説明

可逆性感熱記録材料

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像の形成及び消去を温度変化により何度も繰り返すことのできる可逆性感熱記録材料及びそれを用いた画像表示方法に関する。
【0002】
【従来の技術】可逆的な記録及び消去が可能な感熱記録材料としては、塩化ビニル樹脂等の中に高級脂肪酸等の有機低分子物質を分散した感熱層(記録層)を設けたものが特開昭55−154198号公報で、屈折率の異なるポリマーを2種以上混合した感熱層(記録層)を設けたものが特開昭62−108087号公報で、側鎖に結晶構造(メソゲン基を有する高分子を感熱層(記録層)を設けたものがJAPAN DISPLAY 86等で知られている。また、サーマルヘッド等の加熱手段の熱と圧力で表面が変形して透明部の透明度が低下させることを防ぐために、紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂等の耐熱性樹脂を用いた保護層を設けたものが特開平1−133781号、特開平2−566号などの公報に記載されている。
【0003】しかし、これらの耐熱性樹脂の保護層を設けた可逆性感熱記録材料は表面の変形は少ないものの、何枚も連続して同一場所をサーマルヘッドで繰り返し印字した場合には、スティッキングにより表面に傷が発生したり、また、保護層の一部が剥離してサーマルヘッドに付着しそれが蓄積するとサーマルヘッドからの熱が伝達しにくくなり、遂には、画像の形成に支障をきたすようになる。
【0004】また、感熱記録材料表面にホコリ、ゴミ等が付着した場合には、感熱記録材料とサーマルヘッドとの間にそのホコリ等が留まり、サーマルヘッドからの熱を伝導できず、従ってホコリ等がついた部分のみ画像が印字できなくなるという欠点もあった。
【0005】更に、サーマルヘッドと可逆性記録材料との間の摩擦によるスティッキングを防止する為にシリコーン系ゴム、シリコーン樹脂やポリシロキサングラフトポリマーを主成分とした保護層を設けたものが、特開昭63−221087号、特開昭63−317385号等に記載されている。しかしながらこれ等の記録媒体は、サーマルヘッドによるスティッキングは緩和されるものの、やはり、何回も同一場所をサーマルヘッドでくり返し印字した場合、表面の硬さが不充分であるためキズが生じ易く、保護層が剥離し、やはり画像形成に支障をきたすという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のごとき欠点を解消し、多数枚連続印字してもキズ、ヘッドカス付着及びスティッキングが発生せず、均質な画像が形成できる可逆性感熱記録材料、及びそれを用いた画像表示方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、支持体上に透明状態と白濁状態とが温度に依存して可逆的に変化する感熱層を設け、更にその上に耐熱性樹脂を主成分とする保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層を有する可逆性感熱記録材料の耐擦傷性が10g以上でかつ摩擦係数が0.10以下であることを特徴とする可逆性感熱記録材料が提供され、また前記保護層が、耐熱性樹脂を主成分とする第1の保護層と、更にその上に設けた高滑性の第2の保護層からなることを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、また前記第1の保護層が紫外線または電子線硬化性樹脂からなり、かつ/また前記第2の保護層が、シリコンまたはフッ素を含有する材料からなることを特徴とする前記可逆感熱記録材料が提供され、また前記保護層が、滑性添加剤を配合した耐熱性樹脂からなることを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、また前記保護層が、5官能以上の分枝状分子構造のポリエステル骨格を有する電子線硬化性樹脂及び変性電子線硬化性樹脂を主成分とする耐熱性樹脂からなることを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、また前記保護層が、ホスファゼン系樹脂を主成分とする耐熱性樹脂からなることを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、また感熱層と保護層との間に、印刷により画像を形成したことを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、更に第1の保護層と第2の保護層との間に、印刷により画像を形成したことを特徴とする前記可逆性感熱記録材料が提供され、更にまた該可逆性感熱記録材料を用い、サーマルヘッドで画像形成−消去を行なうことを特徴とする画像表示方法が提供される。
【0008】本発明者等は可逆性感熱記録材料において、サーマルヘッド又は熱ロール等の加熱及び圧力に強く、又、サーマルヘッド等の擦傷による表面のキズ及びサーマルヘッド等へのカス付着防止として、感熱層上方に保護層を有する可逆性感熱記録材料の耐擦傷性が10g以上でかつ摩擦係数が0.10以下であるものを用いれば、サーマルヘッド等の発熱体で同一場所への画像形成及び消去を繰り返しても表面のキズ及びヘッドカス付着の防止ができることを見出した。
【0009】ここで言う加熱時の耐擦傷性は以下の方法で評価する。
I耐擦傷性試験法1.試験機HEiDON−14S(新東科学製)を用いて、スチールウール圧子に載せる荷重によって表わす。
2.100℃に制御した測定ステージにサンプル(感熱層上方に保護層を有する可逆性記録材料)を固定し、その上に半径1.3cmに調整したスチールウール片(粗さ番手#0、日本スチールウール製)を一定荷重にて押し当て、測定ステージを水平方向に2往復させ、表面の擦り傷で評価する。測定ステージ引張速度:150mm/min。
3.擦り傷は擦った方向に対して、試験片の面に45度の角度から目視によって観察し、判別できる傷を擦り傷としう。
4.スチールウール片への荷重を増していき擦り傷が生じた荷重重量をもって耐擦傷性を評価する。例えば、荷重を増していき、荷重50gから擦り傷が生じた場合、その耐擦傷性は50g以上と定義する。
【0010】また、ここで言う摩擦係数は動摩擦係数を指し、以下の様に測定する。試験機HEiDON−14S(新東科学製)を用い、5mmφのAl22のボール圧子に200gの荷重を載せて、100℃に加熱した測定ステージに感熱層上方に保護層を有する可逆性記録材料を固定し、この測定ステージを水平方向に150mm/minにてスライドさせたときにボール圧子に働く水平方向の力を測定し、その種を荷重で除し、その動摩擦係数をもって摩擦係数と定義する。
【0011】前記した様な耐擦傷性が10g以上でかつ摩擦係数が0.10以下である可逆性記録材料を得る方法としては、1. 感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とした第1の保護層と、更に上方に高滑性第2の保護層を設ける。2. 感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とした保護層中に滑性添加剤を含有させる。3.感熱層上方の保護層に耐擦傷性10g以上で摩擦係数0.10以下の保護層材料を用いる等が考えられる。即ち、サーマルヘッド等の同一場所への繰り返しの加熱及び圧力によって発生するステッキングを摩擦係数の低下によって防止することが出来、さらに、耐熱性で高硬度の保護層を用いることによって保護層表面のキズの発生を防止することが出来るのである。
【0012】以下に本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる保護層は、熱により無色状態と着色状態または透明状態と白濁不透明状態の様な透明状態が可逆的に変化する感熱層上に設けられる。本発明で用いられる記録媒体は樹脂母材とその樹脂母材中に分散された有機低分子物質を主成分としてなり、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設けた可逆性感熱記録材料である。
【0013】本発明の可逆性感熱記録材料は、感熱層の温度による透明度変化、即ち透明から白濁不透明への変化又はその逆の変化を利用したものであり、この透明状態と白濁不透明状態との違いは次のように推測される。
【0014】すなわち、(i)透明の場合には樹脂母材中に分散された有機低分子物質の粒子は有機低分子物質の大きな粒子で構成されており、片側から入射した光は散乱されること無く、反対側に透過するため透明に見えること、また、(ii)白濁の場合には樹脂母材中に分散された有機低分子物質の粒子は有機低分子物質の微細な結晶が集合した多結晶で構成され、個々の結晶の結晶軸がいろいろな方向を向いているため片側から入射した光は有機低分子物質粒子の結晶の界面で何度も屈折し、散乱されるため白く見えること、等に由来している。以上のような温度による透明度変化を図面によって説明する。
【0015】図1(熱による透明度の変化を表わしている)において、樹脂母材と、この樹脂母材中に分散された有機低分子物質とを主成分とする感熱層は、例えばT0以下の常温では白濁不透明状態にある。これを温度T1〜T2に加熱すると透明になり、この状態で再びT0以下の常温に戻しても透明のままである。これは温度T1〜T2間からT0以下に至るまでに有機低分子物質が半溶融状態を経て多結晶から単結晶へと結晶が成長するためと考えられる。更にT3以上の温度に加熱すると、最大透明度と最大不透明度との中間の半透明状態になる。次に、この温度を下げて行くと、再び透明状態をとることなく最初の白濁不透明状態に戻る。これは温度T3以上で有機低分子物質が溶融後、冷却されることにより多結晶が析出するためであると考えられる。なお、この不透明状態のものをT1〜T2間の温度に加熱した後、常温、即ち、T0以下の温度に冷却した場合には透明と不透明との中間の中間状態をとることができる。また、前記常温で透明になったものも再びT3以上の温度に加熱した後常温に戻せば、再び白濁不透明状態に戻る。即ち、常温で不透明及び透明の両形態並びにその中間状態をとることができる。
【0016】従って、以上のような感熱層を有する感熱記録材料の表面に、熱を選択的に印加することにより感熱層を選択的に加熱し、透明地に白濁画像、白濁地に透明画像を形成することができ、その変化は何回も繰り返することが可能である。そして、このような感熱層の背面に着色シートを配置すれば、白地に着色シートの色の画像または着色シートの色の地に白色の画像を形成することができる。また、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)などで投影すれば、白濁部は暗部になり、透明部は光が透過しスクリーン上では明部となる。
【0017】このような可逆性感熱記録材料を用いて画像の形成と消去とを行なうには、画像形成用と画像消去用の二つのサーマルヘッドを持つか、若しくは、印加エネルギー条件を変化させることにより画像形成及び画像消去を行なう単一のサーマルヘッドを持つものの使用が有効である。前者の場合には、2つのサーマルヘッドが必要なため装置のコストは上がるが、それぞれのサーマルヘッドのエネルギー印加条件を別々にし可逆性感熱記録材料を1回通せば、画像の形成と消去とを行なうことでぎきる。後者の場合には、一つのサーマルヘッドで画像の形成及び消去を行なうため、感熱記録材料が通過する1回にサーマルヘッドにエネルギーを印加する条件を画像を形成する部位、消去する部位に合わせて細かく変えていくか、または、一度感熱記録材料上の画像を消去した後もう一度感熱記録材料を逆向きに走行させ別のエネルギー条件で画像を形成する等、操作は複雑化するがサーマルヘッドが1つであるため装置コストは安くなる。
【0018】本発明で用いられる可逆性感熱記録材料を作るには例えば下記の方法により支持部材上に皮膜として形成はするかあるいはシート状として成形することができる。
1)樹脂母材及び有機低分子物質を溶媒中に溶解し、これを支持部材上に塗布し、溶媒を蒸発させ皮膜あるいはシート状とする方法。
2)樹脂母材のみを溶解させる溶媒に、樹脂母材を溶解させ、その中に有機低分子物質を種々の方法で粉砕又は分散し、これを支持部材上に塗布し、溶媒を蒸発させ皮膜あるいはシート状とする方法。
3)溶媒を用いず、樹脂母材と有機低分子物質を加熱溶融、混合し、これを皮膜あるはシート状に成形して冷却する方法。
感熱層又は感熱記録材料作成用溶剤としては、樹脂母材及び有機低分子物質の種類によって種々選択できるが、例えばテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩基化炭素、エタノール、トルニン、ベンゼン等が挙げられる。なお、分散液を使用した場合はもちろんであるが、溶液を使用した場合も得られる感熱層中では有機低分子物質は微粒子として析出し、分散状態で存在する。
【0019】感熱層に使用される樹脂母材は有機低分子物質を均一に分散保持した層を形成すると共に、最大透明時の透明度に影響を与える材料である。このため樹脂母材は透明性が良く、機械的に安定で、且つ成膜性の良い樹脂が好ましい。このような樹脂としてはポリ塩化ビニル;塩化ビニル〜酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル〜酢酸ビニル〜ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル〜酢酸ビニル〜マレイン酸共重合体、塩化ビニル〜アクリレート共重合体等の塩化ビニル系共重合体;ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン〜塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン〜アクリロニトリル共重合体等の塩化ビニリデン系共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリアクリレート又はポリメタクリレート或いはアクリレート〜メタクリレート共重合体;シリコン樹脂等が挙げられる。これらは単独で或いは2種以上混合して使用される。
【0020】一方、有機低分子物質としては記録層中で熱により多結晶から単結晶に変化するもの(図1に示した温度T0〜T3の範囲で変化するもの)であればよく、一般に融点30〜200℃好ましくは50〜150℃程度のものが使用される。このような有機低分子物質としてはアルカノール;アルカンジオール;ハロゲンアルカノールまたはハロゲンアルカンジオール;アルキルアミン;アルカン;アルケン;アルキン;ハロゲンアルカン;ハロゲンアルケン;ハロゲンアルキン;シクロアルカン;シクロアルケン;シクロアルキン;飽和または不飽和モノまたはジカルボン酸又はこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;飽和または不飽和ハロゲン脂肪酸またはこれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;アリ−ルカルボン酸またはそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;ハロゲンアリルカルボン酸またはそれらのエステル、アミド又はアンモニウム塩;チオアルコール;チオカルボン酸又はそれらのエステル、アミンまたはアンモニウム塩;チオアルコールのカルボン酸エステル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上混合して使用される。これらの化合物の炭素数は10〜60、好ましくは10〜38、特に10〜30が好ましい。エステル中のアルコール基部分は飽和していても又、飽和していなくてもよく、またハロゲン置換されていてもよい。いずれにしても有機低分子物質は分子中に酸素、窒素、硫黄及びハロゲンの少くとも1種、例えば-OH、-COOH、-CONH、-COOR、-NH、-NH2、-S-、-S-S-、-O-、ハロゲン等を含む化合物であることが好ましい。
【0021】更に具体的には、これら化合物としてはラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ノナデカン酸、アラギン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸メチル、ステアリン酸テトラデシル、ステアリン酸オクタデシル、ラウリン酸オクタデシル、パルミチン酸テトラデシル、ベヘン酸ドデシル等の高級脂肪酸のエステル;C1633−O−C1633 , C1633−S−C1633 ,C1837−S−C1837 , C1225−S−C1225 ,C1939−S−C1939 , C1225−S−S−C1225

等のエーテル又はチオエーテル等がある。中でも、本発明では高級脂肪酸、特にパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数16以上の高級脂肪酸が好ましく、炭素数16〜24の高級脂肪酸が更に好ましい。
【0022】なお、感熱層中の有機低分子物質と樹脂母材との割合は重量比で2:1〜1:16程度が好ましく、1:2〜1:6が更に好ましい。樹脂母材の比率がこれ以下になると、有機低分子物質を樹脂母材中に保持した膜を形成することが困難となり、またこれ以上になると、有機低分子物質の量が少ないため、不透明化が困難になる。
【0023】感熱層の厚みは1〜30μmが好ましく、2〜20μmがさらに好ましい。感熱層が厚すぎると層内での熱の分布が発生し均一に透明化することが困難となる。また、感熱層が薄すぎると白濁度が低下しコントラストが低くなる。更に、感熱層中の有機低分子物質の量を増加させると白濁度を増すことができる。
【0024】感熱層には以上の成分の他に、透明面画の形成を容易にするために、界面活性剤、高沸点溶剤等の添加物を添加することができる。これらの添加物の具体例は高沸点溶剤の例:リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、オレイン酸ブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソシエル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル。
【0025】界面性剤、その他の添加物の例:多価アルコール高級脂肪酸エステル、多価アルコール高級アルキルエーテル、多価アルコール高級脂肪酸エステル、高級アルコール、高級アルキルフェノール、高級脂肪酸高級アルキルアミン、高級脂肪酸アミド、油脂又はポリプロピレングリコールの低級オレフィンオキサイド付加物、アセチレングリコール、高級アルキルベンゼンスルホン酸のNa、Ca、Ba又はMg塩、高級脂肪酸、芳香族カルボン酸、高級脂肪酸スルホン酸、芳香族スルホン酸、硫酸モノエステル又はリン酸モノー又はジ−エステルのCa、Ba又はMg塩、低度硫酸化油、ポリ長鎖アルキルアクリレート、アクリル系オルゴマー、ポリ長鎖アルキルメタクリレート、長鎖アルキルメタクリレート〜アミン含有モノマー共重合体、スチレン〜無水マレイン酸共重合体、オレフィン〜無水マレイン酸共重合体。
【0026】この記録材料に形成される画像を反射画像として用いる場合には、記録層の背面に光を反射する層を設けるのが望ましい。また、反射層があると記録層の厚みを薄くとてもコントラストを上げることができる。具体的にはAl、Ni、Sn等を蒸着することが挙げられる(特開昭64−14079号公報に記載)。
【0027】感熱記録層と保護層または第1の保護層と第2の保護層の間に印刷を行なえば、印刷接着性が良く、ヘッドマーチングの良い保護層が得られる。
【0028】また、磁気層上または磁気層の反対側に可逆感熱記録層を塗布または貼合せ、磁気カード状にすることも可能である。
【0029】更に本発明の感熱層上にサーマルヘッド等の書込み法による加熱手段の熱と圧力で表面がキズついたり、削り落されて、画像形成が出来なくなるのを防ぐために後述する保護層(厚さ0.1〜30μm)が設けられる(図2)。
【0030】また保護層形成液の溶剤やモノマー成分等から可逆性記録材料を保護するために、保護層と可逆性記録材料この間に中間層(厚さ0.1〜2.0μm)が設けられる(図3)。
【0031】本発明の耐擦傷性が10g以上でかつ摩擦係数が0.10以下である可逆性感熱記録材料を得る方法としては、前記の様に、1.感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とした第1の保護層と更に上方に高滑性の第2の保護層を設ける。2.感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とする保護層中に滑性添加剤を含有させる。3.感熱層上方の保護層に耐擦傷性10g以上で摩擦係数が0.10g以下の保護層材料を用いる等が挙げられるが、各々単独でなく、その等を組合わせても良い。
【0032】以下にその各々について詳しく説明する。
1. 感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とする第1の保護層と更に上方に高滑性の第2の保護層を設ける場合。
第1の保護層は前記耐擦傷試験において、耐擦傷性が10g以上を満す保護層であり、その材料としてはウレタン系、エポキシ系、オルガノシロキサン系、多官能アクリレート系、メラミン樹脂などの熱硬化、紫外線硬化または電子線硬化樹脂やフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート等の軟化点の高い熱可塑性樹脂があるが、好ましくは特開平2-566号記載の紫外線硬化又は電子線硬化性樹脂が好適である。この様な保護層に高滑性の第2の保護層を設ける具体的方法としては、第1の保護層の上に滑性を有する材料、例えばシリコーンやフッ素を含む材料、具体的にはシリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリシロキサングラフトポリマー、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等のシリコーン変性の各種樹脂、フッ素樹脂、フッ素ゴム、フッ素セグレントを有するクラフトポリマー、フッ素変性の各種樹脂等の滑性の高い材料による第2の保護層を設ける方法や、第1の保護層の上に加熱時に滑剤としての機能を有するシリコーンオイルや界面活性剤、有機塩類、ワックス滑性フィラーとしてシリコーンパウダー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化モリブデン、尿素樹脂架橋粉等の滑性添加剤を含有する第2の保護層を設ける等の方法が考えられ、またこれ等の手段を組み合わせて高滑性を実現しても良い。
【0033】この時、第1の保護層の厚さは、0.1〜20.0μmが好ましく、これ以下の厚さでは、保護の効果がなく、これ以上の厚さでは熱感度が低下する。また第2の保護層の厚さは0.001〜2.0μmが好ましく、さらに0.1〜1.5μmが望ましい。これ以下の厚さでは滑性の効果がなくなり、これ以上だと保護層としてキズが生じ易く、下層の第1の保護層の効果を発揮出来ない。
【0034】2. 感熱層上方に耐熱性樹脂を主成分とした保護層中に滑性添加剤を含有させる場合。
耐熱性樹脂は、前出の樹脂材料からなり、滑性添加剤としてはシリコーンオイル、界面活性剤、有機塩類、ワックス類等の滑剤や滑性フィラー等が挙げられ、本発明の耐擦傷性10g以上の保護層中に含有させるシリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、アルコール変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0035】界面活性剤としては、通常市販されているカルボン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコールのリン酸エステルおよびその塩を挙げることができる。これらの化合物の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ミリスチルアルコール硫酸エステルナトリウム、セチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ステアリルアルコール硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸エステルナトリウム、高級アルコールのエチレンオキサイド付加体の硫酸エステルナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、デシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ノニルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸カリウム、N-オレオイル-N-メチルタウリンナトリウム、テトラエトキシラウリルアルコール酸エステル、リン酸モノステアリルエステルナトリウム、リン酸ジステアリルエステルナトリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものでは無い。
【0036】また、前記有機塩類としては、たとえば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸、ヘキシルアンモニウムクロライド、スルホサリチル酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、安息香酸カリウム、アジピン酸カリウムなどの塩類があげられる。
【0037】更にワックスとしては、天然ワックスとして、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、みつろう、ラノリンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、硬化ひまし油またはその誘導体、脂肪酸アミド等があげられる。尚耐擦傷性10g以上の保護層中に占める滑剤の量は0.001〜15.0重量%が適当である。これ以上であると保護層の機械的強度が劣り、これ以下であると滑剤の効果がなくなってしまう。
【0038】更にまた滑性フィラーとしては、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン樹脂等の無機及び有機微粉末が例示できる。粒径は0.01〜20μm程度が適当であり、特にフィラーの形状が球形でありSi樹脂、フッ素樹脂の様な滑性を有するものが望ましい。耐擦傷性10g以上の保護層中に占めるフィラーの量は0.1〜70.0重量%が適当である。これ以上であるとフィラーが樹脂から取れ易く、少ないと滑性の効果がない。
【0039】3. 感熱層上方の保護層に耐擦傷性10g以上で摩擦係数0.10以下の保護層材料を用いる。
本発明における保護層は、ポリエステルを骨格とする5官能以上の分枝状分子構造を有する電子線硬化性樹脂(以降電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂ということがある)及びシリコーン変性電子線硬化性樹脂を主成分としたものである。電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂は、例えば次のようにして製造することができる。即ち1,4-ブタンジオールとアジピン酸との反応生成物、或いはプロピレングリコールとアジピン酸との反応生成物(以上はポリエステル骨格部分に相当するもの等)のポリエステルジオールとポリエーテルトリオールとの混合物に、ジイソシアネートとアクリル系2重結合を有する化合物とを加えて反応させることにより製造することができる。ポリエステルジオールとポリエーテルトリオールとの混合物に代えて、例えばポリエーテルジオールとポリエーテルトリオールとの混合物、ポリエステルジオールとポリエステルトリオールとの混合物、ポリエーテルジオールとポリエステルトリオールとの混合物が用いられてもよい。ここで、ジイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)等が、また、アクリル系2重結合を有する化合物としては2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が例示できる。なお、ポリエステルジオールは例えばアデカニューエースY4-30(旭電化工業社製)として、また、ポリエーテルトリオールは例えばサンニックスTP-400、サンニックスGP-3000(以上、三洋化成社製)等として入手しうる。この電子硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂のポリエステル部分の分子量は、耐熱スリップ層に要求される柔軟性及び強靱性をもたせるために、2000〜4000の範囲が好ましい。また、電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂全体の分子量は、前記と同様な理由により、20000〜50000の範囲が好ましい。なお、この樹脂においては、官能基数を5個以上望ましくは7〜13個もたせることにより、硬化促進及び硬度向上等の効果をもたらすことができる。
【0040】一方、シリコーン変性電子線硬化性樹脂は下記化1で表わされるものである。
【化1】


(ただし、上記式中、 Rは−(CH2)−n (n=0〜3)、 TDIは2,4-トリレンジイソシアネート、 HEMは2-ヒドロキシエチルアクリレートを示し、 x=50〜100 y=3〜6 である。)このシリコーン変性電子線硬化樹脂は被膜性に優れているため均一で薄い被膜を良好に形成することができ、また、シリコーン官能基を有しているためスベリ効果が優れている。
【0041】電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂と電子繰硬化性シリコーン変性樹脂との割合は電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂100重量部に対し電子線硬化性シリコーン変性樹脂30重量部までの範囲で好ましくは5〜20重量部の範囲で添加されることが望ましい。
【0042】本発明の保護層においては、その形成過程にあって硬化を促進し、耐熱効果を向上させるために、多官能電子線硬化性モノマーを併用するのが望ましい。このモノマーは架橋促進剤として作用し、複雑で高密度の架橋構造を形成する上で有利である。このようなモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。そして、このモノマーは電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂100重量部に対し50重量部までの範囲で、好ましくは20〜50重量部の範囲で添加されることが望ましい。50重量部より多いと潤滑効果が弱まり、スベリ効果が低下する。
【0043】また別の本発明における保護層はホスファゼン系樹脂であり下記化2で示されるホスファゼン骨核を有する繰り返し単位を有するものであり、耐熱性において極めて優れている。
【化2】


具体的には、下記化3で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化3】


化3で表わされるホスファゼン系樹脂、例えばAがメタアクリロイルオキシエチル基で、b=0の樹脂は、下記化4で表わされる化合物の開環重合により製造することができる。
【化4】


前記化3で表わされるボスファゼン系樹脂のように重合硬化性基を有する場合は、紫外線、電子線、加熱等で硬化することにより、更に機械的強度、硬度、耐熱性が向上する。
【0044】2〜4の場合における保護層の厚さは1〜20μmが好ましく、これ以下の厚さになると保護層の効果がなくなり、これ以上だと熱感度が低下する。
【0045】
【実施例】本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここでの部及び%はいずれも重量基準である。実施例1(保護層2層)
100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液 ユニディック C7-157 10部 (大日本インキ化学社製)
トルエン 10部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで硬化させ約3μm厚の耐熱性の第1の保護層作成し、更にその上に第2の保護層溶液 シリコーン変性ポリウレタン樹脂 ダイアロマー SP2105(大日精化製) 100部 クロスネート D70(大日精化製) 50部 MEK 1500部 トルエン 150部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布加熱乾燥して約0.5μm厚の第2の保護層を設れ、得られた可逆性感熱記録材料を50℃で10日間乾燥機中でエイジング処理し、保護層を形成し、本発明の可逆性感熱記録材料を作成した。
【0046】実施例2(保護層2層と添加剤)
実施例1において、実施例1の第2の保護層溶液に下記化5に示されるアミノ変性シリコーンオイルF867、信越化学(株)製を5部加えた溶液を第2の保護層溶液とした他は、実施例1と全く同様な方法で、本発明の可逆性感熱記録材料を作成した。
【化5】


【0047】実施例3(保護層2層)
実施例1と同様に100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に記録層、耐熱性第1の保護層を形成した後第2の保護層溶液として ポリメチルメタクリレート樹脂 100部 アクリルシリコン樹脂UA−01(三洋化成工業製) 100部 スズ系触媒 Cot 65MC 5部 MEK 1500部 トルエン 150部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布、加熱乾燥して約0.5μm厚の第2の保護層を設け、得られた可逆性感熱記録材料を50℃10日間乾燥機中でエイジング処理し保護層を形成し、本発明の可逆性感熱記録材料を作成した。
【0048】実施例4(保護層1層+添加剤)
100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し,加熱乾燥して約0.5μmの中間層を設けた。さらにその上に ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液(大日本インキ化学社製、 ユニディック C7−157) 10部 メチルフェニルシリコーンオイル (1%トルエン/MEK:1:溶液)(信越シリコーン社製:KF50) 0.03部 トルエン/MEK (1/1溶液) 10部よりなる液を均一に分散した後、ワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後80W/cmの紫外線ランプで硬化させ、約3.0μm厚の保護層を設けた可逆性感熱記録材料を作成した。
【0049】実施例5(保護層1層+添加剤)
実施例4のメチルフェニルシリコーンオイルをアルコール変性シリコーンオイル(トーレ、シリコーン社製SF8428)に代えた以外は、実施例4と同様にして可逆性感熱記録材料を作成した。
【0050】実施例6(保護層1層+滑性添加剤)
実施例4に用いた可逆性感熱記録層の上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約0.5μm厚の中間層を設け、さらにその上に、 ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液(大日本インキ化学社製、 ユニディック C7−157) 10部 ステアリン酸亜鉛(mp127℃) 0.8部 トルエン 10部よりなる液を均一に分散した後、ワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後80W/cmの紫外線ランプで硬化させ、約3.0μm厚の保護層を設けた可逆性感熱記録材料を作成した。
【0051】実施例7(保護層1層+滑性添加剤)
ステアリン酸亜鉛の代りにステアリン酸マグネシウム(mp132℃)を用いた以外は、実施例6と同様にして可逆性感熱記録材料を作成した。
【0052】実施例8(保護層1層+フィラー)
100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して、約1μm厚の中間層を設けた。
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液 10部 (大日本インキ化学社製、ユニディック17-824-9))
東芝シリコーン社製XC99−301(平均粒径4μm) 0.08部 トルエン/MEK(1/1溶液) 10部よりなる液を均一に分散した後、ワイヤーバーで塗布、加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで硬化させ、約5μm厚の保護層を設けて可逆性感熱記録材料を作成した。
【0053】実施例9(保護層1層+フィラー)
実施例8の可逆性感熱記録層の上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約1.0μm厚の中間層を設けた。さらにその上に、保護層溶液として、 ホスファゼン系樹脂(出光石油化学社製:U−2000) 10部フィラー(スチレン樹脂ビーズ) 1部トルエン 10部よりなる液を均一に分散後、ワイヤーバーで塗布、加熱乾燥後、80W/cmの紫外線ランプで硬化させ、約5.0μm厚の保護層を設けて可逆性感熱記録材料を作成した。
【0054】実施例10(保護層1層)
100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約0.5μm厚の中間層を設け、さらにその上に、 電子線硬化性アクリル変性ポリウレタン樹脂 〔ポリエステル部分の分子量が約3000である旭電化工業社製 アデカニューエースY4-30とポリエステルトリオールTP-400 (三洋化成社製)と2,6-トリレンジイソシアネートとヒドロキ シエチルアクリレートとの分枝状構造を有する反応生成物; 官能基数10個、全分子量約30000〕 10部 多官能モノマー(東亜合成化成工業社製M-8030) 3部 シリコーン変性ウレタンアクリレート 2部 (米国フリーマン社製19-4842) MEK/トルエン(1/1)混合溶液 50部よりなる液を均一に分散した後、ワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後電子線照射(1Mラッド)し約2μm厚のオーバーコート層を設けて可逆性感熱記録材料を作成した。
【0055】実施例11(保護層1層)
100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ポリアミド樹脂 10部 (東レ社製:CM8000)
メタノール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約1μm厚の中間層を設けた。さらにその上に ホスファゼン系樹脂 10部 (出光石油化学社製:U−2000)
トルエン 10部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥後80w/cmの紫外線ランプで硬化させ、約3μmの保護層を設けて可逆性感熱記録材料を作った。
【0056】比較例1100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体VYHH(UCC社墳) 35部 ラトラヒドラフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液 ユニディック C7-157 10部 (大日本インキ化学社製)
トルエン 10部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し加熱乾燥後、80W/cmの紫外線硬化処理を行ない可逆性感熱記録材料を作った。
【0057】比較例2100μm厚の透明なポリエステルフィルム上に ベヘン酸 6部 エイコサン2酸 4部 フタル酸ジアリル 2部 塩ビ−酢ビ共重合体 VYHH(UCC社製) 35部 テトラヒドロフラン 150部 トルエン 50部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約15μm厚の感熱層(可逆性感熱記録層)を設けた。更にその上に ポリアミド樹脂(東レ社製、CM8000) 10部 エチルアルコール 90部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して、約1μm厚の中間層を設けた。さらにその上に、 ウレタンアクリレート系紫外線硬化性 樹脂の75%酢酸ブチル溶液 10部 (大日本インキ化学社製、ユニディック17-824-9))
トルエン/MEK(1/1溶液) 10部よりなる液を均一に分散した後、ワイヤーバーで塗布、加熱乾燥後80W/cmの紫外線ランプで硬化させ、約5μm厚の保護層を設けて可逆性感熱記録材料を作成した。
【0058】比較例3実施例10に於いて保護層のシリコン変性ウレタンアクリレートを除いた以外は全て実施例10と同様にして可逆性感熱記録材料を作成した。
【0059】比較例4実施例10に於いて保護層のアクリル変性ポリウレタン樹脂を除いた以外は全て実施例10と同様にして可逆性感熱記録材料を作成した。
【0060】比較例5実施例11に於いて保護層として シリコーン樹脂(トーレシリコーン社製 SR2411) 10部 トルエン 10部よりなる溶液をワイヤーバーで塗布し、加熱乾燥して約3μm厚の保護層を設けて可逆性感熱記録材料を作った。
【0061】前記実施例1〜11、比較例1〜5で得た各可逆性感熱記録材料について八城電気社製印字試験装置を用いて評価した結果を表1に各可逆性感熱記録材料の耐擦傷性試験、摩擦係数の結果を表2に示す。なお、サーマルヘッドは、(株)リコーの8ドット/mmのサーマルヘッドを用い、プラテン押圧1.0kg、パルス巾1ms、電圧25Vの条件で全ベタ印字でテストを行った。サーマルヘッドへのカス付着による画像切れ及び表面のキズは目視にて判定した。また画像劣化は、1回目の白濁濃度と100回目の白濁濃度の差で示す。濃度はマクベス反射濃度計(RD914)にて測定した。
【0062】
【表1】


【0063】
【表2】


【0064】
【発明の効果】実施例からも明らかな様に、温度に依存して透明度が可逆的に変化する感熱層を設け、更にその上方に耐熱性樹脂を主成分とする保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層を有する可逆性感熱記録材料の耐擦傷性が10g以上であり、かつ摩擦係数が0.10以下である記録材料を用いたことにより、加熱時の保護層の硬さと滑性が得られ、この効果で繰り返し使用後も記録材料の表面のキズが防止でき、更にヘッドカス付着の防止と画像切れがないという効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性感熱記録材料の熱による透明度変化を説明するための図である。
【図2】本発明の、感熱層上に保護層を設けた可逆性感熱記録材料の模式図。
【図3】本発明の、感熱層と保護層との間に中間層を設けた可逆性感熱記録材料の模式図。
【符号の説明】
1…支持体
2…可逆性感熱記録層
3…保護層
4…中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に透明状態と白濁状態とが温度に依存して可逆的に変化する感熱層を設け、更にその上に耐熱性樹脂を主成分とする保護層を設けた可逆性感熱記録材料において、該保護層を有する可逆性感熱記録材料の耐擦傷性が10g以上でかつ摩擦係数が0.10以下であることを特徴とする可逆性感熱記録材料。
【請求項2】 前記保護層が、耐熱性樹脂を主成分とする第1の保護層と、更にその上に設けた高滑性の第2の保護層からなることを特徴とする請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項3】 前記第1の保護層が紫外線または電子線硬化性樹脂からなり、かつ/また前記第2の保護層が、シリコンまたはフッ素を含有する材料からなることを特徴とする請求項2記載の可逆感熱記録材料。
【請求項4】 前記保護層が、滑性添加剤を配合した耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項5】 前記保護層が、5官能以上の分枝状分子構造のポリエステル骨格を有する電子線硬化性樹脂及び変性電子線硬化性樹脂を主成分とする耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項6】 前記保護層が、ホスファゼン系樹脂を主成分とする耐熱性樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項7】 感熱層と保護層との間に、印刷により画像を形成したことを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項8】 第1の保護層と第2の保護層との間に、印刷により画像を形成したことを特徴とする請求項2又は3記載の可逆性感熱記録材料。
【請求項9】 請求項1記載の可逆性感熱記録材料を用い、サーマルヘッドで画像形成−消去を行なうことを特徴とする画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【特許番号】第2700234号
【登録日】平成9年(1997)10月3日
【発行日】平成10年(1998)1月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−242692
【出願日】平成3年(1991)8月28日
【公開番号】特開平5−92658
【公開日】平成5年(1993)4月16日
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】特開 平3−180390(JP,A)
【文献】特開 平2−566(JP,A)