説明

可逆的熱発色組成物およびそれを用いる記録媒体と表示媒体

【目的】 発色剤と顕色剤との間の反応を利用した可逆的熱発色性組成物において、消色時の濃度が低く、消し残りがなく、消色温度の幅が広く、しかも高速で均一な消色の可能な可逆的熱発色性組成物および記録媒体と表示媒体と表示媒体を提供する。
【構成】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、分子状又は微小ドメイン状に分散して存在し、かつ発色体の凝集構造の規則性を低下させることを特徴とする可逆的熱発色性組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆的熱発色性組成物及びその組成物を用いた可逆的感熱記録媒体と表示媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤とも言う)と電子受容性化合物(以下、顕色剤とも言う)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られ、電子計算機のアウトプット、ファクシミリ、自動券売機、科学計測機のプリンター、CRT医療計測用プリンター等に広範囲に応用されている。しかし、従来の製品はいずれもその発色が不可逆的なもので、発色と消色を交互に繰り返し行わせることはできない。一方、特許公報によれば、発色剤と顕色剤との間の発色反応を利用した感熱記録媒体において、発色と消色を可逆的に行わせるものもいくつか提案されている。例えば、特開昭60−193691号によれば、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールとの組合せを用いたものが示されている。このものを熱発色させて得られる発色体は水又は水蒸気で消色するものである。しかし、この感熱記録媒体の場合、その耐水化に困難が伴う上に記録保存性に難点があり、さらに発色体を消色させるための消色装置が大型になるという問題がある。特開昭61−237684号には、顕色剤にフェノールフタレン、チモールフタレン、ビスフェノール等の化合物を用いた書換形光記録媒体が示されている。このものは、これを加熱し徐冷することにより発色体を形成し、一方、発色体を発色濃度よりもいったん高い温度に加熱した後、急冷することにより消色させることができる。しかし、この記録媒体の場合、その発色及び消色の工程が複雑である上、発色体を消色させて得られる消色体に未だ幾分の着色が見られ、コントラストの良い発色画像を得ることができない。特開昭62−140881号、特開昭62−138568号及び特開昭62−138556号には、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体が示されている。このものは低温で完全着色状態、高温で完全消色状態を示し、それらの中間温度で着色又は消色状態を保持させることができるもので、この媒体にサーマルヘッドで印字することにより、着色地肌(発色体)の上に白色文字(消色体)を記録することができる。従って、この記録媒体の場合、記録される画像がネガ画像であることから、その用途が限定される上、記録画像の保存のために画像を特定の温度範囲内に保持する必要がある。特開平2−188294号及び特開平2−188293号には、それぞれ顕色剤として顕色作用と減色作用を可逆的に行う没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩、及びビス(ヒドロキシフェニル)酢酸又は酪酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いたものが示されている。このものは、特定温度域で熱発色させ、それより高温での加熱により消色させることができるが、その顕色作用と減色作用とは競争的に起るため、これらの作用を熱的に制御することがむずかしく、良好な画像コントラストが得られにくい。以上のように、発色剤と顕色剤との反応を利用した従来の可逆的感熱記録媒体は種々の問題点を含み、実用上不満足なものであった。また、特に多色の可逆的感熱記録には全く不十分なものであった。
【0003】本発明者らは、これまでに種々の発色剤と顕色剤の組合せの発色反応について検討した結果、特定の構造を持つ顕色剤を用いた場合、発色と消色を安定して繰返し行なうことが可能な組成物が得られることを明らかにした。この組成物は、分子内に長鎖脂肪族基を持つ顕色剤と発色剤を溶融発色温度以上に一時的に加熱することにより得られる発色状態が、発色温度より低い温度への一時的な再加熱により消色するものである。この組成物は、前述した従来の可逆的発色組成物と比べ、発・消色が格段に安定して行なえるものであり、これを用いた記録媒体は、サーマルヘッド、ヒートローラーなど一般の熱源により容易に画像の形成、消去が行なえるものであった。しかしながら、実用上では更に良好な画像品質を得るために、あるいは更に使いやすい記録媒体を得るために、消色時の濃度、消色温度範囲、消色速度などに改善すべき余地があった。
【0004】
【発明が解決しょうとする課題】本発明は、発色剤と顕色剤との間の反応を利用した可逆的熱発色性組成物において、従来技術が持つ前記のような問題点を解決し、消色性の向上した実用性の高い可逆的熱発色組成物及びそれを用いた記録媒体と表示媒体を提供することをその課題とする。より具体的には、消色時の濃度が低く、消し残りがなく、消色温度の幅が広く、しかも高速で均一な消色の可能な可逆的熱発色性組成物および記録媒体と表示媒体を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、長鎖脂肪族基を有する顕色剤と発色剤からなる前記の可逆的熱発色性組成物が示す発色消色現像について、その状態変化を詳細に検討した結果、これらによって形成される発色状態は、従来の可逆性のない熱発色性組成物の発色状態や、可逆性はあるものの発色状態を室温で安定に保持できない熱発色性組成物の発色状態とは異なるものであることを見出すとともに、その発色状態の温度特性を変えることにより消色温度が変化することを明かにした。また、消色が、顕色剤と発色剤との反応物である形成される発色体から顕色剤が分離し、結晶化することにより起きるものであることを見い出すとともに、その条件を制御することによって、消色が完全に、高速に、均一に起こることを明かにした。本発明は、こららの知見に基づいて完成されたものである。
【0006】すなわち、本発明によれば、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、分子状又は微小ドメイン状に分散して存在し、かつ発色体の凝集構造の規則性を低下させることを特徴とする可逆的熱発色性組成物が提供される。また、本発明によれば、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤とからなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、組成物中に微小ドメイン状に分散して存在し、前記再加熱時において溶融し、発色体の凝集構造の崩壊を誘起させるものであることを特徴とする可逆的熱発色性組成物が提供される。さらに、本発明によれば、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、組成物中に微小ドメイン状に分散して存在し、前記再加熱時において発色体の規則的凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し結晶を形成する際の結晶化の核として作用するものであることを特徴とする可逆的熱発色性組成物が提供される。さらにまた、本発明によれば、前記組成物を記録層又は表示層に含む記録媒体及び表示媒体が提供される。
【0007】消色促進剤の作用の仕方は、可逆的熱発色性組成物の基本となる顕色剤と発色剤の組合せの発色状態の温度特性と消色促進剤の温度特性との相対的な関係によっていくつかのケースがある。以下においては、その基本となる顕色剤と発色剤が形成する発色状態とその消色過程を説明し、続いて組成物中における消色促進剤の作用の仕方について説明する。
【0008】先ず、本発明の可逆的熱発色性組成物の発色・消色現象について説明する。図1は前記した可逆的熱発色性組成物の発色濃度と温度の関係を示す。この図の横軸は温度を示し、縦軸は濃度を示している。図中Aは常温で消色状態にある組成物を示し、Bは加熱・溶融状態にあり発色した状態の組成物を示す。また、Cは常温で発色状態にある組成物を示す。組成物Aを昇温していくと、混合・溶融(共融)しはじめる温度T1で濃度が上り発色状態の組成物Bに変化する。この組成物Bを冷却すると、発色状態を維持したまま、常温に戻り組成物Cに変化する(図中の実線の経路)。発色状態の組成物Cを再び昇温していくと、温度T2で濃度が低下し、ついには消色状態となり組成物Dに変化する。組成物Dを冷却し降温するとそのまま消色状態の組成物Aに戻る(図中の鎖線の経路)。図1に示された温度T1は組成物の発色開始温度であり、T2は組成物の消色開始温度である。また、T2からT1までの温度が組成物の消色温度領域となる。図1からもわかるように、本発明による組成物が示す発色・消色現象の特徴は、溶融して発色する温度より低い温度領域に消色温度範囲があり、組成物を常温発色状態からこの範囲に加熱すると消色することである。また、発色と消色の現象は繰り返し生起させ得ることである。なお、図1は本発明の組成物の代表的な発色と消色の仕方を示したものであり、発色開始温度及び消色開始温度は用いる材料の組合わせで異なる。また、溶融して発色している状態の組成物Bの濃度と、その状態から冷却して得た発色状態の組成物Cの濃度は必らずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0009】本発明における熱発色性組成物の可逆性は、基本的に顕色剤と発色剤の組合せだけによって達成されるものである。ここで用いられる顕色剤は、その分子内に顕色能を持つ構造と長鎖の脂肪族基(以下、長鎖構造と言う)を持つものである。可逆的熱発色性組成物では、顕色剤に対し、適当な発色剤の組合せが用いられるが、この組合せは、両者を加熱溶融し急冷して得た発色状態試料を示差走査熱量分析または示差熱分析したとき昇温過程において発熱現象を示すか否かによって選択され、発熱現象を示すものであれば本発明に適用可能なものである。この可逆的熱発色性組成物は、顕色剤と発色剤を混合溶融し発色する温度以上に一時的に加熱し、急冷することにより発色状態をとることができる。この発色状態は、従来の顕色剤と発色剤からなる可逆性のない熱発色性組成物の発色状態とは異なっている。可逆性を示さない組成物では、顕色剤と発色剤が反応した発色体が非晶状態であるのに対し、本発明に用いる可逆性を示す顕色剤、発色剤では、発色体が規則的な凝集構造を作っている。また、発色状態で作る顕色剤と発色剤の間の結合が弱い組成物、たとえば可逆性は示すものの発色状態を室温で安定に保持できない組成物は、やはり非晶状態にあり、本発明に用いる顕色剤と発色剤が形成する発色状態とは異なる。本発明組成物における発色状態の規則的凝集構造の形成は、顕色剤の持つ長鎖構造の凝集力によるものと考えられる。この構造は室温では安定に保たれ、それにより発色状態も安定に保持される。
【0010】本発明に用いる顕色剤と発色剤を規則的凝集構造を持つ発色体とし、これを再び昇温していくと、発色温度より低いある温度ですみやかにその発色体の消色が起きる。この消色は昇温によって発色体の規則的凝集構造が崩壊することによって起きるものである。ここで用いる顕色剤は長鎖構造を持っているため発色体の凝集構造が崩れると顕色剤間の凝集力により、顕色剤が発色体から分離結晶化し、その結果消色状態が形成される。
【0011】以上のように、本発明で用いる長鎖構造を持つ顕色剤と発色剤からなる組成物は、規則的凝集構造を形成することによって発色状態を保持し、その構造が崩壊することによって消色するものである。つまり、この組成物では顕色剤の長鎖構造が発色状態の保持と消色の両方に寄与している。本発明はこのような発色、消色現象を起こす可逆的熱発色性組成物に対して消色促進剤を添加するものである。本発明における消色促進剤の作用の仕方には大きく分けて三つある。まず第1の作用は、長鎖構造を持つ顕色剤と発色剤の組成物を溶融発色状態から急冷することによって形成される規則的な凝集構造を、消色促進剤の添加によって変化させることにより消色を促進させるものである。可逆的熱発色性組成物の消色は、発色状態の規則的凝集構造が崩壊することによってひき起こされるものであるが、この崩壊のしやすさは、顕色剤と発色剤の形成する発色体の間の凝集力と凝集構造の規則性によって変化する。たとえば、凝集力や凝集構造の規則性が低下すると、昇温による構造の崩壊がより低い温度で起きるようになり、消色温度は低温側にシフトする。凝集構造の規則性は、発色状態を作るときの条件、たとえば急冷速度などにより変化するが、より再現性よく一定の発色状態を作るためには、組成物中に他の化合物すなわち消色促進剤を含有させる方法が効果的である。消色促進剤は発色体凝集構造中に微小なドメインを作って存在したり、分子状に分散して入り込むことによって、凝集構造を形成する凝集力を変化させたり、構造の規則性を変化させる。その結果、昇温時に凝集構造の崩壊がすみやかに均一に起こり、消色が促進される。したがって、本発明の可逆的熱発色性組成物のひとつは、組成物中に分子状または微小ドメイン状に分散して存在し、発色体の凝集構造の規則性を低下させ、消色プロセスにおいて凝集構造の崩壊を生じやすい状態にする化合物を消色促進剤として含有するものである。
【0012】消色促進剤の第2の作用は、添加された消色促進剤の溶融によって発色体の凝集構造を崩壊させることによって消色を起こさせるものである。消色促進剤を含有させた場合にも、溶融発色状態からの急冷によって作られる発色体は規則的凝集構造をとっている。添加された消色促進剤は、それ自身で微小なドメインを形成し、発色剤と顕色剤とによって形成される発色体凝集構造の中に分散して存在している。消色促進剤の融点が、これを含まない場合の発色体凝集構造の崩壊する温度すなわち消色温度より低い場合、発色状態を昇温していくと消色促進剤が溶融し、これにより発色体凝集構造の崩壊が誘起され、それにより顕色剤が発色体から分離結晶化して消色状態が形成される。したがって、本発明の可逆的熱発色性組成物のひとつは、組成物中に微小ドメイン状に分散して存在し、消色プロセスにおいて溶融することにより発色体の凝集構造の崩壊を誘起して消色状態を形成させる化合物を消色促進剤として含有するものである。
【0013】以上のメカニズムからわかるように、消色の起こる温度は添加された消色促進剤の融点により制御が可能である。ただし、この融点は消色促進剤が組成物中に存在している状態における融点である。また、消色促進剤は微小なドメインとなって均一に分散しているため、これを含まない場合に比べ消色が均一に高速に行なわれ、消し残りがなく、消色時の濃度が十分に低下する。このような作用は、溶融した消色促進剤の分子により、凝集構造を形成している顕色剤の長鎖構造部分の運動性が高められるため、凝集構造が崩壊しやすくなり、顕色剤の分離結晶化が促進されることによるものと推定される。
【0014】消色促進剤の第3の作用は、発色体の凝集構造が昇温によりある温度で崩壊し顕色剤の分離結晶化が起こる際に、その結晶化の核となって発色体の消色を促進するものである。この場合も添加された消色促進剤は、発色体の規則的凝集構造の中に微小なドメインとなって分散して存在している。その状態での消色促進剤の融点が、これを含まない組成物の消色温度より高い場合には、昇温による顕色剤の分離結晶化の核として作用する。このような消色促進剤が存在すると、顕色剤の分離結晶化はすみやかに進行し、消色は高速に行なわれる。また消色促進剤は微小なドメインとなり均一に分散しているため、顕色剤の分離結晶化も高密度に均一に行なわれ、消し残りがほとんどなくなり、消色時の濃度は添加しない場合よりも十分に低く低下する。したがって、本発明の可逆的熱発色性組成物のひとつは、組成物中に微小ドメイン状に分散し存在し、消色時に発色体の規則的凝集構造が崩壊し、顕色剤が単独結晶を形成する際に、その結晶化の核として作用する化合物を消色促進剤として含有するものである。
【0015】本発明の可逆的熱発色性組成物に含有される消色促進剤は、以上のような三つの作用を単独または複合して生じるものであり、これによって消色を促進させる。特に第1の作用は、一般的な有機化合物を添加すると多くの場合に起こるので、たとえば第2の作用を起こす消色促進剤を加えると、通常、第1の作用も同時に起こり、複合作用して消色を促進する。また第3の作用を起こす消色促進剤を添加しても、同様に第1の作用が起こり、複合して消色を促進する。
【0016】本発明の可逆的熱発色性組成物は、顕色剤と発色剤と消色促進剤とからなるものであるが、ここで言う消色促進とは、具体的には、消色温度の低下、消色状態の濃度の低下、消色の均一性の向上および消色速度の向上などの消色に関する特性の変化を意味する。これらの特性の変化は可逆的熱発色性組成物においては重要なものである。たとえば、消色温度の低下は、消色温度範囲(発色温度と消色温度の差)の拡大をもたらし、これを記録媒体として用いたときの消色装置の温度許容範囲を広げる。また、消色状態の濃度の低下と均一性の向上は、画像記録消去プロセスの高速化にとって不可欠なものである。これらの特性の変化はそれぞれ単独または複合して現われ、可逆的熱発色性組成物の消色特性を向上させる。
【0017】本発明において可逆的熱発色性組成物に添加する消色促進剤は、どのような消色促進作用を起こさせる場合においても、組成物中、特に、発色体の規則的凝集構造の中に微細なドメインとなって均一に分散されていることが好ましい。このような状態は、消色促進剤を含む組成物全体が溶融した状態から急冷したときに得られやすい。したがって消色促進剤は、溶融発色時の温度で溶融するものであることが好ましい。
【0018】消色促進剤の以上のような作用効果は、必らずしも長鎖構造を持つ顕色剤を用いることにより得られる規則的な凝集構造をとる組成物だけではなく、たとえば顕色剤と発色剤の結合自体が弱く、顕色剤が分離結晶化していく組成物に対しても消色を促進する効果を示す。この場合にも消色促進剤は消色のための再加熱により溶融して組成物中の分子運動性を高めたり、顕色剤分離結晶化の核として作用するものと考えられ、このような消色促進剤は、顕色剤と発色剤を用いた可逆的熱発色性組成物に広く応用できる。
【0019】次に具体的に本発明に用いる材料について説明する。本発明の可逆的熱発色性組成物に用いられる顕色剤は、基本的に分子内に発色剤を発色させることができる顕色能を示す構造と、分子間の凝集力をコントロールする長い脂肪族鎖構造部分を合わせ持つ化合物であり、炭素数12以上の脂肪族基を持つ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物あるいはフェノール化合物等である。脂肪族基は、直鎖状または分枝状のアルキル基、アルケニル基が包含され、ハロゲン、アルコキシ基、エステル基等の置換基を持っていてもよい。以下にその顕色剤について具体的に例示す。
【0020】(a)有機リン酸化合物下記一般式(1)で表わされるものが好ましく用いられる。
1−PO(OH)2 (1)
(ただし、R1は炭素数12以上の脂肪族基を表わす)一般式(1)で表わされる有機リン酸化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、ヘキサコシルホスホン酸、オクタコシルホスホン酸等。
【0021】(b)脂肪族カルボン酸化合物下記一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪酸類が好ましく用いられる。
2−CH(OH)−COOH (2)
(ただし、R2は炭素数12以上の脂肪族基を表わす)一般式(2)で表わされるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸化合物としては、たとえば以下のものが挙げられる。α−ヒドロキシドデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等。
【0022】脂肪族カルボン酸化合物としては、ハロゲン元素で置換された炭素数12以上の脂肪族基を持つ脂肪族カルボン酸化合物で、その少なくともα位またはβ位の炭素にハロゲン元素を持つものも好ましく用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモヘプタデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、2−ブロモテトラコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモエイコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸等。
【0023】脂肪族カルボン酸化合物としては、炭素鎖中にオキソ基を持つ炭素数12以上の脂肪族基を有する脂肪族カルボン酸化合物で、その少なくともα位、β位またはγ位の炭素がオキソ基となっているものも好ましく用いられる。このような化合物の具体例としては、たとえば以下のものを挙げることができる。2−オキソドデカン酸、2−オキソテトラデカン酸、2−オキソヘキサデカン酸、2−オキソオクタデカン酸、2−オキソエイコサン酸、2−オキソテトラコサン酸、3−オキソドデカン酸、3−オキソテトラデカン酸、3−オキソヘキサデカン酸、3−オキソオクタデカン酸、3−オキソエイコサン酸、3−オキソテトラコサン酸、4−オキソヘキサデカン酸、4−オキソオクタデカン酸、4−オキソドコサン酸等。
【0024】脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(3)で表わされる二塩基酸も好ましく用いられる。


(ただし、R3は炭素数12以上の脂肪族基を表わし、Xは酸素原子またはイオウ原子を表わし、nは1または2を表わす)一般式(3)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば、以下のものが挙げられる。ドデシルリンゴ酸、テトラデシルリンゴ酸、ヘキサデシルリンゴ酸、オクタデシルリンゴ酸、エイコシルリンゴ酸、ドコシルリンゴ酸、デトラコシルリンゴ酸、ドデシルチオリンゴ酸、テトラデシルチオリンゴ酸、ヘキサデシルチオリンゴ酸、オクタデシルチオリンゴ酸、エイコシルチオリンゴ酸、ドコシルチオリンゴ酸、テトラコシルチオリンゴ酸、ドデシルジチオリンゴ酸、テトラデシルジチオリンゴ酸、ヘキサデシルジチオリンゴ酸、オクタデシルジチオリンゴ酸、エイコシルジチオリンゴ酸、ドコシルジチオリンゴ酸、テトラコシルジチオリンゴ酸等。
【0025】脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(4)で表わされる二塩基酸も好ましく用いられる。


(ただし、R4,R5,R6は水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくともひとつは炭素数12以上の脂肪族基である)一般式(4)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルブタン二酸、トリデシルブタン二酸、テトラデシルブタン二酸、ペンタデシルブタン二酸、オクタデシルブタン二酸、エイコシルブタン二酸、ドコシルブタン二酸、2,3−ジヘキサデシルブタン二酸、2,3−ジオクタデシルブタン二酸、2−メチル−3−ドデシルブタン二酸、2−メチル−3−テトラデシルブタン二酸、2−メチル−3−ヘキサデシルブタン二酸、2−エチル−3−ドデシルブタン二酸、2−プロピル−3−ドデシルブタン二酸、2−オクチル−3−ヘキサデシルブタン二酸、2−テトラデシル−3−オクタデシルブタン二酸等。
【0026】脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(5)で表わされる二塩基酸も好ましく用いられる。


(ただし、R7,R8は水素又は脂肪族基を表わし、このうち少なくとも一つは炭素数12以上の脂肪族基である)一般式(5)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。ドデシルマロン酸、テトラデシルマロン酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、テトラコシルマロン酸、ジドデシルマロン酸、ジテトラデシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジエイコシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、メチルエイコシルマロン酸、メチルドコシルマロン酸、メチルテトラコシルマロン酸、エチルオクタデシルマロン酸、エチルエイコシルマロン酸、エチルドコシルマロン酸、エチルテトラコシルマロン酸等。
【0027】脂肪族カルボン酸化合物としては、下記一般式(6)で表わされる二塩基酸も好ましく用いられる。


(ただし、R9は炭素数12以上の脂肪族基を表わし、nは0または1を表わし、mは1,2または3を表わし、nが0の場合、mは2または3であり、nが1の場合はmは1または2を表わす)一般式(6)で表わされる二塩基酸の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。2−ドデシル−ペンタン二酸、2−ヘキサデシル−ペンタン二酸、2−オクタデシル−ペンタン二酸、2−エイコシル−ペンタン二酸、2−ドコシル−ペンタン二酸、2−ドデシル−ヘキサン二酸、2−ペンタデシル−ヘキサン二酸、2−オクタデシル−ヘキサン二酸、2−エイコシル−ヘキサン二酸、2−ドコシル−ヘキサン二酸等。
【0028】脂肪族カルボン酸化合物としては、長鎖脂肪酸によりアシル化されたクエン酸などの三塩基酸も好ましく用いられる。その具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。


【0029】(c)フェノール化合物下記一般式(7)で表わされる化合物が好ましく用いられる。
【化1】


(ただし、Yは−S−,−O−,−CONH−又は−COO−を表わし、R10は炭素数12以上の脂肪族基を表わし、nは1,2または3の整数である)。一般式(7)で表わされるフェノール化合物の具体例としては、たとえば以下のものが挙げられる。p−(ドデシルチオ)フェノール、p−(テトラデシルチオ)フェノール、p−(ヘキサデシルチオ)フェノール、p−(オクタデシルチオ)フェノール、p−(エイコシルチオ)フェノール、p−(ドコシルチオ)フェノール、p−(テトラコシルチオ)フェノール、p−(ドデシルオキシ)フェノール、p−(テトラデシルオキシ)フェノール、p−(ヘキサデシルオキシ)フェノール、p−(オクタデシルオキシ)フェノール、p−(エイコシルオキシ)フェノール、p−(ドコシルオキシ)フェノール、p−(テトラコシルオキシ)フェノール、p−ドデシルカルバモイルフェノール、p−テトラデシルカルバモイルフェノール、p−ヘキサデシルカルバモイルフェノール、p−オクタデシルカルバモイルフェノール、p−エイコシルカルバモイルフェノール、p−ドコシルカルバモイルフェノール、p−テトラコシルカルバモイルフェノール、没食子酸ヘキサデシルエステル、没食子酸オクタデシルエステル、没食子酸エイコシルエステル、没食子酸ドコシルエステル、没食子酸テトラコシルエステル等。
【0030】(d)有機リン酸化合物下記一般式(8)で表わされるα−ヒドロキシアルキルホスホン酸を好ましく使用することもできる。


(ただし、R11は炭素数11〜29の脂肪族基である)一般式(8)で表わされるα−ヒドロキシアルキルホスホン酸を具体的に示すと、α−ヒドロキシドデシルホスホン酸、α−ヒドロキシテトラデシルホスホン酸、α−ヒドロキシヘキサデシルホスホン酸、α−ヒドロキシオクタデシルホスホン酸、α−ヒドロキシエイコシルホスホン酸、α−ヒドロキシドコシルホスホン酸、α−ヒドロキシテトラコシルホスホン酸等があげられる。
【0031】(e)メルカプト酢酸の金属塩一般式(9)で表わされるアルキル又はアルケニルメルカプト酢酸の金属塩を好ましく用いることもできる。
(R12−S−CH2−COO)2 M (9)
(ただし、R12は炭素数10〜18の脂肪族基を表わし、Mはスズ、マグネシウム、亜鉛又は銅を表わす)一般式(9)で表わされるメルカプト酢酸金属塩の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。デシルメルカプト酢酸スズ塩、ドデシルメルカプト酢酸スズ塩、テトラデシルメルカプト酢酸スズ塩、ヘキサデシルメルカプト酢酸スズ塩、オクタデシルメルカプト酢酸スズ塩、デシルメルカプト酢酸マグネシウム塩、ドデシルメルカプト酢酸マグネシウム塩、テトラデシルメルカプト酢酸マグネシウム塩、ヘキサデシルメルカプト酢酸マグネシウム塩、オクタデシルメルカプト酢酸マグネシウム塩、デシルメルカプト酢酸亜鉛塩、ドデシルメルカプト酢酸亜鉛塩、テトラデシルメルカプト酢酸亜鉛塩、ヘキサデシルメルカプト酢酸亜鉛塩、オクタデシルメルカプト酢酸亜鉛塩、デシルメルカプト酢酸銅塩、ドデシルメルカプト酢酸銅塩、テトラデシルメルカプト酢酸銅塩、ヘキサデシルメルカプト酢酸銅塩、オクタデシルメルカプト酢酸銅塩等。
【0032】本発明の可逆的感熱発色性組成物は、基本的に前記顕色剤に対して発色剤を組合せることによって構成されるものである。本発明で用いる発色剤は電子供与性を示すものであり、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体であり、特に限定されず、従来公知のもの、たとえばトリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物などが用いられる。その発色剤の具体例を以下に示す。
【0033】本発明に用いる好ましい発色剤として下記一般式(10)または(11)の化合物がある。
【化2】


【化3】


(ただし、R3は水素または炭素数1〜4のアルキル基、R4は炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基または置換されていてもよいフェニル基を示す。フェニル基に対する置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基またはハロゲン等が示される。R5は水素、炭素数1〜2のアルキル基、アルコキシ基またはハロゲンを表わす。R6は水素、メチル基、ハロゲンまたは置換されていてもよいアミノ基を表わす。アミノ基に対する置換基としては、例えば、アルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基を示す。ここでの置換基はアルキル基、ハロゲン、アルコキシ基などである)。このような発色剤の具体例としては、たとえば次の化合物が挙げられる。
【0034】2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−メチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、
【0035】2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−ブロモアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロルアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(o−フロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4,−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4,−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチル−アニリノ)フルオラン、2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチル−アニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロルアニリノ)フルオラン、2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロルアニリノ)フルオラン、
【0036】2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロル−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロル−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロル−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロルアニリノ)−3−クロル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロルアニリノ)−3−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−トルイジノ)フルオラン、その他。
【0037】本発明において好ましく用いられる他の発色剤の具体例を示すと以下の通りである。2−アニリノ−3−メチル−6−(N−2−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロルアニリノ)−6−(N−n−オクチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロルアニリノ)−6−(N−n−パルミチルアミノ)フルオラン、2−(p−クロルアニリノ)−6−(ジ−n−オクチルアミノ)フルオラン、2−ベンゾイルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(o−メトキシベンゾイルアミノ)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−メトキシ−6−(N−メチル−P−トルイジノ)フルオラン、2−ベンジルアミノ−4−メチル−6−(N−エチル−P−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(p−トルイジノ)−3−(t−ブチル)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(o−メトキシカルボニルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アセチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフルオルメチルアニリノ)フルオラン、4−メトキシ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−エトキシエチルアミノ−3−クロル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−ジベンジルアミノ−4−クロル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−ベンジル−p−トリフロロメチルアニリノ)−4−クロル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、2−アニリノ−3−クロル−6−ピロリジノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)フルオラン、2−メシジノ−4′,5′−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、2−(α−ナフチルアミノ)−3,4−ベンゾ−4′−ブロモ−6−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、2−ピペリジノ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−n−プロピル−p−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、2−(ジ−N−p−クロルフェニル−メチルアミノ)−6−ピロリジノフルオラン、2−(N−n−プロピル−m−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−n−オクチルアミノ)フルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジアリルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−(N−エトキシエチル−N−エチルアミノ)フルオラン、
【0038】ベンゾロイコメチレンブルー、2−〔3,6−ビス(ジエチルアミノ)〕−6−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム、2−〔3,6−ビス(ジエチルアミノ)〕−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロルフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)フタリド、3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フタリド、3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4−クロル−5−メトキシフェニル)フタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3′)−6′−ジメチルアミノフタリド、6′−クロロ−8′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6′−ブロモ−2′−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、その他。
【0039】本発明の可逆的熱発色性組成物に消色促進剤として添加する低融点化合物または高融点化合物などの添加剤には種々の化合物を用いることができる。その代表的化合物の具体例として次のような化合物が挙げられる。
(1)脂肪酸、脂肪酸誘導体または脂肪酸金属塩脂肪酸には、飽和または不飽和の一塩基酸または二塩基酸などの多塩基酸が包含される。脂肪酸誘導体には、これらの脂肪酸と一価または多価アルコール類とのエステルの他、アミド、アニリド、ヒドラジド、ウレイドあるいは無水物などが含まれる。金属塩は、たとえばこれらの脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、鉄塩、ニッケル塩、銅塩などである。脂肪酸の具体例としてはたとえば、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、ソルビン酸、ステアロール酸などの不帆うわ脂肪酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン酸二酸などの二塩基酸などがある。脂肪酸エステル類としては、たとえば上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、デシルエステル、ドデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル、コレステロールエステルなどがあり、多価アルコールとのエステルとしては、たとえば上記脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなどがある。
【0040】(2)ワックスおよび油脂ワックス類としてはたとえばキャデリンワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろうなどの植物系ワックス、みつろう、鯨ろうなどの動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシンなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラダムなどの石油系ワックスの他、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ワックス、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミドなどの合成ワックスがある。パラフィン類としては、たとえばテトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナンコサン、トリアコンタン、ドトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン、オクタトリアコンタン、テトラコンタンなどのn−アルカンまたはこれらを主成分とするパラフィンがある。油脂としては、たとえば、大豆油、ヤシ油、アマニ油、ラノリン、綿実油、ナタネ油、ヒマシ油、鯨油、牛脂、硬化油などがある。
【0041】(3)高級アルコール類高級アルコール類としては、たとえばトリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ナノデシルアルコール、エイコシルアルコール、フィトール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどがある。
【0042】(4)リン酸エステル類、安息香酸エステル類、フタル酸エステル類、オキシ酸エステル類リン酸エステル類としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシルなどがある。
【0043】安息香酸エステル類としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチルなどがある。フタル酸エステル類としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フチル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジルなどがある。オキシ酸エステル類としてはは、たとえばアセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコーレ、アセチルクエン酸トリブチルなどがある。
【0044】(5)シリコーンオイル本発明において発色剤及び顕色剤とともに消色促進剤として感熱記録層に添加されるシリコンオイルは従来公知のものを使用すれば良い。すなわち、ジメチルシリコンオイル、メチルフェニルシリコンオイル、アルキル変性シリコンオイル、ポリエーテル変成シリコンオイル、アルコール変性シリコンオイル、フッ素変性シリコンオイル、アミノ変成シリコンオイル、エポキシ変性シリコンオイル、カルボキシル変性シリコンオイル、末端反応性シリコンオイル等である。
【0045】(6)液晶化合物液晶化合物としては、従来公告のもの、例えば、ネマティック液晶、コレステリック液晶、スメクティック液晶などが使用できる。さらに具体的には、シッフベース系、アゾ及びアゾキシ系、安息香酸エステル系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、コレステリル系、ターフェニル系化合物などがある。
【0046】(7)界面活性剤界面活性剤としては、従来公知の各種市販品がいずれも使用可能である。例えば、市販のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を1種または2種以上混合して使用することができる。本発明で好ましく使用される界面活性剤を商品名で具体的に例示すると、スパミン(ミヨシ油脂製)、ネオペレックス(花王製)、ペネストロール(東海製油工業製)、リフノン(東邦化学工業製)、ソフタミン(中京油脂製)、ソフテックスKV(花王製)、ライトフィックス(共栄社油脂化学工業製)、エマロックス(吉村油化学製)、ソパノール(ライオン油脂製)、リポミンSA(ライオン油脂製)等がある。
【0047】本発明の可逆的熱発色性組成物に用いる消色促進剤には、前記の例示化合物に限られず多くの化合物が使用でき、たとえば一般に高分子材料の可塑剤として用いられている化合物や結晶化の核剤として用いられている化合物なども用いることができる。核剤としては、たとえば、p−メチルジベンジルデンソルビトール、ジメチルジベンジリデンソルビトール、p−エチルジベンジリデンソルビトール等のジベンジリデンソルビトール類、D−ソルビトールとベンズアルデヒドとの縮合物、高級脂肪酸アミド類等が挙げられる。
【0048】本発明で用いる消色促進剤は、前記した化合物を単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。また、消色促進剤の添加量は、組成物の顕色剤に対して0.5〜50重量%であることが好ましい。これより添加量が少ないと十分な消色促進効果が得られず、これより多いと発色状態の保持特性が悪くなる。本発明の可逆的熱発色性組成物に消色促進剤として添加する化合物は、発色剤と顕色剤とともに溶融状態から急冷したときに形成される発色体中に微小なドメインとなって均一に分散された状態が形成されることが好ましいが、このためには顕色剤と同様の長鎖構造を分子内に持つ化合物を用いることが好ましい。長鎖構造には、たとえば炭素数10以上の飽和炭化水素鎖を含むものが好ましい。
【0049】本発明の可逆的熱発色性組成物を構成する発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の物性によって適切な比率を選択する必要がある。その範囲はおおむね、モル比で発色剤1に対し顕色剤が1から20の範囲であり、好ましくは2から10の範囲である。発色剤と顕色剤の割合によって消色特性は変化し、比較的顕色剤が多い場合には消色開始温度が低くなり、比較的少ない場合には消色が温度に対してシャープになる。したがって、この割合は用途や目的に応じて適当に選択すればよい。
【0050】次に、本発明の可逆的熱発色性組成物を用いた可逆的感熱記録媒体について説明する。なお、本明細書における記録媒体は表示体も包含するものである。本発明の可逆的感熱記録媒体は、前記の可逆的熱発色性組成物を含む記録層を支持体上に設けたものである。記録媒体の基本的構成を図2に示す。図中、1は支持体、2は記録層、3は保護層、4はアンダーコート層を表わす。ここで用いられる支持体としては、たとえば、紙、合成紙、プラスチックフィルムあるいはこれらの複合体、ガラス板などであり、記録層を保持できるものであればよい。記録層は、前記の可逆的熱発色性組成物が存在すれば、どのような態様のものでもよい。通常よく行われるように、層としての形態をとらせるために、必要に応じてバインダー樹脂を用いて顕色剤と発色剤を保持することができる。バインダーとしては、たとえばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、アクリル酸共重合体、マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコールなどがある。顕色剤および発色剤は、マイクロカプセル中に内包して用いることができる。顕色剤、裕発色剤のマイクロカプセル化は、コアセルベーション法、界面重合法、インサイチュ重合法など公知の方法によって行うことができる。記録層の形成は、従来公知の方法に従い、発色剤および顕色剤をバインダーと共に水または有機溶剤により均一に分散もしくは溶解して、これを支持体上に塗布・乾燥することによって行う。またバインダーを用いない場合、顕色剤と発色剤を混合・溶融して膜とし、冷却して記録層とすることができる。記録層のバインダー樹脂の役割は、発色・消色の繰り返しによって可逆的熱発色性組成物を均一に分散させた状態を保持することにある。特に、発色時の熱印加で組成物が集合して不均一化することが多いから、バインダー樹脂は耐熱性の高いものが好ましい。
【0051】本発明の可逆的感熱記録媒体において、その耐光性は、光安定化剤を記録層中に含有させることにより向上させることができる。本発明に使用される光安定化剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、一重項酸素の消光剤、スーパーオキシドアニオンの消光剤等が挙げられる。
【0052】本発明の可逆的熱発色性組成物を含む媒体を用いる可逆的感熱記録方法および表示方法は、前記の可逆的熱発色性組成物を用いた記録媒体又は表示体に対し、記録層又は表示層中の発色剤と顕色剤を一時的に溶融温度以上に加熱することにより発色状態を得る工程と、発色状態の記録層又は表示層を溶融温度以下に加熱することにより消色状態を得る工程からなるものである。
【0053】本発明の記録媒体または表示体に形成される画像には、消色状態の地肌部に対し発色状態の画像を形成したものと、逆に発色状態の地肌部に対し消色状態の画像を形成したものがある。どちらの場合にも画像状に熱を印加するときは、熱ペン、サーマルヘッド、レーザー光加熱など部分的に熱を加えられる手段を用いればよい。また、全面消色あるいは全面発色を行う場合はヒートローラー、全面ヒーターなどに接触させるか、温風を吹き付けるか、加熱された恒温槽内に入れるか、赤外線を照射するなどの方法がある。もちろんサーマルヘッドで全面に熱を加えてもよい。
【0054】
【発明の効果】本発明の可逆的熱発色性組成物によれば、消色促進剤の添加の効果により、消色が均一に高速に行なわれ、消色時の濃度も十分低く低下する。したがって、本発明組成物を用いた記録媒体又は表示媒体は、高品質な画像の形成と消去を繰り返し行なうことができる。また、本発明の可逆的熱発色性組成物によれば、消色温度領域が拡がり、また消色温度を任意に決められるため、画像消去が容易になり、装置の消色構成部の温度制御が容易になる。
【0055】
【実施例】以下、本発明を実施例によって、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の「部」および「%」はいずれも重量を基準とするものである。
【0056】実施例1および比較例1〜4下記表1に示す発色剤、顕色剤、消色促進剤よりなる組成物に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイト社製:VYHH)45部、トルエン200部、メチルエチルケトン200部を加え、ボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散して記録層塗布液を調製した。この塗布液を厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワインーバーを用いて塗布し乾燥して膜厚約6μmの記録層を持つ本発明の記録媒体を作製した。また、同様にして消色促進剤を除いただけの比較用の記録媒体を作製した。これらの記録媒体をホットプレート上で125℃で30秒加熱した後、裏面より0℃に急冷し発色状態を作った。このときの発色濃度をマクベス濃度計RD−918により測定し、初期発色濃度とした。次に、この発色状態の記録媒体を表2に示す消色処理温度に加熱した恒温槽中に20秒間入れて消色させ、取り出して濃度を測定し、消色濃度とした。それぞれの記録媒体の発色濃度と消色濃度を表2に示す。表2の結果より、消色促進剤を含む本発明の記録媒体は、消色促進剤を含まない比較用の記録媒体に比べ消色濃度が低く、消色がより完全に行なわれたことがわかる。
【0057】
【表1−(1)】


【0058】
【表1−(2)】


【0059】
【表2】


【0060】実施例2および比較例5〜9下記表3に示す発色剤、顕色剤、消色促進剤よりなる組成物に塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ユニオンカーバイド社製VYHH)45部、トルエン200部、メチルエチルケトン200部を加え、ボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散して記録層塗布液を調製した。この塗布液を厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布し乾燥して、膜厚約6μmの記録層を持つ本発明の記録媒体を作製した。また同様にして消色促進剤を除いただけの比較用記録媒体を作成した。これらの記録媒体をホットプレート上で125℃で30秒加熱した後、裏面より0℃に急冷して発色状態を作った。このときの発色濃度を実施例1と同様に測定して発色濃度とした。また発色状態の記録媒体を熱傾斜試験機(東洋精機製作所製)を用いて、加熱条件を圧力1kg/cm2、1秒間とし、温度を2℃毎に変化させた発熱体と接触させた後、その部分の濃度を測定し、消色開始温度と発色開始温度を求めた。さらに、発色状態の記録媒体を実施例1と同様に表4に示す消色処理温度で加熱処理し、消色濃度を求めた。表4に各記録媒体の発色濃度、消色開始温度、発色開始温度、消色濃度を示す。これらの結果より、消色促進剤を含む本発明の記録媒体は、消色促進剤を含まない比較用の記録媒体に比べ消色開始温度が低下し、消色温度領域が低温側に広がったことがわかる。また、消色濃度も比較用記録媒体より低く、消色促進剤によって消色がより完全に行なわれたことがわかる。
【0061】
【表3−(1)】


【0062】
【表3−(2)】


【0063】
【表3−(3)】


【0064】
【表3−(4)】


【0065】
【表4−(1)】


【0066】
【表4−(2)】


【0067】
【表4−(3)】


【0068】
【表4−(4)】


【0069】
【表4−(5)】


【0070】実施例3発色剤として3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルフェニル)アミノフルオラン2.8部、顕色剤としてオクタデシルホスホン酸8.5部からなる可逆的熱発色性組成物に対し、下記表5に示す(a)〜(e)の消色促進剤0.85部を添加し十分に粉砕混合して本発明の可逆的熱発色性組成物とした。これらの消色促進剤は、いずれも、表5に示す番号の実施例の記録媒体に用いたものであり、消色促進効果が確認されたものである。これらの組成物及び消色促進剤を添加しないだけの比較用の組成物について、消色温度、発色状態、消色過程の違いを以下のようにして調べた。
【0071】
【表5】


【0072】まず、ガラス板をホットプレート上で170℃に加熱し、その上に各組成物を少量のせて溶融した。融液の上からカバーグラスをかぶせ、融液を均一な厚さに広げた。全体をホットプレートからはずし、直ちに基板ガラス板の裏面を氷水に接触させて融液を急冷して固化させた。
【0073】このようにして得た発色状態の組成物膜を4℃/分の速度で昇温しながら光透過度の変化を測定した。各組成物の結果を図3に示す。光透過度は、各試料の初期発色状態を1として示している。光透過度のカーブが立ち上がる部分が消色である。図3より求めた各組成物の消色開始温度を表5に示す。消色促進剤を含む本発明の組成物は、比較組成物より消色開始温度が低くなる。次に発色状態の各組成物について、その発色状態の凝集構造を調べるため、カバーグラスをはく離し、X線回折(Cu−Kα)を測定した。測定結果を図4に示す。消色促進剤を含まない比較組成物のX線回折には、2.8°と21.6°に発色体の規則的凝集構造に基づく回折ピークが認められる。一方、消色促進剤を含む組成物のX線回折(a)〜(e)は、21.6°のピークは同様であるが低角度側のピークは弱くなり、角度も2.8°から2.6°に変化し、発色状態の規則的凝集構造が変化したことを示している。また、(b)に示す実施例3−2の組成物のX線回折には消色促進剤そのものの結晶のピークが1.9°に認められた。なお、図3及び図4の中に示した(a)〜(e)は、それぞれ、消色促進剤(a)〜(e)を含む組成物(実施例No3−1〜3−5)に対応するものである。
【0074】各組成物の発色状態を光学顕微鏡で観察した。実施例3−1、3−2、3−4の組成物では、発色した膜の中に微細な結晶が散在しているのが観察され、消色促進剤が単独の結晶ドメインを作っていることが確認できた。これらの試料を4℃/分で昇温しながら観察し消色過程の変化を調べた。実施例3−2の組成物では、51〜52℃で初期に散在していた微結晶が消え、これとは別の結晶状の粒子が析出し、同時に消色が起きた。この消色温度は53℃であった。また、実施例3−1の組成物も43℃で微結晶が消え、それと同時に消色が起きた。ここで用いた消色促進剤のステアリルステアレート、ドデシルステアレートは、50℃および40℃付近で溶融するものであることがDSC測定によりわかった。次に、消色過程におけるX線回折の変化を調べるために、各組成物の発色状態の試料の温度をステップ状に昇温しながら測定した。消色促進剤を含ない比較用の組成物では、60℃で発色体の規則的凝集構造を示す回折ピークが消失し、代わってオクタデシルホスホン酸の単独の結晶の回折ピークが現われた(図5)。また、このX線回折の変化と同時に消色が起きるのが観察された。このことから、ここで用いている可逆的熱発色性組成物が、規則的凝集構造を保つことによって発色状態を保持し、昇温によりその構造が崩壊して消色が起きるものであることが確認された。同様の測定を消色促進剤を含有する本発明の他の組成物について調べると、発色状態の規則的凝集構造の崩壊がより低い温度で起こり、やはり消色と対応していることが確認できた。このことから消色促進剤は、発色状態の凝集構造を変化させて、消色が起こりやすくしていることがわかる。消色促進剤を含有する場合のX線回折の変化の例として実施例3−2の場合を図6、実施例3−4の場合を図7に示す。特に図6のステアリルステアレートを添加した場合には、発色状態で存在していたステアリルステアレートの結晶のピーク1.9°が消えると同時に、凝集構造の崩壊、顕色剤の単独結晶の生成が起き、この温度で消色していくことが確認された。
【0075】以上の結果より可逆的熱発色性組成物への消色促進剤の添加は、発色状態における規則的凝集構造を変化させ、これによって凝集構造の崩壊のしやすさが変化し、消色温度を変化させて消色性を向上させることが確認された。また、低融点の消色促進剤では、消色促進剤の溶融によって規則的凝集構造の崩壊を誘起し、消色を促進することが確認された。
【0076】実施例4発色剤として3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン2.7部、顕色剤としてエイコシルチオリンゴ酸10部からなる可逆的熱発色性組成物と、この組成物に消色促進剤としてベヘン酸1部を添加した本発明の組成物について、消色温度、発色状態、消色過程の違いを調べた。この消色促進剤は実施例1−7の記録媒体に用いられたものであり、消色促進効果が確認されたものである。上記二組の組成物について、実施例3と同様にして発色状態の試料を作製して、光透過度の変化を測定し、消色温度を求めた。消色促進剤を含まない場合、消色温度は52℃であり、含む場合は53℃であった。発色状態の組成物についてその凝集構造を調べるため、カバーグラスをはく離してX線回折を測定した。測定結果を図8に示す。消色促進剤を含まない組成物のX線回折(a)と消色促進剤を含む組成物のX線回折(b)にはほとんど違いはなく、発色状態においてはどちらも同様な規則凝集構造を形成していることがわかる。
【0077】次に、消色過程におけるX線回折の変化を調べた。図9に消色促進剤を含まない組成物、図10に消色促進剤を含む組成物の測定結果を示す。前者は40℃までは規則的凝集構造を示す2.2°と21.6°のピークがあり、45℃ではこのピークが消失し代わって顕色剤単独の結晶のピーク2.4°が現われ、この間で発色体の規則的凝集構造が崩壊し、顕色剤が分離結晶化して消色したことがわかる。後者の消色促進剤を含む組成物も45℃から50℃の間で同様の変化を起こして消色したことがわかる。しかし、この組成物の場合には分離結晶化した顕色剤のピーク2.4°、19.9°が消色促進剤を含まない場合より強い。また消色後のX線回折に消色促進剤であるベヘン酸の結晶のピーク21.5°も認められる。これらのことから、この消色促進剤を含む場合には、消色促進剤が結晶化の核となり生成する顕色剤の結晶が消色促進剤を含まない場合より結晶化の進んだ状態となり、消色がより完全に行なわることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆的熱発色性組成物の発色、消色と温度の関係を示す図。
【図2】本発明の可逆的感熱記録媒体の基本的構成を示す図。
【図3】本発明の可逆的感熱記録媒体と比較組成物の光透過度と温度との関係を示す図。
【図4】本発明の可逆的感熱記録媒体と比較組成物の発色状態の凝集構造を示すX線回折図。
【図5】消色促進剤を含まない比較組成物の消色過程のX線回折の変化を示す図。
【図6】本発明の可逆的熱発色性組成物の消色過程のX線回折の変化を示す図。
【図7】本発明の可逆的熱発色性組成物の消色過程のX線回折の変化を示す図。
【図8】本発明の可逆的熱発色性組成物と比較組成物の発色状態の凝集構造を示す図。
【図9】消色促進剤を含まない比較組成物の消色過程のX線回折の変化を示す図。
【図10】本発明の可逆的熱発色性組成物の消色過程のX線回折の変化を示す図。
【符号の説明】
1 支持体
2 記録層
3 保護層
4 アンダーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、組成物中に分子状又は微小ドメイン状に分散して存在し、かつ発色体の凝集構造の規則性を低下させるものであることを特徴とする可逆的熱発色性組成物。
【請求項2】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤とからなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、組成物中に微小ドメイン状に分散して存在し、前記再加熱時において溶融し、発色体の凝集構造の崩壊を誘起させるものであることを特徴とする可逆的熱発色性組成物。
【請求項3】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤は、組成物中に微小ドメイン状に分散して存在し、前記再加熱時において発色体の規則的凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し結晶を形成する際の結晶化の核として作用するものであることを特徴とする可逆的熱発色性組成物。
【請求項4】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物と消色促進剤からなる組成物で、該組成物をその溶融温度以上に一時的に加熱することによって電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物の反応物である発色体の規則的な凝集構造を形成し、溶融発色温度より低い温度への再加熱によってこの規則的な凝集構造が崩壊して電子受容性化合物が発色体から分離し、結晶化する可逆的熱発色性組成物において、該消色促進剤が下記(a)〜(h)の化合物群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする可逆的熱発色性組成物。
(a)脂肪酸、脂肪酸誘導体又は脂肪酸金属塩(b)ワックスまたは油脂(c)高級アルコール(d)リン酸エステル類、安息香酸エステル類、フタル酸エルテル類又はオキシ酸エステル類(e)シリコーンオイル(f)液晶性化合物(g)界面活性剤(h)炭素数10以上の脂肪酸飽和炭化水素
【請求項5】 消色促進剤の添加量が、電子受容性化合物に対して0.5〜50重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの可逆的熱発色組成物。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの可逆的熱発色性組生物を記録層又は表示層中に含有することを特徴とする記録媒体及び表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平5−294063
【公開日】平成5年(1993)11月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−193310
【出願日】平成4年(1992)6月26日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)