説明

向き変更可能な券売機

【課題】正面を店員側及び客側いずれの側にも向けることができる券売機であって、その向き変更に際して電源コードが絡まったりコード挿通溝に詰まったりして、向き変更の支障となるおそれがない向き変更可能な券売機を提供することを課題とする。
【解決手段】操作部を含む券売機本体Aと、券売機本体Aを180度回転可能に保持するボックスケースBとで構成され、ボックスケースBの上面に券売機本体Aから出る電源コード21を摺動可能に挿通する半円形のコード挿通溝22が形成されて成る券売機であって、ボックスケースB内の適宜位置に、コード挿通溝22に挿通されて垂れ下がる券売機本体Aから出る電源コード21を常時巻き取るように作用し、緊張させるコード巻取り具23を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は向き変更可能な券売機に関するものであり、より詳細には、飲食店の食券やスポーツクラブにおける利用権等の各種商品券を発行・販売する券売機で、店員操作用と客操作用とに向きを変更することができる券売機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、飲食店等では、券売機やレジスターによって清算を行なっている。そして、立喰いソバ店やラーメン店のように、短時間に小額のメニューを多くの客に提供し、追加注文も少ない営業スタイルの店では、客が操作する券売機が利用されることが少なくない。一方、居酒屋のように、メニューが多岐に渡り、追加注文も頻繁に発生するような営業スタイルの店では、店員が操作するレジスターが利用されることが多い。
【0003】
しかるに最近では、ランチ時にはラーメン店のような営業スタイルをとり、ディナー時には居酒屋のような営業スタイルをとる飲食店等があり、その場合多くは、券売機とレジスターの双方を設置して、適宜使い分けをしている。
【0004】
このように、券売機とレジスターを両方設置し、ランチ時とディナー時それぞれの営業スタイルに応じて使い分けることとした場合、券売機、レジスター双方によるメリットを得ることができるが、その反面、店舗スペースの利用効率や運用コストが悪いといった問題が生じる。
【0005】
また、スポーツクラブ等では、正会員以外でも施設を利用できるように、1日券やスクールの回数券、あるいは、プール、フィットネス、マシンジム等の施設毎の利用券なるものを発行したりしている。このような利用券の清算にも券売機は利用されるが、立喰いソバ店やラーメン店のように、ある時間帯に常に券売機の利用者がいるという訳ではなく、基本的には、年契約等の会員が多く、会員以外の券売機を利用する利用者がそれほど多い訳ではないため、上記飲食店のケース以上に運用コストが問題となる。
【0006】
かかる状況に鑑み、本願出願人は、券売機の表示装置に食券、商品券等の券売操作のための画面を表示する機能をもたせ、食券販売等に際して客に操作させる場合には、券売機の正面を客側に向けて券売操作のための画面を表示させると共に、店員が行なう操作時は、券売機の正面をカウンター内側に向けてレジスター画面を表示させることを可能にして、券売機自体及びカウンタースペースの有効利用を図るために、券売機の正面を店員側及び客側いずれの側にも向けることができるようにし、客向け券売時で前記券売機が客側に向いている時は前記表示装置に客向けの券売操作目的の画面を表示し、前記客向け券売時以外のレジスター操作時で前記券売機の正面が店員側に向いている時は店員用のレジスター画面を表示する制御手段を設けたことを特徴とする券売機を提案した(特開2007−293525号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−293525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかるに、上記特開2007−293525号公報に係る発明の場合、客向け券売のために券売機が客側に向いている時は表示装置に客向けの券売操作目的の画面を表示し、客向け券売時以外のレジスター操作時で券売機の正面が店員側に向いている時は店員用のレジスター画面を表示するようにし、券売機の正面を店員側及び客側いずれの側にも向けることができるようにしているため、向きを変える度に券売機に電源を供給するための電源コードが絡んだり、券売機本体を載置するボックスケースの上面に形成される半円形のコード挿通溝に詰まったりし、券売機の向きの変更に支障を来たすことがしばしば起こっていた(図4参照)。
【0009】
本発明は、向き変更可能な券売機における上記問題点を解決するためになされたもので、正面を店員側及び客側いずれの側にも向けることができる券売機であって、その向き変更に際して電源コードが絡まったりコード挿通溝に詰まったりして、向き変更の支障となるおそれがない向き変更可能な券売機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、操作部を含む券売機本体と、前記券売機本体を180度回転可能に保持するボックスケースとで構成され、前記ボックスケースの上面に前記券売機本体から出る電源コードを摺動可能に挿通する半円形のコード挿通溝が形成されて成る券売機であって、前記ボックスケース内の適宜位置に、前記コード挿通溝に挿通されて垂れ下がる前記券売機本体から出る電源コードを常時巻き取るように作用して緊張させるコード巻取り具が配設されていることを特徴とする向き変更可能な券売機である。
【0011】
一実施形態においては、前記コード巻取り具は、巻取りドラムにぜんまい式バネを内蔵し、ぜんまい式バネの復元力で電源コードを巻き取るタイプのものとされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る券売機は上記構成であって、ボックスケース内の適宜位置に、コード挿通溝に挿通されて垂れ下がる券売機本体から出る電源コードを常時巻き取るように作用して緊張させるコード巻取り具が配設されているため、券売機本体が一方向に回転して電源コードが引かれるときにはコード巻き取り具から緊張状態にて引き出され、また、券売機本体が反対方向に回転して電源コードがコード挿通溝内に押し戻される場合は、コード巻取り具における自動巻き取り機能によって緊張状態にて巻き戻されるため、電源コードは弛むことなく常時緊張状態を維持する。従って、電源コードが絡んだり、コード挿通溝に詰まったりして、券売機の向きの変更に支障を来たすおそれはないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る向き変更可能な券売機の構成を示す部分切截斜視図である。
【図2】本発明に係る向き変更可能な券売機の一動作状態を示す部分切截斜視図である。
【図3】本発明に係る向き変更可能な券売機の制御部の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の向き変更可能な券売機の動作上の問題を示す部分切截斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る向き変更可能な券売機は、図1にその外観が示されるように、券売機本体Aと、券売機本体Aを180度回転可能に保持するボックスケースBとから成り、券売機本体Aから下方に出る電源コード21が、ボックスケースB内において常時緊張状態を保つように配慮されることにより、電源コード21が絡んだり詰まったりして、券売機本体Aの向きの変更に支障を来たさないように構成されている。以下に、本発明を実施するための形態について、図面に依拠してより詳細に説明する。
【0015】
図1に示されるように券売機本体Aは、タッチパネル1、プリンタ2、その他詳細に図示してないが、コイン投入部3、コイン払出部4、札入出部5、キー操作部6等を含んで構成される。一方、ボックスケースBの上面には、通例、券売機本体Aの下面から出る電源コード21を摺動可能に挿通する半円形のコード挿通溝22が形成され、電源コード21は、このコード挿通溝22を通してボックスケースB内に垂れ下げられる。
【0016】
このようにボックスケースB内に垂れ下げられた電源コード21は、ボックスケースB内において弛んだ状態となるため、券売機本体Aの180度正反回転に伴い、反復的にコード挿通溝22を通して引っ張られ、あるいは、押し戻される。そのため、弛んだ電源コード21が券売機本体Aの底面とボックスケースBの上面との間に挟まって詰まり、券売機本体Aの円滑なる回転が阻害される事態が発生するおそれがある(図4参照)。
【0017】
そこで本発明においては、このコード挿通溝22を通してボックスケースB内に垂れ下げられる電源コード21の中途部を常時巻き取るように作用するコード巻取り具23を、ボックスケースB内の適宜位置に配設し、電源コード21がこのコード巻取り具23の作用で常時緊張状態を保つようにしている。
【0018】
コード巻取り具23としては、巻取りドラムにぜんまい式バネを内蔵し、ぜんまい式バネの復元力で巻き取るタイプのものが最も簡便である。その場合、券売機本体Aが一方向に回転して電源コードが引かれると、巻取りドラムがぜんまい式バネの復元力に抗して回転することにより、巻取りドラムに巻き取られていた電源コード21が繰り出される。その際電源コード21は、券売機本体Aの回転に伴う引張力と、ぜんまい式バネの復元力との関係で緊張状態を保つ。
【0019】
また、券売機本体Aが反対方向に回転し、電源コード21がコード挿通溝22内に押し戻されるときには、電源コード21にはぜんまい式バネの復元力のみが作用するので、電源コード21は緊張状態を保ったまま巻取りドラムに自動的に巻き取られていく。かくして電源コード21は、常時緊張状態に保持されるため、弛むことがなく、券売機本体Aの底面とボックスケースBの上面との間に挟まって詰まるようなことはない。
【0020】
コード巻取り具23の構成は上述したものに限らず、それと同様に作用するものであれば、その他の種々のタイプのものを採用することができる。
【0021】
図中の符号24は、ボックスケースBの上面に穿設された券売機本体Aの回動軸用の軸孔を示しているが、券売機本体Aを180度正反回転させる機構は任意で、券売機本体A自体の下面に回動軸が取り付けられることがあり、また、ボックスケースBの上面に、券売機本体A全体を支持するターンテーブルの如き方向転換機構が配設されることもある。
【0022】
券売機本体Aを構成するタッチパネル1は、指や専用のペンで画面に触れることで、券売機やレジスターの操作を行なうための表示装置であり、指が触れた位置を検知して画面上の位置を指定し、対応する指示を与える。券売機本体Aは、CPU10、ROM11、RAM12及びI/Oポート13等から成る表示制御を行なう制御部を含む(図3参照)。I/Oポート13には、タッチパネル1、プリンタ2、コイン投入部3、コイン払出部4、札入出部5、及びキー操作部6が接続される。
【0023】
ROM11には、タッチパネル1に券売操作用の画面及びレジスター画面を表示するための表示プログラム等の制御プログラム等が格納され、RAM12には、タッチパネル1から入力されるデータ等の各種のデータが格納される。タッチパネル1は、客が操作する時間帯には客側に向けられて、券売操作のための、例えば朝食メニュー、ランチ等の時間により変更するメニューの表示に使用する。また、店員が操作する時間帯には店員側(レジカウンターの内方側)に向けられて、レジスター画面が表示される。
【0024】
コイン投入部3、コイン払出部4、及び札入出部5は、客操作時、及び、店員操作時のいずれの使用形態においても、それぞれ共通のI/Oポート13を利用してデータの送受信がなされる。それによって、客操作時、及び店員操作時いずれの操作時にも、共通のコイン投入部3、コイン払出部4、札入出部5を利用して清算を行なうことが可能となり、レジスター操作時にも、店員の手作業による釣銭動作を必要とせず、釣銭払出までの清算作業を自動的に行なうことが可能となる。
【0025】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは言うまでもない。従って、この発明は、添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 タッチパネル
2 プリンタ
3 コイン投入部
4 コイン払出部
5 札入出部
6 キー操作部
10 CPU
11 ROM
12 RAM
13 I/Oポート
21 電源コード
22 コード挿通溝22
23 巻取り具
24 軸孔
A 券売機本体
B ボックスケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部を含む券売機本体と、前記券売機本体を180度回転可能に保持するボックスケースとで構成され、前記ボックスケースの上面に前記券売機本体から出る電源コードを摺動可能に挿通する半円形のコード挿通溝が形成されて成る券売機であって、
前記ボックスケース内の適宜位置に、前記コード挿通溝に挿通されて垂れ下がる前記券売機本体から出る電源コードを常時巻き取るように作用して緊張させるコード巻取り具が配設されていることを特徴とする向き変更可能な券売機。
【請求項2】
前記コード巻取り具は、巻取りドラムにぜんまい式バネを内蔵し、ぜんまい式バネの復元力で電源コードを巻き取るタイプのものである、請求項1に記載の向き変更可能な券売機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−25511(P2013−25511A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158684(P2011−158684)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(306013795)株式会社 アイタック (3)
【Fターム(参考)】