説明

含水物燃焼処理設備及びその方法

【課題】安定した温度の乾燥熱源を乾燥機に供給できるようにする。
【解決手段】熱媒を乾燥熱源として含水廃棄物の乾燥を行う乾燥機3と、この乾燥機3により乾燥した乾燥廃棄物を焼却又は溶融する処理炉5とを備え、乾燥機3により使用した使用済み熱媒を一段目の間接熱交換器8、二段目の間接熱交換器9及び三段目の間接熱交換器10において処理炉5の排ガスとの熱交換により加熱し、再び乾燥機3に循環供給するにあたり、使用済み熱媒を、一段目の間接熱交換器8、二段目の間接熱交換器9及び三段目の間接熱交換器10の順に流通させる一方、処理炉5の排ガスを一段目の間接熱交換器8、三段目の間接熱交換器10及び二段目の間接熱交換器9の順に流通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却や溶融処理に先立って乾燥を要する下水汚泥や生ごみ等の含水廃棄物の処理設備及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の廃棄物処理設備においては、省エネルギー化の要請により、焼却や溶融に伴って発生する排熱を回収し、同設備内の熱源として又は発電機により電気エネルギーとして有効利用している。
【0003】
例えば含水廃棄物処理設備において排熱の有効利用を図るものとしては、特公平7−24733号公報に開示される技術がある。この従来技術は、蒸気と含水廃棄物とを直接接触させて乾燥を行う蒸気直接乾燥機と、この乾燥機により乾燥した乾燥廃棄物を燃焼する燃焼炉とを備え、熱交換器を用いて乾燥機により使用した使用済み蒸気を燃焼炉の排ガスとの熱交換により加熱し、再び乾燥機に循環供給するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−24733号公報
【特許文献2】特開昭54−131344号公報
【特許文献3】特開平6−26629号公報
【特許文献4】特開昭61−209099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、乾燥機の乾燥熱源として用いる熱媒の加熱を燃焼炉排ガスとの熱交換だけに依存する構成とすると、熱媒の温度が、燃焼処理量や燃焼炉排ガスの温度によって変動してしまい、安定した乾燥熱源の確保が困難となる。
【0006】
そこで、本発明の主たる課題は、安定した温度の熱媒を乾燥機に供給できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は、熱媒を乾燥熱源として含水物の乾燥を行う乾燥機と、この乾燥機により乾燥した乾燥物を燃焼する燃焼炉とを備え、前記乾燥機により使用した使用済み熱媒を前記燃焼炉の排ガスとの熱交換により加熱し、再び前記乾燥機に循環供給するように構成した含水物燃焼処理設備において、
前記使用済み熱媒と燃焼炉の排ガスとの熱交換を行う、一段目の間接熱交換器、二段目の間接熱交換器及び三段目の間接熱交換器を備え、
前記使用済み熱媒が、前記一段目の間接熱交換器、前記二段目の間接熱交換器及び前記三段目の間接熱交換器の順に流通される一方、前記燃焼炉の排ガスが前記一段目の間接熱交換器、前記三段目の間接熱交換器及び前記二段目の間接熱交換器の順に流通されるように構成された、
ことを特徴とする含水物燃焼処理設備である。
【0008】
このように構成することで、安定した温度の熱媒を乾燥機に供給することができる。
【0009】
本発明は、前記熱媒が蒸気であり、前記乾燥機が蒸気と含水物とを直接接触させて乾燥を行う蒸気直接乾燥機である設備に特に好適である。
【0010】
他方、本発明の含水物燃焼処理方法は、熱媒を乾燥熱源として含水物の乾燥を行い、この乾燥した乾燥物を燃焼する一方で、前記乾燥に使用した使用済み熱媒を前記燃焼により生成する燃焼炉排ガスとの熱交換により加熱し、再び前記乾燥に利用するにあたり、
前記使用済み熱媒と燃焼炉の排ガスとの熱交換を行う、一段目の間接熱交換器、二段目の間接熱交換器及び三段目の間接熱交換器を用い、
前記使用済み熱媒を、前記一段目の間接熱交換器、前記二段目の間接熱交換器及び前記三段目の間接熱交換器の順に流通させる一方、前記燃焼炉の排ガスを前記一段目の間接熱交換器、前記三段目の間接熱交換器及び前記二段目の間接熱交換器の順に流通させる、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり本発明によれば、安定した温度の乾燥熱源を乾燥機に供給できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る汚泥処理設備例の前段フロー図である。
【図2】後段フロー図である。
【図3】排熱回収部の拡大図である。
【図4】排ガス連通路の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、下水汚泥処理設備の例を引いて詳説する。
図1及び図2は、本発明を適用した下水汚泥処理設備例のフロー図を示している。図1中の符号1は、汚泥ピットを示しており、ここに貯留された汚泥Sは、図示しないクレーン等により図示しないホッパーに移送されそこに付属する汚泥供給ポンプ2により乾燥機3に供給される。
【0014】
乾燥機3においては、後述する排ガスとの熱交換によって加熱済みの約400℃程度の蒸気を乾燥熱源として汚泥が乾燥される。乾燥機3としては、乾燥熱源として蒸気等の熱媒を循環利用できるものであれば、図示例のように蒸気と含水廃棄物とを直接接触させて乾燥を行う蒸気直接乾燥タイプのものでなくても良い。また循環熱媒としては蒸気に限られない。
【0015】
汚泥との熱交換により減温した蒸気は、約150℃程度となって集塵機3Cに対して供給され、ここで乾燥汚泥ダストが分離回収された後、蒸気循環ファン3Fにより後述の一段目の蒸気加熱器8に供給される。なお、集塵機3Cとしてはバグフィルタまたはサイクロンを複数段設けるのが好ましい。
【0016】
乾燥機3により乾燥され排出された乾燥汚泥、および集塵機3Cにより回収した乾燥汚泥ダストは、次いで乾燥汚泥輸送ブロワ4による空気輸送にて溶融炉5へ供給され、燃焼溶融される。燃焼溶融炉5は、本発明では特に限定されないが、図示例の場合、竪型旋回式の予備燃焼炉50と、その下端に一端が接続された横型主燃焼炉51と、その他端にスラグシュート52を介して接続された竪型の混合冷却器53とから構成された自然放冷式のものであり、乾燥汚泥は予備燃焼炉50の上部に吹き込まれる。予備燃焼炉50の上部にはバーナー54が設けられ、このバーナー54に対して都市ガス、重油、灯油、廃油等の燃料、ならびにファン55からの燃焼空気が供給されるように構成されており、予備燃焼炉50内に旋回方向に沿って吹き込まれた乾燥汚泥は、旋回降下しながらバーナー54による燃焼フレームにより燃焼溶融され、主燃焼炉51内を経て、スラグシュート52から溶融スラグとして排出される。排出した溶融スラグは、水冷スラグコンベヤ6により冷却固化された後に取り出される。
【0017】
他方、溶融炉5の排ガスは約1350〜1450℃となっており、これが混合冷却器53を経て約850℃程度まで放冷された後に、空気予熱器7および複数段の蒸気加熱器8〜10からなる排熱回収部に送られる。本例では、空気予熱器7および一段目の蒸気加熱器8がそれぞれ輻射式熱交換器からなり、二段目および三段目の蒸気加熱器9,10がシェルアンドチューブ式熱交換器からなるものとされているが、本発明においてはかかる種類及び組み合わせに限定されず、他の公知の熱交換器を用いることもできる。
【0018】
空気予熱器7は、約20〜200℃程度の空気を炉内過熱防止のために主燃焼炉51内に吹き込むにあたり極端な温度低下を避けるべく、予め溶融炉排ガスとの熱交換により予熱するための熱交換器であり、より詳細には図3に示すように、上部供給口7iから下端排出口7eへ向けて溶融炉排ガスが流通される縦置き配置の筒状部7T(例えば、内径1500〜2500mm程度)と、筒状部7T内の流通排ガスを取り囲むように設けられ、燃焼空気が上端部供給口7mから下端部排出口7nへ流通される筒状ジャケット部7Jとから構成されている。そして、例えば図示のように大気を空気予熱器7に対して直接供給し、供給された空気はジャケット部7J内を下側へ流通する過程で、筒状部7T内を並流する溶融炉排ガスとの間接熱交換により、約500℃程度まで予熱された後、主燃焼炉51に送られ、炉内温度が適温に抑制される。この予熱空気は予備燃焼炉50に対しても供給することができる。また、予備燃焼炉50の上部冷却ジャケットから取り出した約200℃程度の冷却空気を、大気とともに或いは大気に代えて単独で空気予熱器7に対して供給することもできる。
【0019】
空気予熱器7を通過した溶融炉排ガスは、約811℃程度となって排ガス連通路70を介して一段目の蒸気加熱器8に供給される。一段目の蒸気加熱器8は、空気予熱器7と基本的には同様の構造とされている。すなわち一段目の蒸気加熱器8は、図3に詳細示すように、下端供給口8iから上部排出口8eへ向けて溶融炉排ガスが流通される縦置き配置の筒状部8Tと、筒状部8T内の流通排ガスを取り囲むように配置され、乾燥機3から排出された蒸気が下端部供給口8mから上端部排出口8nへ向けて流通される筒状ジャケット部8Jとから構成されている。乾燥機3から排出された約150℃程度の蒸気は、ジャケット部8J内を流通する過程で、筒状部8T内を流通する溶融炉排ガスとの間接熱交換により約181℃程度に加熱される。一方、これにより溶融炉排ガスは約750度程度まで冷却される。
【0020】
次いで本例では、一段目の蒸気加熱器8を通過した蒸気は二段目の蒸気加熱器9、三段目の蒸気加熱器10の順に流通され、反対に溶融炉排ガスは三段目の蒸気加熱器10、二段目の蒸気加熱器9の順に流通され、相互に逆流する形態で間接熱交換がなされるようになっている。そしてこれら二段目及び三段目の蒸気加熱器9,10は、図3に詳細に示すように、シェル9S,10S内に多数のチューブ9T,10Tを備えたいわゆるシェルアンドチューブ式の熱交換器であり、蒸気がシェル9S,10S内面とチューブ9T,10T外面との間に、および溶融炉排ガスがチューブ9T,10T内にそれぞれ流通され、その過程で蒸気が溶融炉排ガスとの間接熱交換により加熱されるようになっている。
【0021】
蒸気の流れに沿って詳説すると、先ず二段目の蒸気加熱器9に対しては、一段目の蒸気加熱器8において加熱を終えた約181℃程度の蒸気が蒸気連通路80を介して、および三段目の蒸気加熱器10において熱交換を終えた約400℃程度の溶融炉排ガスが排ガス連通路72を介してそれぞれ供給される。これにより、シェル9S内を流通する蒸気が、チューブ9T内を流通する排ガスとの間接熱交換により約232℃程度まで加熱される。また溶融炉排ガスは約250℃程度まで冷却される。次に、三段目の蒸気加熱器10には、二段目の蒸気加熱器9において加熱を終えた約232℃程度の蒸気が蒸気連通路81を介して、および一段目の蒸気加熱器8において熱交換を終えた約750℃程度の溶融炉排ガスが排ガス連通路71を介してそれぞれ供給される。これにより、シェル10S内を流通する蒸気が、チューブ10T内を流通する排ガスとの間接熱交換により約369℃程度まで加熱される。また溶融炉排ガスは約400℃程度まで冷却される。
【0022】
他方、溶融炉排ガスに含まれるダストは、空気予熱器7、一段目〜3段目の蒸気加熱器8〜10の下端部に堆積して回収され、図示しない飛灰処理設備で異物除去等の処理を行った後に安定化して外部処分するか、あるいは乾燥汚泥輸送ブロワ4の入側に戻し、乾燥汚泥に混入する。
【0023】
このように、本例では溶融炉排ガスの排熱回収を順次行う複数段の熱交換器7〜10のうち、蒸発金属の再固化によるダストが発生し易い前段側熱交換器(空気予熱器7及び一段目の蒸気加熱器8)として、前述構成の輻射式熱交換器を用いたことにより、筒状部の内周面に多少ダストが付着しても、排ガスの流通を阻害又は閉塞するような事態までは至りにくく、清掃も容易であり、かつ高温耐性も十分に確保される。しかも、単にかかる輻射式熱交換器を用いるだけでは熱交換効率が低いために排熱回収部全体の設置スペースが過大となってしまうが、本例では更に、蒸発金属によるダストが発生しにくい後段側熱交換器(二段目及び三段目の蒸気加熱器9,10)として、単位設置面積あたりの熱交換効率が非常に高くかつ高温耐性も十分にあるシェルアンドチューブ式熱交換器を組み合わせることによって、ダストによる排ガス流通系の閉塞のおそれを少なくしながらも、排熱回収部の設置スペースを最小限に抑えることができる。
【0024】
ただし、以上のような組み合わせ構成を採用したとしても、熱交換器7〜10内にダストが付着するのを完全に抑えることはできず、定期的な清掃が必要である。しかし清掃が必要であるとしても、複数段ある熱交換器の全てにダストが付着するのでは、清掃作業が非常に煩雑となる。そこで好適には、図4に示すように、少なくとも蒸発金属によるダストが発生し易い最上流側の熱交換器(空気予熱器7)からの排ガスを次段の熱交換器(一段目蒸気加熱器8)へ送給する排ガス連通路70に、内部の排ガス流速がその上流側の熱交換器7よりも低速となるように、例えば排ガス流通方向に対する横断面積が上流側の熱交換器7よりも大きいダスト捕捉スペース70S,70Sを形成するのが望ましい。特に好適には、ダスト捕捉スペース70S,70S内における流速が、当該ダスト捕捉スペース70S,70Sよりも上流の全ての排ガス流路(すなわち本例の場合、熱交換器7、およびこれと混合冷却器53との連通路72)内よりも低速となるように構成するのが望ましい。このダスト捕捉スペース70S,70Sにおける流速低下度合いは、一概にはいえないが例えば約2〜5m/秒であるのが望ましい。より具体的には、連通路72内の流速が5〜10m/秒、熱交換器7内の流速が3〜6m/秒、およびダスト捕捉スペース70S内の流速が2〜5m/秒となるように設計するのが望ましい。
【0025】
これにより、最上流側の熱交換器7における冷却により発生したダストを伴う排ガスの流速が、次段への排ガス連通路70内のダスト捕捉スペース70S,70Sにおいて低下し、そこに含まれるダストが捕捉スペース70S,70S内において集中的に捕捉される。よって、最上流側の熱交換器7内にはダストが多少付着するかもしれないが、当該排ガス連通路70以降の熱交換器8〜10内ではダストが発生・付着しにくく、流路閉塞のおそれも少なくなり、また清掃作業が著しく容易になる。
【0026】
また図示のように、空気予熱器7と蒸気加熱器8とをつなぐ横向き排ガス連通路(ダクト)70が、一端部上壁の供給口70iにおいて空気予熱器7の筒状部の下端排出口7eと着脱自在に接続され、他端部上壁の排出口70eにおいて蒸気加熱器8の筒状部の下端供給口8iと接続されていると排ガス連通路70内の清掃が容易となる利点がある。
【0027】
特に排ガス連通路70は、図4に詳細に示すように、空気予熱器7の下端排出口7eと直列接続される筒状上側部分t1および下端頂点部にダスト排出口x1を有する円錐状下側部分c1からなる入側竪型筒状部70Aと、蒸気加熱器8の下端供給口8iに直列接続される筒状上側部分t2および下端頂点部にダスト排出口x2を有する円錐状下側部分c2からなる出側竪型筒状部70Bと、入側が入側竪型筒状部70Aの側部に及び出側が出側竪型筒状部70Bの側部にそれぞれ連通され、入側部分内の下面enが入側竪型筒状部の下端排出口x1まで及び出側部分内の下面exが出側竪型筒状部の下端排出口x2までそれぞれ連続的に下向き傾斜した横向きダクト部70Cとを一体的に形成したものが好ましい。この排ガス連通路70では、横向きダクト部70C中央の縮径部ceの両側全体がそれぞれダスト捕捉スペースとなる。このように構成するとで、縮径部ceを除く連通路70の略全体がダスト捕捉スペースとなるだけでなく、下側部分の略全てc1,en,ex,c2が下向き傾斜面で形成されるため、下面の略全体にわたり水平面がなく、流速が低下し降下したダストの略全部がいずれかの排出口x1,x2に滑り落ちることになる。よって、排ガス連通路70内でのダスト捕捉能力がより高くなるとともに、降下ダストの略全てを排出口x1,x2に収集して排出させることができるようになる。
【0028】
他方、溶融炉排ガスとの熱交換により加熱された蒸気は乾燥機3に対して循環供給される。そしてこの際、必要に応じて補助加熱器11(間接熱交換器)において、都市ガス等の燃料を燃焼する補助炉12からのクリーン排ガスとの熱交換により所定温度、例えば400℃まで加熱した後に、乾燥機3に対して供給する。このため、図示しないが、乾燥機3に対して戻される蒸気の温度を測定する温度測定装置を設け、この温度測定装置による測定結果に基づいて加熱器11へのクリーン排ガス送風量や補助炉12の燃焼度合いを調節するように構成するのが望ましい。符号13は、補助炉へ燃焼空気を送り込む補助炉ファンを示している。
【0029】
また図示するように、乾燥機3に対して戻される蒸気の一部を溶融炉5内に供給し、過熱防止を図るのも好適である。すなわち本例のように汚泥に蒸気を直接接触させて乾燥する場合、汚泥乾燥時の水分の蒸発により循環蒸気は経時的に増加するため、これを必要に応じて系外に排出する必要がある。他方、前述のように溶融炉5が自然放冷式の場合、過熱を防ぐためには多量の空気を炉内に供給しなければならない。しかるに、炉5内に循環蒸気の一部を吹き込むことにより、循環蒸気量の調節を行えるだけでなく、蒸気の比熱が空気の約4倍程度あるために、空気のみの場合と比較して著しく少ない吹き込み量で炉内温度を調節できるのである。また循環蒸気には多量の悪臭成分が含まれているが、溶融炉5内に吹き込まれると悪臭成分が熱分解されるという副次的な利点もある。ただし、本例のように溶融炉5内に吹き込む蒸気が低温(約370℃程度)の場合には、炉内温度が急激に下がり温度調節に支障が生じるので、そのような場合には図示のように予熱器7から溶融炉5内に吹き込まれる空気と混合してから炉内に吹き込むのが好ましい。本例の溶融炉5の場合、上記利点を得るためには、循環蒸気を主燃焼炉51に吹き込みその余りを混合冷却器53に吹き込むようにするのが望ましい。また図示しないが、循環蒸気量の調節のために、乾燥機3内圧を測定する圧力計と、この圧力計の測定結果に応じて溶融炉5へ供給する循環蒸気量を制御する手段とを設けるのが望ましい。
【0030】
他方、蒸気との熱交換により約250℃程度まで冷却した溶融炉排ガスは、排ガス冷却器100において冷却水および冷却エアの噴霧により、約200℃程度まで冷却され、次いでバグフィルタ101により除塵される。またこれら排ガス冷却器100およびバグフィルタ101で回収されるダストも、図示しない飛灰処理設備で異物除去等の処理を行った後に安定化して外部処分するか、あるいは乾燥汚泥輸送ブロワ4の入側に戻し、乾燥汚泥に混入する。バグフィルタ101を経た排ガスは、次いで排煙処理塔102(スクラバー)に供給され、洗浄水により洗浄集塵される。またその過程で約50℃程度まで冷却された後、誘引ファン103により脱硝処理部110に導入される。
【0031】
脱硝処理部110は、溶融炉排ガスを脱硝予熱器(間接熱交換器)111において排熱との熱交換により予め250℃程度まで予熱し、次いで都市ガス等の燃料を用いる加熱炉112により約350℃の反応塔供給温度まで加熱した後、尿素水、エア及び希釈水等を添加して反応塔113内において脱硝反応による脱硝処理を行うものである。蒸気循環系の補助加熱器11において使用したクリーン排ガスが適温(約400℃)となっており、そのまま排出するのは不経済なのでその全部(一部でも良い)を予熱器111での加熱媒体として利用するのが望ましい。また図示のように脱硝処理後の排ガスも適温(約350℃)となるので、これと補助加熱器11からのクリーン排ガスとを合流混合した後に予熱器111で用いるのも好ましい。この混合ガスは、予熱器111での熱交換後、煙突114から大気放出される。特に、このように補助加熱器11において使用したクリーン排ガスを脱硝処理後の排ガスに混入することにより、大気放出する際の白煙の発生を防止することができる利点がある。またもちろん、補助加熱器11からのクリーン排ガスのみ、脱硝処理済み排ガスのみ、又は他の熱源を用いることもできる。なお、符号115は加熱炉に空気を送り込む空気ファンを示している。
【0032】
<その他>
(イ)上記例の熱交換器は4段設けられているが、熱交換機の段数は、排熱回収度合いに応じて適宜定めることができる。
【0033】
(ロ)また上記例の乾燥用熱媒は蒸気とされているが、本発明では他の熱媒を用いることもできる。
【0034】
(ハ)さらに上記例は下水汚泥の溶融処理設備であるが、本発明はこれに限定されず、含水物であれば他の廃棄物や非廃棄物などの処理にも適用でき、また溶融までは行わない焼却設備等の燃焼処理設備にも適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…汚泥ピット、2…汚泥供給ポンプ、3…乾燥機、4…乾燥汚泥輸送ブロワ、5…溶融炉、6…水冷スラグコンベヤ、7…空気予熱器、8,9,10…蒸気加熱器、11…補助加熱器、12…補助炉、70,71,72…排ガス連通路、80,81…蒸気連通路、100…排ガス冷却器、101…バグフィルタ、102…排煙処理塔、111…脱硝予熱器、112…加熱炉、113…反応塔、114…煙突。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を乾燥熱源として含水物の乾燥を行う乾燥機と、この乾燥機により乾燥した乾燥物を燃焼する燃焼炉とを備え、前記乾燥機により使用した使用済み熱媒を前記燃焼炉の排ガスとの熱交換により加熱し、再び前記乾燥機に循環供給するように構成した含水物燃焼処理設備において、
前記使用済み熱媒と燃焼炉の排ガスとの熱交換を行う、一段目の間接熱交換器、二段目の間接熱交換器及び三段目の間接熱交換器を備え、
前記使用済み熱媒が、前記一段目の間接熱交換器、前記二段目の間接熱交換器及び前記三段目の間接熱交換器の順に流通される一方、前記燃焼炉の排ガスが前記一段目の間接熱交換器、前記三段目の間接熱交換器及び前記二段目の間接熱交換器の順に流通されるように構成された、
ことを特徴とする含水物燃焼処理設備。
【請求項2】
前記熱媒が蒸気であり、前記乾燥機が蒸気と含水物とを直接接触させて乾燥を行う蒸気直接乾燥機である、請求項1記載の含水物燃焼処理設備。
【請求項3】
熱媒を乾燥熱源として含水物の乾燥を行い、この乾燥した乾燥物を燃焼する一方で、前記乾燥に使用した使用済み熱媒を前記燃焼により生成する燃焼炉排ガスとの熱交換により加熱し、再び前記乾燥に利用するにあたり、
前記使用済み熱媒と燃焼炉の排ガスとの熱交換を行う、一段目の間接熱交換器、二段目の間接熱交換器及び三段目の間接熱交換器を用い、
前記使用済み熱媒を、前記一段目の間接熱交換器、前記二段目の間接熱交換器及び前記三段目の間接熱交換器の順に流通させる一方、前記燃焼炉の排ガスを前記一段目の間接熱交換器、前記三段目の間接熱交換器及び前記二段目の間接熱交換器の順に流通させる、
ことを特徴とする含水物燃焼処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281723(P2009−281723A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166311(P2009−166311)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【分割の表示】特願2001−179531(P2001−179531)の分割
【原出願日】平成13年6月14日(2001.6.14)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】