説明

可動壁を有するプール

【課題】プールの長辺方向の中間に、上昇位置で確実に支持できる可動壁を設けることができるとともに、安全性の高い可動壁を有するプールを提供すること。
【解決手段】プール床側から水面方向に上下動自在な可動壁体を設け、当該可動壁体を往復動させる駆動装置を設置している。可動壁体は最下降時にプール底部に格納され、かつ、可動壁体が格納された状態では、可動壁体の上面とプール底面とが一体になってプール底部全体が平坦となるよう構成している。駆動装置が可動壁体を支持する位置は可動壁体の重心位置より上方位置となるように設けており、駆動装置は駆動モータとスクリュージャッキとの組合せによって構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、競泳用等のプールにおいて、コース長を仕切ってその長さを調整可能とする可動壁を具備するプールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、競技用プールのうち、コース長が50mと長いプールにおいて、コース長をたとえば半分の25mに短縮させることができるプールの要請があった。これは、日本水泳連盟等の公認施設を利用した競泳の公認競技において、コース長50mのプールで行う競技と、短水路と呼ばれる25mプールで行われる競技とがあり、一つのプールで長さを変更させることができるプールが必要であったからである。
【0003】
このような要請に対応できる従来のプールとしては、たとえば、特許文献1に示すように、可動壁をプール短辺側に配置させておき、プール長を区切る場合にはプール長辺側中央へ移動させることができるよう構成された移動壁を有するプールが開示されている。
さらに、特許文献2に示すように、プールの移動壁は、10人程度が載っても沈まない程度の浮力を有する可動壁として設けられ、この可動壁を左右に移動させるためのスクリューを具備するプールの可動壁が開示されている。
【特許文献1】特開2000−192679号公報
【特許文献2】特開2004−270287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成のプールでは、プールの短辺側に移動壁の収納部を設けなければならず、この短辺側に必要となるスタート台等の機器を設置するためには、プールの短編側に移動壁があると、スタート台等の設置に制約を受けるものであった。特に、公認競技を行う場合には、必要となるスタート台が装備出来ないという問題点があった。
【0005】
また、可動壁の移動のためのレールをプール長辺に沿って配置する必要があり、壁面に横長に連続した凹部が生ずることにより、競泳時のプール内の安全面が劣ることとなると共に、上記レールに対する車輪等の移動装置は、可動壁の外側に設けられることとなり、これらの装置が露出していることに対する安全面や体裁面での欠陥があった。
さらに、特許文献2記載のプールでは、比較的簡単な構成の移動装置とすることができるものの、水面に浮かばせて左右に移動させる構成とされているので、可動壁の位置を確実に固定させることができないという欠点があった。このため、この可動壁を具備するプールでは、プール長を確実に設定出来ないことにより、公認施設としての認定を受けることができず、公認競技を行うこと出来ないという欠点もあった。
なお、移動壁がプールの側部に設けられたワイヤーでつり上げられる構成のものであっても、可動壁は確実に固定出来ないため、上記と同様の問題が有り、公認競技を行うことができないという欠点があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、プールの長辺方向の中間に、プール長を仕切る可動壁体を上昇させた位置で確実に支持した可動壁を設けることができるとともに、安全性の高い視覚性の良い可動壁を有するプールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、これらの目的を達成するため、この発明の可動壁を有するプールでは、プール床側から水面方向に上下動自在な可動壁体を設け、当該可動壁体を下側から支持するとともに、可動壁体を往復動させる駆動装置を設置し、上記可動壁体は最下降時にプール底部に格納され、かつ、可動壁体が格納された状態では、可動壁体の上面とプール底面とが一体になってプール底部全体が平坦となるよう構成し、また上記駆動装置が可動壁体を支持する位置は可動壁体の重心位置より上方位置となるように設けており、さらに当該駆動装置は、駆動モータとスクリュージャッキとの組合せによって構成していることを特徴としている。
【0008】
また、この発明の請求項2記載の可動壁を有するプールでは、可動壁体は、プールの水深以上の高さに形成し、かつ、プールの長手方向に直交する方向に設けた一対の壁部と、これらの壁部の上部を連結する頂部とからなり、可動壁体を水面側に上昇させた状態で、可動壁体の下部はプール底部に設けた格納部側に位置させる構成としているとともに、可動壁体に対してスクリュージャッキを配置する内側部分は、可動壁体の短辺方向に沿う断面形状を下向きコ字状の空間に形成し、この内部の最奥部にスクリュージャッキ駆動部との接続部分を設けていることを特徴としている。
さらに、この発明の請求項3記載の可動壁を有するプールでは、可動壁体の頂部は平面視長方形に構成し、スクリュージャッキの駆動部を、長手方向の外方寄りで、かつ短辺方向の外方寄りとなる4か所に、頂部の内側の四隅寄り位置となるように配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記発明の可動壁を有するプールでは、可動壁体は最下降時にプール底部に格納され、かつ、可動壁体が格納された状態では、可動壁体の上面とプール底面とが一体になってプール底部全体が平坦となるように構成しているので、プールの安全性が高まるとともに、競泳者に安全性や視覚性での悪影響を及ぼす虞を解消できる。
また、駆動装置が可動壁体を支持する位置は可動壁体の重心位置より上方位置となるように設けているので、可動壁体を確実に安定良く支持できるとともに、当該駆動装置は駆動モータとスクリュージャッキとの組合せによって構成しているので、スクリュージャッキは土台等に対し確実に固定設置されているものであるから、可動壁体を上昇させた状態であっても、ワイヤー等による駆動装置に比べて固定状態をはるかに確実に維持することができる。
【0010】
このため、当該可動壁体を上昇させた状態であっても、プール長が変化する虞がないので、公認プールとしての認定を受けることができる。
さらに、請求項2の可動壁を有するプールでは、可動壁体は、プールの水深以上の高さに形成し、かつ、プールの長手方向に直交する方向に設けた一対の壁部と、これらの壁部の上部を連結する頂部とからなり、可動壁体を水面側に上昇させた状態で、可動壁体の下部はプール底部に設けた格納部側に位置させる構成としているので、可動壁体の下部はプール底部の格納部に収容状態のままとなっており、可動壁体の下部を確実に固定させることができるとともに、水面側から底部側までの全体を壁部として構成することができ、可動壁体の下部に空間が生ずることもなく、競泳者に対する安全な構成の可動壁体を提供することができ、安全面、視覚性の優れたプールを提供できる。
また、可動壁体に対してスクリュージャッキを配置する内側部分は、可動壁体の短辺方向に沿う断面形状を下向きコ字状の空間に形成し、この内部の最奥部にスクリュージャッキ駆動部との接続部を設けているので、可動壁体の重心位置より上方位置をスクリュージャッキが支持しているので、可動壁体をより安定良く支持することができる。そして、可動壁体を上下動させる際も、可動壁体が不安定になる虞なく作業を行うことができる。
【0011】
さらに、駆動装置として駆動モータとスクリュージャッキとから構成しているので、ワイヤー等を用いる従来の構造に比べて、スクリュージャッキで確実に可動壁体を支持することが出来るので、可動壁体が所定の移動方向からずれる虞はなく、可動壁体を確実に上下移動させることができる。
さらに、請求項3記載の可動壁を有するプールにおいては、可動壁体の上部は平面視長方形に構成し、スクリュージャッキの駆動部を、長手方向の外方寄りで、かつ短辺方向の外方寄りとなる4か所に、上部の内側で、四隅寄り位置となるように配置したことにより、可動壁体を安定良く支持する構成のプールが提供できる。
【0012】
したがって、これらの構成により、可動壁をプールの長手方向の中間部において、可動壁体を上昇させた状態で確実に設置することができるので、日本水泳連盟等の公認施設の認定を受けやすくなるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次いで、この発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1はこの発明の実施態様の可動壁を有するプールの要部を示す概略断面図、図2は要部の概略側断面図、図3は図2の概略平面図、図4は要部の平面図である。
このプールAは、たとえば競泳用等に用いられるコース長が50mのプールであって、この発明の可動壁1を除くその他の構造は従来のプールと同様のものである。
【0014】
そして、この発明の可動壁1は、プールAの長手方向中央の底部に、長手方向に直交する方向に可動壁体2の収容部となる凹所3を平面視長方形に設け、凹所3の短辺側の壁B側に、可動壁体2を上下動させるための駆動装置4を設けている。
可動壁体2は、周囲の壁となる垂直方向の4面には、概略板状に形成した壁部21を設け、これら壁部21の上部を連結する状態に頂部22を設けている。壁部21の高さは、プールAの水深より大きくなるように形成しており、可動壁体2を上昇させた時、頂部22が水面上に露出した状態でも、壁部21の下部は凹所3内に位置するよう形成している。この構成により、可動壁体2の縦断面形状は、壁部21で囲まれた内部に空間を有する構成に形成することができる。特に、駆動装置4のスクリュージャッキ43を設けた位置においても、可動壁体2の短辺方向の断面形状を下向きコ字状に形成することができる(図1参照)。
【0015】
凹所3は、上記可動壁体2を下降させた状態で、可動壁体2の全体が収容可能な大きさに形成しているとともに、可動壁体2を収容した状態で、凹所3以外のプールAの底面Cと、可動壁体2の頂部22とを一体面にすることができ、可動壁体2を使用しないときに、プールA底面全体をフラットにしておくことができるように構成している。
このように構成することにより、可動壁体2は最上端まで上昇させた状態であっても、可動壁体2の下部に空間が生ずることはないので、可動壁体2の下部に人が誤って入ってしまうような事故を未然に防止することができる。
【0016】
駆動装置4は、図2〜図4に示すように、駆動モータ41と駆動軸42、スクリュージャッキ43とより構成している。駆動モータ41は、可動壁体2の上昇、下降を正確に制御するため、例えばステッピングモータ等の回転制御可能な汎用品を用いて構成することができる。スクリュージャッキ43は、可動壁体2のコ字状となった内部において、頂部22の内側の概略四隅位置となる4個所にそれぞれ当接するよう配置している。この当節位置Pは、可動壁体2の重心位置から上方位置となることにより、可動壁体2を安定良く支持することができるものである。
【0017】
スクリュージャッキ43は、駆動モータ41からの回転力を駆動軸42を介してスクリュージャッキ43の先端が上下動して、可動壁体2を上下動させることができる。これらのスクリュージャッキ43も汎用品を用いることができる。
駆動軸42は、1台の駆動モータ41に対してスクリュージャッキ43の2台を同時に駆動できるように分配形式を採用している。したがって、駆動モータ41は、可動壁体2の両側に2台配置することにより、4台のスクリュージャッキ43を駆動させることができる。
【0018】
したがって、このように構成することにより、4台のスクリュージャッキ43によって可動壁体2を安定良く支持することができるものである。
また、可動壁体2の上下動を確実に案内するための構成として、図4の符号5に示すように、プールの壁B側に垂直方向のV字レールを設け、当該V字レールに案内されて移動するガイドを可動壁体2側に設けておくことができる。このように構成することにより、可動壁体2を上下動させる際、可動壁体2を確実に移動させることができる。このようなV字レールおよびガイドは、プールの壁Bと可動壁体2の短辺側の壁との間に設けているので、競泳者が居るプール内方へ露出することもなく、安全面を確保した構成とすることができる。
【0019】
なお、可動壁体2を上昇させた状態で、可動壁体2の位置決め、及び固定するため、図5に示すように、プールの壁B側に設けた凹部bに対して嵌合させる固定部6を設けることができる。
この固定部6は、可動壁体2の上記凹部bに嵌合・離反可能な固定端61を設け、これを操作する操作部62を設けている。操作部62は、ハンドル63とハンドル63に連接したパンタグラフ式のジャッキ64と、ジャッキ64と上記固定端61とを連結する連結棒65とからなっている。
【0020】
これにより、ハンドル63を回転させて、ジャッキ64を駆動し、固定端61を凹部bに嵌合させることにより、可動壁体2が上昇した状態を確実に維持することができ、プールのコース長の変動を確実に防止することができる。このため、コース長を短縮させた状態であっても、公認プールとして認定を受けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施態様の可動壁を有するプールの要部を示す概略断面図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】要部の平面図である。
【図5】固定部の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 可動壁
2 可動壁体
3 凹所
4 駆動装置
21 壁部
22 頂部
41 駆動モータ
43 スクリュージャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水泳用プール内のプール床側から水面方向に上下動自在な可動壁体を設け、当該可動壁体を下側から支持するとともに、可動壁体を往復動させる駆動装置を設置し、上記可動壁体は最下降時にプール底部に格納され、かつ、可動壁体が格納された状態では、可動壁体の上面とプール底面とが一体になってプール底部全体が平坦となるよう構成し、また上記駆動装置が可動壁体を支持する位置は可動壁体の重心位置より上方位置となるように設けており、さらに当該駆動装置は、駆動モータとスクリュージャッキとの組合せによって構成していることを特徴とする可動壁を有するプール。
【請求項2】
可動壁体は、プールの水深以上の高さに形成し、かつ、プールの長手方向に直交する方向に設けた一対の壁部と、これらの壁部の上部を連結する頂部とからなり、可動壁体を水面側に上昇させた状態であっても、可動壁体の下部はプール底部に設けた格納部側に位置させる構成としているとともに、可動壁体に対してスクリュージャッキを配置する内側部分は、可動壁体の短辺方向に沿う断面形状を下向きコ字状の空間に形成し、この内部の最奥部にスクリュージャッキ駆動部との接続部分を設けている請求項1記載の可動壁を有するプール。
【請求項3】
可動壁体の頂部は平面視長方形に構成し、スクリュージャッキの駆動部を、長手方向の外方寄りで、かつ短辺方向の外方寄りとなる4か所に、頂部の内側の四隅寄り位置となるように配置した請求項1または2記載の可動壁を有するプール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36207(P2013−36207A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172267(P2011−172267)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(595099100)株式会社ブレイン (1)