説明

可変抵抗器

【課題】シャフト部とロータ部とストッパ部とが一体成形された生産性の高い可変抵抗器を提供する。
【解決手段】本発明に係る可変抵抗器80のシャフト部41とストッパ部44とロータ部42とは一体成形される。これにより、切削加工してシャフト部41を生産する従来の手法と比較して高い生産性を有する。また、従来の手法ではシャフト部41とロータ部42との双方の固定部分を高い寸法精度で加工する必要がある。しかしながら、本発明に係る可変抵抗器80はシャフト部41とロータ部42とが一体であるためこの問題が発生せず、従来の手法と比較して高い生産性を有する。また、一体成形のためシャフト部41とロータ部42とを固定する工程が不要なため、従来の手法と比較して高い生産性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトを回転することにより抵抗値が変化する可変抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャフト部を回転させることで抵抗値が変化するロータリー型の可変抵抗器は60年以上前に開発され、様々な改良が加えられながら現在も多くの電気機器、電気設備、電動工具等に大量に使用されている。
【0003】
従来の可変抵抗器では、下記[特許文献1]に示すように、シャフト部と、当該シャフト部の回転を制限するストッパ部を有するロータ部とを別々に製造し、これらをかしめ等の手法により固定することが一般的であった。また、従来のシャフト部は、例えば黄銅丸棒材を精密自動旋盤で切削加工して製造することが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−238607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可変抵抗器のシャフト部はH状の両面カットなどの精密加工が必要であり、また昨今の小型化の要求も相まって従来の切削加工による製法では生産性が悪いという問題点がある。さらに、シャフト部とロータ部(ストッパ部)とを別体で製造し固定する従来の製法では、シャフト部とロータ部(ストッパ部)とを十分な強度で固定するために、双方の固定部分の寸法を高精度で加工する必要があり、生産性が悪いという問題点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、シャフト部とロータ部とストッパ部とが一体成形された生産性の高い可変抵抗器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)略円弧状の抵抗被膜32が一方の面に形成されたエレメント部30と、貫通孔12と当接部14とを備えたケース体10と、前記貫通孔12に可動な状態で嵌入されるシャフト部41と、前記当接部14に当接することで前記シャフト部41の回転を制限するストッパ部44と、前記シャフト部41とともに回転するロータ部42と、前記ロータ部42の回転により前記抵抗被膜32と接しながら摺動する摺動子20と、を有する可変抵抗器において、
前記シャフト部41と前記ロータ部42と前記ストッパ部44とが一体成形されていることを特徴とする可変抵抗器80を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)ケース体10とシャフト部41との間に前記シャフト部41の回転を円滑にするためのスペーサ部材70を設けたことを特徴とする上記(1)記載の可変抵抗器80を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る可変抵抗器は、シャフト部とロータ部とストッパ部とが一体成形されているため生産性が高い。また、一体成形のためシャフト部とロータ部との強度不足が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る可変抵抗器の基本構成を示す分解斜視図である
【図2】本発明に係る可変抵抗器の模式断面図である。
【図3】本発明に係る可変抵抗器のストッパ部の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る可変抵抗器の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、図2においては、後述のエレメントターミナル50及び中間ターミナル60に関係する部位の記載を省略する。また、図3においては、ケース体10及び回転部40以外の部位に関する記載を省略する。
【0011】
図1は本発明に係る可変抵抗器80の基本構成を示す分解斜視図である。図1に示す可変抵抗器80は、抵抗被膜32が一方の面に形成されたエレメント部30と、貫通孔12と当接部14とを備えたケース体10と、シャフト部41とストッパ部44とロータ部42とが一体成形された回転部40と、回転部40とともに回転する摺動子20と、エレメント部30と電気的に接続するエレメントターミナル50と、シャフト部41と電気的に接続する中間ターミナル60と、を有している。
【0012】
エレメント部30は、例えばガラスエポキシ樹脂基板、フェノール樹脂基板等で構成されており、一端が切り欠かかれた略円弧形状を呈している。そして、エレメント部30の一方の面にはシャフト部41の回転軸を略中心とした略円弧状の抵抗被膜32が形成されている。また、エレメント部30の両端にはエレメントターミナル50を接続するための接続孔34が穿孔されている。尚、エレメント部30の接続孔34から抵抗被膜32の両端部分にかけては、銀等の導電性金属による導電引出部31が印刷等の方法により形成されており、この導電引出部31の一部と重なるように抵抗被膜32を形成することで双方の導電引出部31と抵抗被膜32の両端部分とは導通する。
【0013】
ケース体10は例えばプラスチック等の合成樹脂で構成されており、モールド成型等の周知の手法により製造される。そして、ケース体10にはシャフト部41が可動な状態で嵌入される貫通孔12が形成されている。また、ケース体10の内側にはストッパ部44が当接することで回転部40(ロータ部42及びシャフト部41)の回転を制限する当接部14が形成されている。さらに、ケース体10には、エレメント部30の接続孔34と対応する位置にエレメントターミナル50の接続筒52が嵌入するターミナル孔16が穿孔されている。また、後述の中間ターミナル固定孔66に対応する位置に中間ターミナル60を固定するためのハトメ部材8が嵌入するハトメ孔18が穿孔されている。
【0014】
摺動子20は例えば導電性の金属板で形成されており、中央部に固定孔22を有している。そして、摺動子20は固定孔22にシャフト部41が嵌入することで回転部40に固定され、回転部40とともに回転する。また、摺動子20は接触端24を有しており、接触端24は摺動子20のバネ機構によって抵抗被膜32に所定の圧力で押し付けられる。これにより、回転部40と抵抗被膜32とは接触端24を介して導通する。
【0015】
エレメントターミナル50は導電性の金属板で構成されており、一端側に接続筒52が形成され、他端側にエレメント電極54が形成されている。そして、接続筒52はケース体10のターミナル孔16及びエレメント部30の接続孔34に嵌入され、この状態で押圧されることで変形する。これにより、エレメントターミナル50はケース体10及びエレメント部30に固定されるとともに、接続筒52及び導電引出部31を介して抵抗被膜32と導通する。
【0016】
中間ターミナル60はエレメントターミナル50と同様、導電性の金属板で形成されている。そして、中間ターミナル60の一端側にはシャフト部41の接続溝46に嵌るU字端子62が形成されており、他端側には中間電極64が形成されている。また、中間ターミナル60の所定の位置にはハトメ部材8が嵌入する中間ターミナル固定孔66が形成されている。そして、中間ターミナル60は、ハトメ部材8が中間ターミナル固定孔66及びケース体10のハトメ孔18に嵌入された上で押圧変形することでケース体10に固定される。
【0017】
シャフト部41とロータ部42とストッパ部44とで構成される回転部40は例えば導電性の金属で構成されており、高い寸法精度を有する金属ダイカスト金型により一体成形される。中でも特に、亜鉛ダイカストを用いることが好ましい。そして、回転部40を構成するシャフト部41の一端側には中間ターミナル60のU字端子62が嵌る接続溝46が形成されており、他端側には回転ツマミを固定可能な回転ツマミ固定部48が形成されている。また、ロータ部42の一部は外側に延伸してストッパ部44となっており、ストッパ部44の両端にはストッパ端44aが形成されている。そして、回転部40のシャフト部41をケース体10の貫通孔12に可動な状態で嵌入した上で接続溝46にU字端子62を嵌め込み、次いで中間ターミナル60をハトメ部材8で固定することで、回転部40はケース体10内に回転可能な状態で固定される。尚、回転部40と中間ターミナル60とは接続溝46及びU字端子62を介して導通する。これにより、中間ターミナル60とエレメントターミナル50とは、回転部40、摺動子20、エレメント部30を介して抵抗被膜32を挟んで電気的に接続する。
【0018】
また、本発明に係る可変抵抗器80は、図1及び図2に示すように、ケース体10における貫通孔12の形成面13とシャフト部41との間に表面が滑らかなスペーサ部材70を設けても良い。この構成によれば、回転部40の回転時の摩擦抵抗が減少し、回転部40(シャフト部41)を低トルクで円滑に回転させることができる。スペーサ部材70としては、中央にシャフト部41が挿入可能な中央孔を有する金属製のワッシャ部材を用いることが好ましい。
【0019】
尚、ケース体10は回転ツマミ固定部48が露出する図示しない蓋体により閉塞される。以上が可変抵抗器80の基本構成である。
【0020】
そして、可変抵抗器80は中間電極64とエレメント電極54とが電気機器の基板等に半田付されることで固定される。これにより、可変抵抗器80は中間電極64とエレメント電極54とを介して基板等と電気的に接続する。
【0021】
ここで、ユーザ等が可変抵抗器80に固定された回転ツマミを回すと、摺動子20が回転部40とともに回転する。これにより、摺動子20の接触端24は抵抗被膜32上を同心円状に移動する。接触端24が抵抗被膜32上を移動すると、接触端24と抵抗被膜32との接触位置が移動し、エレメントターミナル50と接触端24との間の抵抗被膜32の長短が変化する。これにより、中間ターミナル60とエレメントターミナル50間の抵抗値が変化する。
【0022】
ここで、シャフト部41を例えば右方向に回転させると図3の実線で示すようにケース体10の当接部14とストッパ部44の一方のストッパ端44aとが当接する。これにより、シャフト部41の右方向のこれ以上の回転は制限される。また、シャフト部41を左方向に回転させると図3の破線で示すようにケース体10の当接部14と他方のストッパ端44aとが当接する。これにより、シャフト部41の左方向のこれ以上の回転は制限される。
【0023】
尚、前述のように本発明に係る可変抵抗器80の回転部40、即ちシャフト部41とストッパ部44とロータ部42とは、高い寸法精度を有する金属ダイカスト金型により一体成形される。これにより、棒材を精密自動旋盤で切削加工してシャフト部41を生産する従来の手法と比較して高い生産性を有する。また、従来の手法ではシャフト部41とロータ部42(ストッパ部44)とを別体で製造しプレス等でかしめて固定するため、シャフト部41とロータ部42との双方の固定部分を高い寸法精度で加工する必要がある。しかしながら、本発明に係る回転部40は、シャフト部41とロータ部42(ストッパ部44)とが一体であるためこの問題が発生せず、従来の手法と比較して高い生産性を有する。また、一体成形のためシャフト部41とロータ部42とを固定する工程が不要なため、従来の手法と比較して高い生産性を有する。この生産性の向上により、可変抵抗器80の製造コストの削減を図ることができる。
【0024】
また、従来の手法では寸法精度やかしめによる固定具合によってシャフト部41とロータ部42との固定強度が不十分となる場合がある。しかしながら、本発明に係る回転部40は、シャフト部41とロータ部42(ストッパ部44)とが一体であるためこの強度不足が生じることはない。
【0025】
尚、本例で示した可変抵抗器80は一例であり、各部の形状、構成、動作機構等はこれに限定されるわけではない。さらに、ON/OFFスイッチ等の付加機能を有する可変抵抗器80にも適用が可能な他、本発明は本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 ケース体
12 貫通孔
14 当接部
20 摺動子
32 抵抗被膜
30 エレメント部
41 シャフト部
42 ロータ部
44 ストッパ部
70 スペーサ部材
80 可変抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円弧状の抵抗被膜が一方の面に形成されたエレメント部と、
貫通孔と当接部とを備えたケース体と、
前記貫通孔に可動な状態で嵌入されるシャフト部と、
前記当接部に当接することで前記シャフト部の回転を制限するストッパ部と、
前記シャフト部とともに回転するロータ部と、
前記ロータ部の回転により前記抵抗被膜と接しながら摺動する摺動子と、
を有する可変抵抗器において、
前記シャフト部と前記ロータ部と前記ストッパ部とが一体成形されていることを特徴とする可変抵抗器。
【請求項2】
ケース体とシャフト部との間に前記シャフト部の回転を円滑にするためのスペーサ部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の可変抵抗器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−38378(P2013−38378A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−16373(P2012−16373)
【出願日】平成24年1月30日(2012.1.30)
【出願人】(593163254)ツバメ無線株式会社 (5)
【Fターム(参考)】