説明

吊戸棚

【課題】使用者から奥側の収納領域の使い勝手が向上した吊戸棚を提供すること。
【解決手段】昇降棚3は、上下2段の棚部5,6と、これ等棚部5,6の左右各端側に配置された上段の棚部5を昇降自在に支持する前後一対の上アーム8,9及び下段の棚部6を昇降自在に支持する前後一対の下アーム10,11と、上アーム8,9と下アーム10,11とを枢着する上側の支持体20と、から構成されており、上アーム8,9と下アーム10,11とは、連動して互いに逆方向に回動し、上下2段の棚部5,6を昇降させるとともに、上段の棚部5,6は、支持体20に対して前後方向に移動可能に取り付けられ、上段の棚部5の前後位置を略一定に維持しながら昇降する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方が開口し少なくとも両側板と天板とからなる箱体の奥側の収納領域に昇降棚を配置し、この箱体の手前側に別の収納領域を有する吊戸棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吊戸棚は、内部に収納領域を有し前面側が開口する箱体が構成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−321770号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、吊戸棚を構成する箱体内部の奥側の収納領域が、使用者の手前側から手が届き難いばかりか、箱体の前面開口から手前側の収納領域を介して奥側の収納領域にアプローチする必要があり、奥側の収納領域が使用し難いという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、使用者から奥側の収納領域の使い勝手が向上した吊戸棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の吊戸棚は、
下方が開口し少なくとも両側板と天板とからなる箱体の奥側の収納領域に昇降棚を配置し、前記箱体の手前側に別の収納領域を有する吊戸棚であって、
前記昇降棚は、上下2段の棚部と、これ等棚部の左右各端側に配置された前記上段の棚部を昇降自在に支持する前後一対の上アーム及び前記下段の棚部を昇降自在に支持する前後一対の下アームと、前記上アームと前記下アームとを枢着する上側の支持体と、から構成されており、
前記上アームと下アームとは、連動して互いに逆方向に回動し、前記上下2段の棚部を昇降させるとともに、前記上段の棚部は、前記支持体に対して前後方向に移動可能に取り付けられ、該上段の棚部の前後位置を略一定に維持しながら昇降することを特徴としている。
この特徴によれば、吊戸棚の収納領域を手前側と奥側とに区分し、手が届き難い奥側に昇降棚を配置し昇降可能にすることで、吊戸棚の奥側の収納領域の使い勝手が向上するともに、昇降棚の下段の棚部は昇降棚を降下させたときのみに物品を載置可能な仮置き棚部とし、上段の棚部は物品を載置したまま上昇させて箱体内の収納棚部として使用できる。
【0007】
本発明の吊戸棚は、
前記上段の棚部は、手前側を少なくとも一部開放し、左右両側板と背板とを備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、手前側が少なくとも一部開放した上段の棚部に物品を載置し易いばかりか、載置した物品が左右両側板と背板とに依り落下し難く、手前側に落下防止用の桟などを適宜設けることもできる。
【0008】
本発明の吊戸棚は、
前記箱体の手前側の収納領域に、該箱体に支持された鉛直軸回りに回動自在に枢支された回動棚が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、回動棚を鉛直軸回りに手前側に回動することで、回動棚に物品を取り入れし易い。
【0009】
本発明の吊戸棚は、
前記回動棚の下部に、下方向きの照明装置が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、回動棚を回動することで、回動棚の下部に設けられた照明装置により、吊戸棚の下方の適宜箇所を照らす自由度が高まる。
【0010】
本発明の吊戸棚は、
前記箱体の手前側に、該手前側を開閉自在の跳ね上げ扉が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、跳ね上げ扉を跳ね上げることで、箱体の手前側を左右の間口いっぱいに開放できる。
【0011】
本発明の吊戸棚は、
前記箱体の内部に、前記奥側の収納領域の上方を上方領域として形成する仕切棚板が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、仕切棚板で区分けされた比較的手が届き難い上方領域を利用して、下方の領域に収納する物品よりも使用頻度の低い物品を長期収納する等、頻度や用途を考慮した有効な収納空間を提供でき、利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例における吊戸棚を示す正面図である。
【図2】吊戸棚を示す平面図である。
【図3】昇降棚を示す斜視図である。
【図4】昇降棚が降下した吊戸棚を示す側断面図である。
【図5】昇降棚が折り畳まれる途中の状態を示す側断面図である。
【図6】昇降棚が折り畳まれた状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る吊戸棚を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。図4の紙面左側を前側(手前側)とし、紙面右側を奥側(奥行側)として説明する。
【実施例】
【0014】
実施例に係る吊戸棚につき、図1から図6を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、吊戸棚3は、室内のキッチンやシンク等が配設された上方の壁面に固定に設置された箱体41から構成されている。箱体41は、左右の両側板43,43と天板42と背板44とから成り、箱体41の下方が開口しているとともに、手前側開口が後述する跳ね上げ扉28により開閉可能に構成されている。箱体41内部は、両側板43,43に渡り略水平方向に架設された仕切棚板45により、収納領域が仕切棚板45上方の上方領域Uと下方の下方領域とに仕切られている。更に収納領域である下方領域は、使用者の手前側の前側領域Fと奥行側の奥側領域Rとに区分けされている。
【0015】
跳ね上げ扉28は、上縁が箱体41の天板42前縁に回動可能に枢支され、箱体41の前面開口の上部を被覆する上扉28aと、上縁が上扉28aの下縁に回動可能に枢支され、箱体41の前面開口の下部を被覆する下扉28bと、から構成されている。
【0016】
図4に示されるように、上扉28aは、天板42下面前端に固着された回動部53に枢支されるとともに、上扉28a内面下端に固着された回動部54により下扉28b内面上端に固着された取付部55を枢支している。更に下扉28bは、各側板43の内面に固着された回動保持部52に後端が枢支された回動保持軸56の前端に、この下扉28bの内面において回動可能に枢支されている。回動保持軸56は、その軸方向に伸縮可能に構成されている。
【0017】
上記した構成により、跳ね上げ扉28は、上扉28aと下扉28bとが上下に前面略面一に配置され箱体41の前面開口を閉塞する閉塞位置(図4の実線参照)と、上扉28aが回動部53周りに上方に回動して下扉28bが回動部54周りに回動し、このように回動した状態で回動保持部56により両扉28a,28bが保持され、箱体41の前面開口を開放する開放位置(図4の点線参照)との間を、回動できるように成っている。
【0018】
図1,図2に示されるように、前側領域Fには、左右各側板43の内面にそれぞれ支持された垂直軸47回りに回動自在の回動棚48が設けられている。回動棚48は、各々が矩形枠状に形成され左右に並設された各回動フレーム49と、各回動フレーム49の下面に下方を照らすように固設された照明装置26と、から主に構成されている。各回動フレーム49は、ワイヤー材により形成されたカゴ部50が上下2段に配設され、これ等カゴ部50内に物品を収納できるようになっている。
【0019】
すなわち回動棚48は、回動フレーム49内に物品を収納することで物品を箱体41内の前側領域に収納できるとともに、左右の回動フレーム49を個別に手前側に適宜回動操作することで、回動フレーム49内に物品を出し入れし易い。また、回動フレーム49を手前側に回動操作することで、奥側領域Rに配置された後述する昇降棚1に箱体41の手前側からアプローチできる。
【0020】
更に、回動棚48の回動フレーム49を回動することで、回動フレーム49の下部に設けられた照明装置26により、吊戸棚3の下方のキッチンやシンク等の適宜箇所を照らす自由度が高まる。
【0021】
また、跳ね上げ扉28を跳ね上げることで、箱体41の手前側を左右の間口いっぱいに開放でき、前側領域Fの回動棚48を大容量にできる。
【0022】
また、仕切棚板45で区分けされた比較的手が届き難い上方領域Uを利用して、下方領域である前側領域F及び奥側領域Rに収納する物品よりも使用頻度の低い物品を長期収納する等、頻度や用途を考慮した有効な収納空間を提供でき、利便性を向上できる。
【0023】
次に、吊戸棚3の箱体41内の奥側領域Rに配置された昇降棚1の構造について、図3〜6を参照して以下に説明する。
【0024】
昇降棚1は、箱体41内の奥側領域Rにおける両側板43,43内面に取り付けられている。この昇降棚1は、台所の使用者が調理器具や食器や調味料の入った容器などを一時的に載置することができる2段の棚部としての棚板5,6と、これら棚板5,6の左右端側にそれぞれ配置され、上段の棚板5を昇降自在に支持する前後一対の上アーム8,9及び下段の棚板6を昇降自在に支持する前後一対の下アーム10,11と、から主に構成されている。
【0025】
尚、本実施例における棚板5,6の前後幅は、奥側領域Rの前後幅よりも短い長さに形成されているとともに、上アーム8,9、下アーム10,11の長手幅は、奥側領域Rの前後幅よりも短寸に形成されており、後述する昇降棚1の上昇位置において、下段の棚板6の下面が箱体41の両側板43,43の下面に略面一に位置するように、コンパクトに折り畳まれて収容されるようになっている。
【0026】
図3,図4に示すように、昇降棚1は、上方側に取付部材7を備えており、この取付部材7がネジ(図示略)等を用いて箱体41の両側板43,43内面及び略下端後方に取り付けられることで、昇降棚1が箱体41に固定されている。この取付部材7の後部には、上段の棚板5よりも上方に配置される前後一対の上アーム8,9の上端が枢軸部12,13を介して枢着されて取付部材7から下方に吊り下げられており、上アーム8,9が枢軸部12,13を軸心として前後方向に回動できるようになっている。
【0027】
図4に示すように、上アーム8,9の下端は、棚板5の左右両端を前後方向に移動自在に支持する支持体20の上部に枢着されているとともに、この支持体20の下部には、棚板5よりも下方に配置される下アーム10,11の上端が枢軸部16,17を介して枢着されており、下アーム10,11が枢軸部16,17を軸心として前後方向に回動できるようになっている。また、この下段の下アーム10,11の下端は、棚板6の左右両端部に固着された支持体21の側面に枢軸部18,19を介して枢着されており、これら上アーム8,9、下アーム10,11を回動させることで棚板5,6が昇降されるようになっている。
【0028】
また、上段の棚板5の左右各端部に、上段の棚板5の前後幅と略同じ幅の側板5aが上方に延設されている。側板5aは、箱体41内部の奥側領域Rの上下高さと略同じ上下高さを有している。更に、棚板5の後縁及び両側板5a,5aの後縁とに、背板5bが設けられており、すなわち上段の棚板5は、左右側及び後側が閉塞され少なくとも前側が開放された構成になっている。
【0029】
図5に示されるように、下段に配置される棚板6の下面前部には、棚板5,6を昇降させる際に使用者が把持できる凹溝状の手掛部22が形成されており、使用者は、棚板5,6を使用するときには手掛部22を把持して棚板5,6を降下させ、棚板6を使用しないときには、棚板5,6を上昇させることで、上下段の上アーム8,9、下アーム10,11が後述するアーム連動手段を介してそれぞれ逆方向に回動し、上下方向の中央に配置される支持体20を中心として側面視で「く」の字状に屈曲してコンパクトに折り畳まることで、棚板5,6が箱体41内部の奥側領域R内に位置する上昇位置(図6に示される位置)に配置されるようになっている。このとき、上段の棚板5上面に物品を載置した状態で棚板5,6を上昇位置に配置することで、棚板5上面に載置した物品を箱体41内の奥側領域Rに収納することができる。
【0030】
更に、図3及び図4に示すように、左右の上アーム9,9の上部間及び左右の下アーム11,11の下部間には、左右に配置される上アーム9,9、下アーム11,11同士を連結する左右方向を向くフレーム23,24が設けられており、このフレーム23,24が設けられることによって、棚板5,6の左右側に配置される左右の上アーム8,9及び左右の下アーム10,11が連動し、棚板5,6が左右にがたつくことなく、円滑に昇降されるようになっている。
【0031】
箱体41の背板44の前面には、昇降棚1が前記上昇位置に折り畳まれた状態において、フレーム23の中央部が当接される当接金具25がネジ(図示略)等を用いて取り付けられている。この当接金具25には、上段側のフレーム23との当接箇所に切欠部25aが凹設されており、棚板5,6が上昇したときにおいて、フレーム23が当接金具25の切欠部25aに嵌合して当接されることで上昇が規制され、上アーム8,9及び下アーム10,11の上方への過回動を防止するようになっている。尚、本実施例の当接金具25に替えて、マグネットなどから成る係止手段を用いても良く、棚板5,6が上昇位置にあるときにフレーム23,24が前記係止手段に当接することで上昇が規制されるようにし、すなわち前記係止手段により棚板5,6を上昇位置に維持できるようにしても良い。
【0032】
図4に示すように、箱体41の前側領域Fに配置された回動棚48の下面には、吊戸棚3の下方に配置されるキッチン台(図示略)等を照らす照明装置26が配置されている。この照明装置26は、長手が左右方向を向き、その左右幅が吊戸棚3の左右幅よりも短く形成されており、後に詳述するように、昇降棚1が上昇位置に位置したときに、照明装置26の左右側に支持体20や互いに折り畳まれた上アーム8,9及び下アーム10,11が配置される空間部が形成されるようになっているとともに、照明装置26の後側には、上段及び下段の2枚の棚板5,6が上下に重合された状態で配置されるようになっている(図6参照)。
【0033】
図4に示すように、吊戸棚3の前側領域Fの前面側には、この前側領域Fを開閉自在とする跳ね上げ扉28を構成する下扉28bが設けられている。この下扉28bの下面は、箱体41の両側板43の下面と略面一になるように延設されており、図6に示すように、棚板5,6が上昇されて前記上昇位置に位置している状態において、これら棚板5,6を含む昇降棚1全体の前方側が下扉28bによって覆われるため、昇降棚1及び吊戸棚3の見栄えが向上する。
【0034】
昇降棚1について詳述すると、特に図5に示すように、上段及び下段の棚板5,6の左右に配置される上アーム8,9、下アーム10,11は、それぞれ前後方向に2本づつ配置されており、それぞれの上端及び下端が取付部材7及び支持体20,21の枢軸部12〜19に枢着されている。取付部材7及び支持体20,21に配置されるそれぞれの上アーム8,9、下アーム10,11の枢軸部12〜19は、上アーム8,9、下アーム10,11の上部側及び下部側ともに略等間隔離間されて配置されており、互いの上アーム8,9、下アーム10,11が平行を成した状態で回動できる平行リンク機構として構成されている。
【0035】
図3に示すように、左右に配置される取付部材7には、付勢手段としてのガススプリング29がそれぞれ配置されている。ガススプリング29本体の前端部は、取付部材7の前方側に設けられた枢軸部30に揺動自在に枢着されているとともに、ガススプリング29の後端部、すなわち、ガススプリング29本体に対して伸縮自在に嵌挿された伸縮ロッドの先端部は、前後一対の上アーム8,9のうちの後方側に配置されるアーム9の上端部近傍に取り付けられた枢軸金具32の先端部に形成された枢軸部31に枢着されており、この枢軸部31は、アーム9の枢軸部13から若干離れた位置に設けられている。尚、枢軸金具32は上アーム9に一体に設けられても良い。
【0036】
図4に示すように、棚板5,6が最大に降下された降下位置にあるときには、ガススプリング29が枢着される枢軸部31が、アーム9の上部に設けられた枢軸部13よりも若干前方位置にあるため、ガススプリング29は、アーム9が枢軸部13を軸心として前方側に回動する方向、すなわち棚板5,6の上昇させる方向に押圧するようになっている。そのため棚板5,6が降下位置まで下げられると、ガススプリング29の付勢力によって棚板5,6が最大に降下した降下位置にて保持されるようになっている。
【0037】
尚、アーム9の枢軸部13とガススプリング29の枢軸部31とが、ガススプリング29の押圧方向とほぼ同一直線上に位置(若しくは前記同一直線よりも若干下方側でもよい)されたとしても、棚板5,6が降下位置にて保持される。更に尚、降下位置におけるガススプリング29の押圧力が、棚板5,6を持上げるために必要な力よりも低く設定してある場合には、ガススプリング29が枢着される枢軸部31が、アーム9の上部に設けられた枢軸部13よりも上方位置にある場合でも、棚板5,6が最大に降下した降下位置にて保持される。
【0038】
そして、図5に示すように、使用者が手掛部22を掴んで棚板6を上方に押し上げ、ガススプリング29が枢着される枢軸部31が枢軸部13よりも若干上方に位置すると、ガススプリング29は、アーム9が枢軸部13を軸心として前方側に回動する方向、すなわち、棚板5,6を上昇させる方向に押圧付勢する。このガススプリング29の押圧付勢力によって棚板5,6が上昇し、棚板5,6の上昇をガススプリング29が補助するので、使用者が強く押し上げなくても棚板5,6を楽に上昇させることができる。
【0039】
また、棚板5,6を下げるときにおいて、ガススプリング29の付勢力により棚板5,6が自重によって急に下がるようなこともなくなり、ゆっくり降下するようになるため安全である。尚、本実施例では付勢手段としてガススプリング29を用いているが、ガススプリング29に限ることなく、ロータリー式ダンパーやコイルバネなどを用いて付勢手段を構成してもよい。
【0040】
さらに、特に詳細な図示はしないが、ガススプリング29本体に対する伸縮ロッドの摺動を、操作ボタン等の操作によって規制することができるロック機構付きのガススプリングを適用してもよく、このようにすることで、棚板5,6を適宜降下位置にて確実に保持することができるため、棚板5,6の高さ方向の降下位置を種々に変更することができる。
【0041】
図1の部分拡大断面図に示すように、棚板5の左右に配置される上段の支持体20の内面には、前後方向に延びる摺動溝33が形成されており、この摺動溝33に棚板5の左右両端部が摺動可能に取り付けられ、棚板5は支持体20に対して前後方向に移動できるようになっている。尚、棚板5の左右両端部には、摺動溝33の上下部に形成された係合片33aに係合される係合部5aが前部付近に形成されており、棚板5が摺動溝33から外れることが防止されている。
【0042】
図5に示すように、棚板5とアーム9との間には、上アーム8,9の回動に伴って棚板5を前方または後方に摺動させるための昇降棚連動手段としての摺動リンク部材34が取り付けられている。この摺動リンク部材34は、その下端が棚板5の左右両端部における後側に設けられた枢軸部36を介して枢着されるとともに、上端が上アーム8,9のうちの後側のアーム9に形成された枢軸部35に枢着されており、使用者が棚板6の手掛部22を掴んで棚板5,6を図3に示す降下位置から上昇させると、図4及び図5に示すように、上アーム8,9が枢軸部12,13を軸心として前方側に回動し、その回動に伴い摺動リンク部材34が枢軸部35を軸心として後方側に回動されることで、棚板5が支持体20に対して後方側に移動される。
【0043】
棚板5,6が降下されると、上アーム8,9が枢軸部12,13を軸心として後方側に回動し、その回動に伴い摺動リンク部材34が枢軸部35を軸心として前方側に回動されることで、棚板5が支持体20に対して前方側に移動される。
【0044】
このように上アーム8,9の回動が摺動リンク部材34を介して棚板5に伝達されるので、使用者が棚板5,6を昇降させると自動的に棚板5が支持体20に対して前方または後方に移動されるため、使用者が手動で棚板5を前方または後方に移動させる必要がなくなる。また、昇降棚連動手段として摺動リンク部材34を適用することで、棚板5の前部が支持体20の摺動溝33に、摺動溝33から後方に突出した後部が摺動リンク部材34により安定して支持される。
【0045】
また、棚板5,6が、側板43の下面に近接する上昇位置まで上昇された際に、上段及び下段の2枚の棚板5,6は、照明装置26よりも後側に退避した退避位置にて吊戸棚3の下面に重ねて配置されるので、棚板5が照明装置26の下方に配置して、該棚板5により照明装置26の光が遮られることがない(図6参照)。
【0046】
図5に示すように、上段の支持体20の内部には、上段及び下段のいずれか一方の上アーム8,9、下アーム10,11の回動に伴って他方の上アーム8,9、下アーム10,11を回動させるための本実施例におけるアーム連動手段としての回動リンク部材37が設けられている。
【0047】
詳しくは、図4〜図6に示すように、前後一対の上アーム8,9のうち前側に配置されるアーム8は、その下端がアーム8の枢軸部14より下方に延設され、この下端部には、回動リンク部材37が枢着された枢軸部38が設けられているとともに、前後一対の下アーム10,11のうち前側に配置されたアーム10の上端部には、回動リンク部材37が枢着される枢軸部39が形成された枢軸金具40が取り付けられている。尚、回動リンク部材37は上アーム8に一体に設けられても良く、枢軸金具40は下アーム10に一体に設けられても良い。
【0048】
よって、使用者が棚板6の手掛部22を掴んで図6に示す棚板5,6を上昇させると、図4及び図5に示すように、下段のアーム10が枢軸部16を軸心として後方側に回動され、その回動を回動リンク部材37が上段のアーム8に伝達し、上段のアーム8が枢軸部14を軸心として後方側に回動される。このように回動リンク部材37によって上段及び下段の上アーム8,9、下アーム10,11が同時に回動されるので、上段の棚板5及び下段の棚板6が、それぞれ平行リンクとして構成された上アーム8,9、下アーム10,11によって水平状態を保たれたまま同時に昇降されるようになる。
【0049】
以上説明したように、本実施例における吊戸棚3にあっては、吊戸棚3の収納領域を手前側の前側領域Fと奥側の奥側領域Rとに区分し、手が届き難い奥側領域Rに昇降棚1を配置し昇降可能にすることで、吊戸棚3の奥側領域Rの使い勝手が向上するともに、昇降棚1の下段の棚板6は昇降棚1を降下させたときのみに物品を載置可能な仮置き棚部とし、上段の棚板5は物品を載置したまま上昇させて箱体41内の収納棚部として使用できる。
【0050】
また、手前側が開放した上段の棚板5に物品を載置し易いばかりか、棚板5上面に載置した物品が左右両側板43,43と背板44とに依り落下し難く、手前側に落下防止用の桟などを適宜設けることもできる。
【0051】
本実施例における昇降棚1にあっては、上段及び下段における前後にそれぞれ離間配置される前後一対の上アーム8,9及び下アーム10,11が平行リンクとして構成されているので、棚板5,6がその上面を水平状態に維持したまま安定して昇降される。また、上アーム8,9、下アーム10,11は互いに交差せずに回動されるので、使用者が誤って指を上アーム8,9間または下アーム10,11間に挟む虞も少なく、万一指を挟んだとしても、上アーム8,9、下アーム10,11同士が平行に配置された状態なので、強い力が指に加わることがない。
【0052】
尚、上アーム8,9、下アーム10,11の枢軸部14〜19が支持体20,21の内部に配置されているので、昇降棚1の見栄えが向上するとともに、上アーム8,9、下アーム10,11が回動されたときに、強い力が加わりやすい枢軸部14〜19近傍に使用者の指を挟める虞もなくなる。
【0053】
また、上段の棚板5は、該棚板5を支持する支持体20を介して前後一対の上アーム8,9の下端に枢着されるとともに、棚板5は該支持体20に対して前後方向に摺動可能に取り付けられているとともに、上アーム9と棚板5とが摺動リンク部材34を介して連係されていることで、上アーム9が回動するとその回動力が摺動リンク部材34を介して棚板5に伝達され、棚板5が昇降に応じて前方または後方に摺動して所定位置まで移動するようになっていることで、棚板5が降下して下方の降下位置に位置したときには、図4に示すように棚板5は支持体20に対して前方に移動し、前後の位置をほぼ保ったまま降下できるので、使用者の前方の使用空間が損なわれず、使用者からの使い勝手が向上する。
【0054】
また、側板43の内面下部に上端が枢着された左右の前後一対の上アーム8,9の長手幅は、上昇位置において奥側領域Rの前後幅の範囲内に納まる長さに制限されるが、棚板5を降下させたときに該棚板5の後端が後側の壁面2に当接しても、支持体20に対して棚板5を前方に移動させることができるため、上アーム8,9の回動範囲が棚板5により大きく制限されることなく、上アーム8,9の下端を極力下方まで降下させることができる。
【0055】
また、棚板5が上方の上昇位置に位置したときには、図6に示すように、棚板5は摺動リンク部材34の作用により支持体20に対して後方に移動し、照明装置26の後方の退避位置まで退避するため、棚板5により照明装置26からの光が遮られることがないばかりか、使用者が手動で棚板5を移動させる手間が不要となる。
【0056】
また、前後一対の上アーム8,9及び下アーム10,11は、各側板43の内面下側に配置され、棚板5,6の左右端部を昇降自在に支持するようになっているとともに、両照明装置26,26の最大左右幅は上アーム8,9及び下アーム10,11の左右幅よりも短寸に形成され、上昇位置において照明装置26の左右外側にこれら上アーム8,9及び下アーム10,11の収容スペースが形成されていることで、上昇位置において上アーム8,9及び下アーム10,11が側板43の内面に極力近接するようにコンパクトに収容することができる。
【0057】
さらに、上アーム8,9の上端が枢着されている取付部材7が、箱体41の両側板43,43内面及び略下端後方に取り付けられているため、図1に示す降下位置において、照明装置26の鉛直下方に棚板5,6が位置することなく、照明装置26よりも後側に退避して壁面2寄り(後側)に位置するため、降下位置においても上方の照明装置26からの光を遮ることがないとともに、照明装置26の下方に配置されるキッチン台 (図示略)上にて作業する使用者の邪魔になることがない。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0059】
例えば、前記実施例では、吊戸棚3の箱体41内部の前側領域Fに、回動自在の回動棚48が設けられていたが、このような回動棚に限られず、例えば前側領域Fに上下に仕切る仕切棚板が所定数設けられていてもよい。
【0060】
また、前記実施例では、吊戸棚3の箱体41の前面開口に、跳ね上げ扉28が設けられていたが、このような跳ね上げ扉に限られず、例えば前面開口に観音開き式の開閉扉が設けられていてもよい。
【0061】
また、前記実施例では、吊戸棚3の箱体41の内部に、前側領域F及び奥側領域Rの上方に上方領域Uを形成する仕切棚板45が設けられていたが、例えば箱体41の内部に仕切棚板が設けられておらず、前側領域F及び奥側領域Rのみが形成されていてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、棚部に棚板5,6が適用されていたが、このような板状部材からなる棚に限定されるものではなく、前後方向に並設される複数本のパイプ等からなる水切り棚等を適用してもよい。また前記実施例で示した昇降棚を、吊戸棚の前後方向に複数組並設してもよい。
【0063】
更に、前記実施例では、棚部を構成する上段の棚板5に、左右各側部に側板5aが上方に延設されるとともに、後縁に背板5bが上方に延設されていたが、例えば上段の棚板を構成せずに下段の棚板に、左右各側部に側板が上方に延設されるとともに、後縁に背板が上方に延設されていても良く、このようにすることで、前記側板及び前記背板を更に上方に延ばすことができ、より多くの物品を収納できる。
【符号の説明】
【0064】
1 昇降棚
3 吊戸棚
5 棚板(上段の棚部)
6 棚板(下段の棚部)
8,9 上アーム
10,11 下アーム
12〜19 枢軸部
20,21 支持体
26 照明装置
28 跳ね上げ扉
41 箱体
42 天板
43 側板
45 仕切棚板
47 垂直軸
48 回動棚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方が開口し少なくとも両側板と天板とからなる箱体の奥側の収納領域に昇降棚を配置し、前記箱体の手前側に別の収納領域を有する吊戸棚であって、
前記昇降棚は、上下2段の棚部と、これ等棚部の左右各端側に配置された前記上段の棚部を昇降自在に支持する前後一対の上アーム及び前記下段の棚部を昇降自在に支持する前後一対の下アームと、前記上アームと前記下アームとを枢着する上側の支持体と、から構成されており、
前記上アームと下アームとは、連動して互いに逆方向に回動し、前記上下2段の棚部を昇降させるとともに、前記上段の棚部は、前記支持体に対して前後方向に移動可能に取り付けられ、該上段の棚部の前後位置を略一定に維持しながら昇降することを特徴とする吊戸棚。
【請求項2】
前記上段の棚部は、手前側を少なくとも一部開放し、左右両側板と背板とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の吊戸棚。
【請求項3】
前記箱体の手前側の収納領域に、該箱体に支持された鉛直軸回りに回動自在に枢支された回動棚が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の吊戸棚。
【請求項4】
前記回動棚の下部に、下方向きの照明装置が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の吊戸棚。
【請求項5】
前記箱体の手前側に、該手前側を開閉自在の跳ね上げ扉が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の吊戸棚。
【請求項6】
前記箱体の内部に、前記奥側の収納領域の上方を上方領域として形成する仕切棚板が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の吊戸棚。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−147662(P2011−147662A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12401(P2010−12401)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】