説明

吐水装置

【課題】吐水部本体を導波管として利用する場合において、センサから放射される電波が水路管の影響を受けずに理想とする検知エリアを形成することを可能とする。
【解決手段】吐水部本体1と、吐水口2に洗浄水を供給するための水路管3と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するセンサ部4と、を備えた吐水装置であって、吐水部本体1と水路管3との間に形成された電波が伝搬するための電波通過用空間6と、センサ部4から放射された電波を電波通過用空間6に誘導するための電波誘導部5と、電波通過用空間6に連通され、吐水部本体1内を伝搬してきた電波を外部に放射すると共に、外部で反射された電波を受け取るために吐水部本体に形成された電波放射口1aとを備え、電波放射口1aへ伝搬される電波の強度が最大となる位置が、電波放射口1aのうち吐水口2をさけた位置であって且つ吐水口2が配置される内壁面と対向する位置となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば公衆トイレの手洗い場や、家庭の洗面化粧台や、キッチンに設けられる吐水装置に関し、特に利用者の手又は利用者が保持する被洗浄物を検知して、水栓装置からの吐止水を自動で制御する吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体を検知して自動的に吐止水を制御する吐水装置としては、センサが吐水口付近に設置された自動給水制御装置(特許文献1)、またはセンサは吐水口付近に設置されず、別途センサからの信号を吐水口付近まで案内する部材が設けられた自動水栓がある(特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、吐水口の前方部に下向きかつ吐水部の奥行方向中心線に対し左右対称な位置に配設された発信部および受信部を有し、吐水部の下方の物体を検知する物体検知手段をそなえた自動給水制御装置が開示されている。また、特許文献2には、超音波を案内する通路を形成し前端部が吐出口側に開口されたホーンの後端部に超音波センサが取り付けられた自動水栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−360923号公報
【特許文献2】特開平4−265324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2に記載された自動水栓には、超音波センサからの信号を吐水口付近まで案内する部材(ホーン)が設けられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1および2にそれぞれ記載された自動給水制御装置および自動水栓では、吐水部本体の大きさは、吐水口と、センサ部または信号を案内する部材と、の大きさが必要になってしまう。その為、吐水装置の小型化や複雑な形状の吐水装置を実現することができない。
【0007】
そこで、吐水部本体の外部にセンサを配置し、電波を案内する部材(導波管)として吐水部本体を利用する。そうすることで、吐水部先端から電波を放射する場合、吐水部内にセンサや電波を案内する部材(導波管)を別途配置しなくても吐水部先端には吐水口と電波を放射する放射面とが存在することになるため、小型な吐水装置を実現することが可能となる。しかし、吐水部本体の外部にセンサを配置し、吐水部本体を導波管として利用して、吐水口先端から電波を放射する場合、吐水部本体の内部には吐水部本体の片側に沿って水路管が存在するため、センサから吐水部内への電波の挿入方法によっては、電波の最大強度が水路管側になる場合がある。このような状況がおこると、放射される電波が割れてしまう、また、電波の指向方向が所望の指向方向から傾いてしまうなど、理想の検知エリアを得られないという課題があった。
【0008】
従って、本発明の目的は、吐水部本体を導波管として利用する場合において、センサから放射される電波が水路管の影響を受けずに理想とする検知エリアを形成することができる吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、支持体に基端部が固定された吐水部本体と、前記吐水部本体内に設けられ、前記吐水部本体の非基端部側に形成された吐水口に洗浄水を供給するための水路管と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するセンサ部と、を備えた吐水装置であって、前記吐水部本体と前記水路管との間に形成された電波が伝搬するための電波通過用空間と、前記センサ部から放射された電波を前記電波通過用空間に誘導するための電波誘導部と、前記電波通過用空間に連通され、前記吐水部本体内を伝搬してきた電波を外部に放射すると共に、外部で反射された電波を受け取るために前記吐水部本体の非基端部側に形成された電波放射口とを備え、前記電波センサは、前記電波誘導部を介して前記電波放射口より前記電波通過用空間に電波を放出するように前記吐水部本体の基端部側に配置され、前記電波連通用空間は、前記吐水部本体の内面及び前記水路管の外面によって形成され、前記吐水部本体の内面及び前記水路管の外面は、電波を反射させる部材で構成され、前記吐水口は前記電波放射口の内壁面に沿うように配置され、前記電波は前記電波誘導部を介して前記電波連通用空間に導入され、前記吐水部本体の内面および前記水路管の外面を反射して前記電波放射口へ伝搬され、前記電波放射口における電波強度が最大となる位置が、前記電波放射口のうち前記吐水口をさけた位置であって且つ前記吐水口が配置される前記内壁面と対向する位置に形成されることを特徴としている。
【0010】
本発明では、センサ部を吐水部本体の基端部側に設け、センサ部から放射された電波が吐水部本体の内部を通過して、吐水口側の端部に設けられた電波放射口から放射られるように構成されている。これは、電波というものが吐水部本体の曲がりなどに大きく左右されずに電波放射口から放射できるという特性を利用したものであって、吐水部本体のデザインの自由度を大幅に向上させることができる。
【0011】
また、一方でセンサ部を吐水部本体の基端部側に設け、単に、センサ部から放射された電波が吐水部本体の内部を通過して、吐水口側の端部に設けられた電波放射口から放射られるように構成した場合、電波放射口から放射される電波は指向が割れてしまう、また、電波の指向方向が所望の指向方向から傾いてしまうなど、理想の検知エリアを形成することができないという課題が発生する。
電波放射口から放射される電波が割れている状態の場合、吐水を開始するために吐水口付近に近づける手をセンサが検知することができる距離が、手の挿入方向によって大きく変わり、吐水不良や吐水遅れに伴う使い勝手の悪さを生じてしまう。
【0012】
このため、本発明では、電波放射口へ伝搬される電波の電波放射口における電波強度が最大となる位置が、電波放射口のうち吐水口をさけた位置であって且つ吐水口が配置される内壁面と対向する位置に形成されるようにすることで、電波の指向を安定させ、さらに電波の割れを防ぐことにより、吐水部本体の小型化などのデザインの自由度を向上させ、理想とする検知エリアの形成を可能にしたものである。
【0013】
また、本発明の他の一様態によれば、前記電波誘導部は、少なくとも一部が前記吐水部本体へ挿入されるとともに、挿入された前記電波誘導部に電波を導入出するための電波導入出開口が設けられるものであって、前記電波導入出開口から前記電波放射口までの電波通過用空間における電波の伝送距離を変化するように、前記電波誘導部の前記吐水部本体への挿入量を調整する挿入量調整部材を設けたことを特徴とする吐水装置である。
【0014】
電波放射口から放射される電波の指向は、吐水部本体内部の電波通過空間の電波の伝送距離によってかわる。そのため、電波放射口における電波強度が最大となる位置が、電波放射口のうち吐水口をさけた位置であって且つ吐水口が配置される内壁面と対向する位置に形成されることもあるが、吐水口が配置される位置に電波の最大強度が存在すると、水路管の影響を受け電波が割れてしまうという状況が生じてしまう。
そこで、本発明では、電波通過空間の伝送距離を変化するように、電波誘導部の吐水部本体への挿入量を調整する挿入量調整部材を設けている。
【0015】
また、本発明の他の一様態によれば、前記電波誘導部は、少なくとも一部が前記吐水部本体へ挿入され、挿入された前記電波誘導部に電波を導入出するための電波導入出開口が設けられるものであって、前記電波導入出開口から前記電波通過用空間へ放射される電波の指向方向を可変させる指向性調整部材を設けたことを特徴とする吐水装置である。
【0016】
電波放射口から放射される電波の指向は、吐水部本体内部の電波通過空間の電波の伝送のさせ方によって調整することが可能となる。電波通過空間の電波の伝送を変える手段としては、電波通過空間への電波の挿入方法を変えることで調整ができる。
そこで、本発明では、電波誘導部の電波導出口から電波通過用空間へ放射される電波の指向方向を可変させる指向性調整部材を設けている。
【0017】
また、本発明の他の一様態によれば、前記電波誘導部から放射される電波は、単一のモードを有しているのではなく、複数のモードが周期的に切り替わりながら電波通過用空間を伝搬するものであって、前記電波通過用空間内に、電波の周期を変化させる部材を配置したことを特徴とする吐水装置である。
【0018】
電波通過空間が中空の場合に対して、樹脂などの誘電体が存在する場合、電波通過空間内を伝搬する電波はその誘電率による、波長の短縮が起こる。また、金属を配置した場合、電波通過空間内を伝搬する電波は、金属表面で反射が生じるため、電波の伝送に変化が生じる。
そこで、本発明では、電波放射口へ伝搬される電波の電波放射口における電波強度が最大となる位置が、電波放射口のうち吐水口をさけた位置であって且つ吐水口が配置される内壁面と対向する位置に形成されるように、電波通過空間に電波の周期を変化させる部材を配置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吐水部本体を導波管として利用する場合において、吐水部本体のデザインの自由度を大幅に向上させることができ、センサから放射される電波が水路管の影響をうけずに理想とする検知エリアを形成することができる吐水装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施例を示す図である。
【図2】センサ部及び制御部のブロック図である。
【図3】第1の実施例における電波誘導部の外観図である。
【図4】電波が導波管内部を伝搬する状態を解析した図である。
【図5】理想の検知エリアを実現するための放射面から放射される電波の指向を示した図である。
【図6】電波が吐水部本体内部を伝搬する状態を解析した図である。
【図7】放射される電波の指向を解析した図である。
【図8】放射される電波の指向を解析した図である。
【図9】第2の実施例を示す図である。
【図10】第3の実施例を示す図である。
【図11】吐水装置の配置を表した図である。
【図12】吐水装置から放射される電波の指向を解析した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明にかかる吐水装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
【0022】
図1に水栓装置の第1の実施例の断面図を示す。
【0023】
図1に示す吐水装置10は、支持体に基端部が固定された吐水部本体1と、吐水部本体1内に設けられ、吐水部本体1の非基端部側に形成された吐水口2に洗浄水を供給するための水路管3と、吐水口2からの吐止水を切り替えるバルブ部8と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するセンサ部4と、吐水部本体1と水路管3との間に形成された電波が通過するための電波通過用空間6と、センサ部4から放射された電波を電波通過用空間6に誘導するための電波誘導部5と、バルブ部8のon,offを制御する制御部7とで構成されている。
センサ部4は、電波誘導部5を介して電波通過用空間6に電波を放出するように吐水部本体1の基端部側に配置され、電波通過用空間6は、吐水部本体1の内面及び水路管3の外面によって形成され、吐水部本体1の内面及び水路管3の外面は、電波を反射させる部材で構成され、吐水口2は電波放射口1a内に形成され、電波誘導部5を介して電波通過用空間17に導入され、吐水部本体1の内面および水路管3の外面を反射して電波放射口1aへ伝搬される。
水路管3は、樹脂製のホースでも良いが、吐水部本体1の内部空間が狭いと、電波通過用空間17も狭くなり、放射した電波が水路管3や水路管内の水に吸収され、電波が減衰してしまう。そのため、内部損失を小さくするため、水路管3の外面にて反射され電波放射口1aから放射されやすくするよう金属製または、樹脂製に金属シールを施した部材が望ましい。
電波誘導部5は、センサ部4からの放射される電波を損失なく吐水部本体1の内部の電波通過用空間6に供給するために設置している。そこで、センサ部4から放射される電波を漏らさないようにセンサ部4と電波誘導部5を接続するため、封し部材9を含む構成が良い。
【0024】
図2にセンサ部4と制御部7の構成について詳しく示す。センサ部4は、電波を生成する発振回路11と、発振回路11で生成された電波を被検知体に向かって放射するために電波誘導部5を介し吐水部本体1の内部の電波通過用空間6に送信し、被検知体からの反射電波を吐水部本体1の内部の電波通過用空間6、電波誘導部5を通過し受信する送受信一体のアンテナ12と、発振回路11と線路を介して接続され、更にアンテナ12とも接続されており、両者の信号を検波して得られたドップラー信号から被検知体の有無や速度を判断する検知部13と、で構成されている。この検知部13で得られた被検知体の動きに伴う信号は制御部6に出力し、制御部6内部にある被検知体の速度を抽出する速度抽出部14で、被検知体の状態を識別し、その結果を判定部15にてあらかじめ記憶部16に設定している閾値と比較し判断する。この速度抽出部14は、FFTで構成しても良いし、フィルターで構成しても良いが、複雑な演算を行える場合は前者を選択し、得られる信号が単一ではなく所定の帯域がある場合は後者を選択することが望ましく、本実施例ではフィルターを用いている。尚アンテナ12は、送受信別体でも構わないが、本発明においては、電波誘導部5との接続部の構成をコンパクトに構成するため一体にしている。
【0025】
次に図3,図4を用いて導波管構造とその特性について説明する。
電波誘導部5は、使用する電波の周波数と通過させたい発振モードに基づきその内部の通路の寸法は下式により決定されており、電波誘導部5はここではサイズを最も小さくできるTE10モードを想定した形状にしている。形状は方形でも円形でも良く、吐水部本体1のデザインにより決定すればよくここでは方形型を採用している。
ここでアンテナの励振方向を図3(a)のB−B方向としたときに電波誘導部内部の横方向(励振方向と直行方向)をa、縦方向(励振方向)をb、とすると
方形型:λ=1/((m/2a)+(n/2b)0.5 ・・・式(1)
また、電波誘導部5が円管の場合、その内部の半径をrとすると、
円形型:λ=2πr/k (k:定数) ・・・式(2)
ここで、λはセンサ部3が使用する周波数における空間の波長とし、m,nは通過させたい発振モードであり、TE10モードの場合はm=1,n=0となる。また、定数kは発振モードにより変わる。
【0026】
この電波誘導部5は、管路内部5eの寸法を上式の最低寸法を維持すれば、図4(a)に示すように複数の屈曲部を有しても良いし、図4(b)に示すように電波誘導部5の中央部5(d)において電波誘導部内部の通路5eが太くなっても良いし、また、図示していないが、湾曲させてもよい。同様に、通路の大きさが変わる吐水部本体1の内部の電波通過用空間6においても、電波放射口1aに電波を伝搬することができる。
【0027】
次に、本実施例の理想の検知エリアについて、図5(a)に吐水装置の側面図、図5(b)に上面図を示す。理想の検知エリアとは、快適な手洗いを実現することができるための電波の放射エリアについてである。手を手洗い動作を行う洗浄ポイントへ持って行った際に、吐水口2から吐水される水と手が同時か、その前後のごく短い時間内に到着することで、吐水開始までの待ち時間をほぼなくすことができ、快適な手洗いが実現可能となる。このため、吐水を開始する前の検知エリアをある程度広めに設定して手の洗浄ポイントへの侵入を事前に判断できるようにすることが望ましい。図5(a)に示すAの電力を確保することで、吐水口2に差し出す手などの被検知体を洗浄ポイント手前で検知することが可能となる。吐水口2から吐水される水は、バルブ部7を開く時間および吐水口2から洗浄ポイントまで水の落下するまでの時間が必要となるため、水の軌跡上にある洗浄ポイントよりも前方で被検知体を検知することが必要となる。また、吐水中の検知エリアは吐水前の検知エリアとは異なり、Bの電力を確保することで、洗浄時の吐水の継続を可能にする。しかし、Cで示される被検知エリアまで電力を放射してしまうと、洗浄後の水きり動作や、石鹸使用時の泡立て動作、吐水口へ近づく体を検知して誤吐水が生じてしまう。また、(b)に示すように上面からの電波の放射も左右へ広がりすぎると誤吐水の原因となる。よって、図5に示すように電波放射口1aより前方へ電波を放射することで、差し出した手などの被検知体を確実に検知して吐水を開始し、使用中に吐水の継続が途切れることなく、誤検知の少ない吐水装置を可能とする。そのため、この理想の検知エリアを形成するためには、電波放射口1aから放射される電波の指向が重要となる。
【0028】
次に、吐水部本体1への電波誘導部5からの電波の挿入について図6にて説明する。図6(a)に電波誘導部5から吐水口2および水路管3を除いた状態の吐水部本体1の中央に電波を挿入した時の解析結果を示す。電波誘導部5から挿入された電波は、吐水部本体1の内部を電波放射口1aに対して直進して伝搬していることが分かる。図6(b)に電波誘導部5から吐水部本体1の中央より下方から電波を挿入した時の解析結果を示す。図6(b)に示される電波の伝搬の様子は、図6(a)に示すように電波の放射面1aに対して吐水部本体1の内部を直進せず、上下に波打つように伝搬していることが分かる。さらに、図6(c)に図6(b)に水路管3を含む構成時の解析結果を示す。図6(b)の解析結果と同様に電波が上下に波打つように伝搬していることが分かる。
【0029】
吐水部本体1を導波管として利用する場合、その内部には水路管が存在するため、図6に示すように吐水部本体1の内部を伝搬する電波は電波放射口1aに対して直進して伝搬せずに、波打つように伝搬しているため、電波の放射を制御することが必要となる。図7に放射される電波が理想とする検知エリアを形成する例を示す。図7(a)に吐水部本体1の長さを138mm、(b)に189mmに設定した際の電波強度の解析結果を示す。吐水部本体の長さが138mmでは電波を放射する電波放射口1aにおいて、水路管3の左右方向に電力の最大強度を有し、吐水部本体1の長さが189mmでは電波を放射する電波放射口1aにおいて、水路管3の下方に電力の最大強度を有している。左右方向に電力の最大強度を有している場合は、電波放射口1aから空間へ放射される電波の放射分布を上面から見ると左右に割れ、電波が放射される。一方、水路管が配置される位置を避けた下方に電力の最大強度を有している場合は、その放射分布は割れることなく電波放射口1aから放射され、本実施例の理想の検知エリアを形成するために必要な電波の指向を満足することができる。
【0030】
図8に水栓装置の第2の実施例の縦断面図を示す。
【0031】
図8に放射される電波が理想とする検知エリアを形成するための第2の例を示す。吐水部本体1の内部を伝搬する電波において、電波放射口1aにおける電波強度が最大となる位置が、水路管3の下方になるためには、吐水部本体1の長さを変えるほかに、電波誘導部5の吐水部本体1への挿入量を変えることでも可能である。図8は電波誘導部5を吐水部本体1へ40mm挿入した吐水部本体1の長さ138mmの電力の解析結果である。図7(a)に示した挿入量が0mmでは空間へ放射される電波は上方へ左右に割れているが、図8に示すように電波誘導部5を吐水部本体1へ挿入することで、電波放射口1aにおける電波の強度分布を変えることができ、理想の検知エリアとする電波の放射へ変化させることができる。
この場合、吐水部本体の形状を変化させることなく、電波誘導部の挿入量を変化させることだけで電波放射口1aにおける電波の制御が可能となり、吐水部本体のデザインを変更する必要がなく、デザインを変えることなく、理想の検知エリアを形成することが可能となる。
【0032】
図9に水栓装置の第3の実施例の縦断面図を示す。
【0033】
電波誘導部5の吐水部本体1への電波の挿入方法を、水路管3や吐水部本体1と平行な状態から電波の挿入する向きに角度を持たせることでも、吐水部本体1の内部の電波の伝搬する状態を変えることができるため、理想の検知エリアを形成することが可能となる。図9(a)に吐水部本体1の内部へ電波誘導部5を45度の角度から挿入した際の電力を示す。また、図9(b)に示すように、電波誘導部5の吐水部本体1への挿入方向は直接変えることなく、電波誘導部5の先端形状を下辺から上辺に向かって斜めに切り落とした形にし、下辺の方が突出した構成にすることでも、電波は上方側が先に解放になることから上方へと電波が拡散する効果により上方側へ曲がるため、図9(a)と同様の効果が得られる。
電波誘導部5を吐水部本体1へ挿入する場合は、挿入するために吐水部本体1に空間が必要となり、吐水部本体1の形状によっては挿入することが難しい場合も考えられる。そのため、挿入量を変えることなく電波の放射を変えることのできる方法が必要となる。
【0034】
図10に水栓装置の第4の実施例の縦断面図を示す。
【0035】
電波誘導部5から吐水部本体1の内部へ挿入された電波が、吐水部内部1を伝搬する際に、樹脂や金属などの電波周期変換部材9を内部に配置することで、電波の状態を変えることができ、理想の検知エリアを形成することが可能となる。図10(a)は吐水部本体1の内部に樹脂部材を配置することで、導波管内の誘電率に違いが生じ、管内の波長が変わることで電波の伝搬を変え、放射面からの電波の放射の制御を行っている。図10(b)は吐水部本体1の内部に金属部材を配置することで、吐水部本体内部の電波の反射面を加え、電波放射口1aからの放射の制御を行っている。
樹脂や金属などを内部へ配置することは、新たな部材が必要となるが、吐水部本体1の形状が変わっても、電波誘導部5を変えることなく共通化することができる。また、新たな部材として樹脂や金属を配置するのではなく、吐水部本体1の内部形状や吐水口2などの形状を変化させることでも電波の放射を変化させることが可能である。
【0036】
図1(a)、(b)に吐水部本体31の外観図、断面図および、図12に電波の放射の解析結果を示す。
図11に示す吐水装置30は、支持体に基端部が固定された吐水部本体31と、吐水部本体31内に設けられ、吐水部本体31の非基端部側に形成された吐水口32に洗浄水を供給するための水路管33と、吐水口32からの吐止水を切り替えるバルブ部と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するセンサ部34と、吐水部本体31と水路管33との間に形成された電波が通過するための電波通過用空間36と、センサ部34から放射された電波を電波通過用空間36に誘導するための電波誘導部35、バルブ部のon,offを制御する制御部とで構成されている。
図12に示すように、吐水部本体31の形状は、曲げても電波の放射が確保されていることが分かり、また、このような湾曲形状においても電波の電波放射口31aにおける電波強度が最大となる位置が、電波放射口31aのうち吐水口をさけた位置であって且つ吐水口が配置される内壁面と対向する位置に形成されるようにすることで、吐水部本体の形状が変化した際にも理想とする検知エリアを確保するための電波の指向の制御が可能である。
以上4つの吐水装置の実施例を用いて説明したように、吐水部本体1を導波管として利用する場合において、吐水装置の形態が変わった場合にも電波センサの構造を変えずに吐水装置にあった電波誘導部5の構造や、吐水部本体1に電波を変化させる部材を設けることで、センサから放射される電波が理想とする検知エリアを形成することができる吐水装置を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1,31、…吐水部本体
1a、…電波放射口
2,32、…吐水口
3,33、…水路管
4,34、…センサ部
5,35、…電波誘導部
6、…電波通過用空間
7、…制御部
8、…バルブ
9、…封し部材
10,30、…水栓装置
11、…発振回路
12、…アンテナ
13、…検知部
14、…速度抽出部
15、…判定部
16、…記憶部
17、…電波周期変換部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に基端部が固定された吐水部本体と、前記吐水部本体内に設けられ、前記吐水部本体の非基端部側に形成された吐水口に洗浄水を供給するための水路管と、放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するセンサ部と、を備えた吐水装置であって、
前記吐水部本体と前記水路管との間に形成された電波が伝搬するための電波通過用空間と、前記センサ部から放射された電波を前記電波通過用空間に誘導するための電波誘導部と、前記電波通過用空間に連通され、前記吐水部本体内を伝搬してきた電波を外部に放射すると共に、外部で反射された電波を受け取るために前記吐水部本体の非基端部側に形成された電波放射口とを備え、
前記電波センサは、前記電波誘導部を介して前記電波放射口より前記電波通過用空間に電波を放出するように前記吐水部本体の基端部側に配置され、前記電波連通用空間は、前記吐水部本体の内面及び前記水路管の外面によって形成され、前記吐水部本体の内面及び前記水路管の外面は、電波を反射させる部材で構成され、前記吐水口は前記電波放射口の内壁面に沿うように配置され、前記電波は前記電波誘導部を介して前記電波連通用空間に導入され、前記吐水部本体の内面および前記水路管の外面を反射して前記電波放射口へ伝搬され、前記電波放射口における電波強度が最大となる位置が、前記電波放射口のうち前記吐水口をさけた位置であって且つ前記吐水口が配置される前記内壁面と対向する位置に形成されるよう構成されている吐水装置。
【請求項2】
前記電波誘導部は、少なくとも一部が前記吐水部本体へ挿入されるとともに、挿入された前記電波誘導部に電波を導入出するための電波導入出開口が設けられるものであって、
前記電波導入出開口から前記電波放射口までの電波通過用空間における電波の伝送距離を変化するように、前記電波誘導部の前記吐水部本体への挿入量を調整する挿入量調整部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項3】
前記電波誘導部は、少なくとも一部が前記吐水部本体へ挿入され、挿入された前記電波誘導部に電波を導入出するための電波導入出開口が設けられるものであって、
前記電波導入出開口から前記電波通過用空間へ放射される電波の指向方向を可変させる指向性調整部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。
【請求項4】
前記電波誘導部から放射される電波は、単一のモードを有しているのではなく、複数のモードが周期的に切り替わりながら電波通過用空間をを伝搬するものであって、
前記電波通過用空間内に、電波の周期を変化させる部材を配置したことを特徴とする請求項1記載の吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−72583(P2012−72583A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217181(P2010−217181)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】