説明

可撓回路カード弾性ケーブル・コネクタ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可撓回路カードに関し、特に高性能コンピュータ・システムにおいて2つ以上のプリント回路基板間で高速信号を伝送する弾性ケーブル・コネクタ・アセンブリに関する。
【0002】用語説明:弾性体:弾性のあるゴムのような性質を持つポリマである。
ELASTIPAC:本発明のケーブル・コネクタ・アセンブリに用いられる略語であって、高速信号用途に使用される弾性ケーブル・コネクタを意味する。
【0003】
【従来の技術】コンピュータ産業のケーブル・アセンブリは、電力供給、低速信号通信、高速信号通信等、多目的に使用される。高性能コンピュータ・システムでは、高速信号をプロセッサからプロセッサへ、プロセッサからメモリへ、及びプロセッサから入出力装置に伝送するために特殊なケーブル・アセンブリが使用される。特殊高速ケーブル・アセンブリは、これらの重要な機能の各々をサポートするプリント回路基板に機械的、電気的に接続される。
【0004】これらの機能間における高速信号の伝播遅延時間は、コンピュータ・システム全体の性能について重要な意味をもつ。高速信号の伝播遅延時間の合計は、信号をあるポイントから他のポイントまで伝送するために用いられる回路トレースとワイヤの長さ、及びこれらの回路トレースとワイヤを被覆する材料の誘電特性によって決まる。コンピュータ・システムの性能が向上すると、高速信号の伝播遅延は信号が伝わる全経路長を短縮し、プリント回路基板とケーブル・アセンブリの誘電特性を改良することによって減少させることができる。信号の伝播遅延を改良するためには、高速信号のケーブル・アセンブリの接続に必要な基板の空間を少なくすればよく、これによりシステムに必要な全空間と共に、基板全体の大きさと内部配線が減少する。基板全体の大きさの減少(すなわち実装密度の増加)により、最終的には、信号伝播遅延が減少してシステム性能が向上する。
【0005】ケーブルと基板をつなぐコネクタ・システムの実装密度は、信号とグラウンドのコンタクト合計数をケーブル・アセンブリのプリント回路基板への取り付けと接続に用いられる全面積で割ることによって測定される。この面積はケーブルを装着するハードウェアの大きさと、コネクタ・システムのコンタクトの横列と縦列の距離すなわちピッチによって求められる。コネクタ・システムのコンタクトのピッチを狭くするのは、ケーブル・コネクタ・システムの実装密度を高めるために一般に用いられる方法である。コンタクトのピッチが狭くなるとコンタクトの大きさも減少する。小さくされたコンタクトは物理的損傷と品質欠陥を受けやすくなる。
【0006】小型化されたバネ・コンタクトは、バネ材料の応力除去の影響を受けやすく、コネクタ・システムの信頼性の問題が生じる。小さいコンタクトには材料と品質上の制限があるほか、ケーブル・コネクタの実装密度を制限する多くの要因がある。分離した高速ワイヤの物理的な大きさや、プリント回路基板の配線条件等である。実装密度の向上のために使用されるもう1つの方法では、個々のケーブル・アセンブリを横に重ね合わせ、プリント基板表面に垂直に装着できるコネクタ・システム設計が必要である。
【0007】ほとんどのケーブル・アセンブリは、独立したコネクタ機構を使用してケーブル・ワイヤをプリント回路基板に接続する。まれにはケーブル・ワイヤの代わりに可撓性のポリイミドやマイラの回路が使用され、一体型のコンタクトが可撓回路の配線の1部になる。独立したコネクタ機構は、様々な製造/組立て方式によりプリント回路基板に装着される。これらの方式には、メッキされたスルーホールにはんだ付けされたピン、メッキされたスルーホールにプレスされたコンプライアント・セクションを持つピン、プリント回路基板の表面のパッドに付けられた表面実装リードの使用等がある。これらの方式では、コネクタをプリント回路基板に装着するのに別々の処理ステップを要することがある。別個にコネクタ部品と処理ステップが必要であれば、アセンブリ全体のコストが増加することになる。
【0008】これらの製造/組立て方式は、ケーブル・コネクタ・システムの実装密度を更に制限する要素である。典型的なメッキ・スルーホールは、0.100×0.100インチ(2.54×2.54mm)角の格子、または0.050×0.050インチ(1.27×1.27mm)の間入型あるいはスタガ型の格子でプリント回路基板内に形成される。これらの実装密度限界は、内部基板配線の幅と間隔、及び孔径によって決まる。表面実装のケーブル・コネクタはプリント回路基板にメッキ・スルーホールを必要としないが、実装密度は表面実装のリードの構成、及びプリント回路基板の表面のはんだ付けされたパッドの面積によって制限される。
【0009】ケーブル・アセンブリとプリント回路基板間に確実な電気接続を得るには、ケーブル・コネクタのコンタクト面間に摺動作用またはワイピング作用を与えることが必要である。コンタクトはこのワイピング作用によって、2つのコンタクト面間にて異物を押しやり、酸化物や膜を貫通する。典型的な2部構造のケーブル・コネクタには、ピン(雄)とバネ負荷ソケット(雌)のコンタクト形状が用いられる。雄のピンがソケットに挿入されると、係合するコンタクト面が拭い合う。もう1つ、ケーブル・アセンブリとプリント回路基板間に信頼性の高い電気的接続を得る場合に設計上考えなければならないことは、信号接続や電源接続それぞれに対する独立したコンタクト・インタフェースの数である。2つ以上の独立したコンタクト・インタフェースによって冗長性が得られる。
【0010】下記の文献と特許を参照されたい。文献、特許のそれぞれに簡単な説明を加えている。
【0011】従来技術の文献:Technical Disclosure Bulletin(TDB)。これについてはTDB、Vol.32、No.7、Dec.1989、p344-346を参照されたい。ポリイミド・キャリア、コンタクト・パッド、及び加圧接触した冷間メッキ銅コンタクト・ボールを持つ高密度フレキシブル・コネクタについて述べられている。
【0012】従来技術の特許:1.Griffin らによる米国特許第4116516号は、2つ以上のプリント回路基板の接続に使用されるケーブル・アセンブリについて述べている。このケーブルは複数の可撓回路を使用してケーブル・アセンブリの各端部にある複数のコンタクト列を接続する。ケーブル・アセンブリの各可撓回路の端部はスタガ型であり、ケーブルの各端部に複数のコンタクト列が得られる。コンタクトを段差を付けて構成するには、係合するプリント回路基板に特殊加工が必要である。
【0013】2.William W.Porter による米国特許第4815979号(1989年3月28日)は、マザー・ボードをドータ・ボードに取り付ける際にワイピング作用を伴う場合と伴わない場合がある直角の電気コネクタについて述べている。このコネクタは弾性材28を提供する。
【0014】3.Robert F.Evans による米国特許第4948379号(1990年8月14日)は、回路を担持する基板上に複数のコネクタ・アセンブリを空間的に構成する分離可能な表面係合型電気コネクタ・ケーブルとアセンブリについて述べている。コンタクト64に対してバネの端部を有する。
【0015】4.Troboughらによる米国特許第4993958号(1991年2月19日)は、2つのプリント回路基板を相互接続するために使用するケーブル・アセンブリについて述べている。このケーブル・アセンブリは可撓回路と弾性パッドを使用して、ケーブル・アセンブリの各端部の単一のコンタクト列を接続する。可撓回路上の表面パッドすなわち表面トレースは、同一平面上のプリント回路基板上の表面パッドに押しつけられる。同一平面上のインタフェースに対応するのに必要な表面領域は、回路基板上のパッドの実際のコンタクト領域よりもかなり大きい。
【0016】5.1991年10月22日付米国特許第5059129号は、2層弾性材70を有するコネクタ・アセンブリについて述べている。この特許では、回路基板13と可撓基板64が示されている。この特許の明細書にはIBMの古いTDBが多く引用されている。
【0017】6.1992年3月3日付米国特許第5092782号は、Brian S.Beamanによる前の発明について述べている。この明細書は、弾性コンタクト・タブ・サポートを有する一体型弾性カード・エッジ・コネクタについて述べている。適切な接触圧力と、プリント回路カード100の端部に電気的接触を得るために必要なワイピング作用が得られる。
【0018】7.1992年6月23日付米国特許第5123851号は、導電型弾性コンタクトを有する一体型コネクタ・モジュールについて述べている。この特許の中で回路基板は基板12によって説明されている。また可撓基板24、弾性ストリップ38、及び導体36がある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明で述べる弾性ケーブル・コネクタ・システムは、ELASTIPACケーブル・アセンブリと考えることができる。ELASTIPACは、本発明の目的を伝えるための略語であり、プリント回路基板を相互接続するためのケーブル・アセンブリを含む改良された高性能弾性パッケージを提供するものである。
【0020】本発明の目的は、組立て可能であって複数のサブアセンブリに分解できるケーブル・アセンブリを提供することである。
【0021】本発明の他の目的は、高密度実装用途の垂直コンタクト・インタフェース形状を有する構造を提供することである。
【0022】本発明の他の目的は、係合するプリント回路基板の表面に装着される独立したコネクタ機構を必要としない構造を提供することである。
【0023】本発明の他の目的は、係合するプリント回路基板の製造に特別な加工技術を必要としない構造を提供することである。
【0024】本発明の他の目的は、係合するプリント回路基板の表面のコンタクトに対してケーブル接触面にワイピング作用を与える構造を提供することである。
【0025】本発明の他の目的は、ケーブル・アセンブリとプリント回路基板上の表面コンタクトとの間の信号接続とグラウンド接続のそれぞれに対して少なくとも2つの独立したコンタクト・インタフェースを有する構造を提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】可撓回路カードの導体トレースは弾性材料の端部に向かって伸び、球形コンタクトで終端する。球形コンタクトは傾斜をつけて形成され、プリント回路カード上の係合するパッドを拭い、これにより電気的接続が得られる。ケーブル・アセンブリは、複数の弾性コネクタに接続された複数のワイヤを使用する。少なくとも1つの弾性コネクタは、ケーブル・アセンブリの端部それぞれに接続され、各弾性コネクタは、プリント回路基板の表面の複数のパッドとの係合に用いられる複数のコンタクトを有する。本発明で述べる弾性コネクタにより、プリント回路基板ケーブルの表面に垂直な、ケーブルと基板をつなぐ高密度の相互接続が得られる。
【0027】
【実施例】図1は、本発明による高性能ケーブル・アセンブリの単一サブアセンブリ10の正面図である。単一のサブアセンブリ10は、複数の分離したワイヤ20、パドル・カード11、及びハウジング30から成る複数の構成要素から形成される。パドル・カード11は、エポキシ・ガラス、ポリイミド等、少なくとも1つの誘電物質の層から形成され、第1面には分離した回路トレース12、第2面にはグラウンド面を有する。この種の回路構成は、高性能ケーブル・コネクタでは重要な意味をもつ高精度インピーダンス・インタフェースを与える。第1面の分離した回路トレース12は、パドル・カード11の上端に拡大パッド13を持つ。分離した回路トレース12はまた、パドル・カード11の下端に沿ってメッキされたバイア・ホール14に接続される。パドル・カードの第2面のグラウンド面は、パドル・カード11の下端に沿ってバイア・ホール14に選択的に接続される。各バイア・ホール14はパドル・カード11の下端を超えて伸びた2つの片持梁式回路トレース15を有する。片持梁式回路トレース15はそれぞれ、端部に形成され、ニッケルや硬金等の拡散障壁によってメッキされた球形コンタクト16を有し、低抵抗の接触面を与える。片持梁式回路トレース15を2つ使用することによって、プリント回路基板の信号コンタクトやグラウンド・コンタクトのぞれぞれに冗長なコンタクト・インタフェースが得られ、コネクタ・システムの信頼性が向上する。バイア・ホール14に沿ったパドル・カード11の下端と片持梁式回路トレース15は、弾性材料17に埋め込まれる。片持梁式回路トレース15の球形コンタクト16は、弾性材料17に部分的に埋め込まれる。
【0028】ELASTIPAC弾性ケーブル・コネクタは、ケーブル・アセンブリをプリント回路基板に接続するために使用される。ELASTIPACは、ポリイミド誘電体またはマイラ誘電体の下端に沿った信号トレースを片持梁式に延長し、これら回路トレースの端部に球形コンタクトが形成された可撓回路で使用される。傾斜をつけて形成された2つの片持梁式トレースは、弾性材料に埋め込まれるので、個々の高速通信用ケーブルを可撓回路上のはんだメッキされたパッドで終端することができる。ケーブル・アセンブリはそれぞれ複数のケーブル・アセンブリ(後述)を、プラスチック成形のグルーパ・ハウジングに横並びに装着することができる。HARCON型のケーブル・グルーパが知られているが、現在のハウジングは、傾斜をつけて形成された片持梁式回路トレースに対して補強材になり、係合するプリント回路基板の上の係合するパッドとの間でコンプライアントなワイピング接続が得られる。
【0029】図2は、重ね合わせられてケーブル・アセンブリ40の全体を形成する4つのサブアセンブリ10の端面図を示す。また、各サブアセンブリ10に対する4個のパドル・カード11の断面図を示す。パドル・カード11は、その第1面に分離した回路トレース12、第2面にグラウンド面19を有する。ケーブル・アセンブリ40の分離したワイヤ20はそれぞれ、少なくとも1つの信号線22と1つのグラウンド線すなわちドレイン線23を有する。分離したワイヤそれぞれの信号線22は、パドル・カード11の上端に沿った分離した回路トレース12の端部の拡大パッドに接続される。分離したワイヤ20それぞれのドレイン線23は、パドル・カード11の第2面のグラウンド面19に接続される。プラスチックまたは金属のハウジング30はパドル・カード11に取り付けられ、パドル・カード11に接続される複数の分離したワイヤ20の歪みを軽減すると共に、サブアセンブリの補強材になる。ハウジング30はまた、その左右で機械的なラッチ31、32とキー33、34の役割をもち(図1参照)、これにより分離したサブアセンブリ10が正しい順序で重ね合わせられる。
【0030】図3は、2つのサブアセンブリと、係合するプリント回路基板50のコンタクト・パッド51の部分端面図を示す。図3の左側のサブアセンブリは、片持梁式回路トレース15の端部の球形コンタクト16と、弾性材料17に埋め込まれたパドル・カード11の下端全体を示す。図3の左側のサブアセンブリの片持梁式回路トレース15は、パドル・カード11の表面に対して傾斜をつけて形成される。傾斜をつけて形成された片持梁式回路トレース15と、傾斜した弾性材料の断面により、球形コンタクト16が係合するプリント回路基板50のコンタクト・パッド51を拭う。図3の左側のサブアセンブリは、係合するプリント回路基板50のコンタクト・パッド51に押しつけられたサブアセンブリを示す。サブアセンブリの圧力と垂直運動52により、球形コンタクト16が係合するプリント回路基板50上の係合するコンタクト・パッド51に対して曲がり、これを拭う。
【0031】上記のケーブル・コネクタ・アセンブリは、TRI−LEAD、TRIAX、またはツイスト・ペア・ケーブル・ワイヤを使用して信号ケーブルの接続に使用できる。更にここで説明するように、信号電源ケーブル接続用のリボン・ケーブルやフラット・ケーブルでも使用できる。一般に、個々のケーブル・アセンブリ上で対になった球形コンタクトの間隔は0.050インチ(1.27mm)である。これにより、ケーブル・アセンブリの間隔が0.050インチ(1.27mm)であるHARCONケーブル・グルーパに可能な間隔よりも、重ね合わせられたアセンブリの間隔を狭くすることができる。
【0032】組立て時、ケーブル・コネクタ・アセンブリはプリント回路基板(PCB)上の係合するコンタクトに対して位置合わせされ、押しつけられる。球形コンタクトとPCB上のメッキしたコンタクトの位置合わせは、可撓回路とケーブル・ハウジングの中央に位置するアライメント・スロットによって行われる。アライメント・スロットは、プリント回路基板に取り付けられた位置決め具と係合する。HARCONケーブル・グループと同様のハウジングが使用され、ELASTIPACケーブルが機械的に保持され、PCBのコンタクトに対して補強材と接続力が得られる。ELASTIPACケーブル・コネクタがプリント回路基板に押しつけられると、球形コンタクトはコンタクトの表面を拭い、膜や汚染物質を貫通する。
【0033】可撓回路の一方に信号トレース、他方にグラウンド面があれば製造に入ることができる。信号トレースは可撓回路の下端に沿って片持梁式の延長部が得られるように形成される。各信号トレースは2つの(2分割)片持梁式伸張部に分けられる。これにより冗長性が得られる。銅製の片持梁式トレースはそれぞれ、Nd−YAGレーザによって溶解されて球形コンタクトを形成する。球形コンタクトを形成するプロセスは、銅の酸化を避けるために不活性雰囲気中で行われる。トレースはニッケル拡散障壁と硬金面でメッキされる。信号トレースの上端は、はんだ付けされ分離したケーブル・ワイヤの終端パッドとなる。
【0034】製造時、可撓回路は弾性コネクタ・アセンブリを形成するのに用いられる型穴に置かれる。型穴により片持梁式回路トレースと球形コンタクトが、可撓回路のベースに対して傾斜して置かれる。ここで、弾性液体を型に注入するか、射出成形技術により、型穴を弾性材料で満たして片持梁式回路トレースを取り囲むことができる。射出成形の場合、端部は剥離可能な材料によってコーティングされる。材料は成形後に剥離され球形コンタクト表面が露出する。成形された材料の形状はある角度を有し、図3に示すようにワイピング接触作用が得られる。
【0035】最終組立ては次のように行なえる。分離したケーブルのジャケットと絶縁物が剥離され、信号線が可撓回路上のはんだメッキされたコンタクトにはんだ付けされる。グラウンド線は可撓回路の反対側のグラウンド面にはんだ付けされる。ケーブル線が回路カードで終端された後、2つの部分から成るハウジングがアセンブリに取り付られ、ハウジングに対して位置合わせ、調整、及び補強の効果が得られる。
【0036】他の実施例:図4は本発明の他の実施例60の正面図を示す。図4の実施例60は、ワイヤ導体62を有するリボン・ケーブル61を使用して、ケーブル・コネクタ・インタフェースの球形コンタクト63を形成する。リボン・ケーブル61のワイヤ導体62は露出して球形コンタクト63を形成し、ニッケル、硬金等の拡散障壁によってメッキされ、低抵抗接触面が与えられる。露出したワイヤ導体62は傾斜をつけて形成されるので、コンタクトが係合するプリント回路基板上のコンタクト・パッドを拭う。リボン・ケーブル61の端部は露出したワイヤ導体62と共に弾性材料64に埋め込まれる。ワイヤ導体62の端部にある球形コンタクト63は弾性材料64に部分的に埋め込まれる。ワイヤ導体を持つ他のケーブルも図4のリボン・ケーブル61の代わりに使用できる。
【0037】図5は、本発明で述べているコンタクト・インタフェースの他の実施例の部分図である。図5の実施例70は、ケーブル・アセンブリの端部で露出したワイヤ導体72と同様のリボン・ケーブル71を使用する。型打加工により、露出したワイヤ導体72の端部に隆起したコンタクト73が形成される。リボン・ケーブル71の端部は、露出したワイヤ導体72と共に弾性材料74に埋め込まれる。ワイヤ導体72の端部の隆起コンタクト73は、弾性材料74に部分的に埋め込まれる。露出したワイヤ導体72は傾斜をつけて形成されるので、コンタクトが係合するプリント回路基板80のコンタクト・パッド81を拭う。
【0038】次に、本発明の態様を示す。本発明は、複数のサブアセンブリを有する高性能ケーブル・アセンブリであって、上記複数のサブアセンブリのそれぞれが、分離した信号トレースを有するパドル・カードを含み、該信号トレースが、該パドル・カードの上側に沿う複数の分離したワイヤをパドル・カードの下側に沿う複数のコンタクトに接続し、上記パドル・カードの下側に沿う上記複数のコンタクトのそれぞれが、2つの片持梁式回路トレースによって形成され、該片持梁式回路トレースのそれぞれの端部の球形コンタクトが弾性材料に埋め込まれて、コンプライアントな弾性相互接続が得られる、高性能ケーブル・アセンブリを提供する。このケーブル・アセンブリは、係合するプリント回路基板と、該係合するプリント回路基板の表面に上記アセンブリを垂直に装着することができる、サブアセンブリ用のハウジング/コンタクト構造とを含んでもよい。また、表面に複数のパッドを有する係合するプリント回路基板と、プリント回路基板に永久装着される独立したコネクタに使用することなく、該プリント回路基板の表面の複数のパッドに直接係合するコンタクト・インタフェースとを含んでもよい。また、係合するプリント回路基板と、上記ケーブルを該プリント回路基板に接続する際に、該ケーブルと該プリント回路基板との係合面にワイピング作用を与えるコンタクト構造とを含んでもよい。
【0039】単一のサブアセンブリは、複数の分離したワイヤ、パドル・カード、及びハウジングを含む。上記パドル・カードは、誘電物質の少なくとも1つの層から形成され、第1面に分離した回路トレース、第2面にグラウンド面を有して、高性能ケーブル・コネクタのための高精度インピーダンス・インタフェースとしての回路構造を与える。上記第1面の分離した回路トレースは、上記パドル・カードの上端に拡大パッドを含む。上記分離した回路トレースは、上記パドル・カードの下端に沿ったメッキされたバイア・ホールにも接続される。上記パドル・カードの第2面はグラウンド面を有し、該パドル・カードの下端に沿うバイア・ホールに該グラウンド面が選択的に接続される。各バイア・ホールは、上記パドル・カードの下端を超えて伸びた2つの回路トレースを含む。上記回路トレースのそれぞれは片持梁式であり、その端部が球形のコンタクトを有し、ニッケル、硬金等の拡散障壁によってメッキされることにより、低抵抗接触面が得られ、2つの片持梁式回路トレースに、上記プリント回路基板上の信号またはグラウンド用の各コンタクトのための冗長なコンタクト・インタフェースが与えられて、コネクタ・システムの信頼性が向上する。上記バイア・ホールに沿った上記パドル・カードの下端と上記片持梁式回路トレースは、弾性材料に埋め込まれ、該片持梁式回路トレースの球形端部が該弾性材料中に部分的に埋め込まれる。
【0040】本発明のケーブル・アセンブリは、複数のサブアセンブリが重ね合わせられて、該サブアセンブリのそれぞれに同数のパドル・カードを有するケーブル・アセンブリ全体を形成し、該サブアセンブリのそれぞれが、該パドル・カードの第1面に分離した回路トレース、第2面にグラウンド面を含んでよい。上記ケーブル・アセンブリの分離したワイヤのそれぞれは少なくとも1つの信号線と1つのグラウンド線すなわちドレイン線を有し、該分離したワイヤそれぞれの該信号線が、上記サブアセンブリのパドル・カードの上端に沿った分離した回路トレースの端部の拡大パッドに接続される。上記分離したワイヤそれぞれのドレイン線は、上記パドル・カードの第2面のグラウンド面に接続され、各パドル・カードがハウジングを備えてサブアセンブリを補強すると共に、該パドル・カードを終端とする複数の分離したワイヤの歪みを軽減する。上記ハウジングは左側と右側に機械的な保持効果と調整効果を有し、分離したサブアセンブリを正しい順序で重ね合わせる。上記サブアセンブリの片持梁式回路トレースは、上記パドル・カードの表面に対して傾斜し、傾斜した片持梁式回路トレースと、傾斜した弾性材料の断面とにより、球形コンタクトが上記係合するプリント回路基板のコンタクトを拭い、よって該サブアセンブリの加圧と垂直方向の運動により、アセンブリ時に該球形コンタクトが曲がり、該プリント回路基板の係合する回路パッドを拭う。
【0041】本発明のケーブル・アセンブリは、係合するプリント回路基板と、ケーブル・コネクタ・インタフェースに対して球形コンタクトを持つワイヤ導体を有するケーブルとを備え、該ケーブルのワイヤ導体が露出して該球形コンタクトを形成し、ニッケル、硬金等の拡散障壁によってメッキされて低抵抗接触面を与え、複数の露出したワイヤ導体が傾斜をつけて形成されることにより、該コンタクトが該係合するプリント回路基板上のコンタクト・パッドを拭う。露出したワイヤ導体を有するケーブルの端部は、弾性材料に埋め込まれた露出したワイヤ導体を有し、該ワイヤ導体の端部の球形コンタクトが該弾性材料に部分的に埋め込まれる。ワイヤ導体を持つケーブルはリボン・ケーブルが好ましい。
【0042】本発明のプリント回路基板とコンタクト・インタフェースとを含むケーブル・アセンブリにおいて、コンタクト・インタフェースは、上記ケーブル・アセンブリの端部で露出したワイヤ導体を持つケーブルを含んでもよい。上記コンタクト・インタフェースは、露出したワイヤ導体の端部に隆起したコンタクト形状を有し、上記ケーブルの端部が露出したワイヤ導体と共に弾性材料に埋め込まれ、該ワイヤ導体の端部の隆起コンタクト形状が弾性材料に部分的に埋め込まれてもよい。上記露出したワイヤ導体は傾斜をつけて形成されることにより、コンタクトが上記係合するプリント回路基板上のコンタクト・パッドを拭う。
【0043】
【発明の効果】係合するプリント回路基板の表面のコンタクトに対してケーブル接触面にワイピング作用を与える構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による高性能ケーブル・アセンブリの単一サブアセンブリの正面図である。
【図2】重ね合わせられてケーブル・アセンブリ全体を形成する4つのサブアセンブリの端面図である。
【図3】2つのサブアセンブリと、係合するプリント回路基板のコンタクト・パッドの部分端面図である。
【図4】本発明の他の実施例の端面図と正面図である。
【図5】本発明で述べるコンタクト・インタフェースの他の実施例の1部を示す端面図と正面図である。
【符号の説明】
10 サブアセンブリ
11 パドル・カード
12 回路トレース
13 拡大パッド
14 バイア・ホール
15 片持梁式回路トレース
16、63 球形コンタクト
17 弾性材料
19 グラウンド面
22 信号線
23 ドレイン線
24 可撓基板
30 ハウジング
31、32 機械的なラッチ
33、34 キー
38 弾性ストリップ
40 ケーブル・アセンブリ
50 係合するプリント回路基板
51 コンタクト・パッド
61 リボン・ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】高性能ケーブル・アセンブリにおいて、該高性能ケーブル・アセンブリを形成するように互いに積み重ねられた複数個のサブアセンブリを有し、該複数個のサブアセンブリのそれぞれが、ハウジング及び該ハウジングに取り付けられたパドル・カードを有し、該パドル・カードの第1の面の上端に沿って配置された複数個の信号伝達ワイヤを、上記パドル・カードの下側に配置された印刷回路板に接触するために上記パドル・カードの上記第1の面の下端に沿って配置された複数個のコンタクトにそれぞれ接続する複数個の個別の回路トレースが上記パドル・カードに設けられており、上記パドル・カードの下端に沿って配置された複数個のコンタクトのそれぞれは、上記パドル・カードの下端を越えるように上記回路トレースから延びる2つの片持梁式回路トレースにより形成され、該片持梁式回路トレースのそれぞれの端部の球形コンタクトが弾性材料に埋め込まれ、上記印刷回路板に対してコンプライアントな弾性相互接続を与えることを特徴とする高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項2】上記印刷回路板の表面に、上記パドル・カードの下端に沿った上記複数個のコンタクトに対してそれぞれ接触する複数個のパッドが設けられていて上記ケーブル・アセンブリに対するコンタクト・インターフェイスを形成し、上記ハウジング及び上記パドル・カードを有する上記サブアセンブリが複数個積み重ねられて形成された上記ケーブル・アセンブリが上記印刷回路板に対して垂直に装着されることを特徴とする請求項1に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項3】上記パドル・カードは誘電物質の少なくとも1つの層から形成され、上記パドル・カードの上記第1の面に上記個別の回路トレースが設けられ、上記パドル・カードの第2の面にグラウンド面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項4】上記回路トレースは、上記パドル・カードの上記第1の面の上端に沿って配置された拡大パッドを有することを特徴とする請求項3に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項5】上記個別の回路トレースが、上記パドル・カードの第1の面の下端に沿って配置されたメッキされたバイア・ホールに接続されていることを特徴とする請求項4に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項6】上記バイア・ホールのそれぞれは、上記パドル・カードの第1の面の下端を越えて延びる2つの片持梁式回路トレースを有することを特徴とする請求項5に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項7】上記球形コンタクトのそれぞれは、ニッケル及び硬金の拡散障壁でメッキされていて低抵抗接触面を与え、上記2つの片持梁式回路トレースが上記印刷回路板上の信号パッド又はグラウンド・パッドに対して冗長なコンタクト・インターフェイスとして働いて上記ケーブル・アセンブリの信頼性を向上することを特徴とする請求項6に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項8】上記バイア・ホールに沿った上記パドル・カードの上記第1の面の下端及び上記片持梁式回路トレースは上記弾性材料に埋め込まれ、そして上記片持梁式回路トレースの端部の上記球形コンタクトは上記弾性材料に部分的に埋め込まれていることを特徴とする請求項7に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項9】上記パドル・カードの上記第2の面の上記グラウンド面は、上記パドル・カードの第1の面の下端に沿った上記バイア・ホールに選択的に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項10】1つのサブアセンブリのパドル・カードの第1の面が、上記1つのサブアセンブリに対向するパドル・カードの第2の面に対向するように上記複数個のサブアセンブリが積み重ねられていることを特徴とする請求項1に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項11】上記信号伝達ワイアは信号線及びグラウンド線を有し、上記信号伝達ワイアのそれぞれの上記信号線が上記個別の回路トレースの上記拡大パッドにそれぞれ接続され、そして上記グラウンド線が上記パドル・カードの上記第2の面のグラウンド面に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項12】上記ハウジングの右側及び左側に、上記複数個のサブアセンブリを積み重ねるための機械的なラッチ及びキーが設けられていることを特徴とする請求項11に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項13】上記片持梁式回路トレースは上記パドル・カードの表面に対して角度づけられて延び、そして上記弾性材料は傾斜面を有し、上記角度づけられた片持梁式回路トレース及び上記傾斜面を有する上記弾性材料の断面により、上記球形コンタクトが、上記印刷回路板に対する上記サブアセンブリの垂直方向の押しつけ時に湾曲して上記印刷回路板のパッドの表面を拭うことを特徴とする請求項1又は請求項12に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項14】高性能ケーブル・アセンブリにおいて、該高性能ケーブル・アセンブリを形成する複数個のサブアセンブリを有し、該複数個のサブアセンブリのそれぞれが、信号伝達ワイヤをそれぞれ有する複数個のケーブルが並べて取り付けられたハウジングを有し、上記複数個のケーブルのそれぞれの上記信号伝達ワイヤは、露出されて上記ケーブルから延びそして先端に球形コンタクトが設けられており、そして低抵抗の接触表面を形成するように拡散バリアでメッキされており、上記複数個のケーブルのそれぞれの上記露出された信号伝達ワイヤは、上記球形コンタクトが印刷回路板のコンタクト・パッドに接触する時に該コンタクト・パッドの表面を拭う角度に曲げられていることを特徴とする高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項15】上記複数個のケーブルのそれぞれの上記露出された信号伝達ワイヤは弾性材料内に埋め込まれており、そして上記信号伝達ワイヤの先端の上記球形コンタクトは上記弾性材料内に部分的に埋め込まれていることを特徴とする請求項14に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項16】高性能ケーブル・アセンブリにおいて、該高性能ケーブル・アセンブリを形成する複数個のサブアセンブリを有し、該複数個のサブアセンブリのそれぞれが、信号伝達ワイヤをそれぞれ有する複数個のケーブルが並べて取り付けられたハウジングを有し、上記複数個のケーブルのそれぞれの上記信号伝達ワイヤは、露出されて上記ケーブルから延び、上記信号伝達ワイヤの先端に該先端の部分を隆起させて形成された隆起コンタクトが設けられており、そして低抵抗の接触表面を形成するように拡散バリアでメッキされており、上記複数個のケーブルのそれぞれの上記露出された信号伝達ワイヤは、上記隆起コンタクトが印刷回路板のコンタクト・パッドに接触する時に該コンタクト・パッドの表面を拭う角度に曲げられていることを特徴とする高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項17】上記複数個のケーブルのそれぞれの上記露出された信号伝達ワイヤは弾性材料内に埋め込まれており、そして上記信号伝達ワイヤの先端の上記隆起コンタクトは上記弾性材料内に部分的に埋め込まれていることを特徴とする請求項16に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項18】上記露出された信号伝達ワイヤを有するケーブルは、リボン・ケーブルであることを特徴とする請求項14又は請求項16に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。
【請求項19】上記拡散バリアは、ニッケル及び硬金で形成されていることを特徴とする請求項14又は請求項16に記載の高性能ケーブル・アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【特許番号】第2642051号
【登録日】平成9年(1997)5月2日
【発行日】平成9年(1997)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−2292
【出願日】平成6年(1994)1月14日
【公開番号】特開平6−231815
【公開日】平成6年(1994)8月19日
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレイション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【参考文献】
【文献】特開 平6−223895(JP,A)