吊金車
【課題】 本発明の目的は、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れがなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に、しかも容易に固定できる吊金車を提供することにある。
【解決手段】 本発明の吊金車は、互いに対向配置され外側に滑車11、21を、内側に線状体挿通部12、22を有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に連結ロープ保持部50を有する吊金車1において、連結ロープ保持部50は第一線状体保持部10と第二線状体保持部20を連結し、かつ連結ロープ41が挿通される凹部51が設けられている軸部52と、軸部52の表面に設けられたネジ部53に螺合し凹部51を挿通する連結ロープ41を固定するナット54とを有する。
【解決手段】 本発明の吊金車は、互いに対向配置され外側に滑車11、21を、内側に線状体挿通部12、22を有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に連結ロープ保持部50を有する吊金車1において、連結ロープ保持部50は第一線状体保持部10と第二線状体保持部20を連結し、かつ連結ロープ41が挿通される凹部51が設けられている軸部52と、軸部52の表面に設けられたネジ部53に螺合し凹部51を挿通する連結ロープ41を固定するナット54とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線用の吊金車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、送電線用の鉄塔間に架線されている送電線を張り替える方法の一つに、反転吊金工法という工法が知られている。
この方法は図3(a)に示すように、各吊金車1の連結ロープ保持部30を所定間隔で連結ロープ41に取り付けた後、各吊金車1の第一線状体保持部10に既設の上線42を挿通して、この上線42上を自走する自走車43により連結ロープ41の先端部を矢印方向に引っ張って、図3(b)が示すように吊金車1を所定間隔で上線42に配設する。このとき各吊金車1の下部に設けられている第二線状体保持部20には、新設線をこの吊金車1の第二線状体保持部20に挿通するためのガイドとしてメッセンジャーワイヤ45が挿通されていて、このメッセンジャーワイヤ45も前述した連結ロープ41と共に自走車43により牽引される。
【0003】
続いて図3(c)が示すように、送電線の張り替え対象区間内において、鉄塔間に吊金車1がすべて配設されたら、メッセンジャーワイヤ45の後端に新設線47の先端部を連結し、汎用の巻取機でメンセンジャーワイヤ45を巻き取り、各吊金車1の第二線状体保持部20に新設線47を挿通せしめ、これを保持する。ここで符号48はメッセンジャーワイヤ45と新設線47との連結部を示している。
【0004】
図3(c)が示す手順により鉄塔間全長に亘って吊金車1の第二線状体保持部20に新設線47を挿通し終えたら、次に図3(d)が示すように、既設の上線42を弛め、下線である新設線47を緊張させることにより吊金車1の天地方向を矢印Q方向に反転させる。
この反転により吊金車1の第一線状体保持部10と第二線状体保持部20とが反転し、既設の上線42が下に、新設線47が上、すなわち上線があった位置に配設される。
【0005】
この状態で新設線47が上線として張設され、図3(e)が示すように弛緩した既設線42は新設線47上を移動する回収機49により連結ロープ41と共に回収され、既設線42から新設線47への張り替えが完了する。尚、この回収機49の移動方向は、図3上で右向き、左向きどちらでもよい。
【0006】
ところで、前記図3において用いられている吊金車1として、例えば特許文献1において従来例として開示されているものを図4に、そして図4の改良品として特許文献1に開示されている発明の吊金車1を図5に示す。
図4が示す従来の吊金車1は、互いに対向配置され外側に滑車11、21を有し、内側に線状体挿通部12、22をそれぞれ有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に連結ロープ保持部30を有するものである。
この連結ロープ保持部30は、吊金車1の枠体13(23)と開閉部材14との間に連結ロープ41を挿通するための連通ロープ把持部35を設けたもので、この連通ロープ把持部35の内径を連結ロープ41の外径より小さめにしておいて、この連通ロープ把持部35に連結ロープ41を挿通した後、蝶ネジ36を回動して締め込み、連通ロープ把持部35内に連結ロープ41を固定し、保持するものである。
【0007】
また図5に示すものは、第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に軸部31、32を介して連結ロープ保持部30を設けたもので、この連結ロープ保持部30は上下で前記軸部31、32により保持されている環状の連結環37と、一端が前記軸部31に遊動自在に係止された短冊状の屈曲片38とからなっている。
そして連結ロープ41を保持する場合には、図5が示すように連結ロープ41を屈曲片38の前側かつ連結環37の両側の後ろ側に挿通する。このようにしておけば、連結ロープ41が緊張した際には、屈曲片38の先端が連結環37の環状部下端に係着して屈曲片38が固定され、連結ロープ41も固定され、保持される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−315122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら図4が示す吊金車1では、連結ロープ41の取り付け、取り外しの際、蝶ネジ36を回動しなければならず、その際、このネジ36を落としてしまう恐れがある。特に実際の送電線張り替え工事現場においては、数多くの吊金車1を送電線に装着する必要があるため、この可能性が極めて高い。しかも蝶ネジ36は吊金車1本体とは別体であるため、吊金車1本体から外れた蝶ネジ36がなくなる可能性もあり、概して作業性が悪かった。
【0010】
また図5が示す吊金車1では、連結ロープ41の固定は、図4に示すものよりも手早く行えるものの、連結ロープ41の固定を簡単に言えば、単に連結環37と屈曲片38との隙間に挟んでいるだけであるため保持力が弱く、そのため連結ロープ41は容易に連結環37の周方向に傾く。その場合、吊金車1が連結ロープ41に対して傾く、すなわち矢印方向にふらつくため、作業が不安定になる、という問題があった。
【0011】
上記問題に鑑み本発明の目的は、送電線鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れがなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に、しかも容易に固定できる吊金車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく請求項1記載の吊金車は、互いに対向配置され外側に滑車部を内側に線状体挿通部を有する第一線状体保持部と第二線状体保持部との中間部に連結ロープ保持部を有する吊金車において、前記連結ロープ保持部は前記第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、該軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとを有することを特徴とするものである。
【0013】
このようにしてなる請求項1記載の吊金車によれば、第一線状体保持部と第二線状体保持部の中間部に設けられている連結ロープ保持部は、第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、この軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとからなっていて、前記軸部はその上下を前記第一線状体保持部と第二線状体保持部に連結されていて、その構造上軸部からナットが外れる恐れは全くない。それ故、送電線の張り替え作業中にナットが吊金車から落ちたり、なくなる恐れが全くなく、この張り替え作業を円滑かつ安心して行える。
また連結ロープは、軸部に設けられた凹部内面とナットとで確実に固定されるため、図5が示す従来のものとは異なり、保持された連結ロープがふらつくことはなくなる。それ故、送電線の張り替え作業を円滑に行うこともできる。
【0014】
また請求項2記載の吊金車は、請求項1記載の吊金車において、前記連結ロープ保持部の連結ロープが挿通される凹部には、前記ナットと対向する位置に連結ロープ曲げ付与部が設けられていることを特徴としている。
このようにしてなる吊金車においては、連結ロープを固定すべくナットを締め込んでいくと、連結ロープは連結ロープ曲げ付与部に当たって曲げられるため、連通ロープの長手方向により動き難くなって、より一層確実に連結ロープ保持部に保持、固定される。よって送電線の張り替え作業中に連結ロープが上下にふらつくことがなくなり、張り替え作業を一層円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、送電線の鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れがなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に固定できる吊金車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の吊金車を図を用いて詳細に説明する。図1は本発明の吊金車の一実施例を示す正面図、図2は図1における連結ロープ保持部を示している。尚、図2(a)は連結ロープ保持部の正面図、図2(b)はその断面側面図である。
また連結ロープ保持部以外は、前述した図4、図5に示す従来の吊金車と同じ部分には基本的に同じ符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0017】
図1、図2が示すように本発明の吊金車1は、互いに対向配置され、外側に滑車11、21を、内側に線状体挿通部12、22を有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20と、さらにこの第一線状体保持部10と第二線状体保持部20とを連結する中間部に本発明の特徴である連結ロープ保持部50を有している。
すなわち、本発明の特徴である連結ロープ保持部50は、図2に拡大して示しているように、第一線状体保持部10と第二線状体保持部20を連結する軸部であって、連結ロープ41が挿通される凹部51が設けられている軸部52と、この軸部52の外表面に設けられたネジ部53に螺合し凹部51に挿通された連結ロープ41を固定するナット54とを有する。
【0018】
ここで軸部52の両端の符号58、59は、それぞれ第一線状体保持部10、第二線状体保持部20との連結部で、第一線状体保持部10の枠体13、第二線状体保持部20の枠体23に各々設けられている嵌合穴に嵌合して連結されている。
【0019】
さらにこの実施例では、図2が示すように連結ロープ保持部50の連結ロープ41が挿通される凹部51の底の部分には、前記ナット54と対向する位置、より具体的には軸部52の軸方向においてナット54と対向する位置に、例えばピンが軸部52の軸方向と直角方向に装着されて連結ロープ曲げ付与部60が形成されている。
このような連結ロープ曲げ付与部60を設けておくと、ナット54を締め込んで凹部51の底に連結ロープ41を追い込んでいった際、連結ロープ41はナット54で締め込まれて図2(b)が示すようにピンからなる連結ロープ曲げ付与部60に押し付けられて曲げが付与され、より確実に連結ロープ保持部50に固定され、保持される。
このように連結ロープ曲げ付与部60があると、連結ロープ41をより確実に固定、保持でき好ましい。
【0020】
ところで図1及び図2においては凹部51を第一線状体保持部10側に凹むように設けているが、これとは逆に第二線状体保持部20側に凹むように設け、ナット54も上から下に向かって締め込むようにしてもよいことはいうまでもない。
もちろん図1、図2に示す吊金車1を上下逆さにして使用してもよい。基本的にはこの吊金車1には上下の区別はなく、どちらを上に、どちらを下にして使用してもよい。但し、連結ロープ41をこの吊金車1の連結ロープ保持部30に固定する作業を行う場合、凹部51が一定方向にあった方が作業を行い易いなら、常に吊金車1の上下をいずれかに揃えて使用すればよい。
【0021】
尚、図1において符号15、25は滑車11、21の軸を示し、滑車11、21とこの軸15、25とで滑車部を主として構成している。
また、例えば線状体挿通部12、22に、図3が示すように既設線である上線42やメッセンジャーワイヤ45を挿通する場合には、開閉部材14、24を固定している開閉部材取り付けナット16、26及び開閉部材取り付けボルト17、27を緩めて外し、この開閉部材14、24を外した位置で上線42やメッセンジャワイヤ45を吊金車1の線状体挿通部12、22に挿通し、しかる後逆の手順で開閉部材14、24を吊金車1本体に取り付ければよい。
【0022】
因みに、本発明で凹部といった場合には、貫通孔とは異なり、外部に向かって少なくとも連結ロープ41を出し入れできる開口を有する凹みをいうものとする。
また図1及び図2においては、ナット54の表面に、ナット54を締め易くするためにローレット加工を施しているが、このローレット加工はあえて施さなくともよいし、またナット54の形状も図に示すものに限定されるものではない。
【0023】
このようにしてなる本発明の吊金車1によれば、軸部52に装着されているナット54は、この軸部52そのものがその上下を第一線状体保持部10、第二線状体保持部20の各枠体13、23に連結されているため、軸部52から抜け落ちることは、その構造上全く起こり得ない。
よって送電線の張り替え作業中に、より具体的には連結ロープ保持部50に連結ロープ41を挿通し、これを固定、保持する際に、軸部52に設けたネジ部53からナット54が抜け落ちるとか、抜け落ちて紛失する、という恐れが全くない。
また凹部51の底とナット54とで連結ロープ41を確実に保持し、固定するので、送電線の張り替え作業中に連結ロープ41がふらつく恐れもなく、作業を円滑に行うことができる。
【0024】
以上述べたように本発明の吊金車によれば、送電線鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れが全くなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に固定できる吊金車を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の吊金車の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示す吊金車の連結ロープ保持部の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)は断面側面図である。
【図3】送電線の張り替え工法の手順の一例を示す概略図である。
【図4】従来の吊金車の正面図である。
【図5】従来の別の吊金車の正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 吊金車
10 第一線状体保持部
20 第二線状体保持部
41 連結ロープ
42 既設線(上線)
45 メッセンジャーワイヤ
47 新設線
50 連結ロープ保持部
51 凹部
52 軸部
53 ネジ部
54 ナット
60 連結ロープ曲げ付与部
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線用の吊金車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、送電線用の鉄塔間に架線されている送電線を張り替える方法の一つに、反転吊金工法という工法が知られている。
この方法は図3(a)に示すように、各吊金車1の連結ロープ保持部30を所定間隔で連結ロープ41に取り付けた後、各吊金車1の第一線状体保持部10に既設の上線42を挿通して、この上線42上を自走する自走車43により連結ロープ41の先端部を矢印方向に引っ張って、図3(b)が示すように吊金車1を所定間隔で上線42に配設する。このとき各吊金車1の下部に設けられている第二線状体保持部20には、新設線をこの吊金車1の第二線状体保持部20に挿通するためのガイドとしてメッセンジャーワイヤ45が挿通されていて、このメッセンジャーワイヤ45も前述した連結ロープ41と共に自走車43により牽引される。
【0003】
続いて図3(c)が示すように、送電線の張り替え対象区間内において、鉄塔間に吊金車1がすべて配設されたら、メッセンジャーワイヤ45の後端に新設線47の先端部を連結し、汎用の巻取機でメンセンジャーワイヤ45を巻き取り、各吊金車1の第二線状体保持部20に新設線47を挿通せしめ、これを保持する。ここで符号48はメッセンジャーワイヤ45と新設線47との連結部を示している。
【0004】
図3(c)が示す手順により鉄塔間全長に亘って吊金車1の第二線状体保持部20に新設線47を挿通し終えたら、次に図3(d)が示すように、既設の上線42を弛め、下線である新設線47を緊張させることにより吊金車1の天地方向を矢印Q方向に反転させる。
この反転により吊金車1の第一線状体保持部10と第二線状体保持部20とが反転し、既設の上線42が下に、新設線47が上、すなわち上線があった位置に配設される。
【0005】
この状態で新設線47が上線として張設され、図3(e)が示すように弛緩した既設線42は新設線47上を移動する回収機49により連結ロープ41と共に回収され、既設線42から新設線47への張り替えが完了する。尚、この回収機49の移動方向は、図3上で右向き、左向きどちらでもよい。
【0006】
ところで、前記図3において用いられている吊金車1として、例えば特許文献1において従来例として開示されているものを図4に、そして図4の改良品として特許文献1に開示されている発明の吊金車1を図5に示す。
図4が示す従来の吊金車1は、互いに対向配置され外側に滑車11、21を有し、内側に線状体挿通部12、22をそれぞれ有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に連結ロープ保持部30を有するものである。
この連結ロープ保持部30は、吊金車1の枠体13(23)と開閉部材14との間に連結ロープ41を挿通するための連通ロープ把持部35を設けたもので、この連通ロープ把持部35の内径を連結ロープ41の外径より小さめにしておいて、この連通ロープ把持部35に連結ロープ41を挿通した後、蝶ネジ36を回動して締め込み、連通ロープ把持部35内に連結ロープ41を固定し、保持するものである。
【0007】
また図5に示すものは、第一線状体保持部10と第二線状体保持部20との中間部に軸部31、32を介して連結ロープ保持部30を設けたもので、この連結ロープ保持部30は上下で前記軸部31、32により保持されている環状の連結環37と、一端が前記軸部31に遊動自在に係止された短冊状の屈曲片38とからなっている。
そして連結ロープ41を保持する場合には、図5が示すように連結ロープ41を屈曲片38の前側かつ連結環37の両側の後ろ側に挿通する。このようにしておけば、連結ロープ41が緊張した際には、屈曲片38の先端が連結環37の環状部下端に係着して屈曲片38が固定され、連結ロープ41も固定され、保持される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−315122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら図4が示す吊金車1では、連結ロープ41の取り付け、取り外しの際、蝶ネジ36を回動しなければならず、その際、このネジ36を落としてしまう恐れがある。特に実際の送電線張り替え工事現場においては、数多くの吊金車1を送電線に装着する必要があるため、この可能性が極めて高い。しかも蝶ネジ36は吊金車1本体とは別体であるため、吊金車1本体から外れた蝶ネジ36がなくなる可能性もあり、概して作業性が悪かった。
【0010】
また図5が示す吊金車1では、連結ロープ41の固定は、図4に示すものよりも手早く行えるものの、連結ロープ41の固定を簡単に言えば、単に連結環37と屈曲片38との隙間に挟んでいるだけであるため保持力が弱く、そのため連結ロープ41は容易に連結環37の周方向に傾く。その場合、吊金車1が連結ロープ41に対して傾く、すなわち矢印方向にふらつくため、作業が不安定になる、という問題があった。
【0011】
上記問題に鑑み本発明の目的は、送電線鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れがなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に、しかも容易に固定できる吊金車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成すべく請求項1記載の吊金車は、互いに対向配置され外側に滑車部を内側に線状体挿通部を有する第一線状体保持部と第二線状体保持部との中間部に連結ロープ保持部を有する吊金車において、前記連結ロープ保持部は前記第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、該軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとを有することを特徴とするものである。
【0013】
このようにしてなる請求項1記載の吊金車によれば、第一線状体保持部と第二線状体保持部の中間部に設けられている連結ロープ保持部は、第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、この軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとからなっていて、前記軸部はその上下を前記第一線状体保持部と第二線状体保持部に連結されていて、その構造上軸部からナットが外れる恐れは全くない。それ故、送電線の張り替え作業中にナットが吊金車から落ちたり、なくなる恐れが全くなく、この張り替え作業を円滑かつ安心して行える。
また連結ロープは、軸部に設けられた凹部内面とナットとで確実に固定されるため、図5が示す従来のものとは異なり、保持された連結ロープがふらつくことはなくなる。それ故、送電線の張り替え作業を円滑に行うこともできる。
【0014】
また請求項2記載の吊金車は、請求項1記載の吊金車において、前記連結ロープ保持部の連結ロープが挿通される凹部には、前記ナットと対向する位置に連結ロープ曲げ付与部が設けられていることを特徴としている。
このようにしてなる吊金車においては、連結ロープを固定すべくナットを締め込んでいくと、連結ロープは連結ロープ曲げ付与部に当たって曲げられるため、連通ロープの長手方向により動き難くなって、より一層確実に連結ロープ保持部に保持、固定される。よって送電線の張り替え作業中に連結ロープが上下にふらつくことがなくなり、張り替え作業を一層円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、送電線の鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れがなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に固定できる吊金車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の吊金車を図を用いて詳細に説明する。図1は本発明の吊金車の一実施例を示す正面図、図2は図1における連結ロープ保持部を示している。尚、図2(a)は連結ロープ保持部の正面図、図2(b)はその断面側面図である。
また連結ロープ保持部以外は、前述した図4、図5に示す従来の吊金車と同じ部分には基本的に同じ符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0017】
図1、図2が示すように本発明の吊金車1は、互いに対向配置され、外側に滑車11、21を、内側に線状体挿通部12、22を有する第一線状体保持部10と第二線状体保持部20と、さらにこの第一線状体保持部10と第二線状体保持部20とを連結する中間部に本発明の特徴である連結ロープ保持部50を有している。
すなわち、本発明の特徴である連結ロープ保持部50は、図2に拡大して示しているように、第一線状体保持部10と第二線状体保持部20を連結する軸部であって、連結ロープ41が挿通される凹部51が設けられている軸部52と、この軸部52の外表面に設けられたネジ部53に螺合し凹部51に挿通された連結ロープ41を固定するナット54とを有する。
【0018】
ここで軸部52の両端の符号58、59は、それぞれ第一線状体保持部10、第二線状体保持部20との連結部で、第一線状体保持部10の枠体13、第二線状体保持部20の枠体23に各々設けられている嵌合穴に嵌合して連結されている。
【0019】
さらにこの実施例では、図2が示すように連結ロープ保持部50の連結ロープ41が挿通される凹部51の底の部分には、前記ナット54と対向する位置、より具体的には軸部52の軸方向においてナット54と対向する位置に、例えばピンが軸部52の軸方向と直角方向に装着されて連結ロープ曲げ付与部60が形成されている。
このような連結ロープ曲げ付与部60を設けておくと、ナット54を締め込んで凹部51の底に連結ロープ41を追い込んでいった際、連結ロープ41はナット54で締め込まれて図2(b)が示すようにピンからなる連結ロープ曲げ付与部60に押し付けられて曲げが付与され、より確実に連結ロープ保持部50に固定され、保持される。
このように連結ロープ曲げ付与部60があると、連結ロープ41をより確実に固定、保持でき好ましい。
【0020】
ところで図1及び図2においては凹部51を第一線状体保持部10側に凹むように設けているが、これとは逆に第二線状体保持部20側に凹むように設け、ナット54も上から下に向かって締め込むようにしてもよいことはいうまでもない。
もちろん図1、図2に示す吊金車1を上下逆さにして使用してもよい。基本的にはこの吊金車1には上下の区別はなく、どちらを上に、どちらを下にして使用してもよい。但し、連結ロープ41をこの吊金車1の連結ロープ保持部30に固定する作業を行う場合、凹部51が一定方向にあった方が作業を行い易いなら、常に吊金車1の上下をいずれかに揃えて使用すればよい。
【0021】
尚、図1において符号15、25は滑車11、21の軸を示し、滑車11、21とこの軸15、25とで滑車部を主として構成している。
また、例えば線状体挿通部12、22に、図3が示すように既設線である上線42やメッセンジャーワイヤ45を挿通する場合には、開閉部材14、24を固定している開閉部材取り付けナット16、26及び開閉部材取り付けボルト17、27を緩めて外し、この開閉部材14、24を外した位置で上線42やメッセンジャワイヤ45を吊金車1の線状体挿通部12、22に挿通し、しかる後逆の手順で開閉部材14、24を吊金車1本体に取り付ければよい。
【0022】
因みに、本発明で凹部といった場合には、貫通孔とは異なり、外部に向かって少なくとも連結ロープ41を出し入れできる開口を有する凹みをいうものとする。
また図1及び図2においては、ナット54の表面に、ナット54を締め易くするためにローレット加工を施しているが、このローレット加工はあえて施さなくともよいし、またナット54の形状も図に示すものに限定されるものではない。
【0023】
このようにしてなる本発明の吊金車1によれば、軸部52に装着されているナット54は、この軸部52そのものがその上下を第一線状体保持部10、第二線状体保持部20の各枠体13、23に連結されているため、軸部52から抜け落ちることは、その構造上全く起こり得ない。
よって送電線の張り替え作業中に、より具体的には連結ロープ保持部50に連結ロープ41を挿通し、これを固定、保持する際に、軸部52に設けたネジ部53からナット54が抜け落ちるとか、抜け落ちて紛失する、という恐れが全くない。
また凹部51の底とナット54とで連結ロープ41を確実に保持し、固定するので、送電線の張り替え作業中に連結ロープ41がふらつく恐れもなく、作業を円滑に行うことができる。
【0024】
以上述べたように本発明の吊金車によれば、送電線鉄塔において、既設線を新設線に張り替える作業において、吊金車に連結ロープを固定する際、連結ロープ固定用のネジが落ちたり、なくなったりする恐れが全くなく、しかも連結ロープを吊金車の連結ロープ保持部にふらつくことなく確実に固定できる吊金車を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の吊金車の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示す吊金車の連結ロープ保持部の一例を示すもので、(a)はその正面図、(b)は断面側面図である。
【図3】送電線の張り替え工法の手順の一例を示す概略図である。
【図4】従来の吊金車の正面図である。
【図5】従来の別の吊金車の正面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 吊金車
10 第一線状体保持部
20 第二線状体保持部
41 連結ロープ
42 既設線(上線)
45 メッセンジャーワイヤ
47 新設線
50 連結ロープ保持部
51 凹部
52 軸部
53 ネジ部
54 ナット
60 連結ロープ曲げ付与部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置され外側に滑車部を内側に線状体挿通部を有する第一線状体保持部と第二線状体保持部との中間部に連結ロープ保持部を有する吊金車において、前記連結ロープ保持部は前記第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、該軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとを有することを特徴とする吊金車。
【請求項2】
前記連結ロープ保持部の連結ロープが挿通される凹部には、前記ナットと対向する位置に連結ロープ曲げ付与部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の吊金車。
【請求項1】
互いに対向配置され外側に滑車部を内側に線状体挿通部を有する第一線状体保持部と第二線状体保持部との中間部に連結ロープ保持部を有する吊金車において、前記連結ロープ保持部は前記第一線状体保持部と第二線状体保持部を連結しかつ連結ロープが挿通される凹部が設けられている軸部と、該軸部表面に設けられたネジ部に螺合し前記凹部を挿通する連結ロープを固定するナットとを有することを特徴とする吊金車。
【請求項2】
前記連結ロープ保持部の連結ロープが挿通される凹部には、前記ナットと対向する位置に連結ロープ曲げ付与部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の吊金車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−42517(P2006−42517A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219834(P2004−219834)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
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