説明

口金ピン及び口金ユニット

【課題】優れた強度・導電性・耐食性を有するとともに、低価格であって、再生資源としてのリサイクルが容易である口金ピン及び口金ユニットを提供すること。
【解決手段】蛍光灯の口金に対して基端部が挿通固定される筒状の口金ピンであって、材質が鉄であってめっき処理が施されていることを特徴とする口金ピンである。めっきは、ニッケルめっきであることが好ましく、銅めっきが施された後にニッケルめっきが施されていることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光灯の端部に取り付けられる口金に突設される口金ピン、及び口金と口金ピンからなる口金ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光灯の端部に設けられる口金に突設される口金ピンの材料としては、導電性、耐食性、材料強度、加工性等の観点から銅合金(黄銅)が使用されていた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、近年の世界的な銅価格の上昇により、銅合金を材料とする口金ピンの製造原価が高くなっている。
また、口金ピンが突設される口金はアルミニウム合金から形成されているため、使用済の蛍光灯を回収してリサイクルする場合、材料の異なる口金と口金ピンとを分離する作業が必要となり、作業効率の低下やリサイクルコストの上昇を招いていた。
【0003】
このような実状に鑑みて、下記特許文献2には、口金ピンをアルミニウム合金から形成する技術が開示されている。
しかしながら、アルミニウムは銅に比べると安価であるものの、銅と同様に近年価格が上昇しているため、アルミニウム合金に比べて更に安価で経済的な材料の使用が望まれているという実状がある。
また、口金ピンの材料としてアルミニウム合金を使用した場合、従来の黄銅製の口金ピンに比べて強度が低くなるため、口金ピンを口金に対してかしめ締結する際に座屈が生じ易くなるという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−47333号公報
【特許文献2】特開2004−281266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、優れた強度・導電性・耐食性を有するとともに、低価格であって、再生資源としてのリサイクルが容易である口金ピン及び口金ユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、蛍光灯の口金に対して基端部が挿通固定される筒状の口金ピンであって、材質が鉄であってめっき処理が施されていることを特徴とする口金ピンに関する。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記めっきがニッケルめっきであることを特徴とする請求項1記載の口金ピンに関する。
【0008】
請求項3に係る発明は、銅めっきが施された後に前記ニッケルめっきが施されていることを特徴とする請求項2記載の口金ピンに関する。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記鉄の炭素含有量が0.05〜0.2%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の口金ピンに関する。
【0010】
請求項5に係る発明は、蛍光灯の両端部に装着される口金と、該口金に対して基端部が挿通固定される筒状の口金ピンとからなり、前記口金及び前記口金ピンは、材質が鉄であってめっき処理が施されていることを特徴とする口金ユニットに関する。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記めっきがニッケルめっきであることを特徴とする請求項5記載の口金ユニットに関する。
【0012】
請求項7に係る発明は、銅めっきが施された後に前記ニッケルめっきが施されていることを特徴とする請求項6記載の口金ユニットに関する。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記めっき処理が、前記口金に前記口金ピンが固定された後、表面全体に施されていることを特徴とする請求項5乃至7いずれかに記載の口金ユニットに関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、材質が鉄であるため口金ピンの製造原価を低くすることができる。また鉄の炭素含有量を変化させることによって適当な強度を選択することができるため、口金ピンの強度を高めることができる。更に、めっき処理が施されているため、耐食性に優れた口金ピンとなる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、めっきがニッケルめっきであることから、耐食性が非常に優れている口金ピンとなる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、銅めっきが施された後にニッケルめっきが施されていることにより、めっきの密着性が向上し、めっき剥がれが起こりにくい口金ピンを得ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、鉄の炭素含有量が0.05〜0.2%であることから、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金より強度が高く、且つ塑性加工に適した口金ピンを得ることができる。更に電気抵抗率が低いため導電性に優れている。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、口金及び口金ピンの材質が鉄であるため、口金ユニットの製造原価を低くすることができるとともに、使用済の蛍光灯を回収してリサイクルする際に、口金と口金ピンとを分離する必要がなく、リサイクルが非常に容易である。また、めっき処理が施されているため、耐食性に優れた口金ユニットとなる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、めっきがニッケルめっきであることから、耐食性が非常に優れている口金ユニットとなる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、銅めっきが施された後にニッケルめっきが施されていることにより、めっきの密着性が向上し、めっき剥がれが起こりにくい口金ユニットを得ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、めっき処理が、口金に口金ピンが固定された後、表面全体に施されていることにより、口金への口金ピンの固定部にも完全にめっき処理が施されるため、耐食性に非常に優れた口金ユニットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る口金ピン及び口金ユニットの好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る口金ピンを示す図であって、(a)は断面図、(b)は右側面図である。尚、本明細書では、図1(a)における右側を口金ピンの基端部側と称し、左側を先端部側と称している。
本発明に係る口金ピン(1)は、全体として細長い略円筒状であって、その基端部が、蛍光灯のバルブ両端に取り付けられる口金の貫通孔に挿通されてかしめ固定される。
【0023】
本発明に係る口金ユニットは、口金ピン(1)と口金(2)とから構成されている。
図2は、本発明に係る口金ユニットを示す図であって、口金ピン(1)を口金(2)に固定した状態を示す図である。尚、図中の符号(3)は絶縁部材、(4)はリード線である。
【0024】
本発明に係る口金ピンは、材質が鉄であって、その表面にめっき処理が施されている。
口金ピンの材質として鉄を使用する理由は、主に以下の通りである。
第一には、銅や銅合金、アルミニウム合金に比べて安価であるために、製造原価が安くなり、製造コストを低く抑えられるためである。
第二には、銅や銅合金、アルミニウム合金に比べて高強度であることから、口金ピンを口金に対してかしめ締結する際に座屈が生じにくいためである。
第三には、鉄の炭素含有量を変化させることによって、適当な強度を選択することができるためである。
【0025】
本発明において口金ピンの材質となる鉄としては、具体的には塑性加工に適している冷間圧造用炭素鋼線SWCHが使用され、特に炭素含有量が比較的低いSWCH6A、SWCH10A、SWCH6R、SWCH10R等が好適に使用される。
【0026】
本発明では、上述した如く、鉄の炭素含有量を変化させることによって、適当な強度を選択することができるが、炭素含有量は0.05〜0.2%の範囲で選択することが好ましい。
これは、炭素含有量が0.05%未満であると充分な硬さが得られず、0.2%を超えると脆くなり塑性加工による複雑な形状を成形するのが困難であり、更に後述するめっき処理の際にめっき被膜を短時間で均一に形成することが困難となるため、いずれの場合も好ましくないためである。
又炭素含有量が低いほど電気抵抗率が低くなり導電性に優れるため、0.2%以下が有利である。
【0027】
口金ピンの材質となる鉄の表面には、耐食性を向上させるためにめっき処理が施される。
めっきの種類としては、ニッケルめっき、亜鉛めっき等を例示することができるが、中でも耐食性に優れているニッケルめっきを施すことが最も好ましい。
また、ニッケルめっきを施すことにより、めっきを施さない場合に比べて導電性を向上させることも可能となる。
めっき方法は、電解めっきでも無電解めっきでもよいが、安定しためっき厚が得られる電解めっきが好ましい。
【0028】
ニッケルめっきを施す場合のめっき厚は5〜8μmとすることが好ましい。
これは、めっき厚が5μm未満であると、下地の鉄素材が露出することによる耐食性低下の原因になり、8μmを超えると、かしめ締結時のめっき割れ発生の原因になり、いずれの場合も好ましくないためである。
【0029】
本発明においては、ニッケルめっきのみを施してもよいが、銅めっきを施した後にニッケルめっきを施すことが好ましい。この場合、内層が銅めっき、外層がニッケルめっきの二層構造のめっき層が形成されることとなる。
銅めっきを施した後にニッケルめっきを施すことにより、素材表面へのめっきの密着性が向上し、めっき剥がれが起こりにくくなる。
【0030】
銅めっきとニッケルめっきの二層構造のめっき層を形成する場合、各層のめっき厚は、例えば、内層の厚みが1〜3μm、外層の厚みが5〜8μmとすることが好ましい。
内層の厚みが1μm未満であると、外層めっきの密着性の低下、ピンホール発生の原因となり、また、3μmを超えても、外層めっきの密着性の効果が変わらないためめっき材料の無駄となり、いずれの場合も好ましくない。
また、外層の厚みは前述と同様に5μm未満であると、下地の鉄素材が露出することによる耐食性低下の原因になり、8μmを超えると、かしめ締結時のめっき割れ発生の原因になり、いずれの場合も好ましくない。
【0031】
本発明に係る口金ユニットは、口金(2)については従来と同様に材質を黄銅やアルミニウム合金としてもよい。しかし、口金ピン(1)と同様に、材質を鉄とし、その表面にめっき処理を施すことが好ましい。
口金ピン(1)と口金(2)の両方について、材質を鉄としてその表面にめっき処理を施すことにより、口金ユニットの製造原価を低くすることができるとともに、使用済の蛍光灯を回収してリサイクルする際に、口金と口金ピンとを分離する必要がなくなるため、リサイクルが非常に容易となる。
また、めっき処理が施されているため、耐食性に優れた口金ユニットとなる。
【0032】
本発明に係る口金ユニットにおいて、口金ピン(1)と口金(2)の両方について材質を鉄としてその表面にめっき処理を施す場合、めっき処理は口金(2)に口金ピン(1)を固定した後、口金ユニットの表面全体に施すことが好ましい。
このようにすることで、口金(2)への口金ピン(1)の固定部にも完全にめっき処理が施されるため、耐食性に非常に優れた口金ユニットを得ることができる。
【0033】
本発明に係る口金ピン(1)は、外周面に環状の鍔部(5)を有しており、鍔部(5)の前記基端部側の面には複数の凸部(6)が設けられている。
これら複数の凸部(6)は、口金ピン(1)を口金(2)に固定する際のかしめ締結時において、被締結部材(絶縁部材(3))の表面に食い込む。
これにより、口金ピン(1)のトルク強度(ねじり強度)が向上し、口金(2)に対して強固に固定されることとなる。
【0034】
複数の凸部(6)は、鍔部(5)の基端部側の面に放射状に等間隔で配置されている。
凸部(6)の数は2個以上であればよいが、6〜12個の範囲に設定することが好ましい。凸部(6)の数を6〜12個の範囲とすることにより、トルク強度を大幅に向上させることが可能となる。
【0035】
図3はトルク強度についての説明図である。
蛍光灯の取り付け時及び取り外し時においては、蛍光灯の両端部に突出した口金ピンを取り付け穴に挿入した状態で蛍光灯をねじる(軸周りに回転させる)動作が行われる。このねじり動作の際に、口金ピンには図3に矢印で示す方向のねじり力が作用する。
このとき、凸部(6)の数が6個以上であると、(a)図に示すようにねじり力が作用する方向とほぼ同方向において、凸部(6)が被締結部材に食い込んでいる状態となる為、口金ピンのトルク強度が大きく向上する。一方、凸部(6)の数が6個未満であると、(b)図に示すようにねじり力が作用する方向において、凸部(6)が被締結部材に食い込んでいない状態となる為、トルク強度を確実に向上させることが困難である。
このように、凸部(6)の数を6個以上とすることにより、口金ピンのトルク強度を確実に向上させることが可能となる。但し、凸部(6)の数を多くしすぎると、鍔部(5)の面積の制約から凸部同士の間隔が狭くなって被締結部材への食い込みが不十分となる為、上限数としては12個が適当である。
【0036】
口金ピン(1)は、先端部側に蛍光灯の電極と接続されるリード線(4)を固定するための小孔部(7)を有し、基端部側に小孔部(7)へとリード線を導くための大孔部(8)を有している。
大孔部(8)の内径は、口金ピン(1)の基端部外径の60〜80%に設定されている。この範囲に設定する理由は、60%未満であるとリード線を挿通しにくくなる上にかしめ時において基端部を拡径させることが困難となって座屈が発生し易くなり、80%を超えると口金ピン(1)を口金(2)に固定する際の締結時に締結強度が低下し、いずれの場合も好ましくないからである。
【0037】
大孔部(8)は、基端部側に径大部(81)を有し、先端部側に径小部(82)を有している。
このように、大孔部(8)が、基端部側に径大部(81)、先端部側に径小部(82)を夫々有する2段階の孔径に形成されていることにより、締結時に座屈が発生しにくく、且つ高い締結強度を得ることができる。また、口金ピン内部にリード線を容易に挿入することが可能となる。
【0038】
また、径大部(81)は鍔部(5)よりも基端部側に設けられている。
口金ピンを口金に固定する際には、鍔部(5)よりも基端部側においてかしめ締結がなされるため、鍔部(5)よりも先端部側の形状(内径)のみがトルク強度に影響を及ぼす。つまり、径大部(81)を鍔部(5)よりも先端部側に設けた場合にはトルク強度が低下するおそれがあるが、鍔部(5)よりも基端部側に設けることによりトルク強度の低下を回避することができる。
【0039】
径大部(81)と径小部(82)との間には、径大部(81)から径小部(82)に向けて次第に縮径するテーパ部(83)が設けられている。
これにより、径大部(81)から径小部(82)へとスムーズにリード線を導くことが可能となる。
但し、径大部(81)、径小部(82)、テーパ部(83)の区分を有していないもの、即ち大孔部(8)が同一径(ストレート)のものも本発明に含まれる(図4参照)。
また、各角部をR面取りする事により、よりスムーズにリード線を導くことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、蛍光灯の端部に取り付けられる口金に突設される口金ピン、及び口金と口金ピンからなる口金ユニットとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る口金ピンを示す図であって、(a)は断面図、(b)は右側面図である。
【図2】本発明に係る口金ユニットを示す断面図である。
【図3】口金ピンのトルク強度についての説明図である。
【図4】本発明に係る口金ピンの変更例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 口金ピン
2 口金
3 絶縁部材(被締結部材)
4 リード線
5 鍔部
6 凸部
7 小孔部
8 大孔部
81 径大部
82 径小部
83 テーパ部
9 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光灯の口金に対して基端部が挿通固定される筒状の口金ピンであって、
材質が鉄であってめっき処理が施されていることを特徴とする口金ピン。
【請求項2】
前記めっきがニッケルメッキであることを特徴とする請求項1記載の口金ピン。
【請求項3】
銅めっきが施された後に前記ニッケルメッキが施されていることを特徴とする請求項2記載の口金ピン。
【請求項4】
前記鉄の炭素含有量が0.05〜0.2%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の口金ピン。
【請求項5】
蛍光灯の両端部に装着される口金と、
該口金に対して基端部が挿通固定される筒状の口金ピンとからなり、
前記口金及び前記口金ピンは、材質が鉄であってめっき処理が施されていることを特徴とする口金ユニット。
【請求項6】
前記めっきがニッケルメッキであることを特徴とする請求項5記載の口金ユニット。
【請求項7】
銅めっきが施された後に前記ニッケルメッキが施されていることを特徴とする請求項6記載の口金ユニット。
【請求項8】
前記めっき処理が、前記口金に前記口金ピンが固定された後、表面全体に施されていることを特徴とする請求項5乃至7いずれかに記載の口金ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−114047(P2010−114047A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288129(P2008−288129)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(390011198)福井鋲螺株式会社 (41)