説明

可撓性材料からなる可撓性プール

【課題】使用時における側壁部の剛性が十分であり、中に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては変形しないことは勿論、空気室内の空気の出し入れが簡単にかつ短時間内に行えるようにした可撓性プールを提供すること。
【解決手段】底板シート11の周縁に、可撓性材料によって空気室13を有したものとして構成される環状側壁部12を一体化した可撓性プール10において、環状側壁部12の内外両面を構成している可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部15にて溶着することにより、空気室13が1つの連続したものとなるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性材料からなるプールに関し、特に、空気室内に空気を入れて使用状態にする可撓性材料からなる可撓性プールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、可撓性材料からなる可撓性プールは、図6の(a)に示すように、庭先等で展開して、幼児を遊ばせるために使用するものであるが、この可撓性プールは、可撓性材料からなるシートを裁断及び溶着して、底板シートと、その周縁に立ち上がる側壁部とからなるように構成したものである。そして、この可撓性プールは、図6の(b)にも示すように、その側壁部を、互いに連続した複数の円筒状の空気袋を横方向に並べたような構成とするのが一般的である。
【0003】
側壁部を、図6の(b)に示すように、互いに連続した複数の円筒状の空気袋によって構成するのは、各空気袋を独立させて、一つの空気袋に穴が開いて空気が抜けたとしても、他の空気袋内の空気は抜けないようにするためであり、空気が抜けない空気袋の剛性によって当該プールのある程度の形状を維持するためである。勿論、当該プールは、互いに連続して空気が充填された複数の空気袋によって側壁部の剛性を高め、中に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては型崩れしないようにしてあるのである。
【0004】
しかしながら、各空気袋を互いに独立させるということは、各空気袋への空気の出し入れも、それぞれ個別に設けた空気栓によって行わなければならないことを意味する。そして、この可撓性プールにおいては、図6の(a)に示すような庭先等での展開時は勿論、当該プールを片付けるための縮小時においても、各空気栓からの空気の出し入れに相当時間が掛かることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−113406
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、上記のような可撓性材料からなる可撓性プールについて、側壁部への空気の出入を簡単に行え、しかも、使用時における側壁部の剛性も十分なものとするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0007】
すなわち、本発明の目的とするところは、使用時における側壁部の剛性が十分であり、中に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては変形しないことは勿論、側壁部が1つの空気室のみを有して、この中の空気室内の空気の出し入れが簡単にかつ短時間内に行えるようにした可撓性プールを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他に目的とするところは、側壁部が破損しにくい可撓性プールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「可撓性材料によって形成した底板シート11の周縁に、可撓性材料によって空気室13を有したものとして構成される環状側壁部12を一体化して、空気室13内に空気を充填することにより、環状側壁部12を底板シート11から立ち上げて、内部に水収容部14を形成するようにした可撓性プール10において、
環状側壁部12の内外両面を構成している可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部15にて溶着することにより、空気室13が環状側壁部12内にて1つの連続したものとなるようにしたことを特徴とする可撓性プール10」
である。
【0010】
すなわち、この請求項1に係る可撓性プール10は、底板プール11から立ち上がって水収容部14を形成する環状側壁部12を、二枚の可撓性材料を使用するか、一枚の可撓性材料を折り曲げるか(後述する実施形態の場合)に関わらず、環状側壁部12の内外両面を構成している可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部15にて溶着、つまり部分的に連結することにより、図1及び図3に示すように、空気室13が環状側壁部12内にて1つの連続したものとなるようにしたものである。
【0011】
これら各溶着帯部15は、閉環状である必要があるが、その理由は、次の通りである。もし、これら各溶着帯部15が「点」であるとすると、空気室13内に入れた空気の圧力による応力が、この「点」に集中することになり、この集中応力によって、「点」にて表裏の可撓性材料を「溶着」して連結していた部分が強制的に引き剥がされるか、あるいはこの「点」の周囲にある可撓性材料が破られることになる。
【0012】
それでは、この「点」を大きくして「面」にすると、上記集中応力によって引き剥がされたり破れたりすることはなくなるが、今度は表裏の可撓性材料の「面」での溶着を行おうとすると、それだけの面を有する熱源や超音波発生源、つまり大きなエネルギー源が必要になってくる。一方で、周囲、つまり空気室13内の空気によって表裏の可撓性材料が引き剥がされないように連結するという点では、溶着部分の周囲だけで十分であり、溶着部分の中心部は、連結の点では殆ど意味をなさないものとなっている。
【0013】
以上の理由によって、コストや効率、さらには機能の面から、各溶着帯部15を閉環状のものとするのが最も好ましく、効果的なのである。
【0014】
各溶着帯部15は、特に図3の(a)にて示すように、環状側壁部12の表裏両面を構成している可撓性材料を連結した溶着部15部分を言うことになるが、この溶着部15部分が表面側に現れたものである。この溶着部15以外は、図3の(a)にて示すような「非溶着部分」となるのであるが、この「非溶着部分」は、溶着帯部15の外側にあれば空気室13となるのであり、溶着帯部15の内側にあれば、空気が入ることのない単なる可撓性材料の二重部分である。
【0015】
さて、空気室13が環状側壁部12内にて1つの連続したものであれば、この空気室13内への空気の出し入れを行うべき空気栓16は、図1にも示すように、環状側壁部12のどこか少なくとも一箇所に形成してあれば十分である。何故なら、この空気室13は、環状側壁部12内にて連続した1つのものなのであるから、一箇所の空気栓16から空気の出し入れを行えば、環状側壁部12内全体、つまり空気室13全体に対する空気の出し入れが完了するからである。
【0016】
換言すれば、この可撓性プール10は、空気室13内への空気の出し入れを一個の空気栓16によって行えるだけでなく、一個の空気栓16についてのみ行えば良いから短時間内で行えることにもなるのである。
【0017】
勿論、空気室13内に空気を充填すれば、図3にも示すように、環状側壁部12は、内部に水収容部14を形成する状態で底板シート11から立ち上がるとともに、内部の空気圧によって剛性が十分なものとなり、その結果、使用時の可撓性プール10は、水収容部14に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては変形しないものとなっているのである。
【0018】
なお、各溶着帯部15によって囲まれている部分の二枚の可撓性材料は、図3の(a)にも示すように、互いに溶着されておらず、しかも溶着帯部15によって空気室13から隔離された状態にあるから、一個の空気栓16からの空気の充填によっては、これら二枚の可撓性材料内に空気が入り込むことはない。換言すれば、各溶着帯部15によって囲まれている部分の二枚の可撓性材料は、当該可撓性プール10の展開時においても、折り畳み時においても、図3の(a)に示した状態のままにあり、形状的に変化することは殆どない。
【0019】
従って、この請求項1に係る可撓性プール10は、使用時における環状側壁部12の剛性が十分であり、水収容部14に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては変形しないことは勿論、環状側壁部12の展開及び収縮が1つの空気室13のみへの空気の出し入れによって簡単にかつ短時間内に行えるものとなっているのである。
【0020】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の可撓性プール10について、
「各溶着帯部15の、互いに対向する所定部分15aについて、当該溶着帯部15の中心部から外側に膨らむ円弧状にしたこと」
である。
【0021】
ここで、各溶着帯部15の、互いに対向する所定部分15aとは、もともと、溶着帯部15自体が「閉環状」のものであるため、互いに向き合っている二箇所の部分をこの溶着帯部15から必ず選択することができるが、この選択した部分をいう。例えば、溶着帯部15が図2に示すような略四角形状のものであれば、互いに対向する所定部分15aは、互いに対向し合っている2辺であり、溶着帯部15が図5に示すような円環状のものであれば、円の中心を挟んで向き合っている2つの円弧部分ということになる。
【0022】
また、「溶着帯部15の中心部から外側に膨らむ」とは、溶着帯部15自体が「閉環状」のものであるため、この「環」の外側に弓なりになる、ということを意味し、例えば、溶着帯部15が図2に示すような略四角形状のものであれば、この四角の外側に向けて膨らむことを意味する。
【0023】
さて、本発明に係る可撓性プール10にあっては、上述したように、各溶着帯部15によって囲まれている部分の二枚の可撓性材料は、当該可撓性プール10の展開時においても、折り畳み時においても、図3の(a)に示した状態のままにあり、形状的に変化することは殆どないのであるが、空気室13に空気が充填されたとき、つまり当該可撓性プール10が展開状態にあるときには、溶着帯部15に力が加わっている。
【0024】
空気室13に空気が充填されたときには、図3の(a)に示すように、各溶着帯部15の外側を構成している可撓性材料を介して当該溶着帯部15の周囲にこれを引き剥がそうとする力が加わる。この力の発生源は、空気室13内空気の圧力によるものであるが、空気室13が一個であるため、圧力自体は各溶着帯部15のどの部分にも均等に掛かる。しかしながら、この力、つまり溶着帯部15を構成している可撓性材料を引き剥がそうとする力の集中の仕方は、各溶着帯部15の形状に関係するのであり、もし、この溶着帯部15に三角形の頂点のような鋭角部分が存在すれば、この部分に当該力(応力)が集中し易くなる。力が集中する部分があれば、空気室13に必要以上の空気を注入したり、展開時の環状側壁部12に幼児が凭れ掛かったときに、溶着帯部15はその鋭角部分で破損し易くなる。
【0025】
その点、この請求項2に係る可撓性プール10は、各溶着帯部15の、互いに対向する所定部分15aについて、外側に膨らむ円弧状にしたことによって、上述した力が当該所定部分15aにて分散されることになり、応力集中がない可撓性プール10となるのである。
【0026】
従って、この請求項2に係る可撓性プール10は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、展開時の応力集中を回避できて、環状側壁部12が破損しにくい耐久性の高いものとなっているのである。
【発明の効果】
【0027】
以上の通り、本発明においては、
「可撓性材料によって形成した底板シート11の周縁に、可撓性材料によって空気室13を有したものとして構成される環状側壁部12を一体化して、前記空気室13内に空気を充填することにより、前記環状側壁部12を底板シート11から立ち上げて、内部に水収容部14を形成するようにした可撓性プール10において、
前記環状側壁部12の内外両面を構成している可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部15にて溶着することにより、前記空気室13が環状側壁部12内にて1つの連続したものとなるようにしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、使用時における環状側壁部12の剛性が十分であり、中に入れた水の水圧や幼児の水遊びによっては変形しないことは勿論、環状側壁部12が1つの空気室13のみを有して、この空気室13内の空気の出し入れが簡単にかつ短時間内に行えるようにした可撓性プール10を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る可撓性プール10の展開時における斜視図である。
【図2】同可撓性プール10の部分拡大正面図である。
【図3】同可撓性プール10を拡大して示すもので、(a)は図2中の1−1線に沿ってみた部分拡大断面図、(b)は図2中の2−2線に沿ってみた部分拡大断面図である。
【図4】同可撓性プール10における溶着帯部15の形状の例を示すもので、(a)は太鼓型の溶着帯部15を示す正面図、(b)は丸型の溶着帯部15を示す正面図である。
【図5】円形状の溶着帯部15を分散させた例を示す可撓性プール10の部分拡大正面図である。
【図6】従来の可撓性プール10を示すもので、(a)は展開時における斜視図、(b)は(a)中の3−3線に沿ってみた部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態である可撓性プール10について説明すると、図1には、本実施形態に係る可撓性プール10の展開時における斜視図が示してある。この可撓性プール10は、図1に示したように、底板シート11の周縁に、空気室13を有したものとして構成した環状側壁部12を一体化して、空気室13内に空気を充填することにより、環状側壁部12を底板シート11から立ち上げて、内部に水収容部14を形成するものである。
【0030】
底板プール11及び環状側壁部12は、可撓性材料からなるシート(本実施形態では、所謂ビニールシートを採用している)によって形成したものであり、それぞれの形状に合わせて可撓性シートを裁断し、適宜箇所あるいは位置で互いに溶着したものである。なお、底板プール11の形状や大きさは、幼児の対象年齢に応じて適宜選定されるものであり、図1に示した円形の他、四角形状やキャラクター形状等が考えられる。勿論、この底板プール11の周縁には、上記環状側壁部12が一体化される。
【0031】
本実施形態に係る環状側壁部12は、水が入る水収容部14を形成するものであり、二枚の可撓性材料を使用することもあり得るが、図3にも示したように、一枚の可撓性材料を上端で折り曲げて使用して構成したものである。そして、この環状側壁部12は、図3にも示したように、その内外両面を構成している可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部15にて連結したものであり、これにより、当該環状側壁部12内に空気室13を形成したものである。
【0032】
各溶着帯部15は、図1〜図5に示したように、環状側壁部12に対して部分的であり、かつ閉環状のものとしてある。また、各溶着帯部15は、環状側壁部12の該当部分にある可撓性材料を、熱や超音波を使用して軟化させた後硬化させて、つまり両可撓性材料を溶着して形成したものである。なお、この溶着帯部15の幅は、可撓性材料の厚さが0.25mmである場合、5mm前後である。
【0033】
閉環状のものである各溶着帯部15は、図2に示したような四角形状のものであってもよいが、図4及び図5に示したように、その互いに対向する所定部分15aについて、外側に膨らむ円弧状にしたものである。図4の(a)に示した溶着帯部15では、溶着帯部15の上下の部分については直線状の線分とし、左右の所定部分15aについては、上下の線分の各端部に連続して、外側に膨らむ円弧としてある。図4の(b)に示した溶着帯部15では、上下左右の所定部分15aについて、互いに連続した円弧状のものとしてある。そして、図5に示した溶着帯部15については、丸あるいは楕円としたもので、その環状側壁部12に対してランダムに上下させたものである。
【0034】
なお、図4に示した各溶着帯部15間の距離L1は、各溶着帯部15の、環状側壁部12の上下端縁に対する距離L2よりも大きくなるようにしてある。このようにすることによって、環状側壁部12内の空気室13内に空気を充填して当該可撓性プール10を展開したとき、各溶着帯部15間に「シワ」ができるのを極力防止することができるからである。
【0035】
以上のようにして、各溶着帯部15を形成することにより、図3にも示したように、環状側壁部12内には一つの空気室13が形成される。空気室13が一つであるから、この環状側壁部12を展開するための空気栓16は、図1にも示したように、1個で済ませることができるのであり、環状側壁部12の空気室13内への空気の充填、及び空気室13内の空気の排出は、この一つの空気室13で全て賄えるのである。なお、本実施形態の可撓性プール10では、図1にも示したように、2個の空気栓16を有しているが、これらの空気栓16はその形式がそれぞれ異なっていて、空気を入れるための図示しない「エアポンプ」の形式が異なっても対応できるようにするためである。
【0036】
また、本実施形態では、環状側壁部12の一部に排水口が形成してあるが、この排水口は、出願人の出願に係る上記特許文献1に記載されているものである。
【符号の説明】
【0037】
10 可撓性プール
11 底板プール
12 環状側壁部
13 空気室
14 水収容部
15 溶着帯部
15a 所定部分
15b 溶着部
16 空気栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料によって形成した底板シートの周縁に、前記可撓性材料によって空気室を有したものとして構成される環状側壁部を一体化して、前記空気室内に空気を充填することにより、前記環状側壁部を底板シートから立ち上げて、内部に水収容部を形成するようにした可撓性プールにおいて、
前記環状側壁部の内外両面を構成している前記可撓性材料のそれぞれを、複数の閉環状の溶着帯部にて溶着することにより、前記空気室が環状側壁部内にて1つの連続したものとなるようにしたことを特徴とする可撓性プール。
【請求項2】
前記各溶着帯部の、互いに対向する所定部分について、外側に膨らむ円弧状にしたことを特徴とする請求項1に記載の可撓性プール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−172307(P2012−172307A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32029(P2011−32029)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(398063825)株式会社ヒオキ (9)