説明

吊り下げ具

【課題】2つの物品を同時に吊り下げることが出来るとともに、フックに吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来る吊り下げ具を提供する。
【解決手段】吊り下げ具1は、物品を吊り下げる第1鉤状部21、第1鉤状部21に連設された嵌合軸部、及び嵌合軸部の上端に設けられた係止部を有する第1フック2と、第1鉤状部21の内側に収められている第2鉤状部31、及び第2鉤状部31の上端部に横設され、嵌合軸部に回転可能に嵌合される嵌合筒部33を有する第2フック3と、嵌合筒部33上に載置され、係止部を回転可能に軸支する軸支部4と、軸支部4を挟持し、ベルト通し部52にベルト6が通された挟持部5とを備える。ベルト6が外部部材に巻き付けられて、吊り下げ具1が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉤状の端部に物品を吊り下げるフックを有する吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児を同伴した人が出掛ける場合は、乳幼児をベビーカーに乗せることが多い。この際、カバン又は買物袋等をベビーカーの手押し部に吊り下げてベビーカーを移動させることがよく行われている。
【0003】
従来、カバン又は買物袋等をベビーカーの手押し部に吊り下げるフックとしてS字状のフックが使用されている。しかし、ベビーカーの手押し部を支持する支持部が上下方向に設けられている場合に、このようなS字状のフックをベビーカーの手押し部に掛けて使用したときは、ベビーカーを押しているときの振動でS字状のフックがずれて、前記支持部をS字状のフックが滑り落ちることがある。S字状のフックが滑り落ちた場合、カバン又は買物袋等が地面に擦れる、又はS字状のフックが滑り落ちてベビーカーの一部に衝突した際の衝撃でカバン又は買物袋等がS字状のフックから外れて地面に落下する等の問題が生じる。カバン若しくは買物袋等が地面に擦れた場合、又は落下した場合は、カバン若しくは買物袋等の内容物が破損する、又はベビーカーの移動が妨げられる。
【0004】
上述のフックずれに起因するカバン又は買物袋等の落下等の問題を解決すべく、特許文献1には、ベルトの一端に吊り部を有すると共に、他端にベルト締め部を有する構成としたベビーカー用荷物袋又はカゴの吊り下げ具の発明が開示されている。この吊り下げ具は、ベビーカーの手押し部にベルトを巻き付け、吊り部を有する一端をベルト締め部に通し、吊り部を下に引いてベルトを締めることでベビーカーの手押し部に固定するように構成されている。このように取り付けて固定することで、カバン又は買物袋等の自重によりベルトが下方に引っ張られ、ベビーカーの手押し部を締め付けるので、この吊り下げ具がベビーカーの手押し部からずれて滑り落ちることはなく、ずれて滑り落ちることに起因するカバン又は買物袋等の落下等の問題は発生しない。
【特許文献1】特開平9−226594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のS字状のフックの場合、手押し部に掛けた側の鉤の向きによって、物品を吊り下げる側の鉤の向きが一方向に決まってしまうか、ごく限られた範囲内で鉤の向きを変えることができるだけであるので、フックに吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来ないという問題がある。
また、特許文献1の吊り下げ具を手押し部に取り付ける場合、上述したように、ベビーカーの手押し部にベルトを巻き付け、吊り部を有する一端をベルト締め部に通し、吊り部を下に引いてベルトを締めなければならず、掛け外しが困難であるという問題がある
さらに、ベビーカーを押して出掛ける場合、荷物が1つでは済まないことも多く、S字状のフック及び特許文献1の吊り下げ具の場合、荷物は1つしか吊り下げられないので、1つの荷物は手で持つか、肩に掛けることになって、片手でベビーカーを押すことになり、安全上の問題があった。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、各別に回転することが出来る2つのフックを有することにより、2つの物品を同時に吊り下げることが出来るとともに、フックに吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来る吊り下げ具を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、巻き付けられて留められるベルトを有することにより、容易に外部部材に取り付けることが出来る吊り下げ具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る吊り下げ具は、物品を吊り下げる第1鉤状部、該第1鉤状部に連設された嵌合軸部、及び該嵌合軸部の上端部に設けられた係止部を有する第1フックと、前記第1鉤状部の内側に収められている第2鉤状部、及び該第2鉤状部の上端部の側方に連設され、前記嵌合軸部に回転可能に嵌合される嵌合筒部を有する第2フックと、該嵌合筒部上に載置され、前記係止部を回転可能に軸支する軸支部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、第1フックと第2フックとの2つのフックを有するので、2つの物品を同時に吊り下げることが出来る。
また、第2フックは第1フックに対して回転することが出来、第1フックは軸支部に対して回転することが出来るので、フックに吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来、同時に吊り下げた2つの物品がぶつからないようにすることが出来る。
【0010】
第2発明に係る吊り下げ具は、第1発明において、ベルト通し部を有し、前記軸支部を挟持する挟持部と、前記ベルト通し部に通され、巻き付けられて留められるベルトとを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、ベルトをベビーカー等の外部部材に巻き付けて留めることで、容易に吊り下げ具を外部部材に取り付けることが出来る。
【0012】
第3発明に係る吊り下げ具は、第2発明において、前記ベルトの裏面に面ファスナを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、種々の径の外部部材に対応させてベルトの長さを変えることが出来、容易に外部部材に取り付けることが出来る。
【0014】
第4発明に係る吊り下げ具は、第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記係止部が、内周側にピン挿通孔を有する筒状体であり、周方向に複数箇所分割してあり、上部に外周側に突出した突起部を有し、前記軸支部は筒状で、内周側下部に、内径が上部の内径より小さい段部を有し、前記突起部を前記段部に引っ掛けて、前記ピン挿通孔にピンを挿通し、前記係止部が該ピンにより外周側に押し広げられた状態で、前記段部に係止されることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、係止部が軸支部に容易に係止されるとともに、突起部を介し第1フックが段部に対しスムースに回転することが出来る。
【0016】
第5発明に係る吊り下げ具は、第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記挟持部が軸支部を挟んだ状態で、該軸支部が回転出来るように、該挟持部及び軸支部にピンが架け渡されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、簡単な構造で、軸支部が確実に挟持される。
そして、ベビーカーの手押し部等に吊り下げ具を吊り下げて、この吊り下げ具に荷物をぶら下げ、乳幼児が腰掛けた場合に、荷物が後方に押されても、これに対応して後方に軸支部が傾き得るので、荷物が乳幼児を押圧することがない。
【0018】
第6発明に係る吊り下げ具は、第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記第1フック及び第2フックは、J字状をなし、該第2フックは、第2鉤状部の上端部の前記嵌合筒部が設けられている側と反対側に、把手部を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明においては、第1フック及び第2フックの形状がJ字状であるので、安定的に物品を吊り下げることが出来る。また、第2フックが把手部を備えるので、この把手部を持って容易に第2フックを回転させることが出来る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各別に回転することが出来る、第1フック及び第2フックの2つのフックを有するので、2つの物品を同時に吊り下げることが出来るとともに、フックに吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来る。
【0021】
本発明によれば、巻き付けられて留められるベルトを有するので、容易に吊り下げ具を外部部材に取り付けることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る吊り下げ具1を示す斜視図である。
【0023】
合成樹脂製の吊り下げ具1は、一物品を吊り下げる第1フック2と、他物品を吊り下げる第2フック3と、第1フック2を回転可能に軸支する軸支部4と、軸支部4を挟持する挟持部5と、挟持部5のベルト通し部52に通されたベルト6とを備える。
【0024】
図2は、第1フック2を示す側面図である。
第1フック2の第1鉤状部21は、J字型の鉤状をなし、第1鉤状部21の起立部には、連結板23を介し嵌合軸部24が設けられている。嵌合軸部24の上端部には、係止部25が設けられている。第1鉤状部21の内側には、幅方向に突出しつつ、内側の曲線に沿って延びる突出部22が設けられている。
【0025】
係止部25は、内周側にピン挿通孔25aを有する筒状体であり、周方向に4分割され、上部には外周側に突出した突起部26,26,26,26が設けられている。嵌合軸部24の上端部には、ピン挿通孔25aに連通するピン挿通孔24aが設けられている。
【0026】
図3は、第2フック3を示す側面図である。
第2フック3の第2鉤状部31は、第1フック2の第1鉤状部21の内側に収められるようにJ字型の鉤状をなし、第2鉤状部31の上端部の側方には、円筒状であり、嵌合軸部24に回転可能に嵌合される嵌合筒部33が連設されている。
第2鉤状部31の上端部の嵌合筒部33が設けられている側と反対側には、側面視が半円状である把手部34が設けられている。
第2鉤状部31の外側曲線部には、外側に突出した突起部32が設けられている。
【0027】
図4は、第1フック2、第2フック3及び軸支部4が連結された状態を示す断面図である。
第2フック3の嵌合筒部33は、連結板23により滑り落ちが防止された状態で、嵌合軸部24に回転可能に嵌合されている。
軸支部4は円筒状であり、内周側下部に、内径が上部の内径より小さい段部41を有する。軸支部4の上部の大径部42には、後述するピン53を横向きに貫通させるためのピン挿通孔42a,42aが設けられている。
【0028】
嵌合軸部24に嵌合筒部33が嵌合された状態で、軸支部4が嵌合筒部33に載置される。そして、係止部25の突起部26が段部41の上面に引っ掛けられ、ピン27が縦方向にピン挿通孔25a及び24aに挿通され、係止部25がピン27により外周側に押し広げられた状態で、段部41の上面に係止される。これにより、係止部25が軸支部4に容易に係止されるとともに、突起部26を介し第1フック2が段部41に対しスムースに回転することが出来る。
【0029】
図5は、挟持部5を示す側面図である。
挟持部5は、側面視が略逆三角形状である挟持板51,51と、該挟持板51,51を橋絡し、ベルト通し孔52aが設けられたベルト通し部52とを備える。挟持板51,51にはピン53を横向きに貫通させるためのピン挿通孔51a,51aが設けられている。ベルト通し部52の上面には、吊り下げ具1をベビーカーの手押し部等の外部部材に吊り下げたときに、吊り下げ具1が外部部材に当たってガタついたり、音がしないように、発泡剤からなる緩衝板54が設けられている。
【0030】
挟持板51,51のピン挿通孔51a,51aを、第1フック2を軸支した軸支部4のピン挿通孔42a,42a(図4参照)に外側から合わせ、ピン53を挿通することで、軸支部4は挟持部5に回転可能に挟持される。
【0031】
ベルト6のベルト本体61の一面には全長に亘って面ファスナ62が設けられている(図1参照)。ベルト本体61の一端部はバックル63に取り付けられている。ベルト本体61の他端部を挟持部5のベルト通し部52のベルト通し孔52aに通した上で、ベビーカーの手押し部等の外部部材に巻き付け、バックル63の一端部が取り付けられている側と反対側から抜き出し、この側で折り曲げて面ファスナ62が設けられている面同士を合わせることで、吊り下げ具1は、外部部材に容易に留められる。本実施の形態においては、ベルト本体61の全面に亘って面ファスナ62が設けられているので、外部部材の径に対応させて、容易にベルト6の長さを変えることが出来、外部部材に固定することが出来る。
【0032】
本実施の形態においては、第1フック2と第2フック3との2つのフックを有するので、2つの物品を同時に吊り下げることが出来る。
また、第2フック3は第1フック2に対して回転することが出来、第1フック2は軸支部4に対して回転することが出来るので、第1フック2及び第2フック3に吊り下げた物品の向きを自由に変えることが出来、同時に吊り下げた2つの物品がぶつからないようにすることが出来る。第2フック3は把手部34を備えるので、この把手部34を持って容易に第2フック3を回転させることが出来る。
また、ベビーカーの手押し部等に吊り下げ具1を吊り下げて、この吊り下げ具1に荷物をぶら下げ、乳幼児が腰掛けた場合に、荷物が後方に押されても、これに対応して軸支部4が後方に回転して傾き得るので、荷物が乳幼児を押圧することがない。
【0033】
なお、本発明の吊り下げ具の構成は前記実施の形態において説明した構成に限定されず、本発明の吊り下げ具は、種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る吊り下げ具を示す斜視図である。
【図2】第1フックを示す側面図である。
【図3】第2フックを示す側面図である。
【図4】第1フック、第2フック及び軸支部が連結された状態を示す断面図である。
【図5】挟持部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 吊り下げ具
2 第1フック
21 第1鉤状部
22 突出部
23 連結板
24 嵌合軸部
25 係止部
3 第2フック
31 第2鉤状部
32 突起部
33 嵌合筒部
34 把手部
4 軸支部
41 段部
42 大径部
42a ピン挿通孔
5 挟持部
51 挟持板
51a ピン挿通孔
52 ベルト通し部
52a ベルト通し孔
53 ピン
54 緩衝板
6 ベルト
61 ベルト本体
62 面ファスナ
63 バックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を吊り下げる第1鉤状部、該第1鉤状部に連設された嵌合軸部、及び該嵌合軸部の上端部に設けられた係止部を有する第1フックと、
前記第1鉤状部の内側に収められている第2鉤状部、及び該第2鉤状部の上端部の側方に連設され、前記嵌合軸部に回転可能に嵌合される嵌合筒部を有する第2フックと、
該嵌合筒部上に載置され、前記係止部を回転可能に軸支する軸支部と
を備えることを特徴とする吊り下げ具。
【請求項2】
ベルト通し部を有し、前記軸支部を挟持する挟持部と、
前記ベルト通し部に通され、巻き付けられて留められるベルトと
を備える請求項1に記載の吊り下げ具。
【請求項3】
前記ベルトの裏面に面ファスナを備える請求項2に記載の吊り下げ具。
【請求項4】
前記係止部は、内周側にピン挿通孔を有する筒状体であり、周方向に複数箇所分割してあり、上部に外周側に突出した突起部を有し、
前記軸支部は筒状で、内周側下部に、内径が上部の内径より小さい段部を有し、
前記突起部を前記段部に引っ掛けて、前記ピン挿通孔にピンを挿通し、前記係止部が該ピンにより外周側に押し広げられた状態で、前記段部に係止される請求項1乃至3のいずれかに記載の吊り下げ具。
【請求項5】
前記挟持部が軸支部を挟んだ状態で、該軸支部が回転出来るように、該挟持部及び軸支部にピンが架け渡されている請求項1乃至4のいずれかに記載の吊り下げ具。
【請求項6】
前記第1フック及び第2フックは、J字状をなし、
該第2フックは、第2鉤状部の上端部の前記嵌合筒部が連設されている側と反対側に、把手部を備える請求項1乃至5のいずれかに記載の吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−268083(P2007−268083A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99391(P2006−99391)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】