説明

口腔清浄具

【課題】把持部が強度、耐久性、及び適度な弾性を有すると共に、把持部に唾液等の水分が付着した場合にも手が滑り難く、また把持部を温水等に浸漬したり、唾液が把持部に付着した状態で放置しても強度の低下が少なく、しかも清掃部と把持部の接着強度が高く、清掃部が把持部から脱落し難い口腔清浄具の提供を目的とする。
【解決手段】把持部11の端部に、合成樹脂発泡体やブラシ状繊維体あるいは海面等の天然多孔質体からなる清掃部21が取り付けられ、把持部11を手で持って清掃部21を口腔内に挿入して歯の表面や口腔内面等を清掃部21でこする口腔清浄具において、把持部21を紙以外の植物繊維素材で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部の端部に清掃部が取り付けられた口腔清浄具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者、病人等で介護が必要な方の口腔の清掃に、把持部の端部に樹脂発泡体やブラシ等の清掃部が取り付けられた口腔清浄具が、病院や家庭向けに広く使用され始めている。
【0003】
前記口腔清浄具は、先端の清掃部については種々の素材が提案されているが、把持部については、ポリプロピレン、ABS等のプラスチックや紙系のロール(円筒)素材からなる棒状体が一般的である。
【0004】
しかし、プラスチックの把持部は、比較的強度に優れるものの、把持部の表面が平滑なため、介護等においては唾液の垂れ等による把持部の濡れで把持部を持つ手が滑りやすく、清掃作業性に劣る等の問題がある。しかも、プラスチックの把持部は、弾性に欠け、ある程度の強度が加わると折れやすく、扱いにくいことがある。さらに、清掃部は接着により把持部に固定される場合が多いが、清掃部を構成する樹脂発泡体と把持部を構成するプラスチックには、接着性に劣るものがあり、使用時に把持部から清掃部が脱落するおそれもある。例えば、把持部として多用されているポリプロピレン等のオレフィン系プラスチックは、接着強度が低いものである。
【0005】
一方、紙系ロール素材の把持部は、温水に浸漬したり、唾液が付着した状態で放置すると、著しい強度低下が発生し、プラスチックの把持部に比べて耐久性に劣り、また折れやすい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−167277号公報
【特許文献2】特開平10−155816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、把持部が強度、耐久性、及び適度な弾性を有すると共に、把持部に唾液等の水分が付着した場合にも手が滑り難く、また把持部を温水等に浸漬したり、唾液が把持部に付着した状態で放置しても強度の低下が少なく、しかも清掃部と把持部の接着強度が高く、清掃部が把持部から脱落し難い口腔清浄具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、把持部の端部に清掃部が取り付けられた口腔清浄具において、前記把持部が植物繊維素材からなることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記植物繊維素材が竹であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔清浄具によれば、把持部が植物繊維素材、好ましくは竹からなるため、把持部が強度、耐久性、及び適度な弾性を有すると共に、把持部の表面が繊維により凹凸となっているため、把持部に唾液等の水分が付着した場合にも把持部から手が滑り難く、また把持部を温水等に浸漬したり唾液が把持部に付着した状態で放置しても把持部の強度低下が少なく、しかも把持部表面の繊維による凹凸及び接着剤が把持部に浸透することによって清掃部と把持部の接着強度が高く、清掃部が把持部から脱落し難い効果が得られる。なお、本発明における植物繊維素材は、紙類を除くものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における第1実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図2】本発明における第2実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図3】本発明における第3実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図4】本発明における第4実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図5】本発明における第5実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図6】本発明における第6実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【図7】本発明における第7実施形態の口腔清浄具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の口腔清浄具について図面を用いて説明する。
図1に示す本発明の第1実施形態に係る口腔清浄具10Aは、口腔の清掃に用いられるもの」であり、把持部11Aの端部に清掃部21Aが取り付けられたものである。前記把持部11Aは、使用時に使用者が手で握る部分である。前記把持部11Aは、繊維状素材(紙を除く)からなる。繊維状素材としては、竹、木材、植物の茎等が挙げられるが、特に強度及び弾性の点などから、竹が好ましい。前記把持部11Aは、手で持ちやすい長さ、太さ及び形状からなる。前記把持部11Aの形状は特に限定されるものではない。第1実施形態における把持部11Aは、竹の丸棒からなり、一端部が前記清掃部21Aに挿入されて清掃部21と接着されている。丸棒の寸法の例として、直径2〜8mm、好ましくは3〜5mm、全長50〜200mm、好ましくは100〜150mm、前記全長のうち前記清掃部21Aに挿入される部分の長さ5〜25mm、好ましくは10〜20mmを挙げる。
【0012】
前記清掃部21Aは、口腔内に挿入されて、歯の表面や口腔内面等の汚れを擦り取る部分である。前記清掃部21Aの材質は、口腔内の汚れを擦り取ることができ、唾液等の水分で変質し難いものであれば特に限定されず、例えば、ポリウレタン発泡体等の合成樹脂発泡体、ブラシ状繊維体、海面等の天然多孔質体等を挙げることができる。また、前記清掃部21Aの形状、大きさは、口腔内で清掃部21Aを動かし易い形状、大きさであれば特に限定されず、第1実施形態の清掃部21Aは円柱体からなり、円柱体の一端面から円柱体内に前記把持部11Aの一端が挿入されて接着固定されている。前記円柱体の寸法の例として、直径10〜30mm、好ましくは15〜25mm、長さ10〜40mm、好ましくは15〜25mmを挙げる。
【0013】
図2に第2実施形態の口腔清浄具10Bを示す。第3実施形態の口腔清浄具10Bは、把持部11Bが清掃部21B側寄りの部分にくびれて細くなった部分22Bを有する丸棒状からなり、他の構成は第1実施形態と同様の構成からなる。前記口腔清浄具10Bは、前記把持部11Bが清掃部21B側でしなり易く(柔軟性が高く)なり、口腔内の清掃作業が容易になる。
【0014】
図3に第3実施形態の口腔清浄具10Cを示す。第3実施形態の口腔清浄具10Cは、把持部11Cが径の小さくなった部分22Cを所定間隔で有する丸棒状からなり、他の構成は第1実施形態と同様の構成からなる。前記口腔清浄具10Cは、前記把持部11Cがさらに滑り難くなり、口腔内の清掃作業が容易になる。
【0015】
図4に第4実施形態の口腔清浄具10Dを示す。第4実施形態の口腔清浄具10Dは、把持部11Dが平板状からなり、他の構成は第1実施形態と同様の構成からなる。平板の厚みは、適度な剛性を有する厚みであればよく、特に限定されないが、例として、2〜10mm、好ましくは3〜8mmを挙げる。
【0016】
図5に第5実施形態の口腔清浄具10Eを示す。第5実施形態の口腔清浄具10Eは、清掃部21E側寄りの部分にくびれて細くなった部分22Eを有する平板状からなり、他の構成は第1実施形態と同様の構成からなる。前記口腔清浄具10Eは、前記把持部11Eが清掃部21E側でしなり易く(柔軟性が高く)なり、口腔内の清掃作業が容易になる。
【0017】
図6に第6実施形態の口腔清浄具10Fを示す。第6実施形態の口腔清浄具10Fは、清掃部21Fが星形状の横断面を有する柱状からなり、他の構成は第1実施形態と同様の構成からなる。
【0018】
図7に第7実施形態の口腔清浄具10Gを示す。第7実施形態の口腔清浄具10Gは、清掃部21G角柱体からなり、他の構成は第4実施形態と同様の構成からなる。
なお、前記把持部及び前記清掃部の形状は、前記実施形態の組み合わせに限られず、適宜の態様で組み合わせることができる。
【実施例】
【0019】
図1の口腔清浄具10Aにおける前記把持部11Aの材質を竹、前記把持部11Aの形状を直径4mm、全長140mmの丸棒とし、一方、前記清掃部11Aの材質をポリウレタン発泡体、前記清掃部11Aの形状を直径20mm、長さ23mmの円柱体とし、前記清掃部21Aに前記把持部11Aの先端側15mmを挿入し、接着剤で固定した実施例1の口腔清浄具を形成した。また、前記把持部11Aを竹に代えて、木(ヒノキ)として実施例2の口腔清浄具を作成した。
【0020】
一方、前記把持部11AをABS樹脂とした比較例1の口腔清浄具、前記把持部11Aをポリプロピレン(PP)とした比較例2の口腔清浄具、前記把持部11Aを紙ロールとした比較例3の口腔清浄具を作成した。
【0021】
各実施例及び比較例の口腔清浄具に対して使用耐久性・形状保持性、使用感について評価した。
使用耐久性・形状保持性は、乾燥時、常温浸漬後、温水浸漬後について以下の強度試験を行った。
乾燥時の強度試験においては、20℃、50%R.H.の状態で24hr以上放置した口腔清浄具を取り出し、把持部の強度を測定した。清掃部先端を固定し、把持部を斜め約45度の角度で保持し、先端から50mmの部位に1.5kg以上の荷重を吊り下げた。1.5kg以上の荷重で折れずに、荷重を抜いた後に元の状態に戻ったものを○、1.5kg以上の荷重で折れないが、荷重を抜いた後に変形が確認されたものを△、1.5kg以内で折れたものは×とした。上記乾燥時の強度試験では、唯一紙ロール品が、荷重を抜いた後の変形が、20本中、数本確認された。
【0022】
常温浸漬試験は、口腔清浄具を清掃部から70mmまで、室温の純水に約30分間浸漬した。その後、水を拭き取ることなく、上記乾燥時の強度試験と相当の評価を行った。この常温浸漬試験では、紙ロールの強度低下が顕著であり、約1.0kg程度で折れて変形し、変形後の回復が確認できなかった。また数回、荷重をかけることで折れが確認された。
温水浸漬試験は、口腔清浄具を清掃部から70mmまで、40℃の温水に約30分間浸漬した。その後、水を拭き取ることなく、上記乾燥時の強度試験と相当の評価を行った。この温水浸漬試験では、紙ロールの強度低下が常温浸漬よりよりさらに顕著に確認され、把持部がこすれるとケバが発生した。なお樹脂は耐熱温度の低いポリプロピレン(PP)の強度低下が確認された。
【0023】
使用感は、液ダレ性、バネ感、グリップ性について評価した。
液ダレ性は、シリンジで1ccの純水を、清掃部側直下の把持部に上方からたらし、純水が把持部を伝わる距離を測定した。把持部の傾斜角度は45度とした。把持部を伝う純水が、把持部の端部に到達するかどうかで、○×評価をした。把持部先端まで純水が伝わった場合は×、途中で止まった場合は○とした。
植物系把持部と紙系把持部では、把持部が唾液等、液体を保持・吸収しやすい為、液体の垂れ落ちが低く、併せて把持部先端まで比較的伝わりにくかった。一方、合成樹脂を素材とする把持部は、表面が平滑で、液体の保持性が無い為、液体の垂れ落ちが比較的顕著に確認された。
【0024】
バネ感は実際の使用時における把持部のたわみによる使用感を官能試験により判断し、たわみがあり変位後の回復が確認されたものを○、たわみ自体が感じにくいものを△、撓みはあるが変位後の回復性が劣るものを×とした。
【0025】
グリップ性は実際の使用時に把持部を握った感触を官能試験により判断した。乾燥状態でも、液体等で把持部が濡れた状態でもグリップ性、作業性に顕著な差がなかったものに○、乾燥状態、液体等で把持部が濡れた状態で、作業性に差が感じたものを△とした。合成樹脂系の製品は、表面が平滑な為、把持部が濡れた場合、グリップ性が比較的劣る感触が確認された。植物系、紙系の把持部は、把持部が湿潤する為、持ちやすいといったグリップ性の差異は確認さなかった。ただし、紙系の把持部では、湿潤してグリップが擦れるとケバの発生が確認された。本発明の竹の場合は、繊維の筋が長手方向にあり、表面長手方向の溝が形成される為、持ちやすさ、握りやすさといったグリップ性について、特に優れた作業性が確認された。評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示すように、把持部が竹からなる実施例1については、使用耐久性、形状保持性及び使用感の何れも良好であった。また、把持部が木からなる実施例2については、使用感におけるバネ感のみで評価が△となった以外は全て良好であった。
【0028】
一方、把持部がABS樹脂からなる比較例1は、唾液が把持部に伝わりやすくまた把持部を握った際のフィット感に劣るため、使用感における液ダレ性及びグリップ性の2項目が△であった。また、把持部がプロピレンからなる比較例2も、唾液が把持部に伝わりやすくまた把持部を握った際のフィット感に劣るため、使用感における液ダレ性及びグリップ性が△であり、さらに形状保持性の温水浸漬試験でも△となった。一方、把持部が紙ロールからなる比較例3は、把持部を水に浸漬した後に紙部分が膨潤して強度低下を生じ、また使用時における把持部のたわみ性に劣るため、使用感における液ダレ性が○であった以外は、△あるいは×であった。
【0029】
このように、本発明の口腔清浄具は、把持部が強度、耐久性、及び適度な弾性を有すると共に、把持部に唾液等の水分が付着した場合にも手が滑り難く、また把持部を温水等に浸漬したり、唾液が把持部に付着した状態で放置しても強度の低下が少なく、しかも清掃部と把持部の接着強度が高く、清掃部が把持部から脱落し難いものである。
【符号の説明】
【0030】
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G 口腔清浄具
11A、11B、11C、11D、11E、11F、11G 把持部
21A、21B、21C、21D、21E、21F、21G 清掃部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部の端部に清掃部が取り付けられた口腔清浄具において、
前記把持部が植物繊維素材からなることを特徴とする口腔清浄具。
【請求項2】
前記植物繊維素材が竹であることを特徴とする請求項1に記載の口腔清浄具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−217782(P2011−217782A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86713(P2010−86713)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)