説明

可搬型放射線画像撮影装置、及び放射線画像撮影システム

【課題】フレキシブル基板の移動を強制的に制限しなくても、フレキシブル基板が周囲の部品と接触しない可搬型放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】可搬型放射線画像撮影装置10は、照射された放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネル14と、入力された電気信号に対して予め定められた信号処理を行う信号処理基板18と、放射線検出パネル14と信号処理基板18の間に設けられ、信号処理基板18を保持する保持基材16と、撓みを設けて一端が放射線検出パネル14に接続され、他端が前記信号処理基板18に接続されたフレキシブル基板20と、放射線検出パネル14、信号処理基板18、保持基材16及びフレキシブル基板20が内蔵される筐体12と、信号処理基板18、保持基材16及び筐体12の少なくとも1つに形成されフレキシブル基板20との接触を回避する接触回避部24と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出パネルと信号処理基板がフレキシブル基板によって接続された可搬型放射線画像撮影装置、及び可搬型放射線画像撮影装置を有する放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、放射線を直接デジタルデータに変換することができるFPD(Flat Panel Detector)を用いた放射線検出器が実用化されている。
これに伴い、FPDを採用し、薄型化、軽量化が図られ持ち運びが可能な可搬型放射線画像撮影装置(以下、電子カセッテと記す。)が普及している。
【0003】
電子カセッテの薄型化に伴う問題の一つに、部品同士の間隔が狭くなるため、電子カセッテが振動を受けたとき、フレキシブル基板が変形して周囲の部品と接触するという問題がある。フレキシブル基板が周囲の部品に接触するとノイズが発生し、電子カセッテの画像品位が低下する。
この問題を解決すべく、薄型化しても振動の影響を受けにくくした技術が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載のX線画像撮影装置は、照射されたX線を電気信号に変換するプリント回路基板と、入力された電気信号を処理する信号処理基板を、信号処理基板を支持する基台を間に挟んで対向配置した構成である。更に、プリント回路基板と信号処理基板をフレキシブル回路基板で接続し、フレキシブル回路基板の中央部をネジで基台の端部に固定している。
この構成とすることにより、X線画像撮影装置が振動を受けてもフレキシブル回路基板の変形が制限され、フレキシブル回路基板と周囲の部品との接触が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−158341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成では、フレキシブル回路基板の移動を制限する手段として、フレキシブル回路基板の両端部をプリント回路基板及び信号処理基板にそれぞれ接続し、中央部を基台の端部にネジで固定している。
このため、X線画像撮影装置が振動を受け、プリント回路基板と信号処理基板の相対位置が移動したとき、フレキシブル回路基板とプリント回路基板との接続部、及びフレキシブル回路基板と信号処理基板との接続部の少なくとも一方に、フレキシブル回路基板を介して引張力が作用する場合がある。引張力が大きい場合には、接続部の接触不良やそれに伴うノイズの発生原因となる。
即ち、フレキシブル回路基板の中央部をネジで固定し、フレキシブル回路基板の変形を制限する手段は、新たな問題の発生を伴い好ましくないといえる。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、フレキシブル回路基板の変形を制限しなくても、フレキシブル回路基板が周囲の部品と接触しない可搬型放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る可搬型放射線画像撮影装置は、照射された放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、入力された電気信号に対して予め定められた信号処理を行う信号処理基板と、前記放射線検出パネルと前記信号処理基板の間に設けられ、前記信号処理基板を保持する保持基材と、撓みを設けて一端が前記放射線検出パネルに接続され、他端が前記信号処理基板に接続されたフレキシブル基板と、前記放射線検出パネル、前記信号処理基板、前記保持基材及び前記フレキシブル基板が内蔵される筐体と、前記信号処理基板、前記保持基材及び前記筐体の少なくとも1つに形成され、前記フレキシブル基板との接触を回避する接触回避部と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、光電変換素子を有する放射線検出パネルにより、照射された放射線が電気信号に変換され、信号処理基板により、入力された電気信号に対して予め定められた信号処理が行なわれる。また、放射線検出パネルと信号処理基板の間に設けられた保持基材により、信号処理基板が保持され、フレキシブル基板により、放射線検出パネルと信号処理基板が撓みを設けて接続される。また、信号処理基板、保持基材及び筐体の少なくとも1つに形成された接触回避部により、フレキシブル基板と、信号処理基板、保持基材及び筐体との接触が回避される。
【0010】
この結果、可搬型放射線画像撮影装置が振動を受けて、放射線検出パネルと信号処理基板の間に相対変位が生じても、フレキシブル基板に設けられた撓みにより、相対変位が吸収され、フレキシブル基板と放射線検出パネル、及びフレキシブル基板と信号処理基板の接合部には引張力が作用せず、両端部の接続部の接触不良を防止できる。
【0011】
また、接触部以外のフレキシブル基板は、接触回避部により周囲の部品との接触が制限されており、周囲の部品との接触によるノイズの発生を抑制できる。
即ち、フレキシブル基板の変形を制限しなくても、フレキシブル基板が周囲の部品と接触しない可搬型放射線画像撮影装置を提供することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記接触回避部は、前記フレキシブル基板の幅より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記筐体の内壁に設けられた筐体凹部であることを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、筐体凹部は、筐体の内壁に、フレキシブル基板と対向して、フレキシブル基板の幅より広い幅で形成されている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動を受けても、フレキシブル基板と筐体との接触を防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記接触回避部は、前記フレキシブル基板より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記保持基材の端部に設けられた基材凹部であることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、基材凹部は、保持基材の端面に、フレキシブル基板と対向して、フレキシブル基板の幅より広い幅で形成されている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動を受けても、フレキシブル基板と保持基材の端面との接触を防ぐことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記接触回避部は、前記フレキシブル基板より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記信号処理基板の端部に設けられた基板凹部であることを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、基板凹部は、信号処理基板の端面に、フレキシブル基板と対向して、フレキシブル基板の幅より広い幅で形成されている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動を受けても、フレキシブル基板と信号処理基板の端面との接触を防ぐことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記接触回避部は、前記フレキシブル基板より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記信号処理基板の端部に設けられた面取り部であることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、面取り部は、信号処理基板の端面に、フレキシブル基板と対向して、フレキシブル基板の幅より広い幅で形成されている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動を受けても、フレキシブル基板と信号処理基板の端面との接触を防ぐことができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、隣接する筐体凹部の間には、前記筐体の強度を維持するリブが形成されていることを特徴としている。
これにより、筐体に筐体凹部を設けても、筐体の強度を維持することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記フレキシブル基板の撓みは、前記放射線検出パネル、前記信号処理基板、前記保持基材の端部から離れる方向へ曲げられた曲がり部であることを特徴としている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動した際に発生する、放射線検出パネルと信号処理基板の間の相対変位を、フレキシブル基板の曲がり部である撓みに吸収させることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記フレキシブル基板の撓みは、前記フレキシブル基板を複数回折り返した折り返し部であることを特徴としている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置が振動した際に発生する、放射線検出パネルと信号処理基板の間の相対変位を、フレキシブル基板の折り返し部である撓みに吸収させることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項3〜5、7、8のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記筐体凹部の深さは、前記筐体凹部と対向する前記保持基材に前記基材凹部が形成される場合には、前記保持基材に前記基材凹部が形成されない場合よりも浅くされていることを特徴としている。
これにより、筐体凹部を設けることによる筐体の強度低下を抑制することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項4、5、7〜9のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置において、前記筐体凹部の深さは、前記信号処理基板に前記筐体凹部と対向する前記基板凹部が形成される場合には、前記信号処理基板に前記基板凹部形成されない場合よりも浅くされていることを特徴としている。
これにより、筐体凹部を設けることによる筐体の強度低下を抑制することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明に係る放射線画像撮影システムは、請求項1〜10のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置、放射線を発生させる放射線発生装置、及び可搬型放射線画像撮影装置と放射線発生装置を制御する撮影制御手段を有し、前記撮影制御手段の制御下で、前記放射線発生装置で発生させ被写体を透過した放射線を前記可搬型放射線画像撮影装置が撮像することを特徴としている。
これにより、可搬型放射線画像撮影装置を有する放射線画像撮影システムで、放射線画像を撮影することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記構成としてあるので、フレキシブル基板の変形を制限しなくても、フレキシブル基板が周囲の部品と接触しない可搬型放射線画像撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置を使用した放射線画像撮影システムの基本構成を示す概念図である。
【図3】(A)は本発明の第2の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図4】(A)は本発明の第3の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のC−C線断面図である。
【図5】(A)は本発明の第4の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す部分断面図であり、(B)は(A)のD−D線視図である。
【図6】(A)は本発明の第5の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図7】(A)は本発明の第6の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図8】(A)は本発明の第7の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のB−B線断面図である。
【図9】(A)は本発明の第8の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す鉛直断面図であり、(B)は(A)のC−C線断面図である。
【図10】(A)は本発明の第9の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す平面図であり、図1のB方向視部分拡大図である。(B)は本発明の第10の実施の形態に係る可搬型放射線画像撮影装置の基本構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図1の断面図に示すように、第1の実施の形態に係る電子カセッテ10は、中空平板状の筐体12を有し、筐体12の内部にはX線画像撮影用の部品類が収納されている。筐体12は、互いに対向する平面12A、12B、及び12C、12Dにより矩形断面形状とされている。電子カセッテ10の使用時には、矢印22の方向からX線が照射される。
筐体12は持ち運び可能な寸法形状とされ、樹脂材料や金属材料等で形成されている。
【0029】
筐体12の内部には、フラットパネルセンサー部14が設けられている。フラットパネルセンサー部14は、X線が照射される側の平板12Aに面して配置され、平面12Aのほぼ全面を覆う大きさを有している。フラットパネルセンサー部14は、図示しない固定具で平板12Aに固定されている。
フラットパネルセンサー部14は、放射線を電気信号に変換する図示しない光電変換素子を有しており、照射され被写体を通過した放射線を電気信号に変換して出力する。
【0030】
筐体12の内部には、平面12Aと対向する平板12Bに面して電子基板18が設けられている。電子基板18の長手方向は、フラットパネルセンサー部14の長手方向と平行に配置されている。
電子基板18には、フラットパネルセンサー部14から入力される電気信号を、予め定められた信号処理を行う処理回路が設けられている。
【0031】
筐体12の内部には、更に、フラットパネルセンサー部14と電子基板18の間に平板状のシャーシ16が設けられている。シャーシ16は筐体12に固定され、シャーシ16の平板12B側の面には電子基板18が取り付けられている。シャーシ16は電子基板18より広い面積で形成され、シャーシ16の平板12B側の面には、電子基板18以外の電子基板19も取り付けられている。
【0032】
電子カセッテ10の側壁12Cの内部側には、フレキシブル基板20が設けられている。フレキシブル基板20は、帯状(幅W1)の導通ケーブルであり、一端がフラットパネルセンサー部14に接続部20Aで接続され、他端が電子基板18に接続部20Bで接続されている。
これにより、フラットパネルセンサー部14と電子基板18が電気的に導通され、フラットパネルセンサー部14から電子基板18へ、照射されたX線を変換した電気信号が送られる。本実施の形態におけるフレキシブル基板20は、接続部20A、20B以外の場所では周囲のどこにも固定されていない。
【0033】
ここに、接続部20Aは、加熱状態で加圧して当接面同士を接合させる熱圧着で接合されており、接続部20Bは、信号処理基板に設けられた端子台に前記フレキシブル基板に設けられたコネクタを差し込むコネクタ接続とされている。
なお、接続部20Aと接続部20Bの接続方式は例示であり、これに限定されることはなく、接続部20Bが熱圧着で接合され、接続部20Aがコネクタ接続とされていてもよい。更に、接続部20Aと接続部20Bのいずれもが、熱圧着で接合されていてもよいし、接続部20Aと接続部20Bのいずれもが、コネクタ接続で接合されていてもよい
【0034】
また、接続部20Aと接続部20B以外のフレキシブル基板20には、曲がり部(撓み)が設けられており、電子基板18、シャーシ16、フラットパネルセンサー部14の各端部と接触しないよう、曲がり部がこれらを跨いで取り付けられている。
これにより、フラットパネルセンサー部14と電子基板18の相対変位が生じても、曲がり部が相対変位を吸収する。この結果、接続部20Aと接続部20Bに引張力が作用するのを抑制することができる。
【0035】
筐体12の内壁には、フレキシブル基板20との接触を回避する接触回避部となる切欠き部(筐体凹部)24が設けられている。筐体凹部24は、フレキシブル基板20と対向する筐体12の内壁に、フレキシブル基板20の幅W1より広い幅W2で形成されている。隣接する筐体凹部24の間には、リブ23が形成される。リブ23により、筐体12の強度低下が抑制される。
筐体凹部24の深さは、電子カセッテ10が振動を受けたとき、フレキシブル基板20の曲がり部が側壁12Cの方向へ変形しても、フレキシブル基板20と接触しないよう、フレキシブル基板20の曲がり部の変形範囲を越えた深さD2で形成されている。
【0036】
この構成とすることにより、電子カセッテ10が振動を受け、フラットパネルセンサー部14と電子基板18が相対変位しても、フレキシブル基板20に設けられた撓みにより相対変位が吸収され、接続部20A、20Bへの引張力の発生が抑制される。
また、フレキシブル基板20が筐体の内壁側へ最大寸法D1だけ変形しても、筐体凹部24により、フレキシブル基板20と筐体12との接触を防ぐことができる。
【0037】
本実施の形態の電子カセッテ10の作用について説明すると、電子カセッテ10に矢印22の方向からX線が照射された場合、光電変換素子を有するフラットパネルセンサー部14により、照射されたX線が電気信号に変換される。変換された電気信号は、フレキシブル基板20を介してフラットパネルセンサー部14と対向して設けられた電子基板18に送られる。そして、電子基板18に送られた電気信号は、電子基板18により予め定められた信号処理が行なわれる。
【0038】
次に、本実施の形態の効果について説明する。
本実施の形態とすることにより、電子カセッテ10が振動を受けても、フレキシブル基板20の両端部に引張力が作用しないので、熱圧着部20Aや端子接続部20Bにおける接続不良が抑制され、接続不良に伴うノイズの発生を抑制できる。
また、フレキシブル基板20の接続部以外の部分は、筐体凹部24により筐体20との接触が制限されるため、フレキシブル基板20と周囲の部品との接触によるノイズの発生が抑制される。
即ち、フレキシブル基板20の変形を制限しなくても、フレキシブル基板20が筐体20と接触しない電子カセッテ10を提供することができる。
【0039】
次に、本実施の形態の電子カセッテ10の使用例について説明する。
図2のシステム概念図に示すように、電子カセッテ10は、放射線画像撮影システム70に組み込まれて使用される。
電子カセッテ10は、検査用のX線を発生させるX線発生装置72と対向して配置され、電子カセッテ10とX線発生装置72との間に被写体68を挟んで使用される。電子カセッテ10とX線発生装置72は、コンソール74でそれぞれ制御される。
【0040】
電子カセッテ10とコンソール64の間は、通信ケーブル76又は無線信号Sで接続されて情報の授受が行われ、放射線発生装置72とコンソール74の間は、通信ケーブル77で接続されて情報の授受が行われる。ここに、X線発生装置72とコンソール74は、一般的に用いられている市販機器であり、説明は省略する。
【0041】
このシステム構成とすることにより、コンソール64からの制御指令を受けて、X線発生装置72によりX線が照射され、被写体68を通過したX線を電子カセッテ10で撮像することができる。
ここに検査用としてのX線は一例であり、X線以外のα線、β線、γ線、中性子線等の各種放射線であってもよい。
【0042】
(第2の実施の形態)
図3の断面図に示すように、第2の実施の形態に係る電子カセッテ30は、第1の実施の形態と、フレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が相違する。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0043】
本実施の形態においては、筐体12に内蔵されたシャーシ34の端部が、筐体12の内壁近くまで形成されており、フレキシブル基板20の曲がり部が変形したとき、シャーシ34の端面とフレキシブル基板20が接触する。
このため、シャーシ34の端部に、接触を回避する接触回避部(基材凹部)36が設けられている。
【0044】
基材凹部36は、フレキシブル基板20と対向するシャーシ34の端部に設けられた切り欠き部であり、フレキシブル基板20の幅W1より広い幅W3で設けられている。また、基材凹部36の深さD4は、電子カセッテ30が振動を受けて、フレキシブル基板20が基材凹部36の端部の方向へ最大寸法D3だけ変形しても、フレキシブル基板20がシャーシ34と接触しない深さ(D4>D3)とされている。
【0045】
この構成によれば、電子カセッテ30が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部がシャーシ34の端部側へ最大寸法D3だけ変形しても、基材凹部36により、フレキシブル基板20とシャーシ34との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20がシャーシ34に接触することによるノイズの発生を防止できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0046】
(第3の実施の形態)
図4の断面図に示すように、第3の実施の形態に係る電子カセッテ40は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0047】
本実施の形態においては、筐体12に内蔵された電子基板42の端部が、筐体12の内壁近くまで形成されており、フレキシブル基板20の曲がり部が変形したとき、フレキシブル基板20と電子基板42の端部が接触する。このため、電子基板42の端部に、接触を回避する接触回避部(基材凹部)44が設けられている。
【0048】
基板凹部44は、フレキシブル基板20と対向する回路基板42の端部に、フレキシブル基板20の幅W1より広い幅W4で設けられている。
また、基板凹部44の深さD6は、電子カセッテ10が振動を受けて、フレキシブル基板20の曲がり部が基板凹部44の端部の方向へ最大寸法D5だけ変形しても、フレキシブル基板20が回路基板42に接触しない深さ(D6>D5)とされている。
【0049】
この構成によれば、電子カセッテ40が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、電子基板42の端部側へ最大寸法D5だけ変形しても、フレキシブル基板20と電子基板42との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20が電子基板42と接触することに基づくノイズの発生を防止できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0050】
(第4の実施の形態)
図5の断面図に示すように、第4の実施の形態に係る電子カセッテ50は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0051】
本実施の形態においては、筐体12に内蔵された電子基板56は、端部が筐体12の内壁近くまで形成されており、フレキシブル基板20の曲がり部が変形したとき、電子基板56の角部とフレキシブル基板20が接触する。このため、電子基板56の角部に、接触回避部である面取り部58が設けられている。
【0052】
面取り部58は、フレキシブル基板20と対向する回路基板42の角部に、フレキシブル基板20の幅W1より広い幅W5で設けられている。また、面取り部58の切り欠き高さD8は、フレキシブル基板20の曲がり部が面取り部58の端部の方向へ最大寸法D7だけ変形しても、フレキシブル基板20と回路基板42が接触しない深さ(D8>D7)とされている。これにより、回路基板56の切り欠きを基板凹部44より少なくできる。
【0053】
この構成によれば、電子カセッテ50が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、電子基板56の端部側へ最大寸法D7だけ変形しても、フレキシブル基板20と回路基板56との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20でのノイズの発生が抑制される。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0054】
(第5の実施の形態)
図6の断面図に示すように、第5の実施の形態に係る電子カセッテ60は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
本実施の形態は、第1の実施の形態〜第3の実施の形態で説明した3つの接触回避部を全て採用した構成である。
具体的には、電子カセッテ60の筐体12の内壁には、第1の実施の形態で説明した筐体凹部24が設けられ、電子基板42の端部には、第3の実施の形態で説明した基板凹部44が設けられ、シャーシ34の端部には、第2の実施の形態で説明した基材凹部36が設けられている。
【0056】
この構成によれば、電子カセッテ60が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、筐体12の内壁側、シャーシ34の端部側及び電子基板42の端部側へ寸法D3だけ変形しても、それぞれに設けられた接触回避部により、フレキシブル基板20と、筐体12の内壁、シャーシ34及び電子基板42との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20の周囲部品との接触に基づくノイズ発生を抑制することができる。
【0057】
なお、図示は省略するが、例えば、フレキシブル基板20と電子基板42との接触位置が、電子基板42の端面の一部に限定される場合には、第3の実施の形態で説明した基板凹部44に代えて、第4の実施の形態で説明した面取り部58を採用してもよい。これにより、少ない切り欠き量でフレキシブル基板20でのノイズの発生を抑制できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0058】
(第6の実施の形態)
図7の断面図に示すように、第6の実施の形態に係る電子カセッテ64は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0059】
本実施の形態は、第1の実施の形態と第2の実施の形態で説明した2つの接触回避部を採用した構成である。
具体的には、電子カセッテ64の筐体12の内壁には、第1の実施の形態で説明した筐体凹部24が設けられ、シャーシ34の端部には、第2の実施の形態で説明した基材凹部36が設けられている。
【0060】
この構成によれば、電子カセッテ64が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、筐体12の内壁、シャーシ34の端部側及び信号処理基板42の端部へ最大寸法D3だけ変形しても、フレキシブル基板20とシャーシ34との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20の周囲部品との接触に基づくノイズ発生を抑制することができる。他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
なお、筐体凹部24の深さは、筐体凹部24と対向するシャーシ34に基材凹部36が形成されており、基材凹部36と分担することで、シャーシ34に基材凹部36が形成されない場合(例えば第1実施の形態)よりも浅くすることができる。これにより、筐体12の強度低下を抑制することができる。
【0061】
(第7の実施の形態)
図8の断面図に示すように、第7の実施の形態に係る電子カセッテ65は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
本実施の形態は、第1の実施の形態と第3の実施の形態で説明した2つの接触回避部を採用した構成である。
具体的には、電子カセッテ65の筐体12の内壁には、第1の実施の形態で説明した筐体凹部24が設けられ、電子基板42の端部には、第3の実施の形態で説明した基板凹部44が設けられている。
【0063】
この構成によれば、電子カセッテ30が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、筐体32の内壁、シャーシ34の端部及び電子基板42の端部側へ最大寸法D3だけ変形しても、フレキシブル基板20と、筐体32の内壁、シャーシ34の端部及び電子基板42の端部との接触を防ぐことができる。
これにより、フレキシブル基板20の周囲部品との接触に基づくノイズ発生を抑制することができる。
なお、筐体凹部24の深さは、筐体凹部24と対向する電子基板42に基板凹部44が形成されており、基板凹部44と分担することで、電子基板42に基板凹部44が形成されない場合(例えば第1実施の形態)よりも浅くすることができる。これにより、筐体12の強度低下を抑制することができる。
【0064】
なお、図示は省略するが、例えば、フレキシブル基板20と電子基板42との接触位置が、電子基板42の端面の一部に限定される場合には、第3の実施の形態で説明した基板凹部44に代えて、第4の実施の形態で説明した面取り部58を採用してもよい。これにより、フレキシブル基板20でのノイズの発生を抑制できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0065】
(第8の実施の形態)
図9の断面図に示すように、第8の実施の形態に係る電子カセッテ66は、第1の実施の形態とフレキシブル基板20の周囲に設けられた接触回避部が異なる。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0066】
本実施の形態は、第2の実施の形態と第3の実施の形態で説明した2つの接触回避部を採用した構成である。
具体的には、電子カセッテ66は、筐体32の内壁において、電子基板42に第3の実施の形態で説明した基板凹部44を設け、シャーシ34の端部には、第2の実施の形態で説明した基材凹部36を設けている。
【0067】
本構成によれば、電子カセッテ66が振動を受け、フレキシブル基板20の曲がり部が、筐体32の内壁、シャーシ34の端部側及び電子基板42の端部側へ最大寸法D3だけ変位しても、フレキシブル基板20と、筐体32の内壁、シャーシ34の端部及び電子基板42の端部との接触を防ぐことができる。
この結果、フレキシブル基板20でのノイズの発生が抑制される。
【0068】
なお、図示は省略するが、例えば、フレキシブル基板20と電子基板42との接触位置が、電子基板42の端面の一部に限定される場合には、第3の実施の形態で説明した基板凹部44に代えて、第4の実施の形態で説明した面取り部58を採用してもよい。これにより、フレキシブル基板20でのノイズの発生を抑制できる。
他の構成は、第1の実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0069】
(第9の実施の形態)
図10(A)の部分拡大図に示すように、第9の実施の形態に係る電子カセッテ67は、第1の実施の形態で説明したフレキシブル基板20に代えて、フレキシブル基板21を採用した構成である。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
本実施の形態に係るフレキシブル基板21は、フレキシブル基板21の導通ケーブル部38の途中に、アンプ26を実装した構成である。アンプ26は、例えばチャージアンプ等であり、入力された電気信号を増幅して出力する機能を有している。
【0071】
本構成によれば、実装されたアンプ26により、フレキシブル回路基板21において入力された電気信号を増幅させて出力させることができる。これにより、電子カセッテ67のコンパクト化が図られる。
なお、本実施の形態のフレキシブル基板21は、第1の実施の形態のみならず、第2の実施の形態〜第8の実施の形態に係る各電子カセッテに適用することができる。
【0072】
(第10の実施の形態)
図10(B)の断面図に示すように、第10の実施の形態に係る電子カセッテ79は、第1の実施の形態で説明したフレキシブル基板20に代えて、フレキシブル基板28を採用した構成である。第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0073】
本実施の形態に係るフレキシブル基板28は、一方の端部がフラットパネルセンサー部14に接続部28Aで接続され、他方の端部が電子基板18と接続部28Bで接続されている。フレキシブル基板28の接続部以外には、フレキシブル基板28を複数の折り返した折り返し部28Rが形成されている。
【0074】
本実施の形態によれば、折り返し部28Rは、外力を受けて変形可能とされており、フレキシブル基板28の撓み代として作用する。
この構成とすることにより、フレキシブル基板28の曲がり部の形状を直線状に近づけることができ、フレキシブル基板28の周囲の部品に形成される接触回避部を浅く形成でききる。この結果、周囲の部品の強度低下を抑えて、フレキシブル基板28と周囲の部品との接触を抑制することができる。
【符号の説明】
【0075】
10 電子カセッテ(放射線画像撮影装置)
12 筐体
14 フラットパネルセンサー部(放射線検出パネル)
16 シャーシ(保持基材)
18 電子基板(信号処理基板)
20 フレキシブル基板
24 筐体凹部(切欠き部)
36 基材凹部(切欠き部)
44 基板凹部(切欠き部)
70 放射線画像撮影システム
72 放射線発生装置
74 コンソール(撮影制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線を電気信号に変換する光電変換素子を有する放射線検出パネルと、
入力された電気信号に対して予め定められた信号処理を行う信号処理基板と、
前記放射線検出パネルと前記信号処理基板の間に設けられ、前記信号処理基板を保持する保持基材と、
撓みを設けて一端が前記放射線検出パネルに接続され、他端が前記信号処理基板に接続されたフレキシブル基板と、
前記放射線検出パネル、前記信号処理基板、前記保持基材及び前記フレキシブル基板が内蔵される筐体と、
前記信号処理基板、前記保持基材及び前記筐体の少なくとも1つに形成され、前記フレキシブル基板との接触を回避する接触回避部と、
を有する可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記接触回避部は、前記フレキシブル基板の幅より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記筐体の内壁に設けられた筐体凹部である請求項1に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記接触回避部は、前記フレキシブル基板の幅より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記保持基材の端部に設けられた基材凹部である請求項1又は2に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記接触回避部は、前記フレキシブル基板の幅より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記信号処理基板の端部に設けられた基板凹部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項5】
前記接触回避部は、前記フレキシブル基板の幅より広い幅で、前記フレキシブル基板と対向する前記信号処理基板の端面に設けられた面取り部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項6】
隣接する筐体凹部の間には、前記筐体の強度を維持するリブが形成されている請求項2に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記フレキシブル基板の撓みは、前記放射線検出パネル、前記信号処理基板、前記保持基材の端部から離れる方向へ曲げられた曲がり部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記フレキシブル基板の撓みは、前記フレキシブル基板を複数回折り返した折り返し部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記筐体凹部の深さは、前記筐体凹部と対向する前記保持基材に前記基材凹部が形成される場合には、前記保持基材に前記基材凹部が形成されない場合よりも浅くされている請求項3〜5、7、8のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記筐体凹部の深さは、前記信号処理基板に前記筐体凹部と対向する前記基板凹部が形成される場合には、前記信号処理基板に前記基板凹部形成されない場合よりも浅くされている請求項4、5、7〜9のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の可搬型放射線画像撮影装置、放射線を発生させる放射線発生装置、及び可搬型放射線画像撮影装置と放射線発生装置を制御する撮影制御手段を有し、前記撮影制御手段の制御下で、前記放射線発生装置で発生させ被写体を透過した放射線を前記可搬型放射線画像撮影装置が撮像する放射線画像撮影システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−72805(P2013−72805A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213207(P2011−213207)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】