説明

合成ガスの製造方法及びシステム

【課題】エネルギー消費の少ない、効率的、経済的な合成ガスの製造法を提供すること。
【解決手段】(a)炭素質流(3)及び酸素含有流(4)をガス化反応器(2)中に噴射する工程、(b)ガス化反応器(2)中で炭素質流(3)を少なくとも部分的に酸化して、粗合成ガスを得る工程、(c)工程(b)で得られた粗合成ガスをガス化反応器から取出して急冷部(6)に導入する工程、及び(d)急冷部(6)に液体、好ましくは水を霧状に噴射する工程を少なくとも含む、酸素含有流(4)を用いて炭素質流(3)からCO、CO及びHを含む合成ガスを製造する方法、及びこの方法を実施するためのシステム(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素含有流を用いて炭素質流からCO、CO及びHを含む合成ガスを製造する方法に関する。また本発明は、この方法を実施するための改良ガス化反応器にも向けたものである。また本発明は、この方法を実施するためのガス化システムにも向けたものである。
【背景技術】
【0002】
合成ガスの製造方法は従来より周知である。合成ガス製造方法の一例は、EP−A−0400740に記載されている。一般に、石炭、褐炭、ピート、木材、コークス、煤、又はその他、ガス状、液体又は固体燃料又はその混合物のような炭素質流を、ほぼ純粋な酸素、(任意に酸素富化した)空気等の酸素含有ガスを用いてガス化反応器中で部分燃焼させ、これにより合成ガス(CO及びH)、CO及びスラグ、その他を得ている。部分酸化中生成するスラグは降下し、反応器底部又はその近くに配置された出口から排出される。
【0003】
熱生成物ガス、即ち、粗合成ガスは、通常、粘着な粒子を含み、この粘着性は冷却によりなくなる。粗合成ガス中の粘着粒子は、更に処理する場合、ガス化反応器の下流で問題を起こす恐れがある。これは、例えば粘着粒子が壁、バルブ又は出口に堆積して、プロセスに悪影響を与える可能性があり、望ましくないからである。しかもこのような堆積は除去困難である。
【0004】
したがって、粗合成ガスはガス化反応器の下流に配置された急冷部で急冷される。急冷部では粗合成ガスの冷却のため、水蒸気のような好適な急冷媒体が粗合成ガス中に導入される。
【0005】
合成ガスの製造上の問題は、極めてエネルギーを消費する方法である。したがって、方法の効率を向上しながら、同時に必要な資金投資を最小限にする必要性が常に存在する。
【特許文献1】EP−A−0400740
【特許文献2】WO−A−2004/005438
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記課題を少なくとも最小限にすることである。
本発明の別の目的は、合成ガスの代替製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的又は他の目的の一つ以上は本発明に従って、以下の方法を提供することにより達成できる。この方法は、
(a)炭素質流及び酸素含有流をガス化反応器中に噴射する工程、
(b)ガス化反応器中で炭素質流を少なくとも部分的に酸化して、粗合成ガスを得る工程、
(c)工程(b)で得られた粗合成ガスをガス化反応器から取出して急冷部に導入する工程、及び
(d)急冷部に液体を霧状に噴射する工程、
を少なくとも含む、酸素含有流を用いて炭素質流からCO、CO及びHを含む合成ガスを製造する方法である。
【0008】
液体、好ましくは水を霧状で噴射すると、この方法が一層効率的に行なえることが意外にも見出された。
更に、粗合成ガスが極めて効率的に冷却され、その結果、粘着粒子の堆積が少なくなることが見出された。
【0009】
この液体は、霧化するのに好適な粘度を有するいかなる液体であってもよい。噴射すべき液体の非限定的な例は、炭化水素液、廃棄流等である。好ましくは液体は、水を50%以上含有する。最も好ましくは液体は、ほぼ水で構成される(即ち、>95容量%)。好ましい実施態様では、可能な下流の合成ガススクラバーで得られる黒い水とも呼ばれる廃棄水が液体として使用される。
【0010】
当業者は、用語“炭素質流”、“酸素含有流”、“ガス化反応器”及び“急冷部”の意味を容易に理解する。したがって、これらの用語は更に説明しない。本発明では炭素質流として、好ましくは固体の炭素含有量の多い原料が使用され、更に好ましくはこの原料は天然又は合成の石炭又は合成コークスでほぼ(即ち、>90重量%)構成される。
【0011】
用語“粗(raw)合成ガス”とは、この生成物流が更に例えば乾燥固体除去器、湿潤ガススクラバー、シフト転化器等で更に処理してよいこと、通常は更に処理されることを意味する。
【0012】
用語“霧”とは、液体が小液滴で噴射されることを意味する。液体は少量の蒸気を含有してよい。液体として水を使用する場合、この水の好ましくは80%を超える量、更に好ましくは90%を超える量は液状である。
【0013】
噴射された霧は、一般に通用されている圧力条件下、噴射点で泡立ち点より最大で50℃低い温度、特に最大で15℃低い温度、なお更に好ましくは泡立ち点より最大で10℃低い温度を有する。この目的のため、噴射された液体が水ならば、この霧は90℃を超える温度、好ましくは150℃を超える温度、更に好ましくは200〜230℃の温度を有する。この温度は、明らかにガス化反応器の操作圧力、即ち、以下に特定する粗合成ガスの圧力に依存する。これにより噴射された霧は迅速に気化し、コールドスポットは回避される。その結果、ガス化反応器中の塩化アンモニウムの堆積や局所的吸灰の危険は低下する。
【0014】
霧は、直径50〜200μm、好ましくは100〜150μmの液滴を含むことが更に好ましい。噴射された液体の80容量%以上は、前記大きさの液滴の形態であることが好ましい。
粗合成ガスの急冷を促進するため、霧は30〜90m/s、好ましくは40〜60m/sの速度で噴射することが好ましい。
【0015】
また、霧は粗合成ガスの圧力よりも10バール以上高い、好ましくは20〜60バール高い、更に好ましくは約40バール高い噴射圧力で噴射することが好ましい。霧を粗合成ガスの圧力よりも10バール未満低い噴射圧力で噴射すると、霧は大きすぎる液滴になる可能性がある。このような大液滴化は、霧化用ガス(例えばN、CO、水蒸気又は合成ガスであってよい)を用いて少なくとも部分的に避けることができる。霧化用ガスを用いると、噴霧圧と粗合成ガスの圧力との差を少なくできるという別の利点がある。
【0016】
特に好ましい実施態様では、霧の噴射量は、急冷部を出る粗合成ガスがHOを40容量%以上、好ましくは40〜60容量%、更に好ましくは45〜55容量%含有するように選択される。
【0017】
他の好ましい一実施態様では、粗合成ガスに対する水の添加量は、いわゆる過急冷を行なうために選択する場合、以上の好ましい範囲よりも更に多い。過急冷型方法では水の添加量は、液体水が全て蒸発するのではなく、液体水が冷却された粗合成ガス中に残存するような量である。このような方法は、下流の乾燥固体除去システムを省略できるので有利である。このような方法ではガス化反応器を出る粗合成ガスは、水で飽和される。粗合成ガスと水噴射量との比率は、1:1〜1:4が可能である。
【0018】
こうしてガス化反応器の下流では更に水を添加する必要がないので、更に霧をガス化反応器とは離れた方向に噴射するか、或いは霧を粗合成ガスの流れ方向に噴射すると、特に好適であることが見出された。これにより、急冷部の壁上に局部的沈着が生じる恐れのあるデッドスペースがなくなるか、又は少なくなる。霧は急冷部の縦軸に垂直な面に対し、好ましくは30〜60°、更に好ましくは約45°の角度で噴射される。
【0019】
更に好ましい実施態様では、噴射された霧は、少なくとも部分的に遮蔽用流体で包囲される。遮蔽用流体は、好適ないかなる流体であってもよいが、好ましくはN、CO、合成ガス、水蒸気及びそれらの組合わせのような不活性ガスよりなる群から選ばれる。
【0020】
本発明方法では急冷部を出るガスは、通常、シフト転化される。これにより水の少なくとも1部はCOと反応して、CO及びHを生成し、シフト転化合成ガス流が得られる。当業者はシフト転化器の意味を理解しているので、これについては更に検討しない。粗合成ガスは、シフト転化する前に、熱交換器中でシフト転化した合成ガス流により加熱することが好ましい。これにより本発明方法のエネルギー消費は更に減少する。これに関連して、霧は工程(d)において噴射する前に、間接熱交換器中、シフト転化合成ガス流で加熱することが好ましい。
【0021】
他の一面では本発明は、本発明方法を実施するのに好適なシステムを提供する。このシステムは、
・酸素含有流入口、炭素質流入口、及びガス化反応器の下流にある粗合成ガス出口であって該粗合成ガスはガス化反応器で製造される該粗合成ガス出口を備えた該ガス化反応器;
・ガス化反応器の粗合成ガス出口に接続した急冷部;
を少なくとも備え、該急冷部は、液体、好ましくは水を急冷部中に霧状に噴射するのに適合した少なくとも1つの第一噴射器を備える、CO、CO及びHを含む合成ガスの製造システムである。
当業者は、所望の霧を得るため、第一噴射器をどのようにして選択するか容易に理解している。2つ以上の第一噴射器が存在してもよい。
【0022】
第一噴射器は、使用時、ガス化反応器から離れた方向、通常は部分的上向き方向に噴射することが好ましい。この目的のため、第一噴射器で噴射する霧の中心線は、急冷部の縦軸に垂直な面に対し30〜60°、好ましくは約45°の角度を形成する。
【0023】
更に急冷部は、少なくとも1つの第一噴射器で噴射した霧を少なくとも部分的に包囲する遮蔽用流体を噴射するのに適合した第二噴射器を備えることが好ましい。この場合、当業者は、所望の効果が得られるよう、第二噴射器をどのように適合させるか容易に理解している。例えば第一噴射器のノズルを第二噴射器のノズルで部分的に包囲してよい。
【0024】
ガス化反応器で生成した粗合成ガスは、急冷部で冷却されるので、液体霧が噴射される急冷部は、ガス化反応器の下流にある場合、ガス化反応器の上方、下方又は隣に配置してよい。好ましくは急冷部は、ガス化反応器の上方に配置される。この目的のため、ガス化反応器の出口は、ガス化反応器の頂部に設けられる。
【0025】
好ましい実施態様では粗合成ガスは、本発明に従って液体を霧状に噴射する前に、非ガス状成分の固化温度よりも低い温度に冷却される。粗合成ガス中の非ガス状成分の固化温度は、炭素質供給原料に依存し、石炭型供給原料では、通常、600〜1200℃、更に特に500〜1000℃である。このような初期冷却は、粗合成ガスよりも低温の合成ガス、二酸化炭素又は水蒸気を噴射するか、或いは本発明に従って液体を霧状に噴射して行なってよい。このような2段階冷却法では工程(b)は下流の別の装置又は更に好ましくはガス化を行なうのと同じ装置内で行なってよい。図3は、第一及び第二の噴射を同じ圧力外殻で行なえる好ましいガス化反応器を示す。図4は、第二噴射を別の急冷容器で行なえる好ましい実施態様を示す。
【0026】
本発明は以下に説明するような本発明方法を実施するのに適した新規なガス化反応器にも向けたものである。このガス化反応器は、
・大気圧よりも高圧に維持するための圧力外殻;
・該圧力外殻の下部に配置されたスラグ浴;
・操作中、合成ガスを形成できるガス化室を画定する圧力外殻内に配置されたガス化器壁であって、ガス化器壁の開放下部はスラグ浴と流通可能であり、ガス化器壁の開放上端は急冷帯と流通可能である該ガス化器壁;
・圧力外殻内に管状形成部を配置してなる急冷帯であって、該管状形成部は、上端及び下端が開放され、かつ圧力外殻よりも小径で、これにより該管状部の周囲に環状空間を画定し、該開放下端は、ガス化器壁の上端に流通可能に接続し、該開放上端は、環状空間と流通可能に接続した該急冷帯;
を備えたガス化反応器であって、該管状部の下端には液体又はガス状の冷却媒体を噴射するための噴射手段が存在し、該環状空間には、液体を霧状に噴射するための噴射手段が存在すると共に、環状空間と流通可能に接続した圧力外殻の壁には、合成ガス出口が存在する。
【0027】
本発明はガス化反応器及び急冷容器を備えた、本発明方法を実施するのに適した新規なガス化システムにも向けたものである。このガス化システムは、ガス化反応器と急冷容器とを備えたガス化システムであって、該ガス化反応器は、
・大気圧よりも高圧に維持するための圧力外殻;
・該圧力外殻の下部に配置されたスラグ浴;
・操作中、合成ガスを形成できるガス化室を画定する圧力外殻内に配置されたガス化器壁であって、ガス化器壁の開放下部はスラグ浴と流通可能であり、ガス化器壁の開放上端は、垂直に延びる管状部と流通可能であり、該管状部は、上端及び下端が開放され、該上端は、急冷容器の合成ガス用入口と流通可能であり、該下端は液体又はガス状の冷却媒体を添加するための手段を備えた該ガス化器壁;
を備え、急冷容器は、頂端に合成ガス入口、合成ガス中に液体を霧状に噴射するための噴射手段、及び合成ガス出口を備える。
【0028】
以下に非限定的な添付図面を参照して、本発明を例示により更に詳細に説明する。
図1は、本発明方法を実施するための工程図である。
図2は、本発明のシステムに使用されるガス化反応器の概略縦断面図である。
図3は、本発明の好ましいシステムに使用できる好ましいガス化反応器の概略縦断面図である。
図4は、下流の別の装置を利用して2段階冷却法を実施するためのガス化反応器システムの概略図である。
【0029】
以下に使用した同じ参照番号は、同様な構造部品を示す。
図1を参照すると、図1は、合成ガスの製造システム1を概略的に示す。ガス化反応器2において、炭素質供給原料及び酸素含有流は、それぞれライン3、4経由で供給できる。
【0030】
炭素質流は、ガス化反応器2中で少なくとも部分的に酸化され、粗合成ガス及びスラグが得られる。この目的のため、ガス化反応器2には、通常、数個のバーナー(図示せず)が存在する。通常、ガス化での部分酸化は、1200〜1800℃の範囲の温度、及び1〜200バール、好ましくは20〜100バールの範囲の圧力で行なわれる。
【0031】
生成した粗合成ガスは、ライン5経由で急冷部6に供給され、ここで粗合成ガスは、通常、約400℃に冷却される。スラグは降下して、任意の更なる処理のため、ライン7経由で排出される。
急冷部6は、いかなる好適な形状であってもよいが、通常は管状である。更に以下、図2で説明するように、急冷部6にはライン17経由で液体水が霧状に噴射される。
【0032】
急冷部6への霧の噴射量は、急冷部6を出る粗合成ガスの所望温度等に依存する。本発明の好ましい実施態様では、霧の噴射量は、急冷部6を出る粗合成ガスのHO含有量が45〜55容量%になるように選択される。
【0033】
図1の実施態様に示すように、急冷部6を出る粗合成ガスは更に処理される。この目的で、粗合成ガス中の乾燥灰分を少なくとも部分的に除去するため、粗合成ガスは乾燥固体除去ユニット9内に供給される。乾燥固体除去ユニット9自体は公知なので、ここでは更に説明しない。乾燥灰分は乾燥固体除去ユニット9からライン18経由で除去される。
【0034】
乾燥固体除去ユニット9を通過後、粗合成ガスは、ライン10経由で湿潤ガススクラバー11に、次いでライン12経由でシフト転化器13に供給してよく、ここで水の少なくとも一部はCOと反応して、CO及びHを生成し、これによりライン14中にシフト転化ガス流が得られる。湿潤ガススクラバー11もシフト転化器13もそれ自体公知なので、ここでは更に詳細に説明しない。ガススクラバー11からの廃水は、ライン22経由で除去され、任意に一部はライン23経由でガススクラバー11に再循環される。
【0035】
本発明によれば、急冷部6を出てライン8中に入る流れの水量(容量%)は、既に湿潤ガススクラバー11の能力が実質的に低下し、資金出費が著しく減少し得るような量になることが意外にも見出された。
ライン12内の粗合成ガスが熱交換器15中で、シフト転化器13から出てくるライン14中のシフト転化合成ガスにより(against)加熱される際、更なる改良が達成される。
【0036】
更に本発明によれば、熱交換器15を出るライン16の流れに含まれるエネルギーは、急冷部6に噴射されるライン17内の水を暖機するのに使用される。この目的でライン16内の流れは、ライン17内の流れと間接熱交換するため、間接熱交換器19に供給してよい。
図1の実施態様に示すように、ライン14内の流れは、まず熱交換器15に供給されてから、ライン16経由で間接熱交換器19に入る。しかし、当業者ならば、所望に応じて熱交換器15はなくてもよいし、或いはライン14内の流れは、まず間接熱交換器19に供給してから、熱交換器19で熱交換することは容易に理解する。
【0037】
熱交換器19を出てライン20に入る流れは、所望ならば、更に熱回収及びガス処理のため、更に処理してよい。
所望ならば、ライン17内の加熱流もガススクラバー11への供給物(ライン21)として部分的に使用してもよい。
図2は、図1のシステム1で使用されるガス化反応器2の縦断面図である。
ガス化反応器2は、炭素質流入口3及び酸素含有ガス入口4を備える。
【0038】
通常、部分酸化反応を行なうガス化反応器2には、数個のバーナー(26で図示)が存在する。しかし簡略化のため、ここでは2個のバーナー26だけを示す。
更にガス化反応器2は、部分酸化反応中、形成されたスラグをライン7経由で除去するための出口25を備える。
【0039】
またガス化反応器2は、生成した粗合成ガス用の出口27を備え、この出口27は急冷部6と接続している。当業者ならば、出口27と急冷部6との間には(図1のライン5で示すような)若干の配管が存在してよいことは容易に理解する。しかし、通常、急冷部6は、図2で示すように、ガス化反応器2に直接接続している。
【0040】
急冷部6は、水含有流を急冷部内に霧状に噴射するのに適合した第一噴射器28(ライン17に接続)を備える。
【0041】
図2に示すように、使用時の第一噴射器は、ガス化反応器2の出口27から離れた方向に霧を噴射する。この目的のため、第一噴射器28で噴射される霧の中心線Xは、急冷部6の縦軸B−Bに垂直な面A−Aに対し30〜60°、好ましくは約45°の角度αを形成する。
【0042】
また急冷部6は、少なくとも1つの第一噴射器28により噴射された霧を少なくとも部分的に包囲する遮蔽液を噴射するのに適合した第二噴射器29(ライン30経由で遮蔽ガス供給源に接続)を備える。図2の実施態様に示すように、第一噴射器28は、この目的のため、部分的に第二噴射器29に囲まれている。
前述の図1について既に説明したように、ライン8経由で急冷部6を出る粗合成ガスは、更に処理してよい。
【0043】
図3は、以下の構成要素を備えた好ましいガス化反応器を示す。
・大気圧よりも高圧に維持するための圧力外殻(31);
・該圧力外殻(31)の下部に配置されたスラグ除去用出口(25)であって、好ましくはいわゆるスラグ浴によりスラグを除去するための出口(25);
・操作中、合成ガスが形成できるガス化室(33)を画定する圧力外殻(31)内に配置されたガス化器壁(32)であって、ガス化器壁(32)の開放下部はスラグ除去用出口(25)と流通可能である。ガス化器壁(32)の開放上端(34)は急冷帯(35)と流通可能である。;
・圧力外殻(31)内に管状形成部(36)を配置してなる急冷帯(35)であって、該管状形成部(36)は上端及び下端が開放され、かつ圧力外殻(31)よりも小径で、これにより該管状部(36)の周囲に環状空間(37)を画定する。該管状形成部(36)の開放下端は、ガス化器壁(32)の上端に流通可能に接続している。該管状形成部(36)の開放上端は、偏向(逸らせ)空間(38)により環状空間(37)と流通可能である。
【0044】
前記管状部(36)の下端には液体又はガス状の冷却媒体を噴射するための噴射手段(39)が存在する。この噴射方向は、好ましくは図2で説明した噴射方向の場合と同様である。環状空間(37)には、合成ガスが環状空間(37)を流通する際、合成ガス中に液体を霧状に、好ましくは霧を下向き方向に噴射するための噴射手段(40)が存在する。図3は更に前記環状空間(37)の下端に流通可能に接続した圧力外殻(31)の壁に存在する合成ガス出口(41)を示す。急冷帯は、好ましくは清浄手段(42)及び/又は(43)を備える。これらの手段は、機械的叩き(rapper)機が好ましく、振動により管状部及び/又は環状空間の表面上に堆積する固体をそれぞれ防止及び/又は除去する。
【0045】
図3の反応器による利点は、簡単な設計を組合わせ、コンパクトにしたことである。環状空間中で霧状の液体で冷却することにより、反応器を一層簡略化する反応器の前記部分で別途の冷却手段を省略できる。好ましくは噴射器(39)及び噴射器(40)の両方を経由する液体、好ましくは水は、本発明方法に従って霧状に噴射される。
【0046】
図4は、別の装置を利用する2段階冷却法を実施するための実施態様である。図4は、移送ダクト(45)により流通可能に接続された下流急冷容器(44)と組合わせたWO−A−2004/005438の図1のガス化反応器(43)を示す。図4のシステムは、WO−A−2004/005438の図1に示されたシステムとは、前記図1の合成ガス冷却器3を省略すると共に、液体冷却媒体添加手段(46)を有する簡単な容器と置換えた点で異なる。図4に示すガス化器壁(47)は、管状部(51)に接続され、次に急冷容器(44)に存在するような上壁部(52)に接続されている。管状部(51)の下端には、液体又はガス状の冷却媒体を噴射するための噴射手段(48)が存在する。急冷容器(44)は、更に冷却合成ガス用出口(49)を備える。また図4ではバーナー(50)を示している。バーナーの配置構成は、好適にはEP−A−0400740に記載したとおりでよい(この文献はここに援用する)。ガス化反応器(43)、移送ダクト(45)及び急冷容器(44)の上部デザイン等、各種の他の詳細は、好ましくはWO−A−2004/005438の図1の装置に示すとおりである。
【0047】
図4の実施態様は、従来の技術文献に記載の合成ガス冷却器を急冷容器(44)と置換えて、現存のガス化反応器を改造する場合、或いは従来技術の実際のガス化反応器を維持しながら、本発明法を採用したい場合、好ましい。
当業者は、特許請求の範囲で定義した範囲を逸脱することなく、本発明を変形できることを容易に理解している。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明方法を実施するための工程図である。
【図2】本発明のシステムに使用されるガス化反応器の概略縦断面図である。
【図3】本発明の好ましいシステムに使用できる好ましいガス化反応器の概略縦断面図である。
【図4】下流の別の装置を利用して2段階冷却法を実施するためのガス化反応器システムの概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1 合成ガスの製造システム
2 ガス化反応器
3 炭素質供給原料又は炭素質流
4 酸素含有流
6 急冷部
9 乾燥固体除去ユニット
11 ガススクラバー
13 シフト転化器
15 熱交換器
19 間接熱交換器
25 スラグ浴によるスラグ除去用出口
26 バーナー
27 粗合成ガス出口
28 第一噴射器(液体用)
29 第二噴射器(遮蔽流体用)
31 圧力外殻
33 ガス化室
35 急冷帯
36 管状形成部又は管状部
37 環状空間
39 噴射手段(液体又はガス冷却媒体用)
40 噴射手段(液体用)
41 合成ガス出口
43 ガス化反応器
44 下流急冷容器
45 移送ダクト
46 液体冷却媒体添加手段
48 噴射手段(液体又はガス冷却媒体用)
49 冷却合成ガス用出口
50 バーナー
51 管状部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素質流及び酸素含有流をガス化反応器中に噴射する工程、
(b)ガス化反応器中で炭素質流を少なくとも部分的に酸化して、粗合成ガスを得る工程、
(c)工程(b)で得られた粗合成ガスをガス化反応器から取出して急冷部に導入する工程、及び
(d)急冷部に液体を霧状に噴射する工程、
を少なくとも含む、酸素含有流を用いて炭素質流からCO、CO及びHを含む合成ガスを製造する方法。
【請求項2】
工程(d)で噴射される液体が水である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
噴射された液体の温度が150℃を超える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
噴射された液体の温度が、粗合成ガスの圧力下での液体の泡立ち点よりも最大で50℃低い請求項3に記載の方法。
【請求項5】
霧が、直径50〜200μmの液滴を含む請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
霧が、30〜100m/sの速度で噴射される請求項1〜5のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項7】
霧が、40〜60m/sの速度で噴射される請求項1〜6のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項8】
霧が、粗合成ガスの圧力よりも20〜60バール高い噴射圧力で噴射される請求項1〜7のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項9】
前記霧の噴射量は、急冷部を出る粗合成ガスがHOを40容量%以上、好ましくは40〜60容量%、更に好ましくは45〜55容量%含有するように選択される請求項1〜8のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項10】
霧が、ガス化器から離れた方向に噴射される請求項1〜9のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項11】
霧が、急冷部の縦軸に垂直な面に対し30〜60°の角度で噴射される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
噴射された霧が、遮蔽用流体により少なくとも部分的に包囲される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
遮蔽用流体が、N、CO、合成ガス、水蒸気及びそれらの組合わせのような不活性ガスよりなる群から選ばれる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)を行なう前に粗合成ガス中に低温の液体又はガスを噴射することにより、粗合成ガスがまず、粗合成ガス中の非ガス状成分の固化温度よりも低い温度に冷却される請求項1〜13のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項15】
水液体を霧状に噴射することにより、粗合成ガスがまず、粗合成ガス中の非ガス状成分の固化温度よりも低い温度に冷却される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
低温の液体又はガスを噴射することにより、粗合成ガスの上昇流がまず、前記非ガス状成分の固化温度よりも低い温度に冷却され、該上昇流は、合成ガス下降流への前記噴射に比べて、更に高い位置で偏向され、かつ工程(d)での液体の噴射は、合成ガスの下降流中に行なわれる請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
・大気圧よりも高圧に維持するための圧力外殻;
・該圧力外殻の下部に配置されたスラグ浴;
・操作中、合成ガスを形成できるガス化室を画定する圧力外殻内に配置されたガス化器壁であって、ガス化器壁の開放下部はスラグ浴と流通可能であり、ガス化器壁の開放上端は急冷帯と流通可能である該ガス化器壁;
・圧力外殻内に管状形成部を配置してなる急冷帯であって、該管状形成部は、上端及び下端が開放され、かつ圧力外殻よりも小径で、これにより該管状部の周囲に環状空間を画定し、該開放下端は、ガス化器壁の上端に流通可能に接続し、該開放上端は、環状空間と流通可能に接続した該急冷帯;
を備えたガス化反応器であって、該管状部の下端には液体又はガス状の冷却媒体を噴射するための噴射手段が存在し、該環状空間には、液体を霧状に噴射するための噴射手段が存在すると共に、環状空間と流通可能に接続した圧力外殻の壁には、合成ガス出口が存在する該ガス化反応器。
【請求項18】
ガス化反応器と急冷容器とを備えたガス化システムであって、ガス化反応器は、
・大気圧よりも高圧に維持するための圧力外殻;
・該圧力外殻の下部に配置されたスラグ浴;
・操作中、合成ガスを形成できるガス化室を画定する圧力外殻内に配置されたガス化器壁であって、ガス化器壁の開放下部は、スラグ浴と流通可能であり、ガス化器壁の開放上端は、垂直に延びる管状部と流通可能であって、該管状部は、上端及び下端が開放され、該上端は、急冷容器の合成ガス入口と流通可能であり、該下端には液体又はガス状の冷却媒体を添加するための手段を備えた該ガス化器壁;
を備え、該急冷容器は、頂端に合成ガス入口、合成ガス中に液体を霧状に噴射するための噴射手段、及び合成ガス出口を備えた該ガス化システム。
【請求項19】
請求項17に記載のガス化反応器で行なわれる請求項16に記載の方法。
【請求項20】
請求項18に記載のガス化システムで行なわれる請求項16に記載の方法。
【請求項21】
急冷部を出る粗合成ガスが、シフト転化され、これにより前記水の少なくとも一部がCOと反応して、CO及びHを生成し、こうしてシフト転化合成ガス流が得られる請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
粗合成ガスのシフト転化前に粗合成ガスが熱交換器中でシフト転化合成ガス流に対して加熱される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
霧が、工程(d)において噴射する前に、間接熱交換器によりシフト転化合成ガス流に対して加熱される請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
・酸素含有流入口、炭素質流入口、及びガス化反応器の下流にある粗合成ガス出口であって該粗合成ガスはガス化反応器で製造される該粗合成ガス出口を備えた該ガス化反応器;
・ガス化反応器の粗合成ガス出口に接続した急冷部;
を少なくとも備え、該急冷部は、液体、好ましくは水を急冷部中に霧状に噴射するのに適合した少なくとも1つの第一噴射器を備える、CO、CO及びHを含む合成ガスの製造システム。
【請求項25】
第一噴射器は、使用中、ガス化反応器とは離れた方向に霧を噴射する請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
急冷部が、前記少なくとも1つの第一噴射器で噴射された霧を少なくとも部分的に包囲する遮蔽用流体を噴射するのに適合した第二噴射器を備える請求項24又は25に記載のシステム。
【請求項27】
ガス化反応器中の粗合成ガスの出口とは別の出口に配置されたスラグ浴を備える請求項24〜26のいずれか1項に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−540717(P2008−540717A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509425(P2008−509425)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/061951
【国際公開番号】WO2006/117355
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP