説明

可動幅木装置付き足場板

【課題】幅木を容易に設置できる可動幅木装置付き足場板を提供する。
【解決手段】可動幅木装置付き足場板は、略水平状態に配置される長尺の足場板2aと、足場板2aの側面21に連結した昇降自在な可動幅木装置30と、を備える。可動幅木装置30は、シート状の防護ネット4nを格納する巻取り装置40を上部に有する。巻取り装置40は、防護ネット4nを巻回する回転ドラム41と、防護ネット4nが出入り可能な開口部を下端部に設けるケース42と、ケース42の周囲を囲う幅木ケース43と、を有する。幅木ケース43が引き上げられて足場板2aから所定の高さに維持された状態では、防護ネット4nは、その端部が巻取り装置40から引き出されて、幅木ケース43と足場板2aとの間隙を防護するように、防護ネット4nの端部を足場板2aの側面21に近接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動幅木装置付き足場板に関する。特に、建物の外壁面に沿って建設現場に仮設され、複数の鋼管及び足場部材を組み合わせて階層的に構成する枠組足場などに用いられる可動幅木装置付き足場板の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、建設現場に仮設される枠組足場は、対向させた建枠の両側垂直面を「交差筋交い」で結合して枠組を補強すると共に、建枠を上方へ必要な高さだけ順次継ぎ足すことによって構築されている。
【0003】
近年では、足場などから作業員が墜落又は転落することを未然に防止する対策が強化されている。そして、足場の種類に対応した墜落防止措置が労働安全衛生規則で義務付けられている。例えば、枠組足場では、交差筋交いの下部の隙間からの墜落を防止するため、交差筋交いに加え、「下さん」や「幅木」の設置が義務付けられている。又、「手すり枠」の設置も義務付けられている。
【0004】
この規則により、枠組足場では、対向する一対の幅木が立設するように垂直方向に延びて、略水平面に敷設された作業床の長手方向の両縁に一対の幅木を配置している。これにより、交差筋交いの下部の隙間からの墜落防止を強化できる。
【0005】
一般に、このような幅木は、作業床として敷設された帯状に延びる鋼製の長尺の足場板が使用(流用)されている。そして、複数の幅木が長手方向に連設されて、所定の長さを有する、一対の幅木に防護される作業床を有する枠組足場を構成していた。
【0006】
上述したような、足場板を使用した幅木は、足場バンドや番線を用いて、人手により枠組足場に取り付けている。しかし、このような幅木の取り付け作業は、非常に手間(時間)を要するばかりでなく、幅木を安定的に確実に取り付けるためには、熟練を要するという不具合があった。
【0007】
上述したような不具合を解消するため、枠組足場に簡単に取り付けることができ、施工性が格段に向上すると共に、確実でばらつきの無い取り付けが可能な枠組足場用幅木が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1による枠組足場用幅木は、作業床の幅方向の両翼に配置される一対の長尺の傾斜幅木を備えている。これらの傾斜幅木は、その長手方向の両翼に一対の鉤状の係脱金物を取り付けている。そして、これらの係脱金物は、傾斜幅木の面から離間して、一対の足場支柱にその内側から係脱可能な半円弧状のフックを有している。又、このフックの先端縁は、斜めにカットした傾斜縁を形成している。
【0009】
特許文献1による枠組足場用幅木は、傾斜幅木の片側を下げて、一方の係脱金物を一方の足場支柱に係止した後、他方の係脱金物を他方の足場支柱を挟むように落とし込むことにより、傾斜幅木を足場に簡単に設置できる、としている。
【0010】
又、幅木がその長手方向に伸縮する可動幅木装置としては、可動フェンスの下側の隙間を塞いで小さな積み荷の落下を確実に防止し、可動フェンスの開閉の都度、設置又は撤去する必要のない可動幅木装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
特許文献2による可動幅木装置は、ゲートを開閉する可動フェンスの門柱の下部に巻取部を取り付け、この巻取部から繰り出された幅木シート及び拘束ワイヤをフェンス本体の可動端の引き手柱に繋着している。幅木シートは、フェンス本体と床面との隙間を塞ぐように張設され、拘束ワイヤは、フェンス本体の下部背面に沿って張設される。巻取部は、幅木シート及び拘束ワイヤの内、幅木シートにのみ繰り出し方向の引っ張り力が作用した場合に、幅木シートを巻き取る巻取ドラムの回転を拘束するロック機構を備える。
【0012】
特許文献2による可動幅木装置は、フェンス本体の開閉動作に追随して、幅木シートが巻取部により繰り出され、又は巻き取られるので、従来のように仮設板などを幅木として用いる場合と異なり、フェンス本体を開閉する都度に、仮設板を設置又は撤去する必要がないので便利である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−213927号公報
【特許文献2】特開平11−190132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1による枠組足場用幅木は、傾斜幅木を足場に簡単に設置又は撤去できるが、結局は、傾斜幅木を現場で組み立てる必要があり、傾斜幅木を枠組足場に搬入又は搬出する必要があるという問題がある。
【0015】
幅木を足場板と一体に構成すれば、足場板と幅木を別々に搬入又は搬出する必要が無くなり、かつ、足場板の保管スペースを幅木の保管スペースとして利用でき、枠組足場の構成品の保管スペースを削減できる。又、幅木を足場板と一体に構成し、幅木を容易に設置できるようになれば、設置時間を短縮できる。
【0016】
又、特許文献2による可動幅木装置は、枠組足場用幅木として利用することは可能である。しかし、特許文献2による可動幅木装置は、その構造からして、幅木シートの下端縁と床面(作業床)との間に隙間ができ、小さな積み荷程度の落下を防止することはできても、小さいレンチ(工具)などの落下を防止することは困難であるという問題がある。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0017】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、幅木を容易に設置できると共に、小型の物品が落下することを防止する可動幅木装置付き足場板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、作業床を構成する足場板の幅方向の片翼に昇降自在な可動幅木装置を設けると共に、可動幅木装置の上部に防護ネットを巻回状態で配置し、可動幅木装置が起立した状態では、作業床の床面と幅木の間隙を防護ネットで覆うことにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな可動幅木装置付き足場板を発明するに至った。
【0019】
(1)本発明による可動幅木装置付き足場板は、略水平状態に配置され、帯状に延びる長尺の足場板と、この足場板の幅方向の側面に連結した昇降自在な可動幅木装置と、を備え、この可動幅木装置は、前記足場板の長手方向の長さと略同じ長さを設けるシート状の防護ネットを格納する巻取り装置と、この巻取り装置を前記足場板に対して略平行に移動可能な昇降機構と、を有し、前記巻取り装置は、前記防護ネットを巻回する方向に回転力を付勢された回転ドラムと、この回転ドラムを囲うと共に、この回転ドラムの軸方向と略平行に開口し、前記防護ネットが出入り可能な開口部を下端部に設ける筒状のケースと、このケースの両端部を支持すると共に、当該ケースの周囲を囲う幅木ケースと、を有し、前記幅木ケースが引き上げられて前記足場板から所定の高さに維持された状態では、前記防護ネットは、その端部が前記巻取り装置から引き出されて、前記幅木ケースと前記足場板との間隙を防護するように、当該防護ネットの端部を前記足場板の側面に近接させる。
【0020】
(2)前記昇降機構は、一端部が前記足場板の側面に回動自在に連結する一対の対向する第1アームと、一端部が前記第1アームの他端部に回動自在に連結し、他端部が前記幅木ケースの長手方向の両翼に回動自在に連結する一対の対向する第2アームと、を備え、前記第1アームと前記第2アームとが直列に起立した状態では、前記幅木ケースが前記足場板から所定の高さに維持され、前記第1アームと前記第2アームの連結点が互いに近づく状態では、前記幅木ケースが前記足場板に向かって移動することが好ましい。
【0021】
(3)前記防護ネットは、その端部に取り付けられ、前記ケースの開口部に当接して当該防護ネットの巻き取りを阻止すると共に、当該防護ネットの引き出しが容易な把持バーを有することが好ましい。
【0022】
(4)前記第1アームは、C型チャンネル状の枠部材からなり、前記第2アームは、対向する一組の帯板部材からなり、一対の前記第1アームは、前記把持バーの両端部を案内するように、それらの開口を対向配置し、一対の前記第2アームは、前記把持バーの両端部を案内するように、一組の前記帯板部材が所定の離間距離を有して配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による可動幅木装置付き足場板は、足場板に連結した昇降自在な可動幅木装置を備え、この可動幅木装置は、防護ネットを格納すると共に、足場板に対して略平行に移動可能な巻取り装置を上部に有するので、巻取り装置が引き上げられて足場板から所定の高さに維持された状態では、巻取り装置を幅木として機能できる。
【0024】
又、本発明による可動幅木装置付き足場板は、可動幅木装置が起立した状態で、防護ネットの端部を巻取り装置から引き出して、足場板と巻取り装置の間隙を防護ネットで覆うことにより、小型の物品が落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による可動幅木装置付き足場板を適用した枠組足場の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す斜視図である。
【図3】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す正面図であり、左側の要部を示すと共に、巻取り装置を縦断面で示している。
【図4】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す左側面図である。
【図5】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す正面図であり、巻取り装置が足場板から所定の高さに維持された状態図である。
【図6】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す正面図であり、巻取り装置が足場板に収納された状態図である。
【図7】前記実施形態による可動幅木装置に備わる巻取り装置の構成を示す左側面図である。
【図8】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す左側面図であり、巻取り装置が足場板に収納された状態図である。
【図9】前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の概略の構成を示す正面図であり、図9(A)は、巻取り装置が足場板に収納された状態図、図9(B)は、巻取り装置が上昇する途中の状態図、図9(C)は、上昇した巻取り装置から防護ネットが引き出されている状態図、図9(D)は、巻取り装置と足場板の間に防護ネットを張設した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[可動幅木装置付き足場板の構成]
(枠組足場の構成)
最初に、本発明の一実施形態による可動幅木装置付き足場板が適用される枠組足場の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による可動幅木装置付き足場板を適用した枠組足場の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す斜視図である。
【0027】
図1を参照すると、実施形態による枠組足場100は、複数の鋼管及び足場部材を組み合わせて階層的に構成している。枠組足場100は、一対の鋼管を門型に溶接した複数の建枠1aを備えている。実施形態による枠組足場100は、建枠1aを三段に積層している。最下段の建枠1aには、ジャッキベース11aを設けている。最上段の建枠1aには、手すり12aを設けている。
【0028】
又、図1を参照すると、建物(図示せず)の外壁面に沿って、複数の建枠1aを仮設している。実施形態による枠組足場100は、六列の建枠1aを仮設している。そして、列方向に対向する一対の建枠1a・1aが交差筋交い1bで結合されて、枠組足場100の枠組が補強されている。
【0029】
図1を参照すると、枠組足場100は、略水平状態に作業床2を配置している。実施形態による枠組足場100は、作業床2を三段に階層している。実態として、作業床2は、列方向に対向する一対の建枠1a・1aに敷設される、帯状に延びる長尺の足場板2aで構成されている。
【0030】
図1又は図2を参照すると、枠組足場100は、作業床2の長辺側の両縁部から略垂直方向に、一対の可動幅木装置30・30を立設している。対向するこれらの可動幅木装置30・30は、作業床2の両翼を防護している。又、足場板2aは、それらの長手方向にも連設されている。これにより、一対の可動幅木装置30・30は、交差筋交い1bの下部の隙間からの墜落を防止できる。なお、図1では、一方の可動幅木装置30の図示を省略している。又、図2では、一方の可動幅木装置30を部分的に示している。
【0031】
図1を参照すると、可動幅木装置30の上方には、可動幅木装置30と略平行に「下さん5」を配置している。又、作業床2には、階上又は階下に作業員が移動可能な一組の階段枠6・7を設けている。
【0032】
(可動幅木装置の構成)
次に、本発明の一実施形態による可動幅木装置の構成を説明する。図3は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す正面図であり、左側の要部を示すと共に、巻取り装置を縦断面で示している。
【0033】
図4は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の構成を示す左側面図である。図5は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す正面図であり、巻取り装置が足場板から所定の高さに維持された状態図である。
【0034】
図6は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す正面図であり、巻取り装置が足場板に収納された状態図である。図7は、前記実施形態による可動幅木装置に備わる巻取り装置の構成を示す左側面図である。図8は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の要部を示す左側面図であり、巻取り装置が足場板に収納された状態図である。
【0035】
図2から図5を参照すると、実施形態による可動幅木装置30は、シート状の防護ネット4nを格納する巻取り装置40を有している。防護ネット4nは、足場板2aの長手方向の長さと略同じ長さを有している。又、可動幅木装置30は、足場板2aの幅方向の側面21に連結し、足場板2aに対して巻取り装置40を略平行に移動可能な昇降機構3を有している。
【0036】
(昇降機構の構成)
図2から図5を参照すると、昇降機構3は、一対の対向する第1アーム31・31を備えている。第1アーム31は、C型チャンネル状の枠部材で構成されている。そして、一対の第1アーム31・31は、それらの開口311・311が対向するように配置されている。
【0037】
又、図2から図5を参照すると、昇降機構3は、一対の対向する第2アーム32・32を備えている。第2アーム32は、対向する一組の帯板部材320・320で構成されている。そして、一対の第2アーム32・32は、一組の帯板部材320・320が所定の離間距離を有して配置されている。
【0038】
図2又は図4及び図8を参照すると、足場板2aは、一対の軸ピン21a・21aを側面21から突出している。軸ピン21aは、足場板2aの側面に片持ち状に支持されている。そして、第1アーム31の一端部は、軸ピン21aに回動可能に連結している。
【0039】
又、図4を参照すると、足場板2aは、ストップピン2pを側面21から突出している。図3を参照すると、第1アーム31の背面にストップピン2pが当接すると、軸ピン21aを中心に、第1アーム31が垂直状態以上に回動することを阻止できる。なお、図示はしないが、図3の右側にも同様のストップピン2pを設けており、第1アーム31が垂直状態以上に回動することを阻止できる。
【0040】
図2又は図4を参照すると、昇降機構3は、第1アーム31の他端部と第2アーム32の一端部とを回動可能に連結する連結ピン31aを有している。連結ピン31aは、実体としてリベットが好ましく用いられる。そして、基端部にフランジ部(鍔部)31fを形成する連結ピン31aが帯板部材320の外壁から挿入され、帯板部材320と第1アーム31の側面板310を貫通した後に、連結ピン31aの先端部を側面板310の内壁にカシメ付けることにより、側面板310と帯板部材320とを回動可能に連結している。
【0041】
同様に、図2又は図4及び図7を参照すると、昇降機構3は、第2アーム32の他端部と後述する幅木ケース43の端部とを回動可能に連結する連結ピン32aを有している。連結ピン32aは、実体としてリベットが好ましく用いられる。そして、基端部にフランジ部(鍔部)32fを形成する連結ピン32aが幅木ケース43の外壁から挿入され、幅木ケース43と帯板部材320を貫通した後に、連結ピン32aの先端部を帯板部材320の内壁にカシメ付けることにより、幅木ケース43と帯板部材320とを回動可能に連結している。
【0042】
図2又は図3及び図6を参照すると、足場板2a、幅木ケース43、一対の第1アーム31・31、及び一対の第2アーム32・32は、足場板2aと幅木ケース43とが平行に移動する平行クランク機構(又はパンタグラフ機構)を構成している。そして、図2又は図3に示されるように、第1アーム31と第2アーム32とが直列に起立した状態では、幅木ケース43は、足場板2aから所定の高さに維持される。
【0043】
図3又は図5を参照すると、第2アーム32の先端部には、鉤状の爪32nを設けている。一方、図3を参照すると、後述する保持ブロック44には、爪32nを係止可能な鉤状の爪44nを設けている。第2アーム32の爪32nに爪44nが当接すると、連結ピン32aを中心に、第2アーム32が垂直状態以上に回動することを阻止できる。なお、図示はしないが、図3の右側にも同様の爪32n及び爪44nを設けており、第2アーム32が垂直状態以上に回動することを阻止できる。
【0044】
一方、図9(B)に示されるように、第1アーム31と第2アーム32の連結点が互いに近づく状態では、幅木ケース43は、足場板2aに向かって平行に移動できる。そして、図6又は図8に示されるように、第1アーム31と第2アーム32が鋭角に屈折された状態で、幅木ケース43を足場板2aの側面21に略収納できる。
【0045】
図2又は図3及び図6を参照すると、帯板部材320は、連結ピン32aが係合する異形穴321を一方の端部に形成している。連結ピン32aの軸部は、異形穴321に形成された円弧部に回動可能に連結している。連結ピン32aは、その軸部の外周が所定幅の弦でカットされ、異形穴321に形成された所定幅の切り欠き部に嵌合して、第1アーム31と第2アーム32との直列状態が維持される。つまり、幅木ケース43は、図3又は図5に示された状態より、若干下がった位置で保持される。
【0046】
(巻取り装置の構成)
図1から図4及び図6を参照すると、巻取り装置40は、回転ドラム41と筒状のケース42を有している。ケース42は、回転ドラム41の周囲を囲っている。又、巻取り装置40は、ケース42の周囲を囲うU字状の幅木ケース43を有している。
【0047】
図2又は図3を参照すると、幅木ケース43は、長手方向の両翼に一対の保持ブロック44・44を内部に取り付けている。これらの保持ブロック44・44は、固定軸45の両端部を支持している。固定軸45は、軸受45aを介して、回転ドラム41を回転可能に連結している。又、一対の保持ブロック44・44は、ケース42の両端部を支持している。
【0048】
図7を参照すると、回転ドラム41は、シート状の防護ネット4nを巻回している。図3を参照すると、回転ドラム41は、コイルばね46を内蔵している。コイルばね46は、固定軸45の外周を巻回するように配置されている。コイルばね46の一端部は、固定軸45に固定され、コイルばね46の他端部は、回転ドラム41に固定されている。そして、コイルばね46は、防護ネット4nを回転ドラム41に巻回する方向に回転力を付勢している。なお、図3の右側にも、図3に示した構成のコイルばね46が配置されている。
【0049】
図4又は図7を参照すると、ケース42は、その下端部に開口部421を設けている。開口部421は、回転ドラム41の軸方向と略平行に開口している(図3参照)。又、開口部421には、防護ネット4nが出入り可能になっている。
【0050】
図4又は図7及び図8を参照すると、防護ネット4nは、その端部に把持バー4pを取り付けている。把持バー4pは、ケース42の開口部421に当接して、防護ネット4nの巻き取りを阻止できる。又、把持バー4pを把持して、防護ネット4nを容易に引き出すことができる。なお、図2又は図5を参照すると、把持バー4pを把持し易いように、幅木ケース43の中央部の側面には、切り欠き部431を開口している。
【0051】
図3を参照すると、把持バー4pを把持して、巻取り装置40から防護ネット4nを引き出す場合に、把持バー4pを任意の位置で停止できると共に、この停止位置から把持バー4pを少し引くと、防護ネット4nが回転ドラム41に巻回されるように、図示しないクラッチ装置を回転ドラム41の内部に設けている。
【0052】
図3を参照して、例えば、前記クラッチ装置は、固定軸45と同軸にブレーキシャフトを回転ドラム41の中央部に設け、このブレーキシャフトに捩りコイルばね状のブレーキばねを締着又は弛緩可能に嵌め合わせ、防護ネット4nの引き出し時と巻き取り時に、このブレーキばねを弛緩させ、防護ネット4nの停止時に、このブレーキばねを締着させるカム装置を設けてもよい。なお、ブレーキシャフト、ブレーキばね、及びカム装置は、いずれも図示していない。
【0053】
図3を参照して、前記クラッチ装置は、ブレーキシャフトに円筒状のカム筒を摺動自在に嵌め合わせ、このカム筒と一体に回転するように、ブレーキばねの一端部をカム筒に嵌め合わせ、カム筒の外周にカム溝を設けると共に、回転ドラム41と一体に回転するカム突起をこのカム溝に連結し、このカム突起は、カム溝に案内されて、防護ネット4nの引き出し時と巻き取り時に、このブレーキばねの両端部のいずれか一方に作用してブレーキばねを弛緩させ、防護ネット4nの停止時に、ブレーキばねの一端部に作用してブレーキばねを締着させるように構成することもできる。
【0054】
例えば、前記カム溝は、カム突起の行き行程と帰り行程が不可逆なループしたハート状のカム溝からなることが好ましく、このハート状のカム溝にV字状に分岐するV字形分岐片を設け、カム突起がV字形分岐片の一方の頂点に位置しているときは、ブレーキばねが弛緩して、回転ドラム41から防護ネット4nを引き出すことができる。
【0055】
又、防護ネット4nを引き出す過程で、把持バー4pを少しだけ戻すと、カム突起がV字形分岐片の底部に移動することにより、ブレーキばねが締着して、防護ネット4nを所定の位置に停止できる。防護ネット4nが静止した状態から把持バー4pを引くと、カム突起がV字形分岐片の他方の頂点に移動し、ブレーキばねが弛緩して、防護ネット4nを回転ドラム41に巻き取ることができる。
【0056】
このように、巻取り装置40は、防護ネット4nを引き出して、任意の位置で停止でき、把持バー4pを引いて、防護ネット4nを巻き取る動作を繰り返すことができる(図3参照)。
【0057】
図3又は図4を参照すると、防護ネット4nは、網目が細かいメッシュシートを用いることが好ましく、例えば、このメッシュシートは、屈曲容易な強靭性の繊維で格子状に織られている。強靭性の繊維とは、靭性の高い繊維であってよく、スチール繊維、カーボン繊維、ガラス繊維、ポリエステルやアラミド繊維などの有機繊維、その他の繊維を含むことができる。
【0058】
[可動幅木装置付き足場板の作用]
次に、実施形態による可動幅木装置付き足場板の操作方法を説明しながら、可動幅木装置付き足場板の作用及び効果を説明する。図9は、前記実施形態による可動幅木装置付き足場板の概略の構成を示す正面図であり、図9(A)は、巻取り装置が足場板に収納された状態図、図9(B)は、巻取り装置が上昇する途中の状態図、図9(C)は、上昇した巻取り装置から防護ネットが引き出されている状態図、図9(D)は、巻取り装置と足場板の間に防護ネットを張設した状態図である。
【0059】
図9(A)を参照して、足場板2aを枠組足場100(図1参照)に設置した段階では、第1アーム31と第2アーム32が鋭角に屈折され、巻取り装置40は、足場板2aの側面21に略収納されている(図8参照)。
【0060】
次に、図9(B)を参照して、幅木ケース43を上方に引き上げると、足場板2aに対して巻取り装置40を略平行に移動できる。そして、図3を参照して、第1アーム31の回転がストップピン2pで阻止されると共に、第2アーム32の回転が爪44nで阻止されると、図9(C)に示されるように、第1アーム31と第2アーム32が垂直状態に配置される。次に、図9(C)を参照して、巻取り装置40が最も上昇した位置から若干下げると、第1アーム31と第2アーム32が係合して、巻取り装置40が所定の高さに維持される(図3参照)。
【0061】
次に、図9(C)を参照して、把持バー4pを把持して、防護ネット4nを巻取り装置40から引き出す。図2を参照すると、一対の第1アーム31・31は、把持バー4pの両端部を案内するように、それらの開口311・311を対向配置していると共に、一対の第2アーム32・32は、把持バー4pの両端部を案内するように、一組の帯板部材320・320が所定の離間距離を有して配置されている。したがって、防護ネット4nを巻取り装置40から引き出すことが容易であり、便利である。
【0062】
次に、図9(D)を参照して、把持バー4pを把持して防護ネット4nを引き出す過程において、把持バー4pを少しだけ戻すと、前述したように、防護ネット4nを停止できる。把持バー4pは、足場板2aに近接した位置で停止させることが好ましく、巻取り装置40と足場板2aの間に防護ネット4nを張設できる(図4参照)。
【0063】
図9(D)を参照して、防護ネット4nが静止した状態から把持バー4pを引くと、防護ネット4nを巻取り装置40に巻き取って格納できる(図7参照)。そして、第1アーム31と第2アーム32を屈折して、図9(A)に示すように、可動幅木装置30を初期の状態に復帰できる。
【0064】
実施形態による可動幅木装置付き足場板は、足場板2aに連結した昇降自在な昇降機構3を備え、可動幅木装置30は、防護ネット4nを格納すると共に、足場板2aに対して略平行に移動可能な巻取り装置40を上部に有するので、巻取り装置40が引き上げられて足場板2aから所定の高さに維持された状態では、巻取り装置40を幅木として機能できる。
【0065】
又、実施形態による可動幅木装置付き足場板は、昇降機構3が起立した状態で、防護ネット4nの端部を巻取り装置40から引き出して、足場板2aと巻取り装置40の間隙を防護ネット4nで覆うことにより、小型の物品が落下することを防止できる。
【0066】
実施形態による可動幅木装置付き足場板は、幅木相当品と足場板とを一体に構成しているので、従来のように、足場板と幅木を別々に搬入又は搬出する必要が無くなり、かつ、足場板の保管スペースを幅木の保管スペースとして利用できる。そして、枠組足場の構成品の保管スペースを削減できる。
【0067】
又、実施形態による可動幅木装置付き足場板は、幅木相当品と足場板とを一体に構成しているので、工具などを使用することなく、幅木相当品を容易に設置でき、設置時間を短縮できる。
【0068】
実施形態による可動幅木装置付き足場板は、可動幅木装置の昇降機構として、一対の第1アームと一対の第2アームとが連動して屈曲する平行クランク機構を開示したが、これに限定されない。可動幅木装置の昇降機構として、複数の管体が軸方向に連結した一対の伸縮ロッドを用いてもよい。
【0069】
管体は、複数の丸パイプで構成してもよく、複数の角パイプで構成してもよい。又、一対の対向する伸縮ロッドは、複数の管体を軸方向に連設すると共に、複数の管体の内の末端の管体を足場板の側面に支持し、この末端の管体に対して、複数の管体の内の先頭の管体に向けて複数の管体を引き出し自在に連結することが好ましい。
【0070】
この伸縮ロッドは、末端の管体から先頭の管体に向けて、口径が段階的に小さくなる、相互に挿嵌された複数の管体で構成することができ、これらの管体は、先頭の管体に向けて一方の端部が縮径された縮径端部と、末端の前記管体に向けて他方の端部が拡径された拡径端部と、を有し、縮径端部の内壁に拡径端部の外壁が阻止されて、伸縮ロッドが伸長した長さが規定される。
【0071】
更に、これらの伸縮ロッドは、対向するスリット状の溝を開口することが好ましく、これらの溝は、把持バー4pの両端部を案内できる程度の巾を有することが好ましい。これにより、防護ネット4nを巻取り装置40から引き出すことが容易であり、便利になる。
【符号の説明】
【0072】
2a 足場板
3 昇降機構
4n 防護ネット
21 側面(足場板の側面)
30 可動幅木装置
40 巻取り装置
41 回転ドラム
42 ケース
43 幅木ケース
421 開口部(ケースの開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平状態に配置され、帯状に延びる長尺の足場板と、
この足場板の幅方向の側面に連結した昇降自在な可動幅木装置と、を備え、
この可動幅木装置は、
前記足場板の長手方向の長さと略同じ長さを設けるシート状の防護ネットを格納する巻取り装置と、
この巻取り装置を前記足場板に対して略平行に移動可能な昇降機構と、を有し、
前記巻取り装置は、
前記防護ネットを巻回する方向に回転力を付勢された回転ドラムと、
この回転ドラムを囲うと共に、この回転ドラムの軸方向と略平行に開口し、前記防護ネットが出入り可能な開口部を下端部に設ける筒状のケースと、
このケースの両端部を支持すると共に、当該ケースの周囲を囲う幅木ケースと、を有し、
前記幅木ケースが引き上げられて前記足場板から所定の高さに維持された状態では、前記防護ネットは、その端部が前記巻取り装置から引き出されて、前記幅木ケースと前記足場板との間隙を防護するように、当該防護ネットの端部を前記足場板の側面に近接させる可動幅木装置付き足場板。
【請求項2】
前記昇降機構は、
一端部が前記足場板の側面に回動自在に連結する一対の対向する第1アームと、
一端部が前記第1アームの他端部に回動自在に連結し、他端部が前記幅木ケースの長手方向の両翼に回動自在に連結する一対の対向する第2アームと、を備え、
前記第1アームと前記第2アームとが直列に起立した状態では、前記幅木ケースが前記足場板から所定の高さに維持され、
前記第1アームと前記第2アームの連結点が互いに近づく状態では、前記幅木ケースが前記足場板に向かって移動する請求項1記載の可動幅木装置付き足場板。
【請求項3】
前記防護ネットは、その端部に取り付けられ、前記ケースの開口部に当接して当該防護ネットの巻き取りを阻止すると共に、当該防護ネットの引き出しが容易な把持バーを有する請求項2記載の可動幅木装置付き足場板。
【請求項4】
前記第1アームは、C型チャンネル状の枠部材からなり、
前記第2アームは、対向する一組の帯板部材からなり、
一対の前記第1アームは、前記把持バーの両端部を案内するように、それらの開口を対向配置し、
一対の前記第2アームは、前記把持バーの両端部を案内するように、一組の前記帯板部材が所定の離間距離を有して配置される請求項3記載の可動幅木装置付き足場板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−167487(P2012−167487A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29373(P2011−29373)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)