説明

可撓性の歯科用ガードを作製する方法及びキット

患者が、歯ぎしり及びブラキシズムの影響から自身の歯を保護するために使用する歯科用ガード36、特にナイトガードを提供する。そのような歯科用ガードを作製する方法及びキットも含まれる。歯科用ガードを製造するために光硬化型の重合性歯列弓材料が使用される。好ましくは、この材料は、重合性アクリル酸化合物、色が変化する硬化指示剤及び粒状充填材を含有する。材料は、患者の歯列弓の形状に合うように成形され、光硬化されて歯科用ガードを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、一般的にブラキシズムと呼ばれる状態である、歯ぎしり及びクレンチングの影響からヒトの歯を保護するための歯科用ガードを作製する方法及びキットに関する。歯科用ガードは、患者の歯列に合うように成形することができる光重合性材料から作製される。この材料は、歯科用の硬化ライトによって硬化及び固化することができる。患者は、この歯科用ガードを日中又は夜間に装着することができる。本発明はまた、そのような方法及びキットによって製造される歯科用ガードを含む。
【背景技術】
【0002】
歯科医は一般的に、歯ぎしりしたりクレンチングする患者に、歯科用ナイトガード又はスプリントを処方する。これは特に、多くの患者にとって睡眠時間中の慢性的な問題である。実際には、ナイトガードを、保護スリーブとして働くように患者の上歯又は下歯に被せる。通常、ナイトガードは患者の上歯列弓に被せる。ナイトガードは、上歯及び下歯の表面が互いに直接接触することを防止する。このように、ナイトガードは、歯ぎしり及びクレンチングに起因する可能性がある深刻な歯の損傷を防止する。
【0003】
歯科用ナイトガードを作製する従来の手順では、患者は歯科医院に複数回来院する。最初の来院では、歯科医は、患者の歯科解剖学的構造の最初の印象を採る。印象材料は通常、2つのペースト成分から調製される。ペースト成分の少なくとも一方は、付加重合することができるビニル末端ポリシロキサン等のエラストマー材料を含有する。これらのペーストは、混合されると、固化を開始してゴム状材料を形成する。歯科医は、印象材料を咬合用トレイ内に分散させ、このトレイを患者の口内に挿入する。患者は、トレイ内の印象材料を噛み締める。次いで、トレイを口内から取り出し、印象材料を硬化及び固化させる。歯のネガ型印象が印象材料内に形成される。
【0004】
固化した印象は歯科技工所へ送られ、ここでナイトガードを製造する。技工所の歯科技工師は、固化した印象に歯科用石膏又は硬質石膏を注ぐことによって模型を作る。これによって、患者の歯科解剖学的構造に厳密に適合する形状の表面を有する完成した石膏模型が得られる。代替的には、歯科医は、所望であれば、自身の診療室で石膏模型を作り、この模型を技工所へ送ることができる。
【0005】
ナイトガードは現在、例えばDentsply Raintree Essix(Metairie, LA)から入手可能であるEssix(登録商標)機等の真空熱成形機を使用して容易に製造することができる。従来の作製技法によると、機械の真空プレート上に石膏歯科模型を置く。熱可塑性樹脂から成る硬質シートを機械フレーム内に置き、歯科模型上に位置付ける。加熱素子をプラスチックシート上で動かし、このシートがわずかにたるみ始めるまで加熱する。次いで、真空をかけると、加熱されたプラスチックシートが垂れ下がって模型に被さる。加熱されたプラスチックが模型上で溶融すると、プローブを使用して溶融プラスチックを導いて、模型の隣接歯間のアンダーカットに入れる。これによって、模型が溶融プラスチックで完全に覆われることが確実となる。この熱成形工程の後、溶融プラスチックを直ちに冷却する必要がある。Freeze Spray(登録商標)(Dentsply)等の冷媒冷却剤又は他の冷却材料をプラスチック上に噴霧することができる。これによってプラスチックが急速に冷却されて収縮するため、プラスチック材料は模型の周りにより密接にフィットする。この冷却工程が完了すると、ナイトガードは実質的に製造されており、後は模型から取り外すだけでよい。ナイトガードを歯科用模型から取り外すには、技工師はまずハサミを使用して余分な材料を全て切り落とす。次いで、電動ナイフを使用して、プラスチックで取り囲まれている模型のヒールを切断する。これは、ナイトガードを取り外すときに模型の破損を防止するのに役立つ。ナイトガードは、取り外されると細かくトリミングされ、完成した器具が製造される。技工師は、所望であれば、ナイトガードを模型上に戻し、ナイトガードの縁部の周りをブタントーチでスワイプし、いかなる粗い点も滑らかにすることができる。
【0006】
技工所は、完成したナイトガードを歯科医に送り戻す。2回目の診療室への来院において、歯科医はナイトガードの咬合のフィット具合を調べる。そして満足がいく場合には、歯科医はナイトガードを患者に与え、家に持ち帰って装着してもらう。ナイトガードを作製する上記技法は概ね効果的であるが、いくつかの欠点がある。例えば、完成したナイトガードは患者の口内に良好に着座しない可能性がある。ナイトガードは、咬合のフィット又は周縁接触を良好に行わない場合があり、これによって就寝中に外れやすくなる。さらに、完成したナイトガードは、その作製に用いられる材料に応じて耐久性及び機械的強度が比較的低い場合がある。ナイトガードの耐磨耗性が低い場合、時間が経つにつれてプラスチック材料が磨耗し、歯ぎしり及びクレンチングに対するバリアとして働かなくなる危険性がある。さらに、従来のナイトガードを作製するのに使用される技巧所の手順には時間がかかるし費用が高いことがある。患者は、従来のナイトガードをフィットさせるために歯科医院に複数回来院しなければならない。これらの欠点を鑑みて、歯科業界では、異なるプラスチック材料及び技法を使用して新たな歯科用ナイトガードを作製しようとするいくつかの試みがなされている。
【0007】
例えば、特許文献1は、硬質層に結合される軟質層を有するナイトガードを開示している。軟質層は患者の一組の上歯と接触し、硬質層はナイトガードの外側を形成する。このナイトガードを作製するには、患者の歯の模型上に硬質のアクリル層を配置するためにワックスのフラスコ埋没と煮沸除去するプロセスが使用される。模型は軟質層を形成するためにも使用される。模型及び軟質層をフラスコの1/2に置き、完成していない硬質の外側層はフラスコの他方の半分に置く。モノマー又は結合材料が硬質の外側層の内面に配置され、フラスコの2つの半分を共に合わせる。モノマーが、硬質の外側層と軟質層とを結合させる。ナイトガードは硬化されてフラスコから取り出される。第2の方法では、軟質材料のシートが真空熱成形機に挿入されて溶融される。硬質材料のシートを軟質材料上で溶融する。
【0008】
特許文献2は、ブラキシズムを治療するための歯科用スプリント又はナイトガードを開示している。熱硬化性のメチルメタクリレート及びアクリル酸エチル材料を含む器具を作製するために、ワックスのフラスコ埋没と煮沸除去するプロセスが使用される。熱硬化性メチルメタクリレートが歯の咬合面を覆い、熱硬化性アクリル酸エチルが歯の頬側及び舌側を覆い、歯肉組織上へ延び得る。
【0009】
特許文献3は、歯列矯正用ブリッジを装着しているヒトが上歯及び下歯の歯ぎしりを防止するバイトガードを開示している。このバイトガードは通常、U字形のベースと、バイトガードを歯列矯正用ブリッジのアーチワイヤーに取り付けるようになっている複数のフックからなる。バイトガードは、軟質のゴム状材料を型に射出し、この材料を固化させることによって作製される一体成形構造体である。
【0010】
特許文献4は、ブラキシズムから保護する歯科用防止具を開示している。この装置は、一般的に歯列弓と合うU字形の構造を有する。この装置は、歯の咬合面を覆うようになっている保護部と、歯の裏面を覆うようになっている隣接する係止部とを含む。保護部は、歯に直接載る下層と、上歯の咬合面に当接する平坦な上層とから成る二層構造である。保護部の下層及び係止部は、ヒトの体温よりも高いが水の沸騰温度よりも低い軟化温度(例えば50℃〜90℃)を有する熱可塑性樹脂から作製される。これらの樹脂は、エチレン−酢酸ビニール共重合体、ポリウレタン、シリコーン及びポリ酢酸ビニルを含む。上層は、軟化温度で軟化しない材料、例えばシリコーンゴム又はエラストマーから作製される。このナイトガードを作製するプロセスは、防止具を熱湯に浸漬し、この材料を温める工程を有する。温まった防止具を口内に挿入し、患者が噛み締めて印象マークを作る。次いで、防止具を、材料の軟化温度未満の温度に冷却する。完成したプロテクタは、患者の歯と合う印象マークを含む。
【0011】
特許文献5は、光硬化して歯科用スプリント又はナイトガードを形成することができる重合性組成物を開示している。この重合性組成物は充填材料を全く含有しない。重合組成物は、37℃で、250,000psi未満の曲げ弾性率及び7,000psi未満の曲げ強度を有するものとして記載されている。一例では、重合性材料は患者の歯の石膏模型を覆うように成形され、この模型が光硬化ユニット内に入れられる。別の例では、重合性材料は、ハンドヘルド硬化ライトを用いて患者の口内で部分的に硬化される。
【0012】
特許文献6は、恒久的なナイトガードが作製されて嵌められるのを待つ間に患者が装着することができる、仮の歯科用ガードを開示している。この方法は、予め形成された状態の装置を第1の温度まで加熱して装置を軟化する工程を含む。この装置を患者の口内に入れ、歯の周りで成形してその印象を形成する。歯の印象が保持される点である第2の温度まで装置を冷却する。この装置は、体温を超える温度、好ましくは45℃〜75℃まで加熱されると成形可能な熱可塑性材料から作製される。この装置は、温度が37度未満(例えば正常な体温)まで低下するとその形状を保持するほど十分安定である。熱可塑性材料は、軟化点まで加熱されると材料の色を変化させる着色添加物を含んでいてもよい。
【0013】
前述の特許文献に記載されているナイトガードはいくつかの望ましい特性を有する場合もあるが、ブラキシズムの影響から保護する新たなナイトガードを開発する必要性が依然としてある。特に、快適さ、安定性及びフィット感が改善したナイトガードが必要とされている。ナイトガードは、患者の歯に容易に合うと共に快適に装着することができるように可撓性である必要がある。患者が、ナイトガードの挿入及び取り外しを容易にすることができなければならない。同時に、ナイトガードは、良好な機械的完全性及び耐磨耗性を有する材料から作製されるべきである。また、ナイトガードを製造する新たな方法も必要とされている。上述したように、従来の方法では歯科医院への複数回の来院を伴う。いくつかの場合では、ワキシング、埋没材及び煮沸除去技法が使用されるが、これを行うには熟練した歯科技工師が必要である。また、2つの異なる材料から作製される多層構造を有するナイトガードは、製造に費用及び時間がかかる。理想的には、歯科医は、「椅子の脇で(chair-side)」ナイトガードを設計及び製造し、一回の来院でナイトガードを患者の口内へ装着することができる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,103,838号
【特許文献2】米国特許第5,338,190号
【特許文献3】米国特許第6,241,518号
【特許文献4】米国特許第6,302,110号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0224283号
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0034733号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0280649号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0194895号
【特許文献9】米国特許第6,960,079号
【特許文献10】米国特許第6,890,399号
【特許文献11】米国特許第6,528,555号
【発明の概要】
【0015】
本発明は、歯科用ガード(歯列弓(dental arch))を作製する方法を提供する。この方法は効率的であり、歯科医が、快適さ、安定性及びフィット感が改善した歯科用ガード(歯列弓)を一回の来院で提供することを可能にする。本発明はまた、光硬化型の予め作製された歯列弓及び積層された歯列弓、並びに歯科用ガードを容易に製造するために便利に使用することができるそれらのキットを提供する。この作製方法及び結果として生じる歯科用ガードは、以下でさらに詳細に説明する他の有益な特徴及び利点を有する。
【0016】
本発明は、患者が、歯ぎしり及びクレンチングの影響から自身の歯を保護するために使用することができる歯科用ガードを提供する。本発明はまた、そのような歯科用ガードを作製する方法及びキットを提供する。歯科医は、光硬化型の重合性歯列弓材料を使用して、本発明による歯科用ガードを製造する。歯科用ガードは、対向する上側及び下側の平坦な面と、内側(舌側)面及び外側(頬側)面とを有するU字形構造を有する。歯科用ガードは、患者の(上側又は下側の)歯列弓の形状に合うように成形することができる歯列弓材料から作製される。歯列弓材料は室温及び37℃(口内の正常な温度)で形状安定性であり、光を照射することによって硬化されてその成形された形状を保持する。好ましくは、重合性材料は、重合性アクリル酸化合物、色が変化する指示剤(indicator)、特に充填材、及び光によって活性化することができる重合系を含有する。
【0017】
歯科用ガードを作製する1つの方法では、歯列弓材料を患者の口内に入れて、上側又は下側の歯列弓を覆うように成形することができる。口内の歯列弓材料を部分的に硬化するには硬化ライトを使用することができる。次いで、部分的に硬化した歯列弓を口内から取り出し、第2の光硬化工程で光を照射し、完全に硬化するようにすることができる。第1の光硬化工程及び第2の光硬化工程では、約400nm〜約500nmの範囲の波長を有する青色可視光を使用することができる。本発明はまた、歯科用ガードを作製するキットを提供する。これらのキットは、シリコーンから作製することができる可撓性トレイに収容されているU字形の歯科用ガードを含む。U字形のバッキングフィルム、例えばパラフィルム(炭化水素ワックスフィルム)が歯科用ガードに被せられ、剥離ライナがバッキングフィルムに被せられる。キットは、出荷及び取り扱いのために光保護パッケージ内で真空シールすることができる。
【0018】
本発明の特性である新規の特徴を添付の特許請求の範囲に記載する。しかし、本発明の好ましい実施形態は、さらなる目的及び付随する利点と共に、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって最も理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の歯列弓を保持するトレイの一実施形態の斜視図である。
【図1A】歯列弓を保持するのに使用される、図1に示すトレイの上面図である。
【図1B】歯列弓を保持するのに使用される、図1に示すトレイの正面斜視図である。
【図1C】歯列弓を保持するのに使用される、図1に示すトレイの側面斜視図である。
【図2】フィルムバッキングが下側面に接着されている歯列弓の斜視図である。
【図2A】フィルムバッキングが上側面に接着されている歯列弓の斜視図である。
【図3】歯列弓自体の斜視図である。
【図4】トレイ内に位置するフィルムバッキング及び剥離ライナを有する歯列弓の上面図である。
【図5】指の圧力によって患者の上歯列弓を覆うように施される本発明の歯列弓材料を示す正面斜視図である。
【図5A】光硬化されて歯科用ガードを形成する本発明の歯列弓材料を示す正面斜視図である。
【図5B】患者の上歯列弓を覆うように適所にフィットしている本発明の完成した歯科用ガードを示す正面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、歯科用ガードを作製する方法及びキット、並びにそれにより作製される歯科用ガードに関する。本発明によると、歯科医は、光硬化型の重合性歯列弓材料を用いてガードを製造する。歯科医は、一回の来院のうちに歯科用ガードを製造して患者の口内に装着することができる。本明細書では主に、患者が夜間に装着することが意図されるナイトガードとしての歯科用ガードを説明する。しかし、本発明の歯科用ガードは1日のうちどの時間に装着してもよいことを理解されたい。本発明の歯科用ガードは、ブラキシズムの影響から歯を保護するのに特に効果的である。
【0021】
また、光硬化型の重合性歯列弓材料を用いて、他の歯科用補綴物及び器具、例えばインプラントステント、咬合採得材(bite registrations)、クラウン及びブリッジ、ベースプレート、スプリント、義歯ライナ、カスタムトレイ、人工歯、自然歯用修復材、ベニア、義歯修復材、義歯リライン、リテーナ、歯科矯正部品、仮の歯科装置、インレー、オンレー、歯科矯正器具、仮義歯、仮部分義歯、顎顔面用補綴物、栓塞子及び人工器官(occular prostheses)等を製造することができることを理解されたい。
【0022】
(材料)
(重合性アクリル酸化合物)
本発明のナイトガードの作製に使用される光重合性材料に用いられ得る重合性アクリル酸化合物としては、モノ−、ジ−又はポリアクリレート及びメタクリレート、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、オクタデシルイソシアネートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートとカプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステルとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートと2−ヒドロキシプロピル2−(メタクリロイルオキシ)−エチルフタレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートとグリセロールジメタクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物等、シクロヘキシルイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ベンジルイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物等、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン;2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis−GMA);2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン;2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン(又はエトキシル化ビスフェノールA−ジメタクリレート)(EBPADMA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
ウレタンアクリレート及びウレタンメタクリレートを使用することができる。例えば、ウレタンジ(メタ)アクリレート(UDMA)、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA)、ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA);4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジアクリレート;4,13−ジオキソ−3,14−ジオキサ−5,12−ジアザヘキサデカン−1,16−ジオールジメタクリレート;脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート;トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサンとビスフェノールAプロポキシレートと2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物(TBDMA);CN962(販売元Sartomer Company(Exton, PA))、CN964(販売元Sartomer Company(Exton, PA))、SR480(販売元Sartomer Company(Exton, PA))、CD540(販売元Sartomer Company(Exton, PA))、(1,6−ジイソシアナトヘキサンと水で変性された2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物(HDIDMA);1,6−ジイソシアナトヘキサンと水で変性された2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物(HDIDA);アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ポリカーボネートジメタクリレート(PCDMA);ポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート;エトキシ化/プロポキシ化/又はアルコキシ化ビスフェノールAのビスアクリレート及びビスメタクリレート、並びにアクリル化モノマーとアクリル化オリゴマーとの共重合性混合物が挙げられる。
【0024】
前述の重合性アクリル酸化合物に加えて、組成物は、酸性モノマー、例えばジペンタエリスリトールペンタアクリレートリン酸エステル(PENTA);ビス[2−(メタクリロキシルオキシ)−エチル]ホスフェート並びにビニル化合物、例えば、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート及びジビニルフタレートを含有し得る。
【0025】
(重合系)
光硬化性反応によって重合(固化)を開始する重合系を本発明の材料に使用する。一実施形態では、組成物を光硬化型にするために、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン及びそれらの誘導体、又はα−ジケトン及びそれらの誘導体等の光活性剤を組成物に添加する。好ましい光重合開始剤はカンファーキノン(CQ)である。以下でさらに説明するように、組成物の光重合は2工程プロセス後に起こる。重合は、好ましくは約380nm〜約500nmの範囲の波長を有する青色可視光を組成物に照射することによって開始される。標準的な歯科用青色光硬化ユニットが、組成物に照射するのに使用され得る。アシルホスフィンオキシドの類から選択される光開始剤を使用することもできる。これらの化合物としては例えば、モノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体、及びトリアシルホスフィンオキシド誘導体が挙げられる。例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド(Lucirin−TPO)を、光重合開始剤として使用することができる。一実施形態では、カンファーキノン(CQ);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、N,N−ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びメタクリル酸を含む、「ALF」と称される材料を組成物に使用することができる。
【0026】
光活性剤に加えて、組成物は、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);ヒドロキノン;ヒドロキノンモノメチルエーテル;ベンゾキノン;クロラニル;フェノール;ブチルヒドロキシアニリン(BHT);第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ);トコフェロール(ビタミンE)等の重合阻害剤を含み得る。好ましくは、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が重合阻害剤として使用される。重合阻害剤はスカベンジャーとして働き、組成物中でフリーラジカルを捕捉して、組成物の貯蔵期間を延ばす。
【0027】
(色指示剤)
色が変化する指示剤を本発明の組成物に添加することができる。これらの硬化指示剤を添加して、歯列弓材料の部分硬化を監視することができる。歯科医は、歯列弓材料の色変化を認識すると、歯科用ガードが部分的に硬化しており、歪むことなく口内から安全に取り出すのに十分な寸法安定性を有していると分かる。
【0028】
加えて、照射及び重合指示剤並びに光退色性色素を本発明の組成物に添加することができる。例えば、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10及び特許文献11に開示されているものが挙げられる。好ましい材料としては例えば、光退色性色素、蛍光材料、フォトクロミック材料及び燐光材料が挙げられる。好ましい色素としては例えば、ローズベンガル、メチレンブルー、メチレンバイオレット、エオシンイエロー、エオシンB、エオシンY、エオシンG、エチルエオシン、トルイジンブルー、エリスロシンB、クレシルバイオレット、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、青色蛍光)、フルオレセイン、4’,5’−ジブロモフルオレセイン等及びそれらの組み合わせが挙げられる。4−[(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(OPPI)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(HPIHFP)等も組成物に添加してもよい。
【0029】
(充填材)
従来の充填材料を組成物に添加してもよい。これらとしては無機充填材及び有機充填材が挙げられる。そのような従来の材料としては、限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン、酸化鉄、窒化ケイ素、ガラス(例えば、カルシウム系ガラス、鉛系ガラス、リチウム系ガラス、セリウム系ガラス、スズ系ガラス、ジルコニウム系ガラス、ストロンチウム系ガラス、バリウム系ガラス及びアルミニウム系ガラス、ホウケイ酸ガラス)、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸リチウム、リチウムアルミナシリケート、カオリン、石英及びタルクが挙げられる。無機充填材粒子の平均粒径は通常、約0.005ミクロン〜約10ミクロンの範囲、より好ましくは約0.01ミクロン〜約5ミクロンの範囲、最も好ましくは約0.01ミクロン〜約1ミクロンの範囲である。
【0030】
ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチル/エチルメタクリレート)、架橋ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びポリエポキシド等の有機粒子も充填材として使用することができる。
【0031】
そのような従来の充填材料に加えて、又はそれらの代わりに、上述の重合性アクリル酸化合物を硬化して粉砕し、粒子状粉末を形成することができる。これらの固化した粉末顆粒を充填材料として歯科用組成物に添加することができる。重合性歯科用組成物は、0重量%〜約90重量%の充填材料を含み得る。好ましい実施形態では、組成物は、約2重量%〜約75重量%の充填材、より好ましくは約5重量%〜約50重量%の充填材を含む。一実施形態では、組成物は、微粒子粉末の形態の(上述のような)重合アクリル酸化合物を10重量%、及び樹脂の形態の重合性アクリル酸化合物を90重量%含有し得る。以下の実施例において説明するように、微粒子粉末(重合アクリル酸化合物)を10重量%含有する組成物は、10重量%の微粒子粉末を含有しない組成物よりも粘着性が低い。(重合アクリル酸化合物から調製される)微粒子粉末顆粒の平均粒径は通常、1000ミクロンよりも小さく、より好ましくは200ミクロンよりも小さく、最も好ましくは100ミクロンよりも小さい。
【0032】
好ましい一実施形態では、組成物は、約5重量%〜約50重量%のTBDMA;約5重量%〜約20重量%のCAP−SMA(4,11−ジオキソ−3,10−ジオキサ−12−アザトリアコンタン−1−オールメタクリレート);約5重量%〜約20重量%のG4256(Rahn USA Corp(Aurora, IL)から入手可能な脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート);約1重量%〜約10重量%のSR 348(Sartomer Company(Exton, PA)から入手可能なエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート);約1重量%〜約5重量%のODA(オクタデシルアクリレート);約0.1重量%〜約5重量%のLucirin−TPO(BASFから入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)及び0.1重量%〜4重量%のALFを含む。
【0033】
別の好ましい一実施形態では、組成物は、約10重量%〜約30重量%のTBDMA;約10重量%〜約30重量%のCAP−SMA(4,11−ジオキソ−3,10−ジオキサ−12−アザトリアコンタン−1−オールメタクリレート);約20重量%〜約60重量%のG4256(Rahn USA Corp(Aurora, IL)から入手可能な脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート);約5重量%〜約20重量%のCN962(Sartomer Company(Exton, PA)から入手可能なウレタンアクリレート);約0.1重量%〜約5重量%のLucirin−TPO(BASFから入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)及び0.1重量%〜4重量%のALFを含む。
【0034】
この組成物は、歯科用ガードにおいて軟質層を形成する軟質の弾性重合材料を提供する。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態では、組成物は、約5重量%〜約50重量%のTBDMA;約5重量%〜約20重量%のCAP−SMA(4,11−ジオキソ−3,10−ジオキサ−12−アザトリアコンタン−1−オールメタクリレート);約5重量%〜約20重量%のG4256(Rahn USA Corp(Aurora, IL)から入手可能な脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレート);約1重量%〜約10重量%のSR 348(Sartomer Company(Exton, PA)から入手可能なエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート);約1重量%〜約5重量%のODA(オクタデシルアクリレート);約0重量%〜0.01重量%のメチレンブルー、約0重量%〜0.01重量%のローズベンガル、約0重量%〜0.5重量%のOPPI、約0重量%〜0.5重量%のDPIHFP、約0重量%〜5重量%のLucirin−TPO(BASFから入手可能な2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)及び0.1重量%〜4重量%のALFを含む。この組成物は、部分的に硬化されると見て分かるほど色を変える。
【0036】
TBDMAを、半固体の高分子量オリゴマーの形態で組成物に添加する。Cap−SMAは半結晶モノマーである。TBDMA及びCAP−SMAを添加することによって取り扱い特性が良好な組成物が提供される。Lucirin−TPO及びALFは、モノマー及びオリゴマーの重合を開始し、比較的短い硬化時間を提供する光開始剤である。有機充填材料を添加すると組成物の取り扱い特性が改善される。加えて、有機充填材料の使用は重合による収縮も低減する。
【0037】
本発明の方法に用いられる材料は、幾分ワックスのような特性を有するため、さらに加熱することなく成形して形を整えることができる。成形された材料の幾何学的形状は硬化されるまで維持される。すなわち、材料は、未硬化状態にあるときに、37℃(口内の正常な温度)及び室温で寸法安定性である。「寸法安定性」又は「形状安定性」とは、本明細書において使用する場合、ADA(アメリカ歯科医師会)のコンシステンシー試験の規格19、パラグラフ4.3.4(23℃)(JAVA(登録商標) Vol. 94, April, 1977, pages 734- 737)による試験方法によって求められる、その形状を材料が維持することを指す。材料は、部分的に再結晶化可能であると共に材料が固化するのを助ける半結晶成分を含む。材料は、結晶化すると粘着性が比較的低い表面層を形成する。結晶化した相は、重合すると効率的に溶融し、その結果として体積が膨張し、これによって重合による収縮を幾分相殺する。結果として生じる材料は低収縮及び低応力である。
【0038】
(方法)
本発明の方法の一実施形態によると、歯科医は、ワックス状の重合性歯列弓材料を上側又は下側の歯列弓(歯)を覆うように塗布し、歯科用ガードを形成する。歯列弓材料は、本明細書では主に、上歯列弓を覆うように装着されるものとして説明する。しかし、患者の必要性に応じて、上側又は下側の歯列弓を覆うように歯列弓材料を装着して成形することができることを理解されたい。患者はワックス状材料を噛み締めるように指図される。
【0039】
患者が噛み締めると、歯列弓材料に咬合印象が形成される。この咬合印象は、未硬化状態でも形状安定性である。しかし、十分な圧力を咬合印象に加えると、形を作り直すことが可能である。好ましくは、患者は、以下でさらに説明するように、ワックス状歯列弓材料の咬合面に重なるバッキングフィルムを噛み締める。患者が噛み締めると、歯科医は、歯列弓材料の縁、接点及び咬み合わせを調べる。患者は、軽く噛んでゆっくりと臼歯離間咬合を行うように動かすことによって噛み、歯列弓材料に咬合の起伏を記録する。上記のように歯列弓材料を調べることによって最適なフィットがもたらされれるため、後の調節はあまり必要ではない。
【0040】
次に、形作られた歯列弓材料構造体を口内で部分的に硬化し、歯科用ガード、好ましくはナイトガードを形成する。標準的な発光ダイオード(LED)、ハロゲン及びプラズマアーク(PAC)のハンドヘルド歯科用硬化ライトを使用して材料を部分的に硬化することができる。好適な歯科用硬化ライトとしては、例えば、SmartLiteiQ2(登録商標)及びPS(登録商標)(Dentsply);Elipar(登録商標)(3M Espe);L.E.Demetron II(登録商標)(Kerr)及びBluphase(登録商標)(Ivoclar Vivadent);QHL75(登録商標)Lite(Dentsply);Spectrum(登録商標)800(Dentsply)及びSapphire(DenMat)で販売されているものが挙げられる。
【0041】
硬化ライトは、材料の光重合系を活性化することによって材料を部分的に硬化する。特に、カンファーキノン(CQ)化合物は、約420nm〜約500nmの吸光範囲を有し、この範囲の波長を有する光が照射されると重合のためのフリーラジカルを生成する。このように組成物は固化し始め、歯科用ガード構造体を形成する。
【0042】
部分的に硬化された材料と硬化されていない材料とを区別することは困難である可能性がある。歯科医によっては、ナイトガード材料が部分的に硬化したときを検出することを困難であると感じる場合がある。この問題に対処するために、硬化指示剤を組成物に添加することができる。組成物に使用することができる好適な硬化指示剤は、上述のものである。硬化指示剤は、実質的な色を組成物に付与する第1の色を有する。組成物が部分的に硬化すると、硬化指示剤は、最初の色とは異なる第2の色に変わる。この第2の色が組成物に付与される。組成物が部分的に硬化すると、ヒトの裸眼が、この組成物の第2の色と第1の色との違いを瞬時に見分けることができる。第2の色は、歯科医が組成物の部分硬化を即座に認識することができるように区別可能である。
【0043】
次に歯科医は、部分的に硬化した歯科用ガード構造体を口内から取り出す。歯科医は、エクスプローラ、プローブ又は他の道具を使用して歯科用ガードを歯から取り外すことができる。通常の状況では、歯科医は、高剛性且つ弾性率が高い従来の歯科用ガードを取り出すことを困難であると感じるであろう。しかし、上記材料はこの時点では部分的にしか硬化しておらず、本発明のワックス状材料は可撓性であり弾性率が比較的低いため、歯科医は歯科用ガードを容易に取り出すことができる。さらに、歯科用ガードは、歯のアンダーカットに対応するほど十分に可撓性である。部分的に硬化された材料は完全な硬さを有せず、歯の表面に強力に付着することがない。しかし同時に、部分的に硬化された材料は十分な完全性及び安定性を有するため、歯科用ガードの形状は維持される。部分的に硬化された歯科用ガードは、取り出されるときに全く変形しない。
【0044】
加えて、歯科用ガードは可撓性材料から作製されるため、患者の口内から取り出すのがより容易である。歯科用ガードは柔らかく曲げやすいため、より効果的に取り扱うことができる。同時に、歯科用ガードは良好な機械的完全性を有するため、破砕又は破損することがない。好ましくは、歯科用ガードは、これらの利点となる特性を付与する脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレートを含む材料から作製される。
【0045】
歯科用ガードを口内から取り出した後で、歯科医は、剛性材料(例えばダイシリコーン(die silicone))を歯科用ガードの内部に射出し、歪む可能性を最小限に抑えるように模型を形成することができる。次いで、歯科用ガードを第2の硬化工程で完全に硬化する。標準的な光硬化炉を使用して歯科用ガードを完全に硬化することができる。好適な光硬化炉としては、例えば、Dentsplyから入手可能なEclipse(登録商標)処理ユニット、Enterra(登録商標)可視光硬化(VLC)ユニット及びTriad(登録商標)2000 VLCユニットが挙げられる。
【0046】
完全に硬化した歯科用ガードは、弾性且つ可撓性があると共に機械的に強固である。概して、完全に硬化した歯科用ガードは、37℃で10,000psi未満の曲げ強度及び37℃で300,000psi未満の曲げ弾性率を有する。好ましい一実施形態では、歯科用ガードは、37℃で約7MPaの曲げ強度及び200MPaの曲げ弾性率を有する。曲げ弾性率が低い材料とは、材料を変形させるか又は撓ませるのに比較的少ない量の力しか必要ではないことを意味する。曲げ弾性率が低い歯科用ガードが有利であり、これは、これらが可撓性であり、口内への出し入れを容易に行うことができるためである。歯科用ガードは、柔らかく曲げやすい性質であるため、歯の輪郭にわたってより容易にフィットする。歯科用ガードはより快適に装着することができる。
【0047】
第2の光硬化工程の完了後、余分な材料を除去していかなる粗い点も滑らかにするように、標準的な歯科用バー又は他の好適な道具を使用して歯科用ガードを仕上げることができる。仕上げられ研磨された歯科用ガードは、患者の口内に位置合わせする準備が整っている。
【0048】
代替的な方法では、歯科用ガードは患者の口内で部分的に硬化しない。その代わりに、歯科医は、ワックス状重合性歯列弓材料を温めて患者の上側又は下側の歯列弓を覆うように配置する。患者は、この歯列弓材料を噛み締めてその中に印象を形成する。材料は、患者の歯列に合うように成形される。材料は、冷却されると、患者の口内で安定な硬化されていない歯科用ガード構造体を形成する。次いで歯科用ガード構造体を口内から取り出す。歯科用ガード構造体は、上述した標準的な歯科用硬化ライト又は炉を使用して口外で光放射に暴露することによって完全に硬化される。この方法は、歯科用ガード構造体を作るために歯科医が口外で作業する機会を可能にするため、有利であり得る。
【0049】
別の実施形態では、ナイトガードは、第1の重合層及びそれに重なる第2の重合層を有する積層構造体である。第1の層は、比較的硬質の層であり、ナイトガードの外側を形成する。第1の層に積層される第2の層はナイトガードの内面を形成し、これは比較的軟質の層であり、歯の表面と接触する。内側層は、患者がナイトガードを噛み締めるときに歯の表面に対する軟質のクッションを提供し、外側層はより硬質の保護となる歯のガードを提供する。上述の重合性アクリル酸化合物、重合系及び充填材を使用してナイトガードの第1の層及び第2の層を調製することができるが、第1の層の組成は第2の層の組成とは異なる。
【0050】
本発明の方法によると、歯科用ガードは、歯科医院の歯科用椅子の脇で作製することができる。歯科医は、「椅子の脇で」歯科用ガードを設計及び製造し、そのガードを、一回の来院で患者の口内に装着することができる。完成した歯科用ガードは、耐久性、耐磨耗性及び可撓性に優れる。
【0051】
本発明はまた、歯科用ガードを製造するキットを提供する。歯科医が歯科用ガードを患者の椅子の脇で作製することができるように歯科医にキットを提供することができる。図1〜図1Cを参照すると、キットは好ましくは、上側の平坦な面12及び下側の平坦な面14を有する可撓性トレイ10を含む。トレイ10の上面12は、以下でさらに説明するU字形の歯科用ガード(図示せず)を保持するU字形の凹部又はウェル16を含む。図1Bに示すように、U字形の凹んだウェル16の中心部分18は比較的深い。凹んだウェル16は、延在する脚部分20、22へ向かってわずかに上方傾斜している。脚部分20、22の先端21、23がわずかに丸みを帯びており、小さい半径を有する。図1Cに示すように、U字形の凹んだウェル16の前側領域24は比較的深い。後側領域26に移動するにつれ、深さが次第に減ることによって凹んだウェル26の後側領域26が前側領域24よりも浅くなる。
【0052】
図2及び図2Aには、トレイ10内に保持されているU字形の歯列弓28を示す。歯列弓28は、本発明の歯科用ガードを製造するために使用される。歯列弓28は、患者の上側又は下側の歯列弓を覆うようにフィットするように設計されているU字形構造を有する。U字形のフィルムバッキング30がU字形の歯列弓28に被せられる。
【0053】
図2では、フィルムバッキング30を歯列弓28の下側面上に位置付けて示し、図2Aでは、フィルムバッキング30を、歯列弓28の上面に被せている。フィルムバッキング30は、歯列弓28を容易に取り扱うことを可能にし、粘着性を最小限に抑える。歯列弓28は、特に患者の口内の高温において過度に手で取り扱い過ぎると粘着性となる可能性がある。フィルムバッキング30の使用は粘着性を最小限に抑えるのに役立つ。加えて、フィルムバッキング30は、患者が噛み締めるときに対向する歯列まで噛むことに対応するバリアを形成する。さらに、上述のように最初に部分重合する際にハンドヘルド歯科用硬化ライトを使用して歯科用ガードを硬化する場合、硬化ライトの先端が歯科用ガードと接触することが多い。フィルムバッキング30は、歯科用ガードが硬化ライトの先端によって汚染されることを防止する。逆に、フィルムバッキング30は、硬化ライトの先端が歯科用ガードの樹脂によって汚染されることを防止する。図3には、形状安定性の楔形の歯列弓28自体を示す。歯列弓28は、上側及び下側の平坦な面と、内側(舌側)面29及び外側(頬側)面31とを有するU字形の基材を有する。楔形の歯列弓28の前側領域は比較的厚い。後側領域に移動するにつれ、厚さが次第に減ることによって楔形の歯列弓28の後側領域が前側領域よりも薄くなる。楔形の歯列弓28の傾斜角は変えてもよく、通常は約2度〜3度の範囲である。歯列弓28は、異なる患者にフィットするように様々なサイズ(例えば小、中及び大)で製造することができる。歯科医は、患者にフィットするおおよそのサイズの歯列弓を選択し、必要に応じてトリミングすることができる。
【0054】
図4を参照すると、パッケージングする前に、剥離ライナ又はシート材料32をトレイ10に被せることができる。剥離ライナ32は、輸送中に、パッケージングされた歯科用ガードの完全性を維持するのに役立つ。剥離ライナ32は、歯科用ガード及びフィルムバッキング30がパッケージの内側に粘着することを防止する。さらに、剥離ライナ32は歯列弓28を汚染及び塵埃から保護する。U字形のフィルムバッキング30は、弾性の熱可塑性樹脂、例えばポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデン、酢酸セルロース、ポリエーテル、ポリエステル、ポリ塩化ビニル及びそれらのコポリマー等から作製することができる。好ましくは、U字形のバッキング30は、パラフィルム M(Pechiney Plastic Packaging Companyの製品である炭化水素ワックスフィルム)から作製される。歯列弓28を収容するトレイ10は、光保護包囲体又は他の容器(図示せず)内にパッケージングして真空シールすることができる。真空シールする手順は、汚染を防止するために使用されると共に、パッケージングされた歯科用ガードが出荷及び取り扱い中に損傷を受けるのを防止するのに役立つ。
【0055】
同様に、本発明は、積層された楔形の歯列弓及びキットを提供し、これらを用いて、快適さを加え、患者に対する挿入及び取り出しを容易にするための軟質層と、長期の耐久性のために耐磨耗性に優れる硬質の咬合表面層とを有するナイトガードを製造することができる。また本発明は、歯科医及び歯科専門家に、硬質/軟質のナイトガードを簡便に製造するための簡単且つ迅速な技法を提供する。
【0056】
実際には、歯科医は、シールされた光保護パッケージから、歯列弓を収容するトレイを取り出す。歯科医はトレイを片手で保持する。次いで歯科医は、もう片方の手で剥離ライナを剥がすことができる。剥離ライナを剥がすと、臨床医は、保護用のU字形のバッキングフィルムを有する歯列弓をトレイから容易に取り出すことができる。剥離ライナは、以下でさらに説明するように硬化プロセスで使用することができるため、脇に置いておくべきである。剥離ライナのみを除去するべきであり、U字形の歯列弓の上面を覆うU字形のフィルムバッキングは定位置にあるままであるべきである。臨床医は、自身の親指と他の指の間に歯列弓を挟んでトレイの凹んだウェルから引っ張り出すことによって歯列弓を把持することができる。トレイは、シリコーン、ゴム又は他のエラストマー材料から作製されるのが好ましい。この材料はいくつかの利点となる特性を有し、特にU字形の歯列弓を保持するのに十分な機械的完全性及び剛性を有するトレイを提供する。同時に、この材料には弾性があるため、わずかに屈曲して撓む。したがって、歯科医は、自身の親指と他の指とでトレイを挟んでこれをギュッと押すことができる。これによって、U字形の歯列弓がトレイのU字形のウェルからわずかに「飛び出す」。歯科医は次いで、U字形の歯列弓を単にトレイから引っ張り出すだけでよい。
【0057】
歯科医は、一対のハサミ又は他の鋭利な道具を使用して歯列弓をトリミングすることにより、歯列弓が患者の歯列によりよくフィットするようにすることができる。歯の表面は湿っているものとする。この場合、歯科医は、フィルムバッキングによって覆われたままである1つの面と第2の暴露されている面とを含む歯列弓を口内に挿入する。図5〜図5Bを参照すると、歯列弓28の暴露されている樹脂面を湿った歯の表面に対して押圧し、歯列弓28のフィルムで覆われている面を、指の圧力を用いて、最小限の粘着性で容易に成形することができる。フィルムバッキング30は、患者が噛み締めるときに対向する歯が歯列弓28に粘着することを防止する。図5に示すように、例えば歯列弓材料28を上側歯列を覆うように装着すると、歯列弓の上面が暴露されて上歯表面に対して押圧される。また、歯列弓材料28の下側面はフィルムバッキングによって覆われたままであり、これが、下歯がガードに粘着することを防止する。
【0058】
歯科医は、指の圧力によって、舌側面の多くを覆いながら、歯列弓材料28を顔中央の(mid-facial)歯の表面に適応させる。材料は、深いアンダーカットは回避しながら歯間空隙に適応する。患者はガードを複数回軽く噛み、横方向に顎を動かす。咬合接点がフィルムバッキングに記録されると、患者は軽く噛んでその位置を保持する一方、歯科医は硬化ライト放射35を歯の顔面側面に向ける(図5A)。歯科医は、硬化ライト35の光ガイド先端を使用して、ガード36を歯の表面に対してさらに押圧して輪郭を付けることを望むであろう。歯の顔面側面に十分な期間硬化ライトを照射した後で、患者が口を開くことによって硬化ライトを舌側面に向けることができる。最後に、硬化ライトを咬合面に向ける。ガードを十分に部分的に硬化するために必要な時間の量は、使用する硬化ライトの種類、患者の状態及び他の要因によって変わる。一般的には、歯科用ガードは、石英ハロゲン硬化ライトを使用する場合には口内硬化の約3分後に、またLED硬化ライトを使用する場合には約4分30秒後に十分に部分的に硬化させることができる。次いで、フィルムバッキングを有する部分的に硬化した歯科用ガードを口内から取り出す。ここで、完全に硬化させて仕上げる準備が整う。
【0059】
樹脂製の歯科用ガードは、患者がガードを噛み締める結果として歯の印象を含む。これらの歯の空間を、第2の硬化工程の前にダイシリコーン材料で充填することが推奨される。歯の空間は、Regisil(登録商標)剛性ダイシリコーン(Dentsply)で充填することができる。ダイシリコーンで充填されたガードは反転され、上述した元のパッケージングで使用された正方形の剥離ライナ上に裏向きにして配置される。ダイシリコーンは通常、約2分後に固化する。ここで、歯科用ガードは完全に硬化する準備が整う。歯科用ガードを可視光硬化ユニットに入れ、完全に硬化するように硬化ライトを照射する。ガードを完全に硬化させるために必要な時間の量は、使用する光硬化ユニットの種類によって変わる。例えば、Dentsply製の以下の硬化ユニットを使用することができる:Eclipse(登録商標)処理ユニット、Enterra(登録商標)可視光硬化(VLC)ユニット及びTriad(登録商標)2000 VLCユニット。概して、硬化サイクルは通常、約5分〜約20分の範囲である。完成した歯科用ガード36は、図5Bに示すように、患者の口内の上歯列弓を覆うように装着することができる。
【0060】
本発明を以下の実施例及び試験方法によってさらに示すが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0061】
(試験方法)
(曲げ強度及び曲げ弾性率)
材料の曲げ強度及び曲げ弾性率特性を、ASTM D790(1997)の試験方法に従って測定した。曲げ弾性率が低い材料とは、その材料を変形させるか又は撓ませるのに比較的少ない量の力しか必要ではないことを意味する。
【0062】
(ノッチなし衝撃強度)
材料のノッチなし衝撃強度を、ASTM D4812(1993)の試験方法に従って測定した。
【0063】
(粘着性)
重合性材料の粘着性を、ASTM D3121−06(修正版)の試験方法に従って測定した。この試験方法は、1)ボールの直径を7/16インチから1/4インチに低減すること、及び2)(ボールを加速するために)使用する斜面の長さを6.5インチから1.0インチに低減することによって修正されている。この手順に従うと、材料の粘着性は、ボールが斜面に沿って移動する距離に基づくことになる。ボールが長い距離を移動するほど材料の粘着性は低い。
【実施例】
【0064】
(調製1 TBDMAオリゴマーの調製)
反応器に、1176グラムのトリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン(5.59mol)及び1064グラムのビスフェノールAプロポキシレート(3.09mol)を乾燥窒素流下で入れ、窒素正圧下で約65℃まで加熱した。この反応混合物に、触媒として10滴のジブチル錫ジラウレートを添加した。反応混合物の温度を約70分間、65℃〜140℃に維持し、その後さらに触媒として10滴のジブチル錫ジラウレートを添加した。粘性のあるペースト状のイソシアネートで末端が封止された中間生成物が形成され、100分間攪拌した。この中間生成物に、662グラム(5.09mol)の2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び阻害剤として7.0グラムのBHTを70分間かけて添加し、一方で反応温度を68℃〜90℃に維持した。70℃で約5時間攪拌した後、加熱を止め、TBDMAオリゴマーを半透明な可撓性固体として反応器から回収し、乾燥した雰囲気中で貯蔵した。
【0065】
(調製2 モノマーの調製)
反応フラスコに、151.25グラムのオクタデシルイソシアネートを入れ、窒素正圧下で約70℃まで加熱した。この反応器に、125.3グラムのカプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、触媒として0.12グラムのジブチル錫ジラウレート及び0.58グラムのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を添加した。この添加は、2時間かけて乾燥窒素流下でゆっくりと行った。反応混合物の温度を、さらに2.5時間、70℃〜85℃に維持し、反応生成物を透明な液体としてプラスチック容器へ排出して冷却し、半透明な固体を形成して乾燥した雰囲気中で貯蔵した。
【0066】
[実施例1]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した69.0グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って調製した11.0グラムのモノマー、12.0グラムのGenomer 4256(Rahn USAから入手可能)、6.0グラムのSR348(販売元Sartomer)、1.0gグラムのオクタデシルアクリレート(ODA)、0.5グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF製のLucirin TPO)及び0.5グラムの可視光開始溶液(visible light initiating solution)を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び66.7%の1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)を含有する。
【0067】
[実施例2]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した65.5グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って調製した14.2グラムのモノマー、11.0グラムのGenomer 4256(Rahn USAから入手可能)、4.4グラムのSR348(販売元Sartomer)、2.0gグラムのオクタデシルアクリレート(ODA)、0.7グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF製のLucirin TPO)及び2.2グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び66.7%の1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)を含有する。
【0068】
[実施例3]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した94.0グラムのTBDMAオリゴマーの液体、3.65gグラムのオクタデシルアクリレート(ODA)及び調製2の手順に従って調製した2グラムのモノマー、0.25gグラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF製のLucirin TPO)及び1.0グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート及び16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含有する。
【0069】
[実施例4]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した57.2グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って調製した17.3グラムのモノマー、17.3グラムのGenomer 4256(Rahn USAから入手可能)、5.2グラムのSR348(Sartomerから入手可能)、2.3gグラムのオクタデシルアクリレート(ODA)、0.35グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)及び0.35グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート及び16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含有する。組成物を、Eclipse(登録商標)処理ユニット等の可視光ユニットによって重合させ、100μm未満の平均粒径を有する粉末に粉砕した。
【0070】
[実施例5]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した49.6グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って形成した15.0グラムのモノマー、15.0グラムのGenomer 4256(販売元Rahn USA)、実施例4で作製した11.0グラムのポリマー粉末、4.5グラムのSR348(販売元Sartomer)、2.0gグラムのオクタデシルアクリレート(ODA)、2.2グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF製のLucirin TPO)及び0.7グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート及び16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含有する。
【0071】
[実施例6A]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した24.0グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って調製した20.0グラムのモノマー、44.0グラムのGenomer 4256(Rahn USAから入手可能)、11.0グラムのCN962(販売元Sartomer)、0.5グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)及び0.5グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート及び16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含有する。この材料を使用して、以下でさらに説明する技工所の方法によって歯科用ガードを作製するのに使用される積層歯列弓の軟質層を形成する。
【0072】
[実施例6B]
(重合性材料)
調製1の手順に従って調製した23.55グラムのTBDMAオリゴマーの液体、調製2の手順に従って調製した19.6グラムのモノマー、43.15グラムのGenomer 4256(Rahn USAから入手可能)、10.8グラムのCN962(販売元Sartomer)、0.7グラムの2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)及び2.2グラムの可視光開始溶液を85℃で攪拌及び脱気することによって、光硬化型の重合性材料を調製した。可視光開始溶液は、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N−ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート及び16.3%のγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含有する。この材料を使用して、以下でさらに説明する「椅子の脇」の方法によって歯科用ガードを作製するのに使用される積層歯列弓の軟質層を形成する。
【0073】
[実施例7]
(予め形成された重合性歯列弓フォーム)
実施例5の手順に従って調製した約8グラムの加熱(85℃)重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内で約2mm〜5mm厚の層に形成し、冷却して形状安定性の楔形歯列弓を形成した。この予め形成された重合性歯列弓の形を整えて硬化し、可撓性のスプリントを形成することができる。薄いパラフィルムバッキング、及び次いでプラスチック製剥離フィルムを、シリコーントレイ内でこの硬化していない楔形歯列弓に被着し、最終的に光密なプラスチックパッケージ内で真空シールし、歯列弓キットを形成した。
【0074】
[実施例8]
(予め形成された重合性歯列弓フォーム)
実施例1の手順に従って調製した約8グラムの加熱(85℃)重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内で約2mm〜5mm厚の層に形成し、冷却して形状安定性の楔形歯列弓を形成した。この予め形成された重合性歯列弓の形を整えて硬化し、可撓性のスプリントを形成することができる。薄いパラフィルムバッキング、及び次いでプラスチック製剥離フィルムを、シリコーントレイ内でこの硬化していない楔形歯列弓に被着し、最終的に光密なプラスチックパッケージ内で真空シールし、歯列弓キットを形成した。
【0075】
[実施例9A]
(可撓性(硬質)層及び弾性(軟質)層を有する、予め形成された重合性積層歯列弓フォーム)
実施例6Aの手順に従って調製した約2グラム〜3グラムの加熱(85℃)重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内で約1mm〜1.5mm厚の層に形成し、冷却して形状安定性の歯列弓層を形成した。次いで、実施例1の手順に従って作製した4グラム〜5グラムの重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内の約1mm〜1.5mm厚の層上に被着し、約2mm〜5mm厚の積層層にし、冷却して形状安定性の楔形歯列弓を形成した。この予め形成された重合性の積層歯列弓の形を整えて硬化し、軟質層及び硬質層を有するスプリントを形成することができる。薄いパラフィルム歯列弓、及び次いでプラスチック製剥離フィルムを、シリコーントレイ内でこの硬化していない楔形歯列弓に被着し、最終的に光密なプラスチックパッケージ内で真空シールし、歯列弓キットを形成した。
【0076】
[実施例9B]
(可撓性(硬質)層及び弾性(軟質)層を有する、予め形成された重合性積層歯列弓フォーム)
実施例3の手順に従って調製した約4グラム〜5グラムの加熱(85℃)重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内で約1mm〜4mm厚の層に形成し、冷却して形状安定性の歯列弓層を形成した。次いで、実施例6Aの手順に従って作製した2グラム〜3グラムの重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内の上記で形成した層の上に被着して約0.5mm〜2mm厚の層を形成し、冷却して形状安定性の楔形積層歯列弓を形成した。この予め形成された重合性の積層歯列弓の形を整えて硬化し、軟質層及び硬質層を有するスプリントを形成することができる。薄いパラフィルム歯列弓、及び次いでプラスチック製剥離フィルムを、シリコーントレイ内でこの硬化していない楔形歯列弓に被着し、最終的に光密なプラスチックパッケージ内で真空シールし、歯列弓キットを形成した。
【0077】
[実施例10]
(可撓性(硬質)層及び弾性(軟質)層を有する、予め形成された重合性積層歯列弓フォーム)
実施例6Bの手順に従って調製した約2グラム〜3グラムの加熱(85℃)重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内で約1mm厚の層に形成し、冷却して形状安定性の歯列弓層を形成した。次いで、実施例2の手順に従って作製した4グラム〜5グラムの重合性材料を、楔形のシリコーン歯列弓型内の上記1mm厚の層の上に被着して、軟質層及び硬質層を有するスプリントを形成するように形を整えて硬化することができる、予め形成された重合性の積層歯列弓を形成した。薄いパラフィルム歯列弓、及び次いでプラスチック製剥離フィルムを、シリコーントレイ内でこの硬化していない楔形歯列弓に被着し、最終的に光密なプラスチックパッケージ内で真空シールし、歯列弓キットを形成した。
【0078】
[実施例11]
(硬化工程を含む可撓性の高分子ナイトガードの製造)
患者の歯の二部分石膏模型を形成して剥離剤でコーティングした。実施例8の手順に従って形成した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形歯列弓フォームを、二部分モデル(two part model)の模型上に被着し、指の圧力で形を整えてトリミングし、重合性ナイトガードを形成した。モデルが関節を有するため(articulated)、この重合性組成物を二部分モデルにさらに適合させた。エアバリアコーティング(Eclipseの商標名でDentsply Internationalから入手可能)を重合性ナイトガード及び必要に応じて模型に塗工してもよい。次いで、模型上にあるままで、重合性ナイトガードを、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから入手可能)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(Dentsply Internationalから入手可能)内で10分間硬化させた。形成された高分子ナイトガードは透明であった。パラフィルムの残りを、硬化した装置から必要に応じて除去し、次いでエアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄してもよい。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0079】
[実施例12]
(軟質層及び硬質層を有する積層高分子ナイトガード)
患者の歯の二部分石膏模型を形成して剥離剤でコーティングした。実施例9Aの手順に従って形成した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形積層歯列弓フォームを、二部分モデルの模型上に被着し、指の圧力で形を整えてトリミングし、重合性ナイトガードを形成した。モデルが関節を有するため、この重合性組成物を二部分モデルにさらに適合させた。エアバリアコーティング(Eclipse(登録商標)の商標名でDentsply Internationalから入手可能)を重合性ナイトガード及び必要に応じて模型に塗工してもよい。次いで、模型上にあるままで、重合性ナイトガードを、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから入手可能)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(販売元Dentsply International)内で10分間硬化させた。形成された高分子ナイトガードは透明であった。高分子ナイトガードを模型から取り外した後ひっくり返して、エアバリアコーティング(Eclipseの商標名でDentsply Internationalから販売されている)をナイトガードの組織側に塗工し、次いで組織側を、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)又はEnterra(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内でさらに4分間硬化した。パラフィルムの残りを、硬化した装置から必要に応じて除去し、次いでエアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄した。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0080】
[実施例13]
(口内で部分的に硬化される可撓性ナイトガードの製造)
実施例7の手順に従って調製した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形歯列弓フォームを、患者の口内の歯列を覆うように被着した。組成物を、指の圧力で形を整えてトリミングし、ナイトガードを形成した。ナイトガードが口内でフィットするように検査及び調整した後、ナイトガードを、ハンドヘルドライト(QHL75(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を使用して2分〜3分間口内で部分的に硬化させた。次いで、この部分的に硬化したナイトガードを口内から取り出した。ダイシリコーンを、形成されたナイトガードのキャビティに射出した。エアバリアコーティング(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を、重合性ナイトガードのダイシリコーン模型上に塗工してもよく、次いでこのダイシリコーン模型上で、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(販売元Dentsply International)内で10分間硬化させた。任意選択的に、ダイシリコーンを射出する前に最初にエアバリアコーティングを被着してもよい。形成された高分子ナイトガードは透明であった。パラフィルムの残りを、硬化した装置から必要に応じて除去した。最後に、エアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄してもよい。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0081】
[実施例14]
(口内で部分的に硬化される、軟質層及び硬質層を有する積層高分子ナイトガードの製造)
実施例10の手順に従って調製した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形積層歯列弓フォームを、患者の口内の歯列を覆うように被着した。組成物を、指の圧力で形を整えてトリミングし、ナイトガードを形成した。ナイトガードが口内でフィットするように検査及び調整した後、ナイトガードを、ハンドヘルドライト(QHL75(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を使用して2分〜3分間口内で部分的に硬化させた。次いで、この部分的に硬化したナイトガードを口内から取り出した。ハンドヘルドライトを用いて1分間さらにナイトガード歯列弓の内面を硬化してもよい。ダイシリコーンを、形成されたナイトガードのキャビティに射出した。エアバリアコーティング(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を、重合性ナイトガードのダイシリコーン模型上に塗工してもよく、次いでこのダイシリコーン模型上で、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(販売元Dentsply International)内で10分間硬化させた。任意選択的に、ダイシリコーンを射出する前に最初にエアバリアコーティングを被着し、次いでハンドヘルドライトを用いて1分間ナイトガードの内面を硬化してもよい。形成された高分子ナイトガードは透明であった。高分子ナイトガードをダイシリコーン模型から取り外した後ひっくり返して、エアバリアコーティング(Eclipseの商標名でDentsply Internationalから販売されている)をナイトガードの組織側に塗工し、次いで組織側を、光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)又はEnterra(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内でさらに4分間硬化した。パラフィルムの残りを、硬化したナイトガードから必要に応じて除去した。最後に、エアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄してもよい。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0082】
[実施例15]
(ダイシリコーンを用いることなく硬化されるナイトガードの製造)
実施例7の手順に従って調製した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形積層歯列弓フォームを、患者の口内の歯列を覆うように被着した。組成物を、指の圧力で形を整えてトリミングし、ナイトガードを形成した。ナイトガードが口内でフィットするように検査及び調整した後、ナイトガードを、ハンドヘルドライト(QHL75(登録商標)の商標名でDentsply Internationalから販売されている)を使用して2分〜3分間口内で部分的に硬化させた。次いで、この部分的に硬化したナイトガードを口内から取り出した。エアバリアコーティング(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を、重合性ナイトガードに塗工し、次いで光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(販売元Dentsply International)内で10分間硬化させた。パラフィルムの残りを、硬化したナイトガードから必要に応じて除去した。最後に、エアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄した。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0083】
[実施例16]
(ダイシリコーンを用いることなく硬化される積層ナイトガード)
実施例10の手順に従って調製した歯列弓用パラフィルムバッキングを有する楔形積層歯列弓フォームを、患者の口内の歯列を覆うように被着した。組成物を、指の圧力で形を整えてトリミングし、ナイトガードを形成した。ナイトガードが口内でフィットするように検査及び調整した後、ナイトガードを、ハンドヘルドライト(QHL75(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を使用して2分〜3分間口内で部分的に硬化させた。次いで、この部分的に硬化したナイトガードを口内から取り出した。エアバリアコーティング(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)を、重合性ナイトガードの組織側及び咬合面側の両方に塗工し、次いで光硬化ユニット(Eclipse(登録商標)でDentsply Internationalから販売されている)内で6分間、又はEnterra(登録商標)(販売元Dentsply International)内で10分間硬化させた。パラフィルムの残りを、硬化したナイトガードから必要に応じて除去した。最後に、エアバリアコーティングの全ての痕跡を除去するために水で洗浄した。次にナイトガードを仕上げ及び研磨した。
【0084】
[実施例17]
(重合性材料の粘着性)
この実施例では、実施例4の重合性材料を硬化して粉砕し、微粒子粉末を形成した。この粉末を、実施例5において示された重合性材料に(11重量%の量で)添加し、この実施例5の材料を、上述のASTM D3121−06(変更あり)の試験方法に従って粘着性に関して試験した。重合性材料は、37℃で4インチを超えるボールタックを示した。
【0085】
[実施例17A]
(重合性材料の粘着性)
この実施例では、実施例4の重合性材料を、上述のASTM D3121−06(修正版)の試験方法に従って粘着性に関して試験した。重合性材料は微粒子粉末を全く含有していなかった。重合性材料は、37℃で4インチ未満のボールタックを示した。
【0086】
実施例17及び実施例17Aにおいて示したように、微粒子高分子粉末を含有する重合性材料の粘着性は低減していた。実施例17の材料の粘着性は実施例17Aの材料の粘着性よりも低い。加えて、実施例17の重合性材料は驚くほど改善された取り扱い特性を有し、高温での形状安定性が増した。これらの材料は口内で容易に成形して、良好な寸法安定性を有する歯科用ガードを形成することができる。材料は必要以上に流動性ではなく、成形して所望の形状に輪郭を合わせることができる。
【0087】
これまでの光硬化型歯科用ガードは、例えばDentsply International Incによって販売されているTriad TranSheet及びEclipse Clear Baseplateのような重合性組成物から作製される歯科用ガードを含む。表1に示すように、実施例5の手順に従って調製された歯科用ガード材料の曲げ強度及び曲げ弾性率は、23℃では、Eclipse Clear Baseplate及びTriad TranSheetから作製された歯科用ガードの曲げ強度及び曲げ弾性率の半分未満である。いかなる特定の形状(又は幾何学的形状)にとっても、曲げ弾性率は、材料を変形させる(又は撓ませる)のに必要な力を代表するものである。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示すように、Eclipse Clear Baseplate及びTriad TranSheetから作製された歯科用ガードの曲げ強度は、37℃では、実施例5の手順に従って調製した歯科用ガード材料の曲げ強度の10倍以上である。また、表1に示すように、Eclipse Clear Baseplate及びTriad TranSheetから作製された歯科用ガードの曲げ弾性率は、37℃では、実施例5の手順に従って調製した歯科用ガード材料の曲げ弾性率の約10倍である。表1の最後の行(部分的に硬化/実施例5)に示すように、本発明の部分的に硬化した歯科用ガードの場合では曲げ強度及び曲げ弾性率がさらに低い。部分的に硬化した歯科用ガードは、限られた指の圧力下では十分に寸法安定性であり、変形することなく幾分の形状記憶を維持する。本発明に従って作製された曲げ強度及び曲げ弾性率が低い歯科用ガードは、この歯科用ガードが口内で少なくとも部分的に硬化され、次いで患者に損傷を与えることなく患者の口内から容易に取り出されることを可能にする。快適で容易な挿入及び取り出しのために、歯科用ガードが比較的低い曲げ強度及び曲げ弾性率を有することが有益である。積層歯科用ガードの場合、硬質層の曲げ強度及び曲げ弾性率をより高くしてもよい。理由は、軟質層がさらに快適で容易な挿入及び取り出しを提供するからである。
【0090】
本発明を、その或る特定の実施形態に関してかなり詳細に説明したが、本発明はそのような実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、本発明の精神及び添付の特許請求の範囲から逸脱することなく他の方法で使用してもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯ぎしりによって引き起こされる損傷から歯を保護する歯科用ガードであって、対向する上側及び下側の平坦な面、内側面並びに外側面を有するU字形のベースを有し、該ベースは、患者の歯列弓の形状に合うように成形することができると共に該成形された形状を保つように光照射によって硬化される材料から成り、該ベースの材料は、少なくとも重合性アクリル酸化合物及び光によって活性化される重合系から成る、歯科用ガード。
【請求項2】
前記ベースの材料は色が変化する硬化指示剤をさらに含む、請求項1に記載の歯科用ガード。
【請求項3】
前記ベースの材料は粒状充填材をさらに含む、請求項1に記載の歯科用ガード。
【請求項4】
前記ベースの材料は室温で形状安定性である、請求項1に記載の歯科用ガード。
【請求項5】
前記ベースの材料は、TBDMA、CAP−SMA、G4256、SR348及びODA並びにこれらのブレンドから成る群から選択される半結晶重合性アクリル酸化合物から成る、請求項1に記載の歯科用ガード。
【請求項6】
前記粒状充填材は無機充填材料及び有機充填材料から成る群から選択される、請求項3に記載の歯科用ガード。
【請求項7】
前記粒状充填材は、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、窒化ケイ素及びガラスから成る群から選択される無機充填材料である、請求項6に記載の歯科用ガード。
【請求項8】
前記粒状充填材は、重合性アクリル酸化合物、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート及びポリエポキシドから成る群から選択される有機充填材料である、請求項6に記載の歯科用ガード。
【請求項9】
前記粒状充填材は、1000ミクロン未満の粒径に粉砕されている重合アクリル酸化合物のブレンドを含む、請求項6に記載の歯科用ガード。
【請求項10】
前記重合系は、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びエチル(4−N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートから成る群から選択される光活性剤を含む、請求項1に記載の歯科用ガード。
【請求項11】
前記硬化指示剤は、メチレンブルー、トルイジンブルー、ローズベンガル、4−[(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(OPPI)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(HPIHFP)から選択される材料を含む、請求項2に記載の歯科用ガード。
【請求項12】
歯ぎしりによって引き起こされる損傷から歯を保護する歯科用ガードであって、
対向する上側及び下側の平坦な面、内側面並びに外側面とを有するU字形のベースを有し、該ベースは、患者の歯列弓の形状に合うように成形することができると共に成形された形状を保つように光照射によって硬化される材料から成り、前記ベースの材料は、比較的軟質の第1の層及び比較的硬質の第2の層を含み、前記第2の層は前記第1の層に重なり、前記第1の層は少なくとも30重量%の脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレートを含み、前記第2の層は30重量%未満の脂肪族ポリエステルウレタンメタクリレートを含む、歯科用ガード。
【請求項13】
前記第1の層の材料は、TBDMA、CAP−SMA、G4256及びCN962並びにこれらのブレンドから成る群から選択される半結晶重合性アクリル酸化合物を含む、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項14】
前記第2の層の材料は、TBDMA、CAP−SMA、G4256、SR348及びODA並びにこれらのブレンドから成る群から選択される半結晶重合性アクリル酸化合物を含む、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項15】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方は硬化指示剤をさらに含む、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項16】
前記第1の層及び前記第2の層の少なくとも一方は粒状充填材をさらに含む、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項17】
前記材料は室温で形状安定性である、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項18】
前記粒状充填材は無機充填材料及び有機充填材料から成る群から選択される、請求項16に記載の歯科用ガード。
【請求項19】
前記粒状充填材は、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、窒化ケイ素及びガラスから成る群から選択される無機充填材料である、請求項16に記載の歯科用ガード。
【請求項20】
前記粒状充填材は、重合性アクリル酸化合物、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリカーボネート及びポリエポキシドから成る群から選択される有機充填材料である、請求項16に記載の歯科用ガード。
【請求項21】
前記粒状充填材は、1000ミクロン未満の粒径に粉砕されている重合アクリル酸化合物のブレンドを含む、請求項16に記載の歯科用ガード。
【請求項22】
前記重合系は、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド及びエチル(4−N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートから成る群から選択される光活性剤を含む、請求項12に記載の歯科用ガード。
【請求項23】
前記硬化指示剤は、メチレンブルー、トルイジンブルー、ローズベンガル、4−[(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(OPPI)及びジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(HPIHFP)から選択される材料を含む、請求項15に記載の歯科用ガード。
【請求項24】
歯科用ガードを製造する方法であって、
請求項1に記載の歯科用ガードを準備する工程、
前記歯科用ガードを患者の口内に配置し、前記歯科用ガードが患者の上側又は下側の歯列弓を覆うように成形する工程、
第1の光硬化工程において、口内に配置されている間に前記歯科用ガードに光を照射し、前記歯科用ガードを部分的に硬化する工程、及び
前記部分的に硬化した歯科用ガードを口内から取り出すと共に、第2の光硬化工程において該部分的に硬化した歯科用ガードに光を照射して該歯科用ガードが完全に硬化するようにする、取り出すと共に照射する工程、
から成る方法。
【請求項25】
歯科用ガードを製造する方法であって、
請求項12に記載の歯科用ガードを準備する工程、
前記歯科用ガードを患者の口内に配置し、前記歯科用ガードが患者の上側又は下側の歯列弓を覆うように成形する工程と、
第1の光硬化工程において、口内に配置されている間に前記歯科用ガードに光を照射し、前記歯科用ガードを部分的に硬化する工程、及び
前記部分的に硬化した歯科用ガードを口内から取り出し、第2の光硬化工程において該部分的に硬化した歯科用ガードに光を照射して前記歯科用ガードを完全に硬化する工程、
から成る方法。
【請求項26】
前記第1の光硬化工程及び前記第2の光硬化工程において、約400nm〜約500nmの範囲の波長を有する青色可視光を前記歯科用ガードに照射する、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
歯科用ガードを作製するためのキットであって、
対向する上側及び下側の平坦な面、内側面並びに外側面を有するU字形のベースを有する歯科用ガードであって、前記ベースは、患者の歯列弓の形状に合うように成形することができると共に成形された形状を保つように光照射によって硬化される材料から成り、前記ベースの材料は、少なくとも重合性アクリル酸化合物及び光によって活性化する重合系を含む、歯科用ガード、及び
上側及び下側の平坦な面を有し、且つ前記U字形の歯科用ガードを保持する前記上側の面に凹んだU字形の部分を有する、可撓性トレイ、
から成るキット。
【請求項28】
前記可撓性トレイは、シリコーン、ゴム及びエラストマー材料から成る群から選択される材料から成る、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記U字形の歯科用ガードに重なるU字形のバッキングフィルムをさらに有する、請求項27に記載のキット。
【請求項30】
前記U字形の歯科用ガード及び前記バッキングフィルムに被さる剥離ライナをさらに有する、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記U字形の歯科用ガード、前記可撓性トレイ、前記U字形のバッキングフィルム及び前記剥離ライナを有し、光保護パッケージ内で真空シールされた、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記U字形のバッキングフィルムは炭化水素ワックスフィルムである、請求項29に記載のキット。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2011−502731(P2011−502731A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534965(P2010−534965)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/012971
【国際公開番号】WO2009/067236
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(590004464)デンツプライ インターナショナル インコーポレーテッド (85)
【Fターム(参考)】