説明

可動装置

【課題】
組立が容易で安価に製造することができる可動装置を提供する。
【解決手段】
可動装置11は、装置本体12に開閉可能に設けられた開閉板22,23と、装置本体12に摺動可能に設けられ、前記開閉板22,23と係合して開閉板22,23を開く方向に作動させるスライド部材32と、前記スライド部材32を前記開閉板22,23から離間する方向に付勢する弾性部材36と、通電により加熱され、前記弾性部材36の弾性に抗して前記スライド部材32を前記開閉板22,23に係合する方向に摺動させる形状記憶合金製のアクチュエータ39とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、形状記憶合金製のアクチュエータにより各部分を作動させる可動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可動装置、例えばロボット玩具の腕装置は、各部分を作動させるため、駆動モータ、歯車、リンク等を備えた複雑な駆動機構が内部に組み込まれていた(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平2003−181154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の可動装置は、一つの部分を作動させるのに、複雑な駆動機構を組み込まなければならず、さらに複数の部分を作動させるのには複雑な駆動機構を複数組み込む必要がある。しかし、腕装置等の収納スペースの狭い可動装置は、内部に複数の複雑な駆動機構を組み込むことは困難であり、結局一つの部分しか動かすことができないという問題点があった。また、複雑な駆動機構を組み込むことは容易ではなく、可動装置を安価に製造することはできないという問題点があった。
【0004】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、複雑な駆動機構を組み込む必要がなく、複数の部分を可動することができ、組立が容易で安価に製造することができる可動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に係る可動装置は、上記目的を達成するため、装置本体と、装置本体に開閉可能に設けられた開閉板と、装置本体に摺動可能に設けられ、前記開閉板と係合して開閉板を開く方向に作動させるスライド部材と、前記スライド部材を前記開閉板から離間する方向に付勢する弾性部材と、前記スライド部材と装置本体との間に設けられ、通電により加熱され、前記弾性部材の弾性に抗して前記スライド部材を前記開閉板に係合する方向に摺動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有する。
【0006】
本願請求項2に係る可動装置は、上記目的を達成するため、装置本体と、装置本体に開閉可能に設けられた一対の開閉板と、装置本体に回動可能に設けられ、前記一対の開閉板をそれぞれ回動自在に取り付けた一対のリンク部材と、前記一対のリンク部材間又は一対の開閉板間に取り付けられ、前記一対の開閉板を閉じる方向に付勢する弾性部材と、装置本体に両端が固定され、前記一対のリンク部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して前記一対の開閉板の開く方向に前記一対のリンク部材を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有する。
【0007】
本願請求項3に係る可動装置は、上記目的を達成するため、装置本体と、装置本体に開閉可能に設けられた開閉板と、装置本体に回動可能に設けられ、前記開閉板を回動自在に取り付けたリンク部材と、前記リンク部材又は開閉板に取り付けられ、前記開閉板を閉じる方向に付勢する弾性部材と、装置本体に両端が固定され、前記リンク部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して前記開閉板の開く方向に前記リンク部材を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有する。
【0008】
本願請求項4に係る可動装置は、上記目的を達成するため、装置本体と、装置本体に取
り付けられた屈曲可能な屈曲部材と、前記屈曲部材に設けられ、屈曲部材を伸ばす方向に付勢すると共に弾性に抗して一端が引っ張られると屈曲部材を屈曲させる弾性部材と、装置本体に設けられ、前記弾性部材の一端が連結された摺動部材と、装置本体に両端が固定され、前記摺動部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して摺動部材を摺動させて前記弾性部材の一端を引っ張り、前記屈曲部材を屈曲させる形状記憶合金製のアクチュエータを有する。
【0009】
本願請求項5に係る可動装置は、上記目的を達成するため、前記アクチュエータを通電して加熱させる通電手段を有する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る可動装置は、形状記憶合金製のアクチュエータを通電するだけで、開閉板を開閉させたり、屈曲部材を屈曲させることができるので、これらを動かすための複雑な駆動機構を組み込む必要がなく、組立が容易で安価に製造することができるという効果がある。また、本願発明に係る可動装置は、形状記憶合金製のアクチュエータの両端が装置本体に固定され、当該アクチュエータが開閉板を開閉するリンク部材又は屈曲部材を屈曲させる摺動部材に引っ掛けられるので、アクチュエータの伸縮する力が向上し、しかもアクチュエータの両端に接続される電極が移動しないので、電極に接続される電線が移動して絡まったり、電線が作動する開閉板又は屈曲部材等に挟まって、動作不良を起こすことがないという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明の実施の形態を図1乃至図8に基づいて説明する。図1は、本願発明に係る可動装置をロボット玩具の腕部に組み込んだ状態の一つの実施の形態を示す全体斜視図である。図2は、ロボット玩具の肩部に設けられた可動装置の説明図である。図3は、図2の開閉板が閉じている状態の時の可動装置の説明図であり、(a)は装置本体の下面側から視た図であり、(b)は装置本体の下面側から視た断面図である。図4は、図2の開閉板が開いている状態の時の可動装置の説明図であり、(a)は装置本体の下面側から視た図であり、(b)は装置本体の下面側から視た断面図である。図5は、図2の装置本体の右方から視た説明図であり、(a)は開閉板が閉じてい状態の時の装置本体の断面図であり、(b)は開閉板が開いている状態の時の装置本体の断面図である。図6は、ロボット玩具の上腕部に設けられた可動装置の要部断面図である。図7は、ロボット玩具の下腕部に設けられた可動装置の要部断面図である。図8は、ロボット玩具の手部に設けられた可動装置の説明図である。
【0012】
図3,4に示すように、可動装置11は、装置本体12と、装置本体12に開閉可能に設けられた開閉板22,23と、装置本体12に摺動可能に設けられ、前記開閉板22,23と係合して開閉板22,23を開く方向に作動させるスライド部材32と、前記スライド部材32を前記開閉板22,23から離間する方向に付勢する弾性部材36と、前記スライド部材32と装置本体12との間に設けられ、通電により加熱され、前記弾性部材36の弾性に抗して前記スライド部材32を前記開閉板22,23に係合する方向に摺動させる形状記憶合金製のアクチュエータ39とを有する。
【0013】
図6に示すように、可動装置51は、装置本体52と、装置本体52に開閉可能に設けられた一対の開閉板60,61と、装置本体52に回動可能に設けられ、前記一対の開閉板60,61をそれぞれ回動自在に取り付けた一対のリンク部材65,66と、前記一対のリンク部材65,66間又は一対の開閉板60,61間に取り付けられ、前記一対の開閉板60,61を閉じる方向に付勢する弾性部材70と、装置本体52に両端が固定され、前記一対のリンク部材65,66に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材70の弾性に抗して前記一対の開閉板60,61の開く方向に前記一対のリンク部材6
5,66を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータ75とを有する。
【0014】
図7に示すように、可動装置91は、装置本体92と、装置本体92に開閉可能に設けられた開閉板100と、装置本体92に回動可能に設けられ、前記開閉板100を回動自在に取り付けたリンク部材105と、前記リンク部材105又は開閉板100に取り付けられ、前記開閉板100を閉じる方向に付勢する弾性部材110と、装置本体92に両端が固定され、前記リンク部材105に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材110の弾性に抗して前記開閉板100の開く方向に前記リンク部材105を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータ120とを有する。
【0015】
図8に示すように、可動装置141は、装置本体142と、装置本体142に取り付けられた屈曲可能な屈曲部材145と、前記屈曲部材145に設けられ、屈曲部材145を伸ばす方向に付勢すると共に弾性に抗して一端が引っ張られると屈曲部材145を屈曲させる弾性部材150と、装置本体142に設けられ、前記弾性部材150の一端152が連結された摺動部材143と、装置本体142に両端が固定され、前記摺動部材143に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材150の弾性に抗して摺動部材143を摺動させて前記弾性部材150の一端152を引っ張り、前記屈曲部材145を屈曲させる形状記憶合金製のアクチュエータ160を有する。可動装置11,51,91,141は、前記アクチュエータ39,75,120,160を通電して加熱させる通電手段を有する。
【0016】
さらにロボット玩具の腕装置に組み込んだ可動装置について詳細に説明する。図1に示すように、腕装置1は、肩部10と、上腕部50と、下腕部90と、手部140とからなる。肩部10は、肩部本体10aと、肩部本体10aにヒンジ部10bを介して回動可能に連結された第1の可動装置11によって構成されている。第1の可動装置11は、基板(装置本体)12を有する。基板(装置本体)12は、矩形体状に形成され、上面13及び下面14と、上面13の左側に形成された左面15と、上面13の右側に形成された右面16と、上面13の前側に形成された前面17と、上面13の後側に形成された後面18とからなる。
【0017】
図3に示すように、基板(装置本体)12の左面15には、前記した肩部本体10aのヒンジ部10bを嵌合する嵌合凹部19が形成されている。基板(装置本体)12は、嵌合凹部19に肩部本体10aのヒンジ部10bを嵌合し、連結軸10cによって肩部本体10aに回動可能に連結されている。基板(装置本体)12の下面14略中央には、前面17から後面18に向かって軸受溝20が形成されている。また、基板(装置本体)12の下面14略中央には、右面16から左面15に向かってガイド溝21が軸受溝20と略直交するようにして形成されている。
【0018】
図3に示すように、基板(装置本体)12の前面17には、前面板(開閉板)22が回動(開閉)可能に設けられ、基板(装置本体)12の後面18には、後面板(開閉板)23が回動(開閉)可能に設けられている。前面板(開閉板)22は、軸受溝20に嵌合する係合突起25が形成され、後面板(開閉板)23は、軸受溝20に嵌合する係合突起26が形成されている。前面板(開閉板)22は、係合突起25が軸受溝20に嵌合され、連結軸28によって基板(装置本体)12に回動(開閉)可能に連結されている。後面板(開閉板)23は、係合突起26が軸受溝20に嵌合され、連結軸29によって基板(装置本体)12に回動(開閉)可能に連結されている。図4に示すように、係合突起25、26には、右面16から左面15側に向かって上昇傾斜する傾斜面25a、26aが形成されている。
【0019】
前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23は、連結軸28,29に巻装されたバ
ネ状の弾性部材30,31によって、閉じる方向に付勢されている。なお、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23は、弾性部材によって閉じる方向に付勢されていれば良く、弾性部材の種類、弾性部材の取付位置が特に限定されるものではない。
【0020】
図3、4に示すように、基板(装置本体)12のガイド溝21には、スライド部材32が左右方向に摺動自在に設けられている。スライド部材32は、矩形状に形成され、左端に形成された開口33と、開口33と連通する収納穴35が設けられている。収納穴35は、スライド部材32の摺動方向(長手方向)に向かって形成されている。収納穴35には、コイルスプリング状の弾性部材36と、コイル状に巻回された形状記憶合金製のアクチュエータ39が設けられている。
【0021】
スライド部材32は、ガイド溝21内に摺動自在に案内される。スライド部材32は、前後方向両側に、前記前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23の係合突起25,26に係合可能な係合片42,43が設けられている。図5に示すように、係合片42,43には、前記係合突起25,26の傾斜面25a,26aと係合する傾斜面42a,43aが形成されている。傾斜面42a,43aは、右面16から左面15側に向かって上昇傾斜するように形成されている。
【0022】
図3に示すように、スライド部材32は、収納穴35に収納された弾性部材36の一端36aが開口33から突出してガイド溝21の左端21aと当接し、係合片42,43が係合突起25,26から離間する方向に向かって付勢され、ガイド溝21の右端21bに圧接させられている。アクチュエータ39は、弾性部材36内に設けられ、一端39aがガイド溝21の左端21aに固定され、他端39bが収納穴35の奥壁35aに固定されている。アクチュエータ39の両端39a,39bは、電極に接続され、バッテリー(図示せず)によって通電されるようになっている。バッテリーは、ロボット玩具の胴部(図示せず)に内蔵されることが望ましいが、内蔵されていなくても良い。
【0023】
第1の可動装置11は、上記構成を有し、肩部本体10aに対して回動させることができる。第1の可動装置11は、スライド部材32が弾性部材36の弾性により、ガイド溝21の右端21b方向に付勢されており、スライド部材32の係合片42,43が、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23の係合突起25,26から離間している。前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23は、バネ状の弾性部材30,31によって、基板(装置本体)12の前後を閉じている。
【0024】
図示しないバッテリーによって、アクチュエータ39に通電すると、ジュール熱によりアクチュエータ39が加熱され、形状記憶合金の記憶している形状に戻って短くなる。そのため、図4に示すように、スライド部材32は、弾性部材36の弾性に抗してガイド溝21の左端21a側にゆっくりスライドしていく。スライド部材32の係合片42,43が、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23の係合突起25,26に係合する。係合片42,43の傾斜面42a,43aが、係合突起25,26の傾斜面25a,26aに摺接し、係合突起25,26をゆっくり押し下げる形となる。係合突起25,26がゆっくり押し下げられると、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23は、弾性部材30,31の弾性に抗して、ゆっくり開く方向に回動する。
【0025】
図示しないバッテリーによるアクチュエータ39への通電を解除すると、アクチュエータ39が自然冷却し、形状記憶合金の記憶している形状を維持しなくなる。スライド部材32が弾性部材36の弾性により、ガイド溝21の右端21b側にゆっくりスライドし、スライド部材32の係合片42,43が、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23の係合突起25,26からゆっくり離間する。前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23は、バネ状の弾性部材30,31によって、最初の閉じた状態に復帰する。この
ように、第1の可動装置11は、前面板(開閉板)22及び後面板(開閉板)23がアクチュエータ39によって、滑らかに開閉(回動)する。
【0026】
図1,6に示すように、上腕部50は、第2の可動装置51によって構成されている。第2の可動装置51は、上腕部本体(装置本体)52を有する。上腕部本体(装置本体)52は、前壁53及び後壁57と、前壁53の左側に設けられた左壁54と、前壁53の右側に設けられた右壁56とを有する。上腕部本体(装置本体)52の前壁53には、開口53aが形成され、当該開口53aに開閉板60が開閉可能に設けられている。また、上腕部本体(装置本体)52の後壁57には、開口57aが形成され、当該開口57aに開閉板61が開閉可能に設けられている。一対の開閉板60,61は、上部にガイド突起62,63が形成され、リンク部材65,66の上端部65a,66aに回動自在に取り付けられている。
【0027】
一対のリンク部材65,66は、略く字状に屈曲して形成され、屈曲部65b,66bが中心軸68,69によって左壁54と右壁56に回動自在に取り付けられている。一対のリンク部材65,66は、中心軸68,69より上部がバネ状の弾性部材70によって連結されている。この弾性部材70により、一方のリンク部材65が中心軸68を中心として時計回転方向に付勢され、他方のリンク部材66が中心軸69を中心として反時計回転方向に付勢される。即ち、リンク部材65,66は、弾性部材70により、内側方向(開閉板60,61の開口53a,57aを閉じる方向)に付勢されている。なお、開閉板60が開口53aを閉じている時、ガイド突起62は、前壁53の上縁53bの内側に係合している。同様に、開閉板61が開口57aを閉じている時、ガイド突起63は、後壁57の上縁57bの内側に係合している。
【0028】
一対のリンク部材65,66は、下部65c、66cに掛合軸71,72が設けられている。左壁54又は/及び右壁56であって、中心軸68,69の近傍の位置には、コイル状に巻回された形状記憶合金製のアクチュエータ75の両端76,77が固定されている。このアクチュエータ75は、一対のリンク部材65,66の掛合軸71,72に引っ掛けられている。アクチュエータ75の両端76,77は、電極に接続され、図示しないバッテリーによって通電されるようになっている。
【0029】
第2の可動装置51は、上記構成を有し、一対のリンク部材65,66が弾性部材70の弾性により、内側に向かって付勢されており、一対の開閉板60,61が上腕部本体(装置本体)52の開口53a,57aを閉じている。
【0030】
図示しないバッテリーによって、アクチュエータ75に通電すると、ジュール熱によりアクチュエータ75が加熱されて変化し、形状記憶合金の記憶している形状に戻って短くなる。そのため、一対のリンク部材65,66の中心軸68,69より下部が内側に引き寄せられる。一方のリンク部材65は、弾性部材70の弾性に抗して、中心軸68を中心として反時計回転方向にゆっくり回動する。他方のリンク部材66は、弾性部材70の弾性に抗して、中心軸69を中心として時計回転方向にゆっくり回動する。即ち、リンク部材65,66は、弾性部材70の弾性に抗して、外側方向に回動し、開閉板60,61がゆっくり外側に移動する。開閉板60,61は、ガイド突起62,63が、前壁53の上縁53bと後壁57の上縁57bの内側に案内され、下部78,79が外側にゆっくり回動して開くことになる。
【0031】
図示しないバッテリーによるアクチュエータ75への通電を解除すると、アクチュエータ75が自然冷却し、形状記憶合金の記憶している形状を維持しなくなる。一対のリンク部材65,66が弾性部材70の弾性により、内側に向かってゆっくり回動し、一対の開閉板60,61が上腕部本体(装置本体)52の開口53a,57aを閉じた状態に復帰
する。このように、上腕部50は、一対の開閉板60,61がアクチュエータ75によって、滑らかに開閉する。
【0032】
図1,7に示すように、下腕部90は、第3の可動装置91によって構成されている。第3の可動装置91は、下腕部本体(装置本体)92を有する。下腕部本体(装置本体)92は、前壁93及び後壁97と、前壁93の左側に設けられた左壁94と、前壁93の右側に設けられた右壁96とを有する。下腕部本体(装置本体)92の前壁93には、開口93aが形成され、開口93aには、開閉板100が開閉可能に設けられている。開閉板100は、上部にガイド突起101が形成され、リンク部材105の上端部106に回動自在に取り付けられている。
【0033】
リンク部材105は、略く字状に屈曲して形成され、屈曲部107が中心軸109によって左壁94と右壁96に回動自在に取り付けられている。リンク部材105は、中心軸109より上部がバネ状の弾性部材110の一端111に連結されている。弾性部材110の他端112は、後壁97に連結されている。この弾性部材110により、リンク部材105が中心軸109を中心として時計回転方向に付勢される。即ち、リンク部材105は、弾性部材110により、内側方向(開閉板100の開口93aを閉じる方向)に付勢されている。なお、開閉板100が開口93aを閉じている時、ガイド突起101は、前壁93の上縁93bの内側に係合している。
【0034】
リンク部材105は、下部108に掛合軸113が設けられている。後壁97には、コイル状に巻回された形状記憶合金製のアクチュエータ120の両端121,122が固定されている。このアクチュエータ120は、リンク部材105の掛合軸113に引っ掛けられている。アクチュエータ120の両端121,122は、電極に接続され、図示しないバッテリーによって通電されるようになっている。
【0035】
第3の可動装置91は、上記構成を有し、リンク部材105が弾性部材110の弾性により、内側に向かって付勢されており、開閉板100が下腕部本体(装置本体)92の開口93aを閉じている。図示しないバッテリーによって、アクチュエータ120に通電すると、ジュール熱によりアクチュエータ120が加熱され、形状記憶合金の記憶している形状に戻って短くなる。そのため、リンク部材105の中心軸109より下部が内側に引き寄せられる。リンク部材105は、弾性部材110の弾性に抗して、中心軸109を中心として反時計回転方向にゆっくり回動する。即ち、リンク部材105は、弾性部材110の弾性に抗して、外側方向に回動し、開閉板100がゆっくり外側に移動する。開閉板100は、ガイド突起101が、前壁93の上縁93bの内側に案内され、下部102が外側にゆっくり回動して開くことになる。
【0036】
図示しないバッテリーによるアクチュエータ120への通電を解除すると、アクチュエータ120が自然冷却し、形状記憶合金の記憶している形状を維持しなくなる。リンク部材105が弾性部材110の弾性により、内側に向かってゆっくり回動し、開閉板100が下腕部本体(装置本体)92の開口93aを閉じた状態に復帰する。このように、下腕部90は、開閉板100がアクチュエータ120によって、滑らかに開閉する。
【0037】
図8に示すように、手部140は、第4の可動装置141によって構成されている。第4の可動装置141は、手の平を構成する中空状の装置本体142と、装置本体142に取り付けられた屈曲可能な複数の指部材(屈曲部材)145とを有する。装置本体142内には、上下方向に摺動可能な摺動部材143が設けられている。指部材(屈曲部材)145は、合成樹脂素材によって構成され、少なくとも二つのV字状の溝146・・によって、屈曲可能に形成されている。
【0038】
また、指部材(屈曲部材)145は、内部に板バネ状の弾性部材150が摺動自在に設けられている。弾性部材150の先端151は、指部材(屈曲部材)145の先部に固定されている。弾性部材150の後端152は、指部材(屈曲部材)145の後部から突出し、装置本体142に形成された開口153を挿通して、前記摺動部材143に連結されている。弾性部材150は、指部材(屈曲部材)145を伸ばす方向に付勢すると共に弾性に抗して後端152が引っ張られると指部材(屈曲部材)145を屈曲させる。
【0039】
摺動部材143は、後部中央に掛合軸149が設けられている。装置本体142の後壁144には、コイル状に巻回された形状記憶合金製のアクチュエータ160の両端161,162が固定されている。このアクチュエータ160は、摺動部材143の掛合軸149に引っ掛けられている。アクチュエータ160の両端161,162は、電極に接続され、図示しないバッテリーによって通電されるようになっている。
【0040】
第4の可動装置141は、上記構成を有し、図8(a)に示すように、複数の指部材(屈曲部材)145が弾性部材150の弾性により、直線状に伸びている。図示しないバッテリーによって、アクチュエータ160に通電すると、ジュール熱によりアクチュエータ160が加熱され、形状記憶合金の記憶している形状に戻って短くなる。そのため、図8(b)に示すように、摺動部材143が後方に引き寄せられ、弾性部材150が弾性に抗して引っ張られることになる。弾性部材150が引っ張られると、指部材(屈曲部材)145の先部が引き寄せられ、各溝部146・・によって、指部材(屈曲部材)145が屈曲する。指部材(屈曲部材)145は、指部を構成しているので、屈曲することにより、握り拳となる
【0041】
図示しないバッテリーによるアクチュエータ160への通電を解除すると、アクチュエータ160が自然冷却し、形状記憶合金の記憶している形状を維持しなくなる。指部材(屈曲部材)145が弾性部材150の弾性により、外側に向かってゆっくり開くように、真っ直ぐに伸びていき、最初の開いた状態に復帰する。このように、手部140は、指部がアクチュエータ160によって、滑らかに開閉する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本願発明に係る可動装置をロボット玩具の腕部に組み込んだ状態の一つの実施の形態を示す全体斜視図である。
【図2】ロボット玩具の肩部に設けられた可動装置の説明図である。
【図3】図2の開閉板が閉じている状態の時の可動装置の説明図である。
【図4】図2の開閉板が開いている状態の時の可動装置の説明図である。
【図5】図2の装置本体の右方から視た説明図である。
【図6】ロボット玩具の上腕部に設けられた可動装置の要部断面図である。
【図7】ロボット玩具の下腕部に設けられた可動装置の要部断面図である。
【図8】ロボット玩具の手部に設けられた可動装置の説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 腕装置
10 肩部
10a 肩部本体
10b ヒンジ部
10c 連結軸
11 第1の可動装置
12 基板(装置本体)
13 上面
14 下面
15 左面
16 右面
17 前面
18 後面
19 嵌合凹部
20 軸受溝
21 ガイド溝
21a 左端
21b 右端
22 前面板(開閉板)
23 後面板(開閉板)
25 係合突起
25a 傾斜面
26 係合突起
26a 傾斜面
28 連結軸
29 連結軸
30 弾性部材
31 弾性部材
32 スライド部材
33 開口
35 収納穴
35a 奥壁
36 弾性部材
36a 一端
39 アクチュエータ
39a 一端
39b 他端
42 係合片
42a 傾斜面
43 係合片
43a 傾斜面
50 上腕部
51 第2の可動装置
52 上腕部本体(装置本体)
53 前壁
53a 開口
53b 上縁
54 左壁
56 右壁
57 後壁
57a 開口
57b 上縁
60 開閉板
61 開閉板
62 ガイド突起
63 ガイド突起
65 リンク部材
65a 上端部
65b 屈曲部
65c 下端部
66 リンク部材
66a 上端部
66b 屈曲部
66c 下端部
68 中心軸
69 中心軸
70 弾性部材
71 掛合軸
72 掛合軸
75 アクチュエータ
76 一端
77 他端
78 下部
79 下部
90 下腕部
91 第3の可動装置
92 下腕部本体(装置本体)
93 前壁
93a 開口
93b 上縁
94 左壁
97 後壁
96 右壁
100 開閉板
101 ガイド突起
102 下部
105 リンク部材
106 上端部
107 屈曲部
108 下端部
109 中心軸
110 弾性部材
111 一端
112 他端
113 掛合軸
120 アクチュエータ
121 一端
122 他端
140 手部
141 第4の可動装置
142 装置本体
143 摺動部材
144 後壁
145 指部材(屈曲部材)
146 溝
149 掛合軸
150 弾性部材
151 先端
152 後端
153 開口
160 アクチュエータ
161 一端
162 他端



【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
装置本体に開閉可能に設けられた開閉板と、
装置本体に摺動可能に設けられ、前記開閉板と係合して開閉板を開く方向に作動させるスライド部材と、
前記スライド部材を前記開閉板から離間する方向に付勢する弾性部材と、
前記スライド部材と装置本体との間に設けられ、通電により加熱され、前記弾性部材の弾性に抗して前記スライド部材を前記開閉板に係合する方向に摺動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有すること特徴とする可動装置。
【請求項2】
装置本体と、
装置本体に開閉可能に設けられた一対の開閉板と、
装置本体に回動可能に設けられ、前記一対の開閉板をそれぞれ回動自在に取り付けた一対のリンク部材と、
前記一対のリンク部材間又は一対の開閉板間に取り付けられ、前記一対の開閉板を閉じる方向に付勢する弾性部材と、
装置本体に両端が固定され、前記一対のリンク部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して前記一対の開閉板の開く方向に前記一対のリンク部材を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有することを特徴とする可動装置。
【請求項3】
装置本体と、
装置本体に開閉可能に設けられた開閉板と、
装置本体に回動可能に設けられ、前記開閉板を回動自在に取り付けたリンク部材と、
前記リンク部材又は開閉板に取り付けられ、前記開閉板を閉じる方向に付勢する弾性部材と、
装置本体に両端が固定され、前記リンク部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して前記開閉板の開く方向に前記リンク部材を回動させる形状記憶合金製のアクチュエータとを有することを特徴とする可動装置。
【請求項4】
装置本体と、
装置本体に取り付けられた屈曲可能な屈曲部材と、
前記屈曲部材に設けられ、屈曲部材を伸ばす方向に付勢すると共に弾性に抗して一端が引っ張られると屈曲部材を屈曲させる弾性部材と、
装置本体に設けられ、前記弾性部材の一端が連結された摺動部材と、
装置本体に両端が固定され、前記摺動部材に引っ掛けられ、通電により加熱されて、前記弾性部材の弾性に抗して摺動部材を摺動させて前記弾性部材の一端を引っ張り、前記屈曲部材を屈曲させる形状記憶合金製のアクチュエータを有することを特徴とする可動装置。
【請求項5】
前記アクチュエータを通電して加熱させる通電手段を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の可動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−20807(P2006−20807A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201097(P2004−201097)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000135748)株式会社バンダイ (246)
【Fターム(参考)】