腔内清掃具の植毛台とハンドル部を連結するネック部の長さが、45mm以上75mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の口腔内清掃具の合成樹脂製のブラシ本体の植毛台に、熱可塑性樹脂製のブラシ毛が熱融着もしくはインモールド法により植設されたブラシ部が形成されたものが好ましい。
【0011】
本発明のブラシ部を構成するブラシ毛の少なくとも一部が、芯鞘構造又は海島構造の断面形状を有する先細毛であることが好ましい。
【0012】
また、ブラシ部を構成するブラシ毛の少なくとも一部が毛先側で分岐している先細毛であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1〜図6は、本発明に係る口腔内清掃具の第1実施形態を、図7〜図11は、本発明に係る口腔内清掃具の第2実施形態を示す。
【0015】
図1は、本発明に係る歯ブラシの1実施の形態を示す正面部であり、図2は同じく平面図である。歯ブラシ1は、合成樹脂製のハンドル10と、ハンドル10のヘッド部12に設けられたブラシ部11とを備える。ハンドル10は、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂やポリアセタール樹脂の射出成形により一体成形されており、ブラシ部11を構成するブラシ毛2が植設されたヘッド部12と、歯ブラシ1を把持するための柄部14と、ヘッド部12と柄部14とを連結する細長いネック部13からなる。
【0016】
前記ハンドル10の素材としては、引張降伏応力が45MPa以上で、曲げ弾性率が1900MPa以上の熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ホモポリマー、コポリマー)、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂の中から選ばれた樹脂を主成分とする樹脂が用いられる。好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂などのポリエステル樹脂及びポリアセタール樹脂の中から選ばれた樹脂を主成分とした樹脂が用いられる。前記PCTA樹脂は、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とテレフタル酸(TPA)とのエステル化合物と、CHDMとイソフタル酸(IPA)のエステル化合物との共重合体であり、また前記PCTGは、エチレングリコールとCHDMのエステル化合物と、CHDMとTPAのエステル化合物との共重合体であり、いずれも飽和ポリエステル樹脂である。なお、ここで主成分とは、他の樹脂とブレンド若しくはアロイとして混合して用いられているものの中に当該樹脂が50重量%以上の割合で含まれているもの、又は他の樹脂との共重合体中に当該樹脂のポリマーの繰り返しユニットが50重量%以上の割合で含まれているものをいう。前記のような主成分となる熱可塑性樹脂と混合又は共重合して使用できるその他の熱可塑性樹脂としては、先に挙げた主成分として用いることの出来る樹脂の他、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、EPDM、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0017】
歯ブラシ1のヘッド部12の形状は特に限定されるものではないが、図示した実施の形態では、図3〜図6に示すとおり、四隅を切り落としたほぼ矩形状で、首部側から先端部に向かって略同一の厚さtを有する平板状であり、このヘッド部12におけるブラシ毛が植設された植毛面aの裏面側bは首部13の下面側に略面一に連なる一方、植毛面a側は、植毛面aから段差なく滑らかに連続し首部13側に向かって内向きに湾曲した弧状の傾斜面cを介して首部13に連結されている。ヘッド部12の厚さtは、1.5mm以上4.0mm以下とすることが好ましく、さらには、2.0mm以上3.0mm以下とすることが好ましい。また、弧状の傾斜面cは、その曲率半径Rがヘッド部12の厚さtよりやや大きいか、ヘッド部12の厚さtと略同一であることが好ましく、1.5mm以上4mm以下が好ましく、更に好ましくは1.5mm以上3mm以下である。ヘッド部12の幅wは6.0mm以上8.0mm以下とすることが好ましく、更に好ましくは7.0mm以上8.0mm以下である。図4のL3で表される植毛台の植毛部分の長手方向の長さは、14.5mm以上21.5mm以下とすることが好ましく、また15.0mm以上20.0mm以下とすることが好ましく、さらには16.0mm以上19.0mm以下とすることが最も好ましい。更に、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離は、1.0mm以下が好ましいが、0.8mm以下が更に好ましく、0.7mm以下が最も好ましい。ヘッド部12の厚さt、幅w及びヘッド部12における植毛部分の長手方向の長さL3、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離が前記の範囲より大きくなるほど、歯ブラシ1におけるブラシ部11周辺が大型化して、口腔内での操作性を低下させ、また咽頭反射を誘引させやすくなる。一方、前記の範囲以上の小型化は、ブラシ部11が小さくなりすぎて、刷掃効率の低下に繋がるので好ましくないし、ヘッド部12が1.5mm以下となるとブラシ毛2の植毛強度が不足する場合がでてくるため好ましくない。
【0018】
また、ブラシ部11
を構成する、ヘッド部12に植設されるブラシ毛2の素材としては特に限定されるものではなく、例えば、ナイロン、アラミド樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、その他、従来公知の熱可塑性樹脂フィラメントを用いることができる。ブラシ部11に植設されるブラシ毛2の植毛面aからの長さ、即ち毛丈(図5に示すH)は5.0mm以上10.0mm以下とすることが好ましく、さらには7.0mm以上9.5mm以下とすることが好ましい。ブラシ毛2の毛丈Hが長すぎるとブラシ毛2の腰が弱くなり、刷掃性が低下する傾向にあり、また、口腔内での操作性も悪くなる。その反対に毛丈Hが短すぎると腰が強く成りすぎて硬くなり、歯茎などに対する刺激が強く成りすぎるおそれがある。本発明の口腔内清掃具では、ブラシ毛2が植設されたヘッド部12の厚さtが首部13側から先端部に向かって略同一で、その厚さtがヘッド部の厚さの約2分の1である1.5mm以上4mm以下と極めて薄肉であるうえに、植毛面aの裏面側bが首部の下面側に略面一に連なっている。即ち、植毛面aは首部13の上面側から首部13の厚さTの約2分の1、即ちヘッド部12の厚さtと同じだけ下がった段落ち状態にある。このため、首部12の上面側から突出するブラシ毛2の長さ(図5に示すh)は、ブラシ毛の毛丈Hが同じであっても、植毛面が首部の上面と同じ高さである従来の歯ブラシに比べて、前記段落ちしている分だけ短くなり、口腔内でのブラシ部11の操作性に優れている。なお、図例の口腔内清掃具1では、ブラシ部11を構成する毛束3の数(即ち、植毛穴5の数)は20であるが、特に限定はない。また、各植毛穴5は、その目的に応じて大きさ及び形状を自由に設計することができ、そこに植設(充填)されるブラシ毛2(合成樹脂製フィラメント)の数に特に限定はなく、その植毛穴5の大きさ、ブラシ毛2の素材や太さ等により適宜決定される。更に、ブラシ部11を構成する毛束3の植毛列数は、口腔内清掃具の長手方向に少なくとも3列の部分が存在し、4列以上の部分が存在しないことが好ましい。2列以下であると、ブラシ毛2の腰が弱くなり、刷掃性が低下する傾向にあり、逆に4列以上となるとブラシ部11周辺が大型化して、口腔内での操作性を低下させる。最適なブラシ毛2や各種植毛の条件は、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下となる組み合わせである。前記座屈強度は、35N/cm2以上65N/cm2以下が更に好ましく、45N/cm2以上60N/cm2以下が最も好ましい。座屈強度が25N/cm2に満たないと刷掃性が低下する傾向にあり、75N/cm2を越えると清掃行為により炎症を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があるため好ましくない。
【0019】
この口腔内清掃具1は、ヘッド部12に設けられたブラシ部11が、複数のブラシ毛2を集束した毛束3を、平線を用いることなしに、熱融着又はインモールド法によってヘッド部12に熱的に固定して形成された、所謂、無平線歯ブラシであることが好ましい。具体的には、たとえば、図5、図6に示すように、ヘッド部12中に埋設された基端部に、複数のブラシ毛2同士が互いに融合された融合塊からなる厚肉部4が形成され、厚肉部4がヘッド部12を構成する合成樹脂材料と互いに熱融着されるとともに厚肉部4によるアンカー効果により、ヘッド部12内に強固に固定されている。厚肉部4は、図5、6に示すようにヘッド部12の内部に埋設されていてもよいが、植毛面aの直下に埋設されていてもよい。更に、植毛面aに別途成形されたカバーが一体に固着されたたものでもよい。ヘッド部12に対して平線を用いることなくブラシ毛2を植設して口腔内清掃具1を製造する方法は、従来公知の方法でよく、フューズイン法としては、例えば特開昭60−241404号公報、特開昭61−76104号公報又は特開平2−99002号公報に記載された方法が、また、インモールド法としては、例えば特開昭61−268208号公報、特表平2−503150号公報、特開平9−182632号公報、特表平9−512724号公報及び特開2003−102552号公報に記載された方法等が挙げられる。これらの方法により、本発明に係る口腔内清掃具1は、平線を用いることなしにブラシ本体10のヘッド部12へブラシ毛2を熱的に固着してなることから、ブラシ毛2のヘッド部12内への埋設深さを浅くしてヘッド部12の厚さtを4mm以下と極めて薄くすることができる。更に、前記口腔内清掃具において、ブラシ毛の一部の毛先が先細のテーパー状に形成された先細毛であるか、若しくは、毛先で分岐し、分岐した毛先が先細のテーパー状に形成された先細毛であることが好ましい。
【0020】
植毛台とハンドル部を連結するネック部(L1)は、ハンドル部(L2)を唇より中の口腔内に挿入することなく口腔内、特に奥歯付近の清掃を行うことが出来るよう、45mm以上75mm以下の長さを有することが必要である。特に55mm以上70mm以下が好ましい。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態を図7〜図11に基づき説明する。
【0022】
図7は、本発明に係る口腔内清掃具の1実施の形態を示す正面部である。
【0023】
本例のブラシ部3の植毛パターンは図4と同じである。各毛束3の先端はそれぞれ予め略水平な状態で植毛あるいは植毛後に略水平にカットされており、さらに、前記毛束の少なくとも一部のブラシ毛が、芯鞘構造又は海島構造の断面形状を有する先細毛、もしくは毛先側で分岐している先細毛となっている。
【0024】
本例では、毛束3を構成するブラシ毛2が、図8に示すように、断面が芯鞘構造の合成樹脂製フィラメントからなり、鞘部60の先端から3本の芯毛61が突出形成されたものである。これは、例えば芯部61をナイロンなどのポリアミド系樹脂を主成分とする素材で構成し、鞘部60をポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂を主成分とする素材で構成した複合合成樹脂モノフィラメントを用い、これを苛性ソーダ等の薬液に浸漬し、引き上げることで鞘部60が先端から溶解除去して芯部61を露出させることにより製造することができ、このようなブラシ毛によれば、歯間部や歯と歯茎との間の境目などの狭い部分の歯垢除去効果、清掃性が向上する。
【0025】
図例では3本の芯毛が突出したものであるが、その本数は図9に示すように1本でも、その他2本、4本以上のものでもよい。また、薬液の濃度や浸漬時間、薬液からの引き上げ速度等により鞘部60先端のテーパー形状や芯毛61の露出長を適宜調整することができる。鞘部先端のテーパー形状は口腔内細部への挿入性、到達性を向上させる。芯毛61の先端形状は任意であり、半球状など適宜な形状に加工することができる。
【0026】
また、ブラシ毛62に用いる先細毛としては、芯鞘構造以外に、図10(a),(b)に示すように、単位断面要素63を複数個連結した断面形状を有する合成樹脂製フィラメントの先端をアルカリや酸などの溶液に浸漬し、連結した単位断面要素の数に応じた数の先細テーパー状の分岐毛がブラシ毛先端に形成された先細毛を構成することができ、薬液の濃度や浸漬時間、薬液からの引き上げ速度等により、分岐毛の形や長さを任意に調整することができる。
【0027】
同様に、図10(c)は2つの単位断面要素からなるもの、(d)は3つの単位断面要素を一列に並べたもの、(e)は4つの単位断面要素からなるものを示しており、同様に先細テーパー状の分岐毛がブラシ毛先端に形成された先細毛を構成することができる。また、図11に示すように各単位断面要素の中心部に芯部を設け、分岐毛のそれぞれを上記と同様の芯鞘構造とすることができる。
【実施例】
【0028】
以下、第1実施形態における座屈強度が異なる2種類の口腔内清掃具の実使用試験について説明する。
【0029】
試験に用いた口腔内清掃具は、図1〜図4に示す第1実施形態に係る口腔内清掃具である。各部分の条件は、ヘッド部の厚さtは2.5mm、弧上の傾斜面cの曲率半径Rは2.5mm、ヘッド部の幅wは7.5mm、植毛台の植毛部分の長手方向の長さL3は65mm、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離は0.6mm、ブラシ毛の毛丈Hは9.0mmであり、使用時の毛の硬さの指標である座屈強度は、53N/cm2または73N/cm2に設定した。ブラシ毛はナイロンを使用し、毛先部がテーパー状に形成された先細毛である。
【0030】
97名の妊婦に対して試験を行った。座屈強度の異なる口腔内清掃具はパネラーの嗜好に合わせ何れかを自由に選択させた。その結果、53N/cm2を55名、73N/cm2を45名が選択した。前記の口腔内清掃具を14日間使用させた後に使用時、使用後の評価をアンケートで調査した。評価基準は普段使用している口腔内清掃具と比較した相対評価とし、調査項目は「毛の硬さ」「ヘッドの大きさ」「隅々にまで毛先が届く感じ」「妊娠中の歯ブラシとしての評価」の4項目とした。その結果を表1に示す。
【表1】
【0031】
表1より、第1実施形態の口腔内清掃具は、「毛の硬さ」、「ヘッドの大きさ」、「口腔内の清掃実感」何れの項目においても優れた評価が得られ、総合評価としての「妊娠中の歯ブラシとしての評価」においても80%という高率の支持を得た。特に、「毛の硬さ」、「ヘッドの大きさ」での評価が高かった。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る口腔内清掃具を示す正面図である。
【図2】図1の口腔内清掃具の平面図である。
【図3】図1の口腔内清掃具のハンドルにおけるヘッド部から首部にかけての要部の拡大正面図である。
【図4】図3のハンドル要部の平面図である。
【図5】図1の口腔内清掃具のヘッド部から首部にかけての要部の拡大縦断面図である。
【図6】図2におけるA−A線断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る口腔内清掃具を示す正面図である。
【図8】(a)、(b)は、第2実施形態におけるブラシ毛の要部を示す説明図。
【図9】(a)、(b)は、同じくブラシ毛の変形例を示す説明図。
【図10】(a)〜(e)は、同じくブラシ毛の他の変形例を示す説明図。
【図11】(a)、(b)は、同じくブラシ毛の更に他の変形例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 口腔内清掃具 2 ブラシ毛 3 毛束 4 厚肉部 10 ハンドル 11 ブラシ部 12 ヘッド部 13 首部 14 柄部 15 環状溝部 16 滑り止め部 60 鞘部 61 芯毛 62 ブラシ毛毛先部 63 単位断面要素 a 植毛面 b ヘッド部裏面 c 湾曲した傾斜面 t ヘッド部の厚さ T 首部の厚さ R 湾曲した傾斜面の曲率半径 w ヘッド部の幅 H ブラシ毛の毛丈
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内清掃用具に関し、更に詳しくは、少しの開口でも十分な口腔内での操作性や優れた刷掃性や歯垢除去効果を得られ、かつ、口腔組織への物理的刺激が少なく、咽頭反射も引き起こしにくい口腔内清掃用具に関する。本発明は、開口障害を有する人や妊婦に対して特に有用な口腔内清掃具である。
【背景技術】
【0002】
口を大きく開けられないため、食事や口腔清掃など日常生活に支障をきたしている人が数多く存在する。例えば、顎関節症患者、口蓋扁桃周囲膿瘍のような重度の口腔内炎症患者、一部の高齢者などである。一般に、35mm以下しか開口できない状態を開口障害といい、日常生活に支障を及ぼすため治療を要するとされる。このような機能的に開口が困難な人だけでなく、口腔内の清掃行為に支障を及ぼしている開口が困難な人としては、経口挿管措置が施されている患者のように物理的に開口が困難な人、さらには、つわりが強く開口行為や口腔内に物を入れただけで咽頭反射する妊婦などが存在している。
【0003】
このような開口行為に困難を伴う者は、口腔内清掃具の口腔内での操作性や刷掃性の確保に必要な開口が十分に行えないことが多いため、口腔内清掃が不十分となり、口腔内衛生環境が悪化しやすい。したがって、歯周炎や歯肉炎といった口腔内の炎症反応や齲蝕が発生し、最悪の場合には歯を喪失するなどQOLを大きく低下させる場合がある。特に、高齢者や妊婦の場合、唾液分泌量の減少や粘膜組織変化などの要因や摂食頻度の増加や唾液成分の変化、細菌に対する抵抗力の低下などの要因を有しているため、一般の人に比べ口腔内衛生環境が悪化しやすい。例えば、妊婦の過半数に妊娠性歯肉炎が発生しているという報告がある。さらに、口腔内の衛生環境の悪化は全身の健康状態に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば、高齢者の場合の誤嚥性肺炎や妊婦の場合の早産や低体重児出産が知られている。
【0004】
したがって、このような人の口腔衛生環境をいかに良好に保つかが大きな課題となっている。この解決策として、従来は、含嗽剤や歯間清掃具、サック式清掃具、刷掃部を有する棒式清掃具などの口腔清掃具を用いられてきたが、何れも口腔内清掃性や歯垢除去効果が不十分なため、問題を解決するには至っていない。また、植毛部が小さい子供用の口腔清掃具を使用する場合も考えられるが、清掃具の刷掃面も小さくなるため磨き残しが生じたり、ハンドル部まで口腔内に入れないと奥歯まで届かないことから通常の歯ブラシ以上に口腔内での操作性が悪くなったり、咽頭反射を引き起こしたりするという課題点があった。
【0005】
また、前記の人においては、口腔内に炎症が発生している場合が多い。したがって、口腔内の清掃行為により炎症を悪化させないことも必要であるが、この観点からの解決策は何ら提案されていない。
【特許文献1】特開平7−184937号公報
【特許文献2】特開平10−248859号公報
【特許文献3】特開2002−306513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が、前述の状況に鑑み解決しようとする課題は、少しの開口でも十分な口腔内での操作性や優れた刷掃性、歯垢除去効果を得られ、かつ、口腔組織への物理的刺激が少なく、口腔内の炎症を悪化させず、さらには咽頭反射も引き起こしにくい口腔内清掃用具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、発明者は、口腔内に挿入される清掃具部分の形状、構造と、歯ブラシの素材との両面から鋭意検討を重ねた結果、植毛台については、厚さが1.5mm以上4.0mm以下かつ幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下とし、ブラシ毛については、長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下でかつ、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下とすることで少しの開口でも十分な口腔内での操作性を確保するとともに、十分な刷掃性を有する口腔用清掃具を得た。
【0008】
即ち、本発明に係る口腔用清掃具は、植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、植毛台の幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下であり、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは15.0mm以上21.5mm以下であり、かつブラシ毛の長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下で、ブラシ部の座屈強度が35N/cm2以上75N/cm2以下であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の口腔内清掃具の植毛台とハンドル部を連結するネック部の長さが、45mm以上75mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の口腔内清掃具の合成樹脂製のブラシ本体の植毛台に、熱可塑性樹脂製のブラシ毛が熱融着もしくはインモールド法により植設されたブラシ部が形成されたものが好ましい。
【0011】
本発明のブラシ部を構成するブラシ毛の少なくとも一部が、芯鞘構造又は海島構造の断面形状を有する先細毛であることが好ましい。
【0012】
また、ブラシ部を構成するブラシ毛の少なくとも一部が毛先側で分岐している先細毛であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1〜図6は、本発明に係る口腔内清掃具の第1実施形態を、図7〜図11は、本発明に係る口腔内清掃具の第2実施形態を示す。
【0015】
図1は、本発明に係る歯ブラシの1実施の形態を示す正面部であり、図2は同じく平面図である。歯ブラシ1は、合成樹脂製のハンドル10と、ハンドル10のヘッド部12に設けられたブラシ部11とを備える。ハンドル10は、ポリブチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂やポリアセタール樹脂の射出成形により一体成形されており、ブラシ部11を構成するブラシ毛2が植設されたヘッド部12と、歯ブラシ1を把持するための柄部14と、ヘッド部12と柄部14とを連結する細長いネック部13からなる。
【0016】
前記ハンドル10の素材としては、引張降伏応力が45MPa以上で、曲げ弾性率が1900MPa以上の熱可塑性樹脂が用いられる。前記熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂(ホモポリマー、コポリマー)、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂の中から選ばれた樹脂を主成分とする樹脂が用いられる。好ましくは、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、PCTA樹脂、PCTG樹脂などのポリエステル樹脂及びポリアセタール樹脂の中から選ばれた樹脂を主成分とした樹脂が用いられる。前記PCTA樹脂は、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とテレフタル酸(TPA)とのエステル化合物と、CHDMとイソフタル酸(IPA)のエステル化合物との共重合体であり、また前記PCTGは、エチレングリコールとCHDMのエステル化合物と、CHDMとTPAのエステル化合物との共重合体であり、いずれも飽和ポリエステル樹脂である。なお、ここで主成分とは、他の樹脂とブレンド若しくはアロイとして混合して用いられているものの中に当該樹脂が50重量%以上の割合で含まれているもの、又は他の樹脂との共重合体中に当該樹脂のポリマーの繰り返しユニットが50重量%以上の割合で含まれているものをいう。前記のような主成分となる熱可塑性樹脂と混合又は共重合して使用できるその他の熱可塑性樹脂としては、先に挙げた主成分として用いることの出来る樹脂の他、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、EPDM、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0017】
歯ブラシ1のヘッド部12の形状は特に限定されるものではないが、図示した実施の形態では、図3〜図6に示すとおり、四隅を切り落としたほぼ矩形状で、首部側から先端部に向かって略同一の厚さtを有する平板状であり、このヘッド部12におけるブラシ毛が植設された植毛面aの裏面側bは首部13の下面側に略面一に連なる一方、植毛面a側は、植毛面aから段差なく滑らかに連続し首部13側に向かって内向きに湾曲した弧状の傾斜面cを介して首部13に連結されている。ヘッド部12の厚さtは、1.5mm以上4.0mm以下とすることが好ましく、さらには、2.0mm以上3.0mm以下とすることが好ましい。また、弧状の傾斜面cは、その曲率半径Rがヘッド部12の厚さtよりやや大きいか、ヘッド部12の厚さtと略同一であることが好ましく、1.5mm以上4mm以下が好ましく、更に好ましくは1.5mm以上3mm以下である。ヘッド部12の幅wは6.0mm以上8.0mm以下とすることが好ましく、更に好ましくは7.0mm以上8.0mm以下である。図4のL3で表される植毛台の植毛部分の長手方向の長さは、14.5mm以上21.5mm以下とすることが好ましく、また15.0mm以上20.0mm以下とすることが好ましく、さらには16.0mm以上19.0mm以下とすることが最も好ましい。更に、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離は、1.0mm以下が好ましいが、0.8mm以下が更に好ましく、0.7mm以下が最も好ましい。ヘッド部12の厚さt、幅w及びヘッド部12における植毛部分の長手方向の長さL3、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離が前記の範囲より大きくなるほど、歯ブラシ1におけるブラシ部11周辺が大型化して、口腔内での操作性を低下させ、また咽頭反射を誘引させやすくなる。一方、前記の範囲以上の小型化は、ブラシ部11が小さくなりすぎて、刷掃効率の低下に繋がるので好ましくないし、ヘッド部12が1.5mm以下となるとブラシ毛2の植毛強度が不足する場合がでてくるため好ましくない。
【0018】
また、ブラシ部11
を構成する、ヘッド部12に植設されるブラシ毛2の素材としては特に限定されるものではなく、例えば、ナイロン、アラミド樹脂等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート若しくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、その他、従来公知の熱可塑性樹脂フィラメントを用いることができる。ブラシ部11に植設されるブラシ毛2の植毛面aからの長さ、即ち毛丈(図5に示すH)は5.0mm以上10.0mm以下とすることが好ましく、さらには7.0mm以上9.5mm以下とすることが好ましい。ブラシ毛2の毛丈Hが長すぎるとブラシ毛2の腰が弱くなり、刷掃性が低下する傾向にあり、また、口腔内での操作性も悪くなる。その反対に毛丈Hが短すぎると腰が強く成りすぎて硬くなり、歯茎などに対する刺激が強く成りすぎるおそれがある。本発明の口腔内清掃具では、ブラシ毛2が植設されたヘッド部12の厚さtが首部13側から先端部に向かって略同一で、その厚さtがヘッド部の厚さの約2分の1である1.5mm以上4mm以下と極めて薄肉であるうえに、植毛面aの裏面側bが首部の下面側に略面一に連なっている。即ち、植毛面aは首部13の上面側から首部13の厚さTの約2分の1、即ちヘッド部12の厚さtと同じだけ下がった段落ち状態にある。このため、首部12の上面側から突出するブラシ毛2の長さ(図5に示すh)は、ブラシ毛の毛丈Hが同じであっても、植毛面が首部の上面と同じ高さである従来の歯ブラシに比べて、前記段落ちしている分だけ短くなり、口腔内でのブラシ部11の操作性に優れている。なお、図例の口腔内清掃具1では、ブラシ部11を構成する毛束3の数(即ち、植毛穴5の数)は20であるが、特に限定はない。また、各植毛穴5は、その目的に応じて大きさ及び形状を自由に設計することができ、そこに植設(充填)されるブラシ毛2(合成樹脂製フィラメント)の数に特に限定はなく、その植毛穴5の大きさ、ブラシ毛2の素材や太さ等により適宜決定される。更に、ブラシ部11を構成する毛束3の植毛列数は、口腔内清掃具の長手方向に少なくとも3列の部分が存在し、4列以上の部分が存在しないことが好ましい。2列以下であると、ブラシ毛2の腰が弱くなり、刷掃性が低下する傾向にあり、逆に4列以上となるとブラシ部11周辺が大型化して、口腔内での操作性を低下させる。最適なブラシ毛2や各種植毛の条件は、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下となる組み合わせである。前記座屈強度は、35N/cm2以上65N/cm2以下が更に好ましく、45N/cm2以上60N/cm2以下が最も好ましい。座屈強度が25N/cm2に満たないと刷掃性が低下する傾向にあり、75N/cm2を越えると清掃行為により炎症を引き起こしたり、悪化させたりする可能性があるため好ましくない。
【0019】
この口腔内清掃具1は、ヘッド部12に設けられたブラシ部11が、複数のブラシ毛2を集束した毛束3を、平線を用いることなしに、熱融着又はインモールド法によってヘッド部12に熱的に固定して形成された、所謂、無平線歯ブラシであることが好ましい。具体的には、たとえば、図5、図6に示すように、ヘッド部12中に埋設された基端部に、複数のブラシ毛2同士が互いに融合された融合塊からなる厚肉部4が形成され、厚肉部4がヘッド部12を構成する合成樹脂材料と互いに熱融着されるとともに厚肉部4によるアンカー効果により、ヘッド部12内に強固に固定されている。厚肉部4は、図5、6に示すようにヘッド部12の内部に埋設されていてもよいが、植毛面aの直下に埋設されていてもよい。更に、植毛面aに別途成形されたカバーが一体に固着されたたものでもよい。ヘッド部12に対して平線を用いることなくブラシ毛2を植設して口腔内清掃具1を製造する方法は、従来公知の方法でよく、フューズイン法としては、例えば特開昭60−241404号公報、特開昭61−76104号公報又は特開平2−99002号公報に記載された方法が、また、インモールド法としては、例えば特開昭61−268208号公報、特表平2−503150号公報、特開平9−182632号公報、特表平9−512724号公報及び特開2003−102552号公報に記載された方法等が挙げられる。これらの方法により、本発明に係る口腔内清掃具1は、平線を用いることなしにブラシ本体10のヘッド部12へブラシ毛2を熱的に固着してなることから、ブラシ毛2のヘッド部12内への埋設深さを浅くしてヘッド部12の厚さtを4mm以下と極めて薄くすることができる。更に、前記口腔内清掃具において、ブラシ毛の一部の毛先が先細のテーパー状に形成された先細毛であるか、若しくは、毛先で分岐し、分岐した毛先が先細のテーパー状に形成された先細毛であることが好ましい。
【0020】
植毛台とハンドル部を連結するネック部(L1)は、ハンドル部(L2)を唇より中の口腔内に挿入することなく口腔内、特に奥歯付近の清掃を行うことが出来るよう、45mm以上75mm以下の長さを有することが必要である。特に55mm以上70mm以下が好ましい。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態を図7〜図11に基づき説明する。
【0022】
図7は、本発明に係る口腔内清掃具の1実施の形態を示す正面部である。
【0023】
本例のブラシ部3の植毛パターンは図4と同じである。各毛束3の先端はそれぞれ予め略水平な状態で植毛あるいは植毛後に略水平にカットされており、さらに、前記毛束の少なくとも一部のブラシ毛が、芯鞘構造又は海島構造の断面形状を有する先細毛、もしくは毛先側で分岐している先細毛となっている。
【0024】
本例では、毛束3を構成するブラシ毛2が、図8に示すように、断面が芯鞘構造の合成樹脂製フィラメントからなり、鞘部60の先端から3本の芯毛61が突出形成されたものである。これは、例えば芯部61をナイロンなどのポリアミド系樹脂を主成分とする素材で構成し、鞘部60をポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂を主成分とする素材で構成した複合合成樹脂モノフィラメントを用い、これを苛性ソーダ等の薬液に浸漬し、引き上げることで鞘部60が先端から溶解除去して芯部61を露出させることにより製造することができ、このようなブラシ毛によれば、歯間部や歯と歯茎との間の境目などの狭い部分の歯垢除去効果、清掃性が向上する。
【0025】
図例では3本の芯毛が突出したものであるが、その本数は図9に示すように1本でも、その他2本、4本以上のものでもよい。また、薬液の濃度や浸漬時間、薬液からの引き上げ速度等により鞘部60先端のテーパー形状や芯毛61の露出長を適宜調整することができる。鞘部先端のテーパー形状は口腔内細部への挿入性、到達性を向上させる。芯毛61の先端形状は任意であり、半球状など適宜な形状に加工することができる。
【0026】
また、ブラシ毛62に用いる先細毛としては、芯鞘構造以外に、図10(a),(b)に示すように、単位断面要素63を複数個連結した断面形状を有する合成樹脂製フィラメントの先端をアルカリや酸などの溶液に浸漬し、連結した単位断面要素の数に応じた数の先細テーパー状の分岐毛がブラシ毛先端に形成された先細毛を構成することができ、薬液の濃度や浸漬時間、薬液からの引き上げ速度等により、分岐毛の形や長さを任意に調整することができる。
【0027】
同様に、図10(c)は2つの単位断面要素からなるもの、(d)は3つの単位断面要素を一列に並べたもの、(e)は4つの単位断面要素からなるものを示しており、同様に先細テーパー状の分岐毛がブラシ毛先端に形成された先細毛を構成することができる。また、図11に示すように各単位断面要素の中心部に芯部を設け、分岐毛のそれぞれを上記と同様の芯鞘構造とすることができる。
【実施例】
【0028】
以下、第1実施形態における座屈強度が異なる2種類の口腔内清掃具の実使用試験について説明する。
【0029】
試験に用いた口腔内清掃具は、図1〜図4に示す第1実施形態に係る口腔内清掃具である。各部分の条件は、ヘッド部の厚さtは2.5mm、弧上の傾斜面cの曲率半径Rは2.5mm、ヘッド部の幅wは7.5mm、植毛台の植毛部分の長手方向の長さL3は65mm、植毛部側面の最外部からヘッド部側面エッジ部分までの距離は0.6mm、ブラシ毛の毛丈Hは9.0mmであり、使用時の毛の硬さの指標である座屈強度は、53N/cm2または73N/cm2に設定した。ブラシ毛はナイロンを使用し、毛先部がテーパー状に形成された先細毛である。
【0030】
97名の妊婦に対して試験を行った。座屈強度の異なる口腔内清掃具はパネラーの嗜好に合わせ何れかを自由に選択させた。その結果、53N/cm2を55名、73N/cm2を45名が選択した。前記の口腔内清掃具を14日間使用させた後に使用時、使用後の評価をアンケートで調査した。評価基準は普段使用している口腔内清掃具と比較した相対評価とし、調査項目は「毛の硬さ」「ヘッドの大きさ」「隅々にまで毛先が届く感じ」「妊娠中の歯ブラシとしての評価」の4項目とした。その結果を表1に示す。
【表1】
【0031】
表1より、第1実施形態の口腔内清掃具は、「毛の硬さ」、「ヘッドの大きさ」、「口腔内の清掃実感」何れの項目においても優れた評価が得られ、総合評価としての「妊娠中の歯ブラシとしての評価」においても80%という高率の支持を得た。特に、「毛の硬さ」、「ヘッドの大きさ」での評価が高かった。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る口腔内清掃具を示す正面図である。
【図2】図1の口腔内清掃具の平面図である。
【図3】図1の口腔内清掃具のハンドルにおけるヘッド部から首部にかけての要部の拡大正面図である。
【図4】図3のハンドル要部の平面図である。
【図5】図1の口腔内清掃具のヘッド部から首部にかけての要部の拡大縦断面図である。
【図6】図2におけるA−A線断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る口腔内清掃具を示す正面図である。
【図8】(a)、(b)は、第2実施形態におけるブラシ毛の要部を示す説明図。
【図9】(a)、(b)は、同じくブラシ毛の変形例を示す説明図。
【図10】(a)〜(e)は、同じくブラシ毛の他の変形例を示す説明図。
【図11】(a)、(b)は、同じくブラシ毛の更に他の変形例を示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 口腔内清掃具 2 ブラシ毛 3 毛束 4 厚肉部 10 ハンドル 11 ブラシ部 12 ヘッド部 13 首部 14 柄部 15 環状溝部 16 滑り止め部 60 鞘部 61 芯毛 62 ブラシ毛毛先部 63 単位断面要素 a 植毛面 b ヘッド部裏面 c 湾曲した傾斜面 t ヘッド部の厚さ T 首部の厚さ R 湾曲した傾斜面の曲率半径 w ヘッド部の幅 H ブラシ毛の毛丈
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、植毛台の幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下であり、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下、かつブラシ毛の長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下であり、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下であることを特徴とする口腔内清掃用具。
【請求項2】
植毛台とハンドル部を連結するネック部の長さが、45mm以上75mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の口腔内清掃用具。
【請求項1】
植毛台の厚みが1.5mm以上4.0mm以下、植毛台の幅方向の長さが6.0mm以上8.0mm以下であり、前記植毛台の植毛部分の長手方向の長さは14.5mm以上21.5mm以下、かつブラシ毛の長さ(毛丈)が5.0mm以上10.0mm以下であり、ブラシ部の座屈強度が25N/cm2以上75N/cm2以下であることを特徴とする口腔内清掃用具。
【請求項2】
植毛台とハンドル部を連結するネック部の長さが、45mm以上75mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の口腔内清掃用具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−36098(P2008−36098A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213976(P2006−213976)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】
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