説明

可変色光を発生するデバイス

照明システム(100)は、ランプアセンブリ(14)と、コントローラ(115)と、ユーザ入力デバイス(19)と、離散した色点を限定し、1D色相テーブル(121)、1D彩度テーブル(122)、1D輝度テーブル(123)を含むメモリ(120)と、色空間の境界を限定する境界メモリ(124)とを含む。ユーザ入力デバイスから受信したデータ(x1、x2、x3)とメモリ内の情報とに基づいて、コントローラはランプアセンブリのための色制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生する。コントローラは、ユーザ入力データと境界メモリ内の情報とを比較する。もしコントローラが、上記点が色空間の境界の外側に位置していることを見出せば、コントローラは境界メモリ(124)内に限定されている色空間境界上の置換点を計算し、この置換点に基づいてその制御信号を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には照明の分野に関する。より特定的には、本発明は可変色光を発生する照明デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ある空間を可変色で照明するための照明システムが広く知られている。一般的に、これらのシステムは複数の光源を含み、各光源が特定の色の光を放出するようになっており、異なる光源のそれぞれの色は相互に異なっている。このシステムが全体として発生する総合光は、幾つかの光源が放出する光の混合である。異なる光源の相対強度を変化させることによって、混合された総合光の色を変化させることができる。
【0003】
光源は、例えばTLランプ、ハロゲンランプ、LED等のような異なる型であることができることに注目されたい。以下の説明では、単に“ランプ”という語を使用するが、これはLEDを排除する意図がないものと理解されたい。
【0004】
可変色照明システムの例に、劇場における照明システムがある。ショウの間、照明の色を変化させることが望ましいであろう。しかしながら、家庭、店、レストラン、ホテル、学校、病院等の場合でも、照明の色を変化させ得るようにしておくがことが望ましいかも知れない。劇場等のような場合には、色は、典型的に劇的効果を高めるために展開と共に変化させるが、他の状況では滑らかに且つゆっくりと移行させることがより望ましいであろう。
【0005】
当業者ならば理解されるように、光の色は色空間内の色点の座標によって表すことができる。このような表現方法においては、色が変化するということは色空間内の1つの色点から別の色点への変位に、またはシステムの色点の設定の変位に対応する。更に、色のシーケンスは色空間内の色点の集まりに対応し、この集まりは経路として表される。従って、色を動的に変化させることは、この経路を“移動”することとして表すことができる。より一般的に言えば、光の色を動的に変化させるということは、色空間を通して“ナビゲート”することとして表されよう。
【0006】
典型的には、照明システムは3つのランプを含んでいる。通常、これらのランプは近赤(R)、近緑(G)、近青(B)であり、このシステムはRGBシステムと称される。各ランプの光強度は、0(無光)から1(最高強度)までの数で表すことができる。色点は三次元座標(ξ1、ξ2、ξ3)によって表すことができ、0から1までの範囲内の各座標はランプの1つの相対強度に線形に対応する。個々のランプの色点は、それぞれ(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)として表すことができる。これらの点は、色空間内の三角形を記述している。この三角形内の全ての色を、システムによって発生させることができる。
【0007】
理論的には、色空間は連続体であると考えることができる。しかしながら実際には、照明システムのコントローラは、離散した制御信号だけを発生することができるデジタルコントローラである。ユーザが、このようなデジタルコントローラを含むシステムを用いて色空間をナビゲートしたい場合には、彼は座標の1つの方向に向けて離散したステップのみを取ることができる。問題は、RGB色空間が線形空間ではなく、従って、色強度座標軸の1つに沿ってあるサイズの離散したステップを進めた時、ユーザが知覚する色変化の量が一定ではなく、色空間内の実際の位置に依存することである。
【0008】
この問題を解消するために、CIELAB色空間のような異なる色空間表現が提唱されている。この色空間の独立変数は、色相(H)、彩度(S;CIELABでは、S=彩度(chroma)/明度(lightness)を用いて計算)、輝度(brightness)(B;CIELABでは、明度(lightness)から計算)である。明度が均一に知覚されることから(即ち、明度レベルの線形変化が、ユーザには光強度レベルも線形に変化しているものと知覚される)、このパラメータを輝度の代わりに使用すると有利である。しかしながら、記述を一般化するために、以下の説明では“輝度”というパラメータを使用することとし、それらの値も知覚的均一分布を用いて記載される(例えば、u’V’Y空間では、“Y”が強度(明度)を記述し、知覚的均一輝度分布は対数(Y)である)。CIELAB色空間は、離散した点の三次元空間(3D格子)と見ることができる。この空間内の各点は座標m、n、pで表すことができ、各点における色相(H)、彩度(S)、輝度(B)はそれぞれ特定値H(m,n,p)、S(m,n,p)、B(m,n,p)を有している。ユーザが3つの座標軸の何れかに沿って離散ステップを進めれば、その色が色空間の外側境界(色域)の内側にある限り、それぞれ色相(hue)、彩度(saturation)、または輝度(brightness)の所定の、及び一定の変化を得ることができる。原理的には、変数色相、彩度、及び輝度は互いに独立している。しかしながら、色相、彩度、及び輝度の可能な値の全ての組合せが物理的に可能な色に対応する訳ではない。最新技術のシステムは、色相、彩度、及び輝度のそれぞれのために3つの3D(3次元)ルックアップテーブルを含んでいる。これらの3Dルックアップテーブルを用いた場合、m、n、及びpの組合せ毎に得られるH、S、及びBの組合せが物理的に可能な色に対応するのか否かを検討し、もし必要ならばテーブル内にずれ値を入力することが容易に可能である。H、S、及びBの組合せが物理的に不可能な色をもたらすようなメモリ位置について、テーブルは特定のコードを含むか、または異なる色の値(例えば、色空間境界の最寄り値)を含むことができる。
【0009】
しかしながら、3Dルックアップテーブルを用いるこの解決策は、比較的大量のメモリ空間を必要とすることが問題である。例えば、システムは、輝度を25の可能な輝度レベルで、彩度を75の可能な彩度レベルで、そして色相を200の可能な色相レベルで独立的に設定することができる。このような状況では、システムは3*200*75*25=1125000メモリ位置(1Mバイト以上)を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、必要なメモリ空間の量を減少させ、限定されたメモリ空間を有する低コストマイクロコントローラを使用可能にすることを目的としている。本発明のさらなる目的は、(H,S,B)テーブルの色値を格納するためのより効率的な手法を提供し、一定の色相、彩度、または輝度の線に沿って(H,S,B)テーブルを通る簡単なナビゲーション方法を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の重要な面によれば、必要なメモリ空間を大幅に減少させるようにCIELAB色テーブルをより効率的な手法で格納する。詳述すれば、色相、彩度、及び輝度のために、一次元独立アレイを使用する。更に、H、S、及びBの有効組合せを定義するために付加的な独立アレイを使用する。上述した例では、36000より少ないメモリ位置でありながら同じ機能を達成することが可能であり、これは所要メモリサイズを30分の1以下まで減少させることを意味する。
【0012】
本発明のこれらの、及び他の面、特色、及び長所は、以下の添付図面に基づく説明から明白になるであろう。添付図面においては、同一の、または類似の部品に対しては同一の番号を付してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、CIE(xy)色度図を示す。この図は公知であり、従って説明は最小限に留める。点(1,0)、(0,0)、及び(0,1)はそれぞれ、理想的な赤、青、及び緑を表しており、これらは仮想色である。曲線1は、純スペクトル色を表している。波長はナノメートル(nm)で表されている。破線2は、曲線1の端を結んでいる。曲線1と破線2によって囲まれた領域3は全可視色を含む。曲線1の純スペクトル色に対して、領域3の色は混合色であり、これは2つまたはそれ以上の純スペクトル色を混合することによって得ることができる。反対に、各可視色は、色度図内の座標によって表すことができ、色度図内の点は“色点”として表される。
【0014】
当業者には明らかなように、例えばRGB図のような異なる図式的色表現も使用できることに注目されたい。しかしながら、RGB空間内の色の分布は完全にデバイス従属である(例えば、あるRGB値は、一般的に、各々が異なるRGB原色を有する異なるランプで異なる知覚色を与えよう)。
【0015】
色は、CIELAB色空間(L*a*b*色空間とも呼ぶ)のような、デバイス独立色空間で表すことが好ましい。CIELAB空間は知覚的に均一であるが故に好ましい。これらの色空間に関係付けられた色定義は当業者には公知であるから、詳細な説明は省略する。これらの空間が、独立変数として色相(後に説明する)、彩度(後に説明する)、及び輝度(総合光強度の測度)を有し、RGB空間における色表現を1対1のマトリックス変換を介してCIELAB色空間における色表現に、またはその逆に変換することができることに言及すれば十分であろう。
【0016】
色相、彩度、及び輝度の基本的概念は、CIE 1931(x,y)色空間内で最も容易に説明することができるが、他の色空間において他の定義を得ることもできる。簡易化のために、以下CIE 1931(x,y)色空間を使用する。
【0017】
2つの純スペクトル色を混合すると、得られる混合色の色点は2つの純色の色点を結ぶ線上に位置し、得られる色点の正確な位置は混合比(強度比)に依存する。例えば、バイオレットと赤とを混合すると、得られる混合色パープルの色点は破線2上に位置する。もし2つの色を混合して白色光を得ることができれば、これら2つの色を“補色”と呼ぶ。例えば、図1に示す青(480nm)と黄(580nm)を結ぶ線4は白色の点を横切る線であり、青色光と黄色光が正確な強度比であれば白色光として知覚されることを表している。このことは他のどのセットの補色にも適用され、対応する強度比が正確であればその混合光は白色光として知覚される。それでも、実際にはこの混合光が、異なる波長の2つのスペクトル貢献部分を含んでいることに注目されたい。
【0018】
もし2つの補色(ランプ)の光強度をそれぞれI1及びI2で表せば、混合光の総合強度ItotはI1+I2によって定義され、一方得られる色は比I1/I2によって定義さえる。例えば、第1の色が強度I1の青であり、第2の色が強度I2の黄であるものとする。もしI2=0であれば、得られる色は純青であり、得られる色点は曲線1上に位置する。もしI2を増加させれば、色点は線4上を白色点に向かって移動する。色点が純青と白との間に位置している限り、対応する色は未だ青味がかって見えるが、白色点に接近すると得られる色はより青白く見えるようになる。
【0019】
以下の説明では、“色”という語はフレーズ“色点”に関連付けて、領域3内の実際の色のために使用する。色の“印象”は“色相”という語によって表される。上例では、色相は青である。色相が曲線1のスペクトル色に関連付けられていることに注目されたい。色点毎にこの色点を、白色点を横切る線に沿って曲線1上に投影することによって、対応色相を見出すことができる。
【0020】
更に、色が多少なりとも青白い色相であることを“彩度”というフレーズによって表す。もし色点が曲線1上に位置していれば対応する色は純スペクトル色であり、これはまた完全飽和(彩度)色相(彩度=1)として表される。色点が白色点に向かって移動するにつれて彩度は減少し(彩度の小さい色相、またはより青白い色相)、白色点においては彩度が0であると定義されている。
【0021】
多くの可視色は2つの色を混合することによって得ることができるが、図1から容易に理解されるように、これが全ての色に適用されるのではないことに注目されたい。如何なる所望の色をも有する光を発生させることができるようにするためには、3つの異なる色を発生する3つのランプが必要である。より多くのランプを使用することはできるが、必須ではない。
【0022】
図2は、ランプアセンブリ14を含む照明システム10のブロックダイアグラムである。ランプアセンブリ14は複数の(ここでは、3つの)ランプ12A、12B、12Cを含み、各ランプは共通コントローラ15によって制御されるランプドライバ13A、13B、13Cにそれぞれ組合されている。ユーザ入力デバイスは、参照番号19で示されている。3つのランプ12A、12B、12Cは、相互に異なる光色(使用される典型的な色は、赤(R)、緑(G)、青(B)である)を有する光16A、16B、16Cをそれぞれ発生する。図1に3つの色点C1、C2、C3によってそれぞれ例示してあるように、純赤、純緑、及び純青の代わりに、ランプは近赤光、近緑光、及び近青光を典型的に放出するようになっている。ランプアセンブリ14が放出する番号17で示す総合光は個々の光16A、16B、16Cの混合であり、端点C1、C2、C3によって限定される三角形内に色点を有している。システム10を用いた場合、もし個々のランプ12A、12B、12Cの光強度を連続的に変化させることが可能であれば、出力混合光17の混合色を上記三角形内の如何なる所望位置にも設定することが可能である。しかしながら、典型的には、コントローラ15はデジタルコントローラであり、個々のランプ12A、12B、12Cの光強度は離散したステップでしか変化させることはできない。このような場合、得ることができる色点は、色空間内の格子に沿って位置している。もしこの格子が十分に細かく入り組んでいれば、1つの点から隣の点までのステップの離散を人の眼が見分けることは不可能である。色表現に関して言えば、CIELAB色空間は、2つの隣り合う格子点間の距離がCIELAB色空間全体にわたって知覚される色の実質的に等しい差に対応しているので好ましい。
【0023】
CIELAB色空間においては、色相、彩度、及び輝度は、その色が色空間境界の内側にある限り、互いに独立的に変化させることができる。本発明では、色相、彩度、及び輝度について線形(又は一次の)軸を使用する。これらの線形軸は円柱座標を有する色空間にわたっている。更に、各軸は離散化されている。即ち、各軸に沿って離散したステップでのみ進むことができる。これらのステップは、各軸に沿う色ステップ(CIELABでは、例えば色差値ΔEで記述される)が知覚的に均一になるように選択される。このような離散化された色空間内の各色は、色相、彩度、及び輝度の3つの各軸に沿う値の組合せによって記述される。このようにして発生された色を通るナビゲーションは、これらの色が色空間境界の内側にある限り、定色相、彩度、及び輝度の線に沿って知覚的にほぼ等距離の色ステップをもたらす。
【0024】
詳述すれば、輝度Bは、最小値Bmin(通常は、0より大きい値)から最大値Bmaxまで等距離ステップで変化させることができる。可能輝度レベルの数は、NBによって表される。上記知覚等距離ステップのサイズはΔBで表される。“輝度指標”pを使用すれば、輝度B(p)のNB可能値は以下の式に従って表すことができる。
B(p)=Bmin+p*ΔB (1)
但し、指標pは0からNB−1までの整数である。
【0025】
ΔB=(Bmax−Bmin)/(NB−1)であることは、容易に理解できよう。CIELAB空間を使用する場合には、“輝度(lightness)”の代わりに“輝度(brightness)”が使用され、輝度(lightness)の線形増加も人の観測者には輝度(brightness)の線形増加として知覚される。他の色空間においてこのような分布を得るためには、Bを対数(強度)で、強度を〔ルックス〕または対数(フラックス)で、フラックスを〔ルーメン〕で定義すべきである。
【0026】
同様に、彩度Sは、最小値Smin(通常は、0に等しい)から最大値Smax(通常は、1に等しい)まで等距離ステップで変化させることができる。可能彩度レベルの数は、NSによって表される。上記等距離ステップのサイズはΔSで表される。“彩度指標”nを使用すれば、彩度S(n)のNS可能値は以下の式に従って表すことができる。
S(n)=Smin+n*ΔS (2)
但し、指標nは0からNS−1までの整数である。
【0027】
ΔS=(Smax−Smin)/(NS−1)であることは、容易に理解できよう。
【0028】
同様に、色相Hは、適当に選択された最小値Hminから、適当に選択された最大値Hmaxまで等距離ステップで変化させることができる。可能色相レベルの数は、NHによって表される。上記等距離ステップのサイズはΔHで表される。“色相指標”mを使用すれば、色相H(m)のNH可能値は以下の式に従って表すことができる。
H(m)=Hmin+m*ΔH (3)
但し、指標mは0からNH−1までの整数である。
【0029】
ΔH=(Hmax−Hmin)/(NH−1)であることは、容易に理解できよう。CIELABでは、ΔHのために、色空間境界の周囲の色相円に沿って

を用いて定義されたメトリック色相差を使用する。但し、

は、それぞれ、2つの順次色の2つの色度値の算術平均、色相角差である。(Hmax−Hmin)は色空間境界に沿う色相円のメトリック長さである(これは、境界に沿う順次色間の全てのΔH差の和として計算される)。
【0030】
以上から、色空間内の点は、指標m、n、pによって規定することができ、またこれらの点内の色は3つの独立パラメータm、n、pの関数であると考え得ることになる。図2は、ユーザ入力デバイス19によってユーザがm、n、及びpの値を独立的に選択できることを示している。ユーザ入力デバイス19は、コントローラ15に入力値m、n、pを独立的に供給する3つの独立入力デバイス19H、19S、及び19Bの組合せとして示されている。これらの入力値m、n、pに基づいて、コントローラはランプアセンブリ14のドライバ13A、13B、13Cのための1組の制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生する。
【0031】
上式は更に、(例えば)色相が指標mだけに依存し、他の指標n及びpには依存しないことを示唆している。実際には、これは若干の色点だけに関してのみ真である。しかしながら、パラメータm、n、pが物理的に不可能な色の組合せをもたらす値を有しているような色点が存在する。
【0032】
従来技術では、コントローラ15内に、それぞれ色相、彩度、及び輝度のための3つの3Dテーブルを含むメモリ18を設けることによってこの問題を解消していた。図2においては、これは、それぞれ3D色相テーブルH(m、n、p)、3D彩度テーブルS(m、n、p)、及び3D輝度テーブルB(m、n、p)を含む3つの独立メモリ18H、18S、18Bの組合せとして示されている。ユーザが指標mを値x1にセットし、指標nを値x2にセットし、そして指標pを値x3にセットしたものとすれば、コントローラ15は色相テーブルH(m、n、p)から値H(x1、x2、x3)を取出し、彩度テーブルS(m、n、p)から値S(x1、x2、x3)を取出し、そして輝度テーブルB(m、n、p)から値B(x1、x2、x3)を取出し、これらの値に基づいて制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生する。値x1、x2、x3の全ての可能な組合せについて、これらテーブルは、組合せH(m、n、p)、S(m、n、p)、及びB(m、n、p)が常に物理的に可能な色に対応するように充填されている。これは、2つの点(x1、x2、x3)及び(x1、x2、x3+Δx)を比較した時に、色相H(x1、x2、x3)が色相H(x1、x2、x3+Δx)とは異なることを、及び/または彩度S(x1、x2、x3)が彩度S(x1、x2、x3+Δx)とは異なることを意味している。上述したように、このアプローチは、メモリ18が3*NH*NS*NBメモリ位置を必要とする問題を抱えている。
【0033】
本発明が提唱する解決策を図3に示す。図3は、本発明による照明システム100の(図2に類似する)ブロックダイアグラムである。図2の照明システム10と比較すると、コントローラ15はコントローラ115に置換され、メモリ18はメモリ120に置換されている。メモリ120は幾つかのテーブルを含んでいる。参照番号121は、NHの色相値H(m)を含む1D(1次元)色相テーブルを表している。参照番号122は、NSの彩度値S(n)を含む1D(1次元)彩度テーブルを表している。参照番号123は、NBの輝度B(p)を含む1D(1次元)輝度テーブルを表している。これらの3つのテーブルは、合計でもNH+NS+NBメモリ位置しか必要としない。
【0034】
彩度及び輝度のための指標n及びpを一定に保ち、色相指標mを0からNH−1までの範囲にわたって変化させた場合、色相H(m)を1D色相テーブル121から取出すことができないようなサブレンジが存在し得る。それは、この色相H(m)と、彩度S(n)及び輝度B(p)との組合せが物理的に不可能な色をもたらすからである。
【0035】
本発明のさらなる面によれば、この問題は以下のようにして解消される。即ち、物理的に可能な色の境界を、各輝度レベルにおける座標(色相 バウンド、S バウンド(色相 バウンド、B バウンド)、B バウンド)を用いて記述する。本質的には色相 バウンド(境界)及びB バウンド(境界)だけの関数であるS バウンド(境界)によって記述されるこの境界は、(NH*NB)のメモリ位置を有するメモリ内に格納することができる。3つの線形軸によって発生される色(色相、彩度、輝度)がこの境界の外側にあるとき、彩度Sは境界値S バウンドで置換される。これは、S軸に平行な線に沿った境界上への(H、S、B)の投影と解釈することができる。
【0036】
これで、合計メモリ使用は(NH+NS+NB)+NH*NBになる。NH=200、NS=75、NB=25である前例の場合、これは(200+75+25)+(200*25)=5300のメモリ位置になる。これは、従来技術の方法に比してメモリを212分の1に低減している。
【0037】
以下に、さらなる実施の形態を説明する。即ち、指定された色相について指定された彩度Sが、レベルB バウンドにおける境界の彩度レベルS バウンドよりは大きいが、同じ色相におけるより低い(より高い)輝度レベルにおける物理的に可能な彩度よりは小さい場合には、指定された色相において物理的に可能な色空間境界の最寄りのより低い(より高い)輝度レベルにおける彩度及び輝度値を使用することができる。境界上の最寄り点は、色空間境界上の最大輝度を、彩度S及び色相Hと共に有する色点を探索することによって見出すことができる。この解決策の長所は、より飽和した色に向かう容易なナビゲーションを可能にすることである。しかしながら、S バウンドが最早(色相 バウンド、B バウンド)の各対のための単一値ではなく、指定されたS自体の値に依存するので、(NH+NS+NB)+NH*NBよりも多くのメモリ使用をもたらし得る。経験から、これによって、置換のためにほぼ0.5*2*NH*NS*NBのメモリ位置を生ずることが推定される。これは、従来技術の方法に比して3分の1までメモリを低減させる。メモリのさらなる低減は、境界点に曲線をフィット(近似)させ(好ましくは、線形補間)、これらの近似をメモリ内に格納することによって得ることができる。
【0038】
以上に説明した2つの方法はそれぞれ、色相、彩度、及び輝度のための3つの軸によって発生される物理的に不可能な色に対する全ての必要置換を見出すための完全な解決策である。
【0039】
これらの方法が、従来技術の所要メモリ空間に比して大幅な減少を提供していることに注目されたい。
【0040】
上述した方法の何れかを実施するために、メモリ120は更に、色空間の境界の座標を含む境界メモリ124を含む。ユーザ入力(x1、x2、x3)を受けると、コントローラ115は座標(x1、x2、x3)と境界メモリ124内の境界情報とを比較する。もし座標(x1、x2、x3)が色空間の境界の外側の点を規定すれば、コントローラ115は境界メモリ124内に規定されている境界上のある点の置換座標m(x1、x2、x3)、n(x1、x2、x3)、p(x1、x2、x3)を計算する。
【0041】
ユーザが入力した指標を有効とし、または修正した後に、コントローラ115は1D色相テーブル121から色相値H(x1)またはH(m(x1、x2、x3))を取出し、1D彩度テーブル122から彩度値S(x2)またはS(n(x1、x2、x3))を取出し、1D輝度テーブル123から輝度値B(x3)またはB(p(x1、x2、x3))を取出し、これらの値に基づいてその制御信号ξ1、ξ2、ξ3を発生する。
【0042】
当業者には理解されるように、本発明は上述した例示実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲内で幾つかの変形及び変更が可能である。
【0043】
以上に、本発明によるデバイスの機能的ブロックを示しているブロックダイアグラムを参照して本発明を説明した。これらの機能ブロックの1つまたはそれ以上はハードウェアで実現することができる。その場合、このような機能ブロックの機能は個々のハードウェア構成要素によって遂行させるが、これらの機能ブロックの1つまたはそれ以上をソフトウェアで実現し、このような機能ブロックの機能をコンピュータプログラムの1つまたはそれ以上のプログラムラインによって、またはマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ等のようなプログラマブルデバイスによって遂行させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】色度図を示す図である。
【図2】従来技術による照明システムのブロックダイアグラムである。
【図3】本発明による照明システムのブロックダイアグラムである。
【符号の説明】
【0045】
1 曲線
2 破線
3 領域
4 線
10 照明システム
12A−12C ランプ
13A−13C ランプドライバ
14 ランプアセンブリ
15 コントローラ
16A−16C 光
17 出力混合光
18 メモリ
18H,18S,18B 独立メモリ
19 ユーザ入力デバイス
19H,19S,19B 独立入力デバイス
100 照明システム
115 コントローラ
120 メモリ
121 1D色相テーブル
122 1D彩度テーブル
123 1D輝度テーブル
124 境界メモリ
m 色相指標
n 彩度指標
p 輝度指標
C1−C3 色点
ξ1−ξ3 制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変色を有する光を発生するための照明システム(100)であって、
可変色を有する光(17)を発生可能なランプアセンブリ(14)と、
上記ランプアセンブリ(14)を制御するためのコントローラ(115)と、
上記コントローラ(115)に結合されているユーザ入力デバイス(19)と、
離散した色点を規定しているメモリ(120)と、を含み、
上記コントローラ(115)が、上記ユーザ入力デバイス(19)から受信したデータ(x1、x2、x3)と、上記メモリ(120)内の情報とに基づいて、上記ランプアセンブリ(14)のための色制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生するように設計されている照明システム(100)において、
上記メモリ(120)は、所定数(NH)の色相値(H(m))を含む1D(1次元)色相テーブル(121)と、所定数(NS)の彩度値(S(n))を含む1D(1次元)彩度テーブル(122)と、所定数(NB)の輝度値(B(p))を含む1D(1次元)輝度テーブル(123)とを含み、
上記メモリ(120)は、色空間の境界を規定する境界メモリ(124)を含み、
上記コントローラ(115)は、上記ユーザ入力データ(x1、x2、x3)と上記境界メモリ(124)内の情報とを比較し、上記ユーザ入力データ(x1、x2、x3)の座標によって規定された点が上記色空間の境界の内側に位置するのか、または外側に位置するのかを決定するように構成され、
もし上記コントローラ(115)が、上記点は上記色空間の境界の内側に位置していることを見出せば、上記コントローラ(115)は第1のユーザ入力座標(x1)に基づいて上記1D色相テーブル(121)から色相値(H(x1))を取出し、第2のユーザ入力座標(x2)に基づいて上記1D彩度テーブル(122)から彩度値(S(x2))を取出し、第3のユーザ入力座標(x3)に基づいて上記1D輝度テーブル(123)から輝度値(B(x3))を取出し、これらの値に基づいてその制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生するように構成されており、
もし上記コントローラ(115)が、上記点は上記色空間の境界の外側に位置していることを見出せば、上記コントローラ(115)は上記境界メモリ(124)内に規定されている上記色空間境界上の1つの点の置換座標(m(x1、x2、x3)、n(x1、x2、x3)、p(x1、x2、x3))を計算し、第1の置換座標(m(x1、x2、x3))に基づいて上記1D色相テーブル(121)から色相値(H(m(x1、x2、x3)))を取出し、第2の置換座標(n(x1、x2、x3))に基づいて上記1D彩度テーブル(122)から彩度値(S(n(x1、x2、x3)))を取出し、第3の置換座標(p(x1、x2、x3))に基づいて上記1D輝度テーブル(123)から輝度値(B(p(x1、x2、x3)))を取出し、これらの値に基づいてその制御信号(ξ1、ξ2、ξ3)を発生するように構成されている、ことを特徴とする照明システム。
【請求項2】
上記コントローラ(115)は、上記ユーザが入力した座標を上記座標の軸の1つに平行な投影線に沿って上記色空間境界上に投影することによって上記置換座標を計算するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
指定された色相について指定された彩度が、あるレベル(B バウンド)における上記境界の彩度レベル(S バウンド)よりは大きいが、上記境界の上記彩度レベル(S バウンド)が、同じ色相における異なる輝度レベルにおける物理的に可能な彩度よりは小さい場合には、上記彩度値及び輝度値は、上記指定された色相において物理的に可能である上記色空間境界の最寄りの異なる輝度レベルにおける彩度値及び輝度値に置換されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−540498(P2009−540498A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513832(P2009−513832)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際出願番号】PCT/IB2007/052146
【国際公開番号】WO2007/141748
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】