可動間仕切り装置
【課題】間仕切り壁を効率良く収容し、室内空間を有効利用できる可動間仕切り装置を提供する。
【解決手段】この可動間仕切り装置は、室内空間1の天井面2と壁11をふかしてなる収容空間3の天井面4とに設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8とに跨って移動可能に取り付けられて、室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に壁11に沿って横並びに収容される収容姿勢とで切換可能とされた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・はその壁本体31の上端部略中央から突出して天井レール5に移動自在に案内された第1突起32と、壁本体31の下端部略中央から突出して床レール8に移動自在に案内された第2突起33とを備え、壁本体31は第1突起32及び第2突起33を中心として回転可能とされている。
【解決手段】この可動間仕切り装置は、室内空間1の天井面2と壁11をふかしてなる収容空間3の天井面4とに設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8とに跨って移動可能に取り付けられて、室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に壁11に沿って横並びに収容される収容姿勢とで切換可能とされた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・はその壁本体31の上端部略中央から突出して天井レール5に移動自在に案内された第1突起32と、壁本体31の下端部略中央から突出して床レール8に移動自在に案内された第2突起33とを備え、壁本体31は第1突起32及び第2突起33を中心として回転可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として住宅の室内空間を仕切るために用いられる可動間仕切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の長寿命化が重要視される近年では、構造躯体等の高耐久化とともに、室内空間を臨機応変に変化させて、居住者のライフスタイルやライフステージの変化に柔軟に対応できる内装システムが求められている。そして、そのような内装システムの構築に際して、室内空間を使用状況に応じて間仕切り壁によって仕切ることができる可動間仕切り装置が利用されている。
【0003】
この種の可動間仕切り装置としては、室内空間を仕切る複数の間仕切り壁が、天井面と床面に設けたガイドレール間に跨って移動可能且つ回転可能となっていて、室内空間を仕切らないときには、複数の間仕切り壁を壁際において互いに重ね合わせるようにして収容可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、室内空間を仕切る複数の間仕切り壁が、天井面に設けたガイドレールに沿って移動可能となっていて、室内空間を仕切らないときには、複数の間仕切り壁を室内空間に面する壁をふかしてなる収容空間に収容可能としたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−140920号公報
【特許文献2】特開平9−184357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1記載の可動間仕切り装置においては、複数の間仕切り壁が室内空間の壁から張り出すようにして露出した状態で収容されるため、間仕切り壁の収容時において、室内空間の見栄えが悪くなるとともに、室内空間内に間仕切り壁による出張りが生じて邪魔になるといった不具合があった。
【0007】
一方、上記の特許文献2記載の可動間仕切り装置においては、壁をふかしてなる収容空間に、間仕切り壁を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。ところが、間仕切り壁の収容に際しては、室内空間内の間仕切り壁をガイドレールに沿って壁に対して直交する状態で収容空間内に導いて、収容空間内において、壁と平行に移動させて互いに重ね合わせるようにして収容している。
【0008】
このように、複数の間仕切り壁を壁に対して直交した状態で収容する収容空間を形成するためには、壁を大きくふかす必要があり、特に床面積が限られていて、奥行きのあるスペースを確保し難い狭小住宅や集合住宅においては、他に利用用途のない収容空間が室内空間に大きく出張ってしまって、この出張り部分がデッドスペースとなって室内空間の有効利用の妨げとなり、内装プランを圧迫するといった不具合があった。
【0009】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、間仕切り壁を収容空間に邪魔にならないように見栄え良く収容しながら、デッドスペースを減らして、室内空間の有効利用を図ることができ、しかも構造が簡単で間仕切り壁の操作性にも優れた可動間仕切り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の可動間仕切り装置は、室内空間1の天井面2と壁11をふかしてなる収容空間3の天井面4に亘って設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに亘って設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8との間に跨って移動可能に取り付けられて、室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に壁11に沿って横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・は、その壁本体31の上端部略中央から突出して天井レール5に移動自在に案内された第1突起32と、壁本体31の下端部略中央から突出して床レール8に移動自在に案内された第2突起33とを備え、壁本体31は第1突起32及び第2突起33を中心として回転可能とされていることを特徴とする。
【0011】
具体的に、天井レール5及び床レール8は、その室内空間1側のレール部18、26に対して壁11に沿った収容空間3側のレール部19、27が略直交するように連結されている。
【0012】
また、天井レール5及び床レール8における収容空間3側のレール部19、27は、壁ふかし方向に間隔をあけて複数列形成されている。
【0013】
さらに、壁11に、収容空間3に対して間仕切り壁10・・を出し入れするための開口部14が形成され、この開口部14を開閉する開閉扉15が壁11に設けられている。
【0014】
しかも、間仕切り壁10・・は、その壁本体31の下端部に複数のキャスター34・・が設けられ、壁本体31の床レール8に沿った回転位置においてキャスター34・・が床レール8上を走行可能とされ、壁本体31の床レール8からずれた回転位置においてキャスター34・・が床面6上を走行可能とされている。
【発明の効果】
【0015】
この発明の可動間仕切り装置においては、室内空間を仕切らないときには、壁をふかしてなる収容空間に間仕切り壁を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。しかも、間仕切り壁は、収容空間内において壁に沿って横並びに収容されるので、収容空間の奥行きは間仕切り壁の厚み分よりも若干広めに確保するだけで良く、従って収容空間を形成するにあたっての壁のふかしを小さく抑えることができる。これにより、壁の厚みが若干増す程度で、室内空間において余計な出張りが生じず、デッドスペースを減らして室内空間の有効利用を図ることができ、内装プランの自由度を高めることができる。
【0016】
さらに、間仕切り壁は、壁本体の上端部略中央及び下端部略中央から突出した第1突起及び第2突起を中心として、壁本体が回転可能になっているので、例えば収容空間の手前で壁本体を回転させて壁に沿うように向きを変えて、この状態で収容空間内に押し込んで壁に沿ってスライドさせるだけで、収容空間に容易に収容することができる。これにより、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁の切換に際しての操作性を高めることができ、しかも天井レール及び床レールの構造を、室内空間側のレール部と収容空間側のレール部を略直交するように連結しただけの簡単な構造とすることができる。
【0017】
また、天井レール及び床レールの収納空間側のレール部を複数列形成することで、多くの間仕切り壁を収容することができ、間仕切り壁の枚数が多い場合に有効である。
【0018】
さらに、壁に設けた開閉扉を閉めることで、収容空間内の間仕切り壁が室内空間側から見えなくなり、見栄えを良好にすることができる。
【0019】
さらにまた、間仕切り壁の壁本体の下端部にキャスターを取り付けて、間仕切り壁の移動時や回転時に、キャスターがレール部上若しくは床面上を走行するので、間仕切り壁の移動や回転を円滑に行うことができ、操作性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る可動間仕切り装置は、図1及び図2に示すように、室内空間1の天井面2と収容空間3の天井面4とに亘って設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに亘って設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8との間に跨って移動可能に設けられた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・が室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされている。
【0021】
収容空間3は、図2に示すように、室内空間1に面する外壁や間仕切り壁等の壁11をふかしてなる横長の空間であって、壁11を構成する内外の壁材12、13間に形成されている。壁11の室内空間1側の壁材12には、収容空間3に間仕切り壁10・・を出し入れするための開口部14が形成され、この開口部14を開閉する開閉扉15が設けられている。そして、開口部14の幅寸法は、間仕切り壁10の幅寸法よりも若干広くなっている。開閉扉15の表面は、壁11の壁材12の表面と同じ形態となっていて、開閉扉15を閉めた状態において壁材12と開閉扉15とが一体化して見栄えを良好にしている。
【0022】
天井レール5は、図3に示すように、室内空間1側のレール部18と、壁11に沿った収容空間3側のレール部19とを備え、これらレール部18、19を収容空間3内において略直交するように連結することによって、全体的に略T字状に構成されている。室内空間1側のレール部18は、図6に示すように、リップ21、21間の隙間が下向きになるように天井材22に埋め込まれたリップ付きの溝形鋼からなる。収容空間3側のレール部19は、室内空間1側のレール部18よりも幅広に形成され、図8に示すように、溝部の開放部分が下向きになるように天井材22に埋め込まれた溝形鋼からなり、その側壁23、23間において、これら23、23と平行に一対のレール材24、24が折面形成されている。なお、レール材24、24には、室内空間1側のレール部18の延長上において切欠部25、25が形成され、後述する間仕切り壁10の第1突起32をレール部19へ案内することができるようになっている。
【0023】
床レール8は、図4に示すように、室内空間1側のレール部26と、収容空間3側のレール部27とを備え、これらレール部26、27を収容空間3内において略直交するように連結することによって、全体的に略T字状に構成されている。そして、室内空間1側のレール部26及び収容空間3側のレール部27はともに、溝部の開放部分が上向きになるように床材28に埋め込まれた溝形鋼からなる。
【0024】
間仕切り壁10は、図5に示すように、略長方形状の壁本体31と、その壁本体31の上端部略中央に設けられた第1突起32と、壁本体31の下端部略中央に設けられた第2突起33と、壁本体31の下端部の第2突起33を挟んだ両側に設けられた複数のキャスター34・・とを備えている。
【0025】
壁本体31は、図6及び図7に示すように、方形状のフレーム41の表裏面に石膏ボード等からなる壁面材42、42を貼り付けることによって構成されており、壁本体31におけるフレーム41の上端部には、図6に示すように、上方に開放した略コ字形の上枠材43が横方向に沿って設けられている。なお、上枠材43は、壁面材42、42の上端部に覆われていて、外部からは見えないようになっている。また、フレーム41の下端部には、図7に示すように、リップ44、44間の隙間が上向きとなったリップ付きの溝形鋼からなる下枠材45が横方向に沿って設けられている。なお、この下枠材45においても、壁面材42、42の下端部によって覆われていて、外部から見えないようになっている。
【0026】
第1突起32は、図6及び図8に示すように、天井レール5に係合して、その天井レール5に沿って移動自在に案内されている。この第1突起32は、天井レール5の溝部内に収容されたスライド部材51と、このスライド部材51から下方へ突出した軸部材52と、壁本体31における上枠材43の枠内に固定されて、軸部材52を縦方向の軸芯周りに回転自在且つ上下動自在に支持する支持部材53と、この支持部材53に取り付けられて軸部材52を上方へ付勢するバネ部材54とを備えている。
【0027】
スライド部材51は、図9に示すように、横長のブロック状に形成され、その上面四隅には、長手方向に沿った突部56・・が形成され、その下面には、長手方向に沿った一対の突部57、57が形成されている。そして、上面側の突部56・・によって、スライド部材51の上面と天井レール5の上面との間に隙間が確保され、これによって天井レール5の上面を天井材22に取り付けるためのビス61の頭部を回避しながら、第1突起32を移動させることができるようになっている。下面側の突部57、57は、図6に示すように、第1突起32が室内空間1側のレール部18に沿って移動するときに、レール部18のリップ21、21上を摺動するようになっている。また、このスライド部材51の上面には、短手方向に沿った一対の係合溝58、58が形成され、図8に示すように、第1突起32が収容空間3側のレール部19に沿って移動するときに、係合溝58、58に収容空間3側のレール部19のレール材24、24が嵌り込むようになっている。
【0028】
軸部材52は、スライド部材51の下面略中央に突設された縦ボルト62と、この縦ボルト62の下端部に螺合された昇降回転体63と、縦ボルト62に螺合されたナット64とを備えている。縦ボルト62は、壁本体31における上枠材43の枠内へ突出している。昇降回転体63は、小径部65と大径部66を上下に連続させてなり、その上端面から下部にかけてボルト孔67が形成されている。このボルト孔67に対する縦ボルト62のねじ込み量を調整することで、スライド部材51の壁本体31からの上方への突出量を調整することができるようになっている。また、この調整後には、ナット64を締め付けることで、縦ボルト62と昇降回転体63とを一体化させるようにしている。
【0029】
支持部材53は、昇降回転体63の大径部66を回転自在且つ上下動自在に収容する筒状体68と、この筒状体68の下端部から側方へ張り出したフランジ69とを備え、フランジ69が壁本体31における上枠材43に固定されている。そして、筒状体68内には、上記のバネ部材54が配されていて、昇降回転体63の小径部65と大径部66との間の段差部分を筒状体68の上端部に押し付けている。
【0030】
このような第1突起32においては、天井レール5とスライド部材51とのクリアランスが極力減らされた状態となっていて、天井レール5の溝部内におけるスライド部材51のがたつきを抑えるようになっている。これにより、スライド部材51のスムーズなスライドが可能となり、間仕切り壁10の転倒も確実に防止することができる。また、スライド部材51の上方への突出量を調整することができるので、天井レール5の溝部内にスライド部材51を精度良く確実に収容させることができる。
【0031】
さらに、天井部分の不陸等によって天井レール5に撓みや歪みが生じていると、この天井レール5に沿って移動するスライド部材51が上下動することになるが、その上下動をバネ部材54の伸縮によって吸収することができ、これによって間仕切り壁10の移動における天井部分の不陸等に伴うがたつきを抑えることができる。
【0032】
なお、壁本体31の上端部には、上記のような第1突起32だけでなく、間仕切り壁10を天井面2、4と床面6、7とに跨って突っ張り固定するための図示しない固定機構が設けられている。これにより、使用時や収納時の間仕切り壁10を、天井面2、4と床面6、7との間に安定して固定することができる。
【0033】
第2突起33は、図7に示すように、床レール8に係合して、その床レール8に沿って移動自在に案内されている。この第2突起33は、壁本体31における下枠材45の溝部内に取り付けられた回転盤71と、この回転盤71に取り付けられたピン72とを備えている。回転盤71は、下枠材45のリップ44、44に跨るように取り付けられた上側の基部73に対して、下側の平板部74が縦方向の軸芯周りに回転自在に支持されている。ピン72は、その上端部が回転盤71の平板部74に固定され、壁本体31における下枠材45のウエブ46に形成した切欠部分47を通って、その下端部が床レール8に挿入されている。
【0034】
キャスター34・・としては、図10及び図11に示すように、例えば物流の現場等で使用されるような高精度なボールキャスターが用いられている。このキャスター34は、壁本体31における下枠材45のウエブ46を貫通するキャスター本体81と、このキャスター本体81から側方へ張り出して下枠材45のウエブ46下面に固定されたフランジ82と、キャスター本体81に内装されてその一部がキャスター本体81から下方へ突出したボール83とを備えている。
【0035】
また、このような壁本体31の下端部に取り付けられるキャスター34・・としては、例えば8個用意されており、これら8個のキャスター34・・が、第2突起33を挟むようにし左右4個ずつ等間隔に配置されている。従って、これら8個のキャスター34・・によって、壁本体31の荷重を分散させてバランス良く支えることができる。
【0036】
このようにして構成された間仕切り壁10においては、その壁本体31が第1突起32及び第2突起33を中心として水平方向に回転可能とされており、壁本体31が床レール8に沿った回転位置にあるときには、キャスター34・・が床レール8上を走行可能とされ、壁本体31が床レール8からずれた回転位置にあるときには、キャスター34・・が床面6を走行可能とされている。
【0037】
次に、上記構成の可動間仕切り装置における間仕切り壁10・・の姿勢切換動作について説明する。
【0038】
まず、間仕切り壁10・・が室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢となっているときには、図6に示すように、各間仕切り壁10における第1突起32のスライド部材51が天井レール5の室内空間1側のレール部18に沿うようにしてレール部18に収まり、図7に示すように、第2突起33のピン72が床レール8の室内空間1側のレール部26にスライド可能に挿入され、さらに図10に示すように、キャスター34・・のボール83・・がレール部26における上端エッジ間に転動可能に嵌り込んで、間仕切り壁10の壁本体31が上下レール部18、26に沿うようにしてこれらレール部18、26間に跨った状態となっている。
【0039】
この状態で、間仕切り壁10を上下のレール部18、26に沿って軽く押すことで、第1突起32のスライド部材51がレール部18内をスライドし、第2突起33のピン72が、レール部26内をスライドしながら、キャスター34・・がレール部26上を走行して、間仕切り壁10がレール部18、26に沿って移動することになる。このとき、レール部18においてスライド部材51がスムーズにスライドするとともに、複数のキャスター34・・によって壁本体31をバランス良く支えるので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに移動させることができる。
【0040】
そして、間仕切り壁10を収容空間3の手前まで移動させると、図2に示すように、間仕切り壁10の壁本体31を壁11に対して略平行になるように、第1突起32及び第2突起33を中心として約90度回転させる。このとき、図12に示すように、第1突起32のスライド部材51がレール部18内に収まり、図13に示すように、第2突起33のピン72がレール部26に収まった状態で、キャスター34・・のボール83・・が床面6上に乗り上げて床面6上を転動する。このときも、レール部18においてスライド部材51がきっちりと収容されて、複数の高精度なキャスター34・・によって、壁本体31をバランス良く支えるので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに回転させることができる。しかも、このようなスムーズな回転を可能にすることで、この回転に伴うキャスター34・・の床面6上の走行によって床面6が傷付くといった不具合もなくなる。
【0041】
このようにして、壁本体31を90度回転させた間仕切り壁10を、上下のレール部18、26に沿って軽く押すことで、開閉扉15を開けることによって開放した開口部14を通して間仕切り壁10を収容空間3内へ移動させる。このときも、第1突起32のスライド部材51がレール部18内をスライドし、第2突起33のピン72がレール部26内をスライドしながら、キャスター34・・が床面6上を走行するので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに移動させることができ、この移動に伴うキャスター34・・の走行によって床面6が傷付くこともない。
【0042】
このようにして間仕切り壁10を、収容空間3内に押し込んで、第1突起32のスライド部材51が室内空間1側のレール部18に連続する収容空間3側のレール部19へ案内され、第2突起33のピン72が室内空間1側のレール部26に連続する収容空間3側のレール部27へ案内されると、間仕切り壁10を上下のレール部19、27に沿って、すなわち、横長の収容空間3に沿ってスライドさせる。このとき、図8に示すように、第1突起32のスライド部材51の係合溝58、58にレール部19のレール材24、24が係合した状態で、スライド部材51がその短手方向に沿ってレール部19内をスライドし、図7に示すように、第2突起33のピン72がレール部27をスライドしながら、図10に示すように、キャスター34・・がレール部27上を走行する。これにより、スライド部材51をレール部19内において回転させずに、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズにスライドさせることができる。
【0043】
そして、このような動作を繰り返して、間仕切り壁10・・を収容空間3へ横並びに収容し、すべての間仕切り壁10・・を収容すると、開閉扉15を閉めて、室内空間1から間仕切り壁10・・が見えないようにする。この間仕切り壁10・・の収容姿勢においては、間仕切り壁10・・の壁本体31・・が壁11の壁材12、13と対向して、間仕切り壁10・・が上下のレール部19、27に沿って略直線上に並んだ状態となっている。なお、間仕切り壁10・・を収容姿勢から間仕切り姿勢にするには、上記の動作を逆に行えば良い。
【0044】
このように、上記構成の可動間仕切り装置においては、壁11をふかしてなる収容空間3に間仕切り壁10・・を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。しかも、間仕切り壁10・・は、収容空間3において壁11に沿って横並びに収容されるので、収容空間3の奥行きは間仕切り壁10の厚み分よりも若干広めに確保するだけで良く、従って収容空間3を形成するにあたっての壁11のふかしを小さく抑えることができる。これにより、壁11の厚みが若干増す程度で、室内空間1において余計な出張りが生じず、デッドスペースを減らして室内空間1の有効利用を図ることができ、内装プランの自由度を高めることができる。
【0045】
さらに、間仕切り壁10・・は、壁本体31の上端部略中央及び下端部略中央から突出した第1突起32及び第2突起33を中心として、壁本体31が回転可能となっているので、例えば収容空間3の手前で壁本体31を回転させて壁11に沿うように向きを変えて、この状態で収容空間3内に押し込んで壁11に沿ってスライドさせるだけで、収容空間3に容易に収容することができる。これにより、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁10・・の切換に際しての操作性を高めることができ、しかも天井レール5及び床レール8の構造を、室内空間1側のレール部18、26と収容空間3側のレール部19、27を略直交するように連結しただけの簡単な構造とすることができる。
【0046】
さらにまた、間仕切り壁10・・の壁本体31の下端部にキャスター34・・を取り付けて、間仕切り壁10・・の移動時や回転時に、キャスター34・・がレール部26、27上若しくは床面6上を走行するので、間仕切り壁10・・の移動や回転を円滑に安定して行うことができ、操作性をさらに高めることができる。
【0047】
なお、間仕切り壁には、その壁本体の上端部両端から突出した一対の突起をレールに係合させて移動するタイプのものが多く見受けられるが、このような構造の間仕切り壁では、レールに沿って移動するだけであるから、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁の切換に際して煩雑な操作を強いられたり、レールの構造が複雑になってしまうことになり、上記のような操作性の向上、構造の簡略化を図ることができない。
【0048】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、天井レール5及び床レール8は全体的に略T字形で形成されているが、全体的に略L字形に形成しても良い。
【0050】
さらに、図14及び図15に示すように、収容空間3側のレール部19、27を壁ふかし方向に間隔をあけて2列形成して、これらを室内空間1側のレール部18、26の延長上に配置した連結レール部90、91によって連結した構造としても良い。これにより、収容空間3内において、図16に示すように、間仕切り壁10・・を壁ふかし方向に間隔をあけて2列配置することができ、間仕切り壁10・・の枚数が多い場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施形態に係る可動間仕切り装置の斜視図である。
【図2】同じくその概略横断面図である。
【図3】天井レールの斜視図である。
【図4】床レールの斜視図である。
【図5】間仕切り壁の正面図である。
【図6】室内空間側のレール部に案内された第1突起を示す縦断面図である。
【図7】室内空間側および収容空間側のレール部に案内された第2突起を示す縦断面図である。
【図8】収容空間側のレール部に案内された第1突起を示す縦断面図である。
【図9】スライド部材の斜視図である。
【図10】室内空間側及び収容空間側のレール部上を走行するキャスターを示す縦断面図である。
【図11】壁本体が床レールに沿った回転位置にあるときの間仕切り壁の下端部中央付近を示す図である。
【図12】壁本体が床レールからずれた回転位置にあるときの間仕切り壁の上端部中央付近を示す図である。
【図13】壁本体が床レールからずれた回転位置にあるときの間仕切り壁の下端部中央付近を示す図である。
【図14】天井レールの変形例を示す斜視図である。
【図15】床レールの変形例を示す斜視図である。
【図16】変形例の天井レール及び床レールを用いた可動間仕切り装置の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・室内空間、2・・室内空間の天井面、3・・収容空間、4・・収容空間の天井面、5・・天井レール、6・・室内空間の床面、7・・収容空間の床面、8・・床レール、10・・間仕切り壁、11・・壁、14・・開口部、15・・開閉扉、18・・天井レールの室内空間側のレール部、19・・天井レールの収容空間側のレール部、26・・床レールの室内空間側のレール部、27・・床レールの収容空間側のレール部、31・・壁本体、32・・第1突起、33・・第2突起、34・・キャスター
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として住宅の室内空間を仕切るために用いられる可動間仕切り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の長寿命化が重要視される近年では、構造躯体等の高耐久化とともに、室内空間を臨機応変に変化させて、居住者のライフスタイルやライフステージの変化に柔軟に対応できる内装システムが求められている。そして、そのような内装システムの構築に際して、室内空間を使用状況に応じて間仕切り壁によって仕切ることができる可動間仕切り装置が利用されている。
【0003】
この種の可動間仕切り装置としては、室内空間を仕切る複数の間仕切り壁が、天井面と床面に設けたガイドレール間に跨って移動可能且つ回転可能となっていて、室内空間を仕切らないときには、複数の間仕切り壁を壁際において互いに重ね合わせるようにして収容可能としたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、室内空間を仕切る複数の間仕切り壁が、天井面に設けたガイドレールに沿って移動可能となっていて、室内空間を仕切らないときには、複数の間仕切り壁を室内空間に面する壁をふかしてなる収容空間に収容可能としたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−140920号公報
【特許文献2】特開平9−184357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1記載の可動間仕切り装置においては、複数の間仕切り壁が室内空間の壁から張り出すようにして露出した状態で収容されるため、間仕切り壁の収容時において、室内空間の見栄えが悪くなるとともに、室内空間内に間仕切り壁による出張りが生じて邪魔になるといった不具合があった。
【0007】
一方、上記の特許文献2記載の可動間仕切り装置においては、壁をふかしてなる収容空間に、間仕切り壁を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。ところが、間仕切り壁の収容に際しては、室内空間内の間仕切り壁をガイドレールに沿って壁に対して直交する状態で収容空間内に導いて、収容空間内において、壁と平行に移動させて互いに重ね合わせるようにして収容している。
【0008】
このように、複数の間仕切り壁を壁に対して直交した状態で収容する収容空間を形成するためには、壁を大きくふかす必要があり、特に床面積が限られていて、奥行きのあるスペースを確保し難い狭小住宅や集合住宅においては、他に利用用途のない収容空間が室内空間に大きく出張ってしまって、この出張り部分がデッドスペースとなって室内空間の有効利用の妨げとなり、内装プランを圧迫するといった不具合があった。
【0009】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、間仕切り壁を収容空間に邪魔にならないように見栄え良く収容しながら、デッドスペースを減らして、室内空間の有効利用を図ることができ、しかも構造が簡単で間仕切り壁の操作性にも優れた可動間仕切り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の可動間仕切り装置は、室内空間1の天井面2と壁11をふかしてなる収容空間3の天井面4に亘って設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに亘って設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8との間に跨って移動可能に取り付けられて、室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に壁11に沿って横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・は、その壁本体31の上端部略中央から突出して天井レール5に移動自在に案内された第1突起32と、壁本体31の下端部略中央から突出して床レール8に移動自在に案内された第2突起33とを備え、壁本体31は第1突起32及び第2突起33を中心として回転可能とされていることを特徴とする。
【0011】
具体的に、天井レール5及び床レール8は、その室内空間1側のレール部18、26に対して壁11に沿った収容空間3側のレール部19、27が略直交するように連結されている。
【0012】
また、天井レール5及び床レール8における収容空間3側のレール部19、27は、壁ふかし方向に間隔をあけて複数列形成されている。
【0013】
さらに、壁11に、収容空間3に対して間仕切り壁10・・を出し入れするための開口部14が形成され、この開口部14を開閉する開閉扉15が壁11に設けられている。
【0014】
しかも、間仕切り壁10・・は、その壁本体31の下端部に複数のキャスター34・・が設けられ、壁本体31の床レール8に沿った回転位置においてキャスター34・・が床レール8上を走行可能とされ、壁本体31の床レール8からずれた回転位置においてキャスター34・・が床面6上を走行可能とされている。
【発明の効果】
【0015】
この発明の可動間仕切り装置においては、室内空間を仕切らないときには、壁をふかしてなる収容空間に間仕切り壁を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。しかも、間仕切り壁は、収容空間内において壁に沿って横並びに収容されるので、収容空間の奥行きは間仕切り壁の厚み分よりも若干広めに確保するだけで良く、従って収容空間を形成するにあたっての壁のふかしを小さく抑えることができる。これにより、壁の厚みが若干増す程度で、室内空間において余計な出張りが生じず、デッドスペースを減らして室内空間の有効利用を図ることができ、内装プランの自由度を高めることができる。
【0016】
さらに、間仕切り壁は、壁本体の上端部略中央及び下端部略中央から突出した第1突起及び第2突起を中心として、壁本体が回転可能になっているので、例えば収容空間の手前で壁本体を回転させて壁に沿うように向きを変えて、この状態で収容空間内に押し込んで壁に沿ってスライドさせるだけで、収容空間に容易に収容することができる。これにより、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁の切換に際しての操作性を高めることができ、しかも天井レール及び床レールの構造を、室内空間側のレール部と収容空間側のレール部を略直交するように連結しただけの簡単な構造とすることができる。
【0017】
また、天井レール及び床レールの収納空間側のレール部を複数列形成することで、多くの間仕切り壁を収容することができ、間仕切り壁の枚数が多い場合に有効である。
【0018】
さらに、壁に設けた開閉扉を閉めることで、収容空間内の間仕切り壁が室内空間側から見えなくなり、見栄えを良好にすることができる。
【0019】
さらにまた、間仕切り壁の壁本体の下端部にキャスターを取り付けて、間仕切り壁の移動時や回転時に、キャスターがレール部上若しくは床面上を走行するので、間仕切り壁の移動や回転を円滑に行うことができ、操作性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る可動間仕切り装置は、図1及び図2に示すように、室内空間1の天井面2と収容空間3の天井面4とに亘って設けられた天井レール5と、室内空間1の床面6と収容空間3の床面7とに亘って設けられた床レール8と、これら天井レール5と床レール8との間に跨って移動可能に設けられた複数の間仕切り壁10・・とを備え、間仕切り壁10・・が室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢と収容空間3に横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされている。
【0021】
収容空間3は、図2に示すように、室内空間1に面する外壁や間仕切り壁等の壁11をふかしてなる横長の空間であって、壁11を構成する内外の壁材12、13間に形成されている。壁11の室内空間1側の壁材12には、収容空間3に間仕切り壁10・・を出し入れするための開口部14が形成され、この開口部14を開閉する開閉扉15が設けられている。そして、開口部14の幅寸法は、間仕切り壁10の幅寸法よりも若干広くなっている。開閉扉15の表面は、壁11の壁材12の表面と同じ形態となっていて、開閉扉15を閉めた状態において壁材12と開閉扉15とが一体化して見栄えを良好にしている。
【0022】
天井レール5は、図3に示すように、室内空間1側のレール部18と、壁11に沿った収容空間3側のレール部19とを備え、これらレール部18、19を収容空間3内において略直交するように連結することによって、全体的に略T字状に構成されている。室内空間1側のレール部18は、図6に示すように、リップ21、21間の隙間が下向きになるように天井材22に埋め込まれたリップ付きの溝形鋼からなる。収容空間3側のレール部19は、室内空間1側のレール部18よりも幅広に形成され、図8に示すように、溝部の開放部分が下向きになるように天井材22に埋め込まれた溝形鋼からなり、その側壁23、23間において、これら23、23と平行に一対のレール材24、24が折面形成されている。なお、レール材24、24には、室内空間1側のレール部18の延長上において切欠部25、25が形成され、後述する間仕切り壁10の第1突起32をレール部19へ案内することができるようになっている。
【0023】
床レール8は、図4に示すように、室内空間1側のレール部26と、収容空間3側のレール部27とを備え、これらレール部26、27を収容空間3内において略直交するように連結することによって、全体的に略T字状に構成されている。そして、室内空間1側のレール部26及び収容空間3側のレール部27はともに、溝部の開放部分が上向きになるように床材28に埋め込まれた溝形鋼からなる。
【0024】
間仕切り壁10は、図5に示すように、略長方形状の壁本体31と、その壁本体31の上端部略中央に設けられた第1突起32と、壁本体31の下端部略中央に設けられた第2突起33と、壁本体31の下端部の第2突起33を挟んだ両側に設けられた複数のキャスター34・・とを備えている。
【0025】
壁本体31は、図6及び図7に示すように、方形状のフレーム41の表裏面に石膏ボード等からなる壁面材42、42を貼り付けることによって構成されており、壁本体31におけるフレーム41の上端部には、図6に示すように、上方に開放した略コ字形の上枠材43が横方向に沿って設けられている。なお、上枠材43は、壁面材42、42の上端部に覆われていて、外部からは見えないようになっている。また、フレーム41の下端部には、図7に示すように、リップ44、44間の隙間が上向きとなったリップ付きの溝形鋼からなる下枠材45が横方向に沿って設けられている。なお、この下枠材45においても、壁面材42、42の下端部によって覆われていて、外部から見えないようになっている。
【0026】
第1突起32は、図6及び図8に示すように、天井レール5に係合して、その天井レール5に沿って移動自在に案内されている。この第1突起32は、天井レール5の溝部内に収容されたスライド部材51と、このスライド部材51から下方へ突出した軸部材52と、壁本体31における上枠材43の枠内に固定されて、軸部材52を縦方向の軸芯周りに回転自在且つ上下動自在に支持する支持部材53と、この支持部材53に取り付けられて軸部材52を上方へ付勢するバネ部材54とを備えている。
【0027】
スライド部材51は、図9に示すように、横長のブロック状に形成され、その上面四隅には、長手方向に沿った突部56・・が形成され、その下面には、長手方向に沿った一対の突部57、57が形成されている。そして、上面側の突部56・・によって、スライド部材51の上面と天井レール5の上面との間に隙間が確保され、これによって天井レール5の上面を天井材22に取り付けるためのビス61の頭部を回避しながら、第1突起32を移動させることができるようになっている。下面側の突部57、57は、図6に示すように、第1突起32が室内空間1側のレール部18に沿って移動するときに、レール部18のリップ21、21上を摺動するようになっている。また、このスライド部材51の上面には、短手方向に沿った一対の係合溝58、58が形成され、図8に示すように、第1突起32が収容空間3側のレール部19に沿って移動するときに、係合溝58、58に収容空間3側のレール部19のレール材24、24が嵌り込むようになっている。
【0028】
軸部材52は、スライド部材51の下面略中央に突設された縦ボルト62と、この縦ボルト62の下端部に螺合された昇降回転体63と、縦ボルト62に螺合されたナット64とを備えている。縦ボルト62は、壁本体31における上枠材43の枠内へ突出している。昇降回転体63は、小径部65と大径部66を上下に連続させてなり、その上端面から下部にかけてボルト孔67が形成されている。このボルト孔67に対する縦ボルト62のねじ込み量を調整することで、スライド部材51の壁本体31からの上方への突出量を調整することができるようになっている。また、この調整後には、ナット64を締め付けることで、縦ボルト62と昇降回転体63とを一体化させるようにしている。
【0029】
支持部材53は、昇降回転体63の大径部66を回転自在且つ上下動自在に収容する筒状体68と、この筒状体68の下端部から側方へ張り出したフランジ69とを備え、フランジ69が壁本体31における上枠材43に固定されている。そして、筒状体68内には、上記のバネ部材54が配されていて、昇降回転体63の小径部65と大径部66との間の段差部分を筒状体68の上端部に押し付けている。
【0030】
このような第1突起32においては、天井レール5とスライド部材51とのクリアランスが極力減らされた状態となっていて、天井レール5の溝部内におけるスライド部材51のがたつきを抑えるようになっている。これにより、スライド部材51のスムーズなスライドが可能となり、間仕切り壁10の転倒も確実に防止することができる。また、スライド部材51の上方への突出量を調整することができるので、天井レール5の溝部内にスライド部材51を精度良く確実に収容させることができる。
【0031】
さらに、天井部分の不陸等によって天井レール5に撓みや歪みが生じていると、この天井レール5に沿って移動するスライド部材51が上下動することになるが、その上下動をバネ部材54の伸縮によって吸収することができ、これによって間仕切り壁10の移動における天井部分の不陸等に伴うがたつきを抑えることができる。
【0032】
なお、壁本体31の上端部には、上記のような第1突起32だけでなく、間仕切り壁10を天井面2、4と床面6、7とに跨って突っ張り固定するための図示しない固定機構が設けられている。これにより、使用時や収納時の間仕切り壁10を、天井面2、4と床面6、7との間に安定して固定することができる。
【0033】
第2突起33は、図7に示すように、床レール8に係合して、その床レール8に沿って移動自在に案内されている。この第2突起33は、壁本体31における下枠材45の溝部内に取り付けられた回転盤71と、この回転盤71に取り付けられたピン72とを備えている。回転盤71は、下枠材45のリップ44、44に跨るように取り付けられた上側の基部73に対して、下側の平板部74が縦方向の軸芯周りに回転自在に支持されている。ピン72は、その上端部が回転盤71の平板部74に固定され、壁本体31における下枠材45のウエブ46に形成した切欠部分47を通って、その下端部が床レール8に挿入されている。
【0034】
キャスター34・・としては、図10及び図11に示すように、例えば物流の現場等で使用されるような高精度なボールキャスターが用いられている。このキャスター34は、壁本体31における下枠材45のウエブ46を貫通するキャスター本体81と、このキャスター本体81から側方へ張り出して下枠材45のウエブ46下面に固定されたフランジ82と、キャスター本体81に内装されてその一部がキャスター本体81から下方へ突出したボール83とを備えている。
【0035】
また、このような壁本体31の下端部に取り付けられるキャスター34・・としては、例えば8個用意されており、これら8個のキャスター34・・が、第2突起33を挟むようにし左右4個ずつ等間隔に配置されている。従って、これら8個のキャスター34・・によって、壁本体31の荷重を分散させてバランス良く支えることができる。
【0036】
このようにして構成された間仕切り壁10においては、その壁本体31が第1突起32及び第2突起33を中心として水平方向に回転可能とされており、壁本体31が床レール8に沿った回転位置にあるときには、キャスター34・・が床レール8上を走行可能とされ、壁本体31が床レール8からずれた回転位置にあるときには、キャスター34・・が床面6を走行可能とされている。
【0037】
次に、上記構成の可動間仕切り装置における間仕切り壁10・・の姿勢切換動作について説明する。
【0038】
まず、間仕切り壁10・・が室内空間1を間仕切る間仕切り姿勢となっているときには、図6に示すように、各間仕切り壁10における第1突起32のスライド部材51が天井レール5の室内空間1側のレール部18に沿うようにしてレール部18に収まり、図7に示すように、第2突起33のピン72が床レール8の室内空間1側のレール部26にスライド可能に挿入され、さらに図10に示すように、キャスター34・・のボール83・・がレール部26における上端エッジ間に転動可能に嵌り込んで、間仕切り壁10の壁本体31が上下レール部18、26に沿うようにしてこれらレール部18、26間に跨った状態となっている。
【0039】
この状態で、間仕切り壁10を上下のレール部18、26に沿って軽く押すことで、第1突起32のスライド部材51がレール部18内をスライドし、第2突起33のピン72が、レール部26内をスライドしながら、キャスター34・・がレール部26上を走行して、間仕切り壁10がレール部18、26に沿って移動することになる。このとき、レール部18においてスライド部材51がスムーズにスライドするとともに、複数のキャスター34・・によって壁本体31をバランス良く支えるので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに移動させることができる。
【0040】
そして、間仕切り壁10を収容空間3の手前まで移動させると、図2に示すように、間仕切り壁10の壁本体31を壁11に対して略平行になるように、第1突起32及び第2突起33を中心として約90度回転させる。このとき、図12に示すように、第1突起32のスライド部材51がレール部18内に収まり、図13に示すように、第2突起33のピン72がレール部26に収まった状態で、キャスター34・・のボール83・・が床面6上に乗り上げて床面6上を転動する。このときも、レール部18においてスライド部材51がきっちりと収容されて、複数の高精度なキャスター34・・によって、壁本体31をバランス良く支えるので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに回転させることができる。しかも、このようなスムーズな回転を可能にすることで、この回転に伴うキャスター34・・の床面6上の走行によって床面6が傷付くといった不具合もなくなる。
【0041】
このようにして、壁本体31を90度回転させた間仕切り壁10を、上下のレール部18、26に沿って軽く押すことで、開閉扉15を開けることによって開放した開口部14を通して間仕切り壁10を収容空間3内へ移動させる。このときも、第1突起32のスライド部材51がレール部18内をスライドし、第2突起33のピン72がレール部26内をスライドしながら、キャスター34・・が床面6上を走行するので、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズに移動させることができ、この移動に伴うキャスター34・・の走行によって床面6が傷付くこともない。
【0042】
このようにして間仕切り壁10を、収容空間3内に押し込んで、第1突起32のスライド部材51が室内空間1側のレール部18に連続する収容空間3側のレール部19へ案内され、第2突起33のピン72が室内空間1側のレール部26に連続する収容空間3側のレール部27へ案内されると、間仕切り壁10を上下のレール部19、27に沿って、すなわち、横長の収容空間3に沿ってスライドさせる。このとき、図8に示すように、第1突起32のスライド部材51の係合溝58、58にレール部19のレール材24、24が係合した状態で、スライド部材51がその短手方向に沿ってレール部19内をスライドし、図7に示すように、第2突起33のピン72がレール部27をスライドしながら、図10に示すように、キャスター34・・がレール部27上を走行する。これにより、スライド部材51をレール部19内において回転させずに、間仕切り壁10をがたつかせることなく、軽い力でスムーズにスライドさせることができる。
【0043】
そして、このような動作を繰り返して、間仕切り壁10・・を収容空間3へ横並びに収容し、すべての間仕切り壁10・・を収容すると、開閉扉15を閉めて、室内空間1から間仕切り壁10・・が見えないようにする。この間仕切り壁10・・の収容姿勢においては、間仕切り壁10・・の壁本体31・・が壁11の壁材12、13と対向して、間仕切り壁10・・が上下のレール部19、27に沿って略直線上に並んだ状態となっている。なお、間仕切り壁10・・を収容姿勢から間仕切り姿勢にするには、上記の動作を逆に行えば良い。
【0044】
このように、上記構成の可動間仕切り装置においては、壁11をふかしてなる収容空間3に間仕切り壁10・・を邪魔にならないように見栄え良く収容することができる。しかも、間仕切り壁10・・は、収容空間3において壁11に沿って横並びに収容されるので、収容空間3の奥行きは間仕切り壁10の厚み分よりも若干広めに確保するだけで良く、従って収容空間3を形成するにあたっての壁11のふかしを小さく抑えることができる。これにより、壁11の厚みが若干増す程度で、室内空間1において余計な出張りが生じず、デッドスペースを減らして室内空間1の有効利用を図ることができ、内装プランの自由度を高めることができる。
【0045】
さらに、間仕切り壁10・・は、壁本体31の上端部略中央及び下端部略中央から突出した第1突起32及び第2突起33を中心として、壁本体31が回転可能となっているので、例えば収容空間3の手前で壁本体31を回転させて壁11に沿うように向きを変えて、この状態で収容空間3内に押し込んで壁11に沿ってスライドさせるだけで、収容空間3に容易に収容することができる。これにより、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁10・・の切換に際しての操作性を高めることができ、しかも天井レール5及び床レール8の構造を、室内空間1側のレール部18、26と収容空間3側のレール部19、27を略直交するように連結しただけの簡単な構造とすることができる。
【0046】
さらにまた、間仕切り壁10・・の壁本体31の下端部にキャスター34・・を取り付けて、間仕切り壁10・・の移動時や回転時に、キャスター34・・がレール部26、27上若しくは床面6上を走行するので、間仕切り壁10・・の移動や回転を円滑に安定して行うことができ、操作性をさらに高めることができる。
【0047】
なお、間仕切り壁には、その壁本体の上端部両端から突出した一対の突起をレールに係合させて移動するタイプのものが多く見受けられるが、このような構造の間仕切り壁では、レールに沿って移動するだけであるから、間仕切り姿勢と収容姿勢との間での間仕切り壁の切換に際して煩雑な操作を強いられたり、レールの構造が複雑になってしまうことになり、上記のような操作性の向上、構造の簡略化を図ることができない。
【0048】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、天井レール5及び床レール8は全体的に略T字形で形成されているが、全体的に略L字形に形成しても良い。
【0050】
さらに、図14及び図15に示すように、収容空間3側のレール部19、27を壁ふかし方向に間隔をあけて2列形成して、これらを室内空間1側のレール部18、26の延長上に配置した連結レール部90、91によって連結した構造としても良い。これにより、収容空間3内において、図16に示すように、間仕切り壁10・・を壁ふかし方向に間隔をあけて2列配置することができ、間仕切り壁10・・の枚数が多い場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明の一実施形態に係る可動間仕切り装置の斜視図である。
【図2】同じくその概略横断面図である。
【図3】天井レールの斜視図である。
【図4】床レールの斜視図である。
【図5】間仕切り壁の正面図である。
【図6】室内空間側のレール部に案内された第1突起を示す縦断面図である。
【図7】室内空間側および収容空間側のレール部に案内された第2突起を示す縦断面図である。
【図8】収容空間側のレール部に案内された第1突起を示す縦断面図である。
【図9】スライド部材の斜視図である。
【図10】室内空間側及び収容空間側のレール部上を走行するキャスターを示す縦断面図である。
【図11】壁本体が床レールに沿った回転位置にあるときの間仕切り壁の下端部中央付近を示す図である。
【図12】壁本体が床レールからずれた回転位置にあるときの間仕切り壁の上端部中央付近を示す図である。
【図13】壁本体が床レールからずれた回転位置にあるときの間仕切り壁の下端部中央付近を示す図である。
【図14】天井レールの変形例を示す斜視図である。
【図15】床レールの変形例を示す斜視図である。
【図16】変形例の天井レール及び床レールを用いた可動間仕切り装置の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・室内空間、2・・室内空間の天井面、3・・収容空間、4・・収容空間の天井面、5・・天井レール、6・・室内空間の床面、7・・収容空間の床面、8・・床レール、10・・間仕切り壁、11・・壁、14・・開口部、15・・開閉扉、18・・天井レールの室内空間側のレール部、19・・天井レールの収容空間側のレール部、26・・床レールの室内空間側のレール部、27・・床レールの収容空間側のレール部、31・・壁本体、32・・第1突起、33・・第2突起、34・・キャスター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間(1)の天井面(2)と壁(11)をふかしてなる収容空間(3)の天井面(4)とに亘って設けられた天井レール(5)と、前記室内空間(1)の床面(6)と前記収容空間(3)の床面(7)とに亘って設けられた床レール(8)と、これら天井レール(5)と床レール(8)との間に跨って移動可能に取り付けられて、前記室内空間(1)を間仕切る間仕切り姿勢と前記収容空間(3)に前記壁(11)に沿って横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされた複数の間仕切り壁(10)・・とを備え、前記間仕切り壁(10)・・は、その壁本体(31)の上端部略中央から突出して前記天井レール(5)に移動自在に案内された第1突起(32)と、前記壁本体(31)の下端部略中央から突出して前記床レール(8)に移動自在に案内された第2突起(33)とを備え、前記壁本体(31)は、前記第1突起(32)及び第2突起(33)を中心として回転可能とされていることを特徴とする可動間仕切り装置。
【請求項2】
前記天井レール(5)及び床レール(8)は、その室内空間(1)側のレール部(18)(26)に対して前記壁(11)に沿った収容空間(3)側のレール部(19)(27)が略直交するように連結されている請求項1記載の可動間仕切り装置。
【請求項3】
前記天井レール(5)及び床レール(8)における前記収容空間(3)側のレール部(19)(27)は、壁ふかし方向に間隔をあけて複数列形成されている請求項2記載の可動間仕切り装置。
【請求項4】
前記壁(11)に、前記収容空間(3)に対して前記間仕切り壁(10)・・を出し入れするための開口部(14)が形成され、この開口部(14)を開閉する開閉扉(15)が前記壁(11)に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の可動間仕切り装置。
【請求項5】
前記間仕切り壁(10)・・は、その壁本体(31)の下端部に複数のキャスター(34)・・が設けられ、前記壁本体(31)の前記床レール(8)に沿った回転位置において前記キャスター(34)・・が前記床レール(8)上を走行可能とされ、前記壁本体(31)の前記床レール(8)からずれた回転位置において前記キャスター(34)・・が床面(6)上を走行可能とされている請求項1乃至4いずれかに記載の可動間仕切り装置。
【請求項1】
室内空間(1)の天井面(2)と壁(11)をふかしてなる収容空間(3)の天井面(4)とに亘って設けられた天井レール(5)と、前記室内空間(1)の床面(6)と前記収容空間(3)の床面(7)とに亘って設けられた床レール(8)と、これら天井レール(5)と床レール(8)との間に跨って移動可能に取り付けられて、前記室内空間(1)を間仕切る間仕切り姿勢と前記収容空間(3)に前記壁(11)に沿って横並びに収容される収容姿勢との間で切換可能とされた複数の間仕切り壁(10)・・とを備え、前記間仕切り壁(10)・・は、その壁本体(31)の上端部略中央から突出して前記天井レール(5)に移動自在に案内された第1突起(32)と、前記壁本体(31)の下端部略中央から突出して前記床レール(8)に移動自在に案内された第2突起(33)とを備え、前記壁本体(31)は、前記第1突起(32)及び第2突起(33)を中心として回転可能とされていることを特徴とする可動間仕切り装置。
【請求項2】
前記天井レール(5)及び床レール(8)は、その室内空間(1)側のレール部(18)(26)に対して前記壁(11)に沿った収容空間(3)側のレール部(19)(27)が略直交するように連結されている請求項1記載の可動間仕切り装置。
【請求項3】
前記天井レール(5)及び床レール(8)における前記収容空間(3)側のレール部(19)(27)は、壁ふかし方向に間隔をあけて複数列形成されている請求項2記載の可動間仕切り装置。
【請求項4】
前記壁(11)に、前記収容空間(3)に対して前記間仕切り壁(10)・・を出し入れするための開口部(14)が形成され、この開口部(14)を開閉する開閉扉(15)が前記壁(11)に設けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の可動間仕切り装置。
【請求項5】
前記間仕切り壁(10)・・は、その壁本体(31)の下端部に複数のキャスター(34)・・が設けられ、前記壁本体(31)の前記床レール(8)に沿った回転位置において前記キャスター(34)・・が前記床レール(8)上を走行可能とされ、前記壁本体(31)の前記床レール(8)からずれた回転位置において前記キャスター(34)・・が床面(6)上を走行可能とされている請求項1乃至4いずれかに記載の可動間仕切り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図11】
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【図16】
【公開番号】特開2008−297742(P2008−297742A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143021(P2007−143021)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
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