説明

吊下具

【課題】荷重を加えても壁面からずり落ちにくいマグネット式の吊下具を提供する。
【解決手段】マグネット3を、磁束を収束する断面コ字状のヨーク31内に収納し、板状のベース2にはフック4が設けられた吊下具1であって、壁面Wに沿ってほぼ平行に取り付けられる設置面21の一部に壁面Wに対して離反する方向に傾斜する傾斜面22を設け、設置面21と傾斜面22に跨るように滑り止めシート5を貼り付けているのでシート5の高摩擦により確実に壁面にグリップさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フックなどの吊下手段を備えたマグネット式の吊下具に関し、さらに詳しく言えば、吊下加重によって吊下具が下にずり落ちないように改良された吊下具に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、マグネット式の吊下具1は、板状のベース2内に埋め込まれたマグネット3の磁着力によって壁面などの被設置面Wに沿って取り付けられる。通常、ベース2には、例えば衣類や雑貨類を引っ掛けておくための吊下手段としてのフック4が設けられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところで、被取付面Wが、摩擦係数(μ)の小さな平滑面である場合、フック4に物を吊り下げると、低μであるため、設計上の許容荷重よりも少ない荷重で吊下具1が下にずり落ちる場合がある。また、被取付面Wの上に樹脂コーティングなどの化粧処理が施されているような場合でも、被取付面Wとマグネット面との間にコーティング層が介在するため、磁着力が弱まり、許容荷重が小さくなることがある。
【0004】
そこで、吊下具1が許容荷重よりも小さな荷重でずり落ちるのを防止する方法の1つとして、図2に示すように、壁面Wとベース2の設置面21との間に高摩擦の滑り止めシート5を貼り付けて、ベース2が滑り落ちるのを防止する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、上述した滑り止めシート5を用いた場合には次のような問題があった。すなわち、滑り止めシート5を介在させてフック4に荷重を加えると、吊下具1は、一時的にはその位置を保持するが、経時的に使用を続けた場合、図2に示すように、滑り止めシート5の下端に応力が集中するため、下端側が徐々に捲り上がることがあった。
【0006】
滑り止めシート5の一部が捲り上がると、壁面Wに対する摩擦力が低下するため、突然、吊下具1が壁面Wからずり落ちたり、脱落するおそれがあった。また、一度捲れ上がった滑り止めシート5は再使用できないため、新しい滑り止めシート5を張り直さなくてはならず、面倒であった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−218487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、荷重を加えても壁面からずり落ちにくいマグネット式の吊下具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明は以下に示すいくつかの特徴を備えている。請求項1に記載の発明は、壁面などの磁性体からなる被取付面に対して磁着力を発揮するマグネットを有するベースを有し、上記ベースと上記被取付面との間に滑り止めシートが介在される吊下具において、上記ベースには、上記被取付面に沿ってほぼ平行に取り付けられる設置面を有し、上記設置面の一部が、上記被取付面に対して離反する方向に傾斜していることを特徴している。
【0010】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1において、上記傾斜面は上記ベースの下端側に設けられており、上記滑り止めシートは、上記設置面と上記傾斜面とにかけて貼り付けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースの設置面の一部が被取付面から離反する方向に傾斜した傾斜面を有し、設置面と傾斜面に跨るように滑り止めシートを貼り付けることにより、滑り止めシートに係る応力を分散させることができ、吊下具がずり落ちるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る吊下具を模式的に示した断面図である。なお、上述した従来例と同一もしくは同一と見なされる箇所には、同じ参照符号を付した。
【0013】
図1に示すように、この吊下具10は、内部にマグネット3が組み込まれた板状のベース2を有し、ベース2には吊下用のフック4が設けられている。この例において、マグネット3は、着磁力の強いネオジウム系マグネットが用いられているが、一般的なフェライト系マグネットなどであってもよい。マグネット3は、磁束を収束するための断面コ字状のヨーク31内に収納されている。
【0014】
ベース2は合成樹脂の成型品からなり、一方の面(図1では左側面)には、壁面Wに沿って平行な設置面21が設けられている。設置面21の下端側には、設置面21の下端から壁面Wから離反する方向に傾斜した傾斜面22が設けられている。
【0015】
傾斜面22の角度は仕様に応じて任意に設定でき、壁面Wに対して離反する方向に傾斜されていればよい。設置面21には滑り止めシート5が傾斜面22にも跨るように貼り付けられている。
【0016】
滑り止めシート5は、高摩擦な素材からなるシート基材からなり、一方の面に貼付用の粘着面が形成されている。この例において、シート基材はミクロ発泡された柔軟な合成樹脂シートが用いられているが、これ以外に例えばエンボス加工など表面が高摩擦なシート体であれば、仕様に応じて任意に変更可能である。
【0017】
これによれば、吊下具1を壁面Wに取り付けると、吊下具1に加わる応力は設置面21と傾斜面22の境界に集中し、その一部が傾斜面22方向に分散されることにより、滑り止めシート5の端部が捲れ上がることなく、確実に壁面Wにグリップさせることができる。
【0018】
この例において、フック4は一般的な鉤型であるが、これ以外に被吊下物を支持可能な構造であれば、仕様に応じて任意に変更可能である。さらには、例えば紙やメモ用紙などを挟むためのものであってもよく、マグネット方式を用いて壁面Wに取り付けられる構成を備えていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る吊下具を模式的に示した断面図。
【図2】従来の吊下具の断面図。
【符号の説明】
【0020】
1 吊下具
2 ベース
21 設置面
22 傾斜面
3 マグネット
4 フック
5 滑り止めシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面などの磁性体からなる被取付面に対して磁着力を発揮するマグネットを有するベースを有し、上記ベースと上記被取付面との間に滑り止めシートが介在される吊下具において、
上記ベースには、上記被取付面に沿ってほぼ平行に取り付けられる設置面を有し、上記設置面の一部が、上記被取付面に対して離反する方向に傾斜していることを特徴とする吊下具。
【請求項2】
上記傾斜面は上記ベースの下端側に設けられており、上記滑り止めシートは、上記設置面と上記傾斜面とにかけて貼り付けられることを特徴とする請求項1に記載の吊下具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−159683(P2007−159683A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357131(P2005−357131)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(390003562)株式会社ニトムズ (64)
【Fターム(参考)】