説明

可倒支柱

【課題】高性能なウインチを必要としない可倒支柱を提供する。
【解決手段】可倒支柱100は、定滑車14が設けられた基体10と、基体10の上部に回動可能に支持され、動滑車23が設けられた可倒柱20と、定滑車14と動滑車23とに亘って巻き掛けられ、一端が基体10に固定され、他端が巻取装置17に連結されたワイヤ30とを備える。定滑車14は、軸13に複数設けられ、それぞれ独立に回転する。 動滑車23は、軸22に複数設けられ、それぞれ独立に回転する。巻取装置17は基体10に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可倒支柱に関し、特に先端に要保守器具が装着された可倒支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外等に設置された多くの支柱には、その先端に街頭灯や投光器等の照明器具、監視カメラ等の撮影器具など定常的に器材の交換、点検、清掃等のメンテナンスを必要とする要保守器具が装着されている。要保守器具のメンテナンスを行う際、要保守器具が保守作業者の手元に近接するよう、支柱の上半分を倒れ込み可能とした可倒支柱がある。これにより、保守点検時に保守作業者がハシゴ等に登る使う必要がないため、安全であり、タワー車や専門技術者を手配することなく簡単にメンテナンスが行えるため、省力化や経費節減に高い効果を発揮する。
【0003】
このような可倒支柱は、固定された下部の基体と、この基体の上端部に回動可能に支持され先端に要保守器具が装着される可倒柱とを備え、可倒柱の下端部に一端が固定されたワイヤを用いて可倒柱を可倒としている。このワイヤは、人間が引っ張り操作することもある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、要保守器具が装着された重い可倒柱を回動する必要があるので、ワイヤの他端を基体に内蔵したウインチ(巻き揚げ機)に連結することが一般的である(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平8−82118号公報
【特許文献2】特開2004−44255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したように、要保守器具が装着された可倒柱は重くなる。また、要保守器具が地表に近接するよう垂下状態に近づくまで可倒柱を回動させて倒れ込ませる。これらのため、倒れ込み状態にある可倒柱を起こし上げる際、特にその初動時に、大きな引張力を要するので高性能なウインチを用いており、高価格になっていたという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、高性能なウインチを必要としない可倒支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る可倒支柱は、定滑車が設けられた基体と、前記基体の上部に回動可能に支持され、動滑車が設けられた可倒柱と、前記定滑車と前記動滑車とに亘って巻き掛けられ、一端が前記基体又は前記可倒柱に固定され、他端が巻取手段に連結されたワイヤとを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る可倒支柱によれば、巻取手段によって、ワイヤを巻き取り、又は繰り出すことにより、可倒支柱を倒し込み、又は起き上がらせることができる。そして、ワイヤが動滑車に巻き掛けられるので、可倒柱を倒し込み、又は起き上がらせるために必要な力を小さくすることが可能となる。よって、巻取手段を高性能なウインチとする必要がない。
【0008】
また、本発明に係る可倒支柱は、前記定滑車は、一の軸に複数設けられ、それぞれ独立に回転し、前記動滑車は、他の一の軸に複数設けられ、それぞれ独立に回転することが好ましい。
【0009】
この場合、ワイヤが複数の動滑車に巻き掛けられるので、可倒柱を倒し込み、又は起き上がらせるために必要な力をさらに小さくすることが可能となる。さらに、複数の定滑車及び動滑車は、それぞれ共通の一の軸に設けられるので、構造が簡略化し、コンパクト化する。ただし、定滑車や動滑車が1個であっても、複数の定滑車や動滑車をそれぞれ異なる軸に支持しても、勿論よい。
【0010】
また、本発明に係る可倒支柱は、前記ワイヤの一端が前記基体に固定され、前記巻取手段が前記基体に設けられることを特徴とすることが好ましい。
【0011】
この場合、基体に設けられた巻取手段は、可倒柱と共に動かないので、作業者は巻取手段を好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る可倒支柱100について説明する。
【0013】
図1から図4を参照して、可倒支柱100は、基体10と、基体10の上部に回動可動に支持される可倒柱20と、1本のワイヤ30とを備えている。
【0014】
基体10は、地中の基礎や建築物の基盤等に固定される基板11と、基板11の上面に固定され互いに平行に直立する2枚の支持板12,12と、基体10の下部に設けられた軸(一の軸)13と、軸13に回転自在に支持された2つの定滑車14,14と、基体10の上部に設けられた軸15と、軸13に回転自在に支持された2つの定滑車14,14と、ワイヤ30の一端が固定される固定部16と、ワイヤ30の他端が連結された巻取装置17とを備えている。
【0015】
基板11は、地中の基礎等の上面にボルト等を用いて固定されるなどして、基礎等に固定して設置される。2枚の支持板12,12は、平鋼板等から形成されており、所定の間隔を隔てて互いに平行になるよう溶接等によって基板11の上面に固定されている。2枚の支持板12,12は、それぞれ下部と上部に貫通孔が形成されている。そして、2枚の支持板12,12の下部の貫通孔には、1本の軸13が挿通されており、軸13は、溶接等によって支持板12,12に固定されている。この軸13には、2つの定滑車14,14がそれぞれ独立回転可能に支持されている。定滑車14,14の溝底径は、同一であっても、異なっていてもよい。一方、2枚の支持板12,12の上部の貫通孔には、1本の軸15が挿通されており、軸15は、溶接等によって支持板12,12に固定されている。
【0016】
固定部16は、例えばアンカーやワイヤピンであり、基板11の上面にボルト等を用いて固定されている。固定部16には、ワイヤ30の一端が、アンカーやワイヤピンに締結される等によって固定されている。巻取装置17は、例えば、基体10に回動可能に設けられた軸に固定された巻取滑車である。巻取滑車にワイヤ30の他端が固定され、作業者がハンドル等を用いて軸を回動することによって、ワイヤ30の巻き取り、又は繰り出しを行うことができる。また、巻取装置17として、電動式や手動式のウインチや巻取ドラム等を用いてもよい。なお、図示しないが、基体10は、可倒柱20を直立状態に保持するためのボルト等からなる保持手段や、可倒柱20の意図しない方向への倒れ込みを阻止する逆回転阻止手段も備えている。
【0017】
可倒柱20は、基体10に回動可能に支持され上端部に要保守器具Mが装着される可倒柱本体21と、可倒柱本体21の下端部に設けられた軸(他の一の軸)22と、軸22に回転自在に支持された3つの動滑車23,23,23とを備えている。
【0018】
可倒柱本体21は、丸鋼管等から形成されており、その下部に貫通穴が形成されている。この貫通穴に基体10の軸13が挿通されることにより、可倒柱20が基体10に対して回動可能となっている。可倒柱本体21の上端部には、要保守器具Mが装着されている。要保守器具Mへの配線は、可倒柱本体21内部の空洞及び2枚の支持板12,12間の空間に配されている。可倒柱本体21の下端部には、2つの貫通孔が同軸上に形成されている。これらの貫通孔には、1本の軸22が挿通されており、軸22は、溶接等によって可倒柱本体21に固定されている。この軸22には、3つの動滑車23,23,23がそれぞれ独立回転可能に支持されている。動滑車23,23,23の溝底径は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0019】
ワイヤ30は、定滑車14,14と動滑車23,23,23とに亘って巻き掛けられている。ワイヤ30は、一端が基体10の固定部16に固定された後、動滑車23、定滑車14、動滑車23、定滑車14、動滑車23の順に巻き掛けられ、他端が基体10の巻取装置手段17に連結されている。ワイヤ30は、定滑車14や動滑車23に半巻き程度に巻き掛けられるが、二重巻き以上に巻き付けてもよい。
【0020】
次に、上記のように構成された可倒支柱100の可倒柱20を倒し込み、起き上がらせる方法について説明する。
【0021】
直立状態にある可倒柱20を倒し込む場合、作業者は、まず、可倒柱20を直立状態に保持する前記保持手段(図示なし)を解除する。そして、ハンドル等を操作して巻取装置17によりワイヤ30の繰り出しを徐々に行う。これにより、ワイヤ30の巻き掛け長が長くなり、定滑車14,14を支持する軸13と動滑車23,23,23を支持する軸22が離間するので、可倒柱20は徐々に倒れ込む。そして、全てのワイヤ30を繰り出した時点で、可倒柱20の倒れ込みが停止する。
【0022】
一方、倒れ込んだ可倒柱20を起こし上げる場合、作業者は、ハンドル等を操作して巻取装置17によりワイヤ30の巻き上げを徐々に行う。これにより、ワイヤ30の巻き掛け長が短くなり、定滑車14,14を支持する軸13と動滑車23,23,23を支持する軸22が近接するので、可倒柱20は徐々に起き上がる。前記逆回転阻止手段(図示なし)により可倒柱20の逆方向への倒れ込みが阻止された時点で、可倒柱20は直立状態となる。そして、保持手段により可倒柱20を直立状態に保持する。
【0023】
以上のように、可倒支柱100は、基体10に設けられた定滑車14,14と、可倒柱20の下端部に設けられた動滑車23,23,23とに亘ってワイヤ30が巻き掛けられ、ワイヤ30の一端が基体10に固定され、他端が巻取装置17に連結されている。これにより、可倒柱20を単に巻取装置を用いてワイヤで起こし上げる場合に比べて、起こし上げに必要な力を非常に削減することができる。これにより、従来、可倒支柱の略真ん中に位置した可倒柱の回動中心を下方に下げることができ、可倒柱20の全長を短くすることが可能となる。そのため、要保守器具Mへの配線が容易になる。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る可倒支柱100の変形例について説明する。図5を参照して、この変形例は、2個の定滑車14,14がそれぞれ異なる軸18,18に1個ずつ支持されている。そして、3個の動滑車23,23,23もそれぞれ異なる軸24,24,24に1個ずつ支持されている。これらの軸18,23は、基体10や可倒柱20に固定的に設けられるものであっても、定滑車14や動滑車23と共に回転するものであってもよい。この変形例も、可倒支柱100と同様に作動する。
【0025】
なお、上述した可倒支柱100やその変形例においては、通常は直立状態にあり、保守時に倒し込むローリングポールに適用した場合について説明した。しかしながら、可倒支柱100を通常は倒れ込み状態にあり、必要に応じて起き上がらせるものに適用してもよい。例えば、温室やカーポート等の屋根に積もった雪を下ろすために、普段横になっている梁を起こし上げて雪を滑り落とさせるものや、ゲートや遮断機等の遮断棒に適用してもよい。
【0026】
また、可倒支柱100が2個の定滑車14,14と3個の動滑車23,23,23を備える場合について説明した。しかしながら、可倒支柱100が備える定滑車14や動滑車23の個数はこれに限定されず、1個であってもよい。可倒柱20を起き上がらせるために必要な力は,動滑車23が1個増すごとに半分になるので、当該必要な力に応じて個数を適宜定めればよい。
【0027】
また、巻取装置17の巻取滑車を支持する軸が、定滑車14,14を支持する軸13と異なる場合について説明した。しかしながら、巻取滑車を軸13に支持してもよい。このとき、軸13は回転自在とし、巻取滑車を軸13に固定して軸13と共に回転するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る可倒支柱の直立状態を示す概略説明図。
【図2】可倒支柱の傾斜状態を示す概略説明図。
【図3】可倒支柱の倒れ込み状態を示す概略説明図。
【図4】可倒支柱の下部を示す概略説明図。
【図5】本発明の実施形態の変形に係る可倒支柱の下部を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0029】
10…基体、11…基板、12…支持板、13…軸(一の軸)、14…定滑車、15…軸、16…固定部、17…巻取装置、18…軸、20…可倒柱、21…可倒柱本体、22…軸(他の一の軸)、23…動滑車、24…軸、30…ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定滑車が設けられた基体と、
前記基体の上部に回動可能に支持され、動滑車が設けられた可倒柱と、
前記定滑車と前記動滑車とに亘って巻き掛けられ、一端が前記基体又は前記可倒柱に固定され、他端が巻取手段に連結されたワイヤとを備えることを特徴とする可倒支柱。
【請求項2】
前記定滑車は、一の軸に複数設けられ、それぞれ独立に回転し、
前記動滑車は、他の一の軸に複数設けられ、それぞれ独立に回転することを特徴とする請求項1に記載の可倒支柱。
【請求項3】
前記ワイヤの一端は前記基体に固定され、前記巻取手段が前記基体に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の可倒支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−65429(P2010−65429A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231910(P2008−231910)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(390029698)テック大洋工業株式会社 (10)