説明

可撓性を有する絶縁線を製造する方法

【課題】絶縁線(100)を製造する方法(200)を提供すること。
【解決手段】一実施形態において、単なる例として、方法(200)は、第1のスラリーの層を導電線(320)の上に塗布するために第1のパッド(304、306、308)を通して導電線(320)を引き抜くステップ(204)であって、第1のパッド(304、306、308)がシャモア革材料(322)を含み、シャモア革材料(322)の上に置かれた第1のスラリーを含み、第1のスラリーが、第1の誘電性前駆体材料と、有機成分を有する第1の結合体とを含む、ステップと、絶縁線(100)を形成するために導電線(320)を熱処理するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、一般に、絶縁線に関し、より詳細には、可撓性を有する絶縁線を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁線は、無数の用途において使用される。例えば、絶縁線は、電動機など、電磁気的装置を作成するために使用されうる。特に、線は、磁気コアの周りに巻かれるコイルを形成することができる。電流が線を通して流れるときに、コアを動かし、力を発生させることができる磁界が生成される。他の場合には、絶縁線は、往復形可変差動変圧器など、センサの一部として使用されうる。ここに、線は、ボアを確定する一次巻線および二次巻線を構成することができ、また磁気コアは、ボアの中に配置されうる。磁気コアは、ボア内で巻線に対して軸方向に動き、巻線を通る差動電流の流れを発生させるように構成されうる。
【0003】
一般に、絶縁線は、絶縁材料の被覆を含む導電性材料から作製される。ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化ビニル(PVC)、誘電材料、または絶縁特性を有する他の適当な材料であってよい絶縁材料は、一般に、噴霧により導電性材料に塗布される。例えば、自動噴霧システムが、導電性材料の上に絶縁材料を噴霧することができる。噴霧は、十分な結果を生み出すが、自動噴霧システムは、潜在的に詰まる可能性があり、そのことが、システムの休止時間を増加させ、生産性を低下させる可能性がある。さらに、噴霧は、正確な被覆厚さを有する絶縁線を生産するのには有用ではない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、線が比較的高温の環境(例えば、約240℃超)の中で使用可能であり、絶縁材で被覆された後の任意の時点で所望の形状に曲げられうる、絶縁線を形成する改良された方法を有することが望ましい。さらに、改良された方法が、比較的安価であり、実施が簡単であることが望ましい。さらに、本発明の主題の他の望ましい特徴および特性は、添付の図面および本発明の主題のこの背景と併せて取り上げられる、以下の詳細な本発明の主題に関する説明、および添付の特許請求の範囲から、明らかと成るであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
絶縁線を製造する方法が提供される。
一実施形態において、単なる例として、一方法は、第1のスラリーの層を導電線の上に塗布するために第1のパッドを通して導電線を引き抜くステップであって、第1のパッドがシャモア革材料を含み、シャモア革材料の上に置かれた第1のスラリーを含み、第1のスラリーが第1の誘電性前駆体材料と、有機成分を有する第1の結合体とを含む、ステップと、絶縁線を形成するために導電線を熱処理するステップとを含む。
【0006】
他の一実施形態において、単なる例として、一方法は、第1のスラリーの層を導電線の上に塗布するために第1のパッドを通して導電線を引き抜くステップであって、第1のパッドがシャモア革材料を含み、シャモア革材料の上に置かれた第1のスラリーを含み、第1のスラリーが第1の誘電性前駆体材料と、有機成分を含む第1の結合体とを含む、ステップと、引き抜くステップの後で導電線を乾燥させるステップと、導電線の上に第1のスラリーの複数の層を生成するために引き抜くステップと乾燥させるステップを繰り返すステップと、熱処理するステップの前に第1のスラリーの複数の層の上に第2のスラリーを塗布するステップであって、第2のスラリーが誘電性前駆体材料と、第2の結合体と、窒化ほう素とを含む、ステップと、塗布するステップの後で第2のスラリーを乾燥させるステップと、絶縁線を形成するために導電線を熱処理するステップとを含む。
【0007】
これ以降、本発明の主題が以下の図面と共に説明され、同じ数字は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態による絶縁線の断面図である。
【図2】一実施形態による絶縁線の製造方法を示す流れ図である。
【図3】一実施形態による絶縁線の製造に使用されうる構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例であり、本発明の主題または用途、ならびに本発明の主題の利用を限定する意図はない。さらに、前出の背景または以下の詳細な説明の中で提示されるいかなる理論によっても拘束される意図はない。
【0010】
図1は、一実施形態による絶縁線100の断面図である。線100は、比較的柔軟であるように構成され、この関連で、シャモア革材料を使用して、導電性材料の上に被覆材料を塗布することにより製造される。一実施形態において、線100は、被覆の欠損を示すことなく3.175mm(1/8”)のマンドレル周りに曲げられる能力を有する。この関連で、線100は、導体102および被覆104を含む。一実施形態によれば、導体102は、第1の導電性材料で作製される主本体106を含むことができる。第1の導電性材料は、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、および/またはそれらの合金を含む金属などであるがそれらに限定されない、多くの導電性材料のうちの任意の1つを含むことができる。他の一実施形態において、導体102は、主本体106の上に配置された外部本体108(破線で示す)を、さらに含むことができる。そのような一実施形態において、外部本体108は、上述の導電性材料のうちの1つなど、第2の導電性材料を含むことができる。一実施形態において、第2の導電性材料は、第1の導電性材料とは異なり、例えば、第1の導電性材料よりも電導度が高くてよくまたは低くてよい。他の一実施形態によれば、第2の導電性材料は、第1の導電性材料より高いかまたは低い融点を有することができる。一例において、第1の導電性材料は銅を含んでよく、一方、第2の導電性材料はニッケルを含んでよい。いずれの場合においても、導体102は、一実施形態において、約0.05ミリメートル(mm)から約6.5mmまでの範囲内の平均直径を有することができる。他の一実施形態において、導体102は、前述の範囲より大きいかまたは小さい平均直径を有することができる。
【0011】
被覆104は、導体102の少なくとも一部分の上に配置される。一実施形態によれば、被覆104は、誘電性前駆体材料(本明細書において「誘電性前駆体」とも呼ばれる)、および、製造中に実質的に分解するように配合される有機成分を有する結合体から配合されうる。誘電性前駆体材料は、処理された後に、導体102の絶縁に適する比較的低い比誘電率を持つ材料を含むことができる。例えば、誘電性前駆体材料は、10未満の比誘電率(κ)を有することができる。他の一実施形態において、比誘電率は、約1と約10の間の範囲の値を取りうる。絶縁線100が交流用途において使用される実施形態において、材料の比誘電率は1に近づく傾向がある。他の一実施形態において、誘電性前駆体材料は、240℃を超える温度に曝されるときに、導体102を絶縁することができる可能性がある。一実施形態によれば、誘電性前駆体材料は、分子ふるい材料を含むことができる。本明細書で使われるように、用語「分子ふるい材料」は、約10オングストローム未満の最大直径を有する実質的に均一な大きさの開口(例えば、約±0.5ミクロンの範囲内)を含む多孔質材料であると定義されうる。適切な分子ふるい材料は、アルミナ、シリカ、シリカアルミネート、およびゼオライト(3A、4A、5A、13xなど)、および他の材料を含むがこれらに限らない成分から成る。他の一実施形態において、誘電性前駆体材料は、窒化ほう素など、他の無機酸化物を含むことができる。結合体は、熱処理を受けると実質的に完全に分解されうる有機成分を含むことができる。一実施形態において、有機成分は、少なくとも1つの、酸素原子を有する高分子成分を含むことができる。そのような有機成分は、他の種類の有機成分に比べて、熱処理に曝されると、より容易に分解することができる。適切な有機成分は、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酸化エチレン、またはそれぞれの組合せを含むが、それらに限らない。他の実施形態において、異なる誘電材料および/または結合体が、代替として利用されうる。
【0012】
いずれの場合においても、被覆104は、一実施形態において、単一の材料を含むことができる。他の一実施形態において、被覆104は、2つ以上の材料を含み、2つ以上の部分で構成されうる。例えば、被覆104は、導体102の上に配置される第1の部分112と、第1の部分112の上に配置される第2の部分114(破線で示す)とを含むことができる。一実施形態によれば、第1の部分112および第2の部分114は、異なる被覆材料組成を含むことができる。例えば、第1の部分112は、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを、第1の比において含む第1の被覆材料構成を有することができ、第2の部分114は、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを、第2の比において含む第2の被覆構成を有することができる。他の一実施形態において、第1の部分112は、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを含む第1の被覆材料構成を有することができ、第2の部分114は、第2の誘電性前駆体材料と第2の結合体とを含む第2の被覆材料構成を有することができる。他の一実施形態において、第1の部分112は、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを含む第1の被覆材料構成を有することができ、第2の部分114は、第1の誘電性前駆体材料と、第2の誘電性前駆体材料と、第1の結合体とを含む第2の被覆構成を有することができる。例えば、第1の誘電材料がゼオライトを含むことができ、第2の誘電性前駆体材料がゼオライトおよび窒化ほう素を含むことができ、第1の結合体がポリビニルアルコールおよびポリ酸化エチレンを含むことができる。他の一実施形態において、第1の部分112が、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを含む第1の被覆材料構成を有することができ、第2の部分114が、第2の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを含む第2の被覆構成を有することができる。他の一実施形態において、第1の部分112が、第1の誘電性前駆体材料と第1の結合体とを含む第1の被覆材料構成を有することができ、第2の部分114が、第2の誘電性前駆体材料と第2の結合体とを含む第2の被覆構成を有することができる。いずれの場合においても、被覆104の全体の厚さ(導体102の外部表面から被覆104の外部表面まで測定される)は、約0.0381ミリメートル(mm)(1.5ミル)から約0.0762mm(3ミル)までの範囲内にありうる。一実施形態において、厚さは、前述の範囲より厚くてよくまたは薄くてよい。被覆104が2つの部分(例えば、第1の部分112および第2の部分114)を含む実施形態において、第1の部分112が、約0.0191mmから約0.0381mmまでの範囲内の厚さを有することができ、一実施形態において、第2の部分114が、約0.0191mmから約0.0381mmまでの範囲内の厚さを有することができる。他の実施形態において、各部分の厚さは、前述の範囲より厚くてよくまたは薄くてよい。
【0013】
導体102の上に被覆104を形成するために、一実施形態において、図2に示す可撓性を有する絶縁線を製造する方法200が利用されうる。方法200は、被覆工程のために第1のスラリーおよび導電線を準備するステップ、ステップ202を含む。一実施形態において、第1のスラリーは、誘電性前駆体材料と結合体とを含む混合物を含む。一実施形態によれば、誘電性前駆体材料は、上述の被覆104に使用される多くの絶縁材料のうちの任意の1つから選択可能であり、例えば、分子ふるい材料でありうる。結合体は、上述の被覆104に使用される材料を含むことができる。
【0014】
第1のスラリーは、一実施形態において、市販の成分から得られうる。しかし、特定の粒子サイズが望まれうる実施形態において、第1のスラリーは、調製されうる。そのような場合には、誘電性前駆体材料および結合体材料は、別々に調製されうる。一実施形態において、分子ふるい材料を含むことができる誘電性前駆体材料は、前処理およびミリングを経ることができる。一実施形態において、分子ふるい材料は、分子ふるい粉末として得ることができ、前処理は、分子ふるい粉末を空気中で熱処理するステップを含むことができる。一実施形態によれば、分子ふるい粉末を熱処理するステップは、粉末を、真空環境に、約425℃から約475℃までの範囲内の温度で約5時間から約7時間の間、曝すステップを含むことができる。他の一実施形態において、分子ふるい粉末を熱処理するステップは、粉末を、真空環境で約450℃の範囲の温度に約6時間、曝すステップを含むことができる。他の一実施形態において、分子ふるい粉末を熱処理するステップは、粉末を窒素ガスに曝すステップと、粉末を425℃から約475℃の温度に曝すステップとをさらに含むことができる。
【0015】
分子ふるい粉末が温度処理工程を経た後、粉末は、粉砕された誘電性前駆体材料を形成するために粉砕されうる。一実施形態によれば、ボールミルなどの装置を使用するミリングが、均一な粒子サイズを得るために使用されうる。一実施形態において、粉末は、脱イオン水およびミリングビーズと共にボールミルジャーの中に置かれる。一例において、ボールミルジャーは、1リットル(L)のジャーであってよいが、他の実施形態において、ジャーは、より大きくてもより小さくてもよい。他の一例によれば、約250ミリリットル(mL)の分子ふるい粉末が、約32グラム(g)の脱イオン水および500mLのミリングビーズと共にジャーの中に置かれる。他の実施形態において、より多いかまたはより少ない、粉末および/または水および/またはミリングビーズが、ジャーの中に置かれてよい。ミリングビーズは、ジルコニアまたは他の一般的に使用されるミリングビーズ材料を含むことができる。ミルジャーは、ミルの上に置かれて回転させられうる。一実施形態において、ミルは、少なくとも24時間、30回転/分(rpm)で回転させられうる。他の実施形態において、ミルは、より長いかまたはより短い間、より速いかまたはより遅い速度で回転させられうる。
【0016】
結合体材料は、誘電性前駆体材料の調製と同時に、あるいは誘電性前駆体材料が調製される前または後に調製されうる。一実施形態において、ある量の脱イオン水が反応釜の中に置かれ、結合体材料が脱イオン水に加えられる。一実施形態によれば、反応釜は1Lの釜を含むことができ、脱イオン水の量は約300mLから約900mLまでの範囲内にあることができ、脱イオン水に加えられた結合体材料の量は約5gから約50gまでの範囲内にあることができる。他の一実施形態において、500mLの脱イオン水および28gの結合体材料が使用されうる。他の一実施形態において、結合体材料がポリビニルアルコールおよびポリ酸化エチレンを含むことができ、結合体材料が約20gのポリビニルアルコールおよび8グラムのポリ酸化エチレンを含むことができる。他の実施形態において、より大きな反応釜、または、より多いかまたはより少ない脱イオン水および結合体材料が使用されうる。他の実施形態において、より多いかまたはより少ないポリビニルアルコールおよび/またはポリ酸化エチレンが、結合体材料の中に含まれうる。他の一実施形態において、0.1%から1%のメチルセルロースの追加が、結合体材料に加えられうる。
【0017】
結合体材料および脱イオン水が反応釜の中に置かれた後、反応釜が封止され、反応釜の内容物が攪拌され、約2時間から約12時間までの範囲の間、約60℃から約90℃までの範囲内の温度で加熱されることができる。他の一実施形態において、内容物は、約3時間の間、約85℃で加熱されうる。次いで、内容物は、室温まで冷却され、冷却中に攪拌される。
【0018】
粉砕された誘電性前駆体材料および結合体材料は、次いで、好ましくはジャーミルを使用して、共に組み合わされ、混合される。一実施形態によれば、粉砕された誘電性前駆体材料および結合体材料は、ミリングビーズを含むミルジャーの中に置かれ、粉砕される。一実施形態において、ミルジャーは、約50mLのミリングビーズと、約10gから約15gの範囲の量の粉砕された誘電性前駆体材料と、約80gから約90gの範囲の量の結合体材料とを含むことができる。他の一実施形態において、約12gの粉砕された誘電性前駆体材料および約88gの結合体材料が、ミルジャーの中に置かれうる。他の実施形態において、より多いまたはより少ない材料がミルジャーの中に置かれることができ、それぞれの特定の量は、使用される第1のスラリーの特定の構成に依存する。ミルジャーは、次いで、ミルの上に置かれて回転させられる。一実施形態において、ミルは、粉砕された第1のスラリーを形成するために、少なくとも12時間の間、30回転/分(rpm)で回転させられうる。他の実施形態において、ミルは、より速いかまたはより遅い速度で、より長いかまたはより短い間、回転させられうる。粉砕された第1のスラリーは、次いで、ミリングビーズから分離され、容器の中に置かれ、少なくとも4時間の間、磁気攪拌プレートの上に置かれる。他の一実施形態において、粉砕された第1のスラリーは、より長いかまたはより短い時間の間、磁気攪拌プレートの上に置かれうる。
【0019】
他の一実施形態によれば、方法200はまた、第2のスラリーを調製するステップを含むことができる。一実施形態において、誘電性前駆体材料および結合体は、1つまたは複数の異なる材料が、誘電性前駆体材料および/または結合体のために使用されうること以外は、第1のスラリーのために上で述べたとおり調製されうる。他の一実施形態において、誘電性前駆体材料および結合体は、粉砕された誘電性前駆体材料および結合体材料が粉砕されるステップにおいて、ある量の窒化ほう素がミルジャーの中に加えられうること以外は、上で述べたとおりに調製されうる。例えば、約0.010gと約0.100gの間の範囲内の量の窒化ほう素が、ミルジャーに加えられうる。他の一実施形態において、約0.012gの窒化ほう素が、ミルジャーに加えられうる。
【0020】
上で簡単に述べたとおり、導電線はまた、前処理を受けることができる。一実施形態において、導電線は、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、およびそれらの合金など、多くの一般に使用される導電性材料のうちの任意の1つを含むことができる。一実施形態において、導電線は、単一の導体または複数の導体の束でありうる。他の一実施形態において、導体は、その上に層を含む主本体で構成されうる。そのような場合には、主本体は、ニッケル、銅、アルミニウム、銀、またはそれらの合金など、第1の導電性材料であることができ、また、層を形成するために第2の導電性材料で被覆されうる。第2の導電性材料は、第1の導電性材料よりも高い融点を有する導電性材料でありうる。いずれの場合にも、各導電性材料の選択は、絶縁線100(図1)が、製造工程の間または後のいずれかに受ける可能性のある特定の温度環境に依存する。導体は、商業的に得ることができるか、あるいは方法200の一部のように形成されうる。
【0021】
一実施形態によれば、前処理のステップは、油および/または油脂を除去するために導電線を洗浄するステップを含むことができる。導電線を洗浄するステップはまた、被覆材料の導電線への粘着性を改良するために有用でありうる。いくつかの場合において、洗浄ステップは、被覆材料が点状に剥離することを減少させうる。一実施形態において、水溶性の洗浄液が使用されうる。例えば、水溶性の洗浄液は、水溶性のアルカリ性洗浄剤を含むことができる。一実施形態によれば、導電線は、水溶性の洗浄液の中に浸漬され、脱イオン水ですすぎ洗いされうる。そのような場合には、水溶性洗浄液は、一実施形態において、12%の水溶性アルカリ性洗浄剤を含むことができる。他の一実施形態において、水溶性洗浄液は、約80℃まで加熱されることができ、導電線は、約1分から約240分までの範囲の間、水溶性洗浄液の中に配置されうる。他の一実施形態において、導電線は、約0.5時間の間、水溶性洗浄液の中に配置されうる。他の実施形態において、水溶性洗浄液は、より高いかまたはより低い温度まで加熱されることができ、導電線は、洗浄剤の中に、より長いかまたはより短い時間の間、配置されうる。導電線は、1回すすぎ洗いされうるか、または2回以上すすぎ洗いされうる。他の一実施形態において、導電線は、加熱された水溶性洗浄液の容器を通して引っ張られうる。そのような場合には、水溶性洗浄液は、一実施形態において、約60℃まで加熱されうる、40%の水溶性アルカリ性洗浄剤を含むことができる。他の一実施形態において、導電線は、約1.5分から約30分までの範囲の間、水溶性洗浄液の中に沈められうる。他の一実施形態において、導電線は、約4分の間、水溶性洗浄液の中に沈められうる。導電線が水溶性洗浄液の容器を通して引っ張られた後、導電線は、室温(例えば、19℃から25℃)において脱イオン水を含む水浴を通して引き抜かれうる。
【0022】
第1のスラリーの導電線への粘着性を改良するために、導電線は、温度処理を受けることができる。一実施形態によれば、導電線は、導電線の表面上に酸化被覆を形成するために、オーブンの中に置かれ、約400℃から約800℃までの範囲内の温度に曝されうる。他の実施形態において、温度処理は省略されうる。他の一実施形態において、導電線は、約5時間の間、約600℃で熱処理されうる。
【0023】
温度処理の後、導電線は冷却され、塗装装置の中に置かれうる。図3は、一実施形態によれば、塗装装置300の概略図である。塗装装置300は、一実施形態において、第1の巻枠302と、1つまたは複数の被覆パッド304、306、308と、1つまたは複数の空気乾燥機312、314、316と、第2の巻枠310とを含むことができる。巻枠302、310、被覆パッド304、306、308、および空気乾燥機312、314、316は、一般的な台により支持されうる。第1の巻枠302および第2の巻枠310は、導電線320が巻枠302、310の周りに巻かれうるように構成されうる。一実施形態において、巻枠302、310は、セラミック材料、木、金属、または他の材料を含むことができる。巻枠302、310の直径は、約2cmから約10cmまでの範囲の中にありうる。一実施形態において、巻枠302、310は、10cmより大きい直径を有する。他の実施形態において、巻枠302、310の直径は、前述の値より大きくてよくまたは小さくてよい。一実施形態によれば、巻枠302、310は、実質的に等しい直径を含むことができ、実質的に同じ速さで回転するように構成されうる。他の実施形態において、第1の巻枠302は、第2の巻枠310よりも直径が小さく、第1の巻枠302が第2の巻枠310より速く回転することができる。他の一実施形態において、第1の巻枠302は第2の巻枠310より直径が大きく、第1の巻枠302の回転が、第2の巻枠310の回転を補償するために可変であることができる。
【0024】
1つまたは複数の被覆パッド304、306、308は、2つの巻枠302、310の間に配置され、被覆材料を導電線320の上に塗布するように構成される。一実施形態において、被覆パッド304、306、308は、少なくとも1つのシャモア革材料322を含む。本明細書で使用されるように、用語「シャモア革材料」は、水に曝されると微孔性膜として作用し、アルカンまたはポリマーなど、炭化水素材料に曝されると耐水材料として作用する、合成のまたは天然の(動物などから)皮革材料として定義されうる。結果として、スラリーがシャモア革材料322の上に置かれる場合、スラリーがフェルト、織布、または発泡体に接触したときのように液体から粒子を分離するほどには、シャモア革材料322は十分に多孔質でないので、スラリーの粒子はスラリーの液体から分離されない。その代わりに、シャモア革材料322とスラリーの間、およびスラリーと導電線320の間の表面張力が、それにより、導電線320とシャモア革材料322の間にメニスカスを形成するように存在する。シャモア革材料322は、一実施形態において、約1.5875mmから約3.175mmまでの範囲内の厚さを有することができる。他の実施形態において、シャモア革材料322の厚さは、前述の範囲より厚くてよくまたは薄くてよい。
【0025】
シャモア革材料322は、導電線320が引き抜かれうるように、導電線320を取り囲む形状に構成されうる。この関連で、シャモア革材料322は、一実施形態において、チューブの中に折りたたまれうる。例えば、シャモア革材料322は、2層以上の材料で構成されうるように、1回または複数回以上、チューブを形成するために折りたたまれうる。一実施形態において、一層のシャモア革材料322が含まれうる。他の一実施形態において、シャモア革材料322は、被覆パッド304、306、308の合計厚さが約0.1mmから約1cmまでの範囲内にあるように、折りたたまれるかまたは構成されうる。他の実施形態において、合計の厚さは、前述の範囲より大きくてよくまたは小さくてよい。
【0026】
一実施形態において、チューブは、導電線320の直径より大きな内部表面直径を有し、それにより、導電線320が引き抜かれるときにシャモア革材料が導電線320に接触しないように、シャモア革材料322を収容する隙間を形成する。スラリーは、シャモア革材料322の表面と導電線320の外部表面の間の隙間に架橋することができるので、シャモア革材料322と、被覆パッド304、306、308を通して引き抜かれる導電線320の外部表面の間の距離は、導電線320に塗布されるスラリーの厚さを制御するように構成されうる。例えば、シャモア革材料322の表面と導電線320の外部表面の間の距離が短いほど、比較的薄い層の形成が可能であり、一方、シャモア革材料322の表面と導電線320の外部表面の間の距離が長いほど、より厚い層の形成が可能である。シャモア革材料322のチューブ形状を維持するために、摩擦チューブ、スプリングクリップ、クランプ、または他の種類の保持機器324が、シャモア革材料322の周りに配置されうる。一実施形態において、シャモア革材料322は、チューブ形の構造の内部表面に装着されうる。
【0027】
3つの被覆パッド304、306、308を図3に示すが、他の実施形態において、より少ないかまたはより多いパッドが含まれてよい。より少ないパッドが含まれる一実施形態において、導電線320に複数の層を塗布し、それにより所望の合計被覆厚さを有する被覆を作成するために、パッドは2回以上使用されうる。他の一実施形態において、塗装装置300の中に含まれる被覆パッドの総数は、導電線320に塗布されうる層の所望の総数に依存する。例えば、第1および/または第2のスラリー材料の18の層が所望されうる一実施形態においては、したがって、合計18の被覆パッドが、塗装装置300の中に含まれうる。他の一実施形態において、複数の被覆パッドが塗装装置300と共に含まれうるが、各被覆パッドは、導電線320に塗布されうる層の所望の総数にしたがって、1回の塗布工程の間に2回以上使用されうる。
【0028】
一実施形態において、被覆パッド304、306、308のすべては、第1のスラリーを含むことができる。他の一実施形態において、いくつかの被覆パッド(例えば、被覆パッド304および306)が第1のスラリーを含み、いくつかの被覆パッド(例えば、被覆パッド308)が第2のスラリーを含む。一実施形態によれば、被覆パッドの多数(例えば、被覆パッド304および306)が第1のスラリーを含み、残りの被覆パッド(例えば、被覆パッド308)が第2のスラリーを含むことができる。いずれの場合にも、第1および/または第2のスラリー材料は、少なくとも被覆パッド304、306、308のシャモア革材料の上に置かれうる。一実施形態によれば、シャモア革材料は、注入、浸漬、またはシャモア革材料をスラリー材料に曝すことにより、第1および/または第2のスラリー材料に湿らされうるかまたは浸漬されうる。
【0029】
1つまたは複数の乾燥機312、314、316は、各被覆パッド304、306、308の後ろに配置されうる。このようにして、導電線320は、第1または第2のスラリーで被覆された後、乾燥されうる。一実施形態によれば、各乾燥機は、熱い空気、例えば、約100℃を超える温度を有する空気を供給するように構成される。一実施形態によれば、乾燥機312、314、316のそれぞれは、単一の空気源と流体的に接続されるノズルおよび/または配管を含むことができる。他の実施形態において、乾燥機312、314、316はそれぞれ、1つの空気源を有することができる。一実施形態において、乾燥機312、314、316の総数は、被覆パッド304、306、308の総数に対応する。したがって、18の被覆パッドが含まれる一実施形態において、18の乾燥機が、同様に含まれうる。
【0030】
1つまたは複数のローラ326、328、330、332が、塗布工程中に、導電線320を塗布装置300を通して誘導するために使用されうる。一実施形態において、ローラ326、328、330、332はそれぞれ、ローラ組立体(例えば、2つのローラ)を含むことができ、導電線320がローラの間に供給されうる。他の一実施形態において、ローラ326、328、330、332はそれぞれ、単一のローラを含むことができ、導電線320がローラの凹部を通して誘導されうる。他の実施形態において、ローラ326、328、330、332は、異なる構成を有することができる。
【0031】
さらに図2を参照すると、前処理の後、ステップ204において、導電線は、第1のパッドを通して引き抜かれ、第1のスラリーの第1の層が、線上に塗布される。例えば、導電線320の一端が、巻枠302、310、被覆パッド304、306、308、およびローラ326、328、330、332を通して供給され、導電線320の一端が第2の巻枠310に装着されうる。一実施形態によれば、第1および/または第2の巻枠302、310の一方または両方が、回転を始めることができる。一実施形態において、第2の巻枠310の回転が、塗布装置300を通して導電線320に引っ張りを生じることができる。導電線320は、第1のスラリーの第1の層が導電線320に塗布されるように、塗布装置300の第1のパッド304を通して引き抜かれうる。一実施形態によれば、第1の層は、約0.001mmから約0.127mmまでの範囲内、より好ましくは0.01mmの厚さを有することができる。他の一実施形態において、第1の層の厚さは、前述の範囲より厚くてよくまた薄くてよい。
【0032】
一実施形態によれば、塗布に続いて、ステップ206において、第1のスラリーの層が、被覆された導体を形成するために乾燥される。例えば、第2の巻枠310の回転が、第1のパッド304を通して導電線320に引っ張りを生じさせることができ、第1の乾燥機312が、第1のスラリーの第1の層の上に熱い空気を当て、それによりスラリーを乾燥させることができる。スラリーの追加の層が、第1の層のいかなる部分も除去されることなく第1の層に塗布されうるように、第1のスラリーの第1の層が乾燥される。
【0033】
ステップ206の後、ステップ208において、引き抜きのステップ(例えば、ステップ204)および乾燥のステップ(例えば、ステップ206)は、線上に第1のスラリーの複数の層を生成するために繰り返されうる。追加の被覆パッド(例えば、パッド306および308)が含まれる一実施形態によれば、第2の巻枠310の回転が、第1の層の上に第2の層を形成するために第1のスラリーの追加の量を塗布するために、前に被覆された導電線320を第2のパッド306の中に引き込ませることができる。一実施形態によれば、第2の層は、0.001mmから約0.127mmまでの範囲内、より好ましくは0.01mmの厚さの増加を有することができる。他の一実施形態において、第2の層の厚さは、前述の範囲より厚くてよくまた薄くてよい。他の実施形態において、第2の層は、第1の層の厚さと実質的に等しい厚さを有してよい。他の実施形態において、第1および第2の層が等しい厚さを有さなくてよく、第1の層が第2の層より厚くてよく、かつ/または薄くてよい。塗布装置300の特定の構成に応じて、第2の層は、第1の乾燥機312を使用して乾燥されてよく、または2つ以上の乾燥機(例えば、乾燥機314および316)が含まれる一実施形態において、第2の層が第2の乾燥機314を使用して乾燥されてよい。
【0034】
ステップ208は、複数の層が所望の厚さを有する被覆を形成するまで、1回または複数回繰り返されてよい。例えば、ステップ208は、合計18から24までの第1のスラリーの層を形成するために、17から23の追加の回数繰り返されてよい。一実施形態によれば、第1のスラリーの複数の層の合計厚さは、約5mmから約15mmまでの範囲の中にあってよい。他の一実施形態において、第1のスラリーの複数の層の合計厚さは、約10mmであってよい。他の実施形態において、第1のスラリーの複数の層の合計厚さは、前述の範囲および/または値より厚くてよくまたは薄くてよい。
【0035】
上で簡単に述べたとおり、いくつかの実施形態において、ステップ210において、第2のスラリーが、第1のスラリーの上に塗布されてよく、第2のスラリーは、各塗布の後に乾燥されてよい。そのような場合は、第1のスラリーを含む被覆パッドの後ろに配置された1つまたは複数の被覆パッド(例えば、被覆パッド306および/または308など)が第2のスラリーを含んでよく、導電線320は、第2のスラリーを含む第2の被覆パッドを通して引き抜かれてよい。例えば、既に形成されている第1のスラリーの1層または複数層の上に第2のスラリーの1層または複数層を形成するために、第2の巻枠310の回転が、導電線320を、第2のスラリーを塗布するための被覆パッドの中に引き込ませることができる。他の一実施形態において、第2のスラリーが、第1のスラリーの1層または複数層の上に噴霧されてよい。例えば、第2のスラリーがエアブラシ噴霧器または他の種類の噴霧器の中に配置され、第1のスラリーの1層または複数層の上に塗布されてよい。
【0036】
一実施形態によれば、第2のスラリーの各層は、約0.001mmから約0.127mmまでの範囲内、より好ましくは0.01mmの厚さを有することができる。他の一実施形態において、第2のスラリーの各層の厚さは、前述の範囲より厚くてよくまたは薄くてよい。一実施形態によれば、ステップ210は、ステップ206またはステップ208の後に実施されてよい。
【0037】
他の一実施形態によれば、ステップ212において、ステップ210が、複数の層が所望の厚さを有する被覆(例えば、第2の部分114)の一部を形成するまで、1回または複数回繰り返されてよい。一例において、ステップ210は、第2のスラリーの合計2層から12層を形成するために、1から11の追加の回数繰り返されてよい。一実施形態によれば、第2のスラリーの複数層の合計厚さは、約0.0191ミリメートル(mm)から約0.127mmまでの範囲の中にあってよい。他の一実施形態において、第2のスラリーの複数層の合計厚さは、約0.075mmであってよい。さらに他の実施形態において、第2のスラリーの複数層の合計厚さは、前述の範囲および/または値より厚くてよくまたは薄くてよい。他の実施形態において、第2のスラリーの1層または複数層の合計厚さは、第1のスラリーの1層または複数層の合計厚さと比べて、実質的に等しいか、より厚いか、またはより薄くてよい。第2のスラリーが塗布される特定の工程、例えば、塗布装置300の利用、または噴霧による工程に応じて、第2のスラリーの層が、乾燥機を使用して乾燥されてよい。例えば、一実施形態において、第1の乾燥機312が使用されてよい。追加の乾燥機(例えば、乾燥機314および316)が含まれる他の一実施形態において、第2のスラリーの層が、追加の乾燥機314を使用して乾燥されてよい。さらに、ステップの間のいずれの時点においても、第1および/または第2のスラリーの追加の量が、被覆パッドに加えられてよい。一例において、スラリーは被覆パッドにピペットで与えられるか、塗装されるか、または塗布されてよい。
【0038】
いずれの場合においても、一実施形態において、被覆(第1のスラリー(およびもし存在する場合は第2のスラリー)の層を含む)の所望の合計厚さは、約0.025mmから約0.127mm(0.001インチから約0.005インチ)までの間の範囲の中にあってよい。しかし、任意の厚さが使用可能であり、絶縁線100が使用される目的によって決まることが理解されよう。シャモア革材料を含む被覆パッドを使用することにより、第1および/または第2のスラリーの次の層が、第1および/または第2のスラリーの初めの乾燥された層(例えば、第1の層および/または他の実施形態における第2の層などの次に塗布され乾燥された層)の上に、初めの乾燥された層のかなりの部分を除去することなく、塗布されうる。特に、シャモア革材料の上に置かれた第1および/または第2のスラリーを含む粒子が溶液の中に留まるため、シャモア革材料は有用でありうる。したがって、乾燥された第1および/または第2のスラリーの層の上への第1および/または第2のスラリーの次の塗布は、湿ったままであり、乾燥された層に粘着する。
【0039】
次に、被覆された導体は、ステップ214において、絶縁線100を形成するために熱処理される。一実施形態において、被覆された導体は、ステップ208の後および/またはステップ210(含まれている場合)の後で、熱処理される。熱処理は、少なくとも1つの被覆された導体の外部表面上の有機成分を実質的にすべて分解するために、かつ/またはか焼を生じさせるために、所定の温度において所定の期間、行われてよい。一実施形態において、熱処理は、約300℃と約1000℃の間の範囲内で約2時間と約10時間の間の期間、行われてよい。一実施形態において、熱処理は、真空環境の中で行われてよい。他の一実施形態において、熱処理は、空気または酸素を含む環境の中で行われてよい。他の一実施形態において、熱処理は、窒素環境の中で行われてよい。いずれの場合においても、熱処理の後、結果として得られる被覆104は、絶縁線100が曲げられるときに熱処理された誘電性前駆体材料の中に微小割れが形成するために、裂けることなく曲げられうる可能性がある誘電性前駆体材料である。その結果、絶縁線100は、所望の形状に曲げることが可能であり、たわみ線が有用でありうる種々の用途において使用されうる。
【0040】
以下の例は、本発明の主題のより完全な理解をもたらすために提示される。例として説明された、具体的な技術、条件、材料、および報告されたデータは、例であり、本発明の主題の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0041】
2つの方法が評価されており、第1の60.96m(200フィート)のサンプルが、噴霧塗装方法を使用して準備され、複数の第2の60.96m(200フィート)のサンプルが、上述の引き抜き塗装方法の一実施形態を使用して準備された。両方法に対して、2つのスラリーが形成された。両スラリーに対して、0.5nmの平均細孔寸法を有する5A ゼオライト A(本明細書において「UOP 5A」と呼ばれる)を含む活性化された分子ふるい粉末の誘電性前駆体材料が、UOP 5A上の残留有機材料を除去するために、450℃で6時間の間、か焼により前処理された。250ミリリットル(mL)のUOP 5A粉末が、32グラム(g)の脱イオン水と共に1Lのボールミルジャーの中に置かれ、500mLのジルコニアミリングビーズが、ミルジャーに加えられた。ミルジャーは、ミルの上に置かれ、調製されたUOP 5A材料を得るために、30rpmで24時間を超えて回転させられた。次に、結合体材料が、500mLの脱イオン水を加熱された1Lの反応釜に加え、20gのポリビニルアルコールと8gのポリ酸化エチレンを脱イオン水に加えることにより、調製された。反応釜は封止され、釜の中の内容物は、調製された結合体材料を得るために、攪拌され、85℃で3時間の間加熱された。攪拌は、調製された結合体材料が冷却されるまで継続され、調製された結合体材料は保存容器まで運ばれた。
【0042】
代替の第1のスラリーがまた、UOP 5Aを使用して形成されたが、結合体材料への添加物としてメチルセルロースが使用された。この構成において、UOP 5Aが、上述のとおりに前処理された。次に、結合体材料が、上述のとおりに前処理され、1%までのメチルセルロース(0.28g)が調製された結合体材料を形成するために、加えられた。
【0043】
誘電性前駆体材料および結合体が調製された後、50のジルコニアミリングビーズと、12gの調製されたUOP 5A材料と、88gの調製された結合体材料とがボールミルジャーに加えられた。ミルジャーは、ミルの上に置かれ、30rpmで12時間を超えて回転させられた。ミリングビーズは、次いで、ミルジャーから取り除かれ、ミルジャーは、第1のスラリーを形成するために、磁気攪拌プレートの上に4時間超、置かれた。
【0044】
第2のスラリーが、50のジルコニアミリングビーズと、12gの調製されたUOP 5A材料と、88gの調製された結合体材料と、0.012gの窒化ほう素とをボールミルジャーに加えることにより、形成された。ミルジャーは、ミルの上に置かれ、30rpmで12時間を超えて回転させられた。ミリングビーズは、次いで、ミルジャーから取り除かれ、ミルジャーは、磁気攪拌プレートの上に4時間超、置かれた。
【0045】
第1のサンプルを準備するために、スラリーが、次いで、線の上に噴霧された。特に、約30mLの第1のスラリーが、エアブラシ噴霧器のジャーに加えられた。60.96m(200フィート)のニッケル線の最初の3.048m(10フィート)の長さが、約10mmの直径が得られるまで、エアブラシで噴霧された。エアブラシは、線から101.6mm(4インチ)以内で、複数回、通過した。次に、エアブラシ噴霧器は、60.96m(200フィート)のニッケル線の第2の3.048m(10フィート)の長さを噴霧し、第2の3.048m(10フィート)の長さの最初の304.8mm(12インチ)が、最初の3.048m(10フィート)の長さと重なりあった。約10mmの直径が得られるまで、エアブラシで噴霧が実施された。60.96m(200フィート)のニッケル線の全体が被覆されるまで、残された3.048m(10フィート)の長さのそれぞれに対して、その工程が繰り返された。60.96m(200フィート)のニッケル線の1つの3.048m(10フィート)の長さが、エアブラシ噴霧器を使用して、第2のスラリーで噴霧された。被覆された線(「線A」で識別される)は、次いで、か焼のために、800℃で約5時間の間、熱処理に曝された。
【0046】
第2のサンプルを準備するために、スラリーがまた、3本の60.96m(200フィート)のニッケル線の上への引き抜き塗装工程の中で使用された。各線は、第1の巻枠の上に巻き付けられ、シャモア革材料を含む2つから6つの被覆パッド中を通された。2本の線(線BおよびCで識別)に対して、第1のスラリーが、ドロッパを介して各被覆パッドに加えられ、シャモア革材料は、引き抜き塗装工程の間、濡れを保った。線は、被覆パッドを通して引き抜かれ、第1のスラリーの層が線の上に形成された。ヒートガンが、塗布後の各層を乾燥するために使用された。その工程は、第1の被覆の所望の厚さが得られるまで、繰り返された。第2のスラリーが、第1のスラリーの上に塗布され、全体の被覆の所望の厚さが得られるまで、繰り返された。被覆された線のそれぞれが、次いで、か焼のために、800℃で約5時間の間、熱処理に曝された。別の1本の線(線Dで識別)に対して、代替の第1のスラリーが、ドロッパを介して各被覆パッドに加えられ、シャモア革材料は、引き抜き塗装工程の間、濡れを保った。線は、被覆パッドを通して引き抜かれ、第1のスラリーの層が、線の上に形成された。ヒートガンが、塗布後の各層を乾燥させるために使用された。第2のスラリーが、形成された第1のスラリーの所望の数の層の上に塗布された。被覆された線は、次いで、か焼のために、800℃で約5時間の間、熱処理に曝された。線Bに対して、第1のスラリーの13の層が塗布され、第2のスラリーの12の層が塗布された。線Bは、2回の熱処理に曝され、各回毎に、か焼が行われた。線Cに対して、第1のスラリーの11の層が塗布され、第2のスラリーの8層が塗布された。線Dに対して、代替の第1のスラリーの14の層が塗布され、第2のスラリーの16の層が塗布された。
【0047】
上の方法で製造された線は、比較的高温の環境(例えば、約240℃超)の中で有用であることが見出され、また、従来どおりに形成された絶縁線の上への塗装の粘着性が改良されて、3.19mm(1/8”)の曲げ半径まで曲げることが可能であった。改良された粘着性は、被覆の塗布に対するシャモア革材料の使用に帰することができる。特に、シャモア革材料は、スラリーの水溶性材料からスラリーの粒子を分離しないので、スラリーは、既に置かれたスラリーの層を摩耗(したがって、除去)することなく、塗布されうる。さらに、シャモア革材料の使用が、導電線の上に置かれる各層の量および/または厚さの制御を改良することができる。さらに、改良された方法は、比較的安価であり、実施が簡単でありうる。
【0048】
少なくとも1つの例示的実施形態が本発明の主題に対する上記の詳細な説明の中で提示されてきたが、非常に多くの変形が存在することが理解されるべきである。また、1つまたは複数の例示的実施形態は単なる例であり、決して、本発明の主題の範囲、適用性、または構成を限定することを意図されていないことも理解されるべきである。むしろ、上記の詳細な説明は、本発明の主題の例示的実施形態を実施するための便利な手引きを、当業者に提供するであろう。添付の特許請求の範囲の中で説明される本発明の主題の範囲から逸脱することなく、種々の変化が、例示的実施形態の中で説明された要素の機能および配置において実施されうることを理解されたい。
【符号の説明】
【0049】
100 絶縁線
102 導体
104 被覆
106 主本体
108 外部本体
112 第1の部分
114 第2の部分
200 方法
202、204、206、208、210、212、214 ステップ
300 塗装装置
302 第1の巻枠
304、306、308 被覆パッド
310 第2の巻枠
312、314、316 空気乾燥機
320 導電線
322 シャモア革材料
324 保持機器
326、328、330、332 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスラリーの層を導電線(320)の上に塗布するために第1のパッド(304、306、308)を通して前記導電線(320)を引き抜くステップ(204)であって、前記第1のパッド(304、306、308)がシャモア革材料(322)を含み、前記シャモア革材料(322)の上に置かれた前記第1のスラリーを含み、前記第1のスラリーが第1の誘電性前駆体材料と、有機成分を有する第1の結合体とを含む、ステップと、
絶縁線(100)を形成するために前記導電線(320)を熱処理するステップ(214)とを含む、前記絶縁線(100)を製造する方法(200)。
【請求項2】
前記引き抜くステップの後で前記第1のスラリーの前記層を乾燥させるステップ(206)と、
前記導電線(320)の上に前記第1のスラリーの複数の層を生成するために前記引き抜くステップおよび前記乾燥させるステップを繰り返すステップ(208)であって、前記複数の層が、所望の厚さを有する被覆を形成する、ステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
熱処理するステップの前に前記第1のスラリーの前記層の上に第2のスラリーを塗布するステップ(210)をさらに含む、請求項1に記載の方法(200)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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