説明

合成繊維用処理剤

【課題】 高活性の新規触媒を用いて反応させて得られてなるエステル化合物を使用することにより、従来の処理剤に比べ製造コストが低く、かつ生産性および品質の安定した糸を得ることができる処理剤を提供する。
【解決手段】 カルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを、下記一般式(1)で表される有機金属化合物を触媒として、反応させて得られてなるエステル化合物(A)と、乳化剤成分(B)および湿潤成分(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】


[式中、Lはハロゲン原子、R1−、R1O−、R1S−で表される1価の有機基;JはR2OCO−、R2COO−で表される1価の有機基(但し、R1,R2はその水素原子がハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基でありR1と同じでもよい);n=2〜3、m=1〜2であり、n+m=4;M=チタン原子もしくはジルコニウム原子]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤に関する。更に詳しくは、合成繊維の紡糸工程において使用される合成繊維用処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維製造工程においては、繊維の紡糸、延伸などを円滑に進行させるため、繊維に潤滑性、集束性、帯電防止性などを付与する合成繊維用処理剤(以下単に処理剤という)が用いられている。近年、紡糸速度の高速化に伴い、紡糸工程における糸切れ、毛羽等の発生のより少ない処理剤が求められている。処理剤には、潤滑性を付与するために、潤滑剤としてエステル類、特に脂肪酸エステル類が使用されることが多い。
従来から、これらのエステル類を合成するためのエステル化触媒として、パラトルエンスルホン酸や硫酸触媒等が使用されている。しかし、これらの触媒が残存したまま処理剤として用いられると、触媒に由来する耐熱性不良や着色等によって紡糸工程での糸切れや毛羽等が多く発生するばかりでなく、紡糸後の糸の品質にも悪影響する。したがって、処理剤として用いるためには、エステル化後にアルカリ水溶液で中和処理し、生成した中和塩を濾過処理する等の触媒除去工程が必須であった。しかしながら、このような触媒除去工程を行っても、近年の高速化してきた紡糸条件のもとでは、微量残存する触媒が潤滑性や耐熱性に悪影響を与え、製糸性を悪化させている。
これらの問題を解決するために、エステル化において、エステル化合物中に触媒を残存させない方法として、イオン交換樹脂などの固体酸触媒を用いる方法が提案されている。(例えば、非特許文献1)
【非特許文献1】Catal Lett Vol.78,No1/4;185−188(2002) しかしながら、これらの固体酸触媒を用いる方法では、エステル化反応に長時間を要し実用的ではない。また、多量に使用すればエステル化合物中に一部が溶解するため、やはり紡糸工程や糸の品質に悪影響を与える。 また、これ以外に、通常の触媒を用いてエステル化を行った後、触媒除去を複数回行ったり長時間行うと、残存する触媒の影響を少なくできるが、除去工程を多く行うことによりコストアップとなり実用的とは言い難い。さらに、触媒を使用せずエステル化を行うといった方法も考えられるが、反応に極めて長時間を要することから、これも実用的ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製糸性に影響しない高活性の新規触媒を用いて反応させて得られてなるエステル化合物を使用することにより、従来の処理剤に比べ製造コストを低くでき、かつ、従来のエステル類を使用した処理剤に比べて、紡糸工程における糸切れ、毛羽が少なくかつ品質の安定した糸を得ることができる処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の構造をもつ有機金属化合物をエステル化反応触媒として製造したエステル化合物を潤滑剤として用いることで、問題を解決できることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は、カルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを、下記一般式(1)で表される有機金属化合物を触媒として、反応させて得られてなるエステル化合物(A)と、乳化剤成分(B)および湿潤成分(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤である。
【化1】

[式中、Lはハロゲン原子、R1−、R1O−、R1S−で表される1価の有機基(但し、R1はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基);JはR2OCO−、R2COO−で表される1価の有機基(但し、R2はその水素原子がハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基でありR1と同じでもよい);n=2〜3、m=1〜2であり、n+m=4;M=チタン原子もしくはジルコニウム原子]
【発明の効果】
【0005】
本発明の処理剤は、従来の処理剤に比べ製造コストを低減でき、かつ、エステル化合物(A)が耐熱性悪化の要因となる触媒残さを有していないため製糸工程における耐熱性が良好であり、さらに、乳化剤成分(B)と湿潤成分(C)が組み合わされることで、紡糸工程における製糸性が良好で紡糸後の糸の品質が高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
まず、一般式(1)で示される有機金属化合物から説明する。
一般式(1)中、Lはハロゲン原子、R1−、R1O−、R1S−で表される1価の有機基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子として好ましくは塩素原子、臭素原子であり、さらに好ましくは塩素原子である。 R1は炭素数1〜30の1価の炭化水素基であって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基およびアリール基等が挙げられ、その一部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。R1のうち、好ましいのはアルキル基およびアルケニル基であり、さらに好ましいのはアルキル基であり、最も好ましいのは炭素数3〜24のアルキル基である。これらのLのうち、好ましいのR1−、R1O−、R1S−で表される1価の有機基であり、さらに好ましいのはR1−、R1O−で表される有機基であり、最も好ましいのはR1O−で表される有機基である。
【0007】
Mはチタン原子もしくはジルコニウム原子であり、好ましくはチタン原子である。JはR2OCO−、R2COO−で表される1価の有機基である。R2は炭素数1〜30の1価の炭化水素基であって、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基およびアリール基等が挙げられ、その一部の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。R2のうち、好ましいのはアルキル基およびアルケニル基であり、さらに好ましいのはアルキル基であり、最も好ましいのは炭素数6〜22のアルキル基である。これらのJのうち、好ましいのは、R2COO−で表される有機基である。
【0008】
1、R2の具体例としては、以下のような炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)アルキル基
メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デカニル基、ドデカニル基、テトラデカニル基、ヘキサデカニル基、オクタデカニル基、1,1,1−トリフルオロメチル基、1−モノクロロエチル、2−モノフルオロノニル基、4,4−ジクロロオクチル基等。
(2)アルケニル基
オクタデセニル基、10,10,10−トリクロロデセニル基等。
(3)シクロアルキル基
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等。
(4)シクロアルケニル基
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロドデセニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル等。
(5)アリール基
フェニル基、トリル基、キシリル基、クミル基、メシル基、1−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、1−ターシャリーブチルフェニル基、1,3,5−トリメチルフェニル基、3−ヘキシルフェニル基、3−オクチルフェニル基、3−ノニルフェニル基、3−デシルフェニル基、5−ドデシルフェニル基、3−フェニルフェニル基、3−ベンジルフェニル基、p−クミルフェニル基等。
上記のR1、R2は、同一であっても2種以上の異なる基であってもよい。
【0009】
一般式(1)におけるnは2〜3であり、mは1〜2であり、n+m=4である。
【0010】
一般式(1)で表されるエステル化反応用触媒である有機金属化合物の製造法としては、公知の一般的な方法が適用できる。例えば、新実験化学講座12(有機金属化学)[丸善出版]、実験科学講座 第4版 17(無機錯体、キレート錯体)[丸善出版]に詳細に記載された方法等が挙げられる。具体的には、例えば炭素数1〜30のカルボン酸に4塩化チタン、チタンアルコキシド(例えばメトキシド、エトキシド等)、4塩化ジルコニウム、ジルコニウムアルコキシド(例えばメトキシド、エトキシド等)等を20℃〜100℃で滴下し、発生する塩酸又はアルコールを減圧により除去する方法等で得られる。
【0011】
一般式(1)で表される有機金属化合物の具体的な例としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(c1)チタンを中心金属とする有機金属化合物
トリメチルデカン酸チタネート、トリイソプロポキシ−オクチル酸チタネート、トリイソプロポキシ−トリドデシル酸チタネート、トリイソプロポキシ−ドデカン酸チタネート、ジ(イソプロポキシ)−ジ(デカン酸)チタネート、ジ(イソプロポキシ)−ジ(トリドデシル酸)チタネート、ジ(イソプロポキシ)−ジ(オクチル酸)チタネート等。
(c2)ジルコニウムを中心金属とする有機金属化合物
メチルジエチルノナン酸ジルコネート、トリエトキシ−オクチル酸ジルコネート、トリイソプロポキシ−トリデシル酸ジルコネート、メトキシイソプロポキシ−ドデカン酸ジルコネート、ジ(イソプロポキシ)−ジ(デカン酸)ジルコネート、ジ(エトキシ)−ジ(オクタデカン酸)ジルコネート、ジ(デカノキシ)−ジ(オクチル酸)ジルコネート等。
【0012】
一般式(1)で表される有機金属化合物をエステル化反応用触媒として使用する際には、単独で使用しても良いが、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本触媒の使用量は特に制限されないが、エステルの製造においてカルボン酸成分(a1)またはカルボン酸誘導体成分(a2)100重量部あたり通常0.0005〜2重量部、好ましくは0.001〜1重量部、より好ましくは0.002〜0.8重量部である。また、性能を阻害しない範囲でエステル化技術において公知である他の触媒を併用して良い。公知である他の触媒としては、パラトルエンスルホン酸、硫酸等の酸触媒;三酸化アンチモン等のアンチモン系触媒;モノブチルスズオキシド等のスズ系触媒;テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;テトラブチルジルコネー卜等のジルコニウム系触媒;酢酸ジルコニルおよび酢酸亜鉛等の酢酸金属塩系触媒;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ触媒等が挙げられる。これらの公知の触媒は2種以上を併用して使用してもよい。一般式(1)で表されるエステル化反応用触媒に他の触媒を併用する場合の配合割合は特に限定されないが、好ましくは重量比で本触媒/他触媒=1/1〜1/0.01、より好ましくは1/0.5〜1/0.05である。
【0013】
エステル化におけるカルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)との比率は特に限定されないが、通常、モル比で、(カルボン酸および/またはカルボン酸誘導体)/アルコール=4/1〜1/4であり好ましくは2/1〜1/2であり、より好ましくは1.5/1〜1/1.5である。
【0014】
本発明を構成するエステル化合物(A)は、一般式(1)で表される有機金属化合物(c)を触媒として用いてカルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを反応(エステル化)させて得られる。
この(A)を得るための製造方法(エステル化の方法)は特に限定されず、公知の方法が使用できる。例えば、カルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール(b)とをそれぞれ所定量反応槽に仕込み、触媒を添加した後加熱し発生する水またはエステル交換によって発生するアルコールを除去する方法等で得られる。反応温度は通常50〜280℃であり、80〜250℃が好ましく、100℃〜230℃がより好ましい。反応時間は通常5〜20時間である。エステル化により発生する水またはエステル交換によって発生するアルコールの除去は常圧下、減圧下のいずれでもよい。減圧下での除去を行う場合は、減圧度は30mPa以下が好ましい。反応の進行は通常酸価、水酸基価等を測定することにより求めることができる。
【0015】
また、(A)を得るためのエステル化反応の際、必要に応じて着色防止剤や安定剤(リン酸エステル等)、調整剤としての充填剤(シリカ、酸化チタン等)、着色剤(カーボンブラック、染料等)、酸化安定剤(ヒドロキノン等)等を使用してもよい。
【0016】
カルボン酸(a1)もしくはカルボン酸誘導体(a2)の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。なお、カルボン酸誘導体(a2)とは、エステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物または低級(炭素数1〜4)アルコールエステル等)のことである。
【0017】
これら(a1)および(a2)の具体例としては以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
(aa1)炭素数2〜32の脂肪族モノカルボン酸類およびその誘導体
ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、アクリル酸、オレイン酸、エルシン酸、オクタン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル等。
(aa2)炭素数2〜40脂肪族ジカルボン酸類およびその誘導体
マロン酸、コハク酸、アジピン酸、エライジン酸、マレイン酸、フマル酸、3,3−ジメチルペンタン二酸、アジピン酸ジメチル、無水マレイン酸等。
(aa3)炭素数4〜42脂肪族多価カルボン酸類およびその誘導体
3,3−ジメチル−5−エチルオクタン−1,2,8−トリカルボン酸等。
【0018】
(aa4)炭素数7〜36芳香族カルボン酸類およびその誘導体
安息香酸、フェニル酢酸、γ−フェニル酪酸、m−トルイル酸、3−フェニルブタン酸、フタル酸、アニス酸、安息香酸メチル、無水フタル酸、トリメリット酸等。
(aa5)その他のカルボン酸類およびその誘導体
シクロヘキサンカルボン酸、チオジプロピオン酸、チオジヘキサン酸、オキシピバリン酸、チオジプロピオン酸ジメチル等。
【0019】
これらのカルボン酸類またはカルボン酸誘導体類のうち、好ましいのは脂肪族カルボン酸であり、脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸であることがさらに好ましく、脂肪族モノカルボン酸であることが最も好ましい。なお、(a1)および/または(a2)は、2種以上を併用して使用しても良い。
【0020】
アルコール類(b)としては、具体的例としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない
(bb1)炭素数4〜32の脂肪族1価アルコ−ル類
オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソステアリルアルコール、アリルアルコール、メチルビニルカルビノール、オレイルアルコール等。
(bb2)炭素数3〜40の脂肪族多価(2〜6価)アルコ−ル類
1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等。
【0021】
(bb3)炭素数6〜36の脂環式アルコール類
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、3−ブチル−5−オクチルシクロオクタノール、3−エチルシクロヘキサノール、cis−1,2−シクロヘキサンジオール等。
(bb4)炭素数7〜36の芳香族アルコール類
ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、α−フェニルエチルアルコール、トリフェニルカルビノール、シナミルアルコール等。
(bb5)上記(bb1)〜(bb4)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜100)およびその他のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数1〜100)
ラウリルアルコールのエチレンオキサイド10モル付加物、オレイルアルコールのプロピレンオキサイド5モル付加物、グリセリンのエチレンオキサイド3モル付加物、ベンジルアルコールのプロピレンオキサイド50モル付加物、ステアリン酸のエチレンオキサイド5モル、プロピレンオキサイド5モル付加物、フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物等。
【0022】
(bb5)におけるアルキレンオキサイド(以下AOと略す)は、例えば炭素数2〜12のAOがあげられ、具体的にはエチレンオキサイド(以下EOと略す)、プロピレンオキサイド(以下POと略す)、ブチレンオキサイド(以下BOと略す)、テトラヒドロフラン(以下THFと略す)、スチレンオキサイド(以下SOと略す)等があげられる。これらAO類を付加させる方法は、公知の方法が適用できる。例えば、活性水素を有する化合物に触媒の存在下AOを付加させることによってAO付加物を得ることができる。反応温度は、通常10〜180℃、反応時間は、1〜48時間である。AOは単独でも2種以上を混合して使用しても良い。2種以上のAOを付加させる場合、その付加様式は特に限定されず、ランダムに付加させてもブロックに付加させても良い。AOを付加させる際に用いられる触媒としては、アルカリ触媒(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、ハイドロタルサイト系触媒(商品名:KW500SH、協和化学工業(株)製等)、酸性触媒(過ハロゲン酸(塩)、硫酸(塩)、リン酸(塩)および硝酸(塩)等)および金属アルコラート触媒(ナトリウムメチラート、カリウムブチラート等)等があげられる。これらの触媒は2種以上を併用して使用しても良い。これらの触媒の添加量は、AO付加後の総重量に対し、通常0.01〜8重量%である。
【0023】
これらのアルコールのうち、好ましいのは、脂肪族アルコールであり、脂肪族一価アルコールであることがより好ましい。また、(b)は2種以上を併用して使用しても良い。
【0024】
(A)の具体的な化合物例としては、以下のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(A1)一価エステル化合物
2−エチルヘキシルステアレート、イソデシルステアレート、イソステアリルオレート、イソエイコシルステアレート、イソエイコシルオレート、イソテトラコシルオレート、イソアラキジルオレート、イソステアリルパルミテート、オレイルオレート、ラウリルアルコールEO2モル付加物のラウリン酸エステル、オレイルアルコールPO2モル付加物のステアリン酸エステル等。
(A2)二価エステル化合物
グリセリンジオレエート、ペンタエリスリトールテトラオレエート、ジオレイルアジペート、ジイソトリデシルアジペート、ステアリルアルコールEO10モル付加物のアジピン酸ジエステル、ビスフェノールEO5モル付加物のジオレイン酸エステル等。
(A3)多価エステル化合物
グリセリントリオレート、ソルビトールテトラステアレート、トリメリット酸トリラウレート等。
(A4)その他のエステル類
ジラウリルチオジプロピオネート、ジオレイルチオジプロピオネート、ジイソステアリルチオジプロピオネート等。
【0025】
これらの(A)のうち、好ましいのは一価(A1)または二価エステル(A2)であり、さらに好ましいのは一価エステル(A1)であり、AO鎖を有しない一価エステル(A1)であることが最も好ましい。また(A)は、2種以上を併用して使用しても良い。
【0026】
次に、乳化剤成分(B)について説明する。
乳化剤成分(B)は、乳化機能を有する界面活性剤であって、非イオン界面活性剤(高級アルコールのAO付加物等)、アニオン界面活性剤(高級アルコールの硫酸化物Na塩、アルキルスルホネートNa塩等)、カチオン界面活性剤(アルキルアミンおよびその金属塩等)および両性活性剤(ベタイン型両性界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤等)等があげられる。これらのうち、(B)としては、非イオン界面活性剤であることが好ましく、分子内にポリアルキレングリコール(以下PAGと略する)鎖を有する重量平均分子量(以下Mwと略す)1,000以上のPAG型非イオン界面活性剤(B1)であることがより好ましい。(B1)が有するPAGは、活性水素を有する化合物にAOを付加することにより得られる。AOを付加する方法は、公知のものが利用でき具体的な方法等は(bb5)における説明で例示した方法等と同様である。PAGを形成するAOは、特に限定されないが、好ましいのはEO単独またはEOとPOの併用である。EOとPOを併用する場合は、その付加様式(ランダムまたはブロック)、EOとPOの構成重量比は特に限定されないが、EOの重量割合が50%以上であることが好ましい。
【0027】
(B1)のMwは、処理剤配合後の安定性や平滑性の観点から、1,000〜30,000であって、好ましくは1,200〜25,000、より好ましくは1,500〜20,000である。
【0028】
(B1)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
(B11)炭素数4〜36の脂肪族アルコールのAO付加物(Mw=1,000以上)
ブタノールEO20モル、PO10モルブロック付加物、n−オクチルアルコールEO30モル付加物、オレイルアルコールEO20モル付加物、ステアリルアルコールEO/POランダム付加物(Mw=2,000)、ネオペンチルグリコールEO30モル付加物、ソルビトールEO40モル付加物等。
(B12)炭素数6〜42の脂環式アルコールのAO付加物(Mw=1,000以上)
シクロヘキサノールEO25モル付加物、3−エチルシクロヘキサノールEO/POランダム付加物(Mw=1,500)、trans−1,2−シクロヘキサノールEO45モル付加物等。
(B13)炭素数7〜40の芳香族アルコールのAO付加物(Mw=1,000以上)
ベンジルアルコールEO25モル付加物、オクチルフェノールEO20モル付加物、ノニルフェノールEO25モル付加物、ドデシルフェノールEO100モル付加物等。
(B14)炭素数4〜40の脂肪酸のAO付加物(Mw=1,000以上)
オレイン酸EO20モル付加物、ステアリン酸EO/POランダム付加物(Mw=3,000)等。
(B15)フェノールおよびフェノール誘導体のAO付加物(Mw=1,000以上)
フェノールのEO20モル付加物、ビスフェノールAのPO10モル、EO30モルブロック付加物等。
(B16)多価(2〜8価)アルコール脂肪酸エステルのAO付加物(Mw=1,000以上)
グリセリンモノステアレートのEO40モル付加物、ヒマシ油EO10モル付加物、ヒマシ油EO/POランダム付加物(Mw=3,000)、硬化ヒマシ油EO40モル付加物、硬化ヒマシ油EO10モル、PO25モル付加物、ソルビタンモノオレートのEO20モル付加物等。
【0029】
これらのうち、好ましいものは、Mw=1,000以上の炭素数4〜36の脂肪族アルコールのAO付加物、炭素数7〜40の芳香族アルコールのAO付加物および多価(2〜8価)アルコール脂肪酸エステルのAO付加物であり、さらに好ましいのは、Mw=1,000以上の炭素数4〜36の脂肪族アルコールのAO付加物および多価(2〜8価)アルコール脂肪酸エステルのAO付加物である。なお、(B)は、2種以上を併用して使用も良い。
【0030】
次に湿潤成分(C)について、説明する。
湿潤成分(C)は、処理剤に合成繊維への湿潤性を付与する機能剤であって、湿潤性を付与する非イオン界面活性剤、アニオン性界面活性剤等が使用できるが、非イオン界面活性剤であることが好ましく、Mw=1,000未満の脂肪族アルコールAO付加物(C1)であることがより好ましい。AOとしては、炭素数2〜12のものが使用でき、AOを付加する方法等は前述と同様である。AOとしては、EO単独またはEOとPO併用が好ましく、EO単独であることがより好ましい。EOとPOを併用する場合は、その付加様式(ランダム付加またはブロック付加)は特に限定されないが、ブロック付加物であることが好ましく、また、EOとPOの構成重量比も特に限定されないが、EOの重量割合が70%以上であることがより好ましい。
【0031】
(C1)として、具体的には下記のようなものがあげられるが、これらに限定されるものではない。
(C11)炭素数8〜22の直鎖脂肪族アルコールAO付加物(Mw=1,000未満)
オクチルアルコールEO8モル付加物、デシルアルコールEO10モル、PO2モル付加物、ラウリルアルコールEO10モル付加物、オレイルアルコールEO5モル付加物、ステアリルアルコールPO2モル、EO2モル付加物等。
(C12)炭素数8〜22の分岐脂肪族アルコールAO付加物(Mw=1,000未満)
2−エチルヘキシルアルコールPO5モル、EO5モル付加物、イソデシルアルコールEO2モル付加物、イソトリデシルアルコールEO10モル付加物、イソステアリルアルコールPO4モル、EO1モル付加物等。
これらのうち、好ましいものは分岐脂肪族アルコールAO付加物であり、炭素数10〜18の分岐脂肪族アルコールAO付加物(C12)であることがより好ましく、炭素数12〜16の分岐脂肪族アルコールAO付加物であることが最も好ましい。
なお、(C)は2種以上を併用して使用しても良い。
【0032】
本発明の処理剤は、上記に述べた(A)、(B)および(C)を必須成分として含有するが、さらに特定の割合で各成分を含有することが好ましい。
【0033】
すなわち、前記(A)と(B)および(C)の合計重量の比((A)/[(B)+(C)])が3/1〜1/3、かつ(B)と(C)の重量比((B)/(C))が4/1〜1/6、かつ(A)の重量が、処理剤の全重量((A)+(B)+(C)+後述のその他の成分(D))に基づいて5〜80重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、(A)と(B)および(C)の合計重量の比((A)/[(B)+(C)])が2.5/1〜1/2.5、かつ(B)と(C)の重量比((B)/(C))が3.5/1〜1/5、かつ(A)の重量が、処理剤の全重量に基づいて7〜78重量%である。(A)、(B)および(C)がそれぞれこの範囲にあると、平滑性、湿潤性がさらに良好となり、製糸性が向上する傾向がある。
【0034】
本発明の処理剤には、必要によりその他の成分(D)を含有することができる。(D)としては、以下のようなものがあげられる。(D)は2種以上を併用して使用して良い。
(D1)(A)以外の潤滑剤
25℃における動粘度が10〜3,000cStである鉱物油(例えば、25℃における動粘度が200cStである精製スピンドル油、25℃における動粘度が100cStである流動パラフィン等)、動植物油(例えば、牛脂、マッコウ鯨油、菜種油、ヤシ油、ヒマシ油等)、シリコーン化合物(例えば、ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、フェニル変性シリコーン等)、天然および合成ワックス(例えば、カルナバワックス、みつろう、融点30℃〜100℃のパラフィンワックス及びポリオレフィンワックス[オレフィンの炭素数2〜18、Mw=1,000〜10,000のワックス、例えばポリエチレンワックス])等。
(D2)(B)および(C)以外の界面活性剤
脂肪酸アルカノールアミド(オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モ
ノイソプロパノールアミド等)、炭素数6〜32のアルキルアミン及びこれらの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜40)(例えば、トリエチルアミン、ラウリルアミンのEO1モル付加物、ステアリルアミンのEO7モル付加物等)等。
(D3)帯電防止剤
炭素数8〜32のアルコール及びこれらの炭素数2〜4のAO付加物(例えば、付加モル数1〜20)のホスフェート(例えば、ラウリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩、ステアリルアルコールのEO2モル付加物のリン酸エステルナトリウム塩、イソステアリルアルコールのEO7モル付加物のリン酸エステルカリウム塩等)、炭素数9〜90の(チオ)ホスファイト(例えば、トリフェニルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト等)、炭素数8〜32の脂肪酸石鹸(対イオンは、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、アンモニア等)(例えば、ラウリン酸アンモニウム石鹸、オレイン酸カリウム石鹸、ヒマシ油ナトリウム石鹸等)、炭素数8〜32のイミダゾリン系化合物(例えば、ラウリルイミダゾリン、オレイルイミダゾリン等)、炭素数8〜32の硫酸エステル類及びその塩(例えば、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム塩、オレイルアルコール硫酸エステルアンモニウム等)、炭素数8〜32のスルホン酸及びその塩(例えば、ラウリルスルホネートナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸及びそのナトリウム塩、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム塩等)等。
(D4)酸化防止剤
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、アミン系酸化防止剤(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン等)等。
(D5)紫外線吸収剤
ベンゾトリアゾール系(2−(3,5−ジ−t−アミル)ヒドロキシフェニル等)、ヒンダードアミン系(ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)等。
(D5)フッ素化合物
パーフルオロエタン、パーフルオロオクタン等。
(D7)pH調整剤
塩酸、次亜リン酸、リン酸、塩酸、硫酸、低級脂肪酸(炭素数2〜8)及びその誘導体(例えば、酢酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸ナトリウム等)、アンモニア及びアルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等)、高級脂肪酸類(ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、サリチル酸、ペンタデセニルコハク酸)等。
(D8)その他
外観調整剤(エチレングリコール、プロピレングリコール、オレイルアルコール等)、水等。
(D)の配合量(重量%)は、処理剤の全重量に対して50重量%以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の処理剤は、(A)、(B)および(C)、必要により(D)を配合することによって得ることができる。配合の方法については、特に限定されず公知の方法が適用可能である。例えば、撹拌羽を備えた配合槽に各成分を所定量仕込み、必要により加温し、撹拌、均一とする方法等が使用できる。
【0036】
本発明の処理剤の使用形態は特に限定されないが、通常エマルションまたは低粘度鉱物油(25℃における動粘度が、1〜10cstの流動パラフィン等)や溶剤(メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン等)等による希釈品として、または、そのまま使用される。エマルションとして使用されることがより好ましい。エマルションとして使用される場合、エマルションの調整方法に特に限定はなく、例えば、乳化槽に所定量のイオン交換水を入れ、攪拌下で徐々に本発明の処理剤を投入し乳化するといった方法が適用できる。エマルションの濃度は、通常5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%である。乳化温度は、通常10〜60℃である。
【0037】
本発明の処理剤は、紡糸工程の任意の位置で給油できるが、通常、紡糸直後の未延伸の繊維に所定量給油される。給油方法は、ローラー、ノズル等任意の公知の方法が適用できる。繊維は給油処理された後、延伸され、巻き取られる。本発明の処理剤の繊維に対する付着量は、特に限定されないが、通常繊維に対し処理剤純分として0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0038】
本発明の処理剤が適用できる合成繊維は特に限定されず、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリ乳酸、レーヨン、アセテート等に適用出来、優れた効果を発揮する。
【0039】
本発明の処理剤で処理された合成繊維の用途は特に限定されず、織物、編物等種々の形態で、各種衣料用や産業資材用等に広く使用することができる。
【0040】
<実施例>
以下、実施例を挙げて、本発明の構成及び効果についてさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
[合成例1]<エステル化合物(A−1)の合成>
攪拌機、温度計および窒素導入管を取り付けた反応槽に、ラウリルアルコール200重量部およびイソステアリン酸280重量部(反応モル比は、ラウリルアルコール:イソステアリン酸=1:1)を仕込んだ。これにエステル化触媒として、トリブトキシデカン酸チタネートをイソステアリン酸に対し0.1重量%添加した。窒素を液中に吹き込みながら150℃まで昇温し、窒素を反応槽外に排気しながら常圧でエステル化を行った。エステル化の進行の確認は、酸価を測定することによって行い、酸価が1以下となるまで反応を継続しエステル化合物(A−1)ラウリルイソステアレートを得た。反応時間は5時間であった。得られた(A−1)は、着色もなく良好な外観を有しており、触媒除去等を行わずそのまま実施例に使用した。
[合成例2]<エステル化合物(A−2)>
合成例1と同様の装置に、オレイルアルコール280重量部、アジピン酸73重量部(反応モル比は、オレイルアルコール:アジピン酸=2:1)を仕込んだ。これにエステル化触媒として、ジ(オクタデカノキシ)−ジ(オクタデカン酸)チタネートをアジピン酸に対し0.5重量%添加した。窒素を液中に吹き込みながら170℃まで昇温し、窒素を反応槽外に排気しながら常圧でエステル化を行った。エステル化の進行の確認は、酸価を測定することによって行い、酸価が1以下となるまで反応を継続しエステル化合物(A−2)ジオレイルアジペートを得た。反応時間は8時間であった。得られた(A−2)は、着色もなく良好な外観を有しており、触媒除去等を行わずそのまま実施例に使用した。
[比較合成例1]<比較エステル化合物(E−1)>
合成例1において、エステル化触媒として、トリブトキシデカン酸チタネートの代わりにパラトルエンスルホン酸を使用した以外は、同様にして比較エステル化合物(E−1)ラウリルイソステアレートを得た。反応時間は6時間であった。得られた(E−1)は、水酸化カリウムで中和後、吸着剤による処理濾過を行って実施例に使用した。
[比較合成例2]<比較エステル化合物(E−2)>
合成例2において、エステル化触媒として、ジ(オクタデカノキシ)−ジ(オクタデカン酸)チタネートの代わりにパラトルエンスルホン酸を使用した以外は、同様にして比較エステル化合物(E−2)ジオレイルアジペートを得た。反応時間は8時間であった。得られた(E−2)は、水酸化カリウムで中和後、吸着剤による処理濾過を行って実施例に使用した。
[実施例]
上記エステル化合物および下記成分を使用し、本発明の処理剤1〜5および比較処理剤6〜9を表1のように配合した。
(B1−1)オレイルアルコールEO20モル付加物
(B1−2)オクチルアルコールEO/POランダム付加物(Mw=2,000)
(B1−3)ソルビトールジラウレートEO40モル付加物
(B1−4)ヒマシ油EO20モル付加物
(C1−1)2−ヘキシルヘキサノールEO3モル付加物
(C1−2)2−ヘキシルデカノールEO7モル付加物
(D−1)鉱物油(レッドウッド100秒)
(D−2)菜種油
(D−3)ステアリン酸ジエタノールアミド
(D−4)ラウリルアミンEO10モル付加物
(D−5)ラウリルフォスフェートカリウム塩
(D−6)オレイン酸石鹸
(D−7)ラウリルスルホネートナトリウム塩
【0042】
【表1】

【0043】
これらを用いて下記評価を行った。その結果を表2に示す。
<評価項目および評価方法>
<潤滑性>
各処理剤を、ポリエステルフィラメント糸(83dtex、36フィラメント)に付着量1.0%となるように付着させ、初張力20g、糸速度100m/分で走行糸法にて金属ピン(表面梨地加工)と接触させ、金属ピン通過後の張力(g)を測定し潤滑性とした。値が小さいほど、潤滑性が良好であることを示す。
<耐熱性>
各処理剤1.0gをステンレス製シャーレ(直径5cm)に取り、150℃の乾燥機中に8時間放置した。放置後のシャーレ内での処理剤の状態を目視で観察し耐熱性を判断した。
○・・・耐熱性良好(着色少ない。タールの発生なし)
△・・・耐熱性やや不良(着色ややあり。タールの発生少しある)
×・・・耐熱性不良(着色強い。タールの発生多い)
<発生電気量>
上記の潤滑性を評価する際の、金属ピン上10cmでの発生電気量を電位差測定器(春日電機製)にて測定した。値の絶対値が大きいほど、発生電気量が多いことを示す。
【0044】
【表2】

【0045】
さらに、表1に示す本発明の処理剤および比較処理剤を用い、有効成分12%エマルションを作成し、紡糸機を用いて紡糸直後のポリエステル未延伸糸に付着量1.0%となるように付与した後、巻き取り速度6,000m/分で延伸、巻き取りした。巻き取り後の糸太さは、85dtexであった(フィラメント数:12)。各処理剤について、24時間当たりの糸切れ回数および巻き取りチーズの毛羽状態を観察した結果を表3に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
表2および表3から、本発明の処理剤は、潤滑性、耐熱性、制電性が良く、製糸性が良好で得られる糸の品質も極めて優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の処理剤は、各種性能に優れているため、紡糸工程において、糸切れ、毛羽等のトラブル発生を減らすことができ、きわめて良好な製糸性を与える。また得られる繊維の品質も優れており、合成繊維用処理剤として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸(a1)および/またはカルボン酸誘導体(a2)とアルコール類(b)とを、下記一般式(1)で表される有機金属化合物(c)を触媒として、反応させて得られてなるエステル化合物(A)と、乳化剤成分(B)および湿潤成分(C)を含有することを特徴とする合成繊維用処理剤。
【化1】

[式中、Lはハロゲン原子、R1−、R1O−、R1S−で表される1価の有機基(但し、R1はその水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基);JはR2OCO−、R2COO−で表される1価の有機基(但し、R2はその水素原子がハロゲンで置換されていてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基でありR1と同じでもよい);n=2〜3、m=1〜2であり、n+m=4;M=チタン原子もしくはジルコニウム原子]
【請求項2】
前記(A)と、(B)および(C)の合計重量の比((A)/[(B)+(C)])が3/1〜1/3であり、かつ(B)と(C)の重量比((B)/(C))が4/1〜1/6であり、かつ(A)の重量が、処理剤の全重量に基づいて5〜80重量%であることを特徴とする請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記式(1)のLがR1O−である請求項1または2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記式(1)のJがR2COO−である請求項1〜3のいずれかに記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
合成繊維の紡糸工程において、請求項1〜4のいずれかに記載の合成繊維用処理剤を用いて、繊維を処理した後、延伸、巻き取りすることを特徴とする合成繊維の処理方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法で処理されたことを特徴とする合成繊維。