説明

吊り下げ具

【課題】 円柱状の商品を吊り下げ陳列する際に、その作業性を高めるとともに商品の落下を確実に防止する吊り下げ具を提供する。
【解決手段】 略円柱状をした商品100の胴部101が挿通されるほぼ均一幅を有する環状の帯部10と前記帯部10の上縁に備えられた吊下片20を備えた吊り下げ具1において、前記吊下片20を吊り下げられた商品100の前傾が妨げられないように前記帯部10に備えるとともに、前記帯部10の内径を商品100の胴部101よりも大きくし、吊り下げた商品を保持する力を発生させる上縁方向に凸となった曲線部11を当該帯部10の下縁12に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円柱状の商品を吊り下げて陳列するための吊り下げ具に関する。
【背景技術】
【0002】
商品を陳列するに際し、吊り下げ陳列を可能とする吊り下げ具が種々提案されている。例えば、特開平11−113699号公報(特許文献1)には、野球のバットのような端部に径方向に突出した突出部を有する棒状商品を陳列するための吊り下げ具が開示されている。この吊り下げ具は1枚の薄板状の可撓性を有する巻き付け片からなる。この巻き付け片をバットの突出部近傍のテーパ状になった部分に巻き付け、巻き付けた巻き付け片の両端に開設した孔をフックに引っ掛けることによって、バットをほぼ垂直に吊り下げる。
【0003】
特開平9−30533号公報(特許文献2)や実用新案登録第3067243号公報(特許文献3)、特開2001−335063号公報(特許文献4)には、それぞれ1枚の可撓性を有する薄板からなる巻き付け片の上縁に、吊り下げ用の孔を設けた吊下片を備えた吊り下げ具が開示されている。これらの吊り下げ具は、巻き付け片を略円柱状をした商品に密着させるようにして巻き付け、その両端を接着剤やテープなどによって固定することにより、商品を吊り下げ陳列させている。
【特許文献1】特開平11−113699号公報
【特許文献2】特開平09−30533号公報
【特許文献3】実用新案登録第3067243号公報
【特許文献4】特開2001−335063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の吊り下げ具は、吊下片の上縁がバットの突出部を支えることによりバットを吊り下げているので、スプレー缶などのように胴部がほぼ円柱状のものであれば抜け落ちてしまい、吊り下げ陳列することはできない。
【0005】
また、特許文献2〜4の吊り下げ具では、円柱状巻き付け片を商品に巻き付け、その巻き付け力によって商品を吊り下げているにすぎないので、巻き付け力が弱いとたやすく商品が抜け落ちてしまうだけでなく、たとえ吊り下げられたとしても経時的に巻きつけ力が低下し、抜け落ちる恐れがあった。それに、巻き付け片の両端を接着剤等で固定しなければならないので、陳列作業に手間が掛かるという問題もあった。
【0006】
このとき、作業性を高めるために、予め巻き付け片の両端を固定して環状の巻き付け部材とすることも考えられる。しかしながら、商品への巻き付け力を高めようとすれば、商品へ取り付けが困難になる。一方、取り付けやすくするために巻き付け部材の径を大きくすると、巻き付け力が弱くなるのでたやすく商品が抜け落ち、吊り下げ陳列できないという問題を生じる。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、円柱状の商品を吊り下げ陳列する際に、その作業性を高めるとともに商品の落下を確実に防止する吊り下げ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の吊り下げ具は、円柱状の胴部を有する商品を吊り下げ陳列するための吊り下げ具であって、胴部が挿通されるほぼ均一幅をした環状の帯部と前記帯部の上縁に備えられた吊下片を備え、前記吊下片を吊り下げられた商品の前傾が妨げられないように前記帯部に備えるとともに、前記帯部に商品を保持する力を発生させる上縁方向に凸となった曲線部を当該帯部の下縁に備えることにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の吊り下げ具によると、商品に帯部を装着して吊下片をフック等に吊り下げるだけで商品の抜け落ちが阻止され、至極簡単な作業により筒状商品の吊り下げ陳列が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
添付された図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。また、本発明は下記の実施形態に示されたものに限定されることのないのは言うまでもない。
【0011】
図1は本発明の一実施形態である吊り下げ具の斜視図、図2は当該吊り下げ具の正面図、図3はその背面図、図4はその側面図、図5はその展開図、図6は商品へ装着した状態を示す側面図、図7は商品を吊り下げた状態を示す側面図である。
【0012】
本発明に係る吊り下げ具1は、商品を吊り下げて陳列するために用いられるものであって、円柱状をした商品100について用いられるものである。吊り下げ具1は、通例、商品100の上部に取り付けられ、吊り下げ具1が取り付けられた商品100は、図7に示すように商品100が前傾するように吊り下げ陳列される。ここで、本発明に言う円柱状の商品100とは、胴部101が円柱状になっている形態の商品100をいい、例えば図6や図7に示すように、スプレー缶のように胴部101がほぼ円柱状となっている商品100のみならず、胴部101が横断面ドーナツ状をした円筒状の商品100を含む概念である。また、横断面が真円のみならずわずかに楕円となった商品100をも含む概念である。すなわち、この吊り下げ具1は商品100の円柱状をしたいわゆる胴体部分に取り付けられて使用されるものであって、商品100の上方又は下方から吊り下げ具1を装着できれば、例えば手で操作するノズルが商品100の上部に備えられている商品100や商品100の下端に缶の強化をした環状の接合部を有するスプレー缶のような商品100にも使用できる。また、コーヒ缶の様に全体が円柱をした商品100にも使用できるのは言うまでもない。
【0013】
吊り下げ具1は、その商品100の胴部101に取り付けられる環状の帯部10と、当該帯部10の上縁13に延設された吊下片20を有する。吊下片20は陳列台に備えられたフック200に引っ掛けるための孔21を備えている。
【0014】
吊下片20は図示例の吊り下げ具1では帯部10と一体に作製されており、吊下片20及び帯部10は、例えば図5の展開図に示すように、1枚のプラスチックシートなどのシート状物を切断加工して作製される。吊下片20は、吊下強度や吊下片20への表示を考慮して幅広に形成されており、帯部10からの延設位置近傍において、吊下片20の左右端が曲線状に切り欠かれた幅狭のくびれ部23を備えている。吊下片20の延設位置よりも上方、くびれ部23の縦方向中程には、商品100を前屈させやすくするための直線状の折り目25が形成されている。この結果、シート状物の剛性に妨げられることなく延設位置近傍において、吊り下げられた商品100が前傾できるようになっている。すなわち、この吊下片20は商品100の前傾が妨げられないように、吊下片20の基端部が幅狭になっているとともに、この基端部近傍の幅方向中程に前傾を助ける折り目25を備えている。もっとも、商品100が前傾できるような構成であれば、吊下片20を別体に作製し、帯部10に接着剤やテープ状接合部材などによって一体化させても差し支えない。また、折り目25の形状も直線状に限らず、例えばY字形状にしてもよい。
【0015】
帯部10はその両端が接着剤等によって固定され、商品100の取り付け時には予め環状に形成されている。このとき、帯部10の内径は、商品100の胴部101の外径よりもわずかに大きく、商品100の上方又は下方から帯部10を通すことができる程度の大きさである。ここにおいて帯部10の内径とは、帯部10の横断面における直径を意味する。つまり、わずかな力で困難なく、帯部10を商品100の上方(又は下方)から所望する箇所に取り付けることができればよく、好ましくは、商品100を直立させて置いた際に、図6に示すように吊り下げ具1が落下しないか、衝撃を与えると簡単に落下する程度の大きさである。もっとも、それよりも大きく、商品100を直立させた状態で自然落下するような大きさでも差し支えない。ただし、胴部101の外径よりもかなり大きくなれば、帯部10の幅を大きくする必要を生じたり、吊り下げ陳列することができなくなる。具体的に例示すれば、胴部101の外径によっても異なるが、帯部10の内径が胴部101の外径よりも0.1mm程度大きければ困難なく取り付けることができ、1.3mm程度よりも大きくなると商品100が落下して吊り下げ陳列ができないことが多い。帯部10を構成するシート片30の合わせ目31は、吊り下げ具1の正面よりも側面、好ましくは下記に述べる曲線部11と重ならない箇所や背面に位置させる。
【0016】
帯部10は曲線部11が設けられる領域を除いてはほぼ均一幅に作製される。その幅は、商品100の重量やその重心、胴部101の外径、帯部10に設けられる曲線部11の形状などによっても異なり、これらの要因に勘案して適宜設定される。具体的にその例を挙げると、帯部10の幅は、胴部101、つまり、商品100の外形が円柱状となった部分、図示した例ではいわゆる肩口から底まで高さの約1/5〜1/2の長さである。
【0017】
帯部10は下縁12正面が切り欠かれ、帯部10の下縁12にその上縁13方向に凸となった一つの楕円弧状の曲線部11が、胴部101の円周半円よりも狭い領域に設けられている。この曲線部11は、吊り下げた際に前傾した商品100を保持する力を生じるように設けられる。すなわち、図1に示す2点破線の位置、これを本発明においては面中線イ、つまり、商品100を吊り下げた際に胴部101が最も下を向いた位置における接面との接触線(さらに言い換えると、平面に商品100を置いた際に平面と接する接触線に相当する。)を面中線イと称し、この面中線イと帯部10の下縁12との交点Aを、均一な幅を有する単純形状の帯部に比べてより胴部101の上方に位置させるとともに、その交点Aの両側において胴部10の側面と滑らかに接触させることにより、商品100を傾けた状態で保持させている。この結果、曲線部11によって商品100が帯部10にしっかりと保持され、吊り下げ具1が取り付けられた商品100は、図7に示すように、商品100が前傾した状態で吊り下げ陳列される。また、面中線イで商品100が保持されるため、曲線部11は面中線イを中心として左右対称に設けられる。
【0018】
帯部10の上縁13は下に凸となる略円弧状に切り欠かれている。この切欠き14によって、帯部10の上縁13が胴部101の前面に接触する。帯部10の上縁13は例えば図9に示すように直線であっても差し支えなく、胴部101の前面から浮き上がるような曲線であっても差し支えない。しかし、切欠き14によって形成される線が直線や浮き上がるような曲線であれば、帯部10の上縁13と胴部101の前面との間に隙間ができ、見栄えが悪くなったり、この隙間にほこりが溜まる結果となる。従って、上縁13の切欠き14は、胴部101の外面に沿う、例えば略円弧状などの形状が好ましく、胴部101の外面に沿う形状であればどのような形状であっても差し支えない。
【0019】
この曲線部11における幅は、その上縁13と下縁12の幅が最も狭いところである面中線イ上で商品100の重量により耐えられる程度の幅があればよく、具体的には、面中線イおける帯部10の幅は、上縁13の切欠き14の有無に関係なく、帯部10の均一幅の1/5〜2/3程度である。
【0020】
帯部10の背面には、その下縁12から帯部10の一部が環の内側に折り返されて形成された折り返し片15が備えられている。この折り返し片15は必須のものではないが、この折り返し片15が元に戻ろうとする力が胴部101の前面を曲線部11に押し付ける。それだけでなく、折り返し片15が直線部分を形成することで帯部10の形状が変形し、胴部101を抱える力が強くなる結果、さらに吊り下げ時の安定性が増す。また、この折り返し片15は帯部10の内径を実質的に小さくする。このように、折り返し片15の形成により、胴部101を保持する力が補強される。
【0021】
吊り下げ具1は、上記したようにプラスチックシートなどのシート状物から作製されるが、このシート状物は上記したように吊り下げた商品100が前屈でき、商品を吊り下げられるような強度があれば、その材質は特に問われることはない。例えば軽量な商品100であれば厚みが数十乃至100μm程度の紙を用いることもできるし、比較的重量のある商品100であれば500μm〜1mm程度の厚紙や可撓性のあるプラスチックシートが用いられる。また、折り曲げることにより吊り下げた商品100が前屈させることができれば、ボール紙などの可撓性が小さく剛性の高い紙やプラスチックシートを用いてもよい。
【0022】
上記したように本発明の吊り下げ具1は、円柱状の胴部101外径よりも大きな内径を有するほぼ均一幅をした環状の帯部10を有し、この帯部10の下縁12に商品100を吊り下げた際に商品100を保持する力を生じさせる上縁方向に凸となった曲線部11を帯部10の下縁12に備えているので、面中線イと曲線部11との交点Aにおいて商品100がいわゆる下支えされることになる。その結果、帯部10の内径が胴部101の外径より大きく作製されているにもかかわらず、多少の振動や衝撃によって商品100が帯部10から外れにくくなる。また、帯部10の内径は胴部101の外径よりも大きく作製されているので、商品100への取り付けも容易に行える。
【0023】
また、帯部10をたたむ、すなわち帯部10を左右に長くなるように押しつぶすことができる。そうすることで、シートを扱うのと同じ取り扱いができ、予め帯部10を環状に作製したとしても輸送コストの増大を招くことがない。
【0024】
本発明の吊り下げ具1は、帯部10を取り付けた商品100が前傾するように吊下片20を帯部10に備えることができ、そして商品100を前傾させた状態で商品100を支える曲線部11を環状の帯部10の下縁12に設けることができればよい。従って、本発明によるとこの2点を満足させる種々の実施形態が考えられる。
【0025】
図8及び図9はそれぞれ本発明の別な実施形態である吊り下げ具1の正面図である。これらの例はそれぞれ商品100の前傾を妨げないように工夫したものである。図8の吊り下げ具1は、図1に示すものとほぼ同様な形状であるが、吊下片20の表示部分が大きく、くびれ部23が幅狭の矩形状に作製されたものである。また、図9の吊り下げ具は、帯部10の上縁13に切欠き14を設けることなく直線状にするとともに、折り目25の一部に上に凸となった曲線状の切込み22を設けたものである。このように折り目25の一部として切込み22を設けることにしてもよい。また、図示はしないが、吊下片20の材質にもよるが折り目25の代替として切込み22のみを設けることにしても差し支えない。
【0026】
図10に示す吊り下げ具1は、くびれ部23や折り目25が設けられることなく吊下片20の全体が幅狭の矩形状に作製されている。このように、吊下片20を幅狭の矩形状にしても、商品100を前傾させて吊り下げることができる。
【0027】
図11に示す吊り下げ具1は、2つの曲線部11a,11bを備えたものである。各曲線部11a,11bは面中線イを中心に左右対称に設けられている。この場合には、2つの曲線部11a,11bの交点(下に凸となった点)が面中線イ上に位置するが、その交点で胴部101を保持するというのではなく、2つの曲線部11a,11bを図に示す破線で延長した場合に面中線イ上で交差する点Aで胴部101を保持する力を生じさせているものである。このように、面中線イを中心として左右対称でかつ面中線イ上で交差し、その点で商品100を保持する力を生じる2つの曲線部11a,11bを設けてもよい。これにより左右のバランスがくずれることなく、商品100を吊り下げられる。
【0028】
このように、本発明の吊り下げ具1は、商品100の胴部101の外径よりも大きく作製されたほぼ均一幅をした帯部10の下縁12に上縁13方向に凸となった曲線部11を設けることによって、きわめて簡単に円柱状をした商品100を吊り下げ陳列することができる。また、帯部10の内径は商品100の胴部101外径よりも大きいので、吊り下げ具1を容易に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態である吊り下げ具の斜視図である。
【図2】同上の吊り下げ具の正面図である。
【図3】同上の吊り下げ具の背面図である。
【図4】同上の吊り下げ具の側面図である。
【図5】同上の吊り下げ具の展開図である。
【図6】同上の吊り下げ具を商品へ装着した状態を示す側面図である。
【図7】同上の吊り下げ具が装着された商品を吊り下げた状態を示す側面図である。
【図8】本発明の別な実施形態である吊り下げ具の正面図である。
【図9】本発明のさらに別な実施形態である吊り下げ具の正面図である。
【図10】本発明のさらに別な実施形態である吊り下げ具の正面図である。
【図11】本発明のさらに別な実施形態である吊り下げ具の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本発明の吊り下げ具
10 帯部
11 曲線部
15 折り返し片
20 吊下片
22 前傾しやすくするための切込み
23 くびれ部
25 前傾しやすくするための折り目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の胴部を有する商品を吊り下げ陳列するための吊り下げ具であって、
前記吊り下げ具は胴部が挿通されるほぼ均一幅をした環状の帯部と前記帯部の上縁に備えられた吊下片を有し、
前記吊下片は吊り下げられた商品の前傾が妨げられないように前記帯部に備えられ、
前記帯部は商品を保持する力を発生させる上縁方向に凸となった曲線部を当該帯部の下縁に備えたことを特徴とする吊り下げ具。
【請求項2】
前記帯部はその上縁に下縁方向に凸となった曲線部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ具。
【請求項3】
前記吊下片は当該吊下片の両側が切り欠かれたくびれ部を備えたことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の吊り下げ具。
【請求項4】
前記吊下片は幅狭の矩形状であることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の吊り下げ具。
【請求項5】
前記吊下片は吊り下げられた商品を前傾させるための折り目及び/又は上に凸となった切込みを備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の吊り下げ具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−131553(P2009−131553A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311808(P2007−311808)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【特許番号】特許第4137988号(P4137988)
【特許公報発行日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】