説明

古紙パルプの不純物分離促進方法

【課題】パルプ濃度30%程度にまで支障なく連続的に脱水できるようにして、化学薬品の効きを良くするようにし、強いインク、灰分等の除去を可能にする。
【解決手段】離解パルプを蒸煮釜11により6〜7%程度の濃度に洗浄、濃縮した後に、第1段脱水工程の網系脱水機13により濃度20%内外に脱水し、更に第2段脱水工程のスクリュ系脱水機14により濃度30%程度に脱水し、次いで、ニーダ15により化学薬品を加えてニーディングし、引き続き熟成タワー16により熟成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプの処理工程において、不純物の分離を効率良く促進させる古紙パルプの不純物分離促進方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の古紙の再生処理の分野では、紙、インクの多様化によって再生に供される古紙の状態が悪くなってきており、付着性が強いインクを除去し難い、表面処理剤のコート分である灰分が多く白色度を上げ難い等々が、古紙を原料として紙を抄紙する場合の大きな問題になっている。
【0003】
換言すれば、古紙を原料として製品にするためには、問題となる強いインク、灰分を除去しなくては、きれいな紙を造ることは困難である。
【0004】
古紙は水と薬品を加えて高温で蒸すことにより溶かしてしまう方法、或いは加水された古紙を回転ブレードによって溶かしてしまう方法などにより離解される。その後に、ごみ等を除去してワイヤメッシュやワイヤスリットを付けてあるドラムにより脱水され、コンベヤによってニーダやディスパーザに送られ、ここでニーディングされて熟成タワーに溜められるか、又は脱水されたままで熟成タワーに溜められて熟成される。
【0005】
離解以後においては、最近では図2に示すように、エキスト、ディスクエキスト、サンクションフィルタウオッシャ等の濃縮洗浄機1により洗浄又は濃縮された後に、バキュームフィルタ、ツインシックナ、シリンダプレス、ダブルワイヤ等の網系の脱水機2により脱水され、次いでコンベヤによりニーダ3に送られて、ここでインク粒子を剥離して除去し、引き続き熟成タワー4により熟成されて、白色度が上げられる。ただし、この熟成タワー4については、網系の脱水機2の直後に置かれることもある。
【0006】
しかし、このような網系の脱水機2によって、濃度20%内外に脱水されただけでは、パルプ濃度が低いためにニーディング効果が少ない。従って、インク等の機械的分離除去が困難であり、添加する化学薬品についても離解パルプへの吸着率が低く、化学薬品を多く添加しないと効果がなく、大量の化学薬品を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決し、古紙パルプを十分に脱水し、ニーディング効果を確実なものにし、使用する化学薬品を節約して、強いインク等の除去を可能にする古紙パルプの不純物分離促進方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る古紙パルプの不純物分離促進方法の技術的特徴は、離解パルプを濃縮過程において6〜7%程度の濃度に濃縮した後に、低濃度脱水機により濃度20%内外に脱水する第1段脱水工程と、更に高濃度脱水機により濃度30%程度に脱水する第2段脱水工程と、該第2段脱水工程で脱水した前記パルプに化学薬品を投入して化学反応処理を行う化学反応処理工程と、前記パルプを熟成させる熟成工程とを備えたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本願発明にかかる古紙パルプの不純物分離促進方法によれば、古紙パルプを第1段脱水工程により濃度を或る程度に脱水し、重ねて第2段脱水工程の高濃度脱水機により更に脱水するので、的確に高脱水パルプが得られてパルプ濃度を格段に高くでき、大きなニーディング効果が望める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の古紙パルプの処理工程に適用した不純物分離促進方法の実施例を示している。古紙等を蒸煮釜11において蒸煮し、どろどろになった古紙の離解パルプを洗浄又は濃縮し、パルパ12により大きなごみ等を除去すると共に、濃度つまり含水率を6〜7%程度濃縮して、第1段脱水工程の網系脱水機13に送る。
【0011】
網系脱水機13はバキュームフィルタ、ツインシックナ、シリンダプレス、ダブルワイヤ等から成り、濃縮パルプを20%程度にまで脱水して、スクリーンにより金物や小さなごみを取り除き、コンベヤにより第2段脱水工程のスクリュ系脱水機14に送る。
【0012】
スクリュ系脱水機14はスクリュプレスから成り、先の20%程度の脱水を更に30%にまで高めてニーダ(ディスパーザ)15に送る。ニーダ15は30%程度に脱水パルプを化学薬品を加えてニーディングし、付着性の強いインク、灰分等の不純物を引き剥がして除去し、次の熟成タワー16に送る。熟成タワー16では、ニーディングされたパルプを引き続き熟成させて次亜塩素酸ナトリウムなどの化学薬品を加えて白色度を上げ、次工程へと送る。
【0013】
このような工程を経ることにより、強いインク、灰分等の剥離効果を大きく促進させることができ、不純物の除去を大幅に改善でき、また化学薬品を添加して処理するにもパルプの水分が少ないので、パルプへの薬品の吸着率が高くなり、薬品の効きの良さが向上して、化学薬品の反応時間が速くなり、その使用量を節約でき経済性を改善できる。
【0014】
しかも、パルプ内の灰分等が抜け易くなり、洗浄水が不要となるために排水に負担が少なくて済む。
【0015】
また、第1段脱水工程の網系脱水機13の前に濃縮洗浄機を配して、6〜7%程度の濃度に洗浄又は濃縮しているので、離解パルプの濃度が2%程度の低濃度のものであったとしても、その濃縮に支障はなく、第2段脱水工程にスクリュ系脱水機14を使用してもその脱水の歩留に悪影響がでるようなことはない。
【0016】
加えて、第2段脱水工程に機械的強度の大きいスクリュ系脱水機14を用いているので、脱水度を30%程度にしても機械的に支障が生ずるようなことはなく、このように脱水度を30%にしても通常のメンテナンスで足り、機械の維持費が嵩むようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例の構成図である。
【図2】従来例の工程図である。
【符号の説明】
【0018】
11 蒸煮釜
12 パルパ
13 第1段脱水工程の網系脱水機
14 第2段脱水工程のスクリュ系脱水機
15 ニーダ
16 熟成タワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離解パルプを濃縮過程において6〜7%程度の濃度に濃縮した後に、低濃度脱水機により濃度20%内外に脱水する第1段脱水工程と、更に高濃度脱水機により濃度30%程度に脱水する第2段脱水工程と、該第2段脱水工程で脱水した前記パルプに化学薬品を投入して化学反応処理を行う化学反応処理工程と、前記パルプを熟成させる熟成工程とを備えたことを特徴とする古紙パルプの不純物分離促進方法。
【請求項2】
前記第2段脱水工程にスクリュプレスを用いる請求項1に記載の古紙パルプの不純物分離促進方法。

【図1】
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【図2】
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