説明

吊り戸構造

【課題】 構造物などにおける大スパンとなる開口を形成する上方側部や下方側部が全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合にも、吊り戸からなる扉による開口の開閉に最適となる。
【解決手段】 上端部が構築物などにおける開口を形成する上方側部Uに移動可能に吊持される吊り戸1を有する吊り戸構造において、吊り戸1が下端に昇降板機構2を有し、この昇降板機構2が開口を形成する下方側部Dに開口の間口方向に沿って設けられた溝3と、この溝3内に下端部が挿通されて起立する昇降板21と、吊り戸1の下端に設けられて起立する昇降板21の上端部を昇降可能に案内させるホルダ部22とを有し、このホルダ部22が昇降板21を下降方向に附勢する附勢部材23を有し、昇降板21がこの昇降板21の溝3に対する下降位置を規制する規制手段24を有してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吊り戸構造に関し、特に、構築物などにおける大スパンとなる開口を開閉する扉たる吊り戸を有する吊り戸構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
構築物などにおける大スパンとなる開口を開閉する扉としては、これまでに種々の提案があるが、たとえば、特許文献1に開示の提案にあっては、扉が引き戸からなり、したがって、開口を形成する上框などの上方側部に倒れ止めのガイドが設けられ、開口を形成する下框などの下方側部に引き戸が走行するためのレールが設けられる。
【0003】
それに対して、開口に設けられる扉が吊り戸からなる場合には、開口を形成する上方側部にて吊り戸を吊持するが、開口を形成する下方側部には、走行用のレールを設けなくて済む。
【0004】
すなわち、吊り戸は、上端部が開口を形成する上方側部に設けられる吊持用の機構に吊持されるから、この状態で移動が可能とされ、したがって、開口を形成する下方側部に引き戸が走行する際に必要とされる走行用のレールを設けなくて済む。
【0005】
このことから、構築物などにおける開口が大スパンとなるとき、この大スパンとなる開口の開閉用とされる扉は、吊り戸とからなる、つまり、吊り戸構造からなるのが経済的に有利になると言い得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−202332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した大スパンの開口を開閉する扉を吊り戸からなるとする、つまり、吊り戸構造からなるとする場合には、利用の実際を勘案すると、些かの不具合を生じる可能性がある。
【0008】
すなわち、開口を開閉する扉が吊り戸構造からなるとき、扉たる吊り戸は、原理的には、開口を形成する下方側部から離れている方が扉の移動に際しての抵抗を少なくするから好ましいと言い得る。
【0009】
しかし、たとえば、吊り戸に人が寄り掛かったり強い風が吹いたりしたときに、吊り戸の下端部が横方向に、つまり、吊り戸の移動方向を横切る方向となる横方向に揺動するのは好ましくない。
【0010】
そこで、吊り戸にあっては、下端部が横方向に揺動する言わば無駄な動きを阻止するために、下端部が開口を形成する下方側部に設けたガイドレールに移動可能に連結される(たとえば、実開平6−30396号公報)。
【0011】
この場合に、たとえば、地盤沈下や構築物自体の変形などで大スパンとなる開口を形成する下方側部や上方側部が全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合には、吊り戸の下端部が下方側部に設けたガイドレールから離れたり、あるいは、ガイドレール内に深く入り込んだりすることになる。
【0012】
そして、吊り戸における下端部がガイドレールから離れる場合には、吊り戸の下端部の横方向への揺動が阻止できなくなり、反対に、吊り戸の下端部がガイドレール内に深く入り込む場合には、吊り戸の移動が困難になったり不能になったりする危惧がある。
【0013】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、構造物などにおける大スパンとなる開口を形成する上方側部や下方側部が全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合にも、扉たる吊り戸による開口の開閉に最適となる吊り戸構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明による吊り戸構造の構成を、上端部が構築物などにおける開口を形成する上方側部に移動可能に吊持される吊り戸を有する吊り戸構造において、上記吊り戸が下端に昇降板機構を有し、この昇降板機構が上記開口を形成する下方側部に上記開口の間口方向に沿って設けられた溝と、この溝内に下端部が挿通されて起立する昇降板と、上記吊り戸の下端に設けられて上記起立する昇降板の上端部を昇降可能に保持するホルダ部とを有し、このホルダ部が上記昇降板を下降方向に附勢する附勢部材を有し、上記昇降板がこの昇降板の上記溝に対する下降位置を規制する規制手段を有してなるとする。
【0015】
それゆえ、この発明にあっては、吊り戸の上端部が構築物などにおける開口を形成する上方側部に移動可能に吊持されるから、吊り戸の移動で構築物などにおける開口の開閉を自在にする。
【0016】
そして、この発明にあっては、吊り戸が下端に昇降板機構を有し、この昇降板機構が開口を形成する下方側部に開口の間口方向に沿って設けられた溝と、この溝内に下端部が挿通される昇降板を有するから、この昇降板の下端部が下方側部の溝から抜け出ない限りにおいて、吊り戸の下端部と下方側部との連結状態が保障され、吊り戸の下端部が下方側部から離れていわゆる横方向に揺動することがあらかじめ阻止される。
【0017】
また、この発明にあっては、昇降板機構が吊り戸の下端に設けられて昇降板の上端部を昇降可能に保持するホルダ部を有し、このホルダ部が昇降板を下降方向に附勢する附勢部材を有してなるから、昇降板の下端部が常時下方の溝に挿通される状態になり、吊り戸の下端部と下方側部との連結状態が維持されて、吊り本体の下端部が下方側部から離れることが阻止される。
【0018】
さらに、この発明にあっては、昇降板機構における昇降板がこの昇降板の溝に対する下降位置を規制する規制手段を有してなるから、この規制手段によって、昇降板の溝に対する下降位置が規制され、したがって、溝に挿通される昇降板の下端が溝内で必要以上に下降されて、昇降板の下端が、たとえば、溝の内底に干渉して、昇降板の溝での移動、つまり、吊り戸の下方側部に対する移動が阻害されることを事前に回避できる。
【発明の効果】
【0019】
その結果、この発明によれば、構造物などにおける大スパンとなる開口を形成する上方側部や下方側部が全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合にも、吊り戸からなる扉による開口の開閉に最適となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明による吊り戸構造を具現化した扉で開口を閉鎖した状態を示す部分立面図である。
【図2】この発明による吊り戸構造を具現化した扉で開口を閉鎖した状態を示す部分横断面図である。
【図3】この発明による吊り戸構造における開閉装置を扉の正面側から見る拡大部分図である。
【図4】この発明による吊り戸構造における開閉装置を扉の上方側から見る拡大部分図である。
【図5】この発明による吊り戸構造を具現化した扉を拡大して示す部分立面図である。
【図6】この発明による吊り戸構造における昇降板機構を構成するホルダ部と昇降板とを分離して示す正面図である。
【図7】図5中のA−A線位置で示す昇降板機構の縦断面図である。
【図8】図5中のB−B線位置で示す昇降板機構の縦断面図である。
【図9】図5中のC−C線位置で示す昇降板機構の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による吊り戸構造は、図1および図2に示すように、構築物などにおける開口(符示せず)の開閉を自在にする複数枚の扉、すなわち、開口を間口たる正面側から見た図1の状態で図2に示すように前後方向に積層される複数枚の吊り戸1を有してなる。
【0022】
ちなみに、図1に示す状態は、複数枚の吊り戸1で開口を閉鎖した状態を示すものであり、このとき、前後となる吊り戸1間にあっては、図2に示すように、吊り戸1の両側部が互いに重なり合う状態になって、吊り戸1間における、特に、光の漏れを阻止できるとしている。
【0023】
また、吊り戸1は、開口を開放するときには、図4中に一点鎖線図で示すように、各吊り戸1が開口の左側部となる一箇所で積層されて格納状態におかれるとし、このとき、積層された吊り戸1群が、図示しないが、たとえば、開口の左側部に設けられる戸袋に格納されるとしても良い。
【0024】
なお、前後となる吊り戸1間にあって、図4中に実線図で示す閉鎖時に、両者間における空気の漏れを阻止するために、図示しないが、吊り戸1の両側部にシール部材が設けられるなどのエア漏れ防止が施されるとしても良い。
【0025】
戻って、吊り戸1は、開口を遮蔽する目的に応じた部材で構成されるとし、たとえば、防火目的の場合には、耐火性能に優れる鋼鉄材などからなる骨組、つまり、フレーム1a(図3参照)に同じく鋼鉄板などからなる表装体1b(図3参照)が展設されるなどして構成され、遮熱や遮音さらには遮光目的の場合には、軽量鉄骨などからなるフレーム1aに断熱ボードや遮音ボードさらには遮光布などの表装体1bが展設されるなどして構成される。
【0026】
一方、この吊り戸1は、上端部(符示せず)が開口を形成する上框などの上方側部Uに移動可能に吊持されて、たとえば、吊り戸1を人力で引くなどするとき、上方側部Uの延在方向たる図1中および図2中で左右方向となる軸線方向に移動可能とされる。
【0027】
なお、吊り戸1の上端部を上方側部Uに移動可能に吊持させるのについては、周知の構成機構が利用されて良く、それゆえ、吊り戸1の上端部を上方側部Uに移動可能に吊持させる構成機構については、その説明を省略する。
【0028】
また、吊り戸1は、図3および図4に示すように、機械力を利用して、すなわち、開閉装置4を利用して移動自在とされて、開口の開閉を可能にする。
【0029】
そして、この開閉装置4は、駆動源41と、この駆動源41で駆動される駆動軸42と、この駆動軸42に保持されるスプロケット43と、このスプロケット43の回動で移動するチェーン44とを有し、このチェーン44が間隔を有して設けられる一対のスプロケット44aに掛け回されると共に吊り戸1の上端に連結されてなるとする。
【0030】
それゆえ、この開閉装置4にあっては、駆動源41の駆動で駆動軸42のスプロケット43が回転し、チェーン44が移動して吊り戸1をチェーン44の配設方向に移動させ、開口を開閉させることになる。
【0031】
このとき、図示する開閉装置にあっては、駆動源41は、たとえば、駆動モータ41aと減速器41bとを有してなり、この減速器41bで減速された回転が伝達機構41cを介して駆動軸42に伝わるとしている。
【0032】
また、駆動軸42に保持されるスプロケット43は、図4中で下方に設けられるほど径を大きくし、上方に設けられるほど径を小さくするとして吊り戸1の移動速度を異ならしめている。
【0033】
これによって、図4中で最下方に設けられる一点鎖線図で示す吊り戸1が最も速い速度で移動し、図4中で最上方に奥に設けられる実線図で示す吊り戸1が最も遅い速度で移動することになるとしている。
【0034】
チェーン44は、各吊り戸1ごとに設けられ、図示するところでは、エンドレスに形成されて上記したように一対のスプロケット44a,44bに掛け回され、一定の時間内にそれぞれのチェーン44が所定の距離を移動するとしている。
【0035】
なお、一対のスプロケット44a,44bは、開口を形成する上側部Uの下方に固定的に設けられる架台(符示せず)に保持されている。
【0036】
それゆえ、この開閉装置4にあっては、駆動源41の駆動で複数枚となる全ての吊り戸1が個々の移動距離を一斉に移動して、一斉にいわゆるストロークエンド地点に到達し、開口を閉鎖することになり、開口を開放するときにも、駆動源41の駆動で全ての吊り戸1が個々の移動距離を一斉に戻り、いわゆる格納状態たる積層された状態に戻る。
【0037】
なお、図4中には、開口を開放して開口の左側部で開口の奥行方向に重なる状態に格納される吊り戸1を一点鎖線図で示している。
【0038】
ところで、前記したことであるが、吊り戸1の移動に際しては、原理的には、吊り戸1の下端部(符示せず)が開口を形成する下框などの下方側部Dに連結される必要はないが、下端部のいたずらな横揺れ、つまり、吊り戸1の下端部が吊り戸1の移動方向を横切る方向に揺れることを阻止するために下方側部Dに移動自在に連結される。
【0039】
そして、このとき、この発明にあっては、吊り戸1の下端に設けられる後述の昇降板機構2(図1参照)を介して吊り戸1の下端部が下方側部Dに移動自在に連結される。
【0040】
そのため、この発明にあっては、吊り戸1の下方に吊り戸1の移動方向に、つまり、開口の間口方向に沿い昇降板機構2を構成する後述の昇降板21を連結させる溝3(図5参照)が形成されるとし、この溝3は、図示する実施形態では、開口を形成する下方側部Dに形成されるとしている。
【0041】
ちなみに、開口を形成する下方側部Dに溝3を形成するについては、たとえば、図7に示すように、下方側部Dに複数の敷居部材31を載置固定するようにして形成するのが良い。
【0042】
また、開口を形成する下方側部Dに溝3を形成するについては、敷居部材31の配設に代えて、図示しないが、下方側部Dを直接切削するなどして形成されるとしても良い。
【0043】
そして、同じく図示しないが、溝3の代替として、いわゆるガイドレールと称される部材を下方側部Dに設けるとしても良い。
【0044】
なお、下方側部Dに敷居部材31を載置固定して溝3を形成する場合には、複数本の敷居部材31を下方側部Dに簀の子状に並行させて載置固定することで、複数本の溝3を形成できる利点がある。
【0045】
また、複数本の溝3を下方側部Dへの複数本の敷居部材31の載置で形成するにしろ、あるいは、下方側部Dに直接形成するにしろ、溝3の幅寸法を、たとえば、最大20mmに設定する場合には、図示しないが、荷物の搬送用とされる汎用型の台車における車輪が横切ることを阻害する危惧がなく、下方側部Dの上端面に要求されることがある平滑性をいたずらに阻害せず、その意味で下方側部Dにおけるバリアフリー化を妨げない点で有利となる。
【0046】
ところで、昇降板機構2は、図5に示すように、開口の間口方向に沿って開口を形成する下方側部Dに設けられた溝3と、この溝3内に下端部が挿通されて起立する昇降板21と、この起立する昇降板21の上端部を昇降可能に保持するホルダ部22とを有してなる。
【0047】
なお、図5においては、図中の煩雑化を避けるため、図7中における連結ボルト25および連結ピン26について、また、図8中および図9中における連結ボルト25についての図示を省略している。
【0048】
戻って、この発明における昇降機構2は、吊り戸1の下端に言わば下方に向けて設けられたホルダ部22に下方で起立する昇降板21の上端部を上下動可能に保持する。
【0049】
たとえば、吊り戸1が基準高さから下降する状態になるときに、昇降板21が上方に移動するようになってホルダ部22内に入り込むようになり、昇降板21が吊り戸1と同期して下降することを阻止し、上記と逆に、吊り戸1が基準高さから上昇する状態になるときに、昇降板21が下方に移動するようになってホルダ部22内で下がるようになり、昇降板21が吊り戸1と同期して上昇することを阻止する。
【0050】
そのため、この昇降機構2にあって、先ずは、図6以下に示すように、昇降板21が所定の自己支持性を具有するために所定の機械的強度を有する平板状に形成されるとし、その言わば平板部分で吊り戸1の下端部の下方側部Dへの連結を可能にすると共に光や空気の遮断を可能にしている。
【0051】
ちなみに、昇降板21における板厚は、全体的に上記の溝3の幅寸法より小さい寸法とされて、溝3内での移動を円滑に実現し得るように配慮しているが、要は、溝3に挿通されるとき、その移動が妨げられなければ良く、その限りには、任意の寸法形状が選択されて良い。
【0052】
また、この昇降板21の吊り戸1に対する長さ、つまり、吊り戸1の幅方向に沿う長さ寸法は、図5に示すように、吊り戸1の幅長さと同じになるとし、少なくとも、吊り戸1の幅長さより短く設定されることで、そこに生じるいわゆる隙間から光や空気が漏れたりしないように配慮している。
【0053】
なお、この発明にあって、昇降板21は、規制手段24を有するが、この規制手段24については後述する。
【0054】
次に、ホルダ部22は、図7,図8および図9に示すように、吊り戸1の下端に連結ボルト25の利用下に一体的に連設されるとし、このとき、ホルダ部22の図中で上端部となる基端部(符示せず)がゴム板などからなる変位吸収部22aを有し、この変位吸収部22aによる変形で吊り戸1と昇降板機構2との間における傾斜による破壊や損傷を回避するとしている。
【0055】
ちなみに、このホルダ部22の吊り戸1に対する長さ、つまり、吊り戸1の幅方向に沿う長さ寸法は、図5に示すように、吊り戸1の幅長さと同じになるとし、少なくとも、吊り戸1の幅長さより短く設定されることで、そこに生じるいわゆる隙間から光や空気が漏れたりしないように配慮している。
【0056】
一方、このホルダ部22は、上記の昇降板21を上下方向に案内させる、すなわち、図示する実施形態にあっては、出入り自在に挿通させるとするもので、その限りには、任意の形状に形成されて良い。
【0057】
とは言え、上記した昇降板21が光や空気の遮断目的を有することからすれば、このホルダ部22にあっても、昇降板21の機能を損なわない態様に設定されるのが良く、図示するところでは、図7,図8および図9に示すように、縦断面視で二股状に形成されて間に昇降板21の上端部を挿通させるとしている。
【0058】
ところで、この昇降板機構2にあっては、吊り戸1の下端に設けられるホルダ部22に昇降板21が言わば昇降可能に保持される。
【0059】
そのため、図6に示すように、ホルダ部22が連結部材たる連結ピン26(図7参照)の挿通を許容する横孔22bを有する一方で、昇降板21がこの横孔22bに照準される縦長孔21aを有してなるとし、この縦長孔21aに上記の連結ピン26が挿通されることで両者の一体化、つまり、ホルダ部22への昇降板21の上下動を可能にする保持が実現されるとしている。
【0060】
なお、昇降板21に設けた縦長孔21aをホルダ部22に設けた横孔22bを挿通する連結ピン26が併せて挿通することで、昇降板21がホルダ部22に対して移動すること、つまり、開口の間口方向への移動となる相対移動を阻止し得ることになる。
【0061】
また、ホルダ部22に昇降板21が保持されることで、吊り本体1を、たとえば、搬送などするときに、昇降板21がホルダ部22から脱落したり、紛失したりすることをあらかじめ回避し得ることになる。
【0062】
一方、この発明の昇降板機構2にあって、上記の昇降板21は、ホルダ部22が有する附勢部材23で下降方向に附勢されてなるとし、これによって、たとえば、吊り戸1が開口で上昇するようになるとき、昇降板21を連れ運動状態に上昇させないようにすることが可能になり、昇降板21の下端部が溝3に残って、昇降板21と開口を形成する下方側部との間に隙間を生じないようにする、つまり、吊り戸1の下端部が下方側部から離れないようにすることが可能になる。
【0063】
このとき、上記の附勢部材23は、図9に示すように、コイルスプリングからなり、下端が昇降板21の上端に担持された状態でホルダ部22における二枚の板からなる空間部(符示せず)に収装されてなるとする。
【0064】
このとき、昇降板21とホルダ部22とは、前記した連結ピン26で連結されてなるから、昇降板21がホルダ部22から外れて附勢部材23たるコイルスプリングがその配設位置からいわゆる外部に飛び出すことはない。
【0065】
転じて、この発明の昇降機構2にあっては、図5,図6および図7に示すように、昇降板21が規制手段24を有し、この規制手段24は、昇降板21の溝3に対する下降位置、つまり、昇降板21が必要以上に溝3内に侵入して、溝3の内底(符示せず)に干渉し、昇降板21が、つまり、昇降板機構2を有する吊り本体1の移動が阻害されることを回避する。
【0066】
そして、この規制手段24は、図示する実施形態では、昇降板21に軸支されるローラを有し、このローラが下方側部Dの上端面を転動するとしている。
【0067】
このとき、ローラは、昇降板21をいわゆる挟むように、昇降板21の正面側と背面側とにそれぞれ配設されるとし、しかも、軸支するピン24a(図8参照)が水平方向に互いにずれてなるとしている。
【0068】
これによって、たとえば、ローラを軸支する軸が破損などしたときに、一度に二個のローラの機能が損なわれることになるのを防止でき、吊り戸構造の耐久性を向上させることが可能になる。
【0069】
上記の規制手段24を構成するローラが昇降板21に保持され、この昇降板21は、上端側部を上方のホルダ部22に案内させるから、この昇降板21のホルダ部22への案内がローラによって妨げられないようにするために、図5および図6(A)に示すように、ホルダ部22がローラの上方となる部位に退避部22cを形成している。
【0070】
それゆえ、以上のように形成された昇降機構2を有する吊り戸1にあっては、吊り戸1の上端部が構築物などにおける開口を形成する上方側部Uに移動可能に吊持されるから、吊り戸1の移動で構築物などにおける開口の開閉を自在にすることになる。
【0071】
そして、吊り戸1にあっては、下端に昇降板機構2を有し、この昇降板機構2が開口を形成する下方側部Dに開口の間口方向に沿って設けられた溝3と、この溝3内に下端部が挿通される昇降板21を有するから、この昇降板21の下端部が下方側部の溝3から抜け出ない限りにおいて、吊り戸1の下端部と下方側部Dとの連結状態が保障され、吊り戸1の下端部が下方側部Dから離れていわゆる横方向に揺動することがあらかじめ阻止されることになる。
【0072】
また、この吊り戸1にあっては、昇降板機構2が吊り戸1の下端に設けられて昇降板21の上端部を昇降可能に案内させるホルダ部22を有し、このホルダ部22が昇降板21を下降方向に附勢する附勢部材23を有してなるから、昇降板21の下端部が常時下方の溝3に挿通される状態になり、吊り戸1の下端部と下方側部Dとの連結状態が維持されて、吊り本体1の下端部が下方側部Dから離れることが阻止されることになる。
【0073】
さらに、この吊り戸1にあっては、昇降板機構2における昇降板21がこの昇降板21の溝3に対する下降位置を規制する規制手段24を有してなるから、この規制手段24によって、昇降板21の溝3に対する下降位置が規制され、したがって、溝3に挿通される昇降板21の下端が溝3内で必要以上に下降されて、昇降板21の下端が、たとえば、溝3の内底に干渉して、昇降板21の溝3での移動、つまり、吊り戸1の下方側部Dに対する移動が阻害されることを事前に回避できることになる。
【0074】
その結果、この発明によれば、構造物などにおける大スパンとなる開口を形成する上方側部Uや下方側部Dが地盤沈下や構造物自体の変形などによって全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合にも、吊り戸1たる扉による開口の開閉に最適となる。
【0075】
前記したところでは、構築物などにおける大スパンとなる開口を形成する上方側部Uや下方側部Dが全体的に凹状にいわゆる垂れ下がるように変形する場合にも、吊り戸1による開口の開閉を可能にしていることからすれば、開口を形成する上方側部Uに設けられて吊り戸1の上端部を吊持させる言わば周知の構成機構については、上方側部Uと吊り戸1の上端部との間における上下方向に変位を吸収し得る構成機構とされるのが好ましいと言い得る。
【符号の説明】
【0076】
1 吊り戸
1a フレーム
1b 表装体
2 昇降板機構
3 溝
4 開閉装置
21 昇降板
21a 縦長孔
22 ホルダ部
22a 変形吸収部
22b 横孔
22c 退避部
23 附勢部材
24 規制手段
25 連結ボルト
26 連結ピン
31 敷居部材
41 駆動源
42 駆動軸
43,44a,44b スプロケット
44 チェーン
D 下方側部
U 上方側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が構築物などにおける開口を形成する上方側部に移動可能に吊持される吊り戸を有する吊り戸構造において、
上記吊り戸が下端に昇降板機構を有し、
この昇降板機構が上記開口を形成する下方側部に上記開口の間口方向に沿って設けられた溝と、この溝内に下端部が挿通されて起立する昇降板と、上記吊り戸の下端に設けられて上記起立する昇降板の上端部を昇降可能に案内させるホルダ部とを有し、
このホルダ部が上記昇降板を下降方向に附勢する附勢部材を有し、
上記昇降板がこの昇降板の上記溝に対する下降位置を規制する規制手段を有してなることを特徴とする吊り戸構造。
【請求項2】
上記開口に配設される上記吊り戸が複数枚とされて上記開口を間口から見る立面視で前後方向に積層されてなる請求項1に記載の吊り戸構造。
【請求項3】
上記昇降板および上記ホルダ部が上記吊り本体における幅長さと同じ寸法となる幅長さを有してなる請求項1または請求項2に記載の吊り戸構造。
【請求項4】
上記ホルダ部が上記吊り戸の下端に一体的に設けられると共に上記昇降板の上記開口の間口方向への移動となる相対移動を阻止してなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の吊り戸構造。
【請求項5】
上記附勢部材がコイルスプリングからなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の吊り戸構造。
【請求項6】
上記規制手段が上記昇降板の下端部に枢支されて上記溝を形成する上記下方側部の上端面を転動するローラを有してなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5に記載の吊り戸構造。
【請求項7】
上記吊り戸を上記開口の間口方向に移動自在にして上記開口の開閉を可能にする開閉装置が、駆動源と、この駆動源で駆動される駆動軸と、この駆動軸に保持されるスプロケットと、このスプロケットの回動で移動するチェーンとを有し、このチェーンが間隔を有して設けられる一対のスプロケットに掛け回されると共に吊り戸の上端に連結され、駆動源の駆動で駆動軸が駆動されるとき、チェーンが移動して吊り戸を移動させてなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6に記載の吊り戸構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60698(P2013−60698A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197780(P2011−197780)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)