説明

古紙再生処理装置

【課題】転写性能を安定させるとともに、紙の地合と脱水性能の向上を図ることができる古紙再生処理装置を提供する。
【解決手段】脱水転移部202は、上側に位置する平滑面ベルト43と下側に位置する吸水ベルト32を挟持し、平滑面ベルト43と吸水ベルト32を介して両ベルト間の湿紙100を圧搾する一対の脱水ローラ51、52を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は古紙再生処理装置に関し、湿紙の脱水技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術には、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、パルプ液を供給するヘッドボックスとワイヤパーツとプレスパーツとドライヤーパーツからなる。 ヘッドボックスは、ワイヤ・網目の上に製紙原料を等しく配布する部分である。ワイヤパーツは、複数のローラとフォーミングローラに掛け渡したワイヤベルトからなり、ワイヤベルトはヘッドボックスから供給された99.8%以上が水である希釈原料を受け取って水を排出させるもので、ろ過するために網になっている。
【0003】
プレスパーツは、サクション・プレスローラと、複数のローラに掛け渡したフェルトベルトからなり、フェルトベルトはワイヤパーツのフォーミングローラにおいてワイヤパーツと重なるように回転し、脱水と紙の形成を行ないながら湿紙をワイヤパーツから受けてとる。サクション・プレスローラは、ドライヤーパーツのドライヤーのドラム面との間で湿紙を高圧下で圧縮させて湿紙が持っている水分を脱水し、脱水した水を真空吸引する。
【0004】
また、特許文献2に記載する抄紙装置では、前工程のパルプ製造部から送られてくるスラリー状のパルプ懸濁液を抄紙工程部で抄いて湿紙とし、抄紙工程部で抄紙形成された湿紙を乾燥工程部で乾燥させて再生紙とする。
【0005】
抄紙工程部および乾燥工程部の全長に亘って延びる網状ベルトは、パルプ懸濁液を濾過脱水する無数の網目よりなる網構造をなし、平滑面ベルトが乾燥工程の全長にわたり網状ベルトと共に直線状に平行かつ近接して走行する。乾燥工程部は、網状ベルトと平滑面ベルトに挟持搬送される湿紙を加熱乾燥する部位であり、湿紙の下側面を支持する平滑面ベルトを加熱ヒータで加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−204375
【特許文献2】特開2009−1925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、再生紙の品質(外観の良否)や地合(生地の性質)に影響を与える要件としては、転写性能と脱水性能がある。
転写性能に貢献する要素には、ワイヤベルトやフェルトベルトと湿紙との間での剥離性があり、フェルトベルトやドラム面等の転写対象面と湿紙との間の密着性がある。例えば、特許文献1では、抄紙した湿紙がワイヤベルトからフェルトベルトへ転移する場合や湿紙がフェルトベルトからドライヤーのドラム面に転移する場合に、欠損等を伴わずに紙葉の全てを転写する如くに移動させる必要がある。
【0008】
脱水性能に貢献する要素には、ベルトの吸水性、搬送速度、圧搾荷重(ニップ圧)等があり、急激な脱水は紙繊維の偏りを生じて紙繊維のアンバランスにより紙の地合が悪くなる。しかし、搬送速度を遅くすると地合は良くなるが、生産性が低下する。
【0009】
本発明は、転写性能を安定させるとともに、紙の地合と脱水性能の向上を図ることができる古紙再生処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の古紙再生処理装置は、湿紙を抄紙する抄紙工程をなす抄紙部と、湿紙を脱水する脱水工程をなして抄紙部から湿紙が転移する吸水ベルトを有する脱水部と、湿紙を乾燥させる乾燥工程をなして脱水部の吸水ベルトから湿紙が転移する平滑面ベルトを有する乾燥部と、脱水部から乾燥部へ湿紙が転移する脱水転移部を備え、脱水転移部は、上側に位置する平滑面ベルトと下側に位置する吸水ベルトを挟持し、平滑面ベルトと吸水ベルトを介して両ベルト間の湿紙を圧搾する一対の脱水ローラを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の古紙再生処理装置において、脱水転移部は、双方の脱水ローラが平滑面ベルトおよび吸水ベルトを介して当接するニップ部を基準位置として、一方の脱水ローラにおいて前記基準位置から脱水ローラの回転方向の後方に向けた軸心廻りの所定角度範囲に相当する外周の脱水領域に平滑面ベルトおよび吸水ベルトが重なっていることを特徴とする。
【0012】
本発明の古紙再生処理装置において、脱水転移部は、上位の脱水ローラに前記脱水領域を有し、上位の脱水ローラの前記所定角度範囲を超えた外周の脱水前領域に平滑面ベルトが吸水ベルトに先行して当接し、平滑面ベルトと吸水ベルトの間隔が前記脱水領域に近づく程に狭くなることを特徴とする。
【0013】
本発明の古紙再生処理装置において、吸水ベルトは吸水性の素材からなり、平滑面ベルトは非吸水性の素材からなることを特徴とする。
本発明の古紙再生処理装置において、脱水転移部は、脱水ローラが外径φ80〜φ200mmの金属製ローラからなり、双方の脱水ローラが平滑面ベルトおよび吸水ベルトを介して当接するニップ部での軸心方向に沿ったニップ幅が250〜500mmであり、かつ脱水ロール間に1200〜3000kgfの圧搾荷重に相当するニップ圧を与えることを特徴とする。
【0014】
本発明の古紙再生処理装置において、平滑面ベルトおよび吸水ベルトは、1〜2m/分の同搬送速度で駆動することを特徴とする。
本発明の古紙再生処理装置において、吸水ベルトはフェルトからなり、平滑面ベルトは金属または耐熱温度150℃以上の合成樹脂からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、湿紙は脱水部の吸水ベルトによる吸水で吸収脱水した後に、脱水転移部の脱水ローラによって圧搾脱水する。この際に、双方の脱水ローラがニップ部において平滑面ベルトおよび吸水ベルトを介して湿紙を圧搾する前に、一方の脱水ローラの外周の脱水領域に平滑面ベルトおよび吸水ベルトが湿紙を挟持して重なることで、紙繊維の流動が抑制される状態にまで十分に吸収脱水でき、湿紙が脱水ベルトから平滑面ベルトへ転移し始める予備的な転移操作が起こる。また、平滑面ベルトと吸水ベルトの間隔が脱水領域に近づく程に狭くなることで、平滑面ベルトと吸水ベルトの間に湿紙を徐々に挟持し押圧して吸収脱水を促進し、平滑面ベルトと吸水ベルトの搬送速度を緩めることなく急激な脱水を防止しつつ、吸収脱水を十分に行なう。
【0016】
このようにして、十分な吸収脱水を行なった後に紙繊維の流動を抑制する状態で、脱水ローラに加わる圧搾荷重下のニップ圧で圧搾脱水することで、含水量の多い状態での圧搾脱水を回避して湿紙中の繊維が偏在する原因を抑制することができ、その結果、紙繊維がバランス良く配置された良好な地合を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態における古紙再生処理装置を示す模式図
【図2】図1の抄紙転移部を示す拡大図
【図3】図1の脱水転移部を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1および図2において、古紙処理装置1は、湿紙100を抄紙する抄紙工程をなす抄紙部2と、湿紙を脱水する脱水工程をなす脱水部3と、湿紙を乾燥させる乾燥工程をなす乾燥部4と、乾燥した乾紙を仕上げる仕上げ工程をなす仕上げ部5を備えている。
【0019】
抄紙部2は、第1群のローラ21の間に掛け渡されたワイヤーベルト22と、パルプ懸濁液をワイヤーベルト22に供給するヘッドボックス23を有し、ワイヤーベルト22の搬送面上に湿紙100を抄紙する。ワイヤーベルト22は金属製又は、合成樹脂製であり、網目状をなして通水性、通気性を有している。
【0020】
脱水部3は、第2群のローラ31の間に掛け渡された吸水性の素材からなる吸水ベルト32を有し、ここでは吸水ベルト32がフェルトからなり通気性を有している。フェルトは例えば14DTXであり、目付1200g/m、厚み303mm、密度0.364g/cmで、基布構成が2重構造、材質は合成樹脂で、ナイロン等の親水性樹脂が望ましい。
【0021】
吸水ベルト32およびワイヤーベルト22は双方の搬送軌道の途中において相互に当接して抄紙転移部201を形成する。この抄紙転移部201においてワイヤーベルト22と吸水ベルト32のなす角度、すなわち、吸水ベルト32に対するワイヤーベルト22の入射角度θ1は、10〜20°であり、ワイヤーベルト22を支持する第1群のローラ21の直径はφ60mmからφ80mmである。
【0022】
抄紙部2でワイヤーベルト22の搬送面上に抄紙した湿紙100は、抄紙転移部201において吸水ベルト32に押圧され、ワイヤーベルト22が第1群のローラ21の外周に沿って反転して湿紙100から離間することで、ワイヤーベルト22から吸水ベルト32に転移し、転移した湿紙100から吸水ベルト32が吸水して湿紙100を吸収脱水する。
【0023】
乾燥部4は、ヒータ等の加熱装置を内蔵して加熱部をなす乾燥ローラ41と、乾燥ローラ41と第3群のローラ42の間に掛け渡した非吸水性の素材からなる平滑面ベルト43と、第4群のローラ44の間に掛け渡した非吸水性の素材からなる搬送ベルト45を有する。脱水部3の吸水ベルト32と平滑面ベルト43は双方の搬送軌道の途中において相互に当接し、脱水部3の吸水ベルト32から乾燥部4の平滑面ベルト43に湿紙100が転移する脱水転移部202を形成する。
【0024】
脱水転移部202には、平滑面ベルト43と吸水ベルト32を挟持する一対の脱水ローラ51、52を配置している。本実施の形態では一対の脱水ローラ51、52であるが、複数組の脱水ローラ51、52を配置することも可能である。一対の脱水ローラ51、52は、下側に位置する吸水ベルト32に当接する脱水部3のローラ31の一つで直径がφ90mmからφ100mmのものと、上側に位置する平滑面ベルト43に当接する乾燥部4のローラ42の一つで直径がφ90mmからφ120mmのものとからなる。脱水ローラ51、52は金属製ローラからなり、外径φ80〜200mmのものが適用可能である。
【0025】
脱水ローラ51、52は、平滑面ベルト43と吸水ベルト32を介して両ベルト間の湿紙100を圧搾して脱水するとともに、湿紙100を平滑面ベルト43に押圧し、吸水ベルト32が下側の脱水ローラ52の外周に沿って反転して湿紙100から離間することで、湿紙100が吸水ベルト32から平滑面ベルト43に円滑に転移する。
【0026】
脱水ローラ51、52は、双方の軸心を含む平面Aが鉛直面Bに対して微小角度θ3で傾斜し、上位の脱水ローラ51が平滑面ベルト43および吸水ベルト32の搬送方向で後方に位置し、下位の脱水ローラ52が平滑面ベルト43および吸水ベルト32の搬送方向で前方に位置する。
【0027】
平滑面ベルト43および吸水ベルト32は、脱水転移部202への進入時に相互間の角度θ4が4〜5°をなす搬送軌道を形成し、脱水転移部202からの離脱時に相互間の角度θ5が7〜8°をなす搬送軌道を形成している。
【0028】
上位の脱水ローラ51は、双方の脱水ローラ51、52が平滑面ベルト43および吸水ベルト32を介して当接するニップ部500を基準位置として、この基準位置から脱水ローラ51の回転方向の後方に向けた軸心廻りの所定角度範囲θ6=14〜25°に相当する脱水領域D1に、平滑面ベルト43および吸水ベルト32が重なっている。
【0029】
上位の脱水ローラ51の所定角度範囲θ6を超えた外周の脱水前領域D2に平滑面ベルト43が吸水ベルト32に先行して当接し、平滑面ベルト43と吸水ベルト32の間隔が脱水領域D1に近づく程に狭くなる。
【0030】
本実施の形態では、ニップ部500は軸心方向に沿ったニップ幅が250〜500mmであり、脱水ロール51、52の間に1200〜3000kgfの圧搾荷重に相当するニップ圧を与え、平滑面ベルト43および吸水ベルト32は、1〜2m/分の同搬送速度で駆動する。
【0031】
平滑面ベルト43は金属または耐熱温度150℃以上の合成樹脂からなり、ここでは厚み0.2mmのステンレス薄板(SUS430)からなる非通気性のものである。平滑面ベルト43は、湿紙100に当接する搬送面が平滑面をなし、かつ搬送面にシリコーン樹脂コーティング又はフッ素樹脂コーティングを施している。
【0032】
本実施の形態において吸水ベルト32の開口率はワイヤーベルト22の開口率より小さく、平滑面ベルト43は薄板状をなして無通気性である。
搬送ベルト45は網目状の通気性を有するもので合成樹脂からなり、平滑面ベルト43の搬送面に対向して配置し、平滑面ベルト43との間に湿紙100を挟持する。平滑面ベルト43と搬送ベルト45は、次工程の仕上げ部5に対して乾燥した乾紙101を受け渡す位置まで延在している。
【0033】
また、ワイヤーベルト22、吸水ベルト32、平滑面ベルト43のそれぞれに対して洗浄噴水を行なうことにより、あるいはスクレーパーやブラシローラなどを設けることにより、各々のベルト表面に付着した紙粉などのゴミを除去することも可能である。
【0034】
仕上げ部5は、乾燥部4で乾燥させた乾紙101を切断するカッター102を備え、カッター102で設定サイズの再生紙103に仕上げる。
上記した構成における作用を説明する。抄紙部2では、ヘッドボックス23からパルプ懸濁液をワイヤーベルト22に供給してワイヤーベルト22の搬送面上に湿紙100を抄紙する。脱水部3では、抄紙部でワイヤーベルト22の搬送面上に抄紙した湿紙100を吸水ベルト32に転移させ、吸水ベルト32により湿紙100から吸水して湿紙100を脱水する。ワイヤーベルト22の湿紙100は抄紙転移部201の直前での含水率が約99%である。抄紙転移部201では、ワイヤーベルト22と吸水ベルト32との入射角度θ1が10〜20°であり、第1群のローラ21の直径がφ60mmからφ80mmであることで、吸水ベルト32に対する湿紙100の押圧と、ワイヤーベルト22から湿紙100から離間することを円滑に行なうことができる。
【0035】
また、ワイヤーベルト22は、その開口率が吸水ベルト32の開口率より大きくて通気性が吸水ベルト32の通気性に優るので、剥離性が吸水ベルト32の剥離性より大きくなり、換言すれば吸水ベルト32の密着性がワイヤーベルト22の密着性に優る。よって、湿紙100は剥離性が高いワイヤーベルト22から容易に剥離し、密着性が高い吸水ベルト32に容易に密着し、ワイヤーベルト22から吸水ベルト32へ湿紙100が容易に転移し、高い転写性能を奏する。
【0036】
乾燥部4では、吸水ベルト32による吸水で湿紙100を吸収脱水した後に、脱水転移部202で脱水ローラ51、52によって圧搾脱水し、湿紙100を平滑面ベルト43に転移させる。
【0037】
この際に、双方の脱水ローラ51、52がニップ部500において平滑面ベルト43および吸水ベルト32を介して湿紙100を圧搾する前に、一方の脱水ローラ51の外周の脱水領域D1に平滑面ベルト43および吸水ベルト32が湿紙100を挟持して重なることで、紙繊維の流動が抑制される状態にまで十分に吸収脱水でき、湿紙100が脱水ベルト32から平滑面ベルト43へ転移し始める予備的な転移操作が起こる。
【0038】
また、平滑面ベルト43と吸水ベルト32の間隔が脱水領域D1に近づく程に狭くなることで、平滑面ベルト43と吸水ベルト32の間に湿紙100を徐々に挟持し押圧して吸収脱水を促進し、平滑面ベルト43と吸水ベルト32の搬送速度を緩めることなく急激な脱水を防止しつつ、吸収脱水を十分に行なう。
【0039】
このようにして、十分な吸収脱水を行なった後に紙繊維の流動を抑制する状態で、脱水ローラ51、52に加わる圧搾荷重下のニップ圧で圧搾脱水することで、含水量の多い状態での圧搾脱水を回避して湿紙中の繊維が偏在する原因を抑制することができ、その結果、紙繊維がバランス良く配置された良好な地合を実現できる。
【0040】
しかしながら、予備的な転移操作を行なわずにニップ部500で突然に平滑面ベルト43、吸水ベルト32および湿紙100をプレスすると、湿紙100が平滑面ベルト43および吸水ベルト32の搬送方向の逆方向へ押し出されて流動し、吸水ベルト32から平滑面ベルト43への湿紙100の転写性能が阻害されて湿紙100の地合いが不良となる。
【0041】
吸水ベルト32の湿紙100は脱水転移部202の直前での含水率が約80%であり、脱水後の平滑面ベルト43の湿紙100は含水率が約50%である。
また、平滑面ベルト43は無通気性であり、通気性の吸水ベルト32より密着性が高く、換言すれば吸水ベルト32の剥離性が平滑面ベルト43の剥離性に優る。よって、湿紙100は剥離性が高い吸水ベルト32から容易に剥離し、密着性が高い平滑面ベルト43に容易に密着し、吸水ベルト32から平滑面ベルト43へ湿紙100が容易に転移する。
【0042】
このように、本実施の形態において、湿紙100は高い通気性を有して剥離性に優れるワイヤーベルト22から低い通気性を有して密着性に優る吸水ベルト32へ転移し、さらに吸水ベルト32から無通気性で密着性に優る平滑面ベルト43へ転移することで、湿紙100の転移が常に剥離性に優れたベルトから密着性に優れたベルトに対して行なわれるので、優れた転写性能を実現できる。
【0043】
そして、平滑面ベルト43が吸水ベルト32の上方に位置する状態で、脱水ローラ51、52で搾り出した水は、脱水ローラ52より下方に配置したトレー(図示省略)に排出される。このため、脱水ローラ51、52を通過した吸水ベルト32は再生されて吸水可能な状態となる。
【0044】
湿紙100が転移した平滑面ベルト43は乾燥ローラ41へ向けて進行し、その途中から平滑面ベルト43の搬送面に対向して搬送ベルト45が並走し、搬送ベルト45と平滑面ベルト43との間に湿紙100を挟持する。この状態で搬送ベルト45と平滑面ベルト43と湿紙100が乾燥ローラ41の転動に伴って進行し、乾燥ローラ41から受ける熱によって湿紙100が乾燥して乾紙101となる。この際に、湿紙100は脱水転移部202で平滑面ベルト43に密着しているので、平滑面ベルト43と湿紙100との間の熱伝導性が良くなり、高い熱効率を実現する。
【0045】
また、平滑面ベルト43に湿紙100を保持したまま乾燥ローラ41のローラ面上に巻装し、その状態で乾燥させるので、湿紙100を乾燥ローラ41の表面へ転移させるなどの余分な工数を必要とせず、搬送効率が良くなる。
【0046】
平滑面ベルト43と搬送ベルト45は乾紙101を仕上げ部5に対して受け渡す位置まで延在し、互に相反する方向へ反転して乾紙101を剥離させる。この際に、平滑面ベルト43は搬送面にシリコーン樹脂コーティング又はフッ素樹脂コーティングを施してあるので、乾紙101が円滑に剥離する。
【0047】
このように、搬送ベルト45は、乾燥ローラ41の外周上において湿紙100を平滑面ベルト43との間に挟持することで、乾燥ローラ41の外周において平滑面ベルト43が下方から上方にかけて回転しながら反転する際に湿紙100が平滑面ベルト43から剥がれることを防止する。さらに、搬送ベルト45は、乾燥した乾紙101を仕上げ部5まで平滑面ベルト43との間に挟持して搬送するので、乾燥ローラ41を通過した湿紙に表裏の温度差に起因してカールが発生することを防止する。
【0048】
仕上げ部5では、平滑面ベルト43と搬送ベルト45から剥離した再生紙103をカッター102で設定サイズの再生紙103に仕上げる。
以下においては、脱水ロール間のニップ圧を設定するためのテストについて説明する。
1.目的
脱水部において、湿紙の脱水性能がよく、さらに脱水後の紙の品質(外観の良否)も良好なものとなるように脱水ロール間のニップ圧を設定する。
2.テスト方法
2.1
古紙再生処理装置において、抄紙部で生成された湿紙を、抄紙ベルト(ワイヤーベルト)と脱水ベルト(フェルトベルト)と平滑面ベルト(スチールベルト)とへ順次に通常仕様通りに転写し、脱水部(脱水ローラ・ニップ部)を通過後の湿紙の水分量(残水量)を測定するとともに、前記脱水部通過後の湿紙の品質(外観の良否)を目視確認する。
【0049】
尚、湿紙の水分量(残水量)の測定は以下の手順で行なう。脱水部(脱水ローラ・ニップ部)を通過後の湿紙を平滑面ベルトから取り外し、その重量(W1)を測定する。重量を測定した後の湿紙をヒーターにて十分に乾燥させてその重量(W2)を測定する。重量(W1)−重量(W2)より、脱水部通過後の湿紙の水分量(残水量:W3)を算出する。
【0050】
2.2
脱水部の脱水ローラにニップ圧を与える圧搾荷重(kgf)は、1000、1200、1500、2000、2500、3000、3500である。
【0051】
2.3
湿紙の水分量(残水量:W3)と、脱水部通過後の湿紙の品質(外観の良否)の判定方法は下記の通りである。
【0052】
湿紙の水分量(残水量)
50%(重量%=W3/W1)以下をひとつの判断基準の目安とし、以下の基準で判断する。○:50%以下、△:51〜60%、×:61%以上
残水量を50%以下にすることで、後段の乾燥部における乾燥効率が良好になる。
【0053】
脱水部通過後の湿紙の品質(外観の良否)
半透明部分が目立つかどうかを目視確認し、以下の基準で判定する。◎:半透明部分がほとんどない、○:紙を透かして見ると分かる程度、×:卓上に置いて見ても半透明部分が確認できる。
【0054】
脱水ローラ・ニップ圧が上昇すると、紙の表面が見かけ上、白色から部分的に半透明になる傾向にある。この半透明部分は繊維間の空気層が減少しており、乾燥してもそのままの状態となるため、外観の品質上問題となる。
3.テスト条件
・平滑面ベルト スチールベルト
・吸水ベルト フェルトベルト(14DX;目付1200g/m、厚み3.3mm、密度0.364g/cm、基布構成=2重構造、材質=ナイロン)
4.テスト結果
【0055】
【表1】

湿紙の水分量(残水量)
○:50%以下
△:51〜60%
×:61%以上
湿紙の品質
◎:半透明部分がほとんどない。
○:紙を透かして見ると分かる程度
×:卓上に置いて見ても半透明部分が確認できる。
【符号の説明】
【0056】
1 古紙処理装置
2 抄紙部
3 脱水部
4 乾燥部
5 仕上げ部
21、21a、21b 第1群のローラ
22 ワイヤーベルト
23 ヘッドボックス
31 第2群のローラ
32 吸水ベルト
41 乾燥ローラ
42 第3群のローラ
43 平滑面ベルト
44 第4群のローラ
45 搬送ベルト
51、52 脱水ローラ
100 湿紙
101 乾紙
102 カッター
103 再生紙
201 抄紙転移部
202 脱水転移部
500 ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿紙を抄紙する抄紙工程をなす抄紙部と、湿紙を脱水する脱水工程をなして抄紙部から湿紙が転移する吸水ベルトを有する脱水部と、湿紙を乾燥させる乾燥工程をなして脱水部の吸水ベルトから湿紙が転移する平滑面ベルトを有する乾燥部と、脱水部から乾燥部へ湿紙が転移する脱水転移部を備え、
脱水転移部は、上側に位置する平滑面ベルトと下側に位置する吸水ベルトを挟持し、平滑面ベルトと吸水ベルトを介して両ベルト間の湿紙を圧搾する一対の脱水ローラを有することを特徴とする古紙再生処理装置。
【請求項2】
脱水転移部は、双方の脱水ローラが平滑面ベルトおよび吸水ベルトを介して当接するニップ部を基準位置として、一方の脱水ローラにおいて前記基準位置から脱水ローラの回転方向の後方に向けた軸心廻りの所定角度範囲に相当する外周の脱水領域に平滑面ベルトおよび吸水ベルトが重なっていることを特徴とする請求項1に記載の古紙再生処理装置。
【請求項3】
脱水転移部は、上位の脱水ローラに前記脱水領域を有し、上位の脱水ローラの前記所定角度範囲を超えた外周の脱水前領域に平滑面ベルトが吸水ベルトに先行して当接し、平滑面ベルトと吸水ベルトの間隔が前記脱水領域に近づく程に狭くなることを特徴とする請求項1または2に記載の古紙再生処理装置。
【請求項4】
吸水ベルトは吸水性の素材からなり、平滑面ベルトは非吸水性の素材からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の古紙再生処理装置。
【請求項5】
脱水転移部は、脱水ローラが外径φ80〜φ200mmの金属製ローラからなり、双方の脱水ローラが平滑面ベルトおよび吸水ベルトを介して当接するニップ部での軸心方向に沿ったニップ幅が250〜500mmであり、かつ脱水ロール間に1200〜3000kgfの圧搾荷重に相当するニップ圧を与えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の古紙再生処理装置。
【請求項6】
平滑面ベルトおよび吸水ベルトは、1〜2m/分の同搬送速度で駆動することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の古紙再生処理装置。
【請求項7】
吸水ベルトはフェルト製からなり、平滑面ベルトは金属製または耐熱温度150℃以上の合成樹脂製からなることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の古紙再生処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41659(P2012−41659A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184502(P2010−184502)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】