説明

吊金具及び電子機器

【課題】構造的な自由度を確保しながら、防水・防塵上の信頼性を向上させた吊金具を提供する。
【解決手段】吊金具は、板状の固定部201と突出部202とが一体となった吊金具本体102aと、突出部202に挿通される密封部材401及び保持部材402とを有する。突出部202は電子機器の外装部材103aに設けられた開口部104aから突出し、突出部202の厚さ方向の両面には、固定部101が電子機器の本体部に固定された状態において外装部材103aの内側に位置するように、第1の突起部206a及び第2の突起部206bが形成されている。密封部材401と保持部材402とが、第1の突起部206aと外装部材103aとの間及び第1の突起部206bと外装部材103aとの間に配置され、密封部材401は突起部206と外装部材103aとよって所定のチャージ量で押圧される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置等の電子機器に装備される吊金具と、この吊金具を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルスチルカメラ等の撮像装置には、カメラ筐体(撮像装置本体)に保持用ベルトを掛けるための吊金具が設けられている。
【0003】
図6は従来の吊金具の構造及び吊金具のカメラ筐体への取付構造を示す図である。この取付構造では、カメラ筐体11に吊金具14を固定するために、カメラ筐体11には、パーティングライン面に開口する2つのねじ孔12と、2つのねじ孔12の開口方向と同一の方向に突出する位置決め用の突子13が形成されている。
【0004】
吊金具14は、例えば、板金からなり、ここでは、ストラップを掛けるためのストラップ金具である。吊金具14は、2つのねじ孔12に対応するねじ挿通孔15と、突子13と嵌合される位置決め孔16と、ストラップベルト(不図示)を連結してなる三角金具17を取り付けるための穴部19とを有している。吊金具14は、突子13と位置決め孔16とを嵌合させ、ねじ18をねじ挿通孔15に挿通させと共にねじ孔12に螺合させることによって、カメラ筐体11に固定される。
【0005】
また、図7は従来の別の吊金具の構造及び吊金具のカメラ筐体への取付構造を示す図である。この取付構造では、カメラ筐体32に丸形の取付孔34が形成され、吊金具であるストラップ金具38が有している丸棒軸40を回転自在に取付孔34に嵌挿させている。そして、ストラップ金具38の内側挿通端部を係止する略L字状のホルダー45を、カメラ筐体32内でシール部材52を介してねじ止めしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−269015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図6の取付構造では、吊金具14(ストラップ金具)とカメラ筐体11との間に形成される空隙が大きく、防水・防塵上の信頼性が低いというという問題がある。また、図7の取付構造では、略L字状のホルダー45とカメラ筐体32とのクリアランスが、シール部材52を密着させる程度に近くなければならない。そのため、略L字状のホルダー45の取付位置やストラップ金具38の形状が限定的になってしまい、密封構造の自由度に欠けるという問題がある。
【0008】
本発明は、構造的な自由度を確保しながら、防水・防塵上の信頼性を向上させた吊金具と、この吊金具を装備した電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る吊金具は、電子機器に装備される吊金具であって、前記電子機器の本体部の内部部品に対して固定される固定部と、前記固定部と一体であり、前記本体部の外観部を構成する外装部材に設けられた開口部を通して前記電子機器の本体部の内部から外部に向かって突出する突出部とを有し、前記固定部が前記本体部に固定された状態において前記外装部材の内側に位置する突起部が形成された吊金具本体と、前記突出部に挿通され、前記突起部と前記外装部材に設けられた開口部との間に配置されて前記開口部を密封する密封部材とを備え、前記密封部材は前記外装部材と前記突起部とによって押圧されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る電子機器は、吊金具と、本体部の外観部を構成する外装部材を備える電子機器であって、前記外装部材は、前記本体部の内部から外部に向かって前記吊金具を突出させる開口部を有し、前記吊金具は、前記本体部の内部部品に対して固定される固定部と、前記固定部と一体であり、前記外装部材に設けられた前記開口部を通して前記本体部の内部から外部に向かって突出する突出部とを有し、前記固定部が前記本体部に固定された状態において前記外装部材の内側に位置する突起部が形成された吊金具本体と、前記突出部に挿通され、前記突起部と前記外装部材に設けられた開口部との間に配置されて前記開口部を密封する密封部材とを有し、前記密封部材は前記外装部材と前記突起部とによって押圧されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、構造的な自由度を確保しながら、防水・防塵上の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る吊金具を備えた撮像装置の本体部の外観構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る吊金具の外観斜視図である。
【図3】図2に示す吊金具の側面図である。
【図4】図2に示す吊金具が撮像装置に取り付けられた状態を破断して示す断面図である。
【図5】図2に示す吊金具が撮像装置の本体部を構成する外装部材に対して組み付けられた構造を示す分解斜視図である。
【図6】従来の吊金具の構造及び吊金具のカメラ筐体への取付構造を示す図である。
【図7】従来の別の吊金具の構造及び吊金具のカメラ筐体への取付構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、電子機器として撮像装置を取り上げることとし、更に、撮像装置の一例であるデジタルビデオカメラを取り上げることとする。但し、本発明はこのような撮像装置に限定されるものではなく、例えば、ストラップ等を取り付ける吊金具が装備される携帯/携行型の電子機器に広く適用することができる。
【0014】
<撮像装置の本体部の外観構造>
図1は本発明の実施形態に係る吊金具を備えた撮像装置の本体部の外観構造を示す斜視図である。撮像装置(デジタルビデオカメラ)の本体部101の外観部は、互いに嵌合した複数の外装部材によって構成されており、その内部に不図示の撮像素子や制御基板やフレキシブル基板等の内部部品(構成部品)が収納されている。本体部101の左右それぞれに、撮影者が撮像装置の運搬時に使用するためにショルダストラップ等を挿通して使用する一対の吊金具が装備されている。一対の吊金具はそれぞれ、板状の吊金具本体102a,102bと、吊金具本体102a,102bのそれぞれに対して配置される密封部材401及び保持部材402(図3乃至5参照)によって構成される。
【0015】
<吊金具の構造>
吊金具本体102a,102bは、本体部101の外装表面から突出していなければならない。そのため、吊金具本体102a,102bが表出する位置に配置されている外装部材103a,103bのそれぞれに、吊金具本体102a,102bを挿通させるための開口部104a,104bが形成されている。
【0016】
図2は吊金具本体102aの外観斜視図であり、図3は吊金具本体102aの側面図である。なお、吊金具本体102bは吊金具本体102aと同様の構造を有している。
【0017】
吊金具本体102aは、板金部材をプレス加工することによって一体的に形成された板状の固定部201と突出部202とを有しており、固定部201と突出部202とは略直交している。固定部201は本体部101の内部構成部材に固定される。吊金具本体102aが撮像装置に装着された状態において、突出部202は、外装部材103aの開口部104aを通して本体部101の内部から外部に向かって突出する。
【0018】
また、固定部201には、固定部201を本体部101に固定するために、本体部101の内部部品(不図示)に対して位置決めするための位置決め孔203と、内部部品に固定するための締結孔204とが形成されている。更に、突出部202には、ショルダストラップを挿通させるための角丸長方形状の挿通孔205が形成されている。また、突出部202の第1の面における挿通孔205近傍には、突出部202の厚さ方向に突出した第1の突起部206aが半抜き加工によって形成されている。突出部202の第1の面の裏面となる第2の面における挿通孔205近傍には、突出部202の厚さ方向に突出した第2の突起部206bが半抜き加工によって形成されている。第1の突起部206a及び第2の突起部206bは、後述するように、吊金具本体102aが撮像装置に装着された状態において、外装部材103aの内側に位置するように形成される。
【0019】
図2に示すように、3つの第1の突起部206aは、挿通孔205の長辺方向に沿って一列に並ぶように形成されており、3つの第2の突起部206bも、挿通孔205の長辺方向に沿って一列に並ぶように形成されている。第1の突起部206a及び第2の突起部206bは、挿通孔205の長辺方向に交互に形成されている。挿通孔205の長辺方向における2つの第1の突起部206aの間隔と、挿通孔205の長辺方向における2つの第2の突起部206bの間隔とが略等しくなるように、第1の突起部206a及び第2の突起部206bは形成されている。
【0020】
図3に示すように、第1の突起部206aは、挿通孔205の下面(挿通孔下面301)と第1の突起部206aにおいて挿通孔205に近い側の面(保持面302)との距離が一定となる位置に形成される。第2の突起部206bは、挿通孔205の下面(挿通孔下面301)と第2の突起部206bについても、挿通孔205に近い側の面(保持面302)との距離が一定となる位置に形成される。
【0021】
<吊金具の周辺構造>
次に、図4を参照して、吊金具本体102aの周辺構造について説明する。図4は吊金具本体102aが撮像装置に取り付けられた状態を破断して示す断面図である。なお、吊金具本体102bについても、吊金具本体102aと同様の構造で撮像装置に取り付けられる。
【0022】
吊金具本体102aと外装部材103aとの間には、密封部材401と保持部材402とが配置されている。密封部材401は、吊金具本体102aと外装部材103aとのクリアランスを封止するためのシール部材であり、弾性材料からなる。密封部材401は、例えば、樹脂製のOリングが使用される。
【0023】
密封部材401としては、その内径が吊金具本体102aにおいて密封部材401が配置される取付部分の全周長さよりも短いものを使用する。これにより、吊金具本体102aと密封部材401との間に隙間が生じることが防止され、密封性を向上させることができる。なお、密封部材401は、クリアランスを封止する機能を発揮させることができればよく、Oリングに限定されるものではない。
【0024】
保持部材402は、吊金具本体102aの保持面302に配置される部品であり、密封部材401の片面を受けるために設置されている。外装部材103aにおいて密封部材401と接する部分には、傾斜面403が設けられている。この傾斜面403は、後述するように、密封部材401を吊金具本体102a及び保持部材402に対して押圧し、密封性を向上させる。
【0025】
<吊金具の本体部への組付手順>
図4及び図5を参照して、吊金具本体102aの本体部101(外装部材103a)への組付手順について説明する。図5は、吊金具本体102aが外装部材103aに対して組み付けられた構造を示す分解斜視図である。吊金具本体102bについても、吊金具本体102aと同様の組付手順で外装部材103bに対して組み付けられる。
【0026】
先ず、撮像装置の本体部101の内部部品(不図示)に設けられた位置決め凸部に対して吊金具本体102aに形成された位置決め孔203が嵌合するように、吊金具本体102aを位置決めする。次いで、締結孔204にビスを挿通し、締結することにより、本体部101に対して吊金具本体102aを固定する。
【0027】
続いて、保持部材402を、吊金具本体102aの突出部202に挿通させ、保持面302に突き当たる位置に配置する。このとき、挿通孔下面301と保持面302との距離(図3参照)を全て同一としているため、ショルダストラップによって吊金具本体102aが引っ張られた場合でも、保持部材402に加わる荷重を安定させることができる。
【0028】
次に、密封部材401を、保持部材402に突き当たるように、吊金具本体102aの突出部202に挿通させ、配置する。最後に、外装部材103aの開口部104aから吊金具本体102aの突出部202が突出するように、外装部材103aを組み付ける。このとき、外装部材103aと突起部206とが、密封部材401を突出部202に密着させるために密封部材401を所定のチャージ量で押圧するように、保持面302の位置(つまり、第1突起部206a及び第2の突起部206bの位置)が設定されている。また、外装部材103aが密封部材401を押圧する当接面は、密封部材401を吊金具本体102aに押し付けるような傾斜面403となっている。よって、密封部材401による密封性が向上している。
【0029】
以上の説明の通り、本実施形態によれば、吊金具本体102aの取付位置から外装部材103aの開口部104aとの距離が離れてしまっている場合でも、密封部材401を開口部104aの近傍に配置することができる。これは、吊金具本体102aにおける突出部202の形状と、突出部202に形成する第1突起部206a及び第2の突起部206bの位置を調節することによって密封部材401を配置する位置を容易に調整することができるからである。すなわち、本実施形態によれば、吊金具本体102aの取付位置に制限されることなく、吊金具本体102aの形状や取付構造に対する設計の自由度を確保しながら、防水・防塵上の信頼性を向上させることが可能になる。
【0030】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0031】
例えば、第1の突起部206a及び第2の突起部206bをそれぞれ、連続的な形状に変形した突起部、すなわち、棒状の突起部を半抜き加工によって形成してもよい。また、吊金具本体102aに棒状の突起部を形成する一方で、突起部を形成できない部分は、本体部101の内部構成部材で構成するか或いは別部材で構成することで、保持部材402を配置する必要がなくなる。
【符号の説明】
【0032】
102a,102b 吊金具本体
103a,103b 外装部材
104a,104b 開口部
205 挿通孔
206 突起部
401 密封部材
402 保持部材
403 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に装備される吊金具であって、
前記電子機器の本体部の内部部品に対して固定される固定部と、前記固定部と一体であり、前記本体部の外観部を構成する外装部材に設けられた開口部を通して前記電子機器の本体部の内部から外部に向かって突出する突出部とを有し、前記固定部が前記本体部に固定された状態において前記外装部材の内側に位置する突起部が形成された吊金具本体と、
前記突出部に挿通され、前記突起部と前記外装部材に設けられた開口部との間に配置されて前記開口部を密封する密封部材とを備え、
前記密封部材は前記外装部材と前記突起部とによって押圧されることを特徴とする吊金具。
【請求項2】
前記突起部は、前記突出部の第1の面に半抜き加工によって形成される第1の突起部と、前記突出部の前記第1の面の裏面となる第2の面に半抜き加工によって形成される第2の突起部とを有し、
前記突出部に挿通され、前記第1の突起部と前記密封部材との間に配置されるとともに、前記第2の突起部と前記密封部材との間に配置される保持部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載の吊金具。
【請求項3】
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、一列に並んで形成されるとともに、前記第1の突起部と前記第2の突起部とが交互に形成されていることを特徴とする請求項2記載の吊金具。
【請求項4】
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、所定の間隔で複数形成され、
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、前記複数の第1の突起部が形成される間隔と前記複数の第2の突起部が形成される間隔とが略等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の吊金具。
【請求項5】
吊金具と、本体部の外観部を構成する外装部材を備える電子機器であって、
前記外装部材は、前記本体部の内部から外部に向かって前記吊金具を突出させる開口部を有し、
前記吊金具は、前記本体部の内部部品に対して固定される固定部と、前記固定部と一体であり、前記外装部材に設けられた前記開口部を通して前記本体部の内部から外部に向かって突出する突出部とを有し、前記固定部が前記本体部に固定された状態において前記外装部材の内側に位置する突起部が形成された吊金具本体と、前記突出部に挿通され、前記突起部と前記外装部材に設けられた開口部との間に配置されて前記開口部を密封する密封部材とを有し、
前記密封部材は前記外装部材と前記突起部とによって押圧されることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
前記突起部は、前記突出部の第1の面に半抜き加工によって形成される第1の突起部と、前記突出部の前記第1の面の裏面となる第2の面に半抜き加工によって形成される第2の突起部とを有し、
前記突出部に挿通され、前記第1の突起部と前記密封部材との間に配置されるとともに、前記第2の突起部と前記密封部材との間に配置される保持部材を更に備えることを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、一列に並んで形成されるとともに、前記第1の突起部と前記第2の突起部とが交互に形成されていることを特徴とする請求項6記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、所定の間隔で複数形成され、
前記第1の突起部及び前記第2の突起部はそれぞれ、前記複数の第1の突起部が形成される間隔と前記複数の第2の突起部が形成される間隔とが略等しくなるように形成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の電子機器。
【請求項9】
前記外装部材において前記密封部材と当接する面は、前記密封部材を前記吊金具の前記突出部に密着させるように押圧する傾斜面であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92716(P2013−92716A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235879(P2011−235879)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】